連合艦隊


監督 松林宗恵
製作 昭和56年

(詳しくはキネ旬データベースで)

三国同盟調印、真珠湾攻撃から沖縄への大和特攻までの太平洋戦争における日本海軍の攻防を描くオールスター戦争大作!

本来なら真珠湾攻撃、ミッドウエイ海戦だけでも一本の映画になってしまうだけの素材を、大作とはいえ2時間半にまとめるのは至難の業。
そのために本当は3部作7時間あった映画の短縮版総集編であるかのような大雑把な感じもするが、それはいたし方あるまい。

しかも真珠湾攻撃やミッドウエイは何度も映画化されているので、映画の素材として古さがあるのもまた事実。
この映画の戦争映画としての面白さは、山本長官死後のレイテ作戦、そして大和沖縄特攻作戦だろう。

特にレイテ作戦は大和のフィリピン突入を援護するため、日本海軍は最後に生き残った空母瑞鶴をハルゼー率いる機動部隊をひきつける為のおとりとする。
小沢長官(丹波哲郎)のジリジリとした「待ち」の作戦は果たして成功するか?
そして肝心の大和以下の戦艦群はフィリピンを奪回する事が出来るのか?
という一大作戦が繰り広げられ、この攻防には思わず身を乗り出してしまう。

実はハルゼーと小沢の駆け引きがそれほどあるでなし、話だけ聞くとそれほど面白くない戦いなのだが、松林演出と丹波哲郎の剛胆さ、安部徹の悪役長官ぶり、長門裕之の整備班長と少年飛行兵との交流のドラマも交え、見事に盛り上がるのだ。
(特に長門裕之のシーンは実に泣かせる。こういった泣かせの演出は松林宗恵の得意とするところだ)
日本映画史上の名戦闘シーンと知っても過言ではあるまい。

また大和の沖縄特攻では面子だけの為の戦いとなり、戦後の時代から見ると悲惨さばかりが目立つ。
この大和沖縄特攻も財津一郎の爆発寸前の火薬庫注水シーンなどがスペクタクルシーンとして見せ場をもつ。

もちろんこの映画はそういったスペクタクルな戦争映画の魅力もあるがそれだけではない、悲劇のエピソードも併せ持つ。
特に二人の子をなくす父親を森繁久弥が演じ、彼の80年代の代表作ともいえる魅力を放つ。
ラスト、海を見ながらため息をつきながら諦めるかのように首を横にふる姿は忘れがたい。

それだけではない。山本(小林桂樹)と小沢の二人の長官、宇垣(高橋幸治)と草加(三橋達也)の二人の参謀、永島敏行と丹波義隆の古参航空パイロット、金田賢一と中井貴一の若き士官、それぞれの対立や同志的共感が歴史の動きにあわせてドラマを作る。

この映画は公開時、「好戦的」と批判された。
しかしその批判は私には納得できない。
海軍という組織を郷愁のためか肯定的に描いているとか、太平洋戦争における日本軍の加害者としての側面を描いておらず、あたかも日本だけが被害を受けたような描き方をしてるということが批判の根拠らしい。

その意見も一概に否定しないが、しかし少なくとも私はこの映画見てもう一度戦争がしたいとは思わなかった。
初めて見てから20年以上経つし、何度も見たがそのことは変わらない。

だから好戦的な映画にはどうしても思えない。

東宝戦争映画の(よくも悪くも)集大成がここにある。



補足
真珠湾攻撃シーン(赤城からの発艦カット、真珠湾の爆撃カットなど)は劇場公開版では「トラ・トラ・トラ!」からの流用だったが、現在発売のDVDでは「太平洋の嵐」からの流用となっている。
これはDVDからではなく、レーザーディスク版の時からすでにそうだった。
「連合艦隊」製作時の81年はまだビデオデッキが一般的でなく、ましてや映画をビデオにして発売する事は考えられていなかった。
このため20世紀FOXからのフィルム借用時の契約に「トラ・トラ・トラ!」のフィルムの「連合艦隊」における使用条件は「劇場公開及びテレビ放映」に限定されていた為と推定される。