2014年12月

   
ブリット ワイルドバンチ バンクーバーの朝日
ガガーリン
世界を変えた108分
探偵物語 時をかける少女 セーラー服と機関銃
男街イリュージョン THE FETIST 熱い吐息 欲情ヒッチハイク
求めた人妻
新人女子社員
淫乱(秘)検診
妹の匂い
よろめきの爆乳
零戦燃ゆ アオハライド 農家の嫁
あなたに逢いたくて
超能力研究部の3人 禁忌 寄生獣 フューリー

ブリット


日時 2014年12月30日〜
場所 DVD
監督 ピーター・イエーツ
製作 昭和43年(1968年)


サンフランシスコ警察の警部補ブリット(スティーブ・マックイーン)は上院議員のチャルマーズ(ロバート・ヴォーン)より、ジョニー・ロスという男の警備を依頼される。月曜日の公聴会で証人として立ってもらう予定で、犯罪撲滅運動に熱心のチャルマーズにとってはシンジケートをつぶすいいきっかけになるはずだ。
ロスをホテルに入れ、交代で警備に当たるブリットや仲間の刑事たち。ブリットがその晩恋人(ジャクリーン・ビセット)に会っている間に2人組の男によってホテルが襲撃された。護衛の刑事もロスも重傷。
病院には例の2人組がまた襲撃にやってきた。追いかけるブリットだが逃がしてしまう。
しかしなぜロスがいるホテルが敵に分かったのか?
チャルマーズから漏れたのだろうか?
やがてロスは死亡。敵を捕まえるためにブリットは医者にロスの死はしばらく内緒にしてもらうよう頼む。


刑事映画の名作の一つ、「ブリット」。
名前は聞いていたが観るのは実は初めて。この映画の成功が刑事映画のブームになって「フレンチコネクション」「ダーティハリー」を生んだと言っていいのかな。

最初ホテルでロスが殺されるのだが、この殺されるまでにもうちょっとアクションが欲しかった。
(逃げて追われて、そして逃げて、やっぱり・・・みたいな)

有名なサンフランシスコの坂道を効果的に扱ったカーアクション!
ロスを殺しにきた(実はもう死んでいる)殺し屋2人組を追いかけてのアクションなのだが、最後の最後には追いつめてガソリンスタンドに突っ込ませて爆発!
これには驚いた。爆発までさせちゃうからなあ。

そして殺されたロスは実はロスの身代わりで、ロスではなかった。殺し屋を雇ったのがロスだったのだ。
ロスが連絡を取っていた女性が実は身代わりとなった男の妻。彼女が持っていた航空券から海外への高飛びを考えていると知ったブリットは空港を見張る。

見つかったロスは空港の滑走路へ。
次々と行き交う巨大旅客機。
飛行機というやつはそれだけ観るとそれほどの破壊力を感じないが、こうして人間がうろちょろすると実に怖い。
(ひょっとして「新幹線大爆破」のラストはこの「ブリット」の影響か?)

結局空港ロビーで追いつめロスを射殺してしまう。
正直、ロバート・ヴォーンの上院議員が権力を振りかざすいやな奴なのだが、私はてっきり彼が黒幕で「ロスを証人として出廷させると言っておびき出し殺してしまうのが目的」と疑っていた。
そういう訳ではなかった。

あとジャクリーン・ビセット(この頃はほんと美人だねえ。ピーター・イエーツとはこの後「ザ・ディープ」という映画で再び仕事をする。「ザ・ディープ」は「ジョーズ」と同じピーター・ベンチリー原作ということで前宣伝が大きかったが期待はずれだった。でも再見はしてみたい)がブリットの彼女役で登場。
二人でいるときに連絡があって現場に駆けつけ「ここで待ってろ」と言われるのだが、待てずに殺人現場に行ってしまいショックを受け、「あなたはあんなものを見て平気でいられるの?」と責める。
まあそういいたくなる気持ちは分かるが、そういう女はちょと重たい。

後の刑事映画に比べるとやや地味な感じはあるが、それでも十分に面白かった。








ワイルドバンチ


日時 2014年12月30日
場所 DVD
監督 サム・ペキンパー
製作 昭和44年(1969年)


メキシコ国境に近い鉄道の駅、ここに数名の兵隊がやってきた。彼らはこれから鉄道で輸送する銀貨を強奪しようとやってきた。しかしそれは鉄道会社の罠で、彼らを待ち伏せしていた鉄道会社が雇ったお尋ね者の集団と銃撃戦になる。逃げる強盗たち。
兵隊だったのはパイク(ウィリアム・ホールデン)、ダッチ(アーネスト・ボーグナイン)、メキシコ人のエンジェル(ジェイム・サンチェス)たちだ。彼らを襲ったのは元はパイクの仲間だったデーク(ロバート・ライアン)たちだった。
デークたちはパイクの追跡を開始する。
メキシコに入りエンジェルの故郷の村にやってきたパイクたち。だがメキシコは今は無法地帯で野盗や自分たちを守ってくれるはずの政府軍のマパッチ将軍に苦しめられていた。
別の村でエンジェルの婚約者だった女がマパッチの女になっているのと遭遇。逆上したエンジェルは女を殺害。
それがきっかけで度胸を買われて報酬1万ドルを条件にアメリカ軍が輸送する銃器の強奪を持ちかけられる。
報酬が目当てでパイクたちは引き受ける。
だが情報を聞きつけたデークたちもその列車に乗り込み、パイクたちを待ち伏せするのだが。


西部劇の名作の誉れ高い「ワイルドバンチ」。噂には聞いていたが見るのは今回が初めて。
確かに面白いことは面白いのだが、根が西部劇を受け付けない性質なので、それほど燃えない。

パイクの仲間の一人、メキシコ人のエンジェルがいい。
自分の婚約者と再会を期待して村に帰ったらその女は敵のマパッチ将軍と出ていったという。
女と再会してみればマパッチの膝の上で酒を飲んでいる。問いつめてみれば「あんな村こっちから出ていったのよ!」ぶち切れたエンジェルは女を撃ち殺す。
ここ、カタルシスがあってよかった。

そして軍用列車襲撃となるのだが、油断しきっている相手の裏をかいて給水所で列車に乗り込み静かに列車を切り離す。そして荷物だけまんまと奪う。
途中で馬車に荷物を積み替え、追っ手もくるのだが事前に橋にダイナマイトを仕掛けて起き、自分たちが渡り始めたところで導火線に火をつける。ところが途中で橋の一部が折れて車輪がそこにはまって立ち往生。
あわや!となるがなんとか脱出。
追っ手のデークたちが橋の上からパイクたちを撃ってるところで橋は爆発!
ここもいいですねえ。

最後はマパッチと無事取引を終えて金は手に入ったが、エンジェルだけはマパッチに捕まってしまう。
そこでパイクたちが取り戻すべく襲撃。
ここがもう重機関銃を撃ちまくる圧巻のガンアクション。
なんだかんだ言ってもそれなりに楽しんでるじゃないか、俺。

でも結局パイクを追っていたデークがその村にやってきたときはすでにパイクは死んでいた。
「えっ?そこ対決シーンないの?」と思ったが、それは西部劇としてそのネタはやりすぎていてわざと避けたかも知れないと見終わってちょっと立つ今は思う。
デークもパイクを認めているいい奴だったしね。
パイクが死んでると知って地面にへたり込むデークがいい。

