2017年7月

   
彼女の人生は間違いじゃない 君の膵臓をたべたい 警視庁物語 顔のない女
燃える戦場 サマータイムエンジェル ベースメント 空に咲く愛の地図
邪魔者は消せ 警視庁物語 逃亡五分前 逆光の頃 プリンセス
甘く危険な休日
コクウ サイコウノバカヤロウ 初恋とナポリタン 警察日記 ブタ箱は満員
ゆがんだ月 夏の娘たち〜ひめごと〜 ふりむけば君がいて バナナボーイ

彼女の人生は間違いじゃない


日時 2017年7月29日16:15〜
場所 テアトル梅田2
監督 廣木隆一


震災の爪痕が残る福島県いわき市。市役所で働く金沢みゆき(瀧内公美)は休日になると高速バスに乗って東京の渋谷へ。そこで彼女はデルヘルとして働いていた。ドライバーをしている三浦(高良健吾)がいやな客が来ても守ってくれる。
彼女の父・修(光石研)は農業を営んでいたが、津波で妻を亡くし(遺体は見つからなかった)、農地も放射能でだめになって仮設住宅で何もせずにパチンコばかりしている。他にすることがないのだ。
みゆきの同僚の新田(柄本時生)は震災で家族はばらばらになって今は小学生の弟と二人で暮らしている。
新田が通うスナックに東京の女子大生がやってきた。彼女は卒論で震災のことをテーマにしたいという。「その時どんなお気持ちでした?」と遠慮なく聞かれる。何も答えることが出来ない新田。
絶望感の漂う日々がみゆきの周りを過ぎていく。


廣木隆一監督が自作の小説を映画化。廣木監督は福島県の出身だそうで、そうなると人よりは福島原発事故や震災についての関心は強いだろう。

よくネットなどで「被災者は補償金でパチンコで遊んで暮らしている」と叩くツイートなどを見る。私自身も見ていて光石研の父親が娘に「パチンコで補償金無くす気?」となじられ「俺は農家だ。農業以外出来ねえ」というシーンがある。

私みたいな何となくサラリーマンに何となく(つまり特に思い入れもなく)今の会社で働いている人間には、この感覚はちょっとわかりにくい。
それって私が他人の痛みを理解する力が欠けてるのかな。

また修の隣の部屋の奥さんが自殺未遂を図る。夫に連絡を取ると仕事で病院には行けないという。彼は元々原発で働いていて今は汚染水処理の仕事をしている。
「前は地元に貢献してるっていわれたのに今は恨まれる。私は何か悪いことしたんでしょうか?」

こういった震災、原発事故によって生活が狂わされたエピソードが淡々と綴られていく。(中には怪しい壷を売りつける詐欺師もいるのだ)
縦糸も特にないドラマだが、それでもスクリーンから目が離せなくなる緊張感がある。

市役所の新田の元に来ていた女性カメラマンが「両親がこの福島の出身で私も子供の頃からよく来ていた」といい、新田は彼女が昔撮った写真の展覧会を開く。
かつての生活の、祭りの写真などに自分たちが偶然写ってるのを観てやる気を取り戻す。

修は今は帰宅困難地域となった家に帰り、妻の服を持ち出し、友人の漁師に船を出してもらい、海へ流された妻へ「寒くないか」と服を投げ入れていく。
また精神的に頼りにしていた三浦が実は役者で彼の公演があると知り、見に行くみゆき。
その姿を見て何か勇気をもらう。
修ももう一度耕運機で土地を耕し始める。

登場人物たちが抱えている問題は実は全く解決していないのだが、それでも彼らは一歩(いや半歩か)を踏み出す。
そういった絶望の中の希望を見いだしていく姿が実にすがすがしかった。
見逃さなくてよかったと思う。





君の膵臓をたべたい


日時 2017年7月29日13:20〜
場所 TOHOシネマズ梅田・スクリーン4
監督 月川 翔


「僕」(小栗旬)は母校の高校で教師をしている。学校の図書館の立て替えが決まり、蔵書の移転、整理を任された。図書委員が僕に言う。「この学校の蔵書の整理は先生がしたんですよね?」「あ、うん。でももう一人・・・」。
それは高校時代の思い出だった。盲腸の手術で入院したとき、待合室で「共病文庫」と題された日記を僕(北村匠海)は拾った。ついぱらぱらとめくると「私はもうすぐ死ぬ」と書いてある。その時だった。「それ私のです」。声の主はクラスの人気者の山内桜良(浜辺美波)だった。
彼女は実は膵臓の病気でもう長くはないと言うのだ。しかしいつも通りに振る舞う彼女。そしてこのことは彼女の親友の恭子にも内緒だという。
僕は人と関わるのが苦手で、図書館で本の整理をしているのが好きだった。しかし桜良も図書委員になったのだが、どうも役に立たない所か邪魔をする。「残り時間が少ないのにこんな本の整理なんかしてていいの?」
「じゃあ、君に私の残りの人生のお手伝いをさせてあげる」
その日から僕は彼女に振り回される。


「君の膵臓がたべたい」というタイトルは最初聞くとドキッとするキャッチーなタイトルだ。「昔の人は自分の悪い部分を食べると病気が治る」という話から来ている。

予告編で生徒が小栗旬に「この蔵書の整理、先生がしたんですね?」「でももう一人」というのが印象に残ったので、てっきり「難病の少女とおとなしい図書委員が蔵書の整理をやり遂げたけど死んでいく」という話かと思ったが、そうでもない。
図書の整理の話はいつの間にかどっかへ行く。

しかし積極的な女の子、オタク的男子、という組み合わせは「百瀬、こっちを向いて」「四月は君の嘘」に引き続き3本目だ。
特に女の子が病気、という点では本作は「四月は君の嘘」と同じだ。
しかしこの2作と違うのは、縦糸がないのである、この映画。

「百瀬」は嘘に付き合う、「四月」はコンクールに出場する、という縦糸があったが、今回はその縦糸になるかと思った「本の整理」はどこかへ行ってしまう。
そのかわり、二人でスイーツカフェに行ったり、する。
そして前半のクライマックスが二人で福岡旅行。(設定では舞台は滋賀県らしい)

二人でヒルトンホテルのスイートルーム(これは手違いでグレードアップしたからなのだが)に泊まる。
彼女が迫る迫る。いや〜ここはやるべきでしょう、と思うのはおじさんで「僕」はひたすらプラトニックに徹する。
その姿はすがすがしい。

そしてこの旅行から出てこのあと何度も登場する「真実か挑戦」ゲームとなる。トランプを引き負けた方が「真実」を選べば勝った方から質問されたことに何でも答えなければならないし、「挑戦」を選べば勝った方の命令を何でも聞かなければならない。
このゲームという小道具がうまいなあ、と思う。

そして恭子の誤解からくる嫉妬や、桜良の元彼の嫉妬などいろいろあったが、彼女は死ぬ。
それも病気ではなく、通り魔にあって死ぬのだ。
「え、それはないだろう?」と思ったが、桜良がよく「人間死ぬときは死ぬ」のテーマに沿っていたといえるか。

最後は涙涙となるのだが、彼女が残していた手紙が現代になって発見される。
この「亡くなった人の遺書を読んで涙する」というのは「四月は君の嘘」とか「グミ、チョコレート、パイン」とかでもあったからもはや定番の展開なのだな。

定番とは言え、北村匠海の好演があって見ていて飽きなかった。
面白かった。





警視庁物語 顔のない女


日時 2017年7月23日17:00〜
場所 国立フィルムセンター・大ホール
監督 村山新治
製作 昭和34年(1959年)

