告訴せず


日時 2007年6月30日
場所 DVD
監督 堀川弘通
製作 昭和50年(1975年)

(詳しくはキネ旬データベースで)


うだつの上らない、いつも女房に怒鳴られている男(青島幸男)がいた。
妻の兄、木谷芳太(渡辺文雄)は衆議院選挙に立候補し、今当落ラインギリギリだった。
この上は実弾しかないと、東京の大臣に頼み込む。
投票日まであと3日。だれがその金を取りに行く?
芳太と妹(樹木希林)は相談し、自分の夫に新幹線でその金3000万円を取りに行かせることに。
男は現金を受け取るとそのまま帰らなかった。
彼はその金で人生を変えることにしたのだった。



松本清張原作、堀川弘通監督のコンビが繰り広げるサスペンス。
派手さはないが、じりじりと迫ってくる。

青島幸男扮する男は名前を変えてとりあえず伊香保温泉に隠れる。
そこで仲居をしている女(江波杏子)と知り合う。
彼には常に木谷芳太やその一派に狙われている恐怖におびえる。

彼が大金を持っていることを偶然知れれてしまい、別件で旅館であった盗難事件についての
調べを受けるうち金の出所を話さざる得なくなる。
しかし選挙資金を持ち逃げしたと話しても、相手の大臣は認めようとしない。
それは選挙の裏金のからくりがばれてしまうのが困るからだ。
「告訴できない」状況にあるのだが、しかし、それで追っ手が許すわけではなく、
常に何かにおびえる男。

そして女に紹介された占いをきっかけにして小豆相場に手をだす。
相場で儲け、女に紹介された占い師の占いを信じ、更なる大勝負へ。
しかし金が出来ると周りのものが疑わしくなってくる。
相場の営業マン(村井国男)と女の中も怪しい。
相場は大当たりし、女の強い希望でラブホテル経営に乗り出す。
そんな開店の日、木谷芳太の名前で大きな花輪が!
一体誰が?!
そして原因不明の火災が起こる!


とにかく青島幸男がいい。
小心者の男が常におびえながら告訴されるはずのない横領に手を染める。
その普通の男ぶりがなんとも言えず、親近感とリアル感をかもし出す。
青島はこの映画の時点ですでに参議院議員経験者だが、そんな青島が選挙資金の裏金を
めぐるサスペンス映画に主演するというキャスティングが最高だ。
もしこの映画の主演が青島幸男でなかったら、僕の評価もかなり違っていたかも知れない。

そして迎える意外なラスト。
DVDの特典の堀川弘通インタビューで監督も失敗した点を指摘しているが、確かに
あそこはキャスティングが違っていればもっと効果的だったと思います。

そういう欠点もありますが、日本のサスペンス映画の傑作のひとつとして記憶にとどめ
られるべき作品。
お薦め!