2時間25分はちょっと長い気がするが、それなりに楽しんだ。







バンクーバーの朝日


日時 2014年12月28日17:40〜
場所 新宿ピカデリー・シアター8
監督 石井裕也


1938年、カナダ・バンクーバー。明治時代から日本人は移民し日本人街を形成していた。その中で野球チーム・バンクーバー朝日が結成され、いつしかカナダ人チームのリーグに参加していた。しかし連戦連敗。
支那事変の勃発から今まで以上に日本人の排斥が始まっていた。
そんな中、キャプテンのレジー笠原(妻夫木聡)は日本人の期待に応えるために何とか勝とうとする。体格のいい白人にはまともにやっても勝てない。そこでバントや盗塁を駆使した頭脳野球を始める。


「舟を編む」「ぼくたちの家族」など一定のレベルの映画を連作している石井裕也監督の最新作。フジテレビ製作の感動作だ。

予想通りの感動作である。野球映画だと思っていたので(フジテレビの宣伝番組では妻夫木聡以外の選手キャストは野球経験者、と盛んに言っていたので)思ったより野球シーンは少ない。もっと「がんばれ!ベアーズ」みたいな感じかと思っていたので。

「移民の人たちは苦労したが、やがて野球を通じて白人社会からも認められかけるが、真珠湾攻撃に始まる太平洋戦争によって強制移住させられる歴史の悲劇」みたいなドラマ。
バンクーバー朝日の勝利には素直に感動する。

それより何より終始感動したのは美術セットの素晴らしさだ。
バンクーバーの当時の町並みを再現したオープンセット。それだけではなく当時の車(ホントは違うのかも知れないが、少なくとも21世紀の日本人が見ても違和感はない)や外国人エキストラの人数の多さ、衣装の素晴らしさなどなど「金がかかってるなあ」というのがヒシヒシと伝わってくる。
そこに感動すると同時に弱冠30歳にしてこんな大作映画を任せられる石井裕也に嫉妬する(って私が嫉妬することはないのだが)

難点を言えば脚本が今一つ。
主な選手がレジーのほかにロイ永西(亀梨和也)、ケイ北本(勝地涼)、トム三宅(上地雄輔)、フランク野島(池松壮亮)がいるんだが、彼ら4人の活躍がやや少ない。
話がレジーに偏りすぎている感もあるので、せっかくこれだけのキャストを集めたのだから、彼らにもうちょっと見せ場がほしかった。

特にフランク野島の池松は試合のシーンや試合後の店のシーンなどで写ってはいるのだがなんか存在感が乏しい。
やっと見せ場がきたかと思ったら、それはレジーに日本に帰るというシーンだった。その中で「帰っても移民の子って言われて苦労するかもなあ」「俺たちカナダでも日本でも移民の子って言われるなあ。白人に言われるのと日本人に言われるのではどっちがつらいだろう」と言うのはこの映画のテーマに関わる部分で印象に残る活躍だ。

その後、中国戦線を伝えるニュース映画にフランクがちらっと写っているというオチが付く。
ひょっとしたら自分から軍隊に志願したのかも知れない。

映画を見てる最中にずっと考えていたことがある。
それはこの映画を見てると、白人カナダ人は排他的だと思えてしまう。しかしこのカナダ人を日本人に置き換えると果たして今の日本人は同じことをしてないかということだ。
日本にも住んでいる外国人はたくさんいる。
今の日本人としては当時のカナダ人のようなことはしたくない、そんな気にもなった。

映画の製作者たちがそういう意図があったか分からない。
しかしかつて「嫌韓デモ」を受けたフジテレビである。
もし「嫌韓デモ」に対する反論という意味がフジテレビにあったなら、フジテレビも見直したいと思う。









ガガーリン 世界を変えた108分


日時 2014年12月27日13:40〜
場所 シネマカリテ2
監督 パヴェル・パルホメンコ


1961年4月12日、ソ連の宇宙船ボストークに乗り込むためユーリー・ガガーリン中尉は発射場へと向かう。
前の晩はよく眠れなかった。宇宙ロケット組立のスタッフは前夜も慎重に最終組立を行っていた。
やがてボストークは発射。ガガーリンは地球の大気圏外に到達し成功した。しかし無事帰還することがさらに重要なことだった。
ガガーリンは貧しい農家の出身で工業高校に入学後、空軍のパイロットとなる。
3000人の中から20人に絞られた宇宙飛行士訓練生たち。しかしこの中で最初に宇宙に行けるのはたったた一人だ。


人類初の有人宇宙飛行の宇宙飛行士・ユーリー・ガガーリン少佐を描いたロシア映画。
この映画、ポスターイメージなどからハリウッド映画かと思っていたら、映画のタイトルやクレジットはキリル文字。ロシア映画だった。

で、結論から言うとあまり面白くない。
ロシア映画だし今年はガガーリン生誕80周年だそうでその記念映画。だからあまり負の側面は描かれないのか、結果的に大成功した訳だからハラハラのサスペンスがない。

「こうなるまでに何度か失敗の危機があった!」というサスペンスもなく、割と淡々と進む。
最後の方で「高度が100km高すぎます。このままでは大気圏の再突入まで時間がかかりすぎて数ヶ月かかるおそれがあります。逆噴射がうまく行けばいいのですが」とかなりやばい状況なのだが、割と難なく成功してしまう。

オリジナル脚本だったら、自動操縦の逆噴射が失敗して手動で失敗しそうになりながらも何とか成功!となるべきなのだが、実話の映画化だからそんな脚色は出来ないか。
でももう少しジラすなりの演出はあってもいいと思う。

ボストークについていた窓って直径20cmぐらい(CDの大きさぐらいか)でこれでは外をじっくり見たりすることは難しかったんだろうなあ。
パンフレットにもちらっと書いてあったけど、有名なせりふ「地球は青かった」は映画には出てこない。
これって作られた台詞だったんだろうか?
有名な台詞とかフレーズってマスコミで引用されていくうちに作られてしまうことも少なくないから、これもそうなのかも知れない。

地球への帰還シーン、アポロなどは宇宙船ごと海に着水してそれを空母が救助に向かうのでそういうイメージだったのだが、空中でカプセルから排出されてガガーリンと飛行席だけで出てくる。そして席からも離れて最後はパラシュートのみで地上に降り立った。
へーこういう形で帰ってきてたんだ。
そういう点では勉強になりました。

でも帰還後のガガーリンは人生が一変して英雄扱いで精神的にもおかしくなったとか。ソ連としても冷戦構造の中、ソ連の力を各国に見せつける広告塔にしたかったろうし。
(だからあえてエリートではなく農村出身の彼が選ばれた様子を感じた)
その辺の負の側面も描いてほしかった。

あとボストークの内部などのメカ構造ね。ここももう少し描いてほしかった。







探偵物語


日時 2014年12月23日19:00〜
場所 新宿ミラノ座
監督 根岸吉太郎
製作 昭和58年(1983年)


女子大生の新井直美はあと1週間で父の待つアメリカへ発つ身だった。サークルの先輩の永井(北詰友樹)に挨拶に行ったら「海を見に行こう」とバイクで海へ。二人をつけていく男、辻山(松田優作)がいるのを直美は気づかない。
いつしか二人はホテルにいたが、辻山は「直美の叔父だ」と言って部屋に乱入、永井を追い返した。実は辻山は直美のボディガードを依頼され彼女をつけていたのだった。
永井が実は他に女がいることを察して辻山は直美を守ったのだ。
そんな事情を知らない直美は露骨に不快感を示したが、辻山は「仕事だから」と翌日も直美と行動を共にする。
しかし永井の住所を調べてくれたりするうちに許すようになる。
家まで直美を送って帰ろうとする辻山だったが、逆に今度は辻山を尾行する直美。辻山は別れた妻、幸子(秋山リサ)に会っていた。彼女はナイトクラブの歌手だったが、そこで直美は永井の友人の正子とあう。彼女はこの店でバニーガールのバイトをしているのだ。
幸子はその店のオーナーでヤクザの息子和也と関係があった。その晩ホテルに行った二人だったが、朝になったら和也はシャワールームで殺されていた。
警察も和也の父(藤田進)も幸子を犯人と思い追っていた。その頃幸子は辻山を訪ねていた。そこへ直美もやってくる。


