2016年9月

   
あなたを待っています
将軍様、あなたのために映画を撮ります 女エロ事師 情大百科 男の夢芝居 性春哀傷歌 真昼の小夜曲
(セレナーデ)
ザ・ビートルズ 
EIGHT DAYS A WEEK The Touring Years
にがくてあまい XXX(kiss kiss kiss) 地底王国
恐竜時代 怒り オーバー・フェンス 君の名は。
だれかの木琴 四月は君の嘘 後妻業の女 キューティー・ハニー

あなたを待っています


日時 2016年9月24日20:30〜
場所 ポレポレ東中野
監督 いまおかしんじ


昼間は警備員、夜は居酒屋でバイトする西岡(大橋宏之)。彼の目標は「東京は地震と原発で危ないから600万円貯めて女10人連れて地方に逃げる」ということだった。
役者時代の先輩、森尾さん(守屋文雄)に女を紹介してもらうが、うまく行かない。
ある日、駅前で「あなたを待っています」という看板を首から下げて立っている不思議な女、よしこ(山本ロザ)に出会う。
バイト仲間の加藤(佐藤宏)、桜木(吉岡睦雄)らと合コンをするが全く失敗。
西岡はよしこがまだ幼い子供を連れているのを見かける。
彼女の部屋に押し掛け、彼女と娘と食事をする。
「君が探している人は誰なの?」よしこは何も答えない。彼女はいつも何も話さすジェスチャーだけ。
でも探しているのは彼女の夫らしいと解った。西岡もよしこの夫を探すために駅前に立つ。


いまおかしんじ監督の「デメキング」の原作マンガを描いたいましろたかしが映画製作を思い立ち、自主制作のレーベル「ハリケーン企画」を立ち上げその第1回作品がこの映画。
いましろファンの映画監督、松江哲明、山下敦弘も資金的に協力している。
脚本、監督は「昔からの知り合いで、いましろたかしファンでもあるし、低予算でもなんとかしてくれるだろう」という理由でいまおかしんじが選ばれた。

「ジャスティス映画」という今まで聞いたことのなかった映画のジャンル分けがパンフレットに書いてある。
曰く「主人公が周りの迷惑関わらず、自分の正義を追求する映画」ということだ。その筆頭に「タクシードライバー」があげられている。
映画を観る前にパンフレットを読んでしまったのから、意識してしまったが、確かに「タクシードライバー」だ。

主人公の西岡は「地震と原発で東京はめちゃくちゃになる」という思想を持ち、みんなも誘うが当然みんなは反応薄い。
友人の加藤が「俺なんかやりたいだけしか考えずに来たなあ」という訳だ。ある意味、これはいまおかさんの本音かも知れない。

でもこの言葉を発しないよしこという女が後半いらいらしてきたので、私はちょっと観ていてつらくなった。
よしこの夫が森尾さんに似ている、ということで森尾さんを夫として紹介し、「俺をあきらめてくれ」と言わせるのだが、そのトンチンカンな行動が笑いを誘った。
(私だったら、本人になんとかたどり着く展開にするが)

しかしよしこは次の日も「あなたを待っています」の看板を下げて駅前(阿佐ヶ谷南口)に立つ。
なんか裏切られた気がしてこの女が嫌いになった。

結局よしこの実家の電話番号を聞きだし、西岡は連絡を取り、母親(「集まった人々」で「宇宙が見えるよ」と言った人)に迎えに来てもらう。
その時に「バイバイ」と一言だけしゃべった。

「警備員の一日」やこの映画で話さない人物が出てきたが、そのことをいまおか監督に確認したら「やっぱり映画はサイレントから始まったし、台詞なしでどこまで表現できるかもチャレンジしてみた」という趣旨の答えだった。

4月30日に先行上映があり、本日は初日。両日とも満員。
2日目以降の数字が心配だけど、途中一度観に行ってみっようか。















将軍様、あなたのために映画を撮ります


日時 2016年9月25日14:55〜
場所 ユーロスペース1
監督 ロス・アダム&ロバート・カンナン


崔銀姫(チェ・ウニ)は韓国のトップ女優、そして1953年に映画監督の申相玉(シン・サンオク)と結婚した。が76年に申の浮気が原因で離婚。
1978年、崔は香港を旅行中に失踪した。実は北朝鮮に拉致されたのだったが、そのときは真相不明。不審に思った申も香港に行き、崔を探すが、申自身も失踪した。
実は北朝鮮の金正日が自国の映画のレベルをあげるために韓国のトップ監督を拉致したのだった。
崔はおとなしく従ったが、申は脱走を試みたため、強制収容所に入れられた。83年に金正日の計らいにより二人は再会。
二人は再び結婚し、北朝鮮のために映画を作るようになる。
そしてそれから約3年で17本を作り、86年ウィーンに滞在中にアメリカ大使館に二人で亡命。
申監督はアメリカや韓国で再び映画監督として活躍した。


「伝説の大怪獣 プルガサリ」の監督で有名な申相玉監督。韓国から拉致された監督とは聞いていたが、その拉致事件の真相を取材したドキュメンタリー。

正直言うけど、「映画として」全く面白くない。
ただ関係者へのインタビューだけで、面白味がない。ドキュメンタリーは「ある特定の人物(団体)の活動を追うもの」と「関係者へのインタビューをまとめたもの」があるけどこれは後者。
こういったインタビュー集は得てして動きがないのでつらい。
(北朝鮮で撮った映画として「プルガサリ」も数秒登場する)

女優の崔さんはご存命なので、彼女、申、崔夫婦の息子娘、アメリカ国務省(だったかCIA)の朝鮮担当官、韓国のアメリカ情報部で働いていた韓国人、そして日本の映画評論家などが登場。
でも今まで知られている概要が出てくるだけで、特に目新しいという事実はない。
金正日の肉声が出てくるが、金正日の死んだ現在、だからなんだという気もする。

それと崔さんの話を再現したような映像が登場するが、あれは何だったのだろう?韓国で彼らの拉致事件を再現した映画があってそれからの引用なのだろうか?
パンフレットを観ても「使用された映画」として数本登場するが、タイトルが明記されていない。
しかもその映画の一部に日本語字幕があった(ただしこの映画ではトリミングされているので意味のある文章にはなってない)。ってことは日本でも何らかの形で公開されたことのあるプリントを使用したのか?

