2016年5月

   
弾丸特急ジェット・バス オオカミ少女と黒王子 悩殺パンスト 美脚秘書 暴走する人妻 
絶対、抜いちゃイヤよ
恋するオヤジ
ビンビンなお留守番
ディトラクション・ベイビーズ 世界から猫が消えたなら 殿、利息でござる!
HK/変態仮面
アブノーマル・クライシス
にっぽん泥棒物語 警視庁物語 ウラ付け捜査 ちはやふる 下の句
ヒーローマニア
-生活-
華魂 幻影 アイアムアヒーロー 太陽

弾丸特急ジェット・バス


日時 2016年5月29日
場所 DVD
監督 ジェームズ・フローリー
製作 1976年(昭和51年)


原子力バス・サイクロプスがついに完成した。ニューヨーク〜デンバー間をノンストップで運行。
しかし原子力バスの成功を阻止したい石油メジャー側がサイクロプスの工場に爆弾を仕掛ける。予定されていた運転手は負傷。しかし2週間後に迫った初運転を遅らせることは出来ない。そこで開発責任者の娘で、自らも開発チームの一員・キティ(ストッカード・チャニング)の元婚約者ダンに白羽の矢がたった。
ダンとキティは結婚の予定だったが、結婚式の当日、ダンは急な運転が入ってしまい、結婚式をすっぽかしてしまったのだった。それ以来二人は会っていない。
探し出したダンは運転手仲間から嫌われていた。彼はバスで遭難した際に乗客を食って生き延びた疑惑があったのだ。そんなダンの味方をするショルダーズ。
キティの説得に従って、サイクロプスの運転手を引き受けるダン。ショルダーズを助手にして、サイクロプスは出発した!しかしこのバスには爆弾が仕掛けられている!


40年前の映画かあ。
公開当時はすでに映画を観るようになっていたので、存在は知っていたが、時間と金が無かったのか見逃した映画。
昨年DVD化され買ってみた。

コメディ。それもパロディ映画。パロディ映画というものが公開されたのはこれが最初の映画だったかも知れない。
冒頭「大地震の映画があった、客船が転覆する映画があった、高層ビルが火災になる映画があった、飛行船が爆発する映画があった。そして今度は原子力バスだ!」というテロップが入る。

いちいちタイトルは書かないけど、その手のパニック映画のパロディ映画である。
で、面白いかと言うと、日本人とはギャグのセンスが違うのかあまり笑えない。

それでもパニック映画にありがちなお約束の展開を踏襲し、それなりに楽しい。
個性ある乗客たちが集まって「グランドホテル」形式、になる点も同じ。「大空港」のヘレン・ヘイズを思わせるおばあちゃんも登場する。(こちらは無賃じゃないけど)

バスの2階にはバーがあって、しかもピアノ弾き付き。プールもボーリング場(1レーンだけど)もある。
ボーリングなどはバスが曲がればボールも曲がるから意味ないんだけどね、開発中に気付よ!っていう思うのが楽しい。

あとはバスの自動タイヤ交換装置とか自動洗車装置とか意味なく豪華。この映画の主役は完全にサイクロプスである。
これが2連結のトレーラーを改造したと思われるが、実に立派に作ってある。こんなクダラナイコメディに金をかけるのはさすがハリウッド!(という気分になる)

原子力バス、というのが今からするとブラックなのだが、この映画の頃はスリーマイル島事故の前で、原子力バスはまだブラックユーモアではなく、単に「無駄すぎる豪華バス」というギャグとして通用したのだな。

そんなに大爆笑するところも無いけれど、無駄に豪華な原子力バスを見てるのが楽しかった。
当時見ていたらまた違っていたかも知れないが、DVDで見る分には楽しかった。













オオカミ少女と黒王子


日時 2016年5月29日14:00〜
場所 新宿ピカデリー・シアター1
監督 廣木隆一


篠原エリカ(二階堂ふみ)は高校1年生。友達はみんな彼氏持ちで、自分も話を合わせるために彼氏がいることにしている。でも実はつきあった経験0人。いよいよ彼氏がいることに疑われてきたので、街で見かけた超イケメンの男を無理矢理写真に撮って彼氏と嘘をついた。
それが実は同じ学校の男子、佐田恭也(山崎賢人)だった。
早速嘘がバレかけたが、恭也はエリカの嘘につきあって彼氏の振りをしてくれるという。ところがその条件が「俺の犬になれ。とりあえず3回回ってワンだな」。
見た目のさわやかさと違ったドSぶりに驚くエリカ。
その意地悪ぶりに抵抗を感じるエリカだったが、恭也の優しいところにも目がいき、本気で好きになっていくのだった。


少女マンガ原作のイケメン登場の恋愛映画シリーズ。って別にシリーズじゃないのだが、3ヶ月にこの手の映画が公開されるとシリーズのような気がする。シリーズじゃなくてブームか。
一時は片方が病気で死ぬ映画が流行ったが、それに比べて何倍もいい。
で、この手の映画は毎回見てるし、それなりに満足して帰る。でも不思議と内容はさっぱり覚えていない。
「高校デビュー」「LDK」「好きっていいなよ」「アオハライド」「ヒロイン失格」「ストロボエッジ」「orange」「黒崎くんのいいなりになってならない」などなど。あと山下智久の映画もあったな。

前の映画がどうだったかよく覚えていないのに比較もないのだが、その中に比べて本作は特によかったように思う。
その理由をあげてみる。

基本的に話が暗くない。主人公がトラウマを抱えていたり、悩みを持っていることが多いが、今回は悩みは深刻ではない。
「彼氏でないのに彼氏のフリをする」ってなんだか昔ながらの喜劇にありそうだ。友人の前で嘘をついてその嘘につきあってくれる人がいて、それがばれそうになってすったもんだ、という一種パターンとも言えるベタな喜劇である。
この点がよい。

そして山崎賢人。人前や写真ではあくまでさわやかな笑顔を振りまくが、エリカと二人きりになると「お前は黙ってついてくればいいんだよ」というドSぶり。
この二面性のギャップが山崎賢人の魅力をより一層引き立たせる。