ストーリー紹介がやたら長くなった。
この辺で40分ぐらい。1時間50分の映画だが、本題の殺しが起こるのが30分過ぎてからだ。

松田優作主演のテレビ「探偵物語」とは同題だが内容は全く関係なし。ややこしいなあ。
元々赤川次郎の短編小説を映画用に長編化し出版されたものが原作とされていると記憶する。
その短編は映画製作前に偶然にも読んでいたと思う。内容はまったく覚えていないけど。

そして映画の方は薬師丸と松田優作の奇妙なコンビが真犯人の追求を始める。
実は被害者の妻(中村晃子)と組の幹部(財津一郎)は出来ていて、幹部が殺したのかと疑われたが違っていた。
直美は辻山と幸子のセックスを聞いてしまい、いたたまれなくなってクラブ(当時はディスコか)に行き、そこで知り合った男と例の殺人事件のあったホテルへ。
そのホテルを調べるうちにシャワー室の換気口が他の部屋につながっていると解り、それを伝って犯人は出入りしたんだろうと推理。
そしてそこで永井とペアで買ったペンダントを発見。永井はペンダントをつきあっている彼女の正子に渡していた。
犯人は正子だったという次第。

まあトリックは大したことなかったけど、犯人はちょっと意外性があった。
永井役の北詰友樹は当時のイケメン。
だが今と違ってイケメンがあふれていなかったので(当時若手の人気俳優っていなかった。人気があったのはたのきんやシブがき隊)珍しくイケメンだった。
ポール・シュレーダーの「MISHIMA」にも三島に可愛がられた美青年役で出ていた。

今日3本の角川アイドル映画を観たわけだが、監督は相米慎二、大林宣彦、根岸吉太郎と当時の新人監督。
若手監督を大いに起用し、その実績作りに貢献していたと思う。
今のテレビ局映画と違って角川映画は監督を育てていたんだなあと実感した。
その後は森田芳光も「メインテーマ」を撮りましたしね。


時をかける少女


日時 2014年12月23日15:00〜
場所 新宿ミラノ座
監督 大林宣彦
製作 昭和53年(1983年)


高校生の芳山和子(原田知世)は冬のスキー合宿で幼なじみの深町(高柳良一)と堀川(尾美としのり)と夜の星を見て過ごした。しかしその晩、深町のスキーがなくなっていた。
春、3人は進級し高校2年生になった。土曜日、3人は理科室の掃除をする。最後に鍵を閉めるために一人理科室に残った和子だが、中から物音がしたので入ってみた。
しかし誰もいない。そのときラベンダーの香りがして和子は気を失ってしまう。堀川や深町に助けられる和子。
いつもの月曜日。漢文の授業で先生(岸部一徳)に指されるが和子は答えることが出来なかった。その晩、地震があって堀川の家が小火になった。
あけて火曜日、のはずだが、みんな今日は月曜日だという。しかも授業は昨日と同じ。弓道部の活動も同じ。
いったいどういうことなのだ?


この映画も封切りで観ている。調べてみたら「探偵物語」と同時上映だったようだ。はて「セーラー服と機関銃」は何と上映されていたのだろう?

観たことは覚えているし、主題歌も覚えている。大体歌える。薬師丸と原田知世なら原田知世の方が好きだった。
でも映画はワンカットも覚えていない。
今回見直して納得した。
まるで面白くないのである。

「時をかける少女」というぐらいだからタイムトラベルを主題にしたSFなはず。
ところがSF的な危機、というか冒険がまるでなし。

別に世界滅亡を原田知世が救うとかそこまでスケールを大きくする必要もないと思うが、誰かが事故で死んでしまうのを救えるか?ぐらいのサスペンスは欲しい。
一応尾美としのりが屋根から落ちてくる瓦にあたりそうになるというのはあるけど、それを防ぐために奔走する話ではない。

月曜日が来てまた月曜日が来る、という不思議な体験を「あれ?どういうことだろう?」と友達の深町に相談に行く、というレベル。
タイムトラベルものにありがちな「過去を変えることは出来るか?」からくるサスペンスはない。

深町は実は未来人でスキー合宿の時からこの世界にやってきただけという。
子供の頃にひな祭りの時に遊んでいたときに鏡が倒れて手を切った時一緒にいたのは深町だったという記憶も実は作られた記憶だったというオチ。
その時に出来た相手の傷は深町の手にはなく、堀川の方にあったのだ。

深町はこの現代に未来にはなくなった植物の採集にきただけだったのだ。そして和子の記憶を消して未来に帰っていく。
そういう話。

エンディングのクレジットの時、NGシーンやら今まで映画で登場したシーンと同じアングルで原田知世が主題歌を歌うサービス付き。映画の撮影の途中途中で主題歌を歌うカットも撮っていったのだろう。
このサービスは楽しかった。

でも映画全体としては私には退屈で、やっぱり大林宣彦とは合わないな、と実感した次第。






セーラー服と機関銃


日時 2014年12月23日11:00〜
場所 新宿ミラノ座
監督 相米慎二
製作 昭和56年(1981年)


高校生星泉(薬師丸ひろ子)は父と二人暮らしだったが、その父も交通事故で死んだ。
葬式の後、佐久間(渡瀬恒彦)というヤクザに連れて行かれる。泉の父は老舗ヤクザの目高組の組長の甥だった。先日亡くなった組長は跡目は甥に、甥がダメならその血筋にというのが遺言だという。佐久間は泉に目高組の組長にと頼んだが、泉は断った。「じゃあ解散だ。その前の松ノ木組に殴り込む」と佐久間たち4人の組員はいきり立つ。
「殴り込みは許しません!」泉は言い放ち、目高組4代目を引き受けた。
その頃、泉の前に真由美という女性が現れた。父に「何かあったら娘を頼む」と言われていたという。
しかし黒木(柄本明)という刑事が訪ねてきたその日、真由美はいなくなり部屋は荒らされていた。
黒木の話では空港で交通事故にあった父は突き飛ばされた疑いがあるという。しかも麻薬の密輸に絡んでいたらしい。


この12月31日で閉館となる新宿ミラノ座。近年はミラノ1という名前だったが、閉館に際しミラノ座に名前を戻した。そのサヨナラ興行の1本。入れ替え制1本500円だがフリーパス3000円のチケットもある。6回行くとは思わなかったが、記念だと思ってフリーパス券を買った。

映画の方だが封切りの時にも観ている。たしかこの地下の新宿東急での上映だったと思うが、動員がいいので途中からミラノ座での上映に切り替わったのかも知れない。
相米慎二はまだ新進気鋭の監督だが、この映画、実は当時からいい印象がない。

ワンシーンワンカットなのだよ。
シーンが短いことが多いので、それほど苦になるようなことはなかったが(これが「ションベンライダー」の頃になると苦痛になる)、それにしても引きの絵が多くなる。
ワンシーンワンカットで長い芝居をさせるので、絵はどうしても役者のフルショットが多く、はっきり言って顔が見えない。

一応薬師丸ひろ子のアイドル映画なんだからさあ。
薬師丸のアップを多用して薬師丸の顔を見せなくてどうするんだよ。
特に事件がすべて終わって組を解散するにあたり、組のあったビルの屋上で組員の墓を燃やすシーンがある。ここなどはロングの俯瞰で完全に表情など解らない。
これをする勇気、というか大胆さを評価する人もいるようだが、私はどうも・・・・

