母たちの国へ

日時 2001年1月13日13:00〜
場所 新国立劇場小劇場

このドラマではみんな何かを食べながらといってもよい
食べてなければお茶かなんか飲んでいる。そのように始終何かを
口にしながら日常生活の会話の中でドラマが進行している。
現実のわれわれもこんなには食べていないと思うくらい食べている。

パンフにもあったが、つまり人間何があっても裏にどんな事が
あっても食事はするのである。
そういった日常の生活の中だが、登場人物はトラウマを抱えている。
岡健は親に保険金殺人されかけた事を、妹は親が姉を可愛がり自分は
可愛がってもらわなかったことを、姉は胸のあざのことを。

姉の恋人の教育委員会の人物が言っていたではないか。
「行方不明だった女の子、見つかりました。でも何やっていたか
全然言わないんですよ。人間言いたくない事は誰にでもあるんですよね」
それぞれ悩みやトラウマをもって人間は生きている。
たとえ日常の食事などの営みには出てこなくても。
そして兄のように突然死んでしまう事もある。
姉のようにコンプレクスを婚約者に打ち明け乗り越えていく事もある。
(ラストの岡健への「こっちこそありがとう」の意味を私はそう解釈した)

タイトルの母たちの国というのは黄泉の国つまり死の国だろう。

母たちの国へ少しずつ向かっていく人間の姿を描きたかったのだろうと思う。

しかしね。淡々としすぎてないか?
ドラマ的な盛り上がりをわざと避けたのは解るのだがそれが全体のインパクトの
弱さにつながってる気がしてならない。

となりに座っていた4人組の30歳ぐらいの女性達の終って一言
「岡健が出てなかったら寝てたよね」
まあ一般的にはそういう感想を言いたくなるでしょうね。
僕は必ずしもそうは言わんけど。

でもこの場合岡健はミスキャスト。
彼は都会のサラリーマンで地方の工場のブルーカラーには見えないよ。
その辺がちょっと惜しい。
もっとも岡健が出てなかったら、僕は見ないけど。
長崎弁は皆さんがんばってました。