後半、恭也に告白するエリカ。でも「俺も好きだよ」と言ってくれていたが、「で、いつまでこの猿芝居続けるの?」と言われてキレてしまい水をぶっかけるエリカ。
当然でしょう、エリカちゃん。恭也も言い過ぎだと思うよ。

そこでクラスの地味男子・日下部君(吉沢亮)登場。彼はメガネを取ると実はちょっとイケメンというのもベタである。
こういう地味男子はおじさんは応援したくなる。

ラストは研修旅行(修学旅行みたいなもん?)で神戸へ。
震災の博物館があって被災者が体験を語るコーナーがあるとは知らなんだ。
でラストは南京街でキス。

この映画の良さには恭也の元カノが登場してエリカに意地悪するなどのドロドロさがないのがいいと思う。
高校生の恋愛からドロドロしてるのはどうかなあ。
やっぱり高校生ぐらいに恋愛だと大人から見て微笑ましさが欲しいよね。

それがこの映画の面白かった点だと思う。
こういうベタな話をちゃんと成立させるのは、二階堂ふみ、山崎賢人の役者としての力だと思う。
もちろん廣木監督の演出も。














悩殺パンスト 美脚秘書


日時 2016年5月28日18:40〜
場所 飯田橋くらら劇場
監督 池島ゆたか
製作 


その頃、ホームヘルパーで入った女性が老人の預貯金を勝手に持ち出す事件が起こっていたが、警察は証拠もなく困っていた。
その犯人はフユミ。彼女は組織の一員として色んな職場に入り込み、盗みを重ねていた。
今度も盗んだ金は組織に納めていた。その支部長と言われる男にフユミは逆らえなかった。
フユミは同居人のエミカに薦められるままに仕事を選んでいた。今度は弁護士事務所に応募してみれば?と言われ、嘘の履歴書で咲坂法律事務所を訪ねる。
フユミは咲坂の事務所にある金庫に目をつけるのだった。


池島ゆたか監督作品。
今日観た3本の中では一番面白かった。
こういうサスペンスタッチの映画がピンクでも私には合うみたいだ。

フユミは実はこうして就職してはその先で盗みを繰り返す常習犯。
映画は中盤で咲坂の事務所の屋上で支部長からの盗みの指示を受けているユフミを写す。カットが変わって咲坂が屋上に入ってくるカット、続いてフユミの周りには誰もいないカット。
ここで「この支部長というのはフユミの幻想では?」と観客は気づく。「実は支部長は幻想でした」というオチかと思ったら、それだけでは終わらない。

フユミは咲坂の事務所の金庫から鍵を開け現金と小切手を盗み出す。
ここで金庫が鍵とダイヤルの組み合わせ式のようだったが、鍵を咲坂の机から盗んだけで開けてしまう。
ここがちょっとイージーだが、まあ細かいことは気にしない。

咲坂は元カノで今は探偵をしている女性にフユミの素性を調べてもらう。本名は違っていてあちこちで同様の盗みをしていた。
そして咲坂は彼女が統合失調症で支部長の幻覚を見ると見抜く。

知り合いの医者(池島ゆたか)に相談する咲坂。
そしてフユミを操っている奴がいることを突き止める!という展開。
まあその黒幕は実は同居人の女とその彼氏(樹かず)だというのはうすうす察しがつくが、それでも最後まで逆転を引っ張る展開(その支部長というのは実はDV男だったフユミの父親の幻影)は面白かった。

脚本は五大暁子。池島監督はサスペンスが面白いと思う。













暴走する人妻 絶対、抜いちゃイヤよ


日時 2016年5月28日17:40〜
場所 飯田橋くらら劇場
監督 北沢幸雄
製作 


女は自分のヌード写真をリモコン付きカメラで撮影し、それを自分のHPにアップしていた。
女は精神療法のカウンセリングに参加した。そこで同じように参加していた男(なかみつせいじ)に興味を持ち、後をつける。女は男の部屋に入り、二人でセックスに興じる。


ピンク映画に「三割の法則」という言葉があるらしい。
3本立てのうち1本くらいは面白いのがあるということだ。
で今日の3本のうち、一番つまらなかったのがこれである。

話も暗いし、展開もなく、ただ濡れ場が続くだけ。女の不満は夫が仕事一筋で彼女の寂しさを理解しようとしない、というありきたりなもの。
結局どうなったかよく覚えていない。

製作年はHPが出てくるくらいだから2000年は過ぎた頃か。
今ならブログやツイッターだからね。その方がもっと簡単だし。
個人のHPは(もちろん今でもあるけど)減ったね。

個人のHPなんて2000年を越えた頃は「最先端だ!」と思ったけど、今は「時代を感じさせる」になってしまったのだから、時の流れは怖いですね。












恋するオヤジ ビンビンなお留守番


日時 2016年5月28日16:25〜
場所 飯田橋くらら劇場
監督 池島ゆたか
製作 OP映画


菊池泰三は75歳。妻は20年前に亡くなり3人の娘もそれぞれ嫁いでいる。腰を痛めた時に看病してくれたのは三女のマリだった。上の二人の娘は東京から離れていることもあり、連絡もよこさない。
マリの提案で今すんでいる杉並の家を売ってマリと夫のタカシ、泰三の3人でマンションを買って暮らすことになった。
だがマリの態度は同居前と違い、食べ物の好みなどタカシに合わせ、自分はまるで居候のように肩身が狭い。
そんな悩みを抱えているときにユウナ(由愛可奈)という女性と散歩の途中で知り合った。
やがてユウナの相談相手になる泰三。彼女は看護師だが金目当ての男に捨てられて失意の最中だった。
ユウナは気分転換に北陸に旅行に行ってくると言う。留守の間ユウナの愛犬の世話を泰三は頼まれた。
だが肝心の餌をやる日に泰三は預かっていたユウナの部屋の鍵を無くしてしまう。困った泰三は近所のスナックで出会ったタカナシという元空き巣の男に鍵を開けてもらうのだが。


