BOYS LOVE 劇場版(SCHOOLBOY CRUSH)日時 2016年10月30日 場所 DVD 監督 寺内康太郎 製作 平成19年(2007年) 蒼井(小谷嘉一)は全寮制の高校、セガール学園の教師。彼はゲイの恋人にフラれた晩、街で少年を買った。「電話番号教えておくよ。よかったらまた指名してくれ」と蒼井の携帯から自分の携帯に電話をかけ、履歴を残した。 翌日、蒼井は学校へ行って驚く。自分のクラスに転校生がやってきたが、それは夕べの少年だった。少年の名は天上空々(菅野篤海)。空々は「大丈夫、夕べのことは誰にも言わないよ」というが蒼井は気が気ではない。 空々は成績優秀だが、どこか暗い少年、水木一葉(川久保雄基)と同室になる。一葉は父が財閥の息子で親の力で何でも自分の思い通りにしている花園(谷和憲)と幼なじみだった。花園は一葉に対し、イジメのような支配的な態度を取っていたが、一葉は空々にイジメを否定した。 空々は蒼井に時々電話をかける。しかし脅迫するわけではなく、おろおろする蒼井の姿を楽しんでいるようだった。 ある日、空々は蒼井に電話をしてきた。「頼みがある。電話番号の記録も消去する。だからお願いだ」 空々の頼みとは一軒の家を買ってほしいということだった。お金は貯めたが、高校生では家を買えないからだ。 2006年に斎藤工、小谷嘉一主演で「BOYS LOVE」というまんまのタイトルのオリジナルDVD作品があった。その第2弾として今度は「劇場版」というタイトルをつけて製作されたのがこれ。 それにしても「BOYS LOVE」とはタイトルがでかい。まあこの頃はBL映画が作られはじめで、特に「決定版」的な意味合いはなく、これだけ、のつもりで作っていたのだろう。 前作の「BOYS LOVE」は観ているが、話のつながりは全くなし。 高校生と青年の物語、という骨子は同じだが。 話の方は全寮制の学校、というBLものにありがちな設定。 この映画、せりふのある女性キャストはいない。店員Aとかでも出てきても良さそうだが、一切ない。 そして全寮制なのでシャワーシーンが(無駄に)多い。アマゾンのサイトで宣伝用のキャストメッセージビデオが流れるが、明らかに「シャワーシーンあります!」と言ってるから、男の裸を見せるサービスシーンなのは明らか。小谷嘉一は「Oh!透明人間」2でもそうだったから、完全にそういう役目なのだろう。 スリ筋な体が好みの人にはぴったりなのだろう。 また高校生たちの裸も多い(もちろんキャストの実年齢は大人だと思うけど) 話の方は、空々(書き忘れたが、「そら」と発音する)が自分の思い通りにならないのや、一葉が空々と仲良くなるのが好ましくない花園がある日、一葉に部屋を代わってもらって空々のベッドに潜り込む。 「俺と仲良くしろよ」。でも金の力で何でも思い通りにしようとする花園を空々は虫が好かない。もちろん拒否し、空々は一葉もつらく当たる。 一葉は空々に対する想いが強くなり、空々の携帯を見たことから蒼井との関係も疑いだす。それを空々にぶつけた一葉だったが、拒否され発作的に自殺してしまう。 空々は退学になりかけたが、復学が認められた。それを画策したのは花園だった。実は花園と一葉は複雑な愛の関係で、一葉を自殺に追いやった空々を許せなかったのだ。そして花園とその子分は空々に暴行し、空々は歩けない体になってしまう。 それを知った蒼井は花園を殺しかけるが殺せない。やがて学校を首になった蒼井は空々との愛を受け入れる。 という話。 普通に考えれば「?」な展開なのだが、愛と憎しみと嫉妬の入り乱れる腐女子向けBL作品ではありがちな展開である。 でも果たして腐女子やBLファンは喜んでいるのか疑問だが。 金持ちの子息が通うにしては学校の設備がしょぼいとか否定的な面はいくらでも見られるのだが、小谷嘉一ファン(にいつのまにかなった。見ているうちに気になりだした)としては満足して楽しみました、ハイ。 君よ憤怒の河を渡れ日時 2016年10月23日 場所 DVD 監督 佐藤純彌 製作 昭和51年(1976年) 東京地検の現職検事・杜丘冬人(高倉健)はある日新宿の路上で「この男は私の部屋に強盗に入った男です!」と女(伊佐山ひろ子)に言われ新宿署に連行される。さらに別の男(田中邦衛)が「この男は私の家に夜泥棒に入った男です」と指摘する。 杜丘は旧知の警視庁の矢村警部(原田芳雄)を呼んでもらう。しかし杜丘の部屋から男が盗まれたというカメラが見つかり、杜丘は逃れられなくなる。仕方なく刑事の隙を見て逃亡する杜丘。杜丘はまず最初の女のアパートに行ってみる。管理人の話では強盗事件のあった前日にアパートに引っ越し、そして昨日部屋を引き払ったという。女が石川県に荷物を送ったという情報を頼りに能登半島に向かう杜丘。しかし女の実家を見つけてみたが、彼女は殺されていた。 矢村たちも被害を訴えた男女が元夫婦だったと知り、不自然なことが多いことから、狂言と確信する。しかし女の殺害の容疑は残る。 杜丘は男の実家が北海道と知りそこへ向かうが、すでに警察が張り込んでいた。山に逃げ込む杜丘。そこで熊に襲われている遠波真由美(中野良子)を助ける。矢村も北海道まで追ってきたが、真由美の父、資産家の善紀(大滝秀治)からセスナの提供を受け、東京へと向かう。 永田雅一が大映倒産後、復帰第1作として永田プロダクションと大映(徳間書店が加わった新生大映)と提携した作品。 この映画の公開の頃は映画の見始め、キネ旬の読み始めの頃で「永田雅一復帰第1作」ということは知っていた。といっても永田雅一のこともよく解っていなかったが。 映画を観たかったのだが、なぜか原作を読んだ。たぶん映画を観るより原作本の方が安かったからではないだろうか。 だから公開時には映画は観ずに原作だけ読んでいる。数年たって日曜の夕方だったかにテレビ放送されてその時に観た。 その時はあまり面白くなかった記憶がある。 それ以来、もう一度観たいなとは思っていたが名画座でも上映の機会は少なく(いやあったかも知れないが気がつかなかった)、今回やっとDVDで観た次第。(いや観ようと思ったらレンタルDVDでみる機会はいくらでもあったから、やっぱり「暇があったら」という程度の気持ちだったのか) そんな個人的な思い出のある映画。 という訳で再見したのだが、やっぱり面白くない。 あのね、この映画2時間半もあるのだよ。正直テンポが冗長すぎる。今観ても編集で多少は何とかなるのではないか、と思うぐらい。 そして青山八郎の音楽がひどい。 音楽がひどいと思うことはそうそうないのだが、時々ハワイアンのような間延びした音楽が流れる。これは10代の頃にテレビで観たときにも思ったが、今回観てもやはりあの音楽は変。 でも魅力がないわけではなく、遠波から提供を受けたセスナ機で飛び立とうとするところをパトカーの妨害にあうシーンなど(もちろん今のアクション映画からすればしょぼいのだが)なかなかの迫力。 そして杜丘は長野経由で東京に来るのだが、立川で警官が多くて困っているときに街の女(倍賞美津子)に助けられる。倍賞はこのシーン以外ではその後活躍しないが、けだるい感じが何とも言えず魅力的である。 そして新宿で警官に囲まれた杜丘は馬を東京に届けにきていた真由美の助けによって逮捕を免れる。 このシーンは8頭の馬が新宿西口を暴走し、その騒ぎの乗じて逃亡する、という展開なのだが、原作を読んだときは馬が数十頭新宿を駆け抜けるイメージで読んだが(当時、新宿には行ったことがなかったが)映画にすると8頭ばかりを走らせてもしょぼい。 しかも夜のシーンで全体は暗く、迫力が半減。昼間の新宿西口を馬が駆け抜ければそれなりに迫力はあったろうが、さすがに撮影は許可されなかったろうし、ゲリラでやるには大がかりすぎるので深夜に行ったか、あるいは広場に新宿っぽいセットを組んで周りがごかませる夜に撮影したかのどちらかではないか? どっちみちしょぼいので恥ずかしささえ感じてしまうのだが。 後半、最初杜丘を訴えた男、横路が精神病院に入院してると知った杜丘は単身その病院に仮病で入院する。 で、黒幕と結びついている病院長(岡田英次)によって薬漬けにされてしまう。(杜丘は薬を飲んだ後、すぐに便器に吐き出していたのだが) このあたり、前半はアクション、アクションで押していたのが動きがなくなって退屈する。 真相は黒幕政治家(西村晃)が製薬会社と病院長を使って人間の意志をなくす薬を作らせる。その薬を使って国家転覆をたくらむ思想犯をすべて葬り去ろうという計画を持っていた、ということ。それを知られたライバル政治家(神田隆)を自殺に見せかけて殺害し、おの自殺を杜丘に疑われたことから今回の事件は始まったのだ。 