ある土曜日の午後、胴体だけの死体が荒川に浮いているのが発見された。続いて足の2本が反対側の川岸で発見される。
死体の足にはマニキュアが塗ってあり、水商売の女が推定されたが決め手にはならない。その化粧品メーカーは解ったが、顧客が多くてすぐには手がかりにはならない。
上流の荒川大橋の上から夜に死亡推定日の夜に何者かが何かを投げ捨てているの警官が目撃していた。車はすぐに走り去ったが、車は黒いセダンでナンバーの上二桁しか解らない。しかし対象となるのは100台だ。地道に洗う刑事たち。
そんな時、ついに腕と首が発見される。顔から女は整形していて歯の治療をしていたことが解る。
これらのことから被害者は小沢初江と判明。彼女の交友関係から同じバーで働く大学生(今井健二)が疑われたが、アリバイがあって彼は白。
聞き込みを重ねるうちに初江の昔の彼氏が浮かび上がる。
車の持ち主の線からも犯人に徐々に近づいていく刑事たち。


「警視庁物語」が全話DMM配信になっていると知ったときにいろいろネット検索していたら、7月23日にフィルムセンターで上映されると知り、観に来た次第。
16mm上映なので上下が少し切れている。
シリーズ第9作。今回は83分といつもの尺より長め。

いや、ホント面白いなあ。なんども同じこと同じことを言うけどヒーロー刑事が出るわけではなく、ごく普通の、特にこれと言った特技もないような普通の人間の刑事たちが手分けして事実を重ねていく。
この緻密な追い込みがいいのだなあ。

また今回は花沢徳衛が4人目の子供が産まれた所で、初めての男の子で名前は「正」とつけようとする。しかし捜査中に名前が挙がった男が「正」の名前なので大いに迷う、という笑わせ所のサービスあり。
犯人と思われる男が西銀座でエロ写真を売り歩いているという情報があって刑事たちが売人を探し情報を得ようとする、という当時の風俗事情も面白い。
西銀座と言ってたけど、たぶん新橋の土橋のあたりだろう。

ラストで犯人を追いつめたときに刑事たちが追っていき、石炭の山のような所に追いつめる。このあたりの追っかけも特に音楽を流したりして盛り上げるようなことはしない。
この地味さが私は好きである。

南広、山本麟一、堀雄二、神田隆、松本克平などのいつもの面々も楽しい。
「警視庁物語」まだ20本近く未見だからまだまだ楽しめそうである。






燃える戦場


日時 2017年7月23日
場所 TSUTAYA宅配レンタルDVD
監督 ロバート・アルドリッチ
製作 1970年(昭和45年)


1942年、南太平洋の孤島。日本語が堪能なアメリカ海軍のローソン大尉(クリフ・ロバートソン)は上官ノーラン大佐(ヘンリー・フォンダ)からイギリス軍に合流し、特殊任務につくよう命じられる。「自分は敵の通信を傍受し翻訳する語学の専門家として軍隊に入った。戦闘部隊への配属は断る」と抵抗したが、最後には命令を受け入れた。
配属された島は南にイギリス軍の陣地があり、北側に日本軍の陣地があり、両者は常ににらみ合ってた。
今回の任務は、「近くアメリカ海軍の船団が島の北側を通る。それを発見されたら日本軍は通報するだろう。そのために敵の陣地の無線設備を破壊し、我々の無線機を使って敵に偽情報を流す」ということだ。
選ばれた兵隊たちだが、ホーンスビー大尉以下優秀とは言えない。特に衛生兵のトッシュ(マイケル・ケイン)は反戦的な言動が目立ち、チームワークを乱す。
日本軍との小競り合いをしながら、ようやく敵の陣地にたどり着く。だが自分たちの無線機は故障し、当初の命令の通りには出来ない。
ホーンスビー大尉は「敵の通信兵を倒し、敵の無線機を使って偽情報を長そう」と提案する。しかし「それは命令とは違う。俺は行かない」と敵の通信室に入ることを拒否するローソン。仕方なくホーンズビーは日本軍の通信設備の爆破のみ行うが、敵に撃たれてしまう。
翌朝、日本軍の陣地を見て驚いた。彼らは単なる陣地だけでなく滑走路も作って爆撃機も装備している。
自分たちの陣地に帰ろうとするローソンたちだが、日本軍の山口少佐(高倉健)が投降を呼びかける。


日本軍が登場するアメリカ戦争映画をまとめて観る必要が出来たのでって借りてみた。日本軍の少佐として高倉健が登場。子供の頃、テレビ放送で全部ではないが少し観た覚えがあった。
覚えているのは高倉健が投降を呼びかける放送をしているシーンだから、後半しか観ていないのだろう。
(高倉健の横で兵隊が発電のためなのかなにやらハンドルをぐるぐる回しているカットが記憶に残っていたが、それはちゃんとあった)

「ナバロンの要塞」のような特殊作戦もの、と思って見始めたが、どうも様子が違う。
兵隊たちがやる気がない、というかどうにも優秀でないのだ。
岡本喜八の「独立愚連隊」のように「能力はあるが、上官に反抗的」ではなく、とにかく「やる気がないのでいやいややっている」のだ。

主人公のローソンからして「俺じゃなくてもいいだろ?」と冒頭で駄々をこねる。渋い顔をしながらも一旦決めたらやり抜くマロリー大尉とは大違いである。
トッシュも何かと突っかかって仕舞いにはホーンズビーに「お前、帰ったら軍法会議」と言われてしまう。

究極は日本軍の陣地での行動だ。
「敵の無線機を使って偽情報を流せとは言われなかった」とかたくなに拒否するローソン。おいおいそんな戦争映画見たことないぞ。
他にも倒した日本兵の指輪を盗む奴とかもう最低な奴らばかり。

「ナバロンの要塞」から始まって優秀な兵隊による英雄的な活躍物語の戦争映画が続いたことへの変形とか、アンチテーゼとかかしらん。それともアメリカンニューシネマの影響かな。

イギリス軍の目の前が広い何もない土地になっていて、ここを渡らなければ自軍陣地に戻れない。周りのジャングルは地雷があって通れないのだ。
結局残ったのはトッシュとローソン。この二人がこの広場を背後から日本軍が撃ってくるのをジグザグに走ってよけながら自軍陣地に戻っていく。
ここで一人が撃たれるのだが、カメラはロングで捉え、どちらが倒れたかは示さない。
そして一人がたどり着いた所で俯瞰映像でイギリス兵が彼を囲んでなかなかどちらが助かったか分からない。
上官から「あの倒れたのは誰だ?」と問われて「彼はヒーローです」と答える。
原題は「TOO LATE THE HERO」。まあなんだかんだで結局は主人公はヒーローとなる。

ちなみに子供の頃テレビの映画劇場で観て、映画が終わったあとの解説で「ラストでみんなが集まってくる真上からのカットがありましたね。監督はあれが撮りたかったんでしょうね」と言っていた気がする。
それが誰だったかは今では思い出せない。

高倉健は本人の英語、吹き替えではないだろう。クリフ・ロバートソンのローソン大尉は日本語が堪能、という設定だが、その能力はあまり破棄されず、日本軍に追われたときに「こっちに逃げたぞ」と日本語で叫んで敵を攪乱させることぐらい。しかもこの日本語は吹き替えで完全ネイティブな発音でした。





