2016年3月

   
ゴーストシップ 無伴奏 劇場版 ウルトラマンX
きたぞ!われらのウルトラマン
ちはやふる 上の句
家族はつらいよ サンライズ・サンセッ さらば友よ ヨコハマ・ナイト
百億の獣たち
ザ・ブリザード 女が眠る時 ヘイトフル・エイト さらば あぶない刑事

ゴーストシップ


日時 2016年3月29日
場所 DVD
監督 スティーブ・ベック
製作 2003年(平成15年)公開


1962年、イタリアからアメリカに向かった豪華客船アントニア・グラーザ号。甲板ではパーティが開かれていたが、何者かによってワイヤーが放たれ、そのワイヤーが人々を切りつけていった。
現代。サルベージ船のアークティック・ウォリアーのメンバーは酒場であるパイロットから洋上に浮かぶ巨大船の調査を依頼される。どうやら無人の漂流船らしい。海事法によれば漂流船及びその積み荷は発見者のものになる。
いいお宝が出るかも知れない。6人のメンバーはそのパイロットとともにその漂流船に向かった。
その漂流船こそがアントニア・グラーザ号だった。
船倉に金塊を見つける彼ら。金額にしたら2、3億ドルにはなりそうだ。しかし刻印が削られており、それは盗品などの出所が不確かなものの証拠だった。
その頃、乗組員の間では不思議なことが起こっていた。
誰もいない船なのに少女を見かける、ホールのピアノの上には火のついたたばこ、船長室には今注がれたようなウイスキーのグラス。
やがて自分たちの乗ってきたサルベージ船のエンジンルームのプロパンガスの栓が何者かによって開かれ、大爆発を起こしてしまう。
この船の正体は?


公開当時、予告編を観て観ようかと思ったが時間が合わなくて見逃した映画。たしか新宿ミラノ座だったと思う。
今回ディスクユニオンのセールで100円でDVDが売っていたので買ってみた。

50年前の船が現代に現れて・・・という話でなにやら4次元空間とか、バミューダ海域などのSFっぽい映画を連想したのだがちょっと違った。
ホラーというかショック映画だった。

冒頭のワイヤーでたくさんの人々が真っ二つに切れてしまうシーン、ああいう血なまぐさいのは苦手です。
まあ真っ二つに切れた人間がまだ少し動いているのはグロ趣味が好きになりません。

メンバーがキッチンの缶詰を食べてみたところ大丈夫だと思ったが、それがウジ虫に変わってしまう。ここも気持ち悪くてだめでした。
だからお話で見せる映画と言うより、視覚的な衝撃で脅かしてるんですね。あと音とか。

話のオチは例の金塊はこのアントニア・グラーザ号が救助した船から持ち込まれたらしいと開かされ、そして仕事を頼んだ(自称)パイロットがその金塊を奪ってきた悪い奴だった、しかも幽霊という展開。

かつて金塊をアントニア・グラーザ号に持ち込んだが、秘密が漏れるのを恐れて、1000人以上の乗員乗客を殺していったという話。
んでパイロットも幽霊で、幽霊になって金塊を回収しにきたということらしい。
幽霊の話だからあまり整合性を求めてはいけないらしい。

生き残ったサルベージの女性メンバーがアントニア・グラーザ号を爆破させ、脱出。これで悪い幽霊も退治したと思いきや、救助された港で見た光景が、悪い幽霊が金塊を別の船に積み込ませていく様子。

幽霊が金塊を今更どこに持っていくのか疑問だが、まあ深く考えてはいけない映画なのだろう。













無伴奏


日時 2016年3月27日18:40〜
場所 シネマカリテ2
監督 矢崎仁司


1969年秋、仙台の女子校の3年生、野間響子(成海璃子)は時代の空気に乗ってレイコ、ジュリーとともに「制服廃止闘争」を開始する。しかし本気で闘争してるわけではなく、どこか「時代の空気だから」でやっている部分も多かった。
そんな時、レイコたちに連れてってもらったバロック喫茶「無伴奏」で大学生の堂本渉(池松荘亮)、関祐之介(斎藤工)と知り合う。関には響子と同じ歳の高宮エマ(遠藤新菜)という恋人がいた。
渉と関は幼い頃からの友人で、今は事情があって一緒に暮らしているという。徐々に渉とつきあうようになる響子。
しかし関は渉や響子がいる前でエマとセックスを始めようとし、「ちょっと外してくれないか」と堂々と言ってのける男だった。
嫌いというほどではないが、何か関を不思議な存在ととらえる響子。ある日、渉と響子はついに結ばれた。
しかし気がつくと関がそれを窓から見ていた。
響子には関が不気味に思えてくる。
時々セックスを連れ込み旅館で楽しむ渉と響子。「今夜は家には誰もいないから来て」と渉を誘った響子。しかし渉はやってこない。
不信に思って渉と関の住まいに行ってみた響子だったが。


