日時 2018年4月30日15:35〜
場所 新宿ピカデリー・シアター6
監督 スティーブン・スピルバーグ
2045年の未来。その頃人々は「オアシス」というヴァーチャルリアリティ・ゲームに夢中になり、そこで過ごす時間がほとんどという人も多い。
そのオアシスの開発者のハリデーが亡くなり、彼の遺言が発表された。それはオアシスの中に隠された3つの鍵を見つけた者にオアシスの全株式を渡すというものだった。
17歳のウェイドもその一人。
彼もこのゲームに参加する。一方でソレントという男が会社組織をあげて、ハリデーの生涯の記録を探りながらキーを探そうとしてた。
果たしてウェイドはキーを得ることが出来るのか?
予告編を見てバーチャルリアリティのゲームのお話だと思ったので、ゲームには興味がないタイプなのでパスするつもりでいたが、ツイッターで「メカゴジラが出てくる」「『俺はガンダムで行く』の台詞に泣いた」などの意見が多数見かけたので、じゃあやっぱり観に行くか、と思い観た次第。
メカゴジラはちゃんとメカゴジラで出てきた。そうかあ、アメリカではDVDなどで観られてるんだな。私は怪獣映画は好きだが、怪獣そのものにはさほど興味はない人なので(だからフィギュアとかには興味がない)、その辺の感覚が知識としては解っても体では解らない。
私としては前半のカーレースの辺りで、最近の「バットマン」ではなく、テレビシリーズの「バットマン」の車が出てきたのは楽しかった。
それより3つのキーを探す作業の中で主人公が「バラのつぼみですね」といい(しかもラストにも言う)、これは「市民ケーン」からの引用だ。
私自身は「市民ケーン」は好きな映画ではないのだが、アメリカでは日本以上に愛されている映画なかな。
(たとえば豪華特典付きでソフト化されているか否か、も愛されてる映画かどうかの一つの目安だと思うが、「市民ケーン」はそういうの聞かないしなあ)
日本で言う「七人の侍」みたいなもんだろうか?
これって単にスピルバーグの趣味なのか、アメリカでは「市民ケーン」は誰でも知ってる映画、というポジションなのか?
パンフレットに元ネタ映画、テレビ作品の紹介が出ていて、ざざっと見た限りでは「市民ケーン」に関しての記述がなかった。ライターさんはご存じないのかな。
心配になってツイッターで「市民ケーン」を検索したら「レディ・プレイヤー1」との関係を語っている方が多く、ほっとした。
また主人公のデートのシーンで「サタディ・ナイト・フィーバー」が出てきて、「ああそうかあ、スピルバーグも70年代に青春を送った人なのだな」と改めて実感した。
あと主人公のチームに入るのに11歳の中国系の少年がいたが、「インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説」を思い出した。
ラスト、主人公は鍵を手に入れて「オアシス」の権利を持つ。
そして週2日はオアシスに休みの日を設けることになる。
「ゲームばかりしてないで、現実にも戻りましょう」というメッセージで至極当たり前である。
それにしてもこれは未来の話だけど、現在でも始まってるのではないか?
主人公はゲームのプレイヤーに恋をして、現実でも会って付き合い始める。
これってSNSで知り合った人と意気投合し、男女だったら付き合うというのは今でもある。バーチャルリアリティ用のゴーグルを付けて街中に人々がいるカットが時々出てきたが、これって今の「POKEMON GO!」でも同じじゃないだろうか?