話の方は結局、泉の父は麻薬の密輸をした黒木によって空港で荷物に麻薬を紛れ込まされた、その麻薬を取り返そうと黒木は近づいてきた、麻薬の黒幕は三国連太郎扮する元締め。真由美は偶然にもその娘だったが、泉の父とは本当に男女の仲だったらしい。
麻薬は前々から目高組と対立していた組の組長(北村和夫)が横取りしてしまう。
それを許せなくて泉たちは北村和夫の組に殴り込みをかけ、機関銃で麻薬が入ったローションの瓶を撃ちまくる、そして「カイカ〜ン」と泉が言う。
ここがクライマックス。

ラストシーンは伊勢丹前の新宿通り沿いで子供相手に遊んでいるうちに空鉄砲で機関銃を撃つまねをして地下鉄の風圧でマリリン・モンローばりにスカートがめくりあがるカットはよく覚えていた。

あとは佐藤允の敵対する親分の元に行き、クレーンでつるされセメントのプールの中に落とされるシーンでは薬師丸ひろ子はなかなかの役者根性。

そうそうラストで北村和夫のところに泉と佐久間ともう一人の組員(大門正明)が殴り込むところで「ひょっとしてあなたクルージング?」というシーンがある。
そういえば当時ゲイのことを映画「クルージング」からとってクルージングとも言ったなあ。
今では完全に死語だな。






男街イリュージョン


日時 2014年12月21日17:45〜
場所 光音座1
監督 関根和美
製作 大蔵映画


キョウイチは西部劇のような町並みのところで大男と赤毛の小男の二人組に殺されそうになる。しかしそれは夢。夢から覚めて冷蔵庫から発泡酒を出すとその指にはさっきの町の地面の砂がついていた。そして例の二人組にまた襲われる。しかしそれも夢。起きたら恋人リョウが隣にいた。
キョウイチの仕事はヤクの売人、しかしせっかく売りさばいてもヤクザの吉田に売り上げは全部持ってかれていた。
腹を立てたキョウイチは吉田のマンションに行ってみるが、追い返される。そこへ例の二人組が現れ、吉田は殺される。
翌日、組は大騒ぎ。キョウイチは組長の女のボディガードを任されるが、この女が鼻持ちならない。


関根和美監督作品。
はっきり言って受け入れられない。
まず主人公の職業が「ヤクの売人」というのがダメダメ。
完全に屑じゃん。
ヤクザ映画でもない限り主人公がヤクの売人、っていうのはないだろう。それにヤクザ映画でも「ばくちはいいがヤクはだめ」というのが主人公側のヤクザで、悪いヤクザがヤクを扱う、っていうのが基本だろ。

その彼氏が売り専ボーイ。といってもどこかの店に所属してる訳でわけではないらしい。「ヤクの売人の彼女っていったら売春婦だろ。だからゲイ映画なら売り専ボーイ」という何の知恵もなく作られた設定にしか思えない。

話の方は親分の女が威張ってばかりで、ついに例の二人組が現れて惨殺される。
キョウイチも彼氏も捕まって拷問を受けそうになった所で例の二人組またまた登場。そして居並ぶヤクザたちを次々と惨殺していく。

結局、二人組はキョウイチの生み出した幻想世界の産物で、彼が殺意を持つと代わりに殺してくれるらしいのだが、なら何で売り専の恋人も殺してしまうのだろう?
最後は最初のウエスタン村で撮影したような幻想の世界に二人組と主人公も入っていく。
最後はキョウイチも殺されたのかな。

二人組は大男と赤毛のチビなのだが、赤毛の方など「チャイルドプレイ」に登場したチャッキーを参考にしてるのだろうか?

とにかく血しぶきばかりの残酷映画で、そういうのは苦手な私としては不快感ばかり。
さらに今日観た「THE FETIST」も殺人、殺人で不快感ばかりが残る。
以前友人から「ピンク映画では血は御法度」と聞いたことがあって、「殺人事件が絡むような映画なら多少の血は仕方ないと思うけど」と思ったが、両方とも人間を切り裂く映画だとさすがにげんなりする。
これが最後のフィルム上映作品か。

本日で光音座は1、2ともにフィルム上映は終了。
明日から改装しデジタル上映となる。
ゲイ映画なんて旧作ばかりだけど、デジタル素材はどうするんだろう?
DVD化された作品ばかりになるんだろうか?
期待と不安でいっぱいである。






THE FETIST 熱い吐息


日時 2014年12月21日16:39〜
場所 光音座1
監督 佐藤寿保
製作 1998年ENK


画家志望の青年、カズヤのパトロン(田中要次)は匂いフェチでカズヤの腋や体の匂いに執着していた。
そんな時、町を走る少年カズオと出会う。カズオは今は姉夫婦と暮らしていたが、姉と義兄は毎夜激しいSMプレイを行っていた。潔癖性のカズオは二人に嫌悪感を持っていた。
カズヤはカズオに絵のモデルになってくれるよう頼む。
最初は断ったカズオだったが、カズヤの必死の頼みに引き受ける。カズオは最近ナイフを持ち歩いていた。カズオのナイフの刃を握り、手が血まみれになってカズヤは頼んだのだ。
そして最近、この界隈で通り魔による殺人事件が相次いでいた。それを街に仕掛けたマイクから盗聴をしている男がいる。


佐藤寿保作品。
正直、この監督の作品はイヤである。血まみれになって気持ち悪いのだ。それは最近作の「華魂」でも同じで、とにかく人を刺して血まみれになる。正直言って悪趣味だなあと思う。ゲイ映画の「狂った舞踏会」も最後は腕を切り落とす話で、私はついていけない。

この作品もそう。
田中要次が匂いフェチなのはその程度は許す。
カズヤも脇毛に対するフェチが移ったのか、カズオにモデルになってもらった時も上半身裸で右腕を高くあげ、脇毛がはっきり見えるポーズをとらせる。
また彼の隣に鏡を置き、画家の方からは見えない角度も鏡に写し全身を1枚の絵に納めようとする。
(全体的に鏡に写ったカットや、被写体がめがねのレンズに写ったカットなど凝ったカットも多い)

カズヤとカズオは体の関係となる。
そして姉夫婦に嫌悪感を感じていたカズオはついに姉夫婦を刺し殺す。
それだけではない、最近の通り魔はすべてカズオだったのだ。

そして最後はカズヤのパトロンも刺し、二人で逃げようとする。
そこで今まで時々登場していた盗聴魔が二人の前に現れ、二人を刺し殺す。
血と血がだんだん近づいて行き、最後は一つになるというのはちょっとベタだなあ、という気がする。

それにしても後半は殺人殺人の連続で、正直趣味が悪いとしかいいようがなく、引く。

佐藤寿保もあんまり好きになれない。






欲情ヒッチハイク 求めた人妻


日時 2014年12月21日15:31〜
場所 光音座2
監督 竹洞哲也
製作 平成17年(2005年)


ゆきみはヒッチハイク中。乗せてもらった運転手には「そのつもりだろ?」と道ばたの車の中で体を求められる。
それに懲りて今度は女の子が運転する車にしてみた。
女の子はリョウコ。これから長野に行くという。
長野は実はゆきみの実家のある土地で、元彼のシズオがやっている旅館に行ってみた。
突然の来訪に驚くシズオ。
そこへさっき分かれたリョウコが彼氏のテッチャンとやってきた。
リョウコは結婚を希望しているが、テッチャンはまだ踏ん切りがつかないらしい。