そして一番疑問なのは金正日との会話を録音したテープの紹介。そんなテープやレコーダーをどうして崔さんは持っていたのだろう?
香港から拉致されたときは荷物もそこそこだったろうに。
ハンドバッグに忍ばせて録音したというが、それにしては音声がきれい。
別に疑うつもりもないが、ちょっと疑問。

未だに疑問も多い事件だそうだが、どの辺が疑問点、なのかそれも併記したらミステリーとしてもっと面白くなった気がする。
















女エロ事師 情事大百科


日時 2016年9月25日18:00〜
場所 高円寺Pandit
監督 岸本恵一(本木荘二郎)
製作 昭和50年(1975年)


女性のレズビアン・ショーなどのショーを客の前で披露するバーを経営するマユミ。今日も女の子のショーのおかげでにぎわっている。
バーテンの安藤とショーの女の子は出来ていたが、マユミもマネージャーのタケダ(野上正義)とも関係を持っていた。
ある日、エロ8mmフィルムを売りに来る男から、「以前の相棒の娘だが、その相棒が死んでしまったので」とちょっと頭の弱いサチコを任される。マユミはセックスをの図無客にサチコを相手にさせればいいと引き受けたのだ。
マユミには大阪の旦那(港雄一)がスポンサーだったが、マユミの部屋に泊まりに来た旦那がサチコを見て手を出そうとする。それを見つけたマユミは、サチコの強姦未遂の慰謝料として1千万円を要求する。


黒澤明のプロデューサーとして活躍したが、ある時東宝から追い出され、やがてはピンク映画の監督として約200本を監督したと言われる本木荘二郎。
ピンク映画の監督しては変名を使っており、その変名の一つが岸本恵一。アダルトビデオの始まりの時代に過去のピンク映画をビデオ化して販売したことがあったそうで、これもその1本。
当時のピンク映画のビデオ化ではストーリー部分をカットしてカラミ部分だけにした「短縮版」にしていることもあったそうだ。
本作はクレジット部分のみカットされている。
(脚本もたぶん本木荘二郎)

「クソつまらない」という評判を聞いていたので、覚悟してみたがそれほどでもなかった。ただ意味もなくカラミが続く訳でもなく、一応ストーリーはある。

この後話はサチコの方はマネージャーのタケダさんが好き、と言ってタケダも独身なので、そのまま自分のアパートでからむ。
大阪の旦那は仕方なくあっさり1千万を支払う。
その金でマユミ新しい店を持とうとするが、マネージャーはサチコを一緒に店をやめちゃうし、ショーをする女の子も大阪の旦那の差し金で引き抜かれる。
従業員がいなくては仕事が出来ないので、マユミは一旦は負けを認める。
しかし「このままでは許せない」と言って再度の復讐を誓うのだった。という展開。
ここでマユミの顔のアップでカットアウトで終わるので、ぶつ切り感がすごい。(客席は受けていた)

マユミママは特技がある。それは100円玉を積み上げてコーラの瓶の注ぎ口の上に積み上げ、自らまたがって大事なところに100円玉を全部入れる。
そこで客のリクエストによって出す枚数を決めて出すという奇跡の特技。
お店でナンバー2の子が、「自分もその芸を身につけたい」とやってみるが、出すときにまとめて出してしまい、枚数をコントロールする事が出来ない。
途中でママがそのショーをするのだが、なかなかユーモラスでよかった。

あと数本は残っていると言われる本木荘二郎監督作品。
機会があれば観てみたいものだ。




男の夢芝居 性春哀傷歌


日時 2016年9月24日14:30〜
場所 光音座1
監督 秋津隆二
製作 ENK


空手家の兵東(牧村耕次)は友人と飲み歩くうちに一軒の新しい店には行った。そこは美しい女性ばかりの店だった。
ゆかりというママに出会い、その日のうちにホテルに行く。ゆかりとのセックスにすっかり陶酔した兵東だったが、ゆかりの股間のペニスを見て仰天!「ふざけるな、俺にそんな趣味はない!」とゆかりを突き飛ばして家に帰る。
しかし家に帰ってもだらしなく寝ている妻を見て幻滅するだけだ。その妻は兵東の弟子の若い男を誘惑している。
兵東はゆかりのことを思い出し、あの快楽を懐かしんでいた。やがて自分も口紅を誘うとしてるのを弟子の関口ハルヒコが見て「先生やめてください。俺は先生を好きなんです」と体をぶつけてきた。


「男の夢芝居」とか「性春哀傷歌」のタイトルからしていかにも古くさい。いや公開された80年代だって古くさく感じたろう。(出てくる1万円札が聖徳太子だから84年以前だ)

兵東とハルヒコが初めて結ばれるシーンでは梅沢富美男の「夢芝居」が流れる。このセンスの古くささはどうよ?
「夢芝居」のヒットは83年ぐらいから84年だから、当時としては最新の曲だったろうけど。

それからは兵東とハルヒコは完全に相思相愛になり、二人で横浜ピカデリーに映画に行ったり、伊勢佐木町をショッピングとベタなデートをする。

一方兵東の妻は別の弟子の上田に「夫の弱みを握って。離婚したいから」と頼む。実は上田はホモで兵東の妻と関係を持たされた若い弟子と出来ていた。
しかし実は兵東先生が好き。
上田は兵東とハルヒコが出来ていると知って嫉妬に燃える。

一方兵東はハルヒコを伴ってゆかりの店に行き、「君のおかげでハルヒコと出会えた」と無神経なことを言ってゆかりをむっとさせる。そこで怒り出さないゆかりは大人である。

結局最後は上田が「俺も先生が好きだった、それを奪いやがって!」と空手の稽古中に技でハルヒコを殺してしまう。それを知った兵東は一撃で上田を殺す。
兵東はハルヒコの遺体を抱えて海岸へ。
そこで「こんなに冷たくなって」と全裸になってハルヒコを暖めようとする。
そして二人で海へ入ろう、と遺体を抱いて海へ入っていく。つまり入水自殺したのである。

ゲイピンクはこういう最後は暗くなるからイヤである。
明るいエンディングにしてほしい。
















真昼の小夜曲(セレナーデ)


日時 2016年9月24日13:20〜
場所 光音座1
監督 小林悟
製作 OP映画


村雨潔(沢まどか)は服飾デザイナー。期日があと10日と迫ったデザインの完成のために海辺の別荘にやってきた。
しかし寝ているときにライバルデザイナーの青山(坂入正三)を殺す夢を見た。しかも起きたらベッドのとなりに青山の死体が!
あわてて一緒に寝泊まりしている弟子のレイジやジュンコ(吉行由美)を呼んでベッドを見てもらうが、そこには死体がない。
実はジュンコが青山を招き入れて死体のふりをさせたのだ。
潔が昼寝をしていると金槌の音がする。思わず起きてイスの修繕をしていた職人に「うるさい!」と怒鳴るが「何だと!」と怒鳴り返されてしまう。もう一度寝る潔だが、今度は夢でその職人に襲われる夢を見る。


いつもやる気を感じない小林悟作品だが、この映画は比較的ましだった。
「自分が人を殺す夢を見て起きたらその死体があった!」なんてヒッチコックがクルーゾーの映画みたいでいいじゃないですか。
でも完全に計算違いがあって早々に弟子のジュンコが青山を家に招き入れていたとばらしてしまう。
ここはバラさない方がいいんじゃないかなあ。
たとえ「犯人は弟子でした」というあっけないオチでも。

潔(セレナーデが好きだから「セレナーデ先生」とか呼ばれている)はその晩からレイジに「怖いから一緒に寝てくれ」「先生変なことはなしですよ」「もちろん」と言いながら先生はしっかりレイジを食っている。
先生もやることはやっている。

レイジも先生の会社が目当てだから「君が大事だ」とか言われても「なら会社をください」とか言うことはいう。
翌日、レイジは青山の元に行き一緒にお風呂に入ってやることをやって青山に「明後日までに奴を精神病院に入れろ」とか指示を受ける。