サマータイムエンジェル


日時 2017年7月22日22:20〜
場所 アップリンク渋谷・スクリーン1(1F)
監督 川野浩司
製作 


女子高生の広野比呂(窪田美沙)は先生から夏休みの自由研究課題で「名前が広野比呂だけにヒーローの研究でもするか?」と冗談で言われたが、他に思いつかないので通販でヒーローのコスチュームを購入し、「ミッドナイトエンジェル」として夜に町のパトロールを行うことに。
今夜も露出狂の変態に追いかけられている女性を助けようと思ったが、逆に被害者の女性に助けられることに。
武器を持とうと通販でヌンチャクを買ったのはいいけど、肝心な時に忘れてきてしまうというどじを踏む。
その時に同じようなヒーローの女性が現れ、友達になる。
サマータイムエンジェルと名乗る彼女だが、彼女は病気で夏の間しか元気でいられないのだ。


「ベースメント」で中心となる女子中学生を演じた窪田美沙主演の30分の短編映画。劇場公開されたかはわからない。
地下アイドルなので、ファンイベント用に低予算で(たぶん50万円ぐらい)作られたであろう映画。

窪田美砂がコスプレをしてかわいい、とかどじな姿がかわいい、登場の時に「正義のためになんちゃら」と決めせりふを言うのだがそれを言い間違えてしまう姿がかわいい、とかそれだけで喜ぶファン向け。それ以上でもそれ以下でもない感じ。
私自身は窪田美沙に興味がわかないので「あーそうですか」と言った感じ。

ヒーローもののパロディだからか、なべやかんが比呂の弟につきまとう不良(?)役でワンシーン出演。
比呂がもう一人のヒーローのサマータイムエンジェルと出会ったときに「LINE交換しよ」と言ったのが、いかにも今風で笑った。

この回は舞台挨拶がないのでその分のサービスとしての上映だと思うが、お客さんの数も少なく(7名)で、特に効果があるとは思わなかったな。
やはり今回の映画では窪田美砂ファンというより純粋に「ベースメント」を見たい方が多いのだと思う。






ベースメント


日時 2017年7月22日21:00〜
場所 アップリンク渋谷1(1F)
監督 井川楊枝


猪俣(増田俊樹)は特殊詐欺や風俗、ドラッグなどの非合法すれすれビジネスの分野を扱うライター。助手の麻生(サイトウミサ)は弟子入りを志望したが、文章が下手でそれを指摘されると「これからはビデオの時代だ!」とカメラ片手に動画を撮りまくっている。
ある日、猪俣はネタもととして世話になっている元ヤクザの大河原(成田賢壱)から家出してきた女子中学生・星来(セラ)(窪田美沙)を数日預かってくれるよう依頼される。
ドラッグの取材で最近違法となって売れなくなったドラッグを安く買いあさっている男がいると知る。また女子高生ビジネス。JKリフレの取材に行く。
星来は何か怪しいと思っていたら、「娘と初めてあう男に娘の振りをして金を出させるビジネス」の一端を演じていた。
クスリの売買の現場を陰から取材する猪俣と麻生。
しかし治験と称して5万円でテストに集められた若者が死ぬのを目撃。
彼らはどうすることも出来ない。


映画同様アンダーグラウンドの分野でライターとして活躍する井川楊枝の監督作品。
鈴木邦男さんが刑事役でワンシーン出演と聞いてその縁で鑑賞。

JKビジネスとか特殊詐欺とかいわゆる「裏モノ雑誌」で扱われる題材が次々と紹介される。
JKリフレという女子高生ビジネスを取材に行き、「友達の話」として「客を恐喝した話」が登場する。そして客側を取材してみるとその客が被害者だったのだ。その客もボールペン型カメラ、腕時計型カメラで女子高生を撮影しており、どっちもどっちである。
その中で客とお散歩デートに行き、その女子高生が町で友人と出会って延々と話し込みだし、客が「金払ってるんだから俺の相手をしろ」と起こらせたところで「じゃあ警察に行ってもいい?」と行って金を脅し取る手口には参った。なるほど、その手があるかあ。

あと「娘の振りして会う」詐欺。何らかの事情で生まれた娘に初めてあう男を見つけてきて、適当な娘を会わせて「進学するお金がない」と言わせてまとまった金を出させる話。かなりターゲットを見つけてくるのが難しそうだけど、あり得るなあ。

そういった裏モノのエピソードを並べるが、作者の結論、主張と言ったものは見えない。
麻生に「今犯罪を目撃しましたが、いいんですか!」と責められるが猪俣はおろおろして結論は出ない。

結論が出ないと非難したけど、そもそも結論なんかないのだろう。
ライターはただそれを見て書くだけである。
「何の行動も起こさない」と批判するのもありだが、批判されてもどうしたらいいのか不明なのが、こういった問題の闇の深さである。
面白かった。






空に咲く愛の地図


日時 2017年7月22日15:25〜
場所 光音座1
監督 荒木太郎
製作 平成23年(2011年)


由紀男(玄波孝章)は世界一周の旅から帰ってきた。その日本は東日本大震災の大被害を被っていた。
由紀男はかつて付き合っていた富岡(那波隆史)訪ねる。富岡はかつては国土交通相のエリート官僚だったが、汚職の濡れ衣を着せられ、今は退職させられていた。
由紀男はかつてモデルをしていて、沖縄振興のCM動画撮影のモデルに起用され、その発注元の担当者だった富岡と知り合ったのだ。
知り合ってすぐに体を重ねた二人。
由紀男と富岡は二人が出会った沖縄に行ってみる。だが森の中を歩いているうちに道に迷ってしまう。そこへ近所で民宿を営む親子が通りかかり、助けてもらった。民宿に泊まるが、その二人は親子ではなく、恋人の関係だった。息子の方はダンサーを目指しており、富岡はそのダンサー志望の青年を抱く。
東京へ帰ったが、職のない由紀男は仕方なく昔からの知り合いで今は新興宗教の教祖として金を儲けているイバ(今泉浩一)の元で働き始める。
やがてダンサー志望の青年が上京。富岡の元で暮らし始める。
イバに犯されながらも毎日を過ごす由紀男だが、例のダンサー志望の青年が元の彼氏に殺されたと知る。由紀男はイバの元から500万円を持ち出し富岡の元に逃げてくる。
二人で沖縄へ向かう。イバは警察にはいえない金のため、やくざを使って脅しをかけてきた。
二人は古びた映画館に隠れる。だが、病に犯されている由紀男は死んでいく。
富岡は由紀男の残した金で男を買って遊び続けた。だが彼の頭にあるのは由紀男の笑顔だった。


林芙美子の「浮雲」をゲイ映画にアレンジした意欲作。原作料とか著作権とか大丈夫なのか?と思ったら、林芙美子は1951年に亡くなってるから死後50年以上でもはやパブリックドメインと化しているのだな。(たぶんこういう解釈であっている)
クレジットにも堂々と「原作 林芙美子「浮雲」」と表記される。

実を言うと2回見た。
話がよくわからないのである。
説明不足、というのかどうにも話が分かりにくい。
いくつか要因がある。

富岡のせりふが長く、また光音座は音が小さめで(最近この映画でなくてもそう思う)、また那波隆史がちょっと抑えめのトーンで話すから、せりふがよく聞き取れないのだよ。
2回目はたぶんスピーカーに近い前から2列目で見て、1回目に聞き取れなかったせりふも聞き取れた。

時間の経過とか場所の説明を示すカットが少なく、今「現在」なのか「回想」なのか、東京なのか沖縄なのかよくわからないので混乱する。
ほんの数秒のカットとか、カットの間が短く、わかりづらい。

特にダンサーの青年が元の彼氏に殺される件だが、由紀男がイバにバックで犯されながら目の前にあった新聞を見て説明されるのだが、それが由紀男の体がイバに犯されたために揺れている状態で写される。
だから新聞記事が写ってるのはわかるのだが、何が書いてあるのか分かりづらい。2回目に見てようやく分かった次第だが、この解釈はあってるのか?