だから未来の話ではなく、現代でも実は起こってることなのだと思った。
それにしてもスピルバーグって息が長いなあ。
「ジョーズ」で世界的になって33年。
例えば黒澤明が「羅生門」1950年だからその33年後というと1983年。「影武者」と「乱」の間の頃だ。
その頃の黒澤なんて「黒澤老いたり!」の評価が強かった。
「羅生門」の時の黒澤の年齢と「ジョーズ」の時のスピルバーグの年齢の差があるから一概に比較してはいけないだろうけど、それにしても今でも第一線というのはさすがである。
史上最高の監督と言えるかも知れない。
日時 2018年4月30日12:40〜
場所 TOHOシネマズ新宿・スクリーン8
監督 廣木隆一
小石川光希(桜井日奈子)は不機嫌だった。両親(筒井通隆、壇れい)が離婚して別の夫婦とパートナーチェンジをしようというのだ。相手のカップル、松浦夫妻(谷原章介、中山美穂)の間には遊(吉沢亮)という同い年の子がいるという。
別れて暮らすのかと思ったら、これからシェアハウスに引っ越してこれから6人で暮らすという。最初の顔合わせの席で「絶対にいやだ」と光希は言ったが、遊に逆に「なんでいやなの?」と言われてもうまく説明できない。
結局一緒に暮らすことになった。遊も光希と同じ高校に転入してきた。
最初はいけ好かない奴だと思った遊もだんだんいい奴に思えてきた。
テニス部の試合の日、幼なじみで仲のよい銀太(佐藤大樹)のダブルスのパートナーが急な怪我で出られなくなった。遊は元テニス部で強かったので急遽代役で出場。見事銀太を勝たせてくれた。
「この試合に勝ったら俺とつきあってくれ」と言っていた銀太を遊は勝たせたかったのだ。試合後、たまたまテニスのラケットが光希の元へ飛んできた。それを避けようとして銀太が倒したために光希は気絶してしまう。
保健室に運ばれる光希。彼女が寝ている時にそっとキスする遊。
彼らはお互いを好きになっていた。つきあい出す二人。
しかしある日、遊はお互いの両親の秘密を知る。
「オオカミ少女と黒王子」の二階堂ふみに想いを寄せる地味な黒縁めがね青年だった吉沢亮。この映画で注目を始めたのだが、やっと主演作である。(「銀魂」とか出ていたが好きな映画ではないし、「リバーズ・エッジ」は暗すぎる)
吉沢亮はきれいな顔をしているが、目に陰があるのでよく言えばミステリアス、悪く言えば陰気になってしまう。今までの役はちょっと陰気だった。今回は今までにないイケメンの役。
正直山崎賢人や福士蒼汰に比べると明るさに欠けるが、彼らにはないものも持っているはずなので(出なければこんなに注目するはずがない)、今後の活躍に期待だ。
それに引き替え相手役には(私は)全く魅力を感じない。今回映画初出演だそうだが、覚えられないなあ。今まで印象に残った少女マンガものは川口春奈、二階堂ふみ、有村架純とぞれぞれ印象を残した。(土屋太凰も好きではないが、覚えた)でも今回の彼女は全く記憶に残る気がしない。
話の方は遊は自分の父親は谷原章介(の役)ではないと思っている。母が不倫して出来た子だと。そしてその父親の疑いのある人に会いに行き、確かめるが否定される。
んで、自分たちの両親が、最近知り合ったのではなく、学生時代から4人は知り合いだった知る。しかもどうやらその時はカップルの組み合わせが違っていたようだ。つまり光希と自分は父親が同じだと思い始める。
最初からパートナーチェンジして一緒に住むってなんだかスワッピング夫婦みたいだなと思ってたが、どんどんややこしくなる。
もう横溝正史ワールドになってしまう。
いろいろあって二人は一度は別れるが「兄妹だってかまわない、一緒に生きていくんだ」と両親の元へ交際の報告をしにいく。
そこで結局父が同じというのは遊の誤解にすぎなかったとなり、晴れてつき合えるようになる。
しかし少女マンガは二人の恋愛を阻む手段をいろいろ考えるなあ。
話の方は好きになれなかったが、吉沢亮の美青年ぶりを楽しむにはいい映画だった。
そうそうワンカットだけシャワーから出てきて上半身裸の吉沢亮のカットがあったが、あんまり引き締まってはない。スポーツマン体型ではなかったな。
廣木監督らしく、長回しでクレーンでカメラが動きながらのカット多数あり。こういうのは2回目が楽しみになってくる。
よかった。
吉沢亮はこれからも期待である。
日時 2018年4月29日12:09〜
場所 光音座1
監督 橋口卓明
製作 ENK
楠本圭は18歳の高校3年生。幼い頃に父を亡くし母親と二人暮らしだった。ある日、圭は電車の中で痴漢に遭遇する。初めての快感に思わず写生してしまう圭。
痴漢をしたのは中年サラリーマンの柳沢(小林節彦)だった。出生コースからも外れ、社内のOLから「ホモ」と噂されバカにされていた。柳沢もまた圭との再会を願っていた。
圭はあれから再び痴漢にあう日を願っていた。そんな圭の成績は落ちていく。それを心配した母親は圭に井上という大学生の家庭教師をつける。
しかし井上はゲイでいやがる圭の唇を奪おうとする。その日は母親が入ってきて事なきを得た。
柳沢は電車の中で再び圭と出会う。圭も「この間の人だ」と直感する。
電車を降りたところで圭に声をかける柳沢。手紙を渡そうとしたが圭はまだ自分の気持ちの整理がつかず、手紙を受け取れない。
再び井上が家庭教師の最中に手を出しきた。声を出したために母親に気づかれてしまう。
井上はその場を逃げ出した。その晩、むしゃくしゃした井上は、街で出会った男と部屋に入る。そこへヤクザ(山本竜一)がやってきた。最初から恐喝するために誘ったのだ。
井上は仕方なく「俺の恋人を紹介する。朝の電車に乗っている高校生だ」と圭のことを言ってしまう。
翌朝、圭が電車に乗っている時に柳沢が気がついて手紙を渡そうとするが、人が多くて近づけない。そこへ例のヤクザがやってきて圭に痴漢する。そしてヤクザに無理矢理下ろされホテルに連れ込まれる。
ヤクザに犯されている時、柳沢が助けに来てくれた。しかし抵抗したヤクザを柳沢はいすで殴ってしまう。ぐったりするヤクザ。柳沢も怪我をした。
病院に警察がやってくる。事情徴収をしたいという刑事に圭は「手術が終わるまで待ってください」という。
話はほぼ最後まで書いた。
痴漢には賛成できないが、出世の見込みのない中年男が美少年に恋をする、という話は身につまされて好きである。
現実には少年がその想いに応えてくれることはないのだが、映画なのでいい。
柳沢が圭にラブレターを送るのだが、ホテルに連れ込まれた圭はヤクザによってそのラブレターを読まれてしまう。
「不惑の歳になって君に惚れてしまって恥ずかしい。この間のようなことはしない。是非また会って話だけでもしたい」という趣旨で実にプラトニック。いいですねえ。
最後になって圭の父は圭が子供の頃にトラックに牽かれそうになったのを助けたために逆に亡くなってしまったと開かされる。
圭は死んだ父の面影を柳沢に見たのだろうか?