レイジとジュンコも一枚岩ではなく、「ホモなんて信用できない」と不信感を持ってるのだが、潔の財産をねらってるので一応は手を組んでいる。
で潔はなんとか新しいデザインを完成させるのだが、それを見てジュンコは「先生なんですか、この色使いは!まるで発狂の頃のゴッホみたいです」と気違い扱い。
レイジも「変ですよ」と二人で突っ込む。

潔は一人で出かけてどこかに電話して海岸の岩場で皮ジャンの青年を会い、新聞を受け取る。それだけでなく、青年の体もいただく。
でさらに家に金井という若い男が訪ねてきて何やら報告書を受け取り、その後で体もいただく。

一通り終わった後で、潔はレイジとジュンコを呼び出し、「あんたたちの悪巧みは解ってるわよ」と言って皮ジャンの青年からもらった、レイジが青山と絡んでいる写真を見せる。
「青山の会社は買い取ったわよ」と言い放ち、金井とともに東京に帰るのだった・・・・という結末。

まあ勧善懲悪でよかったですが、やりようによってはもう少しサスペンスが盛り上がったのに、と思うと残念。
脚本監督が小林悟ではこれが限界か。











ザ・ビートルズ 
EIGHT DAYS A WEEK The Touring Years


日時 2016年9月23日18:40〜
場所 TOHOシネマズ新宿・スクリーン11
監督 ロン・ハワード


ビートルズのデビューから解散まで彼らの行ったコンサートツアーの模様を中心にしたドキュメンタリー。
61年から活動を開始し、63年にヨーロッパツアー、そして64年2月のアメリカの「エド・サリヴァン・ショー」に出演したあたりからアメリカでも人気爆発。66年8月のサンフランシスコ公演を最後に4人でのコンサートは終了。以後はアルバム制作での活動となる。

各地での女性ファンの絶叫ぶりや失神する子などの映像は今までにも観たことがあり、特に目新しくはない。
でもビートルズの音楽が、聴きなれたレコードとは違ったライブ演奏で聞こえるとまたファンとしてはちょっと得した気分。

また当時のビートルズは1曲歌うとお辞儀をする。
いまからするとスーツ姿だし、ずいぶんと行儀がいい。

アメリカツアーでまだまだ当時南部では人種差別があり、客席を黒人と白人で分けようとしたので(それが当時南部では当然だった)、それをビートルズが「それでは行かない」と言い出して、人種の差別なく客席が解放されたそうだ。
ふ〜ん、それは知らなかったなあ。

またニューヨーク公演にウーピー・ゴールドバーグやシガニー・ウィーバーが行った話をしていた。
そのNY公演だが、当時野球場でコンサートを行うことなんかなくて、音響設備もろくなもんじゃなかったらしい。
極端に言えば場内放送用のスピーカーを使っていたとか。
今は野球場でコンサートをするなんて当たり前だけど、これはビートルズが作った習慣だったんだな。

リンゴが当時の思い出として、「音なんか聞こえずに、ジョージなんかの尻の動きなどから判断していた」という話が面白い。今はみんな耳にイヤホンしてますからね。
(それも最近は飾りがついていてイヤホンっぽくないが、10年ぐらい前のライブを観ると「イヤホン」って形がわかるものだった)

映画「ヘルプ」の思い出をポールが話していたけど(新撮影のインタビューで)「実をいうとあの映画を撮っているときはほとんどマリファナでラリっていた」という。
本人たちは気に入ってないようだが、リチャード・レスたーの演出は、後の歌手出演の映画に与えた影響は大きいと思う。

日本公演のシーンが思ったより長かった。
当時「神聖なる武道館でチャラチャラした連中がコンサートなどけしからん!」という意見があったとは聴いたことがあったが、本当だったんだ。
赤尾敏が反対の演説をしてるカットがちらっと映り、電柱に貼られた赤尾敏のビラにも「ビートルズは帰れ!」的なことが書いてあった。

日本公演の時にブライアン・エプスタイン側から「1万人以上の会場を確保すること」と言われて、当時それだけの人数の会場は武道館しかなかった、と聞いたことがある。
「1万人以上の会場確保」というので「がめついなあ」とその話を聞いたとき思ったけど、この映画によると「5千人の会場でコンサートをするとその外に5万人来るから、大混乱する。だから大きな会場でコンサートを」と警察などから言われていたというエピソードが出てきた。
なるほど、そうだったのかあ。

ブライアン・エプスタインがゲイだったとか、ジョンに惚れていたとかの噂を以前聞いたことがあったが、そういうゴシップめいたことはこの映画では一切なし。
ひたすらコンサートツアーの歴史を追いかける。

(映画を観た後でブライアン・エプスタインについて検索してみたら67年に亡くなっていた。彼の死がビートルズのコンサートツアーをやめたことにも関係するようだが、そのことはこの映画に出てこない)

またジョンが「僕たちはキリストより有名」とイギリスのインタビューで話し、それがアメリカでは「キリストを冒涜している」などと批判され、ビートルズのレコードなどを集めて割ったりグッズを燃やしたりする抗議運動をあったんだそうだ。
それも知らなかったなあ。
それだけビートルズの存在は当時社会現象で、人気もあれば批判もあったんですね。

レコード制作に専念してからの彼らについてはさらっと紹介だけされ、映画「LET IT BE」と同じ、レコーディングスタジオの屋上でのライブシーンでこの映画は終わる。

ここで1時間40分ぐらい。
「まだ終了予定まで30分あるよなあ」と思っていたら、ニューヨークのシェアスタジアムでの公演を前座含めて50分だったのをビートルズの部分だけにして30分にしたものを上映。
日本公演が30分程度だった、と聞いて「日本だから30分だったのか、バカにしている」と思ったら、どこでもそのくらいだったのか。
(去年のポール・マッカートニーは3時間歌った)

この映画ではダイジェストシーンばっかりだったから、たっぷり30分公演を聞くとコンサート気分になる。
しかも4Kレストアだそうだから、音も画もクリア。
このNY公演のシーンだけでも元は取った気分になった。
映画が終わって、私一人、ちょっとだけ拍手した。
そういう気分になった。














にがくてあまい


日時 2016年9月22日8:50〜
場所 TOHOシネマズ新宿・スクリーン5
監督 草野翔互


広告代理店に勤める江田マキ(川口春奈)は野菜嫌いで食事よりも仕事を優先させるような女。今日も行きつけのバーのゲイのマスター相手に仕事のグチを言っていた。そこへ客の片山渚(林遣都)と知り合う。イケメンぶりに思わず渚に関心を寄せたマキだったが、翌朝自分の部屋で起きてみたら部屋は掃除され、しかも渚が食事を作っている!
一瞬「夕べはしてしまったか?」と思って渚を問いつめると「俺は女には興味ないの。つまりゲイってこと!」と言い放つ。
しかしマンションの部屋の更新も迫っており、渚に関心を持ったマキは同居を申し出る。断る渚だがマキは渚がゲイだとばらすと脅し、同居を受け入れる。
渚はベジタリアンでしかも料理上手。
マキは最初は野菜ばかりの料理をいやがったが、渚の作る料理のおいしさにますます渚を好きになっていく。
今度任された仕事はゴーヤのCM。迷いながらも引き受けるマキだったが。


