2017年9月

   
悶絶上映 銀幕の巨乳
下半身警備 
あの名器を守れ
巨乳未亡人 お願い!許して・・・ スパイ(アンリ=ジョルジュ・クルーゾー) 奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール
青春野郎 ナミヤ雑貨店の奇蹟 新感染 
ファイナル・エクスプレス
散歩する侵略者
ダンケルク 追想 妖女伝説 
セイレーンX〜魔性の誘惑
三度目の殺人
湯けむりおっぱい注意報 AV秘話 生肌狩り 未亡人教授
 白い肌の淫らな夜
関ヶ原

悶絶上映 銀幕の巨乳


日時 2017年9月30日13:33〜
場所 上野オークラ劇場
監督 加藤義一
製作 OP PICTURES


新人女優の中西アヤメ(神咲詩織)は役の代わりに体を求めてくるプロデューサー(ケイチャン)がいやになって子供の頃1年だけいた石和に帰ってきた。そこのあった映画館、テアトル石和に入ってみると「北の梅守」という自分の出演作が上映されていて、入ってみる。
その映画館で働く福田一夫(櫻井拓也)はお客さんの中に中西アヤメを見つけるが「そんなはずないよな」と思ってしまう。
しかし翌日も彼女は見に来た。帰ろうとする彼女に思い切って話しかけてみる。「あの小学校で一緒だったひとみさんですよね?いや中西アヤメと言った方がいいのかな」
今は特に仕事をしていないという彼女に福田はテアトル石和で働くように勧める。支配人(なかみつせいじ)も賛成してくれた。
映画館のお客さんは常連客が多く、支配人は常連客の一人(ほたる)と映画に関するクイズを出し合って遊んでいた。しかし支配人はどうやら体が悪いらしい。
みんなと馴染んできたアヤメだったが、ある日例のプロデューサーから電話があり、もう一度会うのを強制される。体を求められ拒否したら「お前なんかつぶしてやる!つとめてる映画館だって」と言われ、みんなに迷惑がかかってはいけないと思い、テアトル石和を辞めることに。


加藤義一監督の新作。櫻井拓也さん主演なので観に行った。
福田は映画監督を目指していたが、挫折して今は故郷の映画館で働く。
どういう経緯で夢を諦めたがこの映画では描かれないのがちょっと不満。ピンク映画だから女優中心なのはわかりますが、彼の挫折の理由がなんだったか気になる。まあ映画監督を志望して諦める人間は多いから、特に描く必要もないかも?だとは思いますが。

福田のアパートに映画のポスターやチラシが貼ってあるが、それが「夏の娘たち」や「先生!」「奥田民生になりたいボーイ」など最新作ばかり。しかも映画館に貼ってあるポスターは「新感染」。撮影は8月に行われたようだ。

福田とアヤメの恋模様も一緒に自転車に二人乗りしたり(荷台がない自転車でアヤメがサドルに座って福田が漕ぐというやりにくそうだったが)、二人で夏祭りの花火を観に行ったり(花火は実際に地元で上げられているそうだ。照明がないから、周りはすごく暗いけど)と青春映画の定番のさわやかさでよい。

一方で福田が付き合っていた彼女が束縛が激しい女としてコミック的キャラで登場。いなくても話には困らないですが、まあピンク映画ですから、どうしても絡みが必要ですから。

もう一つのカップルとして支配人と常連客とが描かれる。
目が悪くなって失明寸前なのだが、常連客が告白し、支配人も告白するという流れ。なかなか照れくさくて言えない中年同士、というのが「男はつらいよ 知床旅情」を思い出したが、舞台挨拶でほたるさんが「『知床旅情』を意識しましたが、全然違ったものになりました」とおっしゃってたけど、私が連想できたんですからなってますよ、きっと。

ラスト、映画館を辞めるというアヤメに映画館で彼女が出演した映画を上映する福田。そしてその上映されているスクリーンの前で二人が結ばれるシーンは美しい。
一旦は別れる二人だが、福田が中西アヤメ主演で「明日は明日の風が吹く」(「風と共に去りぬ」がアヤメが好きだと言ったことからきている)というシナリオを書いているのを知った支配人が彼の背中を押してもう一度映画を作るように言う。

その前にアヤメが残していったチラシに「諦めるな、一度諦めると諦め癖がつく」by「がんばれ!!ベアーズ」と書いてある。はてそんな台詞あったけな、と思ったが、あの映画ならそんな台詞が出てきてもおかしくない。

ラストカットは数年後、テアトル石和に支配人がポスターを貼っている。
「明日は明日の風が吹く」主演中西アヤメ、脚本監督福田一夫。
甘すぎる気もしないでもないが、まあこのラストも悪くない。

櫻井拓也、本当にがんばっている。





下半身警備 あの名器を守れ


日時 2017年9月30日12:35〜
場所 上野オークラ劇場
監督 深町 章
製作 新東宝映画


ソウダ万太郎(川瀬陽太)は警備会社に入社した。早速配置されたのは八王子にある旧家の蔵の金庫に保管してあるダイヤモンドの警備。
先輩シラカワ(牧村耕次)が一緒だが、彼はその家から見える広場での人々の青姦ののぞきや、休憩室に妻を連れ込んでセックスする事にしか考えがない。
警備をしていると仲間内で噂の女怪盗・黒薔薇と遭遇する。左の乳房に薔薇の入れ墨があることからこの名がついたが、万太郎と会うと彼の者にしゃぶりついてきた。おかげでとりあえずダイヤモンド強奪は防げた。
表彰を受けた万太郎。たまたま歩いていたらビルの上から飛び降り自殺をしようとしている娘を発見。助けたことがきっかけで二人は絡むが彼女は万太郎に夢中になる。
その後また八王子の蔵の警備に戻ったが、再び黒薔薇が現れ、抱いてくれとせがんでくる。
先輩の妻も万太郎に迫ってくる。


加藤義一監督の新作の同時上映。
3本の中ではいちばん退屈だった。
川瀬陽太(若い。20年ぐらい前の作品か)の新人警備員が次々と女とやる話だが、絡みのシーンがいちいち長く退屈した。

ドラマも少ないし、ピンク映画らしいと言えばピンク映画らしかったですが。




巨乳未亡人 お願い!許して・・・


日時 2017年9月30日11:35〜
場所 上野オークラ劇場
監督 荒木太郎
製作 OP映画


エリート社員だった谷口(那波隆史)は会社をリストラされ、同じく起業して働いていた妻には浮気され、別居して今はアパートで孤独に暮らしていた。
今までの大企業での態度がたたって再就職はままならない。不機嫌な態度が近所の人々(なかみつせいじ、今泉浩一)を怒らせる。
佐和子も会社をリストラされ、金に困っていた。夫は6年前に亡くなったが、夫の父と同居していた。仕方なく援助交際で家賃を稼ぐ日々。資格をとって何とか有利な再就職をしようとがんばっている。
ある日谷口が近所のゴミ当番を忘れ、近所の人々から佐和子が代わりにやってくれたと聞く。さすがに悪いと思って掃除を手伝いにいく。
それがきっかけで親しくなる谷口と佐和子。
佐和子の義父は痴呆が始まっていて、谷口を息子と勘違いしているらしい。