病院のシーンの後、柳沢が助かったのかどうか示されない。
だが数年後、若いサラリーマンになった圭は路上で古本を売っている男から本を買う。「もう一冊おまけだ」という普通のエロ本を渡す男に「こっちのほうがいい」と「さぶ」を手にとる。
「おう兄ちゃんも男好きかい。俺もなんだ」といい、圭も「一人で飲んでも面白くないんで、一緒に飲みましょう」とレジ袋に持っていた缶ビールを差し出す。
最初、柳沢が路上古本屋になったのかと思ったが、クレジットを見ると古本屋として一人クレジットされているから別人なのだろう。
しかしちょっと似ていた。
柳沢は結局助からなかったのかも知れない。そしてその面影を古本屋に見たのかも知れない。
少年に恋する中年男っていうモチーフがよかった。
ゲイ映画の中でも秀作だと思う。
脚本は月岡よみ、撮影助手に鏡早智がいた。
同時上映は数年前の新作「僕色のくちづけ」。
本日はN-Stage公演付き。
日時 2018年4月28日14:30〜
場所 テアトル新宿
監督 平柳 敦子
川島節子(寺島しのぶ)43歳、未婚。職場では仲間とはうまく溶け込めてない。ある日姪の美花(忽那汐里)から電話があった。自分の通っている英会話スクールを辞めたいのだが、前払いしてある授業料は辞めても返還されないのでその分代わりに受けてほしい、という頼みだった。
仕方なくその英会話スクールに行ってみる節子。講師のジョン(ジョシュ・ハートネット)はちょっと変わっていて、まず英語名をルーシーと名付けられる。そしてハグ。クラスメートはトム(役所広司)も本名は小森といっていた。
最初は戸惑ったがイケメンのジョンに節子は惚れてしまう。次のレッスンも楽しみにしていたが、行ってみたらジョンは今日辞めたと聞かされる。
そしてジョンと美花が路上でキスしている姿も見てしまう。
ショックで荒れた節子は会社の飲み会で、暴言を吐いてしまう。
しばらくして美花から絵はがきが来た。姉で美花の母の綾子が、節子が美花に払った英会話スクールの代金を返しに来た。突っ返す節子。節子は会社に有給を申請し、美花のいるロサンゼルスに向かった。
テアトル新宿の前はよく通るのだが、新作の看板に役所広司の顔があったので見てみることに。ポスターでの大きさからして主演じゃないとは解っていたが、それでも見てみることに。
英会話スクールでのジョンやトムとの珍妙なやりとり、を見てると昔の「寅さん」の同時上映作品のような軽い喜劇かと思ったが、大筋それに近いが妙な毒がある。
節子がジョンと美花の路上キスを目撃した後の会社の飲み会(それはおばちゃん社員が停年で辞める送別会だったが)で、「あんたのことみんな『使えないババア』とか言ってるのよ!」と暴言を吐く。
いくらショックなことがあったとはいえ、こういう言動は好きになれないなあ。そのあと地下鉄でその退職する方と反対側のホームで遭遇して謝るシーンはあるのだが、共感できなかったなあ。
その後もロサンゼルスに行ってジョンのモノを車の中でいきなりしゃぶったり(ジョンも挿入しちゃうんだよな)、いきなりお揃いのタトゥーを入れたりの暴走ぶりである。
また最後に美花と再会し、ジョンにも「黙っててくれ」と言われたにも関わらず、「あたしジョンと寝た」と言ってしまう。んでその後美花も崖から飛び降りるという行動。
どうもこの登場人物の言動は理解出来ないなあ。
美花は死ななかったからまだよかった。でもその後、美花からもジョンからも別れを告げられる。
日本に帰ったら先日の件がたぶん原因で会社は事実上クビ。失意のところを助けてくれたのがトムだった、というラスト。
最後はちょっと出来過ぎな感じはあるが、役所広司ファンとしてはいい場面を作ってくれてよかった。
クレヨンしんちゃん
爆盛!カンフーボーイズ 〜拉麺大乱〜
日時 2018年4月28日10:55〜
場所 新宿ピカデリー・スクリーン7
監督 高橋渉
春日部にも中華街があった。最近マサオくんがいじめっ子にも立ち向かうし、様子が違う。気になったしんちゃんをはじめとする春日部防衛隊はマサオくんのあとをつけてみた。
マサオくんは中華街でカンフーをならっていたのだ。そのカンフーの名は「ぷにぷに拳」。師匠に見込まれたしんちゃんや春日部防衛隊も一緒に「ぷにぷに拳」を習い出す。
その頃春日部の街では「ブラックパンダラーメン」が流行っていた。
しかしこのラーメンを食べた人はなぜかみんなイライラしだして喧嘩早くなる。
どうやらこのラーメンに秘密があるらしい。
師匠や一番弟子の蘭ちゃん、春日部防衛隊の面々はその秘密を暴くことに。