林遣都がゲイ役で出演と聞いて観たくなったこの映画。
9月10日公開だが、新宿では2週目はすでに1日1回の上映。パンフレットも作っていない。そもそもビデオ公開が中心の映画だったか。

正直、「女の妄想映画」だな、と観初めていやになった。
「自分は何もしなくても食事を作ってくれる男」というのは「植物図鑑」と全く同じ。最近の女子はそんなに料理が出来ないのか?
で、男をゲイにするという安易な発想。

最初に渚がマキの部屋に泊まった朝に、マキは渚が高校教師と知る。それで「学校にゲイだとばらす。それがイヤなら同居しろ」と迫る。
サイテーである。そういう奴がいるからゲイはカミングアウトをためらってしまうのだよ。ここで帰りたくなった。
マキが通うバーのマスターもオネエだし、「あたしはゲイの友人もいる進んだ女」とか思ってるんだろうな、マキも作者も。

しかもマキは「お前のおかげで女を愛する喜びを知った」という妄想をする。その後ネットの質問検索で否定されるけど。

ゴーヤのCMもモデルに起用しようとした女性子役タレントが渚の作ったゴーヤの茶碗蒸しを食べさせて成功とか都合よく進む。

で、マキの野菜嫌いは実は父親がかつて脱サラして農家になったが、最初は野菜が出来ずに収入はなく家族に迷惑をかけたことから父親嫌いになってそれで野菜まで嫌いになった女。

最後は渚と一緒に父親(中野英雄)を訪ね、和解するんだけど。父親と「娘と結婚してくれ」と頼まれるが「すいません、俺ゲイなんです。出来ればお父さんの方がいいくらいです」という。
バカか、と思う。ゲイは男なら何でもいいと思ってるのか、作者は。

結局最後に二人の仲はこうなった、という結論はなく終わる。
それはそれで良いけれど、マキの母親(石野真子)がマキの送る野菜の入った段ボールにBL小説だかマンガだかと入れる描写にはあきれる。ゲイとBLをごっちゃにしている。まあ所詮作者はゲイを理解せずに「BL=ゲイ」という単純な図式で考えてるんだろうな。

渚は同じ高校の後輩の体育教師(真剣佑)にちょっと想いを寄せている。でこの後輩がやたら懐いてくる。それで関係が進展したのかというと何もなし。
私なんかはマキと渚の関係より、こっちの関係が気になったから、失恋でも相思相愛でもなんらかの結論は出してほしかったかな。














XXX(kiss kiss kiss)


日時 2016年9月18日11:00〜
場所 シネマ・ノヴェチェント
監督 矢崎仁司
製作 2015年(平成27年)


「XXX」と書いて「キス・キス・キス」と読ませる若手脚本家集団「チュープロ」と矢崎監督が組んで映画化された1話30分強の5つのオムニバス。(上映時間2時間48分)

「儀式」脚本・武田知愛
図書館につとめる主人公(女)は同棲相手と喧嘩した。その相手はバンドマンなのだが。

観てるこっちの理解力なのだが、始まりは散らかった主人公の部屋で、彼女がそこでぼーっとしているのだが、やがて起き上がり仕事にいく。そして公園にいるカットになってバンドをやってる男と知り合うという流れになる。
だから時系列通りに進んでると解釈し、映画には出てこなかった男と同棲していて新たにバンドの男と知り合った、という流れだと思っていたので、ラストの散らかった部屋にバンドの男が現れたので、「ああ回想だったのか」と分かった次第。
以前、矢崎監督がトークイベントで「カットが変われば時間が100年飛んでいてもいい」と言われたので、そういう考えの方なんだろうな。

で結局最後はバンドの男とキスして二人はよりが戻って終わり(だったと思う)。

ついでに言うならば、1エピソードが終わって次のエピソードがフェードイン、フェードアウトなどの句読点的手法なしに始まるので、非常にわかりにくい。
映画自体もそんなに起承転結がはっきりした話ではないので、何となく始まって何となく終わるので、次のエピソードになったのかそうでないのかが非常に分かりづらくて困った。

「背後の虚無」脚本・朝西真砂
東京の大学生の夏男(柿本光太郎)は夏休みには故郷の山梨に帰り運転代行のバイトをしていた。一緒に仕事をする幼なじみの成生(安居剣一郎)に思いを寄せていた。
しかし今年の夏はもう成生はいない。ガンで亡くなったのだ。喪失感でいっぱいの夏男だが、ガソリンスタンドで働く少女との出会いがあった。

強いて言えばこの作品がいちばんよかったと言える。
夏男は紙巻きたばこを作るのがうまくて、自分がたばこを作る時、両脇のフィルターをセットし、出来上がった後両脇を相手とくわえ真ん中で火をつけるということをする。
「キスキスキス」がこの映画のタイトルだが、唯一直接的なキスシーンがないのがこの作品。
間接キスが夏男の心境を表していてよかった。
その後、ガソリンスタンドの女の子とも同じことをするのだが、火をつけてからたばこ同士を離すまでの時間が短く、夏男の心境が出ていた。

ただし紙巻きたばことか今誰もしないし、たばこもみんな吸わなくなってるし、時代的にあわなくなってる気もする。
あと成生がガンで死ぬという展開も安易。

「さよならのはじめかた」脚本・中森桃子
二人で住む老夫婦。最近は葬式の出席も多い。仏壇に子供の写真が飾ってるので、幼くして子供は亡くなったらしい。
妻は病院に検査にいく。結果はガン。
二人は何事もなかったように暮らすが、やがて夫一人になる。

老夫婦の一人が死んでいく話。
途中、中学生の少女が登場し、フィルムの入っていないカメラを使って撮るという行為を楽しんでいる。
全体的に言えるのだが、特に話に山もなく終わって消化不良感は否めない。

「いつかの果て果て」脚本・五十嵐愛
街道のレストランの駐車場で客を捕まえ売春する主人公の女。
車に乗っていくが、それをつける男(草野康太)がいる。
橋の近くで女は降ろされる。そこへ別の車がやってきて、女は倒れてしまう。別にぶつかったりしたわけでもなかったようだが、女は「怪我した」とか言いだし、男も「あんな保険とかは?」と言い出す。
橋のたもとには小学生ぐらいの女の子がいた。

これもまたなんだか展開のない映画で、観ていて感想に困る。
冒頭の客を取るシーンで、人気のない駐車場でライターで合図をして、その後スカートを開いて股間の中を見せるようにして合図をする、という客の誘い方がよかった。

「初恋」脚本・大倉加津子
高校生の頃から金魚屋を開くのが夢だったトムラ(川野直輝)だが、今は店がつぶれて借金だけが残った。
そこへ高校時代の同級生京子がやってくる。
久々の再会の京子だったが、彼女は今は振り込め詐欺のメンバーで、指名手配中だった。

やっぱり短編とは言え5本観るわけだから記憶ももうろうとなる。特にこの作品がどうのというより全部どれも自分としては引っかかるものがなかったわけだから特に「初恋」に罪はないが、記憶に残らなかった。
作った人たちへ。ゴメンナサイ。

