矢崎仁司なんて特に興味はないのだが、斎藤工、池松荘亮共演となれば期待はマックスである。
公開2日目に観に行った。
公開前に「斎藤工と池松荘亮のキスシーンがある」と聞いていたが、予告とか観てもそういう同性愛っぽいものは感じなかった。

ところが映画を観たらこれはどっからどう観てもゲイ映画である。「LGBT映画祭」に出しても十分な位。
オチというか核心を書いちゃうけど、実は渉と関は同性愛の関係だったのだ。
響子がそれを知って驚く、そこで物語は急転回するという構成だから、予告ではそれは隠したのだろう。

先に書くと響子が渉を訪ねていくと、二人は部屋で全裸で絡み合っていた。ここは薄暗い部屋なのが残念だが、斎藤工、池松荘亮のファンには驚愕のシーンだ。
二人とも頑張っている。

響子に見られてしまった渉は今までの事情をすべて話す。
「実は僕たちはそういう関係だった。しかしこのままじゃいけないと思って女性の恋人を作ろうとした。関にはエマが出来た。彼はわざとセックスを見せつけた。そんな時、君と出会った。君は僕が初めて愛した女性だ」

この物語の時代は1969年〜71年だ。
今なら「男を好きになるなんて変だ」と最初は思うかも知れないが、大学生ぐらいの歳になれば(もちろん葛藤はあろうが)自分たちの関係を受け入れることが出来たかも知れない。

ネットで検索したら日本初の商業同性愛専門雑誌「薔薇族」の創刊は1971年9月。(ゲイピンクはその10年後の82年から)
この物語の時代には「薔薇族」もなかったのだ。
まだまだ同性愛に対しての情報もなく、「いけないこと、異常なこと」と思ってしまったのかも知れない。

話はその後、エマは妊娠。出産をエマは望むが関はつれない。やがてもう一つの事件、関がエマを殺すという展開になる。関は逮捕、渉はエマを死に追いやり関を犯罪者にしてしまったのは自分だと自分を責め、入水自殺する。

エマは髪の短いボーイッシュな印象だ。関にしてみれば同じ女性でも男っぽい女性を好んだのだろうか?
それを意識してのキャスティングだったのか?

この映画は原作の自伝的小説だそうだ。
だからすべて物語は響子の視点である。自分の恋人が幼なじみの親友と同性愛関係だった、と知ってショックを受ける展開だ。
基本、響子の気持ちが描かれる。

僕なんかにしてみると渉と関の二人の葛藤がもっと見たかったが、それは原作者の視点だからかしょうがないか。
何しろ処女を捧げた男性に男の恋人がいたとなったら、そりゃトラウマになるだろうなあ。

もの足らない点もあるけど、1970年前後の「今と近いけど、やっぱり今とはちょっと違う」時代の同性愛映画として、面白く観た。

















劇場版 ウルトラマンX 
きたぞ!われらのウルトラマン


日時 2016年3月26日12:15〜
場所 新宿ピカデリー・シアター4
監督 田口清隆


東北の芭羅磁遺跡の異常を関知したXio(ジオ)の大空大地隊員(高橋健介)と山瀬アスナ隊員はそこで考古学者の玉城ツカサ(吉本多香美)とその息子ユウトと出会う。
その遺跡の土地を買い取ったIT長者のカルロス黒崎(マイケル富岡)がやってきて、その遺跡の入り口を爆破する所を自身のネット番組で生中継する。
大地、ツカサ、カルロスらが中に入って見ると、巨人像があり、そして青い石が何かを封印するために置いてあった。
無謀にもカルロスが所有権を主張し、その青い石を持ち去ってしまう。
それから異変が起こった。
大怪獣ザイゴーグが出現。やがて東京を目指す。Xioの隊員は出動するが、まったく歯が立たない。
ツカサはその頃、遺跡の碑文から偉大なる巨人の出現を知る。ユウトの持っていたガラクタの一つが光り始めた。
そのガラクタは実は遺跡の巨人、ウルトラマンティガと一体化するためのアイテムだったのだ!