本日は加藤義一監督の新作を上野オークラに見に来て、その同時上映。
最近気になる俳優、那波隆史の主演作でうれしくなる。
映画は佐和子と谷口が徐々に親しくなっていく様が淡々と描かれる。

谷口は既婚だが、別居して離婚状態。このまま二人が一緒になるか、と思わせるが、佐和子の資格試験の合格祝いの席に谷口は来ない。
その晩、谷口から佐和子の元に電話が。
「妻が自殺を図った。幸い命は取り留めたが、付き合っていた男とも別れていて仕方なく私の元に連絡が来た。改めてお祝いに行くよ」と谷口が言うが、「奥さんのそばに行てあげて。弱ってる時に奥さんから奪う気はないわ」と別れを告げる。
この電話越しのシーン、「その場所に女ありて」のラストっぽくてすごくよかった。

ここで終わってくれてもよかったのだが、谷口が就職の為に今度引っ越すと佐和子は近所の人から聞く。
仕方ないと諦めた佐和子だが、家に帰ると義父が家に入れてくれない。
その頃引っ越そうとしている谷口だったが、そこへ佐和子がやってきて二人は結ばれる、という結末。

このラストも悪くはないのだが、電話の別れのシーンがよかっただけにすぐによりが戻っちゃう展開は逆に惜しいと思った。

設定では日野市が舞台だが、時折モノレールが走るカットが挿入され、何となくいい。
那波隆史、こういう「ちょっと腹の中にちょっとたまった者がある役」がうまい。また彼の出演作が観たいです。




スパイ(アンリ=ジョルジュ・クルーゾー)


日時 2017年9月24日
場所 Blu-ray
監督 アンリ=ジョルジュ・クルーゾー
製作 1957年(昭和33年)


フランスの田舎で精神病院を営むマリク。しかし彼の病院は経営難に陥っており、金が必要だった。ある日、「米国心理戦研究所」のハワード大佐という男に呼び出された。彼はマリクに「数日間、アレックスというある重要人物を泊めてやってほしい。報酬は500万、前金で100万払おう。敵味方色んな人が訪ねてくるが、すべてアレックスには会わせないように」という依頼を受け、本当に100万くれた。
数日間男を泊めるだけなら、と気軽に引き受けるマリク。
翌朝、自宅兼病院で目覚めると、勤めている看護婦がいなくなっていて別の看護婦がいた。「前の看護婦は辞めました。私が代わりです」と言われ、料理人も同様に男二人に代わっていた。それだけではない、病院の前にあるカフェの店員も代わっている。
やがてカミンスキーとクーパーという二人の患者がやってきて診察を願い出る。しかし二人ともどこも悪くないようだし、クーパーは「マッチ箱を無くした」と意味不明のことを言う。
その深夜、タクシーがやって来たが誰も乗っていない。仕方なくマリクは金を払って運転手を返す。だが、病院の中に見知らぬ男がいた。
アレックスだという。


8月にアンリ=ジョルジュ・クルーゾーのBlu-rayが発売されたが、単体で発売されたのは「恐怖の報酬」と「悪魔のような女」でこの「スパイ」は3本セットのBOXだけでの販売。単体で「恐怖の報酬」だけを買おうかと思ったが、奮発してBOXで買った。
「恐怖の報酬」と「悪魔のような女」はこれを機会に再見したが、やっぱりクルーゾーすごいわ。

結論から言うと面白かった!
ヒッチコックの「北北西に進路を取れ」と同じようなスパイ世界に巻き込まれる主人公。こちらは「金ほしさにちょっと男を数日泊めるだけなら大丈夫だろう」と甘く見たためにとんでもない世界に。
マリクは独身で妻も子供もいないために看護婦たちがいなくなると途端に一人になる。
よく知ってる信頼できる人間が周りからいなくなって怪しい奴だけしか自分の周りにいなくなったら・・・という恐怖を突いてくる。

とにかくみんな色々言ってくるがどれも信用出来ない。
ハワードに連絡を取ってみようと米国大使館に電話するが、「そんな人は実在しない」と言われてしまう。途方に暮れているとハワードの伝言を一度持ってきていた子供を追いかけてみると本を落とす。その本に書いてあった子供の小学校に行ってみるとクーパーがいた。
クーパーの話では「私はハワードの上司だが、ハワードはある重要人物を勝手にかくまってしまった。君の病院にいる人物がその重要人物かどうか確かめたい」というので会わせるか写真を取ってきて欲しいという。

クーパーも信用できないのでこの話には乗れない。またたまたま例の看護婦と料理人たちが話しているのを聞いたが、どうやらアレックスの招待は東ドイツの原子力研究者らしい。

という訳でクーパーも嘘かも知れないし、看護婦の話も本当かわからない。そしてカフェの店員や料理人の一人は裏切り者として殺される。
この殺されたのも実際にシーンとして登場しないから、あるいは本当は殺されてないかも?と疑ってしまう。

最後の最後まで疑心暗鬼が続く。
結論を書いちゃうと、クーパーの話もハワードが匿っていた男が東ドイツの原子力学者というのは本当だったようだ。
その原子力学者をマルセイユまで送り届けようとマリクは努力するが、列車の中で彼は消えてしまう。
殺されたか、東側に拉致されたか。

ラスト、単なる入院患者だと思っていた女性だけが信頼できる存在になる。(この女性も何かあると思っていたがスパイ側の人間ではなかったけど)
そして盗聴器が仕掛けられた部屋の電話が鳴り続ける、という不気味なラスト。

クルーゾー、侮れない。






奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール


日時 2017年9月24日12:20〜
場所 TOHOシネマズ新宿・スクリーン6
監督 大根均


奥田民生のような男になりたいと思う雑誌編集者のコーロキ(妻夫木聡)は新しくライフスタイル誌「マレ」に異動になった。おしゃれすぎる同僚についていけるか心配だったが、編集長(松尾スズキ)が奥田民生を評価してくれ、ほっとする。
コーロキは先輩編集者の吉住(新井浩文)と仕事でアパレルブランドに行く。そこでPRESS担当(要するに宣伝部)の天海あかり(水原希子)と出会う。一度は仕事の面での手違いで険悪になった二人だが、それがコーロキの責任ではないとなり、二人で食事に行く。
そこでDV気味の彼氏の話をあかりから聞かされる。もともとあかりにメロメロだったコーロキは勢いで「僕とつきあってください。僕ならあかりさんにそんな思いはさせません」と宣言する。
あかりとコーロキはホテルへ。
その後積極的なあかりに心を奪われていくコーロキだが、例のDV彼氏が実は吉住と知って驚く。吉住はそれから会社に来なくなる。
順調な時もある二人だが、あかりは気まぐれでコーロキを振り回す。しかしそのかわいさ故にコーロキは何でも許してしまう。