地底王国


日時 2016年9月18日
場所 
監督 ケヴィン・コナー
製作 1976年(昭和51年)


19世紀、鉱山家で大金持ちのデヴィッド(ダグ・マクルーア)はペリー博士に資金を提供し地底探検用ロケットを開発する。
大勢の人に見送られながら出発するデヴィッドとペリー。
しかしロケットは思わぬ方向に向かい、彼らは地底世界に出てしまった。
そこには原住民が居たがサゴスという背の低い、獣のような人間に支配されていた。原住民の話ではメーハーと呼ばれる翼竜がテレパシーによってサゴスを使って原住民を支配していた。
その原住民の娘ディア(キャロライン・マンロー)に一目惚れ。博士は原住民の残していた石版からメーハーの弱点を探ろうとする。


この映画のことも全く知らなかった。
公開は1976年8月だというから「タワーリング・インフェルノ」と同時期か。それなら大作の陰に隠れて見逃していたかも知れない。今なら観ただろうけど。

日本版のポスターを観ると地底に向かうマシンが中央に大きく描かれており、このマシンが大活躍するように見える。
それを期待したのだが、実際に観てみたらマシンは冒頭に地底に向かって、その地底世界ペルシダーに到着してからは一切活躍しない。がっかり。
海底軍艦・轟天号並の活躍を期待したが全くない。
(ペルシダーってのは「ウルトラマン」に登場した地底戦車の名前と同じだと思うが、元ネタなのかな)

で、メーハーと呼ばれる翼竜なのだが、日活の「ガッパ」のような形状。しかも空を飛ぶようなことはなく、ただ立って体を揺らしてるだけ。
こういうのを観ると日本の怪獣映画がいかにレベルが高かったがよくわかる。
低予算のゴジラ映画だって、もう少しデザインとか設定とかに工夫があったよ。

デヴィッドの活躍でサゴスを倒し、原住民の解放に成功する。
なぜ地底に光があるのか(しかも夜はない)そういった説明は一切なし。
最後はデヴィッドはディアを妻にして地上に帰ろうとするがディアは断る。

でこの地底世界にたどり着いたときに壊れた地底マシンの故障を直し、地底マシンの発射台も作ってもらって(最初に地上から出発するときは下向きなのはわかるけど、今度も下向きだぞ)、地上に帰る。

ワシントンのホワイトハウスの庭に地底ロケットの先端ドリルが登場し、警備兵があわてるところでクレジット。
半裸のネーチャンも登場しないし、怪獣は情けないし、メカは活躍しないし、(私には)見所の少ない映画だった。














恐竜時代


日時 2016年9月18日14:30〜
場所 
監督 ヴァル・ゲスト
製作 1970年(昭和45年)


太古の昔、まだ月がない時代である部族は天変地異に対して若い女を生け贄にして祈りを捧げていた。
今回生け贄にされることとなったサンナ(ヴィクトリア・ヴェトリ)は死の恐怖から海へ飛びこみ、おぼれそうにんったと頃を漁師たちに助けらる。
その中の一人、タラ(ロビン・ホードン)に想いを寄せるサンナ。しかし村へ帰ってみるとタラを愛する村の娘アヤクによってサンナは閉じこめられてしまう。
そこで漁で捕まえた首長竜が海岸に縛り付けていたが暴れだし、タラは首長竜を倒し、村を救う。
しかし殺されると思ったサンナは村を逃げ出す。
そこでは恐竜や大蛇、人喰い植物が現れる!


某所で行われた上映会。
不勉強な私は全く知らない映画だった。日本の怪獣映画、特撮映画はほぼ観ていると思うが、洋画になると追いきれない。映画館で上映されることもないし、DVDも成ってないのも多いし、基本B級扱いだから情報もないし。
と観てない言い訳をしてしまった。

本作では登場人物が英語ではない別の言語を話している。
イタリアかどこかの製作なのかなと思ったが、そうではなく、この映画のための言語らしい。
「あっちだ」「こっちだ」「行け」とかの単語だけだけど。
公開当時のパンフレットではちゃんと彼らの言葉とその意味が紹介されている。
製作はハマープロ。ワーナーが配給だから一応はアメリカ映画だが、製作はイギリスだ。

この映画の見所は正直、パツキンネーチャンのヴィクロトリア・ヴェトリの半裸姿だな。
ブラジャーの上紐部分がなくてオッパイが上半分だけ出ていて乳首が見えそうで見えないのが何ともじらされる。
日本公開版では見えないけど、オリジナル版ではちゃんと写ってるヴァージョンもあるらしい。
木の上に隠れたサンナに大蛇が巻き付くカットなどどうしようもないエロティックさがある。

恐竜はダイナメーションなのだが、人間との合成が実に素晴らしい。人間も人形なのかと思ったら、そうは見えない。

サンナが村を逃げ出した後、助けようとタラが追っかけてきたり、元の村の酋長がこれまた生け贄にせんと追っかけてきたり、タラに想いを寄せる女によってこの村の住民ににもサンナは追われて、もはや四面楚歌なのだが、ラストでは月が誕生して干潮が起こり、逆に津波も起こるという、そもそも人間と恐竜は同じ時代には生きていないという矛盾も無視し、物語は進む。

だから結局これは地球の話ではなく、別の惑星の物語と解釈しましょう。













怒り


日時 2016年9月17日12:30〜
場所 TOHOシネマズ新宿・スクリーン4
監督 李 相日


ある夏の日、八王子の住宅街の一軒家で夫婦が惨殺された。犯人は自宅にいた妻を殺した後、夫の帰宅を待って殺害したらしい。リビングの扉には大きく「怒」と血で書かれていた。犯人は遺留品などから山神という男と判明。しかし指名手配から1年、一向にその行方は知れない。
千葉。家出していた愛子(宮崎あおい)は風俗店で働いていたが、かなりダメージを受けているところを保護され、父親の洋平(渡辺謙)の元へ。父は漁業の組合で働いていたが、そこでは2ヶ月ほど前から田代(松山ケンイチ)という素性の知れない男が働いていた。
東京。エリートサラリーマンの優馬(妻夫木聡)はゲイナイトなどで知り合った男とその場限りの恋愛を楽しんでいたが、ある日ハッテン場で直人(綾野剛)という男と知り合う。「行くところがない」という直人を家につれて帰り、そのまま住まわせる。
沖縄。母の男関係が原因で沖縄にやってきた泉(広瀬すず)。転校先で友達になった辰哉(佐久本宝)に近くの無人島につれてきてもらう。そこで泉はバックパッカーの田中と名乗る男(森山未来)に出会う。
ある日、泉は辰哉と那覇に遊びに行く。だがその帰り、酔った米兵に泉はレイプされてしまう。


数ヶ月前から予告編が流れていたし、去年、新宿2丁目でロケということでエキストラ募集のチラシを見たことがあったのがこの映画。
何と言っても妻夫木聡がガチのゲイ役で出演となれば興味津々である。(今年は「無伴奏」の斎藤工と池松荘亮とか有名俳優がゲイ役を演じる時代になってきた)

それにしても話の構成がよい。
犯人は逃亡中、そして日本の3カ所に得体の知れない青年が現れる。たぶんこの中の誰かが犯人。(3人とも違う可能性だってある)

