サブウェイ・パニック


監督 ジョセフ・サージェント
製作 1974年

(詳しくはキネ旬データベースで)

ニューヨークのある日の午後、地下鉄ではいつもの日常が繰り広げられていた。
しかしそんな時、ニューヨークの地下鉄指令センターではちょっとした騒ぎが起こっていた。
ぺラム駅発123号列車がトンネルの中で止まったのだ。
やがて指令センターに連絡が入る。123号列車は武装した4人の男(ロバート・ショー、マーチン・バルサムら)たちに占拠されたというのだ!
彼らの要求は1時間以内に100万ドルを持ってくること。
人質18人の命は?
交通公安局のガーバー警部補(ウォルター・マッソー)と犯人たちの対決が始まる!

面白い!
公開された74年ごろは「ポセイドン・アドベンチャー」「タワーリング・インフェルノ」などのパニック映画全盛のころで、この映画もパニック映画としてセールスしたためにこんな邦題になってしまった。
原題は「THE TAKING OF PELHAM 123」。
後半地下鉄が暴走するパニック的要素はあるものの、映画の大半は犯人とウォルターマッソーとの駆け引きにある。
犯人が要求を出してから金を持ってこさせるまでの時間はたった1時間。
この短いタイムリミットが「時間がないんだ!」のせりふを皆が繰り返し、サスペンスを盛りあげる。

しかしこの映画の面白さはそんな息詰まるサスペンスだけではない。
前編にわたって登場人物全員がい続ける皮肉めいたジョーク。
(この点、字幕版より日本語吹き替え版の方がジョークの面白さはうまく伝わってくる。吹き替え版で見るのもこの映画は一つの楽しみ方だ)

そして脇役にいたるまで印象に残るキャラクター。
英語がわからないと思われるNYの地下鉄を見学にきた東京の地下鉄の幹部、支持率最低で風邪で高熱にうなされている市長、口の悪いグランドセントラル駅の運行主任、事件の間中ずっと寝ているある中の女、くしゃみをし続ける犯人の一人。
(くしゃみに対して「お大事に」とウォルター・マッソーが答えるが、これが重要な伏線だ)
そして(ここでは書けないが)ユニークなラストカット。

犯人側は単なる金銭目的の男たちとして描かれ思想的な背景はない。
こういったテロリストものだとどうしてもイデオロギーが絡みがちだがサスペンスとして楽しみきれない時があるが、この映画の場合、そんな必要はない。
素直に楽しめる。
乗っ取りサスペンスものとして1級作品。

この映画をはじめてみたとき、「タワーリング・インフェルノ」は日本では作れないが「サブウエイ・パニック」なら日本でも出来るんじゃないかと思ったことがある。
でも日本人が作ると「新幹線大爆破」のような悲壮感漂う作品になってしまう。
やっぱり国民性の違いなのだろうか?