古畑任三郎〜二つの太陽<作品解説> 三谷幸喜の人気シリーズの新作。 塩田貞治が若き天才画家を演じる。 劇中に使われた絵は、イラストを得意とする塩田自身がこのドラマのために 新たに描いたもの。 いかにも悪人には見えない塩田が殺人犯を演じるところが今回の見所。 <ストーリー> 若き天才画家・岡田(塩田貞治)は近く新しくできる都心のインテリジェントビル の壁画のプロジェクトを任されていた。 明日はマスコミ向けにその壁画を発表する前の夜、そのビルのオーナー会社の 社長・米沢(浜田晃)に呼び出される。 夜のオフィスで二人きりで会った岡田と米沢だが、米沢は壁画のデザインに 希望を出したいというのだ。 壁画のデザイン画を前に話す二人。 米沢「この絵の背景の青い部分ね、ここ、全部金色にしてもらたい」 岡田「しかし、この絵は自然と都会の調和をモチーフにしたもので この部分を金色にすることは出来ません」 米沢「絵のよしあしなんて私にはわからん。君に人気があるから頼んだんだ。 金を出すのは私だ!私の指示に従うのは当然だろう!! 私は金色のような豪華な感じがいいんだ。いやなら」 岡田「いやなら?」 米沢「この仕事から下りてもらう」 その言葉にかっとなった岡田はテーブルの上にあった灰皿をつかみ 米沢を殴り倒した。 飛び散る血。 岡田はわれに変えると犯行を物取り強盗に見せかけるべく、部屋を荒らした。 そしてデザイン画を見て驚く岡田。 とりあえず米沢の机の上にあった携帯電話を持ってその場をさる。 岡田は仲間の溜まり場の行きつけのバーに行く。 米沢の部屋から持ち出した電話でさりげなく自分の携帯にかける。 岡田は電話に出て、さも米沢から電話があったような芝居をした。 死体が翌朝発見され、古畑(田村正和)も捜査にかけつける。 犯行時刻は昨日の21時から22時ぐらい。 米沢の腕時計が22時で壊れている事から 犯行時刻は22時と断定される。 最後に米沢に会った人物という事で岡田に話を聞きに行く古畑。 アリバイを尋ねたが、米沢が殺された時間は行きつけのバーで 仲間と会っていたと言う。アリバイは完璧だ。 着信記録調べてみたが、岡田にかかってきた電話は実は米沢の秘書の 電話からだった。秘書に話を聞いてみると、自分の携帯電話は米沢の 部屋に夕べ忘れたのだという。 では何故岡田の携帯に秘書の携帯から電話があったのか? その疑問をもって再び岡田に会う古畑。 岡田「きっと米沢さんは、部屋にあった秘書の電話を間違えて使ったのでしょう。 確か米沢さんと秘書の方は同じ携帯電話を使っていらっしゃったと思います。 同じ機種のほうが使い方とか同じで何かと便利だったんでしょう。 米沢さんは携帯とかそういうの弱かったみたいですから」 古畑「そう言われるとごもっともです。でも何故携帯が部屋からなくなったんで しょうか? 犯人が持ち去ったのなら何故? 宝石じゃあるまいし、 あんなもの価値なんかありませんよ」 岡田「それは犯人に聞いて下さい。とにかく僕には米沢さんから電話があったんだ。 僕にはアリバイがある」 古畑「『米沢さんから電話があった』と言ってるのはあなただけです。 事実は『秘書の携帯電話からあなたに携帯に電話があった』ということだけです」 インテリジェントビルの壁画についてのマスコミ発表会があるからと 岡田はその場を立ち去った。 インテリジェントビルのマスコミ発表会には多くの記者が詰め掛けていた。 何しろ都心の再開発の中心となるビルについてのマスコミ発表なのだ。 新聞も注目している。 大勢の記者の後ろで発表を見る古畑。 問題の壁画が公開されたが、そこには大自然の中に立つ高層ビル群が描かれて いたが、真っ赤な太陽が二つ描かれていた。 岡田「太陽が二つ描かれていますが、一つは自然の太陽。そしてもう一つは このビルの建設に尽力された米沢さんを表しています。惜しくも夕べ 亡くなられてしまいましたが」 古畑の隣で発表を見ていた米沢の秘書がつぶやいた。 「おかしいな。昨日見せてもらった時は太陽は一つだった」 その言葉を聞き逃さない古畑。 「すいません。今の話、もう少し詳しく聞かせてもらえませんか?」 再び岡田を訪ねる古畑。 古畑「素晴らしい絵でした。だがあの絵の新しい太陽は米沢さんを現しているの ではなく、単に何かを隠すためじゃありませんか?」 岡田「言ってる意味がよくわかりません」 古畑「二つめの太陽ですよ。あの太陽は実に不自然だ。素人の私が見たって あの太陽は変です。あんなところに真っ赤な太陽があったら全体の構図が 台無しだ。 事実米沢さんの秘書も昨日絵を見せてもらった時は、あんな所に太陽は なかったと言ってる」 岡田「だからそれは僕をこのプロジェクトに起用してくれた米沢さんに対して 追悼の意味を込めて描きたしたんだ」 古畑「もっともらしいお答えです。ですが今までのあなたの作風からすると どう考えてもおかしい」 岡田「画家が作風を変えていくのは当然の事だ。いつまでも同じ物は描き続けなくても 当然でしょう」 次第に声が大きくなる岡田。 古畑「ここにはあるものが隠されているはずだ。会社の許可は得てあります。 この絵をこの場で調べさせてもらいます」 カバンから液体の入ったビンを取り出す古畑。 古畑「この液体はあるものが付着していると反応して青く光る性質があります。 あるものとはそう・・血痕です」 液体をハンカチに染み込ませ、絵の太陽に近づけたその時、 岡田「やめろ!」 ハンカチを絵から話す古畑。 岡田「君の考えているとおりだ。そこには血痕が付着している」 古畑「やはり自白していただけましたね」 岡田「たとえ不本意な形で描きなおしていても自分の絵だ。 他人に傷つけられたくない」 ビンに入った液体をグイと飲む古畑。 驚く岡田。 古畑「ただの水なんです。これ」 苦笑する岡田。 「スイマセン」と笑いながら謝る古畑だった。 |
(02/10/25更新)