どうように続いて富岡のシーンで「判決 懲役22年」とか書いてある文書がちらっと写るのだが、これが最初に見たときは富岡がなにか22年の判決を受けたと思った。ちゃんと文書を写すか、せりふで補説した方がいいよ。

かように説明不足、説明下手のために話が見えにくく、解釈に苦労した。
最初から訳の分からん世界観を押しつけられる映画よりはましですが。

でも2回見る気になったのは、やはり那波隆史という役者に興味があったのだろう。
今月OPフェスで上映された竹洞監督の「初恋とナポリタン」で初めてしったが、ちょっと奥田瑛二にも似た感じでなかなか渋い感じでちょっと気になる役者だからよく見たかったのだ。

それにしても絡みのシーンが多く、それこそ5分に1回は(軽く短いのも含めて)ある感じ。
冒頭に311の被害のカットがスチルで登場。映画にはなんの関係もないが、製作中に起こったこととしてどうしても映画に入れたかったのだろう。

あと最後に由紀男が隠れる場所として「首里劇場」という映画館が登場。沖縄のピンク映画館らしい。ボロボロを通り越してレトロなのか博物館級の映画館が登場する。一度行ってみたい。

同時上映は「バナナボーイ」(夏の新作のチラシが欲しくて早めに行った。まだなかったけど)。






邪魔者は消せ


日時 2017年7月17日
場所 DVD
監督 牛原陽一
製作 昭和35年(1960年)


羽田空港に降り立つある外国人クレイグを見張る警視庁の松田刑事(葉山良二)たち。彼はあるホテルに入っていった。その外国人の部屋に日本人の男、志村(待田京介)が入っていく。それを尾行しようとした刑事たちだがその男は路上で撃たれて死んでしまう。
犯人の横倉(内田良平)は岩瀬組の岩瀬(金子信雄)の部下だった。
横倉は志村が警察に目を付けられてると知って逮捕されるのを恐れて殺したのだ。
岩瀬は例の外国人から大量の麻薬を買い付けようとしていた。その新しい連絡係を2、3日前から自分の組で世話をしている秋津(赤木圭一郎)にやらせることにした。
岩瀬と縄張り争いをしている組の親分(清水将夫)の部下の長塚(穂積隆信)は秋津の身元を疑っていた。実は秋津は厚生省麻薬取締官の潜入捜査員だった。
取引は開始されることになる。しかし警察にマークされていることを知ったクレイグは岩瀬たちを一挙に殺そうとボールに仕掛けた時限爆弾を岩瀬たちに渡すことにする。


赤木圭一郎は日活スターの中では一番好きで、主演作は学生時代に全部見たはずだ。この映画も見ているが最後にボールに仕掛けられた爆弾の争奪戦になるところしか覚えておらず、DVDも中古で安かったので再見した次第。
日活から正式にDVD発売されているのと、海賊版のように別会社から発売されているのもあって、この映画は後者の方。だから画質はイマイチ。

そういうことは関係ないと思うが、作品の出来はもう一つだった。
脚本は熊井啓なのだが、やっぱりアクションは苦手なのか。
潜入捜査もの、というと同じ赤木=牛原監督コンビで「紅の拳銃」という名作が後に作られるが、ほど遠い。

秋津を疑う男として穂積隆信が登場するのだが、これがどうにも存在が弱い。「お前網走帰りなんだってな。どこの房にいたんだい?」とねちねち質問責めにするあたりが面白いが、そこだけである。
この後にも共同で敵を倒したりとかあると面白かったのだがなあ。
それに穂積ではちょっと個性が足りなくて(アクが弱くて)残念だな、宍戸錠とかならよかったなと思ったら、キネ旬のデータベースを見るとこの役は二谷英明になっている。
なるほど、何かの事情で出演できなくなって穂積は代役だったのか。
宍戸錠とか「拳銃無頼帖」シリーズがあるから出演出来ないしね。

んでラストでクレイグが「麻薬が入ったボール」と称してバスケットボールを渡すのだが、それが修学旅行生の持っていたボールと入れ違って、という展開。ボールが次から次へと人へ渡っていき警察は翻弄される、となるかと思ったが、修学旅行生の方はあっさり見つかり、ボールを知らべてみたら、爆弾は仕掛けられていなかった、という展開。
なんだそれ。意味ないじゃん。結局爆弾は予定通り岩瀬のアジトで爆発しそうになるが、高品格の第3の悪党が登場し銃撃戦になって爆弾どころではないという流れ。
結局秋津が爆弾を投げて悪党どもは助かるんですけどね。

折角の爆弾騒ぎも効果的にならず、残念な映画。赤木の恋人役で清水まゆみという女優が出るが、印象に残らない。ここら辺も惜しい。






警視庁物語 逃亡五分前


日時 2017年7月17日
場所 DMMストリーミング
監督 小沢茂弘
製作 昭和31年(1956年)


連続して起こるタクシー強盗殺人事件。今までに3人の運転手が殺されている。今回の事件ではタクシーの中に芸者の名前の書いたつまようじ袋が残されていた。その芸者を訪ねると、昨日来た農林省の役人に渡したという。その役人を参考人で呼び出して調べるが、その男は芸者の元を出てから銀座のバーの女のアパートへ行き、アリバイは成立していた。その役人とバーのホステスの証言から次に乗った男のモンタージュが作成されたが、マスクをつけていたので不確かだ。
手がかりがなくなったとき、東京駅の床屋からワイシャツに血の付いた男が現れ、ワイシャツの洗濯サービスを依頼したという。
早速宮川刑事が床屋に急行。ワイシャツは別のものを渡してもらうように頼み、そのシャツは鑑識へ回した。
小磯(伊藤久哉)と名乗る例の男は浅草に電話をかけ、あるホテルへ向かった。宮川刑事はその小磯を付ける。ホテルの小磯の部屋に女が訪ねてくる。女が出て行った後、小磯の部屋を見張っていたが、小磯は窓から逃亡した。


「警視庁物語」シリーズ第1作。「警視庁物語」は時折単発的にミステリー特集などで上映される時に見ていたが、全作品見てみたいと思っていた。友人からDMMで全作品配信になっていると聞き、早速1作目から見てみた次第。画質も大型テレビにつないでもまあまあだし、今後全作品見てみたいと思う。

伊藤久哉が犯人役で登場したのにはちょっとびっくり。伊藤久哉って東宝専属だと思っていたが、この頃は違ったのかな。
「警視庁物語」ではお決まりといえる空振り捜査が最初に登場。この役人のエピソードで20分ぐらい。こういった空振りがリアルに思えるのだなあ。

小磯をホテルに訪ねてきた女はコールガール組織の女(ステッキガールと言ってたけど)。その女は浅草映画街で屋台の古本屋に金を届けている。
また次に起こったタクシー強盗の現場から万年筆が見つかった。小磯も「万年筆をなくした」と電話で言っている。事件に使われた拳銃は別の事件で捕まったチンピラが持っていた。そのチンピラは浅草で屋台の古本屋から買ったという。
万年筆を追っていくと1ヶ月前にあった窃盗事件である外人宅から盗まれたものだった。外人を訪ねると小磯の事は知っていて、「私の拳銃を欲しがった」という。

どうやらその拳銃ほしさに外人の家に古本屋の女の夫が忍び込んだが、拳銃は持ち出せずに時計と万年筆だけ盗んだ。夫の方が警察に捕まり、その保釈金を作るためにタクシー強盗をしていた、という結論。