映画「華魂 幻影」のロケにも使われた飯田橋くらら劇場。ここが5月末で閉館ということで久々に行ってみた。
この映画館は前にも来たことがあるのだが、このHPを始めてからは来ていない。ってことは2000年頃かな。
ロビーが無く、チケットは自動販売機ではなく今でも手売り。でも場内にはロビーが無く劇場内の扉を開けたらすぐにスクリーン横に出たのは驚いた。
いすに座ったら背もたれが後ろに動く。壊れてるかと思ったらリクライニングである。なかなかお目にかかれない。

で肝心の映画である。
池島監督作品(最新作かな?)で「百日のセツナ」(いまおかしんじ監督)でデビューの由愛可奈でちょっと楽しみだったが、イマイチである。

まず主人公の泰三が惨めである。
娘にいいように丸めまれて娘夫婦の為のマンションを買わされてしまい、買ってやったらその恩はどこへやら。
物忘れが激しいと娘からはバカにされる。

そこでユウナという美女と知り合ったのなら、彼女と結ばれなければならないはずだ。というかそういう展開を期待する。
この場合で言えばユウナと二人で旅行に出かけて旅先でいろいろあって最後は「勃つ勃たない」でもめつつ、最後はベッドインする映画を期待した。

でも映画は、彼女の部屋の鍵は無くし、元空き巣に頼んだら「お礼にとりあえず100万円もってこい」とすごまれる。
負の連鎖に陥っていく。
これでは主人公が惨めすぎる。映画の中では主人公はかっこよく立ち回ってほしい。
第一鍵をなくしたら錠前屋に頼むとか(他人の部屋の鍵を開けてもらえるかどうかの疑問はあるが)、何か方法が合ったのでは?

近年のオークラのピンク映画は70分だが、その10分延びた意味はどこにあるのか?返って間延びした展開になって、つまらなくなった気がする。















ディトラクション・ベイビーズ


日時 2016年5月28日10:00〜
場所 テアトル新宿
監督 真利子哲也


愛媛県松山近くの港町。この町で親がいない二人の兄弟、泰良(柳楽優弥)と将太(村上虹郎)は暮らしていた。
喧嘩ばかりしている泰良だったが、ある日を境に町を出ていき、松山へ行った。
町で出会う人全部に喧嘩をふっかけ殴っていく泰良。裕也(菅田将暉)も仲間をやられた高校生だったが、町で再会し、やがては彼の強さに惹かれ、「でっかいことしたいんすよ」と泰良とともに喧嘩を始める。
将太はいなくなった兄を探し始める。
泰良と将太はベンツで送られる途中だったホステスの那奈(小松菜奈)を乗せたまま、そのベンツで走り出す。
裕也は自分たちが喧嘩や暴行をしてるところを動画に撮り、ネットにアップし、それは拡散されていった。
警察も動き出す。いったい彼らはどこへ行くのか?


真利子哲也監督は「イエローキッド」という映画が話題だったので観に行ったが自分とは全くあわない映画でがっかりした覚えがある。
今回も「ずっと殴ってるだけの映画」とか「今年のワーストワン」と言ってる人を聞いていたので、迷ったが、柳楽優弥、池松荘亮、村上虹郎などのお気に入りの役者の共演となれば観たくなる。私は好きな役者が出てるとそれだけで観るクチなので。

でもやっぱり評判は正しいもので、私には全くあわない。
泰良が人を殴る理由も明示されない。「いらいらするんじゃ!」と言った衝動も感じない。
裕也は「楽しいことしようぜ!」と言っているのでそれなりに理由は解るし、「女殴ってみたかった」というので、たぶん女に対していらいらがあったのだろう。
生意気でわがままでそのくせ「自分は弱い。暴力を振るう男は最低!」と言われる経験をしてきたのだろう。
それはちょっと理解できた。

柳楽優弥も台詞らしい台詞はほとんどなく、ひたすら格闘。しかも毎回格闘のカットが長いのでごまかしが利かない。危険もあったと察する。
しかも後半ベンツを盗んで移動。那奈が運転させられ、彼女は他の車にぶつけることで逃亡を図ろうとする。
結局ベンツはぶつけちゃうので、制作費も少ないだろうにその点は頑張った感あり。

役者にしたってそのほかに池松荘亮やでんでんなど実力派ぞろい。真利子監督は商業映画デビュー作だそうだが、これだけの役者をそろえて商業デビュー出来る環境には嫉妬する。

あと村上虹郎。彼を初めて観たときに「柳楽優弥にちょっと似ている」と思ったのだが、今回は弟役。
パンフレットによると柳楽自身、「村上虹郎は柳楽優弥の若い頃に似ていると言われていたので、親近感が沸いた」というエピソードを話している。
私以外にもそう思っている人がいると知ってちょっとほっとした。









世界から猫が消えたなら


日時 2016年5月21日19:45〜
場所 新宿ピカデリー・シアター9
監督 永井聡


僕(佐藤健)は30歳の郵便配達人。仕事帰りの道で突然の頭痛に襲われる。気がついたら病院にいた。医者の話では脳腫瘍でもう長くないという。意外にも取り乱さなかった。とりあえず一旦家に帰る。
そこには僕そっくりの男がいた。男は自分を「説明するのがめんどくさいから『悪魔』ってことで」という。
彼に言わせると世の中から何か一つ消すことに同意してくれれば1日命を延ばそうという。
しかもその消すものを決めるのは自分ではなく、悪魔だ。
悪魔は「電話を消そう」という。「最後に電話したい人はいないの?」。
僕は別れた彼女(宮崎あおい)に電話した。彼女とは実は電話がきっかけで知り合ったからだ。
僕が友人から借りたDVDで映画を観てるときに彼女が間違い電話をかけてきたのだ。彼女は僕の観ている映画を「『メトロポリス』観てますか?」と言い当てた。
それがきっかけで話すようになったのだ。彼女とは年も近く、しかも大学が一緒だったのだ。


「世界から猫が消えたなら」とかいう甘ったるいタイトルだし、あまり私の趣味の映画ではないのだが、佐藤健主演ということで観に行った。
死ぬ直前に悪魔が出てきてどうしたこうしたというファンタジー映画というか、10年位前に流行った難病ものだなあと思って、観始めたがちょっと映画世界にはのめり込めない。

