COSMIC RESCUE
The moonlight generations


〜「COSMIC RESCUE」にいたる
(俳優としての)カミングセンチュリーの活躍


<映画への進出>

この映画の存在を知ったのは2002年12月のカミングセンチュリーの
コンサートの時だった。
MCの中で「現在映画を撮影中です」と発表されたのだが、実は不安を覚えたのだ。

そのすぐ前に嵐の「ピカ☆ンチ」を見ていて「ああ、従来のジャニーズアイドル映画に
ありがちな映画の枠からちっとも抜け出てないなあ」と失望し、なおかつジャニーズ
アイドル映画というのは「所詮はこんなもんが当然」という気が私自身もしていた。
そんなたいしたことない映画ならかえって見たくない。

しかも今回は宇宙を舞台にした作品だという。
大丈夫かア???
「COSMIC RESCUE」がそれこそ「COMIC RESCUE」という
レベルの失笑ものの作品になってないか心配だった。
特撮SFは予算がかかるのが一般的な日本での考え方。
一時期のゴジラ映画を観てわかる通り、予算の少ない特撮SFは時にいたたまれなく
なって映画館から逃げ出したい衝動に駆られる。

ところが2003年の5月6月に入ってから「学校へ行こう!」などのレギュラー番組
のエンディングで予告編を観て、不安は期待に変わった。

「ひょっとしたらとんでもないSF映画の名作が出来てるんじゃないか???」
雑誌などに掲載されてるスチルを見て私の期待は高まるばかり。

そして待ち待っての公開。
観てみた。期待通り、いやそれ以上の作品だったと言っていい。

映画全体の感想は映画サイトの方で語るとして、こちらではカミセンそれぞれの
これまでの俳優としての活動について書いてみたい。


<これまでの活動>

まずは主演、というか物語の中心の森田剛。
「月下の棋士」('00)あたりからヒーロー役がスタート。
「嫁はミツボシ」('01)という「森田剛をこの作品に出す理由があるのか?」
という作品も途中あったが、今回の心に悩みを抱えた英雄という役どころは
「君を見上げて」('02)の才能ある鍵師の高野章二役がより発展された役といえるだろう。
「君を見上げて」は彼女との身長差に悩む青年、というやや軟弱な役柄だったが
鍵に向かう姿はヒーローとしての貫禄充分。
今回は「過去のレスキュー活動が仲間を死なせる結果になってしまった」という
心に傷を持ったヒーローとしてその本領がやっと開花!!

次に三宅健。
彼の俳優暦を語るに落とせないのが「名探偵・保健室のオバさん」('97)だろう。
松雪泰子演じる保健室の先生が学園内の事件を解決する学園ミステリーだったが
三宅健はその松雪泰子の助手となる生徒、神宮寺尊(じんぐうじ・みこと)
として登場。
「やさしくて、ちょっと気が弱くて頼りない感じもするけど、やるときはやる!」
という主人公を助ける助手というキャラクターはその後も「バーチャル・ガール」('00)
などにも引き継がれる事になり、また近作「マルサ!」('03)でもその「助手キャラ」は
続いていく。
その主人公の助手的キャラゆえ、ドラマの主役にはなりにくく
ドラマのアクセントとして重要なポイントとなる場合もあったが、
すべてが成功していたわけではなかったと思われる。
途中、舞台「2万7千光年の旅」('00)において新境地開拓か?と思わせる熱演も
あったのだが、残念ながらそこから新しい分野への開拓は広がらなかったようだ。
また「ネバーランド」('01)という今井翼とのダブル主演作もあったが
ドラマそのものも失敗しており、三宅健自身もその本領発揮とまでは行っていない。

今回もエンジニアというややストーリー的に前に出にくいキャラクターだったが、
「消えた宇宙船の謎を解く」というストーリー上で重要なパートを与えられ、
3人のバランスをうまくとっている。
また「物を大事にし、船の清掃にも気を使う」という性格は三宅健自身の普段の
言動にも一致する部分もあり、ファンとしては嬉しいところ。


最後は岡田准一。
単独のドラマ出演としては「ディアフレンド」('99)の鑑別所上がりの不良少年、
「モナリザの微笑み」('00)のオークション会場のの副支配人、「オヤジぃ」の
田村正和の息子役、「反乱のボヤージュ」('01)の大学生役とある程度の
存在感はみせていたものの、決定打とはなっていなかった。
彼にとっての決定打は「木更津キャッツアイ」('02)だろう。
限りある命でありながら怪盗団を結成するというキャラは、そのはじけた脚本
によって最大限に引き出され、彼のややコミカルなオーバーアクト気味の演技さえ
魅力に変えてしまう、稀有な作品に岡田はめぐり合えた。
(この作品はその後映画によってよみがえることになる)


そして3人そろっての主演は「PU-PU-PU-」('98)と「俺たちの旅ver1999」('99)
の2本のドラマがあった。
前者は「進路に悩み、親と対立する若者」という今までに何十本と作られた青春映画の枠の
まんまで(第1回はロサンゼルスまでロケに行くという贅沢さだったが)、
後者は「今、何故『俺たちの旅』のリメイクか?」という企画そのものまで
疑わざるを得ない作品だった。
(個人的には三宅健が父親と再会するエピソードが好きだったが、ドラマ全体では
やはり魅力のなさを感じざるを得なかった)


<そして「COSMIC RESCUE」へ>

彼らの魅力が生かされる作品にはまだ出会っていなかった。
だが今回やっとそんな作品に出会うことが出来たのだ。
いや今回の彼らは正直言ってカッコいい。そうとしか言いようがない。

森田剛の「あいつら清掃員まで雇ってんのな」と自嘲的に笑う笑顔、
「俺たちは人を救うために存在している!ちがいますか?」と戸田菜穂に問う岡田を
見る森田と三宅の表情、研修中の思い出を語る三宅、宇宙空間に取り残された岡田が
見せた泣き顔、「そうすけ」とつぶやく森田、「結局またあいつに助けられちゃいまし
たが・・・」という電話のシーン、脱出ポットを開けられて「ここ、ホント集中できるな」と
いう健の笑いの呼吸・・・

いやいや書き出したらキリがない。

それぞれの心に残るカットは観た人が決めればいいことだ。
僕ごときがここがよかった!などというべきではない。


もとより俳優にとって演技のうまい下手は絶対的な条件ではない。
もちろん最低限の表現力は必要だろうし、演技はうまいに越した事は無い。
しかしそれ以上に重要なことはその人のキャラクターにあった役に出会えるか
どうかだと思う。
あたり役に出会ってしまうと一生その役のイメージがついてしまうというマイナスな
こともある。
しかし大半の役者は自身のキャラクターを最大限に生かせる仕事に出会えずに
消えていく・・・・

今回カミングセンチュリーはその自身のキャラクターを最大限に生かせる役柄と
作品にめぐり合えた。
これは大変稀有な事だ。

その機会を与えてくれた佐藤信介監督と、その幸運をつかめたカミセン3人の幸運を
祝いたい。
彼らにとって今回の映画は一生の代表作となる作品になったことは間違いない。

シリーズ化され名実とも代表作になることを願ってやまない。