始まりが「思想犯の駆逐」というあたりが70年代の学生運動の残りを感じる。あさま山荘事件後、残った左翼はテロリストになり、企業爆破事件や日航ハイジャック事件などを起こしたので、当時としてはリアリティのある動機だったと思う。 杜丘と矢村は黒幕政治家を最後には殺す。ここ、もうちょっとたまりにたまったものを吐き出す感じが欲しかったな。このあたりが任侠映画の残り香を感じる。今なら撃ち殺さずに別の方法を取るような気がする。 最後は逮捕も出来ず、かといって復職させるわけにもいかず、杜丘の上司の煮え切らない態度を理解し、杜丘は真由美とどこかへ行く。 観てるこっちもいまいちすっきりしないラストにもやもやを抱えて映画を見終わる。 この映画、中国でなぜか大ヒットし、高倉健は一躍有名になったようだ。 日本ではヒットしなかったし、評価も高くない。 なんでヒットしたのかよくわからないのだが、「権力に立ち向かう主人公」というのが受けたらしい。ちょうど中国もそういう映画が必要とされる時代だったのか。 その後の日中合作映画のきっかけになったし、映画史的には作品のおもしろさとは別に残る映画となったことは間違いない。 17センチの神話日時 2016年10月22日16:45〜 場所 光音座1 監督 石本俊治 製作 ENK 歌手を目指すオサムはコーヒーショップでバイトをしながらチャンスを狙っている。その店に今は人気歌手の夏木俊夫がやってきた。夏木はオサムに関心を示しながらもわざと意地悪な態度をとる。 夏木のマネージャーは夏木のことを心身ともに愛していた。夜はマネージャーがベッドの上で夏木を愛撫する。マネージャーにとって最大の関心事は今製作準備中の大作映画の主役に夏木をキャスティングさせることだ。 そのために映画のプロデューサーをコンサートが終わった後の夏木の楽屋に呼び、二人きりにさせる。プロデューサーは夏木に惚れ込み、「監督は別の役者を希望しているが、そんなもの私が何とかする」と言って夏木を抱いていく。 夏木は気になるオサムに自分の新曲のデモテープを渡し、「君も歌手になりたいならデモテープを持ってこい。どうせろくなもんじゃないだろうが」と憎まれ口を叩く。 オサムは夏木の歌を自分で歌ってデモテープを事務所に持って行くが、受付の女性が「はいはい」というだけ。 しばらくしたら夏木からオサムの元に電話があったが、「まだテープは聴いていない。電話があっただけでもありがたいと思え」というだけ。 そんな時、夏木は大麻所持の疑いで指名手配される。 当然映画の主役はなかったことに。夏木のマネージャーはたまたま受付の女の子がかけていたオサムが歌っているテープを聴き、オサムを夏木の代わりに売り出そうとする。 「17センチの神話」っていうホモ映画だというと当然、アソコの長さが17センチの男の話だと思う。 しかしさにあらず。 一応シングルレコードの大きさのことである。 芸能界の内幕もので、ありきたりな気がするが、ノーマルでよいと私は思う。少なくとも山崎某のような訳の分からん映画よりずっと気持ちがよい。 オサムは最初コーヒーショップのバイトの先輩と暮らしている。この先輩も歌手を目指していたが、オーディションでついに「おまえやめろ」と言われて田舎に帰る。 この二人、別につきあっている訳ではなかったらしい。 二人組の歌手で一人だけデビューできることになって、、、みたいな展開もありだったとも思う。 夏木のマネージャーが映画評論家の切通理作さんに似ていたので、本人かと思ったが、クレジットに名前がでてないので違ったようだ。 マネージャーはオサムを売り込むために映画プロデューサーと会わせ、自分は途中で席を外し、二人へホテルの一室へ。 そこで珍演出が起こる。 プロデューサーは隣の部屋にいったかと思うと、半裸に鉄の帯と冠をつけ、それらに1万円札(まだ聖徳太子)をたくさんつけたコスプレでオサムの前に登場。恐らくは「お金と力」を象徴する扮装をさせたいと思ったのだろうが、ただ失笑するしかない。 プロデューサーに犯されそうになったとき、夏木が現れ、プロデューサーを倒す。 そこで夏木とオサムが結ばれるかと思ったら、その辺の描写は(ねっとりしていてもいいはずだが。クライマックスなんだし)あっさりしていて、夜明けの都会の線路の上に二人が全裸で座っている画で終わる。 う〜ん、最後のカットの意味が分からん。 もうちょっとでもっと面白くなった気がする。 メモリーズ日時 2016年10月22日15:35〜 場所 光音座1 監督 山崎邦紀 製作 大蔵映画 押尾は海岸の岩場で目が覚めた。しかも自分はなぜかレスリングのユニフォームを着ている。そこは現れる裸の男。押尾は彼とセックスする。 黒いサングラスをかけ、スーツの男ばかりパーティに出席している押尾。 そこではレズなのにゲイにフィストファックをする女性が話題になっていた。押尾は自分がその女にフィストファックされてからおかしくなったことを思い出す。 パーティの出席者の一人が「俺たちなんで集まってるんだ?」「決まってるだろ、映画にあった通りに『レザボア・ドックス』だよ。俺たち銀行強盗をするんだ」 そんな他愛ない会話をしていると押尾はパーティで太った男に声をかけられる。「この間あったわね」。そうだ、この男は河原で女装してバイクに乗っていた男だ。 岩場の押尾のところに武装した男がやってくる。「さあ立ち上がるんだ・俺たちはこの猿島を占拠してゲイの共和国を作るんだ」。いつの間にか押尾も武装している。 いつしかサングラスの集団は左翼革命集団になっている。 「ゲイの共和国を建設」といってデモを始める。 またまた山崎邦紀である。もう何度もいうけどこの人の撮るゲイピンクはだめである。面白くも何ともない。 「こんな映画どっかよそでやってくれ!」と怒鳴りたくなるが、きっとよそでそう言われて、行き着いた先がゲイピンクなのだろう。 女装した男は以前に(もうタイトルさえ忘れた)に出てきた同じ山崎作品の連合赤軍事件をモチーフにした映画に出てきた人だろう。 また最後にデモ行進する展開などちょっと似ている。 だからなんなのだ、と思うし最後はどうなったかさえ忘れた。 とにかく山崎邦紀は客が喜ぶ映画を作る気はなく、またわからないし、「男の裸がスクリーンに写ってればいいだろう」というプロデューサーの発想で作られ、観ていて腹が立つだけである。 もうイヤになる。 永い言い訳日時 2016年10月21日21:40〜 場所 TOHOシネマズ新宿・スクリーン6 監督 西川美和 テレビタレントとしても活躍する津村(本木雅弘)は今は伸び悩んでいた。津村の本名は衣笠幸夫で有名な野球選手と同姓同名(字は違うが)でそれが彼のコンプレックスとなっていた。彼の妻・夏子(深津絵里)は学生時代からの友人で、今は美容室を経営し、経済的には順調だった。しかし夫婦の間には情熱はない。 ある冬の晩。夏子は高校時代の親友と夜行バスで温泉旅行に出かけた。 早速知り合いの女性編集者を家に呼び、情事にふける津村。 しかしその晩、夏子の乗ったバスは湖に転落し、夏子や友人は死亡した。葬儀が終わったあとで、津村は夏子の親友の夫の大宮陽一(竹原ピストル)と会う。大宮から何度か連絡があった津村だが、電話をとる気にはなれなかった。 やがて春になり、津村は大宮に連絡を取ってみる。そして大宮の息子・真平(藤田健心)やその妹の灯(白鳥玉季)と食事をする。ところが灯はカニのアレルギーで、それを知らずにレストランでカニが入った料理を食べてしまう。 大宮は灯を連れて病院へ。津村は真平をつれて大宮家に帰る。 そこで津村はトラック運転手のために大宮が家を開けがちため、今まで妻がやっていた家事を真平が引き受けているために真平が中学受験を諦めていることを知る。 津村は大宮に「俺はパソコンさえあればどこでも仕事が出来るから、週に何回か留守番に来ようか。そうすれば真平も受験できる」 津村は大宮家に通うようになる。 西川美和の新作。西川美和なんて別に好きな監督でもないのだが、池松荘亮が出ているので見てみた。それだけではなく、予告を観てちょっと興味が出た部分があったのだ。 それは津村がテレビタレントとしては表ではいい顔をしているが、裏では毒舌を吐きまくるキャラクターに見えたので、「マスコミの裏表」が描かれた映画なのかと思ったが、そういう映画ではなく、津村が疑似家族を持つ話だった。 話を勘違いしたのはこっちの勝手な思い違いだから、作り手には責任はない。 しかしこちらとしては思った話と違ったので肩透かしを食らった思いがした。 腹が立つような話ではなかったが、結婚もしていない、子供もいない私には、完全に他人事の話でしかなく、共感もなにも沸かなかったのが本音。 