bambinoバンビーノ


日時 2006年4月9日
場所 シアターサンモール
演出 堤泰之

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「タッチ」に出演の斉藤祥太主演のゲイを相手に体を売る、いわゆる「ウリ専」を素材にした舞台。

はっきり言うけどがっかりした。
物語は「日給2万円、出勤自由、服装自由」のスポーツ新聞の求人広告を見てやってきた
何も知らない大学生(斉藤祥太)が、借金の返済のために「ウリ専ボーイ」となり圭介と名づけられる
ところから始まる。

ここは「ゲイ」やいろんな人を相手にお客様を満足させてあげる場所、という遠まわしな表現でしか
説明されない。
はっきり言うけど99%の客がボーイ達の体を求めて、もっとはっきり言えばボーイ達とセックスが
したくて指名していく。
しかもこの仕事は「取り締まる法律がない」というだけで「犯罪」とされない危ない仕事だ。
何も知らない新人のボーイにとって、見ず知らずの他人のチンポをくわえさせらることがどんなに
屈辱か!
そしてそれがだんだん苦ではなくなっていくという心の変化があるはずだ。

「あるはずだ」と書いたのだが、実は本当にあるのかわからない。
他人のチンポを加えることに最初から抵抗がなかった者もいるだろう。
何人の客のチンポを加えても慣れない者もいるだろう。

その辺の心の葛藤というものがまるで描かれていない。
バンビーノで働く若者たちはやたら明るく、まるでマクドナルドかラーメン屋で働いているか
のようなのりだ。

自分を捨てた母親を憎みきれない兄弟(兄弟でウリ専するという設定もどうかと思うが)とか
水商売の女に入れ込み借金を作り店の売り上げを盗もうとする者とか多くのエピソードが
挿入されるが、出てくる人間がすべて善人のオンパレードで、笑ってしまう。
ここまで善人が登場するドラマも珍しい。
中でも「ヤミケン」をするボーイを全員で攻めるシーン。
あんな風にボーイ達が店に対して恩義を感じているのだろうか?
ボーイ達がヤミケンをやらないのは、一見効率よく見えるが実はかえって効率が悪いと悟って
いるからではないか?
「店に対して悪いと思わないか?」と圭介たちが訴えるとそういうセリフのある脚本に対して
失笑してしまう。

店のボーイ達だけの会話で成り立ち、客が一人も出てこないのが不自然。
客とホテルに行かなくても店に来た客がボーイを品定めするシーンぐらいあってもいいのではないか?
ボーイの事情についてのエピソードだけでなく、客達とのエピソードもあってしかるべきだ。
そっちのほうも面白そうなのだが。

結局は学園ドラマの部活の資金を稼ぐために全員でラーメン屋でバイトを始めるが、家庭の事情で
部活をやめなければならないものが出てきてみんなで説得する、というようなドラマとまったく
同じ構成になってしまっている。
これでは再三言うが、ドラマの設定を「ウリ専」にした意味がまったくない。
要はありきたりの青春ドラマではインパクトがないので設定を「ウリ専」にしてみた、というような
安易な発想しか感じられない。

斉藤祥太がウリ専ボーイの苦悩をどう表現するか、どうやらせるか、非常に期待があったので
見に行ったが、がっかりした。

また舞台セットはバンビーノの店内なのだが、左右と中央にボックス席のセットがある。
しかし中央と右側のボックス席が観客に背を向けている。
これでは役者が席に座ったときには観客には後頭部しか見えない。
一体金を払って何を見に来たと思ってるのだ?
役者見せなくてどうするというつもりなのだ????

どうにもこうにも理解不能な作品だった。