ピンク映画3本目。
テッチャンは画家志望だが、まだリョウコを養っていける自信がなく、まだ踏ん切りがつかない。
それを知ったシズオがテッチャンにアドバイスをしてテッチャンは二人でやっていくことを決意。

シズオはかつてゆきみと結婚を考えていたが東京へ出たいゆきみとの関係に何となく踏ん切りがつかずに、そのままゆきみはダンサーと東京へ行ったしまった過去があったのだ。
それでシズオはかつての自分とテッチャンを重ねてしまいアドバイスをした次第。

でも結局自分の方はゆきみはやっぱりこの旅館を出ていく。
「家出っていつ帰るの?」というノー天気な夫からのメールで家に帰る決意をするという結末。

あんまり濡れ場が入れられない話なので、冒頭にシズオが起きてこないお客さんの部屋に入ると葉月蛍のお客さんに「死んだ夫の代わりに私を抱いて!」と位牌片手に迫られる。その位牌にちょっと手を合わせてから濡れ場が始まるというちょっとした仕草が面白かった。









新人女子社員 淫乱(秘)検診


日時 2014年12月21日14:24〜
場所 光音座2
監督 池島ゆたか
製作 平成5年(1993年)


サンライズ製薬の新入社員あゆみは会社にちょっと嫌気がさしていた。この会社、避妊薬の研究として女子社員の体を観察したり異物感のないコンドームを作って女子社員の体で実験していた。あゆみの恋人スエナガ(なかみつせいじ)もプライベートのセックスでも仕事が頭から離れないらしい。
しかしこの会社もやっと画期的な避妊薬を開発した。ヴァギナコートと名付けられたそれは女性にスプレーするだけで避妊効果があるという。
だがライバルのミヤコ製薬もこの情報を嗅ぎつけ、社長(池島ゆたか)の愛人がスパイとして潜入する。
スパイは立ち聞きしたり、いろいろ探るのだがなかなかうまく行かない。
あゆみはヴァギナコートのテレビCMに出演する。


池島ゆたか監督作品。
避妊薬の開発のために女子社員を裸にしてあれこれする、というピンク映画らしいべたな展開。
でもまあこういうピンク映画らしい設定も安心感があって楽しめる。

発売した「ヴァギナコート」を新宿駅東口で配るシーンがあるのだが、今はなくなった新宿東口の映画看板群に「ゴジラVSモスラ」がある。だからその頃に撮影されたのだと解る。

もう一人あゆみの同僚でブスな子がいるのだが、その子がテレクラで知り合った人と会ってみたらすぐに断られ、その後同じように部屋に来てもらった人には部屋を暗くして顔が見えないようにしていたが、顔を見られてしまい「やめて〜」と叫ぶが「タイプだ!」と好かれてしまう。

産業スパイの方は途中で気づかれて研究員に「これが新薬だ」と女性器に入れてもらうが、それが実は偽物だったというオチ。

またあゆみも「こんな会社いやだなあ」と思っていたのだが、みんなが一生懸命働く姿を見て「もう少しがんばって見ます!」と前向きになって終わる。

勧善懲悪、前向きなハッピーエンドで見ていて後味が非常によかった。今日観たピンク映画のなかでは一番面白かった。
さすがは池島ゆたか。






妹の匂い よろめきの爆乳


日時 2014年12月21日13:13〜
場所 光音座2
監督 吉行由美
製作 2014年


マリコは姉・ノリコの夫健二(岡田智宏)に恋をしていた。姉が結婚する前から健二のことは意識していて、健二に抱かれることを妄想してオナニーしたこともあった。
マリコは映画館(目黒シネマでロケ)で受付をしていた。
休憩時間では映写室でうたた寝をするのが好きだった。
映写技師のコンノに「よくこんなところで寝れるなあ」と言われても「なんかこの音が落ち着くの」と答える。


この12月21日で光音座はフィルム上映をやめ、デジタル化するという。
私はフィルム原理主義者ではないつもりだが、上野オークラのあまり上質とはいえないデジタル上映を観た後だと必ずしもデジタル化には賛同できない。
フィルムと同等のレベルの上映なら差し支えないのだが。
だから今日は光音座1、2をハシゴしてピンク映画を5本観た。

オークラ映画自体がフィルムでの制作をやめ、デジタルでの制作に切り替えていくという。だったらいっそ止めるという手段もありそうだが、それなりにまだ商売になると見えてピンク映画の制作はデジタル化しても行っていくようだ。となるとデジタル化したピンク専門館はまだ数年はやっていくつもりなのだろう。

この映画、目黒シネマでロケされているが、映画館に貼ってあったポスターが同じく吉行由美作品の「ボクは真夜中にキバをむく」。だから2014年の制作だ。
別に主人公が映画館に勤めていなくても話は通じるのだが、ここは吉行監督としては最後のフィルム作品になるであろう本作で、映画館、フィルムへの愛、感謝を綴ったと思いたい。

「映写機のカタカタという音を聞いているとほっとする」というせりふに象徴されるように、フィルムに対する愛情だ。この気持ちは分からなくはない。デジタルを否定はしないが、フィルムへの愛情もよくわかる。

話のほうは映画館でデートクラブの男にスカウトされマリコはデートクラブでも働く。
そして義兄をくどこうとするがうまく行かない。
さらにはデートクラブの仕事仲間に健二を口説いてもらってホテルに誘う。その様子を写真に撮ってもらい自分に送ってもらう。
それを姉に見せたりするが、姉は健二を信じてまったく気にしない。

そんな姉に憎悪が沸いてきて妊娠してる姉を道の途中の階段から突き落とそうとするが、その時に声をかけてきてくれたのが映写技師のコンノだった。
実はコンノは偶然に通りかかった訳ではない。
いつも陰からマリコをみていたのだ。

結局自分をいつも見ていてくれるコンノを選ぶマリコだった。
というわけでメデタシのエンディング。







零戦燃ゆ


日時 2014年12月17日〜
場所 DVD
監督 舛田利雄
製作 昭和59年(1984年)


昭和14年、海兵団に入隊したばかりの浜田(堤大二郎)と水島(橋爪淳)は訓練の厳しさに逃げだそうとしたところを零戦の教官下川大尉(加山雄三)に呼び止められる。
二人は下川に近く配備される零戦を見せてもらう。
「お前等が働いたら880年かかってやっと買える飛行機だ。2年か3年辛抱すれば国がただで支給してくれる。どうだ、乗ってみたいと思わぬか」その言葉に動かされ、二人はパイロットの研修を始める。
水島は適正検査でパイロットにはなれずに整備兵への道を進み始める。
すでに実戦に配備された零戦だが、欠陥が見つかりその実験で下川は命を落とす。
やがて太平洋戦争が開戦。浜田も水島も南方戦線の航空隊にて戦いを始める。
一時内地に帰った水島は名古屋の三菱の工場で吉川静子(早見優)という女性と出会う。


「連合艦隊」に続く8.15シリーズとして夏の戦記大作として公開。しかしこれが最後の東宝戦争大作になった。
公開当時も観てあまりいい印象がなかったが、川北監督追悼で購入し、鑑賞した次第。

ああ、確かにいい印象が残らんはずだ。
正直おもしろくないのだよ。

面白くない理由はいくつかある。

1、似たような空戦シーンの連続で飽きる。
これが真珠湾攻撃、ミッドウエイ、ガダルカナル戦、レイテ海戦、大和沖縄特攻、そして零戦の特別攻撃などなど有名な戦闘と絡めながら話が進んで行けばよいのだが、そう言うのではなく日常的な小さな戦闘が繰り返される。
山本五十六の死のシーンが出てくるが、ここは三船敏郎の「山本五十六」のシーンのライブラリー使用だから、(相変わらずとはいえ)シラケる。