要するにこういう話には興味がなかったんです。 ラスト、大宮家に行かなくなった津村は、この体験を元に妻との思い出を出版する(そういう内容らしい)。 その出版パーティで中学生になった真平が登場する。 果たして彼は有名校を受験し、合格できたのだろうか?それとも一般の公立中学だったのかな?あまり説明がなかったようでちょっと気になった。 目当ての池松荘亮は津村のマネージャー役。しかし池松でなければならない、もしくは池松以外が演じたら映画の出来が変わった、というほどのキャラクターではないし、出演場面も少ないのであまり印象には残らない。 子役の真平役の藤田健心がいい。今後の活躍に期待する。 燃えろ青春の1年日時 2016年10月17日22:40〜 場所 テアトル新宿 監督 井上淳一 製作 昭和61年(1986年) 予備校の河合塾が1986年春の入塾生に対し、入塾式(愛知県体育館だったらしい)で上映された30分のPR映画。 井上監督の話では、井上監督は1984年に河合塾に通い、翌85年に大学に入学、そして若松監督の「衝撃パフォーマンス」の助監督についた。 大学生だった井上少年に河合塾から「河合塾OBの学生で河合塾での生活を描いたスライドショーを作ってほしい」という依頼があり、「それならいっそ映画を作りましょう」と言って35mmの映画を作ることにした。 井上監督としては「『衝撃パフォーマンス』の穴埋めのために少しでも若松プロに仕事を」と思って若松監督にこの話を持ってきたのだが、若松監督は「そんな予備校のPR映画なんか作りたくない」と井上監督に「お前が撮れ」といったそうだ。 ところが井上監督もまだまだ素人同然なので、現場でカットをかけるタイミングが解らず(最初は役者がせりふを言い終わった時にカットをかけ、若松監督に「早い!」と怒られ、今度はせりふを言ってから10数えてからカットをかけたら「遅い!フィルムがもったいない!」と怒られたそうだ)、結局井上監督が「用意、スタート」とかけて若松監督が「カット」をかけたそうだ。だから井上監督曰く「事実上の若松作品です」ということです。 話はある女子予備校生、ミカリが偏差値37で入ったにも関わらず、5月頃の模試で偏差値70になる。講師陣はあわてて「伝説を作ろう」と彼女のための特別プログラムを作るが、偏差値70の判定がコンピュターの判定ミスだったとなる。 講師陣はプログラムを中止するが、ミカリは独自に努力。ここはジムでトレーニングと勉強がカットバックになり、いかにも「元気が出そう」な局が流れる。 時々名物講師の授業風景がインサートされる。 そして2月になっていよいよ受験。 合否の電報を待つミカリの家に赤塚不二夫の電報配達人がやってきて、電報を渡し、合格と喜ぶ、と思ったらすぐに赤塚不二夫が戻ってきて、「すいません、こっちの電報と間違えました」と言って持ってくる。それが不合格。 ミカリはもう一度河合塾に通うべく入塾のパンフレットを取りにくる。 おいおい、予備校のPR映画で不合格はないだろう、と思っていたら、河合塾のカウンターに赤塚不二夫がいて「合格です!」と伝える。 そこでくす玉も割られてお祝いに! そしてコンパのシーンでは猥歌を歌ったり、全員で「オ」「マ」「ン」「コ」と叫んだり、かなりPR映画にあるまじき映画。 そういえば冒頭、当時流行った禁煙パイポのCM「私はこれでたばこを止めました」「私はこれで会社を辞めました」ってやつのパロディで「私はこれで合格しました」「私はこれで落ちました」とかやっていた。 もう完全に凡庸な学生の自主映画のようだった。 まあ19歳の大学生が撮ったのだから、そんなものか。 こちらも「衝撃パフォーマンス」以上の珍品映画。 別に観る価値は特にないと思うが。 衝撃パフォーマンス日時 2016年10月17日21:00〜 場所 テアトル新宿 監督 若松孝二 製作 昭和60年(1985年) 親に抵抗した高校生の少年(岡竜也)は女教師(松居一代)と家出をした。女教師は200万の貯金のうちいくらかを下ろし、横浜で「弟の受験勉強のために」といってアパートを借りる。 初めは部屋をカーテンで仕切っていた二人だったが、少年は先生のことを考え毎夜オナニーをする。やがて教師はカーテンを引きちぎって二人は全裸で抱き合う。 女教師は「パートの仕事を探す」というが少年は「僕が先生を守る」と言って許さない。少年は先生を支配しようとする。教師もやがて少年に捨てられることを恐れるようになる。 少年はヨットを買って海へでてどこかへいこうと言い出す。 教師は貯金をはたき、ちょうど売りにでていたヨットを買おうとするがお金が足らない。仕方なく、車を売ろうとする。 しかし教師の免許証が群馬、車は東京ナンバー、売ろうとする場所は横浜、何か不信を感じた中古車屋(安岡力也)は警察に相談する。 若松孝二が交通事故でなくなって丸4年。本日は若松監督の追悼イベントで弟子の井上淳一監督がイベントを企画。 そこで上映されたのがこの作品。(井上監督は当時19歳で本作に助監督として参加) 井上監督の話ではこの映画はヒットしなくて「水のないプール」以降順調に行っていた非ピンク映画路線につまづきを見せたそうだ。 でもネット検索すると情報が出てこないから、本当に公開されたんだろうか?と思えてくる。 はっきり言ってつまらないのである。 ほとんどが少年と教師の二人芝居。 そういえば若松監督って「ゆけゆけ二度目の処女」ってよく解らない映画もあったな。あの映画よりは話は解るけど、ほとんどがアパートの一室なので画に動きがなく、人物も二人だけなので退屈する。 後半、少年と教師の絡みの連続でそこらあたりは「おおっ」って思いましたが、基本的にはピンク映画のノリに近い。 話の方は中古車屋に車を売ろうとしたら警察がやってきて、少年の父親(佐藤慶)や母親、学校の校長(山谷初男)がやってきて少年を連れ戻すとする。 母親なんか「家に帰ってきて頂戴。あなたの大好きなハンバーグを作ってあげる」と子供扱いだし、父親も「私がどんな目にあってるか解ってるか!」と自分の心配しかしていない。 それじゃ少年も家出したくなるわな。 結局教師は残って少年は一人でヨットで旅にでて映画は終わる。 それにしてもヨットで旅をしようっていう発想がこの頃の映画にはあったんだなあ。主人公がヨットで旅にでる、もしくはあこがれる、ってのいうのが70年代、80年代の映画テレビには多かった。「急げ!若者」もそうだし、「プロハンター」もそうだった。 今そういうのはないね。 「ここではないどこかへ行けばもっといい世界がある」と思っていたけど、今は「どこへ行っても結局同じ。だから今の中になんとか楽しみを見つけよう」って発想だもん。これは時代の空気というものか。 出演者の岡竜也。今見ると満島真之介に似ている。 そうかあ、若松にとっては「行動する少年」のタイプとしてこういう見た目の役者がタイプだったのだな。満島が演技経験もろくにないのに1回の面接で決まった理由が解った気がした。 映画終了後、井上監督が挨拶されたが、この映画、足立正生と若松孝二の関係を意味してるらしい。日本赤軍に合流し、海外に行った足立と日本に残った若松。この思いを少年と女教師に託したらしいが、そんなの聞かなきゃ解らないよ。 追悼イベントにふさわしい映画か解らないけど、珍しい映画だった。 淵に立つ日時 2016年10月15日17:50〜 場所 角川シネマ新宿1 監督 深田晃司 町工場を営む鈴岡利雄(古館寛治)の元に昔の友人の八坂(浅野忠信)がやってきた。彼は刑務所から出所したばかりだ。利雄は八坂に逆らえず、自分の会社に彼を雇い、そして自宅の空いている部屋に彼を住まわせた。 突然何の相談もなしにそれを決められた妻の章江(筒井真理子)は驚き、戸惑うが、礼儀正しい八坂の態度にやがて彼の存在を許していく。 利雄の娘の蛍はオルガンの発表会が近いので練習中だったが、八坂はオルガンもうまく彼に教えてもらうことによって懐いていく。 利雄たち家族と八坂の4人で川遊びに出かけ、記念写真を撮る。 そしてオルガン発表会の前日、蛍は章江が作ったドレスを着てそれを八坂に見せようと出かける。 帰りが遅いので心配して近所を探して見ると、公園の隅で八坂はたたずみ、その足下には蛍が血を流していた。八坂は利雄たちから消えていった。 8年後、蛍は一命を取り留めたが今は植物人間になっている。 そこへ利雄の会社の従業員設楽(三浦貴大)が辞め、新しい従業員で山上孝司(大賀)が入ってきた。 ある日、山上は利雄に言う。「八坂って人知ってますか?昔ここで働いていたみたいですが」「なぜだ?」