妻夫木聡主演。妻夫木の出演作品は基本的に観るが、こういうヘタレ男子(という歳でもなくなってきたが)をやらせるとうまい。
あかりは男を狂わせる女だが、あの上目遣いと半開きの唇で見つめられたら大抵の男は狂うだろう。水原希子が実にセクシーに演じている。

下着姿でさすがに脱がないが(脱いだらちょっと具体的すぎたかも知れないけど)、それにしても体のラインや背中がきれい。
でもコーロキ君に言いたい。確かにあかりには振り回されたかも知れないが、なんだかんだいってもやらせてくれている。世の中にはやらせないで振り回す奴もいる。それだけでもまずは君は幸せだと言いたい。

そして実は編集長ともあかりはつきあっていて、3股かけていたと判明。
ここで編集長がナイフを出して吉住を切りつける展開は気に入らない。
こういう犯罪がらみになってしまうのはやりすぎだ。
これがなければ、どこにでもいるような「狂わせガール」の話になってより身近な話になった気がする。
犯罪になってしまうといくら何でも普通はそこまでいかない、って気になりますから。

その後、コーロキはうまく波に乗って出世している。ここも普遍性(つまり「あるある」的なもの)を排除し、特殊な話にしてしまってると思う。
またラストであかりを町で見かけ、外国人の男とたばこを吸っているシーンがあり、これは編集長が経験した昔話と同じでちょっと先が読めてがっかり。

前半の妻夫木の振り回されぶりがいい。
でも彼はやれたんだからなんだかんだ言っても幸せだと思うよ、俺は。






青春野郎


日時 2017年9月23日18:50〜
場所 光音座1
監督 笠井雅裕
製作 ENK


高校ラグビー部の2年生、三田はキャプテンの西城にあこがれていた。三田は寮に住んでいたが、同じ寮の1年の近藤が何かと絡んでくる。
今朝も起こしてくれて、二人でラグビー部の朝練へ。しかし練習後、遅刻を理由に二人とも西城にケツを木刀で打たれてしまう。夜になっても痛みが治まらない近藤はそれを口実に三田に自分のケツに軟膏を塗ってもらう。
近藤の気持ちに気付かない三田は、ある日西城に悩み相談をする。彼の相談は「まだ剥けてないんですが大丈夫でしょうか?」ということ。「大丈夫だ、そのうち剥ける」という西城だったが、三田に「じゃあ見せてください!僕のも見せます」と言われ大弱り。結局西城は自分で剥いてから見せると、興奮した三田がしゃぶりついてきた。そして三田のケツにも挿入してしまう。
三田と西城の仲は急速に進展し、次の日曜日には二人でラブホテルに行って、今度は三田に挿入してもらう西城。
三田と西城の仲を疑う近藤は気が気でない。
一方西城はゲイ雑誌の文通欄を使って大人の男性・田村(池島ゆたか)にも会っていた。


80年代ぐらいのゲイ映画でもたぶん初期の作品。劇中で西城に三田が初めて入れてもらうときに「これを使ってください」と泡状のものをケツに塗る。これはたぶんムースだろう。昔80年代にこういう泡状の整髪料流行ったもんなあ。
(90年代にも使っていて、朝寝ぼけてシェービングフォームと間違えて髪につけて弱ったことがあった)

実はこの映画、映画が始まってしばらく大学生の話だと思っていた。学生服を着ていてもどう見ても高校生には見えないもん。でも80年代では大学生も学生服は着ていなかったか。それが西城が「もうすぐ受験だ。早稲田のラグビー部が志望だ」というので気がついた次第。

そして文通欄で知り合った田村と西城が出会うのがバー。街で会ってバーに連れて行くのではなく、いきなりバーで待ち合わせ。しかも二人でウイスキーを飲む。「君飲めるんだろ?」「いやあんまり。未成年ですので」「じゃすこしだけ」って今なら考えられない会話をしている。
今はAVみてても「未成年者にはノンアルコール飲料を飲んでいます」ってテロップが出る時代だもんね。
そういう時代性を感じる以外、実は見るところがなく、残念な映画。

田村と会っていたことが三田にばれた西城は自分の裏切りを後悔し、田村とも別れ、そして近藤も加えて3人で青春を謳歌することに。
つっこみ何も出来ない結末だった。

同時上映は久保新二主演の「美少年のまなざし」。去年的場シネマで観たので感想はパス。でもこの映画、「ぼくは明日、昨日のきみとデートする」に匹敵するファンタジーラブストーリーだと改めて実感した。





ナミヤ雑貨店の奇蹟


日時 2017年9月23日13:15〜
場所 TOHOシネマズ川崎・スクリーン5
監督 廣木隆一


敦也(山田涼介)、翔太(村上虹郎)、幸平(寛一郎)の3人はある金持ちの家に押し入って泥棒に入った。いないと思っていたその家の主を縛って出てきたために警察に捕まったら大変だ。逃げようと思って自分たちのトラックに乗ったがエンストして動かない。仕方なく近くにあった翔太が知ってるという空き家に入った。
今は閉店しているが、ここは昔雑貨店だったらしい。置いてあった雑誌を見ると主人の浪矢(西田敏行)は近所の人の悩み相談を受けていたらしい。
3人が朝まで過ごそうとしているとき、シャッターの郵便入れから手紙が投げ込まれた。開けてみると「昨日ジョン・レノンが死にました」という書き出しだ。検索するとジョン・レノンが死んだのは1980年。
気味が悪くなってしかも手紙を入れた奴に自分たちがいることを知られたかも知れないと思った3人はその空き家から逃げ出す。
しかしどう走ってもまたその雑貨店に戻ってしまう。
仕方なく朝まで過ごすことにしたが、次々と手紙が舞い込んでくる。


山田涼介主演ということで鑑賞。村上虹郎も出演だ。
東野圭吾の原作は知らないが、過去から手紙が届くというのはジャック・フィニィの「ゲイルズバーグの春を愛す」という短編集の中にある「ラブレター」という短編と共通する。影響を受けているかは知らないけど。

うーん、何となく感想に困るのだなあ。いい映画である。というかいい話なのだ。そう、いい話しすぎるのだな。
だからひねくれ者の私なんかはこうまで人の善意を描かれると少し照れくさい。

ジョン・レノンの話は魚屋の息子(林遣都)が父親(小林薫)に逆らって東京に出てミュージシャンになろうとしていたが、うまくいかない。それで魚屋を継ごうか迷う青年の話。
そして青年は8年後、売れずに慰問の仕事(?)で養護施設を訪ねてそこで歌った歌を少女が気に入ってくれて、その娘が数年後に歌手デビューする。その養護施設は火事になり、魚屋の息子は子供を助けようとして死んでしまう。

またある娘はクラブに勤めて金持ちの愛人になろうかどうしようか迷って手紙をナミヤ雑貨店に出す。敦也は彼女(尾野真知子)に「不動産を買ってバブル期に儲けろ」と返事を出す。そしてその彼女は火事になった養護施設を建て直し、やがて敦也たちに誤解されて冒頭の泥棒事件につながるという訳。