古本屋の女に拳銃を売りつけようとした男がいて、その男を張り込んだ所へ小磯たちがやってきて、逮捕、で「終」。

細かい捜査描写がリアルで好きなのだな。
もっとも外人の拳銃を欲しくて泥棒に入り、その保釈金を作るためにタクシー強盗ってなんか本末転倒な、何のために犯罪をしてるのかよくわからないという動機があいまいなのが弱い。

でもスター刑事のいない、地味な捜査が好きである。他の作品も順次見ていきたい。





逆光の頃


日時 2017年7月15日18:45〜
場所 新宿シネマカリテ2
監督 小林啓一


「僕は歪んだ瓦の上で」
赤田孝豊(高杉真宙)は京都に住む高校3年生。模擬テストの日、遅刻して焦っている自転車で会場へ向かう途中で同級生の公平(清水尋也)と会う。公平はバンドをやっていて、彼は今日はライブがあるのでテストは受けないと言う。彼のライブをつい観に行ってしまう孝豊。
ライブハウスは近所の苦情で閉店することに。公平は東京へ旅立った。
高豊は五山送り火の夜、幼なじみのみこと(葵わかな)から杯のお酒に写った大文字の文字を飲み干すのだった。

「銀河系星電気」
夏休み。1日に30個の英単語を覚えると決めた孝豊は学校の教室で勉強していた。家ではゲームやマンガの誘惑に負けてしまうからだ。
しかしつい夜まで寝てしまう孝豊。
みことが孝豊の姉に頼まれて学校まで見に来た。二人で夜の校舎を警備のおじさんに見つからないように歩く。そこで階段の窓から美しい月を観る。

「金の糸」
孝豊とみことと帰る途中、同級生の不良の小島(金子大地)に絡まれる。
「なんであういう奴をがつんと出来へんの?」とみことに言われてしまう孝豊。
雨の日、後輩の傘に無理矢理入っている小島を見かけた孝豊は小島と喧嘩する。
孝豊の父は怪我をして帰った孝豊を見て、初めて自分の仕事を手伝わせるのだった。


もう単純に今注目している俳優の一人、高杉真宙(まひろ)の主演作だから観に行った。上映時間は1時間5分というピンク映画並の短さ。一時期はどんな映画も2時間越えしていたが最近は100分ぐらいの映画も多くなったが、65分で一本立てとは珍しい。レイトショーの自主映画みたいな尺だけど。配給はSPOTTED PRODUCTION。
高杉真宙は以前アパートのCMで堀北真希の弟役とか、今は芳香剤のCMで松岡修造の息子役などで出演して気になっていた。
最近は「PとJK」などで映画でも顔を見かけるようになってきた。

映画の方だが、私にはちょっとつらい。
事件らしい事件は起こらず、淡々とした話の映画である。
コミックの映画化で毎回「え、ここで終わるの」というような物足りなさを感じる。
京都の長期ロケの風景の美しさは感心したけど。
第3話の喧嘩してきた息子を「お前も一人前の男になったか」と言葉では出さないが認めて自分の職人仕事を教える展開は好きだ。

別にねらっていった訳ではないが、本日は監督と原作漫画家のタナカカツキさんのトークイベント付き。でも客席の入りは4割ほどか。さびしい。
原作マンガはタナカさんが学生時代にモーニングで連載したもの。
モーニングと言えば「沈黙の艦隊」とか「課長島耕作」などでストーリー重視の「大人向けのマンガ」というカラーが強かったのだが、こういう変わり種も許されたそうだ。

小林監督はモーニングを買って偶然に「逆光の頃」を呼んで感動したそうだ。その頃は連載が不定期で、全部は読んでいなかったが、受験の朝にたまたま立ち寄った本屋で「逆光の頃」の単行本を見て、受験をさぼって本を読んだそうだ。
すげーなー。映画監督になるような人はやはり常識人ではいけません。

タナカさんによるとストーリーを考えるのは苦手なので、「今から考えると絵を描きたかったんだ」と思う、という事でした。
映画はカメラを向ければ風景が写るけど(もっともどこにカメラを向けるかは重要だけど)、絵はそうは行かない。
原作はそのあたりの絵のパワーがあるのかも知れないが、映画ではちょっと伝わりにくいからなあ。

好きな人は好きだろうけど、私にはもの足らない映画でした。






プリンセス 甘く危険な休日


日時 2017年7月9日20:10〜
場所 テアトル新宿
監督 吉行由美


ナバリア国の王女マルゲリータ(羽月希)は恋愛経験もなく、親の薦める結婚相手と結婚させられそうになる。そんな時、マルゲリータは海岸でレディスコミックを拾う。そのコミックの男女の愛の描写にはまったマルゲリータは自分も漫画家になりたいと国王に申し出る。迷った国王だが「王女の身分を隠して自分の実力だけでやってみるなら許可する」と言ってくれた。
ボディガードのエミリ(加納綾子)を密かにつれてマルゲリータは来日し、鈴木マリアと名を変えて自分が感動した漫画家の楠さゆり(吉行由美)のアシスタントに。
先生にも力を認められるマリアだったが、やがて出版社の編集者八木(ジョリー伸志)が気に入ってくれてオリジナル漫画を描くように言われる。
マリアは地雷撤去などの平和活動にも力を入れていた。そのことを八木の友人で戦場ジャーナリストの西原(老田亮)に「偽善だ!」と批判される。
一度は反発したマリアだったが、西原の言うことも当たっていると反省するようになる。
マリアの単行本が発売になる直前、週刊誌にマリアの身分がスクープされる。同時に取材にいった西原が行方不明になったと報道される。


R18タイトル「恋するプリンセス ぷりんぷりんなお尻」
吉行監督が上映後の舞台挨拶で「女子はみんなお姫様にあこがれますから、私も今回女子に戻って作ってみました」というお話。
うん、普通に面白かったからいいんじゃないでしょうか?

また戦場から帰ってきたカメラマンが全裸になってシャワーを浴びるシーンあり。
これが丁寧に撮られている。
舞台挨拶でも司会の方が話題にされ吉行監督が「女性の方にも楽しんでいただけるピンク映画を目指して撮りました」というお話。

映画の方は西原は無事戻り、八木が西原のことを「女に手が早い悪い奴」と言っていたのだが、それは実は八木が嘘を言っていて、週刊誌にばらしたのも(いやそもそもいつ気がついたのだ?という疑問はあるが)八木だった、というオチ。

吉行監督らしいピンク映画でした。






コクウ


日時 2017年7月9日18:00〜
場所 テアトル新宿
監督 榊 英雄


朋美(戸田真琴)は営業の仕事をしながら売春もしていた。ある日、街で大学時代の先輩、潤と再会し付き合うようになる。
朋美の売春のことはシングルマザーで同じように売春をしている派遣の手塚ゆい(とみやまあゆみ)だけが知っていた。彼女は朋美を何かとかばってくれたが会社の社長の息子マサヒコ(山本宗介)は朋美の秘密を感づいていた。
朋美は母の再婚相手(川瀬陽太)からのDVを受けて犯されていた。朋美の母は右目の横に目立つほくろがあり、母の死後、義父に目元にほくろが書かれ母の代用として犯され続けていた。
また朋美は客と寝た後、客に好きなところにほくろを書いてもらい、客が帰った後自傷する行為を続けていた。
潤は朋美の体を求めるようになるが、朋美は拒否していた。やがて借金の返済も終わった。朋美は自分の体に書いたほくろをレーザー治療で消した。朋美と結婚を望む潤は二人で義父に挨拶に行く。潤が帰った後、義父は「俺を捨てるつもりか!」と激怒し、朋美はつい手元にあったボールペンで義父の目を指す。
また潤は飲み友達から「そういえば大学時代の後輩で今は売春してる奴がいる。名前はええと朋美だ」と聞いてしまう。
すべてを失った朋美は顔中にほくろを書き、交差点の真ん中に立ち尽くし、慟哭の叫びをあげる。