しかも「僕」は映画ファンでさらに詳しい映画ファン・タツヤ(濱田岳)が出てくる。
このタツヤ(通称ツタヤ)は「私」は好きになれないタイプで、「これを観ろ」と映画を薦めてくる。
でその薦められる映画が「ブエノスアイレス」とか私のよく知らないジャンルの映画。苦手だなあ、こういうタイプ。しかも「俺は映画に詳しい」という空気がガンガン出していて、私には鼻持ちならない。
苦手なんですよ、こういう「俺は映画に詳しくて俺が薦める映画のよさを解らない奴はバカだ」的な態度をする奴。

前も書いたかも知れないけど、最近達した境地が「この世にはいい映画と悪い映画はない。好きな映画と嫌いな映画があるだけだ」ということ。自分の好みを押しつけるな。
でもまあ私も人に映画を薦めることはあるから気をつけないと。

で次に悪魔が消すのが「映画」。
この「何かを消す」ということを悪魔がするとそれにまつわる思い出まで消えてしまう。
タツヤの勤めるレンタルDVD店は書店に変わっていく。
このあたりの描写は面白い。
でも「電話」の時に思ったけど「電話」がなくなれば世の中のありとあらゆる電話に関わる仕事が変わってしまうよ。携帯や公衆電話が消えるだけではすまない。

実はラストで「悪魔」は悪魔ではなく、「僕」自身だったということに気がつく。それってつまり主人公の妄想だったってこと?
だとすれば電話がなくなろうが、映画がなくなろうが、時計がなくなろうが世界に変わりはない。

途中、映画は唐突に「僕」と「彼女」がアルゼンチンに旅してるシーンになる。唐突すぎてこれが回想なのか、主人公の夢なのかよく解らず混乱した。(結局は回想だったけど。佐藤健と宮崎あおいが今までのシーンと同じで、大学生なのか、現在の30歳なのか判然としないのだな)

あとこのアルゼンチンのシーンで日本人のバックパッカーが登場する。で、この男が「時間を区切って生活する生物は人間だけだ。俺はそういうことはしたくない」とか言ってるけど、要は働かないダメ人間でしょ?
こういう人物をあまり好意的に描いて欲しくないなあ。
やっぱり人間働いて、社会の一員にならないと。

原作は映画プロデューサーなので、映画愛を感じたが昔から「映画愛を映画で語る」のは好きではないので、あわない映画だった。

それに映画愛ったって「フィルム第一」というスタンスまでこだわってるならともかく、主人公たちはDVDで観てるからね。その辺の中途半端なスタンスも馴染めませんでした。















殿、利息でござる!


日時 2016年5月21日15:55〜
場所 新宿ピカデリー・シアター6
監督 中村義洋


江戸中期。今の宮城県にある吉岡宿は重税に苦しめられていた。これを何とかしたいと穀田屋十三郎(阿部サダヲ)は考えていた。そこで京で茶作りを学んできて帰ってきた村一番の切れ者と評判の菅原屋篤平治(瑛太)に相談する。
篤平治は「お上に銭を貸し、利息をいただき、それを村の財政に当てる」というアイデアを出す。金額は千両。今の貨幣価値で言えば3億円ぐらいである。もちろん一人では無理。しかし村の商売をしているところが今のお金で3000万円ぐらい出せば集まらない額ではない。しかしお金を出したところで自分のところには戻ってこない。
十三郎は叔父の十兵衛(きたろう)に相談。快諾してくれた。しかしもしお金が集まっても肝心のお上が承知してくれなければなんともならない。
お上と自分たちをつなぐのは肝煎の遠藤(寺脇康文)や大肝煎の千坂(千葉雄大)だ。彼らも賛成。
お金も順調に集まり始めるが。


「実は実話です」がコピーになっている時代劇。
時代劇だけど、経済が疲弊し貧乏で負の連鎖が起こっているというのは実に現代に通じる。
しかも妻夫木聡出演作の久々の公開。妻夫木作品は「バンクーバーの朝日」以来じゃないか?(「黒衣の刺客」は数に入れない)
(注:失礼!「家族はつらいよ」があった)

自分の利益より村の利益優先、村の利益が結局は自分の利益、と考えられる「いい人」ばかりが登場する。
これがフィクションなら「脚本をもうひと捻りしたら?」と言いたくなるが、「実話です」と言われるとその反論は出来ない。

人の善意にあふれていて、心地よい。「それに比べて今の人は・・・」とグチの一つも言いたくなる。
企業も政治家も自分のことばかり。
こう言った無私の人々が集まった奇跡の物語とでも言うべきか。

その中でも両替屋(西村雅彦)が最初に「金儲けになる」と勘違いするあたりは人間的でほっとする。
千葉雄大の大肝煎がちょっと若すぎると思えるが、これもたぶん実話なのだから、と納得する。
この大肝煎のすごいところは「喧嘩をしない、金を出したことを言わずに謙虚に生きる」という約束を交わしたことだ。金が入らないなら名誉を、という人間の浅ましさを戒める。

しかしその彼も最初の嘆願がお上の財政部長的な松田龍平に却下されたときに「私にも立場があるので再考の申し出はなかなか言い出せない」と言ったときに篤平治に「あんたどっちを向いてるんだい!」と叱責されるシーンではちょっとキャラクターの描き方がぶれてる感じがした。

ラスト、殿様も登場。これがフィギュアスケートの羽生結弦。なかなか若殿様が似合っていた。
きたろうがラジオで言っていたが、このキャスティングは出演者にも発表されておらず、撮影当日に羽生氏が登場したので、みんな驚いたそうだ。


で妻夫木聡。今回はちょっと体の弱い役で大人しめのキャラクターのため、元気がない感じがしてしまいファンとしては消化不良。

「いい人ばかりが登場する」というのはちょっと気になったが、たまにはこういう善人が活躍する映画もいいかも知れない。
面白かった。今年のベストテンに残ると思う。
















HK/変態仮面 アブノーマル・クライシス


日時 2016年5月21日13:15〜
場所 新宿バルト9・シアター6
監督 福田雄一


色丞狂介(鈴木亮平)もいまや大学生。彼女の姫野愛子から「変態でない狂介くんになって欲しい」と言われて変態仮面への返信は控えていたが、強盗を見かけて見かねて変身。でも宅配ピザのバイトもクビになった。
そんな時、大学中の女子のパンティーがなくなる事件があった。犯人は愛子に惚れている大金玉男(ムロツヨシ)。
彼は巨大な吸引装置を使ってパンティを盗んでいた。
大学では真面目な同級生の真琴正(柳楽優弥)と友達になる。真琴は大金にたぶらかされ、愛子は真琴のことを好きだと吹き込まれる。それを信じた真琴は大金の力でロボット・ダイナソンと一体化し、日本中の女性のパンティを吸引し始める。
変態仮面は使用済みパンティでなければ変身できない。
果たして狂介は大金や真琴から愛子を守れるのか?