話は伏線が入り組んでいてそれがつながっていく様は見事である。
でも出てくる人ほとんどが善意の固まりで、それがどうもなじめない。
感動作ではあるんだろうけどさ。
むしろ養護施設が火事になった原因が気になった。誰か放火したんではないかと思ってしまったので。

細かい話になるが、冒頭が1969年のシーン。ナミヤ雑貨店の近くには映画館があり、そこで上映されてるのが「座頭市」シリーズや「ガメラ」シリーズ。具体的な作品名は忘れたけど。さすが角川(松竹と共同)作品だけある。

あと林遣都に説教するおじさん役で川瀬陽太出演。

また本日のこの回は丸の内ピカデリーで行われている初日舞台挨拶の中継付き。こういうイベントは初めて見たが、なかなかよい。本当の現場の劇場だと出演者の細かい表情まではわからないが、中継だとアップになるのでよくわかる。
本日は出演は山田涼介、西田敏行、村上虹郎、寛一郎、成海璃子、門脇麦、廣木監督。
ものによっては初日舞台挨拶中継もまた見てみたいものだ。




新感染 ファイナル・エクスプレス


日時 2017年9月18日14:00〜
場所 新宿ピカデリー・シアター2
監督 ヨン・サンホ


ファンドマネージャーのソグは仕事の多忙が原因で妻は実家のプサンに帰ってしまい娘のスアンともうまくいってなかった。誕生日にスアンはどうしてもプサンにいる母親に会いたいという。仕方なく早朝のKTXに乗り親子でプサンに向かった。娘をプサンに送り届けてすぐにソウルに向かえば午前中には仕事に戻れる。
出発したKTXだったが、何か様子がおかしい女性客に女性乗務員が殺される。しかし彼女は再び立ち上がり他の乗客に襲いかかる。
異変に気がつくソグたち。列車はテジョン駅に停車。隔離されると思ったソグは知り合いの陸軍大尉を通じて自分たち親子だけは助かろうとする。
しかしテジョン駅では軍隊もすでに感染しており、もう一度列車に乗ってプサンに向かうしかなかった。
前方車両に避難する乗客たち、他の乗客を見捨てても自分だけは助かろうとする人々。
プサンに一直線に向かうかに思えたが、途中のテグで列車が線路を不才でいる事態に。
運転士が他の列車を手配に向かうがソグたちは感染者のあふれる中、列車の乗り換えをしなくてはいけない。


面白いですねえ。公開3週目を迎えるが、新宿ピカデリーではシアター2という広いシアターでの上映だ。この映画の人気が実感できる。
走る列車のサスペンスという映画の王道を使った素材。何しろ列車は外へでられない、しかも一軒家に閉じこめられたのと違ってスピード感がある。
基本は「新幹線大爆破」と同じ。

しかも敵はゾンビ。実はゾンビ映画ってあまり観たことがない。基本スプラッター映画が苦手なので、ゾンビって気持ち悪いから敬遠してしまうのだよ。
でもこの映画は襲いかかる姿をくどく映さずに「とにかく襲ってくる、捕まったら感染する」という形で表現。そのあたりのあっさり感がこの映画が敬遠されない理由の一つではないか?

後ろの列車に乗っている家族や恋人を助けにいかねばならない、しかし途中の列車には感染者がうじゃうじゃいる、という状況をどう切り抜けるか、列車が動けなくなってどうするか、という次から次ぎへど壁が立ちはだかり、登場人物たちはそれを越えていく。

主要人物が死んでいくシーンでスローモーションになって音楽が高くなる演出は韓国映画おきまりのくどさでちょっと辟易したが、それにしてもやっぱりすごい。
また自分だけが助かろうとする人間の浅ましさもあって、敵はゾンビだけではない、という描写が脚本がよく描き込まれている。

それにしても日本でも「新幹線」という素材がありながら、それを活用した映画は少ない。もちろん国鉄(JR)の協力が得られないという点もあるのだろうが、そういうことも含めて韓国の映画産業に嫉妬する。
いや「隣の芝生」で韓国からすれば日本の方がうらやましい点もあるのかもしれないけど。

面白かった。





散歩する侵略者


日時 2017年9月18日10:35〜
場所 新宿ピカデリー・シアター8
監督 黒沢清


フリーのイラストレーターの加瀬鳴海(長沢まさみ)は行方不明になっていた夫・真治(松田龍平)が見つかって病院で対面した。しかい夫は別人になっていた。医者の話も要領を得ず「奥さんと一緒にいればなんとかなるでしょう」と頼りない。家につれて帰ったものの、会話がかみ合わない。
フリージャーナリストの桜井(長谷川博己)はある取材が不成功に終わった後、たまたま近所であったバラバラ殺人事件の取材を言われる。ある家で家族が殺されたのだが、その家の娘立花あきらがいなくなったというのだ。その家に行ってみると桜井は天野(高杉真宙)という少年に話しかけられる。立花あきらを探したいというので、取材のきっかけもない桜井はとりあえずその天野と行動を共にすることに。
天野は「自分は宇宙人で地球を侵略しにきた」という。最初は信じられない桜井だが天野の両親がおかしくなっているのを見て信じ始める。
真治たち侵略者は地球人の「概念」「考え方」を調べにきたのだ。
その調査が終わったら侵略を始めるという。


黒沢清の新作。
いいですねえ、久々の侵略宇宙人ものです。やっぱり映画はこうでなくちゃ。エイリアン然とした姿もないし、宇宙船も光線も出ません。
低予算のようでいて、エキストラも多く安っぽさはありません。(もちろん「ダンケルク」に比べたらしょぼいですが)

宇宙人は概念を奪っていく。
これが「家族」「所有」「仕事」など結構人間社会にとって重要な概念を奪おうとする。
裏を返せばこの概念が人間が社会を構成するに当たって重要な考え方だと言うことになる。
面白い。侵略SFの形を借りて、「人間社会」を描こうとする。

また「宇宙人の侵略」を騒ぎが起こったスーパーの駐車場で桜井が訴えるが誰も信じてくれない。「そうだよな、私が何を叫んでも変わらないことも知っている。あとは諸君が考えてくれ」というシーンが、現実を投影していてよかった。

そして最後に理解しようとする概念が「愛」!
「愛」かあ。
しかもそれが具体化した形が「鳴海が作ってくれたある料理(カボチャの煮付けか何か)を食べてくれたので、『愛』を感じる」という展開。
そこかあ。
人類侵略という壮大な話の割には「料理を食べてくれた」という実に極私的な話に集約していく。

自分の料理を夫が食べてくれたことがきっかけで鳴海は気をよくして自分の「愛」の概念を真治に与える。
侵略が始まったときにその概念が伝えられ、どうやら侵略は中止になったらしい。
個人的な意見では最後に「愛」で解決される展開は好きになれなかった。