R18タイトル「ほくろの女は夜濡れる」。
うーん、あんまり好きになれなかった映画だ。
まず朋美はメンヘラだ。こういう女は関わらないに限るというのが本音である。

朋美の母が目元にほくろがあったので義父はそれを求めて朋美の目元にほくろを書いたのが始まりで朋美は売春する度にほくろを描く。
でも申し訳ないがマジックで書いただけだから、風呂に入れば消えると思う。
その辺がこの映画の世界観に入れない。

チラシに「ラストに驚きの展開」とか書いてあったのでどうなるかと思ったが、ちょっとイってしまった朋美は顔中にほくろを描き、どこかの交差点のど真ん中で慟哭の叫びをあげる。
このカットがビルの俯瞰で撮られており、女優さんは顔をほくろだらけにされて交差点に取り残されたのだから、大変だったと思う。
くれぐれも同情する。
サイン会の時に「ラスト大変でしたね」と言ったら「朋美の気持ちに成れました」とおっしゃってました。
なるほど、女優さんはそう考えるか。

でも話全体がちょっと悲惨で好きになれなかった。
去年観た榊作品はダメだったから、この監督とはあわないかも知れない。






サイコウノバカヤロウ


日時 2017年7月9日16:00〜
場所 テアトル新宿
監督 竹洞哲也


女子大生の有希(彩城ゆりな)はゼミで一緒になったりした輝雄(櫻井拓也)のことが気になっていた。就職活動がことごとく失敗し、自分のアパートに引きこもっていて、メールもラインも返信がない。
訪ねていったら生きてはいたが、落ち込んでいた。有希は最近自分が始めたバイト、「自分レンタル」を紹介してあげた。決して援助交際ではなく、相手の話を聞いてあげたり簡単な頼まれ事をするバイトだった。
輝雄は最初の客は後藤(イワヤケンジ)というサラリーマンだった。会社では部長だったが、部下が自殺し、自分の仕事に自信を失っていた。
二人で居酒屋で飲んだ時、輝雄は「後藤さんは悪くないっす!」と意味もなく励まし、後藤に気に入ってもらえた。その後、後藤の家にも出入りし、妻(酒井あずさ)にも気に入ってもらえ、妻の料理をほめちぎり、夫婦仲はますますよくなって、妻は妊娠する。
輝雄は最近「おひとり様ウエディング」にはまっている女性のミワコ(友田彩也香)に気に入ってもらい、何度も指名された。やがて輝雄はミワコを意識し始めるが、有希はそれが気に入らない。
有希の最近のお客さんは交通事故で娘を失った福田(森羅万象)で、自分を責めている彼を励ますことなど有希には出来なかった。しかしそれを聞きつけたミワコが「私なら何か力になれるかも」と福田に寄り添う。
ミワコ自身は昔ひどい男に付き合って子供を産めない体になっていた。しかしミワコが思いを寄せる男、タカシは、特にタカシの両親が子供を望んでおり、結婚をあきらめていた。
それを知った輝雄は二人の為に一肌脱ごうと決意する。


OP PICTURES+フェス2017でのR15版での上映。今回初めての鑑賞。R18タイトル「レンタル女子大生 肉欲延滞中」

最近評判の竹洞監督で、櫻井拓也さんの完全主演作品と聞いて観に行った。
正直面白かった。完全なコメディでダメ人間だがお人好し、というキャラクター櫻井拓也にぴったりでかつての「男はつらいよ」テイストのコメディだ。櫻井拓也がだんだん渥美清を彷彿とさせてくる。

また客層も上野とちがって純粋に映画を見に来ている人なので、随所随所で笑いも起き、観ていてここちよい。
喧嘩しながらも最後には結ばれる有希と輝雄のカップルは最高である。

また単なるエピソードが団子状につながるのではなく、最初に客だった人が今度は相談相手にあったり、客だった人に今度は別の客の手助けをしてもらったりと、人間関係が絡み合う小松公典(当方ボーカル名義)の脚本がすばらしい。勉強になる。

輝雄のレンタルバイトのエピソードの中で、ゲイカップルが別れるために「今彼を演じてほしい」というところで、輝雄が客の頬にキスをする。そのカットが「戦場のメリークリスマス」っぽかったので、舞台挨拶後、ロビーにいた竹洞監督に確認したら「そんな感じです」と笑っておられた。

竹洞監督と櫻井拓也は今後も期待である。






初恋とナポリタン


日時 2017年7月5日20:50〜
場所 テアトル新宿
監督 竹洞哲也
(R18タイトル「弱腰OL 控えめな腰使い)


桐子(辰巳ゆい)はある地方都市のタウン誌で表紙などのデザインの仕事をしている。35歳だが、恋人もいない。同僚の同い年のヒデミ(しじみ)は若い恋人がいるようだが、結婚する予定もなさそうだ。
ヒデミの紹介で行ったイタリアンレストランに今度は昼間に一人で行ってみる桐子。コーヒーだけで帰るつもりだったが、隣の席に座る中年男が注文したナポリタンがおいしそうで自分も頼んで見る。その男と目が合う桐子。
桐子の高校時代の親友、コノミ(加藤ツバキ)は夫から名前で呼ばれず、「おい」「ちょっと」と言われる日々に飽きて不倫していた。
桐子は例の男とたびたびその店で出会い、自己紹介しあう。男は鮫川陽介(那波隆史)と言い、高校教師だったが、最近退職したという。
やがて土曜日に二人で出かけることになった。


大蔵映画のピンク映画をR15に再編集してまた上映時間も本来の長さにしてのディレクターズカットで上映する「OP PICTURES+フェス2017」での上映。
何かとピンク映画界で話題の竹洞監督で、タイトルがよかったのと、主演が「若きロッテちゃんの悩み」で好演していた辰巳ゆいなので観てみた。
(OPってオークラピクチャの略だと思っていたが、OPピクチャってことは違ったのかな?)

桐子は夜散歩するのが趣味。地方都市(ロケは深谷。駅舎がレンガづくりで妙に立派)の夜の道の街頭や看板のネオン、車のヘッドライトが際だつ。現在のデジタルカメラは明るさに強いのでこれだけ写るのだろう。
昔のフィルムだったら、ここまで写らないと思う。

この鮫川という中年男と知り合うのだが、この二人の仲がなかなか進展しない。ピンク映画にありがちな「出会ったらすぐホテル」という展開もない。
その前に知り合うときにナポリタンを今のようにスプーンの上でフォークを回して食べる、ということをせずにナポリタンをフォークに巻き付けてすするように食べる。その音が店のBGMとして流れているクラシックに被さって面白い、ということが話すきっかけ。面白い出会いだなあ。

土曜日に外で会う時にヒデミからアドバイスでちょっと派手めのワンピースが送られてきて、それを着ていく。
「いつもと違っててきれいですね」と鮫川に誉めてもらえる。
二人は何となく有名な場所行くわけでもなく、それぞれの町のお気に入りの場所に行ったりする。それも他愛のない場所だ。小学生のデートみたいな純真な感じである。

ヒデミから「付き合ってるの?」と言われて「そんなんじゃない」と桐子は答える。この「そんなんじゃない」という言葉がたびたび登場。
そう、女に限らず男もだけど微妙な言い回しなんだよなあ。面白い言葉だよな。

結局最後には桐子は自分のアパートに鮫川を誘うのだが、入ってくれなかった。
連絡が取れなくなったが、例のレストランでマスター(森羅万象)から手紙を受け取る。
「元高校教師だとは嘘です。いつかはばれると思ってました」とあり、結局は分かれた。
この鮫川の心境がよくわからない。彼は独身だったのか?それとも結婚しているのか?(実はコノミと夫だった、というオチがあるかと思ったらそれはなかった)

