幻のテレビ怪獣映画

アゴン

監督 峯徳夫、大橋史典
製作 日本電波映画株式会社
   昭和39年(放送:昭和43年)

関連HP(チャンネルNECO)
http://www.necoweb.com/neco/program/indexpro.php?p=548



テレビ作品だが、怪獣ファンとしてちょっと書いておきたいのがこの「アゴン」。
1話30分で4話のみの作品。
第1話と第2話が「アゴン出現(前・后篇)」第3話と第4話で「風前の灯(前・后篇)」
64年の製作されたが、何かの事情で放送は68年。
見てみるともっと続く予定だったのが打ち切られたような中途半端な終り方。
「『ウルトラQ』に続けとパイロット版のみ製作されたがその後が続かなかった」
のかも知れない。
そんな感じの内容なのだ。

簡単に内容を記しておこう。
第1話「アゴン出現(前篇)」
台風のよる原子力センターのウラン物質をのせた車が海岸線で消息不明になった。
警視庁科学班の大和刑事(松本朝夫)や原子力センターの〜博士、
新聞記者の「スッポンの五郎」こと五郎もネタをかぎつけ、現場に急行。
そこに出現したのは怪獣アゴン!
その場はアゴンは海中に消えていったが、次の出現では海岸の近くの原子力センターを襲う。
防風林の中を逃げる原子力センターの職員たち。
博士の助手が逃げ遅れあわや!

第2話「アゴン出現(后編)」
助手の〜は五郎に助け出されたが再び海岸近くに出現。アゴンの目的のウラン物質を
積んだジープをアゴンが上陸寸前の崖に落とすことにより、アゴンはそれを追って
海に潜り、事なきを得る。

第3話「風前の灯(前篇)」
1艘の小船が台風により転覆し、近くの漁師の家に助けを求める。
彼は裏家業の人間らしい。翌日、漁師を連れて船に積んであったトランクを取り戻そうと
海にでる。しかしその場にはアゴンが横たわっていた。
二人組は漁師の子供を人質にしてトランクを取ってくるように言う。
なんとかトランクを取ってきた漁師だったが、子供とトランクがのったボートはアゴンに
加えられてしまい、自衛隊も手が出せない。

第4話「風前の灯(后編)」
なんとかアゴンから小船を放させ子供とトランクは現場に駆けつけていた五郎たちの
元に返った。しかしそのトランクは麻薬だった。
なんとかそのトランクを警察の手から取り戻した悪漢二人組だったが、アゴン対策に
輸送してきたウランをつんだヘリを奪って逃走。
しかし減りはアゴンに破壊され、アゴンは再び海中へ。
ナレーション「人類への警鐘としてアゴンは再び現われるかもしれない」


アゴンは核実験によみがえった太古の恐竜。
とくれば誰でも思いだすのが「ゴジラ」。実際、造型もゴジラに似通っている。
火を噴くところも同じだし、毎回オープニングに「人類は原子力という
第三の火を手に入れた。しかしそのことは新たな扉をもノックした」という
核兵器に対する人類の警鐘が根本。
主人公の新聞記者が「アゴンは自業自得で死んだんでしょう」というと
博士が「いや、自業自得は人間かも知れんよ」という。

まるっきりゴジラの焼き直し。
第1話では逃げ遅れた博士の助手がアゴンに踏まれる!あわや!というところもあって
ゴジラと一緒。
でもノースターだし、低予算ミエミエだし、特撮もへたくそで、アゴンも死んだのか
死んでないのか画面を見ただけでははっきり解らず、登場人物が「アゴンもこの爆発で
死んだのでしょう」というセリフがついてやっと「ああ、一応やられたらしい」と解る。

ご都合主義を超えた強引な展開。子供向き番組だからと手を抜きまくった脚本。
「風前の灯」篇ではアゴンをトランクから引き出すために近くの原子力センター
から、悪漢二人組はウランを素手で簡単に盗み出すといった安易な設定!
第一、大怪獣の話とチンケな麻薬犯の話がミックスされてもその話の
スケールがチグハグ。
脚本家にやる気がなかったのだろうか?
子供相手だからとなめきっている。

最後にどうやってアゴンを倒すのかと思っていたら、悪漢二人組みが持っていた麻薬の
トランクをみて「これだけの麻薬をアゴンに食わせたらどうなるでしょう?」
「おそらく死ぬだろうね」という思いつきでやっている。
自分で何か用意しろよ、棚ボタねらいじゃなくてさあ。

自衛隊の戦闘シーンは実写フィルムの流用がほとんど。
でも戦車が実写フィルムの流用ではなさそうなところで登場するから
それなりにやる気はあったのか?

怪獣ブームにのって怪獣映画を素人が撮るとこうなるという見本のような作品。
やっぱり円谷さんの作品とはレベルが違います。
「ウルトラQ」のレベルの高さが再認識されるようなB級作品。





2003年10月18日観賞
録画ビデオ(チャンネルNECO)