2、役者がだめ。
堤大二郎が主役だが、当時たのきん、シブがき隊全盛で他のアイドルは全然ダメだった頃。その中でも堤大二郎はB級アイドルで大した人気もなかった。
若いファンを目当てでこういうキャスティングをしたのだろうが、人気もないし演技も大したことない、要は魅力がないので映画が盛り上がらない。
それはヒロインにもいえて早見優。全然似合わない。さらに中途半端な名古屋弁だから始末に悪い。
「そうだがね」とか言われてもヒロインに似つかわしくない。シラケる。
橋爪淳は悪くはないのだが、それにしてもやっぱり「華」に欠ける。
メインの3人がダメダメだから映画が盛り上がらない。
加山雄三とか丹波哲郎(山本五十六)が出てくるが完全に顔見せ程度。
しかも加山はポスターでは大きく扱われてるだけにだまされた感が強かった。

主にその2点がだめ。
そもそも零戦がだんだん弱くなっていく話なのだからパイロットが死ななければ(映画的に、あくまで映画の話として)盛り上がらない。
これが最初に同期のパイロットが5人ぐらいいて、最初は真珠湾などで大戦果を上げ、やがてミッドウエイで敗退、一人、また一人と死んでいき、最後の一人が特攻に行く。有名な戦闘に絡めて話を進めなければいけないんではないか?

それをする予算が無かったのかも知れない。
だって日本軍の基地で走ってるトラックが昭和59年当時の車をカーキ色に塗装しただけだもん。
これは公開当時から気づいていて、シラケたもんなあ。

最後の零戦を自ら燃やし、そこへ石原裕次郎の「黎明」が流れるラストシーンはよかったと思う。

零戦のメカニズム(操縦方法とか各種レバーの役割とか)そういうのを最初の訓練のシーンで入れればいられたと思うし、そういうところは描いた映画がなかったので、その辺が入ってればもっと興味深い映画になったかも知れない。

やりようによっては面白かったと思うが、予算不足で残念な結果に終わった残念な映画。






アオハライド


日時 2014年12月13日18:50〜
場所 新宿ピカデリー・シアター2
監督 三木孝浩


吉岡双葉(本田翼)はこの春高校2年になった。新しいクラスに期待したその時、クラスに転校生がやってきた。
馬渕洸(東出昌大)。しかし双葉には中学の時好きだった田中君に思えた。「田中くん?」「俺馬淵だけど」そういった会話が繰り返されたが、馬淵は田中洸だと認める。
しかし洸は中学の頃と違って何か背負ってる感じ。
そんな時「自分を変えなきゃ!」と思っていた双葉は高校生活の文化祭や修学旅行の実行委員に立候補する。同時に小湊(吉沢亮)、修子(新川優愛)、槙田悠里(藤本泉)も同時に立候補。馬淵は小湊に誘われていやいや委員に。
実は修子は担当の田中先生(小柳友)が好きだっただけなのだが。
やがて馬淵も双葉に心を開くようになったのだが、彼は転校してくる前の長崎時代の友人と頻繁に連絡を取っていた。それが成海唯(高畑充希)だ。


夏に「好きっていいなよ。」という福士蒼汰主演の高校生恋愛コミックの映画化があったが、これもそう。
そう言えば春にも山崎賢人の同じような映画があったなあ。もうタイトルすら覚えていない。(ああ思い出した、「L・DK」だ)
最近は「片方が死ぬ映画」がいい加減に作る方も飽きたのかなくなった。代わりに恋愛コミックの映画化。私にしてみれば「感動!「涙!」を押し売りされるより余程健全に見える。

で、本作の感想だが、取り立ててなし。
とにかく本田翼と東出昌大の美男美女ぶりを楽しむだけである。

洸が何かを背負ってるのは実は母親の死が原因だった。
両親が離婚して母親とともに母親の郷里に帰った洸だったが、母親を安心させようと必死に勉強して母親の体調の変化に気づかず、母親を癌で死なせてしまい、それを区にしている訳。

そこで双葉と再会し、心の平常を取り戻しかけたのだが、長崎時代に自分と同様に両親が離婚して父親が亡くなった成海から連絡がある。
ほっとけない洸は成海と連絡を取り合い、双葉を好きだが成海・・・と板挟み。
そんな隙をねらって千葉雄大の優等生が双葉に近づいてきて・・・・という展開。

結局長崎の修学旅行を利用して、成海に逢うではなく今は無くなった洸の家の場所に行き、母親の重圧から解放される、という結論。
千葉雄大は降られ、成海も捨てられ、もともと田中先生とは全く進展がない修子、同じく洸が隙好きになった悠里だけどこっちもあっさり降られ、とたぶん長い原作を詰めたためにいささかまとまりが悪い気がしないでもないが、それにしても東出昌大のイケメンぶりが堪能できる作品。

まあそんなに記憶には残らないけど、観てる間は東出のイケメンぶりが楽しめた。






農家の嫁 あなたに逢いたくて


日時 2014年12月10日21:00〜
場所 K's Cinema
監督 榎本敏郎


農家の長男で「今時農家になんか来てくれる女はいない」と婚活パーティー後で仲間とガールズバーでクダをまく常太朗(浜田学)。しかしその店で働く由紀恵(水谷ケイ)に一目惚れ。強引にプロポーズをする。
驚いた由紀恵だったが、早くに親を亡くし今は独りの由紀恵にとって家族へのあこがれは強く、結婚を承諾した。
常太朗の家族は父(団時朗)と母嘉子(田島令子)と弟(柴田明良)の4人家族。由紀恵は早く家族になじもうと努力するが、料理も出来ず農作業も全く初めての由紀恵に嘉子は厳しい。
ようやく仕事にも慣れた頃、ガールズバー時代の仲間、真理たちが遊びにくる。にぎやかに過ごす由紀恵たち。
その頃、常太朗は自分で作った野菜を農協を通さずに通販会社と組んで売ろうとしていた。先方の担当者、三島(吉岡睦雄)が視察にきた。由紀恵はそれがかつての客の三島と知って驚く。三島は契約を条件に再び肉体関係を迫る。


レジェンダリー・ピクチャーズの「ラブ・ストーリーズ」シリーズ第6段。榎本敏郎作品だし、なにより吉岡睦雄さんが出演してるので鑑賞。

団時朗さんが農家の親父を演じてるのに驚く。団さんはかつてのモデル時代のイメージや以前のいまおか作品「百日のセツナ」でも吸血鬼を演じていたのでどうにも洋風なイメージが強い。ところが作業着を着て野良仕事をしてる姿が何とも似合う。似合いすぎていてびっくりした。
そして姑さん。この声はどっかで聞いた声だ、と思っていたらクレジットを見たら田島令子さんだったので驚く。

そして契約を盾にして体を迫る吉岡さん。
由紀恵は夫の為にと三島に体を許すのだが、契約後も「これを破棄することだって出来るんだ」と再び体を迫るという卑怯な役。こういうネチネチとした小悪党を演じると吉岡さんうまいなあ。実にいいよ。逆にいい人を演じると違和感さえ感じてしまう。

ホテルに入っていくところをたまたま農協の担当に見られてしまい、地元の噂になりだす。
三島の2回目の要求は断った由紀恵だったが、すると三島は契約を破棄。父親が農協に買い取ってもらうよう頼んだが、農協の担当が由紀恵と三島のことを言い触らしてると知って弟が農協の担当を殴ってしまう。それでまとまりかけた農協もダメ。
それを知った由紀恵は「自分がいると迷惑をかける」と離婚届をおいて東京に帰る。