「自分その八坂の息子なんです」 今年のカンヌ国際映画祭の「ある視点」部門で審査員賞を受賞した映画。 カンヌは5月なので、すっかり受賞のことは忘れていたが、公開時にでかい新聞広告が載り、そこで「平和な家庭に一人の異分子が入り込み、家庭が壊されていく」という内容に興味を引かれて観に行った。 とにかく「この八坂は何しに来たのか」というサスペンスの緊張感でいっぱいである。娘にも懐かれる、章江もキスを迫られて断れないという寛治で八坂はこの家に入り込んでいく。 もっと妻の章江が抵抗するかと思っていたが、それは最初だけで娘がなついた段階で受け入れていく。八坂にはやはり利雄にはない魅力があるのだろう。 そして衝撃の展開。てっきり蛍は死んだかと思ったが、ある意味死ぬより苦しい植物状態である。両親にしてみれば自分たちが元気なうちはなんとしても蛍を守ると決意を固めているだろうが、自分たちが死んだらと思うと心配でたまらないはずである。 第2部ではその八坂の息子が登場する。息子がいたとことは利雄は知らなかったようなので、実は孝司は嘘を言っているのではとも疑ったが、ここは信じていいようだ。 利雄は妻には言うなと釘をさすが、たまたま八坂の写真を孝司が持っているのを見つかってしまうあたりの緊張感はサスペンス映画として一級の緊張感だ。 興信所に八坂の行方を探させていた利雄だが、八坂の故郷のあたりで似た人の目撃情報があり、孝司もつれて行ってみる そこで似た人を発見するが、別人だったようだ。 章江は娘とともに橋から身を投げる。 利雄が章江を救い、孝司が蛍を川から救いあげる。 利雄が3人の人工呼吸や心臓マッサージをしているシーンで映画は終わる。 何とも途中で終わった感のあるラストだ。 いったいどういう事態に話は展開していくのか、というサスペンスで私は楽しんだが、監督の作りたいのはサスペンス映画ではなく、「家族の崩壊」ということのようで、その点、自分で家族を持たない私には(結婚していないという意味)ちょっとピンとこないテーマだった感は否めない。 面白かったが、監督の意図通りに楽しんだかははなはだ心許ない。 何者日時 2016年10月15日14:50〜 場所 新宿ピカデリー・シアター6 監督 三浦大輔 二宮拓人(佐藤健)大学時代は演劇部で活躍していた。一緒にコンビを組んでやってきた仲間は今は自分で劇団を立ち上げ、毎月公演をしていたが、それを冷ややかな目で見ていた。 同級生でルームメイトの光太郎(菅田将暉)はバンド活動をしていたが、それは引退して就職活動をするという。そんな時に光太郎の元カノで海外留学をしていた瑞月(有村架純)が帰ってきた。 拓人は実は瑞月に想いを寄せていたが、友達の彼女なので言い出せずにきていた。そんな時、拓人たちのアパートの上の階に瑞月の友人、理香(二階堂ふみ)が住んでいると知り、理香の部屋が「就職活動対策本部」としてたまり場になる。理香はまだ知り合って1ヶ月に満たない男、隆良(岡田将生)と一緒に暮らしている。 彼らは就職活動を始めるが、厳しい。 本音と建て前が交錯する彼らの人生。 朝井リョウの原作小説。ちょうど「桐島、部活やめるってよ」の直後のことで、出版後購入しサイン会にも行った。その後この小説で直木賞を受賞した。 小説を読んだときの感想は、ツイッターが話の中心なので、ツイッターをやってない人には話がよく解らないのではないか、そしてツイッターもやがて古くなって10年後には同じく話が解らなくなるのではないか、と思い、そのことをサイン会で朝井さんに言った覚えがある。 まあ朝井さんは学生時代にデビューし、小説家になってそして就職したわけで、サラリーマン作家という言い方をされたが、私にしてみれば「人気作家」という肩書きがあって某社に就職したわけだから、この映画に登場するような学生とは根本的に違う。 「人気作家」だからこその会社に就職できたわけだし、その会社に入るときもきっと「作家業は続ける」ということは最初から許可されていたに違いない。というか聞かれるし、本人もそれを最初から条件として提示したろう。 この点に関しては「サラリーマンは腰掛け」と思われても仕方あるまい。 実際、3年ぐらいで辞めて今は作家本業のはずである。 就職した企業にしてみれば、人気作家を社員として採用しておけば後々得することはあっても損にはならない業種の企業である。 そういう計算の結果の映画がこの映画だ。 でも今の大学生はエントリーシートに始まって数々の書類、そして「あなたを1分間で表現してください」などの無意味、もしくはいじめのような質問に耐えて就職しなければならないのだから、大変である。 まあ学生の方も私のような社会人生活が長い(ただ長いだけだが)の人間からすると「大学でならった英語力を生かした即戦力で働きたい」とか「就職して社会に流されるような生き方はしたくない」などと登場人物が抜かすのを聞くと「バカか!」と罵倒したくなるのだが、考えてみれば私も学生時代は似たようなことを考えていた。それが就職していかに考えが甘かったかを思い知らされた記憶がある。 そもそも「英語を生かして働きたい」というが、「英語を使って何が出来るか」ということが大切なのであって、英語が出来るだけではだめである。「英語が出来る人」っていうのは「普通運転免許を持っている」のちょっと上、ぐらいの認識でいたほうがよい。 小説を読んだとき「これは映画にはなりにくいなあ」と思ったが、やはり映画向きではないだろう。ツイッターが重要な要素なのだが、ツイッターで何をつぶやいていたか、がポイントだから、それを映画で表現するとやっぱり文字を映像に写すしかない。 そういう意味で映画的でないのだな。 ツイッターの裏アカウントで本音の毒を吐きまくる、というのは誰でもやりそうだが、メールアドレスを他人が知ってるメルアドで登録してはだめである。セキュリティが甘い。 それに原作の段階からの問題だが、実は拓人は留年していて、就職活動2年目というのがラストで明かされる。だから登場人物達が大学4年生と思っていたら実は「5年生だった」というのがオチ、というかラストに起こる驚きである。こういう読者、あるいは観客を欺くようなオチは私は好きではない。 最近の学生の就活(何でも略す言い方は実は私は嫌いである)は大変だと思うし、それは学生の考えの甘さもあると思うがまあ私自身がそうだったように若者特有の生意気さの故だと許す気にならない訳ではない。 実際映画を見終わったら帰りのエスカレーターで隣にいたグループは映画に出てきたような就活スーツを着ていたので「がんばってね」と思わず声を掛けたくなった(もちろん掛けてないけど)。 という感じで原作のよくなかった点もそのまま残されているので、点数は辛いのだが、それにしても佐藤健、菅田将暉、岡田将生、二階堂ふみ、有村架純という私が最近お気に入りの若手の出演で、豪華配役には満足した。 少女日時 2016年10月15日10:40〜 場所 TOHOシネマズ新宿・スクリーン1 監督 三島有紀子 女子校に通う由紀(本田翼)と敦子(山本美月)は幼い頃からの友人。 敦子は剣道部で全国大会を狙う腕前だったが、団体戦でミスをして剣道部の仲間から恨みを買い、今はいじめの対象になっていた。 由紀は「ヨルの綱渡り」という小説を書いていたが、完成後、学校でその原稿は盗まれてしまった。 程なくして国語教師の小倉の名前でその小説は雑誌の新人賞受賞作として発表された。盗んだのは小倉だったのだ。 また学校に紫織(佐藤玲)という転校生がやってきた。彼女は電車の中で中年男に「痴漢したでしょう。警察に行きたくなければお金を払え」と恐喝を繰り返す少女だった。 由紀は牧瀬(真剣佑)という高校生と知り合う。彼は人が自殺したところを見たことがあるという。それは小倉が自殺したことだった。 由紀は病院に、敦子は老人ホームへ体育の授業の補習代わりにボランティアとして参加した。敦子はそこで高雄(稲垣吾郎)に由紀は昴と太一という少年と出会う。この病棟は難病の子供たちが入院する専門の病棟だった。 湊かなえの小説の映画化。考えて見たら湊かなえの小説は「告白」を呼んで以来、たびたび読んでみたいとは思いつつ、別の本を優先的に読まねばならない事情があったりして全然読めていないのが残念。 「少女が人が死ぬところがみたい」と言い出すという内容らしいので、本田翼や山本美月が誰かを殺してそれを教師とか周りの人間が暴く、という内容かと思ったら全然違ってちょっと肩すかし。(勝手に内容を想像した私の問題だが) 登場人物が多数登場するが、それらが実はどこかでつながっている。 