最近ウルトラマンシリーズの最新作「ウルトラマンX」が放送されていたようだが、よく知らない。いつの間にか始まっていつの間にか終わっていた。私はその程度のファンです。
で、映画版もパスするつもりでいたんだが、評判がよい感じなので観てみた。

アバンタイトルでテレビシリーズのダイジェストが出てくる。テレビシリーズでは大空大地がウルトラマンとはいつものように周りは知らなかったが、今回は最初からみんな知っている。

で、ウルトラマン自身の意識と大空大地の意識はしっかりあって、戦っている最中にウルトラマンと大地が会話している。もう今までのウルトラマンというより「パシフィック・リム」のドリフトのようなものですね。

話の方はありがちな悪い奴が封印を説いて怪獣が出現するパターン。考古学者に吉本多香美というのが渋い。で石像も初代ウルトラマンではなく、ティガである。
田口監督とか私より下の世代で「平成ウルトラマン」で育った世代には「ティガ」は名作なんだそうだ。
数話みたことがあるけど、馴染めなかったなあ。

で、最後には世界各地で怪獣が出現し、色んなウルトラマンが各地で戦う。ゴジラの「怪獣総進撃」のノリですね。

正直、私はティガには思い入れがないし、カット割が早すぎてちょっと慌ただしい。もうワンテンポの間が欲しい。

あと、隊長たちが本部にいたまま指示だけしてるのも馴染めない。やっぱり現場にみんな出なくちゃあ。
参謀とか司令官は本部でもいいけど。

という感じで、バラジ遺跡とか青い石とか石像のウルトラマンとか出てきてアントラーも出てきたはうれしかった。
「初代マン」や「セブン」には馴染みが深いので、そう思ってしまうのだよね。
でももう50年も続いているシリーズだから、世代によって違うのも当然。
いつまでも初代信仰はいけませんね。













ちはやふる 上の句


日時 2016年3月20日18:00〜
場所 新宿ピカデリー・シアター2
監督 小泉徳宏


綾瀬千早(広瀬すず)、真島太一(野村周平)、綿谷新(真剣佑)の3人は小学校の頃から競技カルタに親しみ3人でチームを作っていた。
祖父に競技カルタの永世名人を持つ新は親の都合で東京を離れ、福井県に帰っていった。
千早は高校に入ったらカルタ部を作って全国大会に出場するのが夢だった。
高校入学と同時にカルタ部創設に走り回るが、その激しさに圧倒され、部員のなり手がいない。しかし同じ高校に入学していた太一、そして同じく小学校で競技カルタをやっていた西田を説得し、3人で準備を始める。呉服家の娘で和を愛する大江奏(上白石萌音)もなんとか参加させ、後の一人を「部活より勉強が大事」という通称机くんの駒野も入部させ、なんとかカルタ部は創設。
神社の神主で千早たちのカルタの師の原田先生(國村隼)の元でGWは合宿。
合宿期間中に千早は強豪の北央高校・須藤暁人(清水尋也)と対戦、太一と西田は新と対戦。その強さに3人とも圧倒されてしまう。
しかし駒野や奏の励ましで、都大会に向かって突き進む!

昨年の「海街dairy」が圧倒的によかった広瀬すずの初主演作。撮影は「海街」の公開前だそうだから、「海街」を観ての起用ではない。思い切ったキャスティングだが、正直同世代の若手より抜きんでていると思う。(あくまで俺基準)
その期待を裏切ることなく広瀬すずは演じきる。この映画の面白さの半分は広瀬すずの魅力だな。

実は今回野村周平が相手役と聞いて特に期待はしなかった。彼の出演作は何本も観てるが、特に印象がない。それが今回はよかったなあ。
太一は千早に想いを寄せていて、新のことを恋敵として意識していた。それで新に負ける所を見られたくないという理由で新のめがねを隠したことがあったのだ。
「そんな俺にカルタの神様がほほえんでくれるはずがない」と心に悩みを抱える主人公を実に好演していた。
自分の罪を原田先生に打ち明けるシーンはこっちまで泣けてきた。
人間、罪は犯すときもありますよ。

そして勝ち負けにこだわる余りに駒野の存在を軽んじてしまったりしてチームに亀裂が走る。
だがラストの決勝戦では!という王道の展開。

スポーツ映画を見るようなサスペンスフルな展開に圧倒される。
面白かった。
次回の新の活躍、新ライバルの登場と期待が高まる。

細かいことだが、GWの合宿期間中に太一と新が対戦する展開、あれは対決した場所は福井だったのだろうか?
会場には「金沢で××」とかのポスターが張ってあったし、新は福井住まいのようだから、福井だとは思うが、映画では福井まで行く距離間(たとえば新幹線で移動のシーンとか)がなくて、東京から千葉か神奈川に行ったぐらいの距離間しか感じなかった。
ちょっと気になる。