そしてそれぞれを愛し信じながら、しかし「ひょっとしたら?」と疑い始めるサスペンス。通常は一つの物語なのだが、それをオムニバス的に3つやってしまう設定がうまいなあと思う。(もっともこれは映画の力ではなく、原作の力なのだが)

しかもそれをオールスターキャストで映画化したのはさすがである。実力派の俳優が演じるとやっぱり映画全体の重みが違う。
特に今回注目したのは宮崎あおいと広瀬すずだった。
愛子は家出して(なぜ家出したかは映画では出てこない)、歌舞伎町のヘルスで働いていた。「客の言うことを何でも聞くのでエスカレートしてしまった」と歌舞伎町の女性サポートをしている人に洋平は連絡される。
直接的には描かれないが、愛子はちょっと弱い感じの女だ。ひょっとしたら今までだって「頼まれればやらせてくれるヤリマン」と言われてる女だったかも知れない。
それを演じる宮崎あおいも今までも清純的なイメージを捨てての新境地である。

そして広瀬すず。先週の「四月は君の嘘」に引き続き、2週連続で出演作が公開されるという売れっ子ぶりだが、今回は今までの女子高生のイメージを覆すレイプされる少女役。そんな展開になるとは思わなかったから実に驚いた。
単なるアイドル的女優ではない、実力派女優になると思わせた。今年は「ちはやふる」「四月は君の嘘」「怒り」の4本で女優賞を取らせてあげたい。

そして妻夫木聡と綾野剛。
妻夫木のヒゲ姿がゲイ雑誌に出てきそうなステレオタイプなイメージを若干感じないわけではないが、まあ現実にいない訳じゃないし、妻夫木なら何をしても似合うので許す。
綾野剛とのラブシーンも手抜きがなく、特に二人が出会うハッテン場のシーンは観ていて嘘くささがない。ただし出会ってすぐに挿入するのはいかがなものかと思うが。

結局犯人は直人も田代も犯人ではない。
直人は途中から優馬の前から姿を消すのだが、警察から「大西直人さんをご存じですか?」と電話があったとき、つい「知らない」と言ってしまい、部屋に残された彼の痕跡を消してしまう。
やっぱりゲイとしてはどこかで「ゲイを公開したくない部分」ってあって、知られるのを恐れている。ゲイであることによって人間関係とか今まで築いてきた地位や立場がこわれるのではないかという恐れがある。
どんなに「LGBTに理解を」という社会になっても言葉と実際は違うのが当たり前だ。
優真の行動も無理はない。

そしてラスト。直人のその後が明らかになる。
その余りに残酷な結末には涙するしかない。
沖縄編のラストもハッピーエンドではない。
だからこそ、千葉編でハッピーエンドの結末は本当によかったと心から思える。

重量級の人間ドラマ。今年のベストテンの上位になることができる良質なドラマである。
よかった。

加えておけば事件の犯人について知る男役で、水澤伸吾が登場。印象に残る役を好演していたので、これがきっかけとなってテレビ映画に出演が続けばいいと思う。












オーバー・フェンス


日時 2016年9月17日16:20〜
場所 テアトル新宿
監督 山下敦弘


函館の職業訓練所。ここの建築課コースでは様々な人々が集まっていた。白岩(オダギリジョー)は仲間の代島(松田翔太)に誘われキャバクラで田村聡(蒼井優)と出会う。動物のように踊る姿は数日前に町のコンビニの前で見かけたことがあった。
代島は知り合いからキャバクラの店長をやらないかと言われていて、白岩にも「一緒にやりませんか」と誘う。
「どうせ面倒くさいことは俺にやらせようって魂胆だろ」と思った白岩は乗り気ではない。
聡がまた会いたがっていると代島から聞いた白岩は、彼女が働いている遊園地に遊びに行く。
それから二人の関係は深まっていったが、白岩が結婚指輪をしていることから別れた妻の話になり、聡は怒り出す。
一旦は別れた二人だったが、再びよりを戻す。


山下敦弘監督最新作。本日公開。
山下監督は「苦役列車」や「おんなの河童」などでいまおか監督とも縁のある方なので、観に行く。
これがさすがに目の玉くり貫くような映画だと敬遠するのだが、オダギリジョー、蒼井優、松田翔太、満島真之介など豪華俳優陣で今日観た「怒り」にもひけを取らない布陣だ。

そういうことで観に行ったのだが、正直、私にはもう一つである。
蒼井優の聡は男名前である。そのことについて聡は「名前のせいでいろいろ損したけど、親がアホなだけ」と説明する。彼女の親がどんな人か気になったが、最後まで出てこなかった。

で、聡は2回切れるのである。
私、これでこの女は嫌いになった。こういう喧嘩になって切れる女は苦手である。怒ってもいいけど怒り方ってものがあるだろう。
最初に聡が「あんたが悪い。奥さんは悪くない」「お前に何が分かるんだ!」「あんたこそ何も分かってない」などという不毛の会話がなされた後、窓ガラスをぶち破る。

そして白岩が元妻に会ったにやはり切れて勤め先の遊園地の動物を全部檻からだしてしまう。(白頭鷲は逃げなかったけど)
これも迷惑かけすぎである。
怒るときは他人に迷惑がかからない程度にしなければ。
(そういえば私も子供の頃はたまにキレて物を壊したりした。今では反省である)

そんな感じで聡が好きになれなくなったので、とにかくこの映画に乗れない。
満島真之介など、周りになじめない(こちらもキレる)青年を演じていたが、ファンとしては出番が少ないのが寂しい。

訓練校の仲間役で実は元やくざの北村有起哉や定年で趣味のつもりで通っている勝間田役の鈴木常吉もよかった。
所々好きなキャラクターなどが登場するが、聡が好きになれないので、映画全体の点もどうしても辛くなる。
















君の名は。


日時 2016年9月11日16:25〜
場所 新宿ピカデリー・シアター1
監督 新海誠


東京の高校生・立花瀧(声・神木隆之介)と山奥の田舎町で暮らす高校生の三葉(声・上白石萌音)は寝ている間に入れ替わっていた。瀧は女子高生になって戸惑い、三葉はあこがれの東京生活に戸惑いつつも楽しんでいた。
しかしある日を境に二人の入れ替わりがなくなった。
瀧は入れ替わっていた時の記憶で描いた町の風景を元に三葉に会いに行く。そこは岐阜県の山奥の糸守町だった。
しかし3年前の2013年10月の隕石落下で町は消滅し、住民の大半は亡くなったという。資料に残されていた亡くなった方の名前に三葉の名前もあった。
瀧は三葉にもう一度会いたい一心で、三葉の家の宮水神社のご神体の元へ行く。そこで三葉が残した口噛み酒を一口飲む瀧。二人はそこで再び出会う。


「シン・ゴジラ」が大ヒット中だが、それを脅かすように現れた「君の名は。」。宮崎駿ならわかるけど新海誠って誰だ?それにさんざん予告編を見せられたけど(新宿ピカデリーでよく上映していた)さっぱり観る気が起きない。
高校生の入れ替わりなんて大林宣彦の「転校生」他、いろいろあって今更感が漂う。
それで観る気もなかったのだが、あんまり世間が「君の名は。」の話題が出るし、「シン・ゴジラ」と結びつけて311がどうの、という話も出るので観に行った。