高雄の痴漢冤罪のサラリーマンを訴えたのは詩織だったり、後半、由紀が病院で知り合った少年、昴の父親探しをするのだが、そのときに「君の探してる人、知ってるかも」と声をかけてきた中年男(菅原大吉)がラストに逮捕される(この時、最初詩織の家が家宅捜索を受けているので、ついに詩織が逮捕されたかと思ったら、実は父親の方だった、というオチがある)。 そして昴の父親だった。「死ぬかも知れない手術の前に父親に会いたい」というから由紀は昴の父親を探したのだが、「お前が母さんを苦しめた」と刺すという展開が起こる。 そういった人間関係の意外さ、はどんでん返しの連続で、そこは楽しめたが、女子高生の潔癖さ、人を傷つけることに対する鈍感さなど私には理解できるわけもなく、期待した内容ではなかったため、楽しむことは出来なかった。 残念。 追記すれば真剣佑、今年から知ったが「ちはやふる」×2本、「にがくてあまい」とこの映画で4本。そろそろ少女マンガの映画化の主役もよさそうだ。 これからの活躍が期待される。 SEE YOU AGAIN ー広島物語ー日時 2016年10月10日 場所 DMMダウンロード 監督 剣崎譲 製作 ENK ラン(佐野照彦)、カズノリ(渋谷和則)、ジュン(相川純)の3人は各地のゲイポルノ映画館でショーをしている。今日も広島公演の初日を迎え、ショーの終わった後は常連のお客さんたちとドライブに。 翌日の午前中、ランは広島に住む恋人がいたが、彼は同居を迫ってきた。しかしランはヤング薔薇族ショーで日本各地を回るダンサーをやめる気にはならず、彼との交際に迷いが生じていた。林の中で体を重ねるが、乗り切れない。 そんな頃、一人の男が実家の広島・尾道に帰ってきた。 仕事もうまくいかず、結婚して7年の妻ともうまくいかず、しばらく休みをもらって故郷に帰ってきたのだ。 広島の町をぶらつく男。そこで「ヤング薔薇族ショー」の看板を見つける。 そのビルのエレベーターに乗ったところ一人の青年と乗り合わせた。その青年、ランは4階で降りていく。ついついていった男だが、そこではランやカズノリ、ジュンが今日のステージの練習をしている。練習とは言っても裸で絡み合ううちに興奮してしまう3人。 男の姿に気づくラン。「ここは立ち入り禁止ですよ。お客さんなら下の劇場で会いましょう」。 男はランたちのショーを観る。初めての体験に思わず震えてしまう。 ショーが終わったあと、ランたちに案内されて夜の広島に。 そして男は自分がゲイであることを再認識し、ランに抱かれる。 翌日、妹に自分がホモであることを伝え、再び生きる希望を持つ。 次の博多公演に向かうランたち。それを男は見送った。 タイトルは知っていたが、ずっと気になっていた映画。 たぶん公開前に「観てください」と聞いていたが、公開時には見逃したのだろう。 光音座でいつかやるだろうとは思っていたが、DMMのダウンロードにあるし、画質もそれほど悪くないようなので(光音座自体もデジタルのDVD上映になってからひどくなったが)、今回試して観た次第。 結論としてダウンロードは良くもないけど観れない、というほどでもない。 話は非常にシンプルだ。 サラリーマンとしてうまく行かない男が薔薇族ショーを観て自分の中のゲイを再認識して勇気を取り戻す話。 ごちゃごちゃしたドラマはない。 その代わり、当時の薔薇族ショーの様子がよくわかる。 3人ぐらいが出てきてダンスをしたりする。今でもそうだが、コントがあったり、SMの縛りがあったりする。映画の中に出てきたのはダンサーのセクシーダンスの部分だけだったけど、ショー終了後に客席に握手に周り、気の利いたお客様からチップをもらったりする様子がよく解る。 貴重な記録映像だろう。 もちろん広島の観光映画にもなっていて、原爆ドームと安芸の宮島、厳島神社登場。そしてなんと言っても実際にゲイ映画を上映する的場シネマやその上の大衆演劇の清水劇場の稽古場でもロケされている。 主演は佐賀照彦。当時の佐賀はスリムな美少年でENKのスターだった。今も元気でいらっしゃるといいのですが。 あと渋谷和則や相川純など彼らもENKの専属メンバーで、ショーだけでなく、映画にも出演。本作では二人はドラマにはあまり絡まず、ショーのシーンで活躍。 観る価値のある映画だった。よかった。 DMMダウンロードもまた観てみたい。 SCOOP!日時 2016年10月9日15:50〜 場所 新宿ピカデリー・シアター8 監督 大根仁 都城静(福山雅治)はかつてはスターカメラマンだったが、今は芸能スキャンダル専門のパパラッチだった。 契約している雑誌「SCOOP!」の副編集長の横川定子(吉田羊)より新人記者の行川野火(二階堂ふみ)の新人教育を頼まれる。 「何で俺がてめえの新人の面倒見なくちゃいかんのだあ」と最初は反発するが、いくつか現場を踏むうちに野火も成長し、いいコンビになっていった。 次々とスクープをものにし、部数も延びてきた。 ここでもう一つスクープが欲しい定子は最近起きた連続強姦殺人犯の写真を撮ることを静に命じる。 近々現場検証のために外にでてくる。その時がチャンスだ。しかし警察は犯人の人権のために写真を撮らせないように厳重に警戒するはずだ。どうでるか。 芸能スキャンダルには無縁の福山雅治がパパラッチに扮すると言うことで話題の本作。 夏頃からさんざん予告編は観させられた。 でその予告編で映画の70%は見せてしまっていた。 パパラッチがどうやって瞬間をものにするか、ということで、クラブのカーテンのかかった個室のカーテンを無理矢理開けて写真を撮るとか、花火を打ち上げて外を観た瞬間を撮るとか、そういったネタは予告で観た。 だから映画を観てる間は同じ映画を2回目に観る気分で、面白さ半減。 肝心の強姦犯の写真も昔組んだことのあるスタッフで今は副編集長(滝藤賢一)に現場付近を走らせて警官の注意を引いたチャンスに撮る、というさっきやった手口のアレンジ版でさほどサプライズはなし。 それより映画はこの後驚きの展開を迎える。 今まで情報屋として活躍してくれたチャラ源(リリー・フランキー)がもともとヤク中なのだが、ついに前の女房とその再婚相手を殺してしまう。 そして「俺の写真を撮ってくれ」と静に頼む。 町中を歩いた末に野火に合図を送る静。ついにチャラ源が静を殺してしまう。 いや、これには驚いた。 でも福山雅治は何をやっても上品さがでてしまうので、どうもこういった汚れた役は似合わない。 クレジットを観たら原田真人監督のテレビムービー(「盗写1/250秒」)がベースになっているのだという。 しかもその作品では原田芳雄が主人公のパパラッチを演じていたそうだ。 そうだよなあ。原田芳雄ならこの汚れた役もぴったりだったに違いない。 パンフレットなどを読むと、大根監督自身がこの「中年パパラッチ」の企画をずっと持っていて、テレビ朝日側から「福山雅治でなにか企画を」と言われて、この企画で提出したそうだ。 福山ありきの企画だったとはいえ、個人的意見では福山は上品すぎてこの役はちょっと無理がある気がしてならない。 ハドソン川の奇跡日時 2016年10月9日13:20〜 場所 新宿ピカデリー・シアター7 監督 クリント・イーストウッド 2009年1月15日。ニューヨークのラガーディア空港を飛び立った旅客機が、鳥の大群と遭遇しエンジンが2機とも停止。空港に引き返しを試すが推進力が全くない状態ではとても空港にたどり着けない。 機長のサレンバーガー(トム・ハンクス)はとっさの判断でマンハッタンの西側を流れるハドソン川への緊急着水を決行する。機は無事着水、しかも周りにしたフェリーなどがすぐに駆けつけ、一人の死者もなく全員生還した。 しかし後日の事故調査委員会では「機長の判断は本当に正しかったのか?」と追求された。 記録によると左側のエンジンはまだ停止していなかったと思われる。しかもシミュレーターのテストでは空港に到着することが出来た。 サレンバーガーは単に乗客を危険にさらしただけではないのか? 世間の賞賛とは別に、事故調の中では機長に対する批判が起こる。 このハドソン川への着水の事故は日本でも報じられたから知っていた。でもその後に機長がそんな疑いをかけられていたとは知らなかった。 この映画は割と短くて96分。 結局は話が単純なのだろう。 聞き取り調査のあたりから話が始まって事故の模様は時系列を入れ替えた形で紹介される。 この一連のシーンは実時間にしても1時間に満たない間のことだろうが、全員救出という事実を知っているとは言え、災害スペクタクルとして実に楽しめる。 公聴会で「シミュレーターでは何度やっても空港に着陸出来ました」と言われる。しかし機長は「鳥にぶつかった後、すぐに引き返している。