ブラックパンダラーメンの一味を倒すためには「ぷにぷに拳」の最後の奥義を取得するために中国まで行く野原一家。
最後の奥義とは相手をふにゃふにゃにしてしまう「気」を出す方法だった。
ぷにぷにの精にその奥義を持つ資格のあるものはしんのすけと言われてしまい、蘭は納得出来ない。無理矢理その奥義を得て日本に帰国したのだが。
毎年迷いながら見ている「クレヨンしんちゃん」。結局ポイントで観た。
蘭が選ばれなかったのは「心が柔らなくないから」。
彼女はどんな小さな不正も気になって奥義を相手に使ってしまうために結局それは暴力で支配するのと同じになってしまった。
それを観ながら思い出したのは相田みつをの「せとものとせとものがぶつかれば割れる。どちらかが柔らかければ壊れない。柔らない心を持ちましょう。そういう私はいつもせともの」という詩。
そうだなあ。ツイッターを見てると正義を主張する人ってちょっと痛く感じることがある。
この映画を見ていてその相田みつをの精神をもう一度思い出した。
でも正直長いんだよね。ブラックパンダを倒したところで終わればいいのに、その後の蘭の話を続けるものだからちょっと飽きがきた。
「しんちゃん」は80分ぐらいで終わる映画にしたほうがいいと思うのだが。
日時 2018年4月27日20:40〜
場所 テアトル新宿
監督 和田秀樹
葉子は中学3年生の正月の元日の夜、駅で母親が迎えに来てくれるのを待っていた。しかし現れたのは5人組の男たち。突然車に乗せられ、車の中で男たちのモノを口に加えさせられた そして彼らの家に連れて行かれ輪姦された。
翌朝、彼らが寝ている間に帰ったが、母親は心配するどころか「正月から外泊とは何事か!」と殴られた。父親にも殴られ親戚にも「ごめんですんだら警察いらん!」と叱責された。
自暴自棄になった葉子は道で輪姦した男の一人の義理の父だという男(隆大介)と出会う。彼は援助交際を申し出て葉子は承知した。男はやくざで刺青があった。
葉子は援助交際で得た金を貯めて東京の大学に進み、全身整形手術をして生まれ変わろうとした。新宿でおっぱいパブのスカウトにあった。結局そこで働き始めた。
客で雪村(佐野史郎)という男がやってきた。優しかった。結婚を申し込んでくれ、承知した。しかし雪村は独占欲が強く、豪華な食事を逆にいやになるほど与え続けた。激太りした葉子は精神も犯されていった。
これではいけないとジムに通う。そして子供の頃からの夢だった看護師になるために学校にも通い、老人介護のボランティアにも行く。
そこである老人(吉澤健)に犯された。彼女はデリヘルでも働くようになる。
母親は金の無心ばかりしてくる。結局離婚した。
今は昼は看護師、夜はSM嬢として働いている。
話は最後まで書いた。
ラジオの文化放送の夕方のニュース情報番組「SAKIDORI」で木曜日のコメンテーターの和田秀樹氏の紹介が「精神科医で映画監督」。この国では映画はまあ見てる方に入るだろうけどそれにしても映画監督として聞いたこともなかったのでどんな映画を作る方かと思っていた。
そこで新作として公開されたのがこれ。
「全編主観映像」という画期的作品と聞いていたのでいやな予感がした。
以前、レイモンド・チャンドラーの「湖中の女」の映画化作品で全編主観映像というのをやっていたが、「これはだめだ」と思ったのだ。
全編主観映像はだめなのである。私の映画文法では効果はない。
ワンシーンだけ行うのはいいのだが、全編はだめである。
(もっともこの映画の場合、葉子が拉致された後に駅で待っている母親のカットなどがあるから、「ほぼ全編」が正しいのだが)
映画ってリアクションを撮るものなのだ。だから主人公のリアクションを捉えないと全く意味がない。
「相手がした行為に人物がどういう反応をしたか、いやがったか喜んだか」と撮って主人公の心情を表現するものだ。
だから「全編主観映像」を自慢する映画は私は評価できないですね。
「全編主観映像って誰もやらなかった画期的な演出思いついちゃった。俺って天才」という勘違いを感じるだけである。
ということで映像の話から入ったけど、それ以上に話についていけない。
登場人物の行動が全く理解不能だからだ。
映画は冒頭「実話です」と表記される。そうでなければ「んな訳あるかい!」と言いたくなる展開なのだ。
葉子がレイプされるまではいい。
その後が理解できない。道であった酒屋のおじさんは「大丈夫?警察とか行く?」と声をかけてくれてここまでは納得である。
その後、家に帰って母親が「夕べどこへ行った!」と叱責する。父親も親戚も叱責する。おいおい顔に怪我してるんだぜ?なんかあったのかと思わないの?