前作からもう3年。
本来なら低予算でビデオ発売のみ、というような下ネタギャグマンガがシネコンで公開されること自体驚きである。
公開2週目の土曜の昼間という比較的入りやすい時間帯といこともあって、劇場も混んである。
何にしてもヒットするのはよい。

キャストも柳楽優弥という強力なゲスト登場だ。
で、面白かったかというと私はさほど面白くなかった。
というのは「パンティを被って能力を発揮し、悪をやっつける」というアメコミヒーローもののパロディ的な面白さなのだが、1回目はそれでよかったが、2回目となるとインパクトはない。言ってみれば「出オチ」みたいな映画で2度観ると面白さ半減である。
私にしてみれば完全な出涸らし。

柳楽優弥も登場だが、途中からダイナソンに乗ってこれがコスチュームをつけるから、誰でもよくなってしまう。
私は元々顔を塗ったり絵を描いたりするのが嫌いなのだ。
もうちょっと前半での柳楽の活躍があったらなあ。

ムロツヨシの敵役キャラもねちっこくて好きなタイプではない。
後半、狂介は修行に出るのだが、この人も顔にものを塗ってるタイプでキャラ作りで何だかなあ。

一事が万事好きになれない、物足りないという点が多く、私には楽しめなかった。時々少し寝落ちした。
30分寝てしまって映画のラストが解らなくなることはなかったけど。

前作よりは予算が増えてる感があったけど、それが返って無駄に使ってる感がした。
こういった下ネタ企画はむしろ低予算のチープのほうがあってるのかも知れない。
もちろん作る方にしてみれば、予算はあった方がいいに決まってるだろうけど。













にっぽん泥棒物語


日時 2016年5月15日16:30〜
場所 ラピュタ阿佐ヶ谷
監督 山本薩夫
製作 昭和40年(1965年)


昭和23年。敗戦により日本の常識がひっくり返って大混乱の頃。林田義助(三国連太郎)は農家の土蔵を破って中にある着物などを奪って仲間の呉服屋に売りさばくのが商売。すでに前科4犯。
昼間は往診専門の歯科医で、モグリだったが腕はよく評判はよかった。
ある事件で捕まって拘置所で馬場(江原慎二郎)という自転車泥棒と知り合った。保釈中に荒稼ぎをしておこうと馬場と福島県の杉山駅近くの民家の土蔵に盗みに入った。
だが馬場が音を立ててしまい、盗みは失敗。逃げる途中で線路で9人の大男とすれ違った。男たちは訛はなくどうも土地のものではない様子だった。
翌日、列車が転覆した事故があって驚いた。きっと夕べの0人がやったに違いない。しかしそれを言うと自分の泥棒のこともばれてしまうので、黙っていた。
結局捕まった林田たちだが、拘置所で木村という杉山事件で逮捕された男たちに会った。
出所した林田はやり直そうと縁のないダム工事現場で働来始める。そこでまじめさが認められ、はな(佐久間良子)とも結婚出来た。
杉山事件は控訴が続いていた。そんな時、林田は昔の仲間(花沢徳衛)に「杉山事件の人たちは犯人じゃない。俺はあの晩9人の男たちを見た」と話す。
それを聞きつけた杉山事件の弁護士の藤本(加藤嘉)がやってきて証言を依頼する。
だがその証言をする事ははなや息子に自分が前科者というのがばれるのを恐れて、証言を拒否する。


山本薩夫監督作品で「松川事件」を題材にした映画。
有名な映画だし、山本薩夫ファンとしては今まで観てなかったのが不思議なのだが、今まで何度も観る機会があったと思うが、何となく見逃していた。
今回「警視庁物語」(東映大泉特集)と連続で上映なので、これを逃すといつになるか解らないので観てみた。

ああ、確かに世評に違わず面白い。
でも前半が長い気がして気になった。主人公の生い立ちから話が始まるし、特に市原悦子と結婚するあたりは不要で、冒頭に土蔵破りに失敗して「杉山事件」の犯人を目撃するところから話が始まっていいんじゃないかなあと。

「『松川事件』を題材にした」という紹介をよくされる映画なので、「松川事件の告発映画」と思っていたが、山本薩夫としては松川事件は一題材にすぎず、「戦中戦後を生きぬた男の話」がやりたいことだったのかも知れない。
第一タイトルが「にっぽん泥棒物語」だからそう考えるのが自然だろう。
だから「松川事件告発映画」として観ると、山本薩夫からするとそういう言われ方はちょっと迷惑だったかも知れないな。
まず「松川事件」に関しては、すでにこの映画の2年前に全員無罪で解決してるし、山本自身支援団体向けの映画を監督している。

それにしても後半、鈴木瑞穂、加藤嘉、永井智雄らが出てくると私にとっては「山本薩夫映画!」って感じでワクワクする。

「警察の人が嘘ついたらいかんでねえの?嘘つきは泥棒の始まりだろ?」と裁判の最後で三国連太郎がいうあたりが、「松川事件」という一事件だけでなく、世の中すべてのことに対して山本薩夫が言いたかったことなのかも知れない。

あと安東刑事役で伊藤雄之助が相変わらずの好演。



















警視庁物語 ウラ付け捜査


日時 2016年5月15日15:00〜
場所 ラピュタ阿佐ヶ谷
監督 佐藤肇
製作 昭和38年(1963年)


浅草署で無銭飲食で捕まった川村正直(井川比佐志)という男が3年前に起こった多摩のオートレース場脇の枯れ井戸で見つかった女性の殺人事件は自分がやったと言い出した。
当時捜査に当たった長田(堀雄二)、北川(南廣)、林(花沢徳衛)らは浅草署で川村を取り調べる。
女の名前はユキ。心中しようとしたが、ユキを殺して自分は死ねなかったという。しかし川村は女の名字は知らなかったり当時のユキの下着を見分けられなかったり、何かを隠すために嘘を言っていることも考えられる。
その頃世田谷で起こった強盗事件の共犯としても川村は取り調べを受ける。
ユキという女はでっち上げかもしれない。ユキについての情報を川村に話させる刑事たち。川村はユキを使って盗品を質屋に入れさせたことがあるという。質屋を当たったがユキという女は質屋に来ておらず、その代わりに木村もと子という女が浮かび上がった。だが彼女は生きている。
事件の真相は?