ヒデミは若い彼から「東京へ行こう」と誘われるが、彼女はもう出直す勇気はない。コノミも「おい」と呼ばれるだけの日々も飽きているが、続けるしかない。
30半ばの女性あせりと悩みはよくわからないけど、ちょっとは伝わってきた。

今回驚いたのは、辰巳ゆいが着替えたりシャワーを浴びたりするシーンはあるので裸にはなるけど、カラミはない。書いちゃうけど最後まで桐子はカラミなし。(高校時代の回想で、初デートで男の子に襲われるカットはあったけど)
これには驚いた。
オークラ映画でもそれはありなんだ。
その代わり、コノミとヒデミにはカラミがある。ピンク映画も変わってきたなあ。






警察日記 ブタ箱は満員


日時 2017年7月2日15:30〜
場所 ラピュタ阿佐ヶ谷
監督 若杉光夫
製作 昭和36年(1961年)


東北の田舎町の警察署。署長(嵯峨善兵)は汽車で出張だが、その汽車が橋の上で一人の男が自殺しようとしたが、直前になって怖くなって橋から飛び降りたため助かった。おぼれた男は通りかかった警官と助役で助けた。
また運三(常田富士男)は微罪で警察に捕まったが説諭で返される。でも本人は暖かい留置所にいたいという。
駅前交番の若手巡査の花川(沢本忠雄)はヨシエ(吉永小百合)集団就職するのを見送った。彼は実はヨシエに惚れているのだ。
ダイナマイトの盗難があったと近くの工事現場から連絡が入る。近所の旅館を回ると客から預かった荷物が怪しい。警察に持ってきてもらって荷物をあけたら、盗難にあったダイナマイトが出てきた。荷物を取りに来た男(大滝秀治)はその場で逮捕。
ヨシエたちは1ヶ月で東京の就職先から帰ってきてしまう。食事は貧しく、仕事は長く、風邪を引いても休ませてもらえない状況に嫌気がさして友人たちと帰ってきたのだった。ヨシエの父(宇野重吉)は借金して買った牛に死なれ、借金だけが残り、それがきっかけで働くのを辞め毎日酒浸りだった。
住宅街では最近のぞきが出没すると住民が訴えてきた。警官が張り込み行くが逆に痴漢の間違えられてしまう始末。
ヨシエは父の借金のために別の仕事で東京へ行くという。しかしそれは女郎に売られるらしい。


久松静二監督の「警察日記」は有名だが、続編ではなく同じ原作らしい。久松版は見てないが。
田舎の警察の話で全体的にのんびりしたテンポで映画は進む。そのせいか65分のSPなのにずいぶんと長く感じた。

これが実に「複数犯罪」の世界でサスペンス映画なら面白いのだが、喜劇としているためか面白くない。
特にダイナマイトが入ってるかも?という石油缶を運ぶあたりはなんだか失笑した。ダイナマイトは落としても爆発しないよ。ニトログリセリンじゃないんだから。

吉永小百合が売りとばされそうになったのだが、夜行列車を追いかけるのに花川巡査は貨物便のトラックに便乗させてもらう。ふーん、この警察署には車が一台もないの?

ラストで例ののぞきが捕まるのだが、それが常田富士男。逮捕されたくてのぞきをしていたというオチ。
常田富士男が最後をさらっている。
警察署長が夜な夜な町長や建設会社の人の宴会をしていて、「署長も汚職に関わっている?」と思わせて最後に町長たちは逮捕。
署長は汚職の証拠集めをしていたのでした、というオチ。

面白くやればもっと面白くなった気がするが、その辺が若杉光夫の凡庸さなのかも知れない。






ゆがんだ月


日時 2017年7月2日13:00〜
場所 ラピュタ阿佐ヶ谷
監督 松尾昭典
製作 昭和34年(1959年)


神戸の立花組の桂木(長門裕之)は自分の目の前で兄貴分の米山(高原駿雄)が殺された。撃ったのは同じ組幹部の立石だ。警察には「自分は撃たれた瞬間を見てない」と犯人を知らないと供述する桂木。彼の情婦の奈美子(南田洋子)も立石が犯人と解っていた。東京から米山の妹・文枝(芦川いづみ)が葬儀と遺骨を受け取りにやってきた。
立石の指示で文枝の神戸の案内もする桂木。桂木はカタギの世界に生きる文枝を好きになってしまう。そして米山殺しは実は立石だと打ち明ける。
文枝に言われて新聞記者の木元(大坂志郎)を通して警察に通報する桂木。彼は神戸を去らねばならなくなったが、奈美子とも別れて生活を立て直そうとも考えていた。
木元と同じ新聞社の東京本社に勤める木元の兄(大坂志郎)を頼って東京へ出る桂木。木元にアパートを世話してもらい、歌舞伎町でバーテンになる桂木。
だが別れたはずの奈美子も桂木を追って東京へ。しかしそれだけではない。立花組の立花(三島雅夫)に雇われた由良(神山繁)という殺し屋もやってきた。
その頃木元は大島で発見された女性の水死体の事件に疑問を持っていた。


ラピュタ阿佐ヶ谷「日活文芸映画特集」で上映。文芸映画っていうより完全な日活アクションである。
昭和34年だから日活ダイヤモンドラインが始まる直前。日活アクション路線も突然現れた訳ではなく、こうした映画でその下地が作られていたのだな。
長門裕之主演だが、日活アクション路線が確立した頃なら小林旭が主演をやりそうな話だ。

実は今回赤木圭一郎が目当てで見た。彼の主演以前の作品歴で見たことがあったし、タイトルがなんだかシュールな感じで気に入ったのだ。
赤木圭一郎だが完全に裏切られた。クレジットでは「長門裕之 芦川いづみ」の次ぐらいに「南田洋子」と同じに「赤木圭一郎(新人)」と出た。
後半になって長門裕之と絡む役柄かと思ったが、結局長門が芦川の家を訪ねた時に「婚約者です」と紹介されるだけ。台詞も二つぐらい。
これはがっかりきた。

そんな中でもよかったのは神山繁の殺し屋・由良。
最初は姿を現さず、「赤トンボ」の口笛だけが流れてきて、桂木がビクビクする、という印象に残る登場。
彼の殺しの信条は「武器を持ってない相手は撃たない」というもの。
そこで彼は最後に桂木を横浜の銃の密売をしてる店に連れて行き、銃を2丁購入。その銃を持って人気のない河原(だったか)に連れて行き撃ち合い。桂木は足を撃たれたが、由良も桂木に近づいてきて倒れる、とか後の宍戸錠の殺し屋の原型である。

主役が長門裕之で白黒映画だからどうしても地味。
小林旭あたりが演じていたら大分印象が違っていたろう。






夏の娘たち〜ひめごと〜


日時 2017年7月1日19:00〜
場所 ポレポレ東中野
監督 堀禎一


林業が産業の過疎の村。裕之(鎌田英幸)の父(下元史朗)はガンでもう長くなかった。裕之の家に養女になっていた義理の姉にあたる直美(西山真来)は看護師をしていて、養父を看取る。裕之と直美は昔から仲がよく、母親からも「あなたたち結婚する?籍を抜けばいいだけのことだからかまわない」と言われている。直美の母親は昔この村に数ヶ月いた林業関係の人だという噂だ。
直美と裕之は直美が15歳、裕之が13歳の時にすでに体の関係があった。直美は実の母(速水今日子)が経営する旅館に住んでいて、そこに義雄(松浦祐也)が現れる。彼も直美や裕之と幼なじみだったが、こっちに帰ってきて就職するという。
直美は裕之から結婚を申し込まれていて悩んでいた。そして自分の本当の父が裕之の父と知る。つまり直美と裕之は異母姉弟だった。
義雄は近くの町の店でTバックをはいて踊っている娘と付き合っていた。
裕之の妹も近所の青年(櫻井拓也)と付き合っていた。
結婚に迷っていた直美は母親に相談。母親は「運命の人って思うなら、いいよ」と言ってくれたが、それを聞いて直美は「彼は運命の人じゃない」と結婚を断ってしまう。
やがて義雄とつきあい始める直美。