元の家族だけになった時、嘉子は「由紀恵さんは本当によくやってくれた。誰が何を言っても私は信じる」という。
最初はいやな姑が最後は理解を示すというのが「お決まり」の展開な気もするが、監督は予定調和の後味の悪くないドラマを作ろうとしていたようなので、狙い通りの映画になってるといえるだろう。

ラストは結局常太朗が由紀恵を訪ねる。
常太朗は通販会社に言って三島の上司と会い、理由を説明し再び契約をする。そして元々問題の多かった三島は首になったと話す。で二人は再びキスをして「終わり」

ほんわかとしたホームドラマだった。
常太朗の弟を、真理が誘惑して関係をするサービスシーンあり。本編の話とは何の関係もなかったけど。









超能力研究部の3人


日時 2014年12月7日15:10〜
場所 シネマート新宿1
監督 山下敦弘


「超能力研究部の3人」という映画がアイドル乃木坂46の秋元真夏、生田絵梨花、橋本奈々未によって映画化されていた。今撮影の真っ最中。監督は「これでOKにしちゃうとこれが基準になっちゃうから、そうするとどんどんいいものが出来なくなる」となかなかOKを出してくれない。
ヤンキーと喧嘩になるシーンでは監督はなかなか納得がいかない。そこでヤンキー役の女優と秋元真夏でエチュード(即興芝居)をさせてみる。「アイドルって何?ちょっと可愛ければ歌も踊りも下手でもなれるの?」「下手じゃないもん」「下手だよ。うちら素人から観ても下手だよ」
反論するシーンで「罵倒してみたら?このゲボやろう!とか」と監督が言うとマネージャーが「ちょっとすいません。そういうのは言わせてどうかと」「でも台本にありますよ」「それは橋本の台詞ですよね?橋本と秋元ではキャラが違うので」とよけいなちょっかいが入る。
そしていよいよキスシーンの撮影に。
本番ではちゃんとキスさせようとする監督にマネージャーが「それはちょっと・・・」とダメだしをする。


山下敦弘監督、脚本いまおかしんじ、向井康介作品。
もちろん脚本がいまおかさんだから鑑賞した。
そもそも乃木坂もAKBも興味はない。若い世代がアイドルに夢中になるのは解るが、私より年上の方々までAKBや乃木坂に夢中なのはよく分からない。
いや昔からのアイドル好きならともかく、そうでもなかった方々が夢中に成るのだからなあ。
私からするとキャバクラのホステス程度の魅力しか感じがないが、だからこそか。誰でも突然キャバクラにはまることはあり得るからな。

「超能力研究部の3人」という映画だが、単なる「マイナー部活映画」ではないらしい仕掛けがあるとは聞いていた。
観始めた時は山下監督自身が映画監督として登場するので、てっきりメイキングシーンも織り交ぜながら本編の話が進んでいく展開だと思っていた。
「山下監督ってこういう演出するのか」などと思っていたら、「このゲボヤロウ」のシーンで絡んできたマネージャーが怪しい。どうも役者っぽい。
さらによく観るとスタッフとして写っている方の中に川瀬陽太さんがいらっしゃるじゃないですか。
このあたりで気が付いた(遅いか)

この映画は「『超能力研究部の3人』という映画を撮ってる乃木坂メンバーのフェイクドキュメンタリー」なのだ。
ここで監督役が山下監督でなかったら、完全に最初から「フェイクドキュメンタリーなのだな」と解った。
でも山下監督が演出してるからてっきり信じてしまった。
まんまとだまされた。

キスシーンを撮る撮らないのシーンは役者のマネージャー役、統括マネージャー役、スタッフ役の方の演技も熱が入って楽しめる。
これ、脚本にはどこまで書き込んであっただろう。
話す言葉一つ一つ台詞として書き込んであるのか、それとも全体的なシーンの状況とそれぞれの役割だけを指示して細かい言葉は役者のアドリブ(それこそエチュード)だったのか?
今度いまおか監督に会った時に聞いてみよう。

佐藤宏さんが主人公たちの同級生で「宇宙人」と名乗る森君のお父さん役で出演。
出演シーンも多く、山下監督は佐藤さんをよほど気に入ってるのだなあ。

「普通にこの題材で映画を撮っても面白くない。フェイクドキュメンタリーにして普通じゃないことをしよう!」という監督たちの意図は分かる。
しかし普通に「超能力研究部の3人」という映画も観たかった。
あっ、AKBや乃木坂は「総選挙」も「ジャンケン大会」もすべてはフェイクドキュメンタリーという、一見実際にやっているように見せて実はすべてシナリオ通りの展開という大いなる皮肉なのだろうか?
その辺も作った人たちに聞いてみたい。







禁忌


日時 2014年12月6日21:10〜
場所 新宿武蔵野館3
監督 


高校教師のサラ(杉野希妃)は女生徒と関係を持っていたが、どこか潔癖なところがあり、相手が生理の時は「血のにおいがだめ」と言って拒んでいた。
そんな時、別れて長くなる父親・充(佐野史郎)が暴行事件の被害者として病院に入院し、親族として連絡があった。
久しぶりに父親を訪ねるサラ。父親の住む家に行き着替えや保険証を取りに行くと地下室に少年、望人(モト)が監禁されていた。
また充のパソコンを確認したところ、少年の裸の画像が見つかった。父は少年愛者でモトを監禁していたらしい。
サラは充のパソコンを持ち帰り、モトも自分の家につれていった。
やがてサラは風呂に入っているモトを犯してしまう。
そして婚約中の恋人にも別れを告げ、同僚の先生と付き合うふりをする。
充は退院したが、警察により児童ポルノ法、児童買春防止法違反で疑われていた。
サラは充にモトは充の家には帰りたくないと言っているといい、自分と暮らし始めるのだが。


レズビアン、少年愛、レイプ、監禁など激しい恋愛(というか性衝動)がてんこ盛り。
しかし正直言ってどれ一つにも感情移入、というか共感できるものなし。

主人公のサラは恋人もいて誕生日に指輪をもらうような仲でありながら、女生徒とも肉体関係を持つ。さらに教室で関係を持った時に相手の下半身に顔を近づけた時「ごめん、血の匂いがだめ」と拒否する。
そしてモトを風呂に入れてやった時に上から乗かって犯してしまう。そして指輪をくれた相手には「もう別れましょう。以上です」と事務的に言う。相手が「もう一度話し合いたい」というと同僚教師を連れてきて(彼とは別にまだ関係はないみたいだが)彼に「あなたもストーカーみたいなことを言わずに別れましょう」と言わせる。
その男が家に訪ねてきて「ドア越しでいいから話したい」と言って家にあげてしまう。
そうすると男はサラを無理に犯す。

正直、無茶苦茶である。
主人公はただのヤリマン(というかセックス好き)にしか見えず、さらに相手の気持ちも考えず自分の一方的な欲望をぶつけるだけというわがまま女。
私が嫌いなタイプである。

異常性欲が頻繁に登場するが、「そうせざるを得ない衝動」というそういう人々を理解し、描こうという姿勢は感じられず、ただ「変わった性欲を扱うと画面が衝撃的になる」という程度の認識しか伝わってこない。
そういうのは私は嫌いである。

