TBS創立50周年記念ドラマ

明るいほうへ明るいほうへ


日時 2001年8月27日21:00〜23:24 TBS系 
出演 松たか子、三宅健、渡部篤郎、中田喜子、香川京子、渡哲也


26才で無くなった大正時代の詩人、金子みすずの生涯を描いたTBSの特番。
作品のジャンルとしてはかつてのNHKの朝の連続テレビ小説に近い。


金子みすずを松たか子が演じ、三宅健はその弟、正祐を演じる。
ドラマはみすずが17才で女学校を卒業するところから始まる。
健とみすずは複雑な関係で健は幼いときに、渡哲也が下関で経営する
書店の跡取りとして養子に出されている。
みすずは正祐の薦めもあり、雑誌に詩を投稿するようになり西条八十らに認められる。
みすずの兄の結婚により実家を離れ、下関の渡哲也の書店で働くようになる。
健はみすずのことをいとこだと思っているので、大きくなるにつれ
みすずのことを愛するようになってしまう。
正祐の両親の反対により、書店の使用人の渡部篤郎と結婚する。


ストーリーを追うのはこのへんでやめておくが、
詳しく金子みすずの生涯を詳しく描こうとすると2時間半では
話がはしょりすぎ。
CMが多く、ドラマとしてのリズムがブツ切れになったせいもあるが、
特に渡部篤郎が登場するまでは連続ドラマのダイジェスト版を
見てるような印象をぬぐえない。
この辺はもう少し脚本を整理したほうが良かったのでは?
金子みすずはいつ東京に出て行くのかと思ってたら、
地方の投稿専門の、今で言うセミプロの詩人だったんですね。

渡部篤郎が登場してからは、間が悪いとしか言いようのない運命の
いたずらに翻弄されていく。
この辺は女性と男性ではものの視点が違うので、
私には「かわいそうだなあ」ぐらいの感想しかなかったのだが。

仕事がうまくいかない夫の渡部篤郎に詩の投稿、投稿仲間との文通を
「俺が仕事がうまくいってないのに、おまえだけそんなことにうつつを
抜かしやがって」というのが理由で投稿を禁じられた時、みすずは離婚を
決意する。
このあたりは現代のインターネット社会の、主婦のHP運営やメル友との
メールのやり取りが何より楽しいという感覚的に非常に近いのでは?
このドラマ、ネットの掲示板などで主婦層には好評だったようだが、
このあたりも関係してるだろうか?



で三宅健だ。
健も下関の大きな書店の跡取のぼんぼんとして15歳ぐらいから24、5歳まで演じていて、
前半は舌足らずの「保健室」の頃と同じ演技を見せてくれる。
まだ中学生ぐらいで初登場する健は演技も若くしていて
「てるちゃんも、しをかいてみたらどうかなぁ(キャハ☆)」
といった感じでひさびさに可愛い演技。
最初、実はこのドラマは5年まえに撮影されていたのでは?と思わせるぐらいだ。
(神宮司尊くんが復活したと思ったよ)

しかし、やがて青年になり、好きになってはいけない人を好きになった苦悩に
苦しめられる。
全編登場時の「(キャハ☆)」の演技でとおすのかと思ったら、とんでもない。
青年になるにつれ、湧き出てくるてる(みすずの本名)に対する思いを
両親にとめられ東京に修業に出されたり、
てるの縁談を自分の知らないところで決められたり、
自分の本当の父親が別にいることを知り混乱するあたりは
青春の苦悩を演じきっており、いい。
特に自分とてるが実の姉弟だとてるから聞かされ、慟哭の叫びを上げるシーンは
健の見せ場だ。
てるの結婚式のあと自棄酒を飲むシーンがあるが、
健の酔っ払うシーンは初めてじゃないだろうか?
渡部に対する嫉妬から仕事でつらくあたるなど大人の演技になっている。

ラスト、てるの残された子と海岸で遊ぶシーンは青年の風格が出ていた。
15歳ぐらいの無垢な少年、恋に悩む青年、
東京へ出てまた一歩大人になった青年と
年代による演技わけも出来ており、ドラマとしては
健の代表作に数えてよかろう。
もう充分大人の演技が出来るようにまで成長した。
「ネバーランド」が不調な分、この演技的成功は嬉しい。
とても嬉しい。



(余談だが井上順、ホントにワンシーンのみの出演。
何かストーリーに関わってくるかと思ったら違ったんですね。
最初、井上順がやたらきょろきょろしてるので、
万引きしようとして松たか子に見つかり、その後も
付き合いが続くのかと思ってしまったよ)