まだ3作しか見ていない「警視庁物語」シリーズ。
今回も秀逸な出来である。
「自白している容疑者の裏付け捜査」がテーマ。
劇中、花沢徳衛のベテラン刑事が「戦前は自白しちまえばそれで片がついた」という。別に今の裏付け捜査がいやでグチっているのではなく、戦前との捜査方法が変わったと実感している。
「自白重視捜査」では冤罪を生みやすいというかつての教訓から新憲法下では「裏付け捜査」が重視されるようになった訳だ。
それを改めてアピールするようなのが今回のエピソード。
南廣の刑事は川村が嘘を言っていると疑う。
「世田谷の事件を隠したいために新聞で読んだことのある今度の事件を持ち出した、裁判になって『刑事に無理矢理自白させられた』と言って無罪になって賠償金を貰うつもりかも知れない」という。
なかなか面白い読みである。

ユキは木村もと子が勤めている美容室で助手として働いていた。そこでユキはもと子の身分証明書を使って質入れしていた。
また川村はユキを殺したときに彼女の指から指輪を取った話をする。その指輪は川村が別の女に与えていた。それを追っていくと女はすでに死んでいて、その夫が自分のものにしていて、夫は別の女と再婚し、指輪をプレゼントしていたという指輪が人から人へと渡っていく展開。

ここで刑事たちが訪ねてきたばっかりに指輪の出所が解ってしまい、夫婦が喧嘩になるというオチ。
こういう小さなエピソードがリアリティを感じて私は好きである。

指輪をユキに送ったのは彼女が田舎でちょっとつきあった村長の息子。結局は身分違いと言うことで周りから別れさせられて、失意のうちに東京へ出てきていた。裏付けの為に刑事たちは村長の息子に会う。
彼は指輪をユキに渡したことも認めたし、その指輪が18金(K18)ではなく、「KIS」と書いた偽物で会ったことも認める。

この村長の息子が今井健二なのだが、「で、何かあったんですか?」と聞いて「殺されました」と聞いたときにひどく動揺したので、一瞬今井健二が実は殺していたという展開と勘違いした。
何しろ悪役の多い今井健二だから、うっとうしくなったユキを名家との結婚を控えた村長の息子が殺したという展開かと思ったが、それは読みすぎ。

死体発見現場に川村を連れていき、状況を確認する。
淡々と展開するこのシリーズは好きだ。
他の作品も観たいものだ。














ちはやふる 下の句


日時 2016年5月15日11:45〜
場所 新宿ピカデリー・シアター8
監督 小泉徳宏


全国大会に出場が決まった瑞沢高校カルタ部。しかし千早(広瀬すず)や太一(野村周平)の幼なじみの新(真剣佑)が「カルタはもうやらん」と言っているのを聞き、心配になって新の住む福井まで東京から駆けつける。
しかし新の決意は固く、「今は全国大会だ」と千早を励ます太一。
そんな時、カルタ界でクイーンと呼ばれる若宮詩織(松岡茉優)の存在を知る。彼女は高校生ながら最強と言われていたが、どこかのカルタ部に所属するわけでなく常に一人で戦い続けてきた。
千早は詩織に勝ちたいと思う。勝てば新がカルタをまたやってくれるかも知れない。そう思ったのだ。
しかし詩織との対決の個人戦を重視するあまり、団体戦への練習がおろそかになっていく千早。
そんな千早を部員たちがいさめる。
「一人で戦わないでください。もっと私たちを頼ってください」
千早はチームで戦うことを再認識する。


「ちはやふる」待望の下の句。
でも期待とは違っていた。
私はカルタから離れた新くんがカルタに戻ってきて大活躍をしてくれると思っていたのだ。
ところがまだまだ新くんはカルタには戻ってこない。

初日舞台挨拶で続編の製作が発表され、広瀬すずが泣いたと芸能ニュースで言われてたけど、納得した。
まだまだ話続くじゃん!

今回は一人で戦おうとする千早に対し、「お前は一人ではないんだ!」と解らせる話。
敵チームだった高校のカルタ部に行き、練習試合をさせてもらう(たぶんそういうこと)。
そこで負けてしまい、ドSの部長から「これを見ろ」と部外秘のはずの各高校の対戦データブックを見せてもらう。
「こんなチームに負けたチームと我々を思わせないでほしい」という男気、なかなかいいですねえ。

自分の高校での練習でも吹奏楽部と譲り合ったり、とにかく、「助け合い」(パンフレットによると「絆」)が強調される。
なかなかウルッと来る展開の連続で、楽しかった。

でも新くんの大活躍が見たかったので、今はまだただのウジウジした青年でしかない。
この大活躍が楽しみだ。

松岡茉優は芸達者で、今回は適役を見事に演じていた。

考えてみれば千早たちはまだ高校1年。高校生大会にもまだ2年間出られる。
となると彼らのサーガは続くわけで、今後もまだ3、4作は出来そうな勢いだ。
今度はどんな強敵が現れるのか、詩織との決着はどうなるか?
楽しみである。