そもそも侵略者は地球に何を求めていたのか知りたかったが(人類は抹殺する予定らしいので地球そのものが目的のような)、その辺は説明なし。

出演者では事態を指揮する厚生省の役人で笹野高史がいい。また「愛」の概念を知ろうとして真治は協会に入るがその牧師役に東出昌大がワンシーンの出演。
また「所有」の概念を奪われる青年役で満島真之介、病院の患者役で吉岡睦雄の出演がうれしい。





ダンケルク(IMAX)


日時 2017年9月17日19:15〜
場所 TOHOシネマズ新宿・スクリーン10
監督 クリストファー・ノーラン


1940年5月。フランス北部海岸ダンケルク。
防波堤(1週間)
若き兵士トミーは戦線からやっとの思いでダンケルクの海岸にたどり着いた。しかしそこでは船を待つ多数の兵がいた。海岸をさまよっていると、死んだ兵から靴をもらっていたギブソンという兵隊に出会う。二人はなんとなく意気投合し、負傷者を乗せる病院船が今出航しようとしているのを見て、海岸に捨てられた負傷者の担架のうち、まだ生きている者を運び病院船に乗り込もうとする。
海(1日)
ダンケルクに残された兵士を救うために小型船を海軍が徴用する中、ドーソンは息子ピーター、その友人のジョージと共に英仏海峡を渡ってダンケルクに向かう。
途中で転覆した船の上で途方に暮れていた兵士を乗せる。ダンケルクに向かうというドーソンに彼は「イギリスに帰れ!」と主張する。言い合いから取っ組み合いになり、ジョージが突き飛ばされ頭を強く打ってしまう。
空(1時間)
撤退作戦を援護するために3機のスピットファイアがダンケルクに向かっていた。すぐにドイツ軍と交戦し、隊長は墜落戦死。やがてコリンズも先頭で不時着。残ったファリアはダンケルクに向かう。しかし燃料は尽きてしまう。


CGを使わないで実写やミニチュアなどでこだわって撮ったとか70mmフィルムで撮影して一部の劇場ではフィルム上映されるとかで話題のこの映画。
私は今はCG否定論者でもないし、フィルム原理主義者でもないので正直「どうでもいいけどなあ」というが本音。
商業映画なんだから、出来るだけ黒字になって観客も満足させる方法ならフィルムかデジタルかは私には大した問題ではなくなった。
(10年前は違ったけど。それはデジタルもCGも質が悪かったから)

IMAXで観た方がいいとかツイッター情報で出ているので500円の割増料金を払ってIMAXで鑑賞。(鑑賞後の今は時間があれば通常版も観たいと思っている)

この映画、徹底的に一般兵士の目線で描かれ、チャーチル首相とか将官クラスの軍首脳など出てこない。史実とはいえ「史上最大の作戦」とか「遠すぎた橋」タイプのオールスター戦争映画はもう出てこないなと改めて思う。

それにしても最初違和感があったのが、主人公トミーの行動である。
彼は部隊単位で行動するのではなく(最初の戦闘で彼の所属する分隊がなくなったこともあろうが、それにしても上官に申告するでもなく勝手に行動しているように見える)、病院船が出航しそうとみれば我先に負傷者を助けるふりをして我先に逃げ出す。
おいおい、お前それって卑怯じゃないか?と思う。
連れの海岸で知り合った兵隊も途中で他の兵隊から「こいつは全く話さない。ドイツのスパイだ!」と言われ、「実はフランス人です」と言い出す。おいおい祖国も捨てるのかよ。
という今まで絶対に戦争映画の主人公にならないような人が主人公になっている。

小型船の船長とかスピットファイアのパイロットは従来の戦争映画に登場するタイプでほっとするけど。
しかし助けたイギリス兵によって事故とはいえ小型船の若者が死んでしまうのだから、この映画は描写が残酷である。

トミーもフランス人も紆余曲折あってなんとかイギリスにたどり着く。
逃げ帰っただけの自分は非難されると思っていたが「生きているだけでいい」と住民は答える。
そうかあ、ノーランの言いたいことはここなんだなあ。
「若者は戦争なんて下らないもので死ぬことはない。卑怯なことをしても生き残れ」、これがノーランの主張なのだな。

一方で「大人は若者のために戦うべき」と説く。
小型船の船長はダンケルクに向かう理由を「大人が始めた戦争だ。若者を犠牲にするわけにはいかない」という。
スピットファイアの乗員は燃料が無くなってただ滑空するだけでの状態で船を襲おうとした爆撃機を打ち落とす。この戦闘機が最後どうなるかがどきどきしたが、海岸に不時着して捕虜になる。彼がその後無事であったこと祈るばかりだ。
桟橋で乗り込みを仕切っていた中佐も「自分は最後まで残る」という。
犠牲になった若者を追悼する描き方をする戦争映画は多かったが、こう言った「若者を守るために大人は戦え」という描き方は始めてみた。

また桟橋、戦闘機、小型船の3つが舞台だが、通常複数の箇所で同時進行で話が進むことはよくあるが、3つの時間の流れる速度が違うと言うもの珍しい。

IMAXとか70mmとかそんな素材だけでない、脚本の斬新さに驚愕した。
勉強のためにももう一度観たいと思う。

(2017年9月28日に通常版をTOHOシネマズにて再鑑賞)





追想


日時 2017年9月17日16:10〜
場所 新宿シネマカリテ2
監督 ローベル・アンリコ
製作 1975年(昭和50年)


1944年、ノルマンディーの連合軍上陸で騒然となっているフランス。
小さな町の病院で外科医をしているジュリアン(フィリップ・ノワレ)は妻のクララ(ロミー・シュナイダー)と娘フロランスを故郷の城に疎開させる。
数日が経ったが何の連絡もないのでジュリアンは様子を見に行った。だがそこで彼が見たものはドイツ兵に無惨に殺された妻と娘、村の人々だった。
子供の頃から過ごしたこの城のことはよく知っている。隠してあった散弾銃を取り出し、城から外へでる橋を支える柱を壊し、給水タンクの水を抜いた。井戸の陰に隠れ一晩を過ごし、朝、井戸の水を汲もうとしたドイツ兵を下から撃った。あわてたドイツ兵は応援を呼びにいこうとしたが、ドイツ軍の車両はあっけなく橋を渡ることが出来ずに落ちていった。
ドイツ兵たちはもう逃げられない。ジュリアンはドイツ兵を一人また一人と殺していく。


この映画、封切りの時にも観ていて今回40年ぶりの再見である。ネット情報では日本公開は1976年3月。中学生の頃だ。この映画を目当てで見に行ったのではなく、二本立ての同時上映がこの「追想」だったのだ。
はて目当ての映画は何だったろう?「ブルース・リーのグリーン・ホーネット」だったかな?(確か名駅前の毎日ホール大劇場だったと思う)