テストをする人間は鳥がぶつかるということを知っている。何も知らずに突然に鳥がぶつかってエンジンが2基停止したらどうなるか。考えたりいろいろ試す時間が考慮されていない」と反論。 鳥がぶつかってから35秒待って空港に引き返す実験をしたところ、2回とも墜落。 ハドソン川への着水という機長の判断の正しさも証明された。 加えて左側エンジンも発見され、やはり破損しており機長のいう「両エンジン停止」は正しかったことも確かめられた。 機長は称えられるのだが、「いや私だけではなく、フェリーで駆けつけたフェリーの乗組員、警察、消防などのすべての人間の力だ」と称える。 いや〜かっこいいですね。人間のあるべき姿です。 それにしても今は何でも機械に頼る時代だけど、人間はどこかで「機械なんぞに何が解る」と思ってるのではないか? 今までにも「機械の判断は間違っていて、人間の判断が正しい」という映画やテレビはたくさんあったと思うが、なんだかんだ言っても「まだ」最終的には人間も判断の方が好きなのだろうなあ、人間という奴は。 グッドモーニングショー日時 2016年10月8日14:50〜 場所 新宿ピカデリー・シアター5 監督 君塚良一 澄田(中井貴一)は朝の情報番組「グッドモーニングショー」のメインキャスターだ。政治ニュースから芸能ニュース、天気予報、グルメ情報まで何でも扱う番組だ。 午前3時、出勤のために起きると妻と息子が起きていて、まだ学生の息子は結婚するという。局につけば一緒の番組の小川圭子アナ(長澤ますみ)からは交際をばらすという。澄田は交際してるつもりはなく、彼女が失恋したときに相談の乗ってやっただけなのだが。そして番組Pの石山(時任三郎)からは番組の打ち切りを言われる。 まさに踏んだり蹴ったりの朝なのだが、番組が始まってすぐに、局の近くのカフェで銃を持った男が立てこもったという事件が発生。 早速中継カメラを送り、生放送が始まる。 そして警察から局に「犯人は澄田を連れてこいと要求している。協力してほしい」と連絡が入る。 現場中継は過去に失敗の経験がある澄田は最初は抵抗したが、結局は現場に向かうのだが。 萩本欽一の構成作家や「踊る大捜査線」シリーズの脚本家で近年は映画監督として活躍する君塚良一。 古巣のテレビを舞台にしたコメディー。 テレビ局への取材も製作会社のフジテレビの朝の番組「めざましテレビ」を参考にしているようだ。 トップニュースを何にするか、政治ネタか、芸能の交際報道か、グルメはどうする、といったことで担当者間の争いがあるんだなあ。 テレビの情報番組観てると「くだらない内容ばかりやりやがって」と思うけど、スタッフの中にも意見の争いはあるようだ。 で、犯人の要求が「澄田の謝罪」。「エラソーですいません、くだらない内容ですいません」と謝れというものだ。 もっともその前にキャスターの「またしても政治と金の問題です。日本はどうなってしまうのでしょう」というコメントもカンペを観ながらの番組としての指示であることが 説明されているのだが。 しかし私も普段思うことを要求したので驚いた。 やっぱりそういう批判は作る側にも届いているのか。 澄田は以前台風の災害を伝える現場からの中継で、顔に泥を塗っているところが放送されてしまい、「ふざけてるのか!」と批判を浴びたことがあった。 後半、それはカメラには写っていない、被災した子供を励ますものだったと明かされる。 テレビというのものはフレームの中にあるものしか写らない。また編集による切り取りがある。 事実を伝えているようで伝えていない。 澄田の隠しカメラからスポンサーのライバル会社の広告が写るからそっちを向くな、とかニュースといえどもスポンサーから逃れられないんだなあと実感。 犯人が自殺をほのめかすのだが、それをテレビ投票で意見を聞こうとなる。 デジタル化に双方向が可能になった時代の展開だが、視聴者がボタンを押す数カットがインサートされる。 この押しているボタンが「死なない」を選択しているように見えた。 しかし結果は自殺に「賛成」が69%となる。 ああそうか。6月のジョディ・フォスターの「マネーモンスター」でもそうだったがやっぱり視聴者を信用していないんだな。日本の視聴者なら「死ね」というに違いないと。 もちろん何らかの経験で「視聴者はただ刺激を求めているだけ」と達観しているのかも知れない。 ラストは結局警察が突入し、事件は解決。 日本の情報番組が抱えている問題と現実、作っている人間の葛藤、外からの批判と賞賛、色んなものが混じったあまり深すぎないエンタテイメントだった。 突っ込みが浅いという批判もあろうが、所詮はこのレベルが今の視聴者にはいいと思われてるのかも知れない。 七人の侍 (4Kリマスター版)日時 2016年10月8日10:00〜 場所 TOHOシネマズ新宿・スクリーン6 監督 黒澤明 製作 昭和29年(1954年) ストーリー省略。 最近流行の4Kデジタルリマスター版の上映。ただし2014年の「ゴジラ」の時のようなリバイバル上映ではなく、「午前10時の映画祭」枠での上映。 9月に試写会がTOHOシネマズ日本橋で行われ、仲代達矢や野上照代らがトークイベントを行いその模様はネットの映画ニュースにもなった。 正直端的に言って驚くほどのものではなかった、というのが本音。こちらがクライテリオン版のブルーレイなどでデジタル化されたものを見慣れてしまったせいか。 それにしても役者のアップになると毛穴まで見えてしまうので、そこまでクリアにしなくても・・・という気もする。 また音声がクリアになって聞こえやすくなった、という意見をよくネットで見たが、私はもともと「七人の侍」の音声が悪いとか、せりふが聞き取りづらい、と思ったことがないので(「シン・ゴジラ」の方が早口で聞き取りづらいと思う)、今回特によくなったという感慨はない。 「七人の侍」を最初に観たのは中学1年生の3月。 記憶ではその頃に「デルス・ウザーラ」がアカデミー外国語映画賞を獲得し、その記念として水曜ロードショー枠で2週に渡って放送されたのだ。後編など水野春郎の解説の時間がなく「さあ今週は『七人の侍』後編です」と数秒しかなかった。 この時に前編を観始めるときに普段映画の話などしない父が「お前、観るのは何回目だい?」と聞いたのを覚えている。もちろん初めてなのだが、父も「何回も観る価値のある映画」と思っていたのだろう。 その後、普段は芝居をしている名鉄ホールで芝居のないときなど時々映画を上映していたが、1週間ぐらい「七人の侍」を上映することがあり、その時がスクリーンで観た最初。 時期は前後してはっきりしないのだが、「ジョーズ」が表紙のキネマ旬報に「七人の侍」のシナリオが掲載されていたし、中学何年生の頃だったかはっきりしないのだが、「リアルサウンドトラック」と称するLPレコードがあった。「リアルサウンドトラックって何?」と思ったが、それが「七人の侍」の音声を録音したものだったのだな。 だからせりふ入りの音声だけを何回も聞いたので、せりふはかなり頭に入っている。 正直、今「七人の侍」を観ても次に誰が言うかはほとんど覚えていると言ってよい。 その後、「七人の侍」を観たのは80年代の東宝創立50周年での特集上映で、今はない千代田劇場での上映だった。この時映研の先輩と行ったのだが、私は後ろで観るのが好きな人なのだが、その人が前で観るのが好きな人なので、無理矢理前で観させられた。 その時にクレジットタイトルが斜めに表記されるのだが、黒紙に書く際に文字の角度の目安のために鉛筆で線が引いてあるのが解ってしまい、びっくりしたことをよく覚えている。 その後に劇場で観たのは92年頃のリバイバル上映。 今はTOHOシネマズ渋谷に改装されたが、渋谷東宝の名前だった時代に上映された。渋谷で観たぐらいだから、都内ではここ1館だったのかも知れない。 映画中に出てくる丸と三角の旗が映画館の前にたくさん飾ってあったのを覚えている。今なら携帯で写真を撮ったのだが。 これほどまでに長らく上映の機会がある映画も珍しい。 今回の4Kデジタルリマスターを機会に、末永く映画館でも上映してほしいと思う。 ストーリーもせりふもカット割りのかなり覚えている映画だが、「体験」として何年後かに劇場で観たい映画だ。 ヴァイブレータ日時 2016年10月2日15:00〜 場所 シネマ・ノヴェチェント 監督 廣木隆一 製作 平成15年(2003年) 早川玲(寺島しのぶ)は31歳のルポライター。週末に友人が来るのでコンビニお酒を買いに来た。彼女は日々の暮らしにちょっと疲れていた。 その時に長靴を履いた男(大森南朋)が入ってきた。