ヒーローマニア -生活-


日時 2016年5月13日22:10〜
場所 新宿バルト9・シアター2
監督 豊島圭介


かつてはサラリーマンだったが、会社を辞めコンビニ店員として暮らしている中津(東出昌大)。コンビニの客の傍若無人な振る舞いにも注意できない。ある晩、「カップめん用のお湯がない」ということで客がクレームをつける。その客が投げつけたカップめんがたまたま立ち読みをしていたトシダ(窪田正孝)にあたる。
その騒動が終わった後、店の外でトシダがクレームをつけた客をはり倒しているのを見かける。
中津はトシダの身体能力の惚れこみ、彼を誘って「この街の浄化をしよう!」と持ちかける。
実は下着泥棒のトシダだが、中津と早速ホームレスに花火をぶつける不良集団を文字通り吊し上げる。
それを女子高生・かおり(小松菜奈)に見つかってしまう。「警察に言ってほしくなかったら私も仲間に入れて」と言われ、仕方なく仲間に。
その頃街では中年男がカナヅチで不良な若者を襲う事件が起こっていた。その中年男日下(片岡鶴太郎)も仲間に加わり、4人で次々と街の不良を叩きのめしていく。


「東出昌大コメディ初挑戦!」と言われ、東出がさえないフリーターを演じてヒーローになっていくという話と思って期待していったのだが、出来上がった映画は私が期待したものとは違っていた。

前半の4人がヒーローとしてチームを組んでいくまでの展開はいい。
しかし最初の敵を倒してから次々と街の不良をやっつけていく様をカットバックで流してしまう。

私としては次々と街の不良を毎回作戦を変えて(例えばポスターにあった東出がガムテープを持ってる姿があるけどそれを生かすとか、小松菜奈が「メモ魔」という設定がパンフレットにはあるので、それを生かして情報力で勝つとか)、そういう展開を期待した。

ところが物語はホームレスだった宇野正(船越英一郎)を日下が仲間に入れ、しかも法人化するという「?」な展開になってしまう。
さらにトシダが鬼教官になって部下をしごいたり、「かつての上司が会社の金を使い込んでそれを指摘して辞めた」と言っていた中津が、実は「スナックの女に貢ぐために会社の金200万円を横領して首になった」ことがわかる。

この展開はよくない。
私の映画持論では主人公は観客を裏切ってはいけないのである。観客は主人公に感情移入している。それを裏切るのは面白そうに見えて、実は後味の悪さしか残らない。

ラストは宇野からチームを取り戻し、レインコートの通り魔との対決になって、収まるところに話は収まる感はあるが、途中の展開にはついていけなかった。

私にとっては残念な映画だった。














華魂 幻影


日時 2016年5月9日21:00〜
場所 新宿K's cinema
監督 佐藤寿保


今月で閉館するくらら劇場。映写技師の沢村(大西信満)は上映している映画「激愛」の中に今まで観たこともなかった女性の姿を見る。
営業後、フィルムのコマをチェックしてみたが、その女性は写っていない。しかし劇場の客席にその女性は現れた。女性はヒロミと名乗った。沢村はその夜は仮眠室にヒロミを泊める。
いよいよ閉館の日がやってきた。支配人(三上寛)は受付のアルバイトの子に「君のパンティーが欲しい」とねだる。常連のお客さん(吉澤健、真理アンヌ)もやってくる。
上映が始まった。しかしヒロミはどこかへ行ってしまった。彼女を捜して町を歩く沢村。ヒロミに導かれるままに海岸へ出た。そこは沢村がまだ中学生だったころ、ヒロミと出会った海岸だった。
その頃、映画館では常連客がお互いを「臭い。女のにおいがする」などの罵りあいだす。映画「激愛」の主人公たちも狂い出す。
劇場全体がカオスに包まれていく。


佐藤寿保監督、いまおかしんじ脚本作品。「華魂」の第2弾。でも話のつながりはない。佐藤監督としては4部作としての構想があるそうだ。

正直、あまり好きな作品ではなく、映画にも乗れなかったので、後半30分寝た。
トークイベントで満島真之介が「川瀬さんの回転がスゲー」とか言っていたので、11日にいまおかさんがトークゲストで来るから再び見に行った次第。

ああ、なるほどね。
映画中映画「激愛」の主人公二人は通常の映画では海岸で愛を誓って終わりなのだが、狂った状態になって男が女を追いかけて廃墟で犯してしまう。ついでに男は女の腹をナイフで裂き、その裂け目に自分のペニスを挿入し、そこでヘリコプターのごとく回転する。その後、その腹からダイナマイトが何本も出てくる。
確かにインパクトはあるけど、私はこういうグロ描写は嫌いです。
いまおかさんと寿保さんのトークイベントの時に言っていたが、この描写は寿保監督のアイデアだそうだ。

客席も夫婦(?)役の真理アンヌと吉澤健がののしりあったり、支配人に金を取りたての来ていたヤクザの弟分が兄貴に「惚れてます!兄貴のバラのつぼみ、いただきます!」とケツに挿入する。こういうありきたりな描写がいやである。

寿保監督らしい狂気の世界が延々と続き、主人公の沢村は置き去りにされ、映画のバランスとしては難しい。
結局沢村の前に現れた少女はかつてその少女が強姦された現場にいたにも関わらず、カメラを回し続けたという「人間としての原罪」がよみがえったという結末。

11日は主演の大西信満と彼が「11.25自決の日」で競演した満島真之介のトークイベント付き。
満島さんはこの映画を非常に気に入って感激していた。
「古くさい映画館や映写室などが観たこともない世界でテンションがあがる。沖縄時代にコザにポルノ映画館があったが、当時は入れなかった。でも建物の感じがそれを思い出させる。当時は入れなかったところに入ったような感じがした」というところから始まって、通常の映画では味わえないような興奮を味わったそうです。
僕なんか古い映画館自体には特に興奮はしないけど(好きだが)、「入ったことがない」と言われると年齢のギャップを感じる。昔の映画館はみんなあんな感じだったからねえ。
ちなみに鈴木邦男さんが満島さんに会いに来ていた。
若松映画で森田必勝を演じた満島さんだが、未だに四日市の森田さんのお兄さんとは交流があるそうだ。
鈴木さんにとっても特に思い入れがある映画らしい。
そんな森田必勝役を満島さんが「単なるキャリアの一つ」という扱いでなく、ずっと大切にしていてくれる点が好感が持てる。熱くていい人です、満島さんは。
