家族はつらいよ


日時 2016年3月18日21:50〜
場所 新宿ピカデリー・シアター8
監督 山田洋次


平田家は今は仕事を引退した周造(橋爪功)、妻富子(吉行和子)、長男夫婦(西村雅彦、夏川結衣)とその息子二人、それにまだ未婚の次男庄太(妻夫木聡)の三世代家族。
周三は典型的な亭主関白。ある日、今日が妻の誕生日だと知る。たまには何か買ってやろうと「お前何か欲しいものはないか?高いものはだめだぞ」と言うと富子は「じゃあこれ」と離婚届を出してきた。
あまりの予想外の突然のことにただ呆然となる周造。
翌日、長女の成子、泰蔵夫婦(中嶋朋子、林家正蔵)もやってきてこちらも離婚だなんだと夫婦喧嘩。
成子たちの喧嘩はいつものことだが、とりあえず話を聞くためにいきつけの居酒屋かよに周造は泰蔵を連れだす。
泰蔵は女将のかよ(風吹ジュン)と周造の中を疑ってしまう。それを聞いた成子は私立探偵沼田(小林稔侍)を雇うのだが。


山田洋次が20年ぶりに製作した「東京家族」の一家のキャストを再び集結させたホームドラマ喜劇。
妻夫木聡も出演しているし、「男はつらいよ」も好きだし、久々の山田監督の喜劇なので楽しみにしていた。

期待通りの面白さ。でもそれ以上のものはない。
登場人物が時々こけて笑いをとる所など「寅さん」と同じ。
後半の家族会議のシーンも「とらや」での一家の和やかな会話がやがて喧嘩になってしまう流れと同じで、予定調和的に楽しめる。
ただし何十年も同じメンバーで芝居をしてきた「とらや一家」に比べると、その流ちょうさはやや劣ると言った感じは否めないが。

それよりも気になったのが、この映画、山田作品のセルフパロディ(というのか)や小津の「東京物語」に対するオマージュにあふれている。
正直、あふれすぎていると思う。
さらに結論を言えば、「学生の撮った自主映画じゃないんだから、そういうのは辞めて欲しい。山田洋次がするべきことではない」と思う。

主人公、平田家のリビングとかテレビの近くには「男はつらいよ」のDVDが置いてある、富子の通う「創作教室」の教室には「東京家族」の上映会ポスターが張ってある、私立探偵沼田の事務所の1階は映画館なのだが、そこでは「男はつらいよ」が2本立てで上映されている。
美術スタッフの遊びなのかもしれないが、そういうのって山田監督作品でやるべきことなのだろうか?

そして「東京物語」
「東京家族」の時はリメイクだから登場人物の役名が同じでもよかったが、今回も笠智衆の役名をもじった平山周造。原節子の役名をもじった間宮憲子。調べてみたら私立探偵の役名沼田は「東京物語」では東野英二郎が演じていた同級生と同じだ。しかもこの「家族はつらいよ」では沼田は平田の同級生。

ラストに至っては周造は「東京物語」のDVDを観ている。
ラストカットはテレビに写る「東京物語」の「終」の字がこの映画の「終」。
いや何度も言うけど学生映画じゃないんだからさ。

映画自体はおもしろかったが、そういった余計なオマージュがなんだか(私にとっては)後味の悪いものになった。
残念。













サンライズ・サンセット


日時 2016年3月16日22:10〜
場所 K's cinema
監督 橋口亮輔
製作 平成24年(2012年)


弱小映画製作会社のサンライズ。新作のVシネマのクランクインを控えて大忙し。しかしこの会社、どうにも危ない。
プロデューサーの大森は借金取りに追いかけられてそれどころじゃない。チーフ助監督は逃げ出す、脚本家志望の青年は大森にテキトーにあしらわれる、主演男優は大河ドラマの出演が決まって有頂天、衣装さんは二言目には「この仕事じゃなくてサスペンスやればよかった」、主演女優は自分がかわいいことが一番の頭空っぽ。
そこへ大森が自主映画出身の若手をつれてきた。
彼は自分の脚本を大森が映画にしたいと言ってきたが、どうなったのか?を確認する。
ところが実は今度の大森の映画はその青年の脚本を勝手に監督が作り替えたものだった!
激怒した青年と監督が喧嘩になり、監督は降りるという。
大河ドラマの俳優の女性マネージャーと自主映画の監督青年はかつてつきあっていたらしい。


2012年、2013年で行われたシネマインパクトが再び行われるのでそれに併せての過去作の再上映。
いまおか監督の「集まった人々」観にきたのだが、今回カップリング上映されたのがこの作品。
(シネマ・インパクトとは映画監督の山本政志が数人の映画監督を集め、「数万円の参加料を払って彼らと映画作りをしよう!」というワークショップ形式の映画製作システム。いろいろ賛否はある)