初見の時「ドイツ軍に妻と娘を殺された地味なおじさんの復讐」というのはよくわかったが、主人公がアメリカ映画に出てくるようないかにもかっこいい(もしくはタフなイメージ)の俳優ではなく、その辺にいそうなおっさんというのが「変わってるなあ」と思ったものだった。
フィリップ・ノワレという役者もこの映画で初めて見た。ただし彼の映画を他に見た記憶もないから、中学生の私にはよほど記憶に残ったのだろう。
ラストカットがノワレのアップだったことは覚えていたが、それは間違いではなかった。(正確に言うとその後に親子3人で自転車に乗っている回想が入ることも覚えていた)

「変わってる」と同時に「地味だな」と思った。アクションがアメリカ映画ほど派手ではなかったのだ。(後年、「冒険者たち」を観て監督が同じだと知ったときは、「冒険者たち」の派手さを押さえた銃撃戦のシーンなど同じタッチと感じる)

んで、今回思ったのは「せりふ少ないなあ」ということ。中盤からジュリアンが一人で立ち向かっていくので、一人でごそごそと準備をして話さないのである。(翻訳担当者は少し楽になろう)

それとやたら回想が多いのだ。妻や子供との思い出が彼を復讐へとかり出させるのはよく解るのだが、それにしても多すぎ。
逆にピンク映画におけるカラミのシーンと同じで物語の流れを中断させている気がした。
そのあたりは「平凡なおじさんがドイツ軍に立ち向かう」という地味ながらもアクションを期待してしまう私と、「家族の愛情」みたいなものを描きたい(たぶん)のローベル・アンリコの描きたい物、観たい物のずれかも知れない。

しかし何といっても40年この映画を忘れなかった訳だし、買っただけで観てないけど中古でこの映画のDVDを買った私としてはやはり強く印象に残った映画であることは間違いない。

(パンフレットを少し読んだらこの映画、制作裏ではそうとうすったもんだあったようで、順風満帆とはいかなかったようである。時間があればゆっくり読んでみたい)




妖女伝説 セイレーンX〜魔性の誘惑


日時 2017年9月16日21:00〜
場所 ラピュタ阿佐ヶ谷
監督 城定秀夫
製作 平成20年(2008年)


深夜のお色気番組「ミニスカ探検隊」はお色気モデルのマミ(日高ゆりあ)、ADの洋平(松浦祐也)、ディレクターの早見、カメラの山田(那波隆史)の4人で今日も山奥の湖のロケにきた。最近キャンプに来た客が行方不明になっているというのだ。
林の中に衣服を仕込んでおいてそれをマミに発見させるというシーンを撮っているとき、マミは洋平が準備していない頭蓋骨があるの発見。だが忙しいみんなは無視。
ロケの最中に雨に降られ、偶然発見した家で雨宿りさせてもらうことに。
この家の麗花(麻美ゆま)という女性が一人で住んでいた。雨も止まないので今夜はこの家に泊めてもらうことになったが、もともとやる気のないわがままなマミは「東京に帰る」とごね出す。早見と洋平が追っている間に起こされた山田は麗花に誘われる。二人が絡んでいるときに麗花に殺されてしまう。彼女は男の精気を吸って生きているらしいのだ。
それを見た早見と洋平はその家を逃げ出す。「今日見たことは誰にもいうな」と早見は洋平に口止めする。
山田は行方不明になったということにして仕事を続ける彼らだが、洋平や早見の前に麗花が現れる。


ラピュタ阿佐ヶ谷の新東宝特集。城定監督ということと、今夜のトークショーに「ピンク映画史」「洋ピン映画史」の著者二階堂卓也さんがお見えになるので行ってきた。

映画の方は前半はC級番組のスタッフが吸血鬼に遭遇するという王道のストーリーで面白く見た。最後まで山奥での話かと思ったが、話はいったん東京へ。ここまで麗花が追ってきて洋平の仕事場や早見とマミのホテルにまで入り込んでくるあたりまではよかったが、後半もう一度山奥の家に戻り、そこで早見が古い蓄音機の針を使って自分の首をかき切るあたりからイマイチ。

山田が死んだときに口から白いものを出して死んだのは泡を吹いて死んだようにも見えたが、早見の首から白いものって何?って思ってしまった。
最後に前半のロケシーンで入ったように洋平が湖に入ってやらせのシーンを撮影しているところに戻って「えっ?夢?」と夢オチのような形になるのは残念。
でもやっぱり麗花は現れて上にまたがられるんだけどね。
後半の話の締め方がすこしグダグダしてしまい、そこが残念だった。
そこがもう少しまとまっていれば王道の「女吸血鬼もの」としてうまくいたと思うのだが。

二階堂さんのトークイベントは映画そのものではなく「ピンク映画史」の本について。司会の新東宝の方が「熱量がすごい本で感動した」とおっしゃっていたが、同意である。
各作品の内容については昔あった「成人映画」という雑誌(自主本だろう)のバックナンバーを廃刊するときに貰っていたのと、面白かった時だけノートに詳しく書いていたそうだ。
二階堂さんにもお会いでき、城定作品も見られて満足でした。




三度目の殺人


日時 2017年9月16日11:30〜
場所 TOHOシネマズ新宿スクリーン4
監督 是枝裕和


勝つことが最優先という考えの弁護士・重盛(福山雅治)は友人の弁護士摂津(吉田鋼太郎)からある殺人事件の弁護の依頼を受ける。
接見の度に供述が変わる犯人・三隅(役所広司)に困り果てたのだ。
三隅は30年前に北海道で殺人を犯し、2年前に出所し川崎の食品工場につとめていたが、9月に解雇され翌月その工場長を殺害したのだ。
物証には乏しいが、本人が殺害を認めており、強盗殺人か殺人後の窃盗かで争われる見込みだった。死刑ではなく無期懲役を勝ち取れるかも知れない。だが三隅の供述が細かいところがあいまいではっきりしない。
しかし週刊誌が「工場長の妻が保険金目当てで殺人を依頼した?」との記事をすっぱ抜く。三隅の携帯のメールには工場長の妻(斉藤由貴)から「例の件よろしくお願いします」とあり、三隅の銀行口座に50万円が振り込まれていた。これは殺人の依頼で金は前金か?
重森たちは無理を承知でこの線で押すことに。
だが工場長の娘・咲江(広瀬すず)と三隅がたびたび会っていたことが解る。
いったい何が真実なのか?