アイアムアヒーロー


日時 2016年5月7日14:10〜
場所 新宿ピカデリー・シアター4
監督 佐藤信介


35歳でまだ漫画家のアシスタントをしている鈴木英雄(大泉洋)。同棲している彼女もいつまでも続く貧乏暮らしに愛想がついていた。
そんな時、謎の病気が日本に流行りだした。血液感染するその病気は、すぐに発病し人間がゾンビのようになってしまう。
まずは自分の先生やアシスタント仲間が発病する。彼女も発病する。街中は大パニック!
逃げる途中で女子高生・比呂美(有村架純)と知り合う。
タクシーで逃げ彼らだが、ゾンビが次々と襲ってくる。
ネットの情報ではゾンビ化した人々はZQN(ゾキュン)と呼ばれていた。また高地では発病しないという噂もあり、とりあえず富士山を目指す。
途中で富士山近くのアウトレットモールに逃げ込む。
そこでは伊浦(吉沢悠)をリーダーとする人々が屋上に逃げて生活していた。


評判がいいようだし、なんと言っても佐藤信介監督作品なので、期待したが正直私にはイマイチだった。
たぶんゾンビが好きではないからだろう。

富士山を目指して旅をするロードムービーかと思ったら、映画は中盤でアウトレットに入り、旅は止まる。
鈴木英雄(映画監督と同じ名前だ。字は違うけど)は猟銃を持っているが全然撃たない。というか人が撃てない。
もっとも漫画家のアシスタントがなぜ銃の趣味なんかあるんだろう?

このアウトレットのセットが素晴らしい。
2、3日借りて撮ったわけではあるまい、まさかオープンセットを組んだ?と思ってパンフレットを読んだら、韓国にある閉鎖されたアウトレット(要はつぶれたということか)を日本のアウトレットのように改装して撮影したそうだ。
だからか〜、すげえなあ。
その前の高速道路のシーンも韓国撮影だそうだ。韓国すごい。

有村架純が途中から映画から離脱してしまう。
いや存在はしているのだが、ゾンビに犯されたがまだ完全にはゾンビになってない不思議な状態。
このおかげで後半、せりふないし、ただぐったりしているだけになってしまう。ファンとしては残念。

それにしてもこの映画、撮影自体は2年ぐらい前に行ったとか。有村架純にしてみれば「ビリギャル」(去年のGW公開)の前に撮ったそうだ。
なぜにそんなに公開が遅れたのか。関係者はやきもきしていたろうなあ。

あとアウトレットの支配者として吉沢悠登場。老けた。
タクシーに乗り合わせる官僚の客として風間トオルも出演。

ラスト、ゾンビをついに英雄が撃ちまくる。だがもともとゾンビが好きではないので、私はカタルシスは感じない。
そしてアウトレットを出た後、どこかへ向かうのだが、走ってるままで終わり。
着いた先がどうなってるのか描かれない。
もともと単なるさえない男がヒーローになるのを描く映画だからそれはいらないのかも知れないが、こっちには消化不良感が残った。














太陽


日時 2016年5月7日11:00〜
場所 角川シネマ1
監督 入江悠


21世紀前半、謎のウイルスにより太陽光線を浴びると死んでしまう「ノクス」と今までの人類と同じ「キュリオ」に分かれていた。
ノクスは支配者層となり、文化的な暮らしを贈り、キュリオは隔離された田舎で前時代的な生活を送っていた。
10年前、そんな格差社会に反抗する克哉(村上淳)はノクスとキュリオを分ける門の門番を殺して逃げていった。
そのおかげで10年間その村は経済封鎖された。
10年後、経済封鎖は解かれた。そしてキュリオからノクスへの転換手術の応募が再開された。
19歳の鉄彦(神木隆之介)と結(門脇麦)は幼なじみ。鉄彦はこれを機会にノクスになりたがっていたが、結は否定的だった。
結の母は結がまだ3歳の時にノクスになっていて今は父草一(古館寛治)と暮らしていた。
ノクスになりたい鉄彦はノクスの友達が欲しいと思い、門番をしている森繁(古川雄輝)に近づき、いつしか友情が芽生える。
草一は結の将来を思い、ノクスへの手術の申し込みをした。当選したのは結で鉄彦ではなかった。
そんな時、克哉が村に帰ってきた。


ふ〜ん。
注目の若手、神木隆之介と同じく門脇麦(「愛の渦」)の競演ということで見に行ったがどうも受け付けない。

別れた母との再会とか、父と娘の愛情とか、階級社会の問題とかいろいろと詰め込められているが、私にとってはどれも不発な感じで、話は解るのだが心にくるものがない、というのが正直な感想。

原作は舞台劇だそうで、それを入江悠(「サイタマノラッパー」とか「ジョーカー・ゲーム」とか)が気に入って映画化。
ノクスを支配者層として単純な「悪」に描かず、鉄彦と森繁の友情を通じて「ノクスとも心を通わすことができる」としたのが、返って話を複雑化して焦点をぼやかしたか?

そうは言ってもやっぱり神木隆之介はうまいもので、彼の声とか演技を観てるだけで映画そのものは満足してしまう。
さすがである。

あと古館寛治。
いつもは脇役で知ってはいるが、それほど印象の深い役者ではなかったが、本作では娘の幸せを熱望する父親役を好演。
今までで一番記憶に残る役だったと思う。

克哉が森繁を門に手錠でつなぎ、太陽が昇るとその光で死んでしまうシーンは戦慄だった。
手錠を切ろうとするが何ともならずに手首から切り落とすシーンは怖い(私はこういうの痛そうなのは苦手)。
それでも何とか生き残る。

ラスト、約束通り森繁と鉄彦は車で旅に出る。
その車が旧式のフェアレディで汚し塗装(というか錆ついている)で出てきて驚いた。
「太陽」の時代には完全に残っていないような車なので、入江悠たちには「見たこともない時代遅れの旧車」の象徴だったのかも知れないが、こちらはちょっと知ってる車なだけに似合わない感じがした。
映画そのものにはあまり関係ないですが。