あと大賀。
大賀君は「桐島」の活躍が記憶に深いが、完全にミスキャスト。第一に年齢的にあわない。
モトが最初登場したときはボーイソプラノの高い声で、歌も歌う。(ここ、たぶん吹き替え)
だからもっと中学生ぐらいの少年を起用しないとおかしいよ。
その少年が変声期を迎え、体毛や髭も生えてくることで「少年でなくなる」ことがこの映画の内容に必要なはず。
でも大賀じゃ年齢的に無理。
12、3歳の子を連れてこなくちゃ。
大賀じゃ少年愛にならないよ。

やがてモトが今度は自分からサラを犯すようになり、自身の体の大人への変化を嫌い、下半身を割れたコーラ瓶で傷つけるという自傷行為になる、というのが衝撃のエンディング。
でも共感できんなあ。

本日は監督と大賀の舞台挨拶付き。
監督は根暗そうなぼそぼそとしゃべる男でパワーを感じない。
いっちゃ悪いけど、今後はなさそうな気がする方だった。






寄生獣


日時 2014年12月6日16:20〜
場所 新宿ピカデリー・シアター7
監督 山崎貴


ある日、不思議な生命体が人間に寄生した。その生命体はムカデのような外見をしていて人間の耳から体に進入し、その脳に寄生する。そうすると体は一見人間のままだが、頭が割れて他の人間を食い殺すようになる。
泉新一(染谷将太)にもその生命体は寄生しようとしたが、新一がイヤホンをしていたために失敗、右手から進入し右手だけに寄生した。そして自らを「ミギー」と名乗る。
寄生された人間たちは他の人間を襲い出す。全国で惨殺された死体が発見されていた。
ある日、新一の通う高校に新任教師田宮良子(深津絵里)がやってきた。彼女も寄生された人間だったが、人間との共存を考えていた。


この「寄生獣」が前後編の2部作だと知ったのは前売り券を買ったとき。「え、そうなの?」というのが本音。
だってチラシにもポスターにも「第一部」とは書いてないじゃん。

正直話が途中なので結論めいたことも書けないし、そういったテーマに対する感想は完結編をみてからにしよう。来年4月だそうだから、かなり忘れてそうだけど。

予告編で観たとおり、「ミギー」のVFXが立派。
どこが撮影後のCGで、どこが撮影時にもプロップを使っての撮影なのかさっぱり見分けがつかない。
でもだから何だという気もする。
CGってアナログ特撮と違って努力が見えにくいんですね、なんかひたすらパソコンに向かってるイメージで。
でも「特撮を感じさせない特撮がベスト」というから、違いが分からなくていいのかも?
しかし人間の手がミギーに成ること自体、特殊映像なのだからCGバレバレとも言える。

出演者では東出昌大がいい。寄生された人間は基本的に無表情になるという設定。そこで東出が作り笑いを浮かべて「ニカ〜」と笑うところなど迫力満点だ。

あと橋本愛。
ヒロインぶりが素敵である。東出と橋本が並ぶとどうしても「桐島」を思い出してしまう。
二人とも順調に成長していてファンとしてはうれしい限り。

それにしても寄生された人間が人間を襲うと血しぶきブシャーっていうスプラッタ描写。
基本的に血しぶきは嫌いなので、観ていてイヤになる。
「人間こそが地球に寄生した悪い生き物」というテーマらしいのだが、それにしてもスプラッタ描写は必然ではないだろう。

完結編もスプラッタ満載らしいが、正直私は苦手だし、観る気がなくなりそうになるのも事実。
先月観た「神様の言うとおり」といい、(今に始まったことではないが)スプラッタ描写にはうんざりする。








フューリー


日時 2014年12月6日13:15〜
場所 新宿ピカデリー・シアター5
監督 デヴィッド・エアー


1945年4月、ドイツ。米軍はドイツに侵攻しベルリンまで間もなくだ。その中で砲身に「FURY」と書いた戦車があった。車長はドン・コリアー軍曹(ブラッド・ピット)。砲手で牧師の息子のバイブル、操縦手でメキシカンのゴルド、装填手で口の悪いクーンアスだ。
今日の戦闘で副操縦手が死んだ。代わりに補充されたのは戦闘経験の全くない、まだ子供と言っていいノーマンだった。
本隊の移動中の護衛についたフューリーだったが、ノーマンがドイツの少年兵を銃撃しなかったために味方の戦車が一台やられ、多数の死者が出た。コリアーはノーマンに無理矢理にドイツ兵を殺させ戦場のルールを教え込ませる。
ある町を制圧したコリアーたち。
その町で若い娘に好感を持ったノーマンの為二人きりになる時間を作ってやるコリアー。
やがて新たな戦いが始まる。行く手には最強のティーガー戦車が待ち受けていた。


「アカデミー賞の呼び声高い」などの宣伝文句が並ぶ本作。「狭い戦車で数名の兵隊で1日の話」などと聞いて谷口千吉監督の「独立機関銃隊未だ射撃中」みたいだなあ、と思っていたらその通りだった。
無敵の隊長三橋達也=ブラッド・ピットにちょっとインテリの太刀川寛、無口だが力強い佐藤允、野卑な堺左千夫、新兵の麦人と人物の役割分担までほぼ同じ。
監督は「独立〜」を観ていない可能性は高いから、洋の東西、時代を問わず通じる話なのだな。
改めて「独立機関銃隊未だ射撃中」を再評価してもらいたいものだ。

で、本作だが「ドイツ兵を殺せない」というノーマンに無理矢理ドイツ兵を殺させるコリアーというショッキングな展開。本来なら捕虜だから殺したらまずいはずだが、そんなことは誰もお構いなし。でもこれが戦争の真実。
その後、ドイツの町を占領した彼らが女を戦車に連れ込むところがある。おそらく犯したのだろうが、そこは画面には写さない。その辺がものすごく描写が甘い。
ある部屋に突入しそこで若くて美しい少女と出会うノーマンとコリアー。二人きりにしてやるコリアーだが、二人がどうしたかは写さない。

そこは写さないと片手間だよ。戦場の厳しさ、怖さは人間を変えてしまうことだと描きたいなら、主人公がセックスしてる最中も写すべきだ。そうでないと描写が中途半端だと思う。

後半はドイツ戦車との一騎打ちだが、「どうせ勝つんでしょ」とさめて観てしまったので、なかなかの迫力だが、どうにもこちらのテンションはあがらない。
最後の一戦は地雷のためにキャタピラーが切れてしまって進撃不能になった状態での決戦。
「お前たちは逃げてもいい」というコリアーに「一緒に戦います!」と言うあたりは泣かせる、アクション映画のセオリーだ。「連合艦隊」にもあったなあ、と思う。

で一人一人やられていきながら、最後に新兵のノーマンだけが生き残り、脱出ハッチから逃れて戦車の下に隠れる。
(書くのが前後したが、どうせなら最初に戦車とは?とその構造と扱い方をノーマンに教えるシーンが欲しかった)
そこでドイツ兵に見つかるのだが、相手は見逃してくれた。

おいおい、そこで殺さなくてどうするんだよ!ドイツ軍!
「ドイツ軍にもいい人はいた!」とドイツに肩を持たせてるようにも思えるが、「ドイツ人なら赤ん坊でも殺せ!」と言っておきながら、「でもアメリカ兵は見逃してね」というのはちょっと身勝手すぎないか?アメリカ軍!
だったら最初から「戦場の厳しさ」などを描かないで欲しい。

結局この映画に乗れなかったのは、「痛快な戦争アクション」でもなく「戦場の地獄を描いた反戦映画」でもない中途半端さだろう。

あと映画の中でもちらっと説明があったが、弾のなかに閃光弾が混じっているのか連射すると青や緑の光の線が出きるのが気になった。まるでSF映画の光線銃のようなのだな。

出来が悪いとは言えないが、どうも乗れなかった戦争映画だった。