是枝監督の新作。別に必ず観ると決めているわけではないが、大体観ている監督だ。しかも今回は役所広司、広瀬すず共演である。福山はあまり好きではない。
正直役所広司と福山雅治が対峙すると完全に格の違いを感じる。

「真実がどうとか考えなくていい。どうすれば勝てるかだけを考える」「死んでいい人間なんかいない」という後輩弁護士川島(満島真之介)に「そうか?」という重盛だがやがて事件の真実を知りたくなる。
咲江は実は父親から性的虐待を受けており、それを三隅が救ってくれたと言い出すのだ。そして三隅は最後には殺人そのものを否定し始める。

三隅は北海道に残した娘と咲江を重ね合わせていたらしいと考え、自分を救うために咲江が証言に立てば性的虐待のことが世間に知られる。それを防ぎたかったから「犯人ではない」と言い始めた、と重森は最後に推理し、それを三隅にぶつけてみる。
「あなたがそう思いたいだけじゃないんですか?」と三隅に反論されてしまう。

犯罪の動機など本当は本人にしか解らない。本人にも解らないような衝動で罪を犯すことさえある。それを人は「合理的な説明」をつけようとして「ストーリー」を作る。冤罪事件などがあるとよく「警察は自分たちが作ったストーリーを固守しようとする」と言われる。
事件にはストーリーが必要だし、あると安心する。
そして法廷は真実を見極める場所ではない。

日本の司法制度についての疑問をすこし触れられる。「法廷は真実を追求する所ではなく、検事、弁護士、裁判官が納得できる落とし所を見いだう場所」と言われる。
これが現在の現実なのだろう。

そもそも警察が(国家が)事件の犯人を捕まえるのは被害者の為ではない。「法律に違反した者を放っておいてはみんな法律違反をして国家がなる立たなくなる」為である。少なくとも私はそう思っている。

役所広司が得体の知れない男を好演。広瀬すずも安定感がある。
ラスト、拘置所の窓ガラス越しに話す三隅と重盛のシーン、黒澤の「天国と地獄」を意識しているように思えた。
見応えのある映画だった。
もう一度何らかの形で観てみたい。





湯けむりおっぱい注意報


日時 2017年9月13日20:46〜
場所 上野オークラ劇場
監督 小川欽也
製作 OP映画


北村拓哉(櫻井拓也)は水上京子(福咲れん)という彼女がいて、セックスをはじめかけたのだが、自分のモノを見た彼女に「かわいいのね」と言われて傷ついてしまう。
それでセックスも中断。彼女も帰ったところで大学時代の先輩、西川 薫(平川直大)から「伊豆にドライブに行こう」とお誘いが。
早速男二人でドライブに。途中家出してきた山田真里(加藤あやの)を乗っけてのんびりとドライブ。
しかし西川は女とやる気満々。車の故障に見せかけて止めたところで真里をおそう西川だが、あっけなく拒否される。さらにおとなしい北村をタイプだと言い出す。
3人がドライブを続けていると二人の男に暴行されかけた島田藤子(篠田ゆう)が助けを求めてきた。西川も北村も男に負けたが、真里が男たちをノックアウト!
藤子の家はペンションをしていて、しばらくそこに泊めてもらうことになった。西川は今度は藤子にちょっかいを出すのだが。


ピンク映画界の最高齢(たぶん)監督、小川欽也監督の新作。助監督は加藤義一。
小川欣也は特に興味はないのだが、櫻井拓也さんが出演と言うことで観に行った。

この映画、変な意味で驚きの連続である。
まず小川監督が出てきて「小川欣也です。ピンク映画を420本作ってきてまた作りました。今回は最近の若い人は30すぎても童貞がいると聞いて童貞を題材にシナリオを書きました。私は水谷八重子のファンで、脚本を書くときのペンネームは一二三と書いてひふみ、で水谷一二三で書いてます」と解説する。
そして台本のアップ。改題前なので「童貞と温泉熟女」(そんな感じのタイトルだった)と書いてある。
まあおそらくは最近のピンクは70分になったので尺が足らなくなったので苦肉の策で撮り足したんだろうな。

さらに北村たちが出発して車窓をバックにクレジットとなるが、これがやたら長い。スタッフ一人一人1枚で表記する。音楽が終わってもまだ続く。(音楽はOK企画と出たから過去の自分の映画からの使っているのだろう。そのせいかやたら古い感じのする音楽だ)
これも尺延ばしか。

んでお話のほう。
これが壁というか山が全くない。
普通お話というのは主人公がこうしたい、と思ってもそうはいかない壁、問題があるのでそれを何とか解決する、の連続で話が進む。
ところがこれがない。
北村は真里に「あなたみない他人がタイプ。あなたならいいわよ」と誘われる。
西川も藤子にちょっかいを出すが、今度は藤子もイヤではなさそうだ。
藤子を自分の部屋に呼んだ西川は藤子を誘う。最初はいやがっていた藤子もやがて体を開いていく。
そんな様子を見た藤子の祖父、島田公平(久須美欽一)も結婚に賛成し、ペンションを二人に譲ると言ってくれる。
都会暮らしに疲れていた西川はこれ幸いと藤子との結婚を決意する。
北村の方も真里とセックスして、セックスに対する自信を持つ。
しかも真里は自分から去っていき、後腐れなく別れることができた。
西川先輩を残して一人で電車で東京に帰る北村。
京子と再会し、今度こそは歓喜のセックス!で「終」

それにしても久須美欽一さんが出てきたのには驚いた。私が知ってるいるのは初期の薔薇族映画にちょこちょこ出ていたのだ(それこそ坂入正三と同じくらい)。薔薇族映画専門ではなく、ピンク映画のレギュラーメンバーなわけだが、失礼だがとっくに引退なさっていると思っていたのでお元気な姿を見てビックリした。

さらに北村と京子の絡みで映画は終わるが、そのときにベッドの二人からカメラがパンして花瓶とか(静物)が写って「終」。
この演出は古い。もはや古語の世界である。

でここで終わりかと思ったらさにあらず。
再び小川監督登場である。
「みなさんいかがでした?また撮れって言われるかも知れませんが、1年ぐらい待ってください」という。それが終わったら河原の土手を小川監督が杖を突きながら散歩してる姿が出てくる。
「女優さんじゃあるまいし、小川監督の歩いている姿見せられてもなあ」と思ったけど、これも最初と同じで尺延ばしか。

あとこの映画、アフレコっぽい感じがした。クレジットに「録音 シネキャビン」とあったと思うから、案外そうかも知れない。

なんか変な驚きの連続な珍品映画。
見終わると誰かに話したくなる。

もう1本、関根和美監督「熟れ頃OL 好きもの下半身」の上映があったが、たぶん寝てしまうので2本でパス。ちょっと惜しいが。





AV秘話 生肌狩り


日時 2017年9月13日19:44〜
場所 上野オークラ劇場
監督・脚本 新田 栄
製作 新東宝

上野オークラ劇場の公式HPの作品紹介では以下の記述になっていた。
<あらすじ>
裏ビデオ制作会社の内幕を描いた異色作。監督は約束を破ってスカウト係の女に本番をさせるが、女のほうは怒ったものの即金で高いギャラを受け取ると文句も言えない。
女は監督の詐欺のようなやり方に嫌気がさして辞めようとするのだが…。

というわけで「AV内幕もの」というのでちょっと期待していった。

ところがこの資料は完全に間違っていた。
内容は通常のAVと同じく、画面に「鈴木美子(OL)」とクレジットされてカメラの脇から監督が女優にインタビューする。
「今回2回目?前は感じちゃったんだって?」
「どこが感じるの?」
みたいな古典的な質問が続き、助監督の石上くんが出てきて彼女のクリトリスをさわってなめて、やがて挿入、という流れで15分。