その男は自分の尻を誘うようにちょっとさわった気がした。 男の後をつけるとトラックで待っていて、「乗れ」と手招きする。 トラックの運転台でちょっと二人で飲むつもりだったが、警官にアイドリングを止められて、人気のない場所に移動。男の名は岡部希寿。 トラックの寝台スペースで二人は体を重ねる。 「一緒に行ってもいい?」玲は希寿に訪ねる。 納品先に行った後、二人は新潟へ旅をする。 廣木隆一監督作品。 この映画で寺島しのぶも大森南朋も各種の俳優賞を獲得したが、それも納得。この映画、寺島しのぶと大森南朋の二人のシーンが圧倒的に多いのだが、この二人だから映画が成立している。 この二人の存在感のおかげで飽きないのだな。 男はトラック運転手の仕事の仕組みとか、ハム無線の隠語や活用法を教えてくれる。女には初めてのことばかりでなんだか新鮮でうれしい。 男は中学を卒業して(最後の1年はほとんど行ってないとか)、工務店に勤めたがヤクザのシャブの運び屋などもしたとか、ホテトルのマネージャーをしていたとか、そんな色んな裏話をしてくれる。 結婚して子供もいるが、ストーカーに悩んでいるとも。 それはもの凄く面白い。 観ている観客の私も興味津々だが、玲も初めて会ったタイプの男だったと思う。 特に「トラック運転して見るか」と運転するところはドキドキしながら、楽しい。 玲が窓を開けて叫ぶシーンがあるが、確かに叫びたくなる。 しかし新潟までの旅も終わり、また都内へ。 最後の食堂で食事を取る二人。 男は実は結婚していないし、ストーカーもいなかったと判明する。 ここは何だか言葉に出来ない感慨が出てくる。 この男も自分と同じ孤独なのか? それはホッとした気分にもなり、寂しい気持ちにもなる。 複雑な感情が私に迫る。 そしたらヤクザの話もすべて作り話なのか? 出会ったコンビニに玲を送り届ける男。 名前は免許証を見せていたから、本当なのだろう。 それ以外は全部嘘? 去ってくトラックを延々と写す画面が美しい。 それを見送る玲。 果たして彼女は変わることが出来たろうか? 予備知識なしで観た映画だったが、なんだかもう一度観たくなった。 覗き部屋の女日時 2016年10月2日13:45〜 場所 シネマ・ノヴェチェント 監督 広木(廣木)隆一 製作 昭和58年(1983年) 覗き部屋で働くレイコは医者の仁科正とつきあっていた。 正は結婚してる。しかし養子に入った正は妻との間は冷えきっており、「レイコとやり直したい」と言ってくれる。 タケシは大学の空手部の学生。タケシは先輩に誘われて覗き部屋に行く。そこでレイコのショーを見ていて絶頂に達した時にレイコとタケシの心が入れ替わってしまう。 レイコになったタケシは女の体を見て興奮、オナニーを楽しむ。タケシになったレイコは先輩に連れられて女を買いに行き、先輩と二人で女性(中村京子)にお相手してもらう。 タケシはレイコがビデオのバイトをしていて、それがレズものの撮影だったため、それなりに楽しむ。 そんな時に正が「今夜どうしても会いたい」と電話で連絡してきた。正はついに妻を殺してしまったのだ。 廣木隆一監督作品。 製作当時ヒットしていた大林宣彦の「転校生」のピンク版として企画されたそうだ。 「転校生」はあまり覚えていないのだが、もう少しコミカルで笑いが多い映画だったように思う。 タケシになったレイコが女を買ったり、レイコになったタケシがレズのAVに出るシーンでも特に笑いが盛り上がることはなかった。 別に笑わせところが外れてしらけた感じでもない。 結局、レイコの彼氏の正が妻を殺す。正は「もう一度レイコに会いたい」と連絡してくる。レイコになっているタケシは嫌がるが「まあセックスの時は今はアレだから、と断ればいいか」と仕方なく会う。 ところが正は妻を殺して自分も死ぬ遺書を持っていた。 最後は結局、正にやらせるレイコになっているタケシ。 タケシとレイコは再び会って、覗き部屋でのショーを見て、二人は元に戻る。 そして正が自殺したと知る二人。 「結局正にやらせてあげたの」「うん」「じゃあ、体だけはお別れできたんだ」というくだりがよかった。 そうだよなあ、死ぬ前に好きな人とセックス出来たんだから、そこがせめてもの救い。 好きだった人に自殺されるという女性の孤独感、絶望感がひしひしと伝わってくるラストだった。 性虐!女を暴く日時 2016年10月2日12:30〜 場所 シネマ・ノヴェチェント 監督 広木(廣木)隆一 製作 昭和57年(1982年) 横浜。サエコはバーをやりながら、刑務所に入ってる男を待っていた。男の名は冬彦、暴走族上がりのチンピラで傷害で捕まっていた。 サエコは裏社会ともつきあいのあるタツオ(大杉漣)から300万円の金を借りてバーをやっていたが、普通の営業だけではだめで店で男に体を売っていた。今日も噂を聞きつけてやってきた男(池島ゆたか)に3万円で売っている。 そんな時に冬彦が帰ってきた。サエコのアパートにやってきてこれからは地道にやっていくと決める。 早速ちり紙交換の仕事を始めたが、「俺にはあわない」とすぐにやめてしまう。 サエコのバーで飲んでいるときにこの間の客がやってきて「今晩閉店後またいい?」と言ってくる。 それを聞いた冬彦は客と喧嘩になり、店は壊れ冬彦もけがをして全治3週間。しばらく働けなくなった。 廣木隆一第1回監督作品。 クレジットでの表記は「広木」。監督の話ではピンク時代は周りが「読みづらいから」という理由で「広木」表記だったそうだ。 ファーストカットはおそらくはマリンタワーから見た山下公園、氷川丸の夕景。氷川丸の下半分はこのころは緑である。 今日2本広木監督のピンクを見たが、「ドラマがしっかりしてるなあ」という印象。 カラミを見せてエロを感じさせるより、「ちょっとだめな男と女」の恋愛ドラマをきっちり見せてくれる感じである。 どこがどう、とは言えないのだが、そんな印象を受けるのだよ。 話の方は前からサエコに気があるタツオが「店の修理に必要な金は出してやる。だから俺とつき合え」と体を求めてくる。 しかしサエコはそれを拒むので、タツオは仕方なく自分が使えるチンピラ2人(一人は諏訪太郎)を使って横浜から追い出そうとする。ところが素直に従う冬彦ではない。 逆に反撃してチンピラの一人を殺してしまう。 タツオの反撃し、組に相談し冬彦は殺される。 サエコは今度こそ一人に。 そしてタツオの店に出入りする立ちんぼのエピソードが描かれる。彼女は常連の客といい仲になって映画も見に行く仲に。(観に行く映画が「ウィークエンド・シャッフル」で、男の方に「俺、筒井作品は全部読んでる」と言わせる) 彼女はその男と結婚も考えるが、それを言うと男は「えっ?そんな風に思ってたの?結婚は出来ないよ」とあっさり断られる。 女は「じゃタダでやらせた分、払ってちょうだい!」と心ならずも反論。 両方とも幸せをつかみ損ねた女の話で、何か伝わってくるものがある。その辺が「ドラマ性が強い」と思わせたゆえんかも知れない。 ウィークエンド・シャッフル日時 2016年10月1日15:00〜 場所 シネマ・ノヴェチェント 監督 中村幻児 製作 昭和57年(1982年) 斑目暢子(秋吉久美子)の家は郊外にある新築の一軒家。 今日は短大時代の友人3人(秋川リサ、池波志乃、渡辺えり子)が遊びに来る。 夫(伊武雅刀)は「じゃあちょっと床屋に行ってさっぱりしてくる」と出かける。公園でちょっと怪しげなスーツを着た男(泉谷しげる)と言葉を交わす。 暢子の息子、茂は公園で遊んでいて廃品回収の青年(新井康弘)と知り合う。子供におもちゃを買ってやる話をするうちに子供がおもちゃを買ってもらうお金を親から貰おうと言って誘拐犯にされてしまう。 電話を受けた暢子がパニックになって茫然自失としているところをさっきのスーツの男が家に入ってくる。 男は百科事典のセールスマンと名乗り、偶然手に入れた短刀を手にしてるうちに二人で寝室に入ってしまい、男は暢子を強姦する。 帰ろうとしたところに短大時代の友人3人がやってきて、男を暢子の夫と勘違いしてしまう。 やがて事態はどんどん思わぬ方へ。 ノヴェチェントのジョイパック特集での上映。中村幻児監督の初の一般作品。 結論から言うとこの映画、全く受け付けませんでした。 途中で帰りたくなりました。 まず茂が公園の砂場に子犬を首だけ出してうめているところから始まる。動物やがて殺してしまうような恐ろしい子に見えてしまった。 それを注意する廃品回収の青年。「代わりにおもちゃ買ってやる」というあたりから(確かそんな流れ)おもちゃ屋に行くがファミコンをねだって高くて買えない。 仕方なく「親に買って貰おう」と言って茂の家に電話。