「サンライス・サンセット」は97年に橋口監督が上演したオリジナル戯曲の映画化だそうだ。
44分という短さだし、登場人物も入れ替わり立ち替わり現れて、とにかく飽きがこない。

プロデューサーは借金まみれで助監督たちにもカードで商品券を買わせて金券ショップで換金させようとしている。
弱小プロだとこういうのがホントにありそうである。
事実、(芸能プロだけど)似たような話を聞いたことがある。

みんな金がない中、大森曰く「人の人生変えるような映画を作ってやりたいと思ってるよ!」。
おそらく登場人物のほとんどがその気持ちなのだろう。

ラスト、いろいろもめたが例の自主映画の監督を監督にして、今はマネージャーの女性を主役にして映画は始まろうとする。

「映画を作りたい!」という映画バカを讃えるようなラストで、映画ファンとしては痛快でもある。
でもちょっと自画自賛には照れるけど。

橋口亮輔がこの題材を選んだのは登場人物も多いし「シネマインパクトに集まってくれた人々を少しでも出演させたい」という希望があってのことだろう。
しかし(あくまでひょっとしてだが)「映画界ってこういう場所だから辞めるなら今のうちだよ、それでも来る?」と問うているような気もした。
(ほら「恋人たち」の製作の題材に前の「ぐるりのこと」のギャラの未払い問題とか絡んでいると聞いたもんで、つい・・・)










さらば友よ


日時 2016年3月13日12:30〜
場所 光音座1
脚本・監督 片岡修二
製作 ENK


マコトとワタルは男性デュオとしてライブハウスで人気を博していた。メジャーデビューの日も近い。女性マネージャー(橋本杏子)もマコトとワタルの仲の良さには嫉妬してしまうぐらいだった。二人はゲイカップル。
ある日、3人で車で帰る途中、暴漢に襲われ、マコトが拉致されてしまう。拉致されたマコトはレイプされていた。
途方に暮れているワタルとマネージャーだったが、マネージャーの兄で自衛隊員の佐伯(大杉漣)が帰ってくる。
「警察にいうとマコトを殺す」といわれている。仕方なしにマネージャーは佐伯にマコトの救出を依頼する。
気乗りしない佐伯。「マコトを救うためなら何でもする」と言うワタルに対しても「ほなら自分で助けるのがええ」と突き放す。
しかし結局は佐伯は「明日の朝、走れ。まず体を作ることだ」とワタルのトレーニングを引き受ける。
ワタルはその為に厳しいトレーニングをし喧嘩のやり方も佐伯から教わる。
そしてマネージャーはマコトが拉致されている場所を突き止める。


この映画は公開時(だと思う)に観ている。今はなき大阪の東梅田ローズだ。1995年か6年だと思う。
そのときに思ったのが「『戦争の犬たち』みたいな傭兵ものを作りたかったんだろうなあ」と思ったし、今回観てもその感想は変わらなかった。
当時は知らなかったが、そのコーチ役の自衛官が大杉漣である。当然メジャーになる前だが私が大杉漣という役者を知ったのは1997年の北野武の「HANABI」だからそのちょっと前だったのだ。
(ちなみにこの映画では大杉漣ではなく、役名の佐伯恭司名義)

初見の感想はさらに「でも傭兵が一人ではしょぼいよな。仕方ないとは思うけど」とも思った。

この映画、ピンク映画としては比較的絡みのシーンが少ない。
監督としてはとにかくハードボイルドアクションもやりたかったようで、大杉漣の登場シーンと去っていくシーンなど、暗闇の霧の中、バックライトでシルエットになって登場(あるいは去っていく)というもの。
なんかわかりますけどね。

この間の「平成任侠伝」なんかより私の趣味にあう。
任侠映画よりハードボイルドの方が好きですから。

で話の方は佐伯とワタルとマネージャーで敵のアジトを襲い、マコトを助け出す。逃げる途中で再び捕まるが、ワタルと相手で対決する。もちろんワタルが勝つ。

そしてこの映画、55分で終わってしまったので、尺延ばしのためか回想シーンが入って「さらば友よ」「愛しき友よ!」とか字幕が入って音楽を流す。
ピンク映画で尺延ばしとか珍しい。

