複数犯罪


日時 2015年2月21日
場所 ビデオ
監督 リチャード・A・コーラ
製作 1972年(昭和47年)


ボストン警察87分署。ここには色んな人々が出入りする。英語が話せない人、刑事から財布をスリとろうとした奴、毎朝車にゴミをぶちまけられるという苦情を言ってくる人。そんなただでさえごちゃごちゃしている署内にペンキの塗り換え作業が入って落ちつかない。美人でグラマーのアイリーン刑事(ラクウェル・ウェルチ)が連続強姦事件の囮捜査のために配属されてくる。
そんなときマイヤー刑事(ジャック・ウエストン)がとった電話の相手は「5000ドル用意しろ。さもなくばクーパー局長を殺す」と一方的に話す。いたずらにも思えたが一応報告だけはあげておくマイヤー。すぐにまた同じ男から電話があり、今度はクリング刑事がとったが「5000ドルは弁当箱に入れて公園のベンチにおけ」という。
キャレラ刑事(バート・レイノルズ)は連続して起こる浮浪者に放火する犯人の囮となったが、犯人たちに自分が火だるまにされてしまう。
脅迫電話の方はクリング刑事たちが公園のベンチに空の弁当箱をおき、張り込みをした。弁当箱を持ち去った男を尾行するクリングたちだが。


学生時代にテレビ放送で初めて観て私の生涯のベスト30に入れていいぐらいのお気に入りの映画。洋画劇場での鑑賞だから吹き替え版で観てビデオに録画してその後何回か観た。
ビデオにはなったが、日本ではDVDになっていない。
アメリカではDVDになっており、是非とも日本でもDVD化を切望する次第だ。

初めて観たとき何が面白かったかというと今まで自分が観てきた刑事ドラマのセオリーを覆す展開ばかりだからだ。
事件は複数同時並行で起きる、刑事たちは冗談ばかりをいいやる気がなさそう、でもいざとなったら活躍する。マイヤー刑事がドジな刑事の見本として登場する。

一番笑ったのはその後脅迫事件の犯人から手紙が届くのだが、それを見た後、考えるときについその手紙で机をトントン叩いてしまい、上司から取り上げられる所。
他にも容疑者に対しキャレラに怖い刑事になってもらって自分が優しい刑事でなんとか自分に対して吐かせようとするが、自分もつい激高してしまう。

脅迫事件の方は例の弁当箱を持っていた男を追ったところ、こいつらが何か計画していると発覚。電話の盗聴を行い、男の知り合いなどを問いつめたところ単なる酒屋強盗を計画してるだけと発覚。
(2回目の脅迫を受けて同じく空の弁当箱を張り込むシーンではキャレラとマイヤーが尼僧に変装したり、クリングとアイリーンが寝袋でいちゃつくカップルに変装したり、盲人に変装し警察犬を盲導犬として連れていくがいざという時にまったく役に立たないとか、正直、爆笑である)

一方、強姦魔の方は(割とあっさりと)解決。
署内でペンキ塗りをしていた口の減らない作業員も実は物品泥棒と解って逮捕。
そして酒屋の警備に向かうキャレラ、マイヤー、クリング。小さな事件と解っていても行かない訳にはいかない。
腐りきっている所へ、謎の警官が現れ、強盗も現れ銃撃戦に。
謎の警官のグループの一人がハゲで補聴器をした男。まさかと思いつつ追ってみると、そこへ例の浮浪者放火の不良少年たちが!

最後の最後に今までの伏線が一気に結びついていく脚本の見事さ。
脚本のエヴァン・ハンターは原作者のエド・マクベインの別ネーム。さすがの面白さだ。

他にも「酔っぱらいが車を押している」という苦情にどう対応するかとか、車にゴミをぶちまけられている苦情とか「実際の警察ってドラマと違ってくだらない苦情の数々に対応してるんだろうな」と思わせる現実感があり、そこが初めて見たときは実に新鮮だった。
(このごちゃごちゃ感は後の「踊る大捜査線」につながってると思う)

日本ではDVD化もされておらず、人気のない映画だが私にとっては忘れられない刑事映画の金字塔なのである。