そこで茂が電話口で「ああ、痛いよ〜お母さん助けて!」とか怒鳴って狂言誘拐を演じるという展開。 こういう子供嫌いである。 生意気な子供は私は苦手なので、笑うところか腹が立つ。 あまりのバカバカしい反応に笑うところもあったが、全体的に登場人物が全員好きになれずに映画の世界に入れない。 泉谷しげるのセールスマンにしたって、セールス目的だか泥棒目的だかで家に入って、先ほど偶然手に入れてしまった短刀がでてきてそれを暢子に向けているうちに寝室に入ってしまうなんてアホすぎる。 さっさと短刀をしまうなり、逃げ出すなりすれば事態は何とでもなったのではないか。 また暢子の友人3人がやってきて「ご主人ですね」と言われて何となく逃げれなくなってしまって、やがて池波志乃とベッドに行ってしまうとか、私ならああいう展開にはならない。 そういうことを指摘するのは野暮だと思うが、好きになれない。 暢子の友人3人は風呂で死んでしまったり、セールスマンが誤って刺してしまったりで死んでいく。 最後は茂を迷子として届けた警官が家に入って追いつめられたセールスマンがまたまた誤って警官を殺し、もう一人の警官(芦川誠)に射殺される。 何度も言うけど作品世界に入れなかったので、とにかく「早く終わらないか」という気になってしまった。 出演は救急車の隊員役で大杉漣、警官役で池島ゆたかなどピンクの常連役者も登場。 続いて中村監督のトークイベントだが、最初はある映画会社で撮ろうとしたが、脚本を何度直してもOKが出ない。 直すうちに筒井康隆の世界ではなくなってしまうので、仕方なく自主で撮ることにして金策を監督がして完成させたそうだ。 金策はピンク時代に培ったストリップ劇場のオーナーとかビニ本の出版社とかから借りて、返済は当時始まったばかりのアダルトビデオが大当たりして返すとかで返済。 それほど苦労された映画だけど、私には合わない映画だった。 若妻・縛りの戯れ日時 2016年10月1日13:45〜 場所 シネマ・ノヴェチェント 監督 中村幻児 製作 昭和55年(1980年) カップルのタカオとミヨコ。二人で行ったディスコで記憶喪失の女と知り合ったタカオは「行くところがなくて困ってるみたいだから」とその女を自分のアパートへ。 タカオとミヨコは二人でセックスも出来ずにミヨコは不満顔。 大学の友人、カズキとヨシコのカップルに誘われて合コンへ。そこでタカオはヨシコにトイレでしゃぶられる。カズキもヨシコが気になる様子。 タカオとヨシコはタカオのアパートへ。しかしそこには例の記憶喪失の女がいてヨシコは気になる。 タカオとミヨコの仲が悪くなったのをきっかけに、カズキもミヨコを口説き出す。 タカオは「今までつきあった女性とは違う人だ」と記憶喪失の女に惹かれていき、彼女を秋子と名付ける。 そのとき、テレビの家出人捜索コーナーでいなくなった自分の妻に呼びかける渡辺(野上正義)がいた。 実は秋子は渡辺の妻だった。SM緊縛プレイが好きな渡辺の元を逃げてきたのだった。 ノヴェチェントのジョイパック特集での中村幻児特集のピンク映画の3本目。 作品のセレクションは「プリントがあるから」という理由なので、出来の善し悪しとは関係ない。 タカオの部屋で、ミヨコと秋子が取っ組み合いの喧嘩になったとき、暗い部屋で喧嘩したので、電気のコードが秋子の体に巻き付き、「もっと縛って」と言ってしまう。 その後、結局秋子は渡辺の元に帰る。 テレビで二人が出演して「おかげさまで妻が戻ってきました」というのを見てタカオは「何だよ、結局縛られたいのかよ」いうのだった。 そんな感じの話。 前半のシーンで秋子が新聞記事で「○○で放火事件」とか「一家心中事件」の記事を見るカットがあるので、てっきりそういう事件が秋子のバックにあるのかと思ったら、それは完全に作り手の観客のミスリード。 ところで今回3本とも上映がほとんどないプリントで観たのだが(焼いたのは10年ぐらい前らしいが)、実にきれい。 ピンク映画館では35mm上映と言っても古い映写機で明るさも暗く、スクリーンだってたばこで汚れたようなスクリーンだったとしても不思議はないから、印象がまるで違った。(ノヴェチェントは映写機とスクリーンの距離が短いから余計に明るく見える) 3本とも作品の出来映えも3割り増しになった気がした。 淫力 絶頂女日時 2016年10月1日12:30〜 場所 シネマ・ノヴェチェント 監督 中村幻児 製作 昭和54年(1979年) ヒロシとサチコは同棲中のカップル。競馬好きなヒロシは今日もサチコともに競馬に行くが負けっぱなし。 ヒロシは「女とやると当たる」という話を思いだし、トイレにサチコを連れ込んで一発やる。しかしまた負けた。 ところがサチコが馬券を買っていて、それが当たったのだ。 サチコがセックスの最中に浮かんだ数字で馬券を買うと当たるとしったヒロシはサチコに数字を決めさせ、翌日馬券を1万円買うと見事に当たって20万円以上に。 次にサラ金から30万円借りてサチコに予想させて競馬に行くが完全に外れてしまう。実はサチコがヒロシに競馬をやめさせたくて嘘を教えたのだ。もう一度サチコでセックスして競馬を予想させようとするがうまく行かない。 しかしサラ金は取り立てをしてくる。アパートに押し掛けサチコを「利息代わりに」と犯してしまう。 ヒロシは知り合ったバーのオーナー(野上正義)が「俺のアソコには真珠が入ってるから女は喜ぶ」と聞いて自分も真珠を入れる医者を紹介してもらう。 ところが藪医者で手術は失敗、結局ちゃんとした医者に看てもらう羽目に。 3ヶ月女と出来ないので、競馬の予想も出来ない。 サチコは「誰か男を連れてきて」という。 お金を持ってる紳士風な男を連れてくるヒロシ。 雨が降っている。「地獄だな」とヒロシはつぶやいた。 全部書いた。 前半、競馬で儲けられると知っての明るい展開は面白かったが、後半は(私は)グダグダになったように思う。 真珠を入れて成功し見事金を稼ぐとか、失敗しても金融屋をだまして逃げるとか、何か話の着地点が欲しい、というか私が監督かライターなら着地点をつける。 ところが本作は金持ちの親父とやらせて競馬の予想をさせるとか、もしくはバッドエンドで金融屋によってサチコはトルコ(当時の言い方)に売り飛ばされるとかもなし。 なんだか何かの事情で本来のシナリオとは違う終わらせ方をせざるを得なかったような気がした。 でも藪医者にオチンチンの手術をさせるところは痛そうな感じで私は苦手。 女子学生SEXレポート 実地研究日時 2016年10月1日11:00〜 場所 シネマ・ノヴェチェント 監督 中村幻児 製作 昭和51年(1976年) 大学の心理学科の学生、ユカ、ルミ、ケイコの3人は寮暮らし。ユカは強姦について研究していた。 ユカは恋人のシゲオが自分に手を出さないので、ちょっといらついていた。 同室のルミは夜の帰り道で強姦にあったが、相手の股間を蹴って何とか逃げ出した。 ユカはある日ポルノ映画館に行ってみると痴漢にさわられた。しかしそれは恋人のシゲオだった。シゲオはユカとは知らずに手を出したのだ。 ユカはルミ、ケイコに教授や学生たちとのコンパに誘われる。しかしユカはシゲオとのデートがあるので断った。 一方コンパに参加したルミとケイコたちはコンパの後、介抱してもらう振りをして教授たちを旅館に誘った。 ユカとシゲオも仲直りしてホテルへ。 翌朝、ルミとケイコは強姦されたことをネタに教授たちを脅そうとほくそ笑む。 ノヴェチェントのジョイパック・フィルム特集での上映。 今日は中村幻児特集でピンク映画3本プラス「ウイークエンドシャッフル」。 ジョイパックのピンク映画での会社名がミリオン・フィルム。今日の3本はすべてフィルム上映だ。 (DVD化の時に焼いたプリントだそうだ) 映画は上記のストーリーのほかに強姦の例としていろいろなエピソードが入ってくる。 冒頭、海岸で女が強姦されるシーンに突然レポーターが登場し、「強姦というとこういうイメージがありますが、様々な形があります」と解説し、その後ストーリーと平行して強姦例を紹介。 寝ているアパートで夜犯人に部屋に侵入されたり、会社の飲み会のあと、係長が女子社員を介抱の振りしてホテルに連れ込んだり、盗みの入った家で、夫婦が営みをしていて寝てしまった妻の上に乗っかって妻の方は主人が求めてきたと勘違いしたりなどなど。 カラミのシーンは多く、7、8回はあったと思う。 そんな話。 「強姦と合意の違いとは?」とか「行為の後に食事をしたり一緒に風呂に入ると女性が後に合意したと見なされるので注意しましょう」などと解説のエピソードが入る。 これが法律用語っぽい言い回しでちょっと鬱陶しい感じがした。 |