ピンク映画でデビューした堀禎一が国映でひさびさに撮った作品。
山の中の狭い人間関係の男女の物語だ。
姉弟の体の関係とか「血の怨念」になってしまうような人間関係だが、そこまで暗くない。
割と明るい(というほどではないが)ので、現代の若者の話だが、なんだか狭い中でくっついたり離れたりしている。
田舎の人間関係だなあ。

長いカットが多く、出演者が複数で話すシーンなど、数分会話が続く。役者が多少台詞を言い間違えても、気にしないでそのまラストまで言ったようなシーンが何回かあった。
たぶん「台詞を性格に言うこと」よりも役者の芝居を重視したのだろう。

ロケ地に選ばれた直美の家の旅館がすばらしい。
話の設定としては直美の母が一人で切り盛りしているような小さな旅館だが、実際は大きい旅館に感じた。坂に作られているのか、階段が印象的である。

映画は結局義雄と結婚することになった直美だが、その直前に祐也は山で首をくくって自殺する。
「自殺の理由って何だったんだろうね」と村の人々(川瀬陽太など)が言う。
二人だけの秘め事で終わった関係だ。

昨日見た「兄に愛されすぎて困ってます」が何にも考えないで「兄妹の関係もあり!」としているが、こちらの方は結局はやめており、私としては納得出来た。






ふりむけば君がいて


日時 2017年7月1日15:30〜
場所 光音座1
監督 池島ゆたか
製作 平成12年(2000年)


向田家の三兄弟、尚也、和彦、晋平。尚也はサラリーマン、和彦は映画監督を目指しているが、特に何もしていない、晋平は大学生。
母親は家を出て父とは死別。三兄弟は祖父母に育てられ、その祖父母も今は他界。3人で祖父母が残してくれた家に住んでいた。
和彦はバイで男も女も常に恋人がいて入れ替わりが激しく、時々怒鳴りこんでくる奴もいる。尚也も実はゲイで恋人がいた。
そんな時にいなくなった母親の娘がやってきた。大学受験するためにしばらく東京のこの家において欲しいという。
尚也は会社で専務の娘(林由美香)との見合いの話が持ち上がっていた。
会社のパーティで尚也を見て会ってみたくなったという。


池島ゆたか監督作品。脚本は五代暁子。
この二人がゲイ映画を作るとなぜか家族の話になる。う〜ん、そういうのは光音座では見たくない。
前回見た「リーマンブルース」でも思ったけど、結婚の話とかやめて欲しい。一般映画館で上映されるゲイ映画とかLGBT映画祭で上映するような映画ならそれもありだろうけど、光音座で上映するピンク映画でそういう話題はふれて欲しくないなあ。

さらに妹の出現。この妹がキャラクターからしてうざい。甲高い声でがなりだし、うるさいことこの上ない。
次男と長男が喧嘩になり(次男は兄弟にはカミングアウトしている)、「お前は恋人をとっかえひっかえして誠実さがない」「兄貴もお見合いとかしてんじゃねーよ」とかいいあう。
そこで「お兄ちゃんたち何喧嘩なかしてるのよ!」と妹が怒鳴って喧嘩は収まる。

ここまで実に三男の陰は薄い。
結局お見合いで二人きりになった時に尚也は専務の娘にゲイだとカミングアウトし、彼女も理解してくれてゲイだとは言わないでうまくこの話はなかったことにする、と言ってくれる。
それで万事収まって妹も大学受験は無事に終わって、入学後はこの家から出て行く。
(別にこのままいればいいじゃん、とか思ったけど)

ラストで三男も大学で先輩から誕生日プレゼント(だったか?)をもらって恋人が出来る予感が出来てエンド。

家族の話とかあんまり好きじゃない。







バナナボーイ


日時 2017年7月1日14:25〜
場所 光音座1
監督 新倉直人
製作 大蔵映画


利根川のジン太(坂入正三)はストリップ劇場で女装のストリップをしている。今日も劇場の支配人の高校生息子が自分のショーを見てオナニーしていたと聞き、喜んで襲ってみたが逃げられ騒ぎになったので劇場を飛び出す。今日もギャラはもらい損ねた。金がない上に警察官に不審尋問を受け捕まってしまう。
東京のラーメン屋でおばとともに働く妹のかえでのおかげでなんとか警察から出てくる甚太。たった一人の弟子にも逃げられる。
自分の事務所に行ってくればあちこちの劇場で問題を起こす甚太は社長から契約解除をにおわされるが、なんとか許してもらう。
そんな時かえでには彼氏(山本竜二)がいるらしいと知って新宿でデートしてる二人を邪魔してしまう。


坂入正三主演映画。監督は新倉直人(小林悟)。
新宿歌舞伎町の映画街でのロケがあったから、そこで上映されている映画が東映の「ザ・サムライ」の看板があったから1986年か。中村繁之主演だった。中村繁之、今どうしてるかな?(ネットで検索したら刑事ドラマでゲスト出演とかしてるらしい)

映画を見ればわかるが、「男はつらいよ」の安っぽい焼き直しだ。
色はちがうが、甚太はダブルのスーツを着て、これも色は違うがトランクを持っている。で、とらやがラーメン屋になっていて(おいちゃんはいないけど)おばちゃんがいて妹の名前はさくらではなく、かえで。
そういえば「フーテンのHOMOさん」という同じような坂入正三が寅さん風に演じているものもあった。

またそもそも甚太がステージで何をやってるかわからない。楽屋のシーンしかなくて肝心のショーのシーンがないのだよ。
てっきりストリップの幕間の芸人かと思ったら、光音座のブログの作品説明を読むと女装をしてストリップする、ということらしい。

はっきり言うけど私は坂入正三という役者が好きではない。
実際に会ってみるとまた違う印象があるのかも知れないが、演技過剰でうるさいだけ。下手くそな芸人が渥美清にあこがれてまねをしてるだけなのがミエミエである。
やらせてるのは新倉直人かも知れないが、本人も乗ってそうだ。

冒頭に出てくる高校生が、顔のアップで(角度とかたまたまかも知れないが)眉のきりっとしたイケメンで(言い過ぎ承知で言えば佐藤勝利にちょっと似ていた)期待したのだが、彼はその後犯されかけただけでおしまい。残念。
あと事務所に行って社長に「お前どこそこで男を襲ったんだって?」と怒られている時に回想でどこかの男に風呂場で襲うシーンがあるのだが、これが長髪の80年代のちょっとイケメンで、こちらも期待したが割とあっさりで残念。

あとはラーメン屋に下宿してる学生を犯そうとするとかだな。

坂入正三ってワンシーンで何かにぎやかしで出てくる分にはいいかも知れないが、主演となるときつい。
映画はかえでとも喧嘩して「こんなクソまずいラーメン屋あるか!」と啖呵を切るが、ラストでまた旅に出るときに「本当は日本一うまいラーメン屋だと思ってるんだぜ」と独り言をいう。

何度も言うけど「男はつらいよ」の安っぽい物まね映画。