白日夢(2009)


日時 2009年9月5日11:30〜
場所 銀座シネパトス1
監督 いまおかしんじ 愛染恭子

(公式HPへ)

交番勤務の警察官倉橋(大坂俊介)は空き巣の被害届けを受け、被害者(西條美咲)の
アパートに向かう。金品は盗まれておらず、昔の写真のアルバムだけがなくなった
という。
彼は彼女に以前あったような錯覚を憶える。
食事中に歯が欠けた倉橋は歯医者に行く。
そこで歯科医助手として働く彼女と再会。彼女に惹かれるものを感じる倉橋は
アルバム盗難の犯人を捕まえようとする。やがて意外な事実が判明し、
倉橋の人生は思わぬ方向へ・・・


多分私だけかも知れないが、滅茶苦茶面白かった。
今年のベストワン候補だ。
大坂俊介の真面目な若手警察官が一人の女性と出会ったことで堕ちていく。
映画中に示されるように職務に忠実な真面目な警官だ。
食事の時も「いただきます」と手を合わせるような生真面目さ。
そんな彼は空き巣の被害届けの受理と言う仕事を後輩からうまく押し付けられる。
(その時の後輩の表情がにやっと笑うが、それは後半への伏線なのだろうか?)

そこで会った女性に惹かれていく。
連続して2回見たが、ここで倉橋が拳銃を構えるカットが挿入されるが、これが
2回見て意味が解る。
この女性が妙に美人過ぎないのがいい。
普通ぽっさがかえって大坂が惹かれて行くのが解る気がする。
(美人にはかえって警戒してしまうものだ。後のシーンで後輩が美人のことを
「なんか住む世界が違う感じがしますね」というが倉橋にとってはなんとなく
「同じ世界に住む女性」に見えたのかも知れない)

彼女の登場シーンは部屋が散らかされた後のような羽根が舞い散るカットで登場。
本来ならもう時間的に羽根が散らかっているはずはないのだが、それでもイメージ
としては納得だ。

映画は全体的にイメージショットというかデジャヴ的なショットが多く、2回見て
「あっ、そういうことか」と思わせるショットが多い。
しかし映画を2回させると言うのは大変なことだ。
根本的に「もう1回見たい」と思わせる魅力がなければ、「2回見れば解る」と言うのは
通用しない。

それは僕にとっては大坂俊介だった。
正直うまいとは言えないが、(ボーっとしているだけのような表情の時もある)
そんなことは関係なしに見せる魅力がある。
美青年大坂(元Jrだけのことはあってスター性は充分だ)見ているだけでも引き込まれる。
これが普通の男が演じると「ただのもてない男の狂気」にしか見えないが、大坂が
演じることによって「ただのもてない男の狂気だけでない」狂気が表現される。

やがて殺人を犯す。そして疑心暗鬼にとらわれていく。
ラストに彼女の部屋で見た情事はあの医者とのものか?それとも後輩との情事なのか?
後輩と彼女の情事はその時間に後輩は交番にいるはずであり、ありえない。
しかし後輩が死に際に「先輩とは知らなくて・・・」と意味深なことを言う。
時折話題になったこの後輩の彼女と言うのは・・・・
いろいろ考え出すと飽きない。

錯乱状態の中彼女を殺し、自分も死ぬ。
そのアップはファーストカットにつながる。

真面目な男が堕ちていく、憧れのような、こうはなりたくないような不思議な感覚に
させる映画。
大坂俊介の存在感が光る映画であり、とにかくよかった。