あとワタルとマコトが歌う「愛はいつでもスキャンダル」だが、素人から見てもへたくそだと思った。悪いけど。












ヨコハマ・ナイト 百億の獣たち


日時 2016年3月13日11:20〜
場所 光音座1
脚本・監督 山崎邦紀 
製作 大蔵映画1994年 


毬生と首里(樹かず)は風水の吉地を探して旅をしていた。横浜にやってきて、ゲイポルノ映画館、光音座に入ってみる。そこである中年男・針江(なかみつせいじ・杉本まこと名義)と知り合い、彼の家に泊めてもらうことに。
朝になるとそこには髭の青年堀土がいた。
針江と毬生は光音座に行き、針江は毬生の体を求める。毬生は拒んだが、針江は「今首里はなにをしてるんだろうね?」その頃、堀土と首里は絡み合っていた。
毬生は針江の家にあったワープロで小説を書き始める。
それは2007年の近未来に人工子宮の開発により人類は出産を自由にコントロール出きるようになったというおのだった。
そして小説の中で科学者は女性の美しさと男性のたくましさを併せ持つ人間を生み出してしまう。


山崎邦紀脚本・監督のゲイピンク映画。
ゲイピンクで山崎作品って多いなあ。こちらが名前を意識してしまったせいか、やたら観ている気がする。
山崎作品は妙に話を難解にしてしまうものが多いので、ちょっと観る前から期待値が低かったが、今回はそれほど難解ではなく、ほっとする。

話の方は、科学者が生み出した生物・ブランキーが具現化し、人間をレイプするという流れになる。
まず掘土が襲われ、次に針江が襲われる。二人とも縛られて肛門をいたずらされ、お尻にキスマークがつけられていた。このブランキーは女装、というかドラッグクイーンである。
針江が探してきたアロマテラピーの青年が出てきて「小説を終わらせればきっとブランキーは消える!」ということになり、小説の続きを書いて終わらせようとする毬生だが、ブランキーが登場し、格闘の末になんとか小説に「THE END」と書き込み、ブランキーを消滅させる。

そんな感じの話。
ブランキーは人間の醜悪な感情、愛情は生み出したものだった、というSF的結末。

山崎らしい意味不明なカットは天井がドームの球体状に鳴っている建物のカット。野毛山にある水道ドームらしい。
あと最初の方の首里と堀土の絡みだが、堀土の脇毛を首里がなめるカットを延々と入れるあたりは山崎的というか旦々舎的だなあと思った。








ザ・ブリザード


日時 2016年3月11日21:30〜
場所 新宿ピカデリー・シアター3
監督 クレイグ・ギレスビー
 

沿岸警備隊のバーニー・ウェバー(クリス・パイン)は電話交換手のミリアム(ホリデー・グレンジャー)と初デーとした。今までは声だけの交際だったが、今夜初めて会ったのだ。二人はたちまち恋に落ち、結婚の約束を交わす。
しかしバーニーは自分の仕事の危険性から一瞬結婚を躊躇した。
そんな頃の冬の日、嵐がやってきて2隻のタンカーが事故にあった。ペンドルトン号の機関士シーバート(ケイシー・アフレック)は修理した箇所から亀裂が入るのではと予感したが、その通りになり、船は前後に真っ二つに裂けた。
幸い隔壁のおかげで船は機関部のある船尾だけでも浮いていた。しかし浸水は止まらない。シーバートはエンジンに浸水しないうちに、船を浅瀬に移動させ座礁させて流されないようにした上で汽笛を鳴らし、救助を待つことを提案。救命ボートで脱出を試みる者もいたが、シーバートはそれを止めさせた。
沿岸警備隊のクラフ司令官(エリック・バナ)はバーニーに出動を命じる。しかし地元の海をよく知る者にとっては今出動する事は2次遭難の危険を感じていた。
果たしてバーニーはシーバート以下32名の乗組員を救助出きるか?


パニック映画である。予告を観て結構楽しみにしていたが、期待値が高かったのか実はそれほどは面白く感じなかった。

原因は結局救助する側のあれやこれやの工夫がないのである。救助に向かうには危険なポイントを通過しなければならない。船より高い波がやってきてそれを乗り越えていくのだが、それがただジェットコースターに乗って越えていくだけの感じなのだな。
高い操船技術があってのことなのだろうが、それがあまり感じられず、ただ波に突っ込んでいってなんとか乗り越えました、の繰り返し。

おそらくは3D映画としての映画なのだろうから、そういうストーリーのディテールで見せるというより、迫りくる波、水しぶき、を重点的に見せる映画作りなのだろう。
自分としては救助する側もあの方法やこの方法を試していき、うまく行かず、最後の方法を試す、というもって行き方が好きなのだが。

で予告などでも出てきた定員12名の救助艇にどうやって32名を乗せるか?がクライマックスなのだが、これがなんと「それは単なる規則だ。乗せちゃえ!」という知恵もなにもないもの。
ここで私はがっかりした。
何かものすごいアイデアを期待していたので。

実話だそうで、もちろん沿岸警備隊に対しては賞賛と尊敬を送るのだが、映画としてはイマイチである。
さっきの「あの手この手を試みる」というのは主人公の警備隊より、船のシーバートの方が実行していて「映画として」面白い。

あと主人公にも婚約者がいて、危険な海に出たと知ると司令官に「呼び戻してください!」という関係は「海猿」と一緒。でも今回の女は「呼び戻せ!」というあたりは正直うざかった。
そりゃ無理でしょ?