うわっ話がすごい。
入れ替わりとタイムトラベルと彗星衝突のSFファンタジー三大話をまとめてしまった強引さ。それでも破綻せずになんとか纏めている。

そもそもタイムトリップものが私は好きではないので(最近多すぎ)なのでその手の内容は全く観なくなった。
彗星衝突は好きなジャンルなのでこのあたりは楽しめたけど。

でもラストが高校生だった瀧が大学生になって就職活動中。見ている手帳では2021年。近未来だな。
で、電車の中からうっすらとなっている記憶の組み紐の女性(三葉は祖母が作った組み紐を持っていた)と再会する。
で「君の名は?」となるわけだが、ここで私は混乱した。
えっ三葉って彗星衝突で死んだんじゃないの?と思ったが、例の三葉に会いに来た時の瀧が再び三葉と入れ替わった時に、町の人々に避難するように呼びかけたのだが、それが功を奏したということか。

でもそもそも何で三葉と瀧が時空を越えて入れ替わったのか(別に理屈を示さなくてもいい。「縁」を知りたい)よくわからんし、タイムトラベルで未来を変えるのは個人的には好きではないし、私は好きになれる話ではなかったです。

それにしても口コミでロングランヒットした、というレベルではなく、最初からヒットしていた訳だがアニメファンとかそんなにすそ野が広いのか?と不思議に思った。













だれかの木琴


日時 2016年9月11日11:50〜
場所 シネマート新宿・スクリーン1
監督 東 陽一


警備機器会社に勤める夫を持つ親海小夜子(常盤貴子)は専業主婦。最近一戸建てを購入し、この街にやってきた。
ふと入った美容室MINTで美容師の山田海斗(池松荘亮)と出会う。
小夜子は帰宅後、海斗から「お気に召しましたでしょうか?またよろしくお願いします」という型通りの営業メールを受け取る。つい返信してしまう小夜子。
それから小夜子は自分の近況を海斗にメールで送るようになり、程なく小夜子が店にやってくる。「短大の友達に会うの。だから今日来たんだけど。どっかこの辺にいい店ないかしら」「踏切を渡ったところに『ふくろう』って店があります。そこから徒歩一分のところに住んでるんです」
そんな何気ない会話だったが、ある日海斗が自分の部屋に帰ってくるとイチゴのパックが玄関のノブにかかっていた。


美容師というのは結構エロい。
本来髪の毛に感触はないのだが、紙をさわられると頭皮が引っ張られるせいか、何か感じるものがある。
聞いた話では主婦の中には週一回シャンプーだけで来る人もいるそうだし、若いイケメンの方が人気ある。
映画でも(後に放火魔とわかるが)「たぶん女にさわってもらいたかった」というだけの客も来る。

その心の隙間を埋めるために小夜子は海斗に近づくのだが、決して体の関係になったりするような展開にはならない。そこが「映画的派手さにかける」と思うか「現実にありそうなちょっと踏み外した誰にでもありそうな話」と思うかは難しいところ。

海斗には恋人もいるのだが、やがて彼女のことも小夜子の知るところとなり、やがては彼女の勤め先の店にまでやってくる。そして絶対着ないようなドレス5万円をあっさり買い、何か宣戦布告をしているかのようだ。

結局は海斗の恋人唯(佐津川愛美)が親海の家に押し掛け夫に「あなたの奥さんはストーカーです」と訴え喧嘩に成りかけたところで事態は収束する。

それにしてもちょっと蛇足感のある部分が多かった。
さっきの「女性の美容師に髪を切ってもらいたい」というオタク青年が実は放火魔だったとか、電車の中でいすに座ってる人が全員メールをして真ん中の人だけが位牌を見て泣いているとか(なんだかメールのつながりを否定しているように見えた。それはラストで小夜子と夫がメールでお互いのいたらぬところを謝りあうシーンも同じ)、小夜子の夫がたまたま街で会った女とホテルに行くとか、バーのマスターが「幸せそうに見えてもみんな心に何かを抱えてるのさ」と台詞でいうとか、もうちょっと小夜子と海斗に話を絞ってもよかった気がする。
その方がシンプルだし。

ラスト、ソファで昼寝をする小夜子を見て、「ああ専業主婦も楽そうに見えて案外孤独感を抱えているのだな」と納得し、小夜子の気持ちが分かった気がした。
池松荘亮、相変わらずの母性本能をくすぐるようなかわいい顔をしてエロいという絶妙な色気を出していた。















四月は君の嘘


日時 2016年9月10日11:25〜
場所 新宿ピカデリー・シアター6
監督 新城毅彦


有馬公生(山崎賢人)は幼い頃からピアニストだった母にピアノを教えられ、数々のコンクールで優勝し天才の名を得ていた。しかし母の死をきっかけにピアノをやめ、楽譜の書き起こしのバイトで弾く程度だった。
幼なじみの友人、椿(石井杏奈)の紹介で宮園かをり(広瀬すず)というヴァイオリニストに出会う。
彼女はコンクールに出ても課題曲を譜面の解釈通りには演奏せず、疎ましく思う審査員がいる一方、それを面白いと言ってくれる審査員もいた。
かをりは公生を一方的に次のコンクールの伴奏者に任命。
最初はいやがった公生だったが、かをりの天真爛漫さに惹かれ、再びピアノを演奏する気になる。
しかしコンクール当日、やはり母のトラウマによって演奏はボロボロになってしまい、コンクールは失格。だがその後即興でかをりと二人でした演奏で一部には認められ、次の大会では招待枠で二人で演奏することに。
二人は練習に励むが、当日、かをりは会場に訪れなかった。


山崎賢人(崎は大ではなく立が正しい)と広瀬すず共演。
今一番お気に入りの二人が共演なので珍しく初日に駆けつけた。
山崎賢人がめがねをかけた役なので、その美少年(美青年)ぶりがすこし減点されてしまうのが残念だが、原作がそうなので仕方ないか。

この映画、他の高校生ラブストーリーと違って文化祭とか修学旅行とかのイベントごとがいっさいない。
さらにいうと流行の「壁ドン」とかセックスとかキスとか手をつなぐことさえない。
実にプラトニックなのである。

話の方は公生がウジウジしているし、登場人物も少ない(恋のライバルといったものが登場しない)ので話が途中はもたもたするが、ラストの演奏シーンは圧巻である。

いや今まで見た山崎賢人などが出演するどの恋愛映画よりもセクシーであり官能的だった。
彼らが見つめあって演奏するカットなど実にセクシー。
公生も(自分はそう思っていないと思うが)気持ちとしてはエクスタシー、絶頂を迎えていたと言っていいと思う。

思うにキスするとはセックスしたって所詮は表面的な接触でしかない。
しかし音楽を通じて触覚ではない聴覚でも大変な刺激を受けていたし、そして何より心がつながっている感がある。
表面的なつながりももちろん重要だが、それよりも心がつながっている方がさらなる満足があるはずだ。

