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金環蝕


監督 山本薩夫
製作 1975年

(詳しい内容はキネ旬データベースで)


昭和37年、与党民政党の総裁選挙が行われ、寺田が僅差で勝利した。
その頃、ダム建設を事業とする日本電源開発では九州の福流川に建設するダム工事の請負業者の入札の準備がはじめられていた。
財部総裁(永井智雄)は青木建設に受注させたがっていたが若松副総裁(神山繁)をはじめとする一派は竹田建設に受注させたがっていた。
それは官房長官(仲代達矢)首相夫人(京マチ子)らの強い意向でもあった。
様々な妨害工作の末、財部総裁はついに任期半ばにして辞任。
無事竹田建設に受注させる事が出来た。
竹田建設は約40億円で出来る工事を45億円で落札し、差額の5億円は総裁選挙の金の穴埋めに使われるのだ。
すべてはうまくいったかに見えたが、政界のマッチポンプこと神谷直吉(三国連太郎)や闇の金融王石原三吉(宇野重吉)の知るところなり、決算委員会で追求される。
だが物証を握っていた業界紙社長(高橋悦史)は痴情のもつれに見せかけて義理の弟(峰岸徹)に殺され、すべてはうやむやにされる。


山本薩夫の代表作とも言える政界百鬼夜行の大絵巻!

タイトルの金環蝕とは日食の時、月の方が小さくて太陽を覆い隠せなかった時、黒い太陽の周りにほんのり金色の輪が出来る状態をいう。
この作品では「周りは金色の栄光に輝いて見えるが、中のほうは真っ黒に腐っている」というテーマの象徴として使われているが誠に言いえて妙。
映画では九州・福流川とされているが、実際は福井県の九頭竜川ダム建設に絡んだ実話だ。
総裁選で争ったのは池田隼人と佐藤栄作、神谷直吉は田中彰二、事件もみ消しに動く幹事長は田中角栄。

出演は仲代達矢、宇野重吉、神山繁、西村晃、永井智雄、高橋悦史、根上淳、高城淳一、三国連太郎、山本学、北村和夫、京マチ子、中村玉緒、中谷一郎、加藤嘉、嵯峨善兵、内藤武敏、峰岸徹、鈴木瑞穂、前田武彦、大滝秀治、早川雄三、矢野宣、吉田義夫、久米明、神田隆。(ふう〜)
文字通り日本の個性派俳優総出演とも言うべきところ。
あと小沢栄太郎がそろえば完璧かも知れない。

登場人物すべてが主役級の見せ場を持ち、演じているのが先に上げた個性派ぞろいだから、飽きる暇がありません。
また出てる役者たちもノリにのってる感じでパワー全開!
(西村晃の接待宴会での鼻の穴にタバコを突っ込んでの踊りを見よ!
宇野重吉の入れ歯をして人相を悪くしての怪演を見よ!)

また神山繁も2号のおっぱいもみながら西村晃に電話したり、三国もキャバレーでホステスにおさわりしまくりのスケベ親父丸出しで政治の話をする。
幹事長は露骨に札束で買収する。
金と女と権力に執着する醜い人間像をこれでもかこれでもかと描き出す。
当然、山本薩夫の演出は技巧に走ることなく、俳優たちの演技合戦をとらえる正面からとらえていく。

公共事業の金の流れというものがこれを見れば一目瞭然、これを見れば政治というものが見えてくる。
この映画に描かれたような高度経済成長、自民党の一党支配の時代はとっくに終ったが政治そのものはおそらく何も変わっていない。

こういう作品を中高生に見せるべきなのだがなあ。
私自身はこの映画の原作を中学1年で読み、映画も見たから刺激が強かった。
田中角栄の逮捕という大事件はこの映画の前だったから、「金と政治」にまつわる汚職劇は多少は知ってはいたが、ここまで詳しくは知らなかった。
公共事業の金の流れというものをはじめて理解した作品だった。

いや私にとって強烈だったのは左に出ているこの映画のポスターが最初だったといったほうが正解だろう。
クリックすると別ウインドウで拡大されますのでよく見ていただきたいですが、暗い森の中で野獣たちが白い全裸の女性に喰らいついてるカットはインパクト抜群!
気持ち悪いような恐いような、しかし見てみたいようなそんな不思議なポスター。
駅に張られたこのポスターを、食い入るように見た憶えがある。

この映画(というかひょっとしたらポスター)はトラウマ(?)になって
今の私の人格に多大な影響を与えたことは確か。

まさしく全国民必見の映画!!!!!!