女が眠る時


日時 2016年3月5日19:45〜
場所 ユナイテッドシネマとしまえん・スクリーン7
監督 ウェイン・ワン


作家・清水健二(西島秀俊)は1作目は賞も取りベストセラーになった。が数年前に書いた2作目はあまり売れず、今も3作目は書いていない。彼の妻綾(小山田サユリ)は編集者。今は二人で海辺のリゾートホテルに1週間遊びに来ていた。綾はこの近くに住むという作家の元に毎日出かけていく。
そのホテルで親子以上に歳の離れたカップルを見かける。男の名は佐原(ビートたけし)、女は美樹(忽名汐里)。
健二は二人に興味を持ち、彼らを観察するようになる。
やがて健二と佐原は知り合いになる。佐原は自分はもう10年以上美樹を観察し、彼女の寝姿をビデオカメラに収めているという。大抵は消してしまうが、よかったものは取っておくそうだ。
美樹の寝姿映像を見せてもらう健二。そこには似たような映像しかない。しかし「序々に変わっていっているんだ」。なぜこんなことをし続けるのかと問う健二に佐原は答える。「彼女の最後の日を記録したい」


ビートたけしは役者として好きなので、彼が出ているので興味を持った。登場人物はみんな日本人だが、監督は外国人。その辺も興味が出る。でも観るのはちょっと迷ったが、ビートたけしの役名が佐原、西島の役名が健二。なにやら「ウルトラQ」を連想させる何かがあるかと思ってみてみたが、全くなかった。
この場合、役名に意味はないらしい。

避暑地のホテルでスランプ気味の作家が同じホテルの客に興味を示す、という点で「ベニスに死す」を思い出した。
しかし「ベニスに死す」で芸術家が興味を示すのは美少年タージオだったが、本作で健二が興味を示すのは中年男佐原の方である。

「あんなオッサンが親子でもないのになぜあんな若い娘を連れているのか?」に嫉妬する。その気持ちはよく解る。
佐原の正体は明かされないし、仕事をしてる風でもない。
「ここにいるのは2、3日」と言っているが、実際にはもう10年もこのホテルに住んでいるのではないか?
そんな疑問が沸いてくる。

それで部屋に忍び込んだり、彼らが立ち寄った店(居酒屋だったとは観終わってパンフレットを読んでから知った)の店主(リリー・フランキー)に話を聞いたりする。

そういった夢とも現実ともつかないシーンと話が続いていった後で、最後には健二は新作を書き上げ、ヒットさせている。
正直言うけどよく解らんかった。

こう一くくりにするのは間違いだと思うけど、ウエイン・ワン(初めて作品を観た)とか、「黒衣の刺客」のホウ・シャオシェンとか、「アイ・カム・ウィズ・ザ・レイン」のトラン・アン・ユンとか妙にアート系を気取っていて、私とは肌が合わない感じがする。

そうそう西島秀俊が水着姿になるシーンがあったが、意外にたくましい体つきでファンにはたまらないサービスカットになったと思う。













ヘイトフル・エイト


日時 2016年3月5日15:00〜
場所 ユナイテッドシネマとしまえん・スクリーン2
監督 クエンティン・タランティーノ


吹雪の中、一台の馬車がウォーレン少佐に停められた。ウォーレンは元北軍の将校だが、今は賞金稼ぎ。この日も悪党を倒してその死体を運んで町に行く途中だったが、吹雪で馬が駄目になったのだった。しかし停めた馬車はルースによって貸し切りだった。ルースは1万ドルの賞金のかかったドメルグという女を町まで連れていく途中なのだ。ルースはウォーレンをドメルグの仲間ではないかと疑ったが、結局乗せることにした。しかし途中で自称新任の保安官のマニックスという男も乗せることに。
彼らは吹雪が収まるまで、途中のミニーのロッジに留まることにした。
しかしいつもの店主はおらず、代わりにボブという男が店番をしている。そこには同じように吹雪を避けてきたモブレー、ゲージ、スミザージ元(北軍の)将軍などがいた。
こいつらはドメルグを助けにきた彼女の仲間ではないのか?ルースは安心が出来ない。