そしてかをりの死後(彼女が何の病気なのかはよくわからないのだが、それは実は重要ではないのだろう)公生に当てられた手紙で「あなたは昔からあこがれの人でした。椿に頼んでそれとなく紹介してもらいましたが、実はあなたに会うのが目的でした」という内容で、はっきり言って泣いた。

プラトニックで肉体的な接触はない。
でも心がつながっている方がよっぽど満足感がある、という当たり前だがなかなか実感できない恋愛の極致を見せてもらった気がします。
よかった。











後妻業の女


日時 2016年9月9日20:05〜
場所 新宿ピカデリー・シアター5
監督 鶴橋康夫


武内小夜子(大竹しのぶ)は資産のある老人と結婚し、その夫の死後遺産を手に入れることで生きていた。一応夫は事故死や突然死だが、かなり怪しい。その小夜子に結婚相手の資産のある老人を紹介するのが結婚相談所を経営する柏木亨(豊川悦司)だ。
今回も中瀬(津川雅彦)という老人と結婚し、脳梗塞で入院したところをなかなか死なないので点滴に空気を注射して死に至らしめた。
公正証書で中瀬の財産をすべて自分のものにしようとする小夜子。しかし次女の朋美(尾野真千子)が反発し、知り合いの弁護士・守屋(松尾諭)に相談する。
話を聞いて守屋は「これは後妻業だ」と直感する。
知り合いの元刑事の興信所の調査員・本多(永瀬正敏)に調査を依頼する。
小夜子と柏木は次のターゲットとして不動産業の舟山(笑福亭鶴瓶)に目を付ける。
一方本多は小夜子と柏木の過去について調べ始めるのだが。


数ヶ月前から予告篇が頻繁に上映され、詐欺師ものかと思ってちょっと楽しみだったこの映画。
う〜ん、でも観てみたらそれほどでもなかったかな。

老人になっても性欲、というか男が女を欲しがる気持ちは枯れないと思う。でも老人と老婆(あえて言う)の恋愛沙汰は山崎賢人や福士蒼汰が出てくる恋愛ドラマほど美しくないのは事実。

鶴瓶が大竹しのぶの前でパンツを脱いで「通天閣やない。スカイツリーや」と言わせるカット。鶴瓶のケツが写るのは観ていてあまり気持ちよくない。
一時が万事、熟年女性が相手役では観ていて気持ちよくないのだな。
これが尾野真千子がだます女性だったらまだ画的によかったけどそれでは話が成りたたんだろう。
でも老人になると小夜子ぐらいの年齢の女性がよくなるものなのか。
今の私にはまだちょっと理解できないけど。

そして後半本多が裏切って調査事項を報告せずに裏取引をする。この展開はないなあ。
探偵は裏切ってはいけないのである。それは意外性以上に不愉快をもたらす。最後になって「実は取引をする振りをして相手から証拠を引きだそうとした」というなら話は分かるけど、そういう展開もない。
裏切るなら裏切るで最初に伏線を張っておくべきだと思うし、こういう展開は私は好まない。

映画全体にもそれは言えて、話は逆転逆転で単に迷走する。
小夜子には二番目の夫の間に息子(風間俊介)がいて、その息子もろくでなしなのだが、柏木に命令されて本多を殺そうとする。結局は失敗するアホなのだが、海外逃亡をしようと「金をくれ」と小夜子に言って「アホか」で喧嘩になって誤って小夜子を殺してしまう。で柏木は小夜子の死体をトランクに積めて埋めにいこうとするが警官からトランクの中身を問われてしまい・・・という展開。
それで、「ほんとに小夜子死んでるの?」と思っていたら実はやっぱり生きていましたというオチ。

さらに最後には中瀬も遺言状を残していたおかげで朋美たちにも財産が残ったのだが、中瀬は小夜子と出会う前は毎朝初恋の人の名前を叫んだり、近所の飲み屋の女将にラブレターを出して近所で噂になったりとトラブルメーカーだったと観客に知らされる。
最後には長女に「あたしたちお父さんの面倒みてなかったものね」とまるで小夜子に理があるかのような台詞も登場。

あかんでしょう。
小夜子たちのやってることはどう見ても犯罪(かそれすれすれ)。どう見ても道義的にいいことではない。

それを認める方向に持っていってしまうから、私としてはこの映画は好きになれないです。














キューティー・ハニー


日時 2016年9月4日
場所 TSUTAYA宅配レンタルDVD
監督 庵野秀明
製作 平成15年(2003年)


謎の集団パンサークロウはある博士(京本政樹)をねらっていた。拉致したところを警察は包囲。公安8課の秋夏子(市川実日子)はアクアラインの海ほたるで包囲した。
だが敵はニセ警官を配置していたために逃れることが可能に。そこへ現れたのが謎の美女・キューティーハニー(佐藤江梨子)。しかし彼女たちの活躍もむなしく博士は捕らえられてしまう。
「怪しい奴」と決めつけハニーを逮捕する夏子。しかしあっさり逃げられる。
叔父である博士を救出すべく、行動を開始するハニー。
そこへハニーに協力を申し出る新聞記者(村上淳)も登場し、事件は広がる。
果たして謎の集団パンサークロウの目的は?
その頃起こっていた集団女性失踪事件との関連は?


「シン・ゴジラ」が不安だった要素がこの「キューティー・ハニー」だ。
永井豪のマンガ原作を実写映画化したのだが、当時とても観る気にならなかったし、実際興行的にも惨敗だったと思う。
それが「庵野秀明に実写映画って大丈夫か?」と思わせたものだった。
今や「シン・ゴジラ」のヒットのおかげでこの「キューティー・ハニー」の失敗はチャラになった感がある。

とにかく面白くないのである。
それは私自身の「観たい映画」ではなかったこともあるだろう。
マンガでは成り立つような動きの大きなギャグを実写でやられても「あり得ない」を感じてしまって(私は)映画には完全に取り残された。

むしろ「シン・ゴジラ」との共通点を見いだすことが出来、そちらは興味深い。
冒頭、アクアラインの海ほたるが登場する。
これは「シン・ゴジラ」の最初。
そして何と言っても市川実日子の登場。
めがねをかけた(でもそれは自己演出だったのだが)堅物警官として登場。
黒のスーツ姿で「シン・ゴジラ」の尾頭ヒロミを連想させる。そうか原点はここにあったのか。

ハニーは昼間はOLとして活躍(?)するのだが、常にコンビニおにぎりを食べている。ハニーの活力の源(?)はコンビニおにぎり。これは「シン・ゴジラ」にも登場するし、「新世紀エヴァンゲリオン」(昨日までに全26話観た)にもおにぎりやカップめんが登場する。
夜の残業にはこういったものが欠かせない、としている。
なるほど、庵野さんのごちそうはカップめんやコンビニおにぎりなのだなあ。

あと掃除のおばちゃんも登場し、ハニーの理解者として(ちらっと)描かれる。
そして芝浦付近のモノレールと山手線が交差する場所でもロケあり。なるほど電車がお好きらしい。

キャストでは他には手塚さとるや嶋田久作などが登場。
映画自体は面白くないけど「シン・ゴジラ」の関連作としては観る価値あり。