その後は着物の「津山ひろ美(未亡人)」が出てきてオナニーして石上君とはめる、次は「時田洋子(女子高生)」と「岩上夏海(女子大生)」が出てきてレズ行為。

おいおいこのまま最後まで行くのかよ!と思っていたら今度は「岸川さゆり(看護婦)」が出てきてまたまた石上君と本番。
最後は花瓶かなにかにカメラがパンして「終」。
そういえば昔はこういう静物のアップで終わるってAV多かったなあ。

あらすじ紹介とは完全に違うただのAV。映画を作る気まるでなし。
1日で撮ったんじゃないかと思えるお気楽ピンク映画。
AVと同じものを作る映画があるとは驚いた。
まあ新田栄だしな。




未亡人教授 白い肌の淫らな夜


日時 2017年9月2日21:00〜
場所 ラピュタ阿佐ヶ谷
監督 小泉 剛
製作 平成16年(2004年)
プリントタイトル「未亡人教授 年下の愛人」


山梨県のある地方。酒屋の息子の時男は高校時代、同級生のひろえと初体験を済ませた。
数年後、今は時男はのりこという新しい恋人とつきあっているが、デートの約束をしても男友達とバーベキューに行ってしまったりでいまいち本気でない。
そんな時、時男の父親が腰痛で働けなくなり、時男はしばらく手伝うことに。ひろえの家に配達に行き、そこでひろえの母、綾子(佐々木麻由子)と再会する。
綾子は大学でアメリカ文学の講師をしていたが、同僚(伊藤猛)と不倫の仲にあった。ある日、車が故障して困っているところをバイクでやってきた時男に駅まで送ってもらい、そこから二人の関係が始まる。
綾子は時男と結ばれてしまう。
ある日、駅で時男と綾子が一緒にいるところをのりこに見られてしまい、それがきっかけで綾子は大学にもばれ、時男の父親からは怒鳴り込まれてしまう。
大学を失職し、一時東京に行っていて帰郷していたひろえももう一度東京に出て行く。
そして時男もヒッチハイクの旅に出る。


ラピュタ阿佐ヶ谷のレイトショーでの新東宝(ピンク映画の方)特集。
今回はフィルム上映だが、「21世紀になってからデビューした監督作品特集」という形。だからいまおかしんじや榎本敏郎作品はない。
小泉監督はいまおか監督や榎本監督の後輩にあたり、その後も「青春H」シリーズの編集なども担当されている。
また「青春H」で「ビキニ・ラーメン」という映画も監督され、その時のトークイベントでいまおか監督や榎本監督がお見えになり、小泉監督のデビュー作について話されていたので一度観てみたいと思っていたのだ。

その時に「ラストシーンで主人公がヒッチハイクをするんだけど、その時にボードに普通行き先を書くけど、それが滅茶苦茶恥ずかしいことが書いてあった」という話をされていた。なんて書いてあったかはそのイベントの時には聞いていたのだが、失念していて今回確認したくてきたのだ。
ボードには「TOMORROW」と書いてあった。

そうかあ、「明日へ」かあ。
希望があふれているようであり、英語表記だということもあって確かにちょっとこ恥ずかしい。でもここが小泉監督の若さ(当時29歳)でもあるんだろうな。
トークイベントの時に話題になったが、いまおか監督が面接したそうで、その時にスーツで着たそうだ。小泉監督からすると「就職の面接だから」スーツなんだろうけど、いまおか監督からすると「ピンク映画を撮るような会社にスーツで来るなんて」とびっくりしたそうだ。

そんな真面目な方だからか、時男は綾子の影響で英語の小説を辞書を引きながら読むようになる。いや、悪いけど田舎のヤンキーっぽい(少なくとも優等生タイプではない)高校生が「そんなことするかあ?」と違和感が残ったが、これも小泉さんの真面目さから来るのかも知れない。

映画全体の感想はその真面目さがたたったのか、どうにも硬さが抜けず、もう一つ弾け方がなく凡庸な印象になった感がある。
今は「青春ディスカバリーーフィルム」の企画で活躍されているそうですが、今後の活躍にも期待です。






関ヶ原


日時 2017年9月2日16:15〜
場所 TOHOシネマズ新宿・スクリーン7
監督 原田真人


1590年代。豊臣秀吉は老いており、その次を狙う徳川家康(役所広司)と豊臣家の存続を願う石田三成(岡田准一)はことごとく対立していた。やがて秀吉は死に、その対立は決定的となる。
家康は朝鮮征伐で活躍した加藤清正ら七人党を自分の配下につける。
また三成は奥州の上杉家の直江を味方にし、東と西から家康を挟み撃ちにする作戦を取る。しかし家康は西に挙兵し、関ヶ原で西軍と対決することに。
小早川秀秋(東出昌大)は今まで家康にかばってもらった恩義もあり、また正義は三成にあるとしてどちらに着くか決めかねていた。
秀秋は一度は三成に付くと決めたが、家臣が従わず結局は家康に加勢することに。
こうして関ヶ原の戦いは数時間で決した。


正直言うけど私は歴史には詳しくない。NHKの大河ドラマも見ないし、歴史知識はそれこそ小学生高学年レベルである。
石田三成についても特に評価はなく、「敗軍の将」というだけでプラスマイナスどちらの評価もない。

だからこの映画を観ていて思ったのは「歴史の知識があったらもっと面白く観ただろうなあ」ということ。
「日本のいちばん長い日」などはあの辺の事情は数冊本を読んで知っているので、「そう描いたか」と楽しむことが出来た。
暇があったら「関ヶ原」の本も読んでからまた映画を観たいと思う。
(思うだけでたぶんしないけど)

三成と家康の戦いも、ただ合戦をするだけでなく、前半では陰謀合戦で「訴状をどうした」となかなか二人とも策士である。
また各武将も「どっちに付いた方が合戦後に得か?」と今の国会の政治家のごとく損得で計算ずくである。
こう言った「正しさ」より「金」というはこの頃も今も変わらない。
いや1000年前も1000年後も変わらないのだろう。

また兎に角豪華な映画である。
後半関ヶ原の合戦シーンになるが、遠くの方まで兵がおり、手抜きがない。CGで増やした感じもしない。人馬がこれだけ多く登場する映画も「影武者」「乱」以来ではないか?(いやそれ以上かも)
掛け値なしに海外に出しても恥ずかしくない映画である。(海外の日本の歴史に詳しくない方が面白く思うかどうかはわからんけど)

出演者ではやはり家康の役所広司が貫。でっぷりと肥えたお腹は特殊メイクか?
主役の岡田准一は相変わらず見栄を切りすぎで私はあまり好きではない。
有村架純はいい女優だと思うが、時代劇は似合わないというのが正直な感想。
どちらに付くか迷いに迷う小早川秀秋の東出昌大は安定の良さである。

兎に角見応えのある映画。今年のベストワンになっても私は納得する。