タランティーノは個人的に親近感を感じる人なので、新作が出たら大抵観に行く。滅茶苦茶おもしろい訳ではないが、まあ楽しめる。
最初に結論を言うと今回は面白かった方だが、2時間48分は長すぎる。シーンシーンが若干くどくどし過ぎている感じがしてどうも・・・。もっとテンポをあげてほしいとも思うが、このクドクド、ネチネチがタランティーノの持ち味と言われればそれまでなのだが。

この映画、70mmで撮影されたそうだ。今更70mmなど意味があるかと思うのだが、タランティーノ自身、その質問は何百回も聞かれたらしい(パンフレットを読むと解る)。
私なんか「70mmで撮影しても上映される時はデジタルなのだから意味あるかあ?」と思ったが、アメリカでは70mmの上映設備を持つ映画館約100館で上映されたそうだ。それなら意味もあろう。私が観たのは当然デジタル版ですが。

密室内の会話劇なので、字幕を読むのが大変である。「ヘイトフル・エイト」っていうけど9人いるじゃん、と思っていたらあとでポスターを観たら御者のOBは8人の中には入っていない。
登場人物がみんな嘘付き(と思われ)どこまで信じていいのか解らない。この駆け引きが面白い。
そんな中でも主人公の持つリンカーン大統領からの手紙の件は最後にやはり逆転のオチを持つ。

美術は種田陽平。この映画がタランティーノ初かと思っていたら、パンフを読むと「キルビル」のセットも彼の作だ。
総じて面白かった。ちょっと長いけど。











さらば あぶない刑事


日時 2016年3月4日21:20〜
場所 TOHOシネマズ新宿・スクリーン1
監督 村川透


横浜港署の刑事、タカこと鷹山敏樹(舘ひろし)とユージこと大下勇次(柴田恭兵)は定年退職を数日後に控えていた。二人の後輩で今は上司の町田透(仲村トオル)は二人に無事定年を迎えてほしいと願っていた。
そんな町田課長の心配をよそに、タカとユージは横浜の拳銃、麻薬などのブラックマーケットを襲撃。反撃にあって敵の逮捕には失敗したが、ユージはそこで数年前に不良から更正させた川澄(吉沢亮)を見かける。今はまともな生活をしてると思っていたが、やはり悪の世界に戻ったのかとがっかりするユージ。
一方日本人ヤクザの闘竜会の幹部が殺された。そこからディーノ・カトウとキョウイチ・ガルシア(吉川晃司)という日系人が浮かび上がる。二人の正体は最近全世界に勢力をのばしている、BOBという犯罪組織の手先だった。
ユージとタカは町田課長の心配をよそに悪の組織に挑んでいく。


「あぶない刑事」シリーズ最終作(たぶん)。当たったら退職していても作るかも知れないな。
テレビシリーズが始まったのが、80年代だからなんと30年も続いている。刑事モノでは最長シリーズではないか?
僕自身、あまり「あぶない刑事」は好きではなく、全くと言っていいほど観ていない。それはまず舘ひろしが好きでない、「あぶない刑事」に描かれる横浜が舞台のポップな刑事モノというとその前の「大追跡」「プロハンター」などがあったために今更の出涸らし企画にしか見えなかったのだ。柴田恭兵の軽さも助演だからよかったが、主演になるとちょっとうるさい、というような部分が好きになれなかったのだ。

ところが私の評価とは裏腹に世間ではこれが大ヒット番組となり、映画も数本作られた。「踊る大捜査線」よりヒットしている。今回、最後らしいし、柏原寛司さんの脚本なので、鑑賞。

お話の方はこういう刑事ものにありがちなヤクザやマフィアの麻薬販売の主導権争いなのだが、それにしても柴田恭兵も舘ひろしも頑張っている。

もうお二人も60歳を越えているが、動きは30代の頃と変わっていない。少なくとも変化を感じさせない。ややしわが増えた顔で拳銃をぶっ放す姿は、今のスタローンたちが活躍するアクション映画を彷彿とさせる。

特にラストで舘ひろしが手放しでバイクに乗って拳銃やショットガンを撃つカットは見事である。すごいなあ。(ショットガンをライフルのように撃つのはちょっと抵抗あるけど)

吉川晃司も今回は白髪交じりの頭でマシンガンを撃ちまくる悪役が最高である。
何より仙元誠三の夜の撮影が美しい。
脇ではシリーズ開始当初は部下だったが今は上司となった仲村トオルがよかった。

ベンガルとかラストに古いレパードが登場するとかシリーズをずっと観てる人には楽しい小ネタが満載なのだろう。
あいにく私はそこまでのファンではないんで解らなかったが、それでも全体としては70〜80年代のアクション系刑事ドラマを再び観て、懐かしさは感じた。