この家庭がそもそも父親の暴力、母親の無関心によって崩壊してるなら先にそれを示しておくべきだ。でないと困惑する。
そして葉子はレイプされたところへ鞄とマフラーを取りに行く。
おいおい現場に戻る?
そして道で声をかけられたおじさんがレイプ犯の一人の母親の男だという。
そういう男の車に乗る?
んで援助交際する?
んで学校では「ヤリマン」とか書かれる。
先生とか気づかないの?どうなってるのこの町は?
「レイプされてもう精神的に正しい判断が出来なくなっているのだ」と言われればそうなのかも知れないが、周りも周りである。
東京に出てきて生き直すかと思えば今度は風俗で働き出す。
は?
ますます解らん。
客の雪村は優しかったが、やっぱりどこかおかしい男。
ここまで来るとなにかこの主人公はそういう男を呼び込む何かを持ってるのではないかと思えてしまう。
その後も介護施設ではまたレイプされ、結局デリヘルで働くようになるという展開。
ラスト近くで葉子は故郷に帰る。
途中で例の援助交際男を見かけたり、レイプ犯の一人を、見たりする。
何より母親が自分と気づかずに雨が降ってるので「傘ないの?ならこれを。なにもないよりはましだから」とビニール袋をかぶせてくれるという母親の違う一面も描かれる。
このカットなど、それに対して葉子がどういう表情を見たかった。
タイトルは「絶対許さない」だが、結局レイプ犯も母親も口では「許さない」といいながら許している。
タイトルに矛盾あり。その矛盾が「人間だ」と言われればそれまでだが。
主観映像そのものは映像が揺れて気持ち悪くなったし、今年のワーストワン候補である。
日時 2018年4月24日
場所 DVD
監督 大野伸介
製作 平成20年(2008年)
伝統ある亀が丘高校自転車競技部はインターハイ出場のぎりぎりの4人メンバーだったが、受験を理由に松平が退部した。このままではインターハイに出場出来ないとなったときに1年生でめちゃくちゃ早い野々村輝(遠藤雄弥)が現れた。自転車部のエース鳩村(中村優一)と喧嘩になり「謝らんかい!」と追いかけていったとき、ライバルの鳳帝高校の自転車部の練習と遭遇し、鳳帝のエース、由多比呂彦(鈴木裕樹)との競争になる。
絶対の自信を持つ野々村は由多に負けたことが信じられずに「もう一回や!」と勝負を挑むが無視される。
その輝の才能を見た亀が丘高校自転車部の監督、由多比呂士(原田泰造)は彼を自転車部に入れ、チームを再編成させる。
インターハイではチームプレイが重要。しかし自分が由多に勝つことしか頭にない輝は独走し、結果亀が丘高校は失格となってしまう。
これで自転車部は廃部となってしまった。
しかしどうしてもあきらめきれない輝。そんな時、部員から市民参加の石渡山ロードレースに出場することになる。
監督以下、メンバーは再び集結。鳳帝の由多にも参加をさせ、再び彼らは挑む!
3年ほど前に買っていてそのままになっていたDVD。
この「シャカリキ!」の写真集をブックオフで見かけ、それなら本編DVDを見てみるかと見た次第。
主要メンバーの遠藤雄弥、中村優一、鈴木裕樹はワタナベプロのイケメングループ、D−BOYSのメンバー(当時)。
見始めて途中で止めようかと思った。
もう主役の輝がバカに見えて仕方ないのだ。
何かにつけては「勝負せいや!」「俺が一番や!」「俺が負けるはずはない!」と完全に天狗状態。私に言わせれば「井の中の蛙」状態である。
インターハイでチームプレイを無視し独走した段階で私はいやになった。
「こんなアホが主役ではとても作品に乗れない」と思った。
演じている遠藤雄弥もやたら眉が太く、とてもイケメンという訳ではない。亀が丘のエース、中村優一は顔はきれいなのだが、笑顔がないせいか、どうにも魅力がない。なんか面白くなさそうな顔をしているのだ。
ここで観客から好かれる遠藤雄弥も中村優一も観客から好かれるキャラクターならともかく、どうにも応援出来ない。
さらに敵の由多もなんだか魅力がない。ただのいやな奴、で魅力がないなあ。敵でも魅力がなきゃ。
要するに3人の役者としての魅力がないのだ。それが証拠に10年経った今、全く聞かない。中村優一なんか一時引退していて、復帰したがあんまりぱっとしないなあ。
D−BOYSも結局は瀬戸康史ぐらいしかスターにはなっていない。(あとギリで城田優か)あとは全滅ではないか。
やっぱりジャニーズは男性タレントの売り方としては違うなあ。
しかも話はマイナー部活、人数が少なく廃部寸前、などパターンに陥りきっている。
といった感じで完全に乗れないでいたのだが、最後のレースが始まったら面白くなって座り直した。
今までチームでは活躍のなかったデブがまず格闘技のように他の競技者をなぎ倒し、道をあける。次にもう一人が先頭を走って空気抵抗を少なくし先導させる。
続いて心ない観客によって道に画鋲がまかれ、鳳帝の由多などがタイヤをパンクさせてしまう。
ここで由多監督が自分のチームのために持っていたスペアタイヤを供給する。次に鳩村のタイヤもパンク、監督は野々村のタイヤを「チームのためだ、我慢しろ」と鳩村の自転車に取り付けてしまう。
その野々村の悔しがる姿を見て、いままで記録係だった部員(坂本真)が「俺がタイヤを取ってくる!」とリタイヤしたメンバーの自転車からタイヤを取りに行く。
このシーン、走って取りに行ってもその時間、先頭グループはもう数十キロも先を行ってるだろうから、仮に走って取りに帰っても間に合わない気がするのだが、映画なのでここは受け取ったタイヤを取り付け野々村は追走する。
この一連の自己犠牲のシーンはうるっと来た。
要するに脇のキャラクターには見せ場が用意されてるし、それが生かされてるが、主役の3人が役者としての魅力がないので、ぜんぜん生きてこないのだ。
だから後半は脇のメンバーの活躍ばかりが目立ち、印象がぐっとよくなった。
最後は坂を登り切るところでは野々村が勝ち、最後のゴールでは野々村が鳩村をサポートして最後には優勝という結果。
最後の最後では野々村も優勝をエースに譲るという成長があってよかった。
でもチーム優勝のために自分を犠牲にするって先日DVDが発売になって見直した「栄光への5000キロ」でもあったけど、なかなか難しいよなあ。
監督と由多は親子の設定だが一緒に住んでいる様子はなく、その辺はあいまい。原作マンガでは書かれていたんだと思いますが。
あとマネージャー役の南沢奈央、監督の原田泰造が好演してた。
ホント脇がよかったからラストが締まりましたね。
日時 2018年4月22日18:10〜
場所 アップリンク・スクリーン1(1F)
監督 七里圭
「音から作る映画」をモチーフとして作られた一種の実験映画。
ある女性が一人語りで自分の母親や父親の思い出話を語る。
ナレーションとして風景に被さったり、また本人が語っているシーンになったりする。
始まって10分で彼女の語りをちゃんと聞くのをやめた。
延々とモノローグというのは苦手なのである。
全体で90分の映画だが、あとは彼女の語りはぼーっとして聞き、内容は全く覚えていない。
残りの80分は廃墟のロープウエイが出てきて「以前『マリア狂想曲』で出てきたところと同じかな?」とか、「デジタルで撮影され森の緑のコントラストが強くて鮮やかだなあ」とかそんなことを考えていた。
またこれは映画と言うより映像詩と呼ぶべき物では?と思った。
通常の映画が「小説」とすればこれは「詩」ではないかという。
同様にスピルバーグの作品は映画だろう。でもYOUTUBEの動画は映画と呼ぶ人はいないし、ユーチューバーを映画監督と思う人はいないだろう。
ではYOUTUBEの動画と映画の分かれ目ってどこだろう?
この映画はそんなグラデーションの中のぼんやりとした境目にいる気がする。
でも面白かったかと言われれば「否」になってしまうのだが。
日時 2018年4月21日18:00〜
場所 アテネフランセ・4Fホール
監督 山根成之
製作 昭和50年(1975年)
最近シナリオ作家協会主催で月1回、映画を上映しシナリオライターを招いてのトークイベントが行われている。
特に観たい映画が上映されているわけではないのだが、ちょっと「郷ひろみのアイドル映画もいいか」と思って観に行った。
始まって数分たってこの映画、観ていることに気がついた。またやってしまった。
映画を観ている最中はスマホで自分のHPを観るわけにも行かないから気になった。終わってから確認したら2010年にシネマヴェーラで観ている。(「はつ恋」と2本立てだったようだ)
感想を読み直したら酷評している。今回は話を少し覚えていたので、それほどひどくは感じなかった。
トークイベントゲストは本作の脚本、ジェームズ・三木さんで聞き手は井土紀州さん。
三木さんはこの映画を40年ぶりに見直したそうだが、完全に忘れていたそうだ。
途中郷ひろみが鑑別所に入れられるシーンがあって頭を坊主頭にするのだが、それが中途半端で気になったとか。
原作は遠藤周作だが、原作を最近読んだ井土さんの話ではかなり違うそうだ。
原作は南条(郷ひろみ)が死んでまじめで不器用な野呂(川口厚)のほうが生き残るとか。郷ひろみ主演ということで、不良の南条を郷が演じるために大幅な改変となったらしい。
この作品、郷ひろみ主演にも関わらず一切ソフト化はされていないのだが、一説によると原作の大幅な改変で原作の遠藤周作氏が許さなかったからだとか。真偽は不明だが。
ジェームズ・三木さんの記憶ではこの作品の打ち合わせなどで遠藤周作氏とはとくに会わなかったそうだ。
ジェームズ・三木さんの話の中で「会話が成立してちゃ面白くないんだ。会話がかみ合ってないから台詞が面白くなる」という趣旨の話をされていた。
それは以前いまおかしんじ監督も似たようなことを言っていたな。
トークの最後で「この映画、ロッテリアよく文句いってこなかったなあ。だって店長(主任)がバイトの子を強姦しちゃうんだぜ」という話題になった。
今シナリオ作家協会は「ガキ帝国 悪たれ戦争」の上映許可を巡って署名運動をしている。それはモスバーガーでロケしたシーンがあって、その中での描き方にモスバーガーの当時の社長が激怒し、今はその社長は亡くなっているので、モスバーガー側は「上映を許可したところで当社にはメリットはないし、創業者社長の意志を尊重したい」と言っているのだとか。
その問題のシーンは「この店のハンバーガーはネズミ(?)の肉を使っている」という台詞があったとかなかったとか。それも今は上映されなくなったのでよくわからない。
その話を聞いたとき「そういうえばロッテリアの店長がバイトのこを強姦しちゃう映画があったなあ」と思ったのだが、その映画と思わず再会できたわけだ。
業界人が多そうな上映会で、普段の名画座とはちょっと違った雰囲気で楽しかった。会場には金子修介監督もいらしていた。
日時 2018年4月21日15:24〜
場所 上野オークラ劇場
監督 松原一郎
製作 OP映画
絵美(ちさと)は医者の夫(牧村耕次)と再婚した。その夫には予備校生の息子。伸也(千葉尚之)がいた。伸也と絵美は夫に内緒で関係を持っていた。
伸也は「生でしたい」というようになる。また絵美は雑誌で体験記事を書いていたが、編集長から「最近人気が落ちています。がんばってください」というメールを受け取る。
絵美は自分のブログの書き込みなどをネタに記事を書いていたので、なにかいい書き込みがないと始まらない。
アナル挿入の記事を読み、自分も実践してみる。
やがて伸也にアナルに生で入れさせて満足させる。
伸也は勉強にも精が出て成績アップ!夫との営みにも励みが出てバンジメデタシであった。
ゲイ映画でも何本か活躍した千葉尚之さんの出演作。主演ではないから出演シーンは前半と後半のカラミの部分位かな。
途中、ちょっと寝たので定かではないのだが、中盤はアナルネタのブログの記事の回想(イメージ)シーンだったと思う。
可もなく不可もない普通のピンク映画。
千葉尚之さんて最近はお見かけしないが、お元気なのかな?
日時 2018年4月21日14:02〜
場所 上野オークラ劇場
監督 竹洞哲也
製作 OP PICTURES
門脇大智(細川佳央)は大学生で彼女とつきあっていたが、その彼女が浮気し他の男とセックスしている現場を見てショックを受けて叔母の家に引きこもる。
その叔母は便利屋をしている上田(安藤ヒロキオ)という男を紹介してくれた。上田は大智を強引に「どうせ暇だろ?俺の仕事手伝ってくれないか?」と勝手に決めてしまう。
そんな時、後輩の富山千夏(川上奈々美)が訪ねてくる。彼女は大学に入学した当初、なじめなかった彼女に大智が「笑ってた方がいいよ」と言われ、そのことが嬉しくて大智のことが好きになっていた。
しかし千夏に興味のない大智は「明日は帰れよ」とか、食事を作ってくれる千夏に「そういうのいいから」と冷たく当たってしまう。
「先輩のいうことなら何でも聞きます」という千夏。「なら俺の前から消えろ」という大智。
上田の仕事の同僚の御木本(櫻井拓也)は千夏のことを気に入っていた。
「弁当作ってくれるとかいい子じゃん」という。大智に「なら俺に千夏ちゃん譲ってよ」という。「それは出来ないですよ。物じゃないんですから」という大智。
しかし御木本は千夏が泊まっている部屋に入り、「大智は千夏はいらないから俺にやるって言ってたよ」といい、強引に犯してしまう。
結局千夏は東京に帰ることにする。
帰り途中、来たときと同じように上田が駅まで送ってくれた。
「この辺海が近いんだ」と海岸へ連れて行ってくれた。
大智に「冬の海も入れないけどいいもんだよ」と聞いていた千夏。
靴を脱いで、その海に入る千夏。
話は最後まで書いた。
竹洞組新作で、櫻井拓也さん出演。櫻井さんはこの度昨年の活躍に対して「ピンク映画大賞 男優賞」を受賞。昨年の出演作の量、質を考えれば当然だろう。
主演の川上奈々美がいい。
スレンダーなボディに小動物的なルックスがかわいい。
ピンク映画の女優さんに魅力を感じることはあまりないのだが、彼女はいいな、と思った。
大智の叔母と上田は関係があるのだが、この辺はあまり深くは関わってこない。物語の芯はあくまで大智と千夏の関係である。
また思っても絶対受け入れてもらえない、もどかしい気持ち、切なさがよく出ていてよかった。
脚本は深澤浩子。
基本山の中のような田舎が舞台なのだが、近くに海もある。たぶん千葉の外房の方での撮影だっただったと思う。
よかった。「OP PICTURES plus」などで上映されたら再見してみたい。
日時 2018年4月21日13:02〜
場所 上野オークラ劇場
監督 山崎邦紀
製作 エクセス
ウメハラという男が主催する「厳密美学研究会」、これは全国の様々な変態趣味を持った女性たちが集まって自分たちの性癖をさらけ出す場だった。
ここにミナミレイコというビデオジャーナリストが潜入取材をしようとしたが、ウメハラに取材拒否される。レイコに提示された取材条件は「あなたも何か変態であること」ということだった。
レイプ願望がある女性、ゴムフェチやレザーフェチ、乱暴に犯されてるのを誰かに見られたい女性、性器とアナル両方一度に挿入されたい女性などなどの性癖が紹介される。
レイコも刺激され彼女も複数に犯されることを喜んでいく。
ウメハラは余命短いのだが、「あなたが変態であることは最初から解ってました」といい、死んでいくのであった。
こんな感じの話。
山崎監督らしい変態列伝。
全国各地から変態女性が集まっている設定なので、シーンが終わるごとに(毎回ではなかったが)「赤福」とか「ういろう」とか「明太子」などの各地の名産を食べるシーンあり。ほのぼのとして楽しい。
レイププレイの女性がカメラに向かって「ルールを解って楽しむのがいいのですから『女性にはレイプ願望がある!』って勘違いしないでくださいね!」というシーンあり。
ちゃんとまじめに押さえることころは押さえてある。
山崎監督も普通のピンクなら普通に観れるのだが、ゲイ映画になるととたんに変な映画になる。困ったものです。
日時 2018年4月15日19:10〜
場所 ラピュタ阿佐ヶ谷
監督 前田満州夫
製作 昭和37年(1962年)
ベテラン刑事・宮下(織田政雄)と若手刑事・数馬(小高雄二)はある団地で向かいの棟の部屋を張り込んでいた。
見張っている部屋にはキャバレーで女給をしている藤井が住んでいた。藤井は菅原という強盗殺人犯の情婦だった。菅原は競馬場の売上金の輸送の運転手だったが、売上金を輸送中に同乗者を殺して売上金2000万円のうち300万円を盗んで逃亡中だった。
数馬は本来その現金輸送の警備をするはずだったが、当日の競馬場で八百長騒ぎがあったために乗らなかったのだ。数馬は今回の事件は自分に原因があると思っていた。
宮下たちが張り込んでいる下の部屋に3人組の男(川原武門、井上昭文、野呂圭介)が乱入し、住人を人質にした。男たちは菅原から盗んだ現金を受け取る予定だったが、菅原が逃亡したので刑事と同じ目的で部屋で張り込みを始めたのだ。
ある日、藤井の部屋に手紙と荷物が届いた。果たして菅原からの連絡なのか?
ラピュタ阿佐ヶ谷でのミステリー特集での上映。以前は聞いたことのない映画だったが、ディスクユニオンのオリジナルレーベルでサントラCDが発売され、どんな映画かと数年前から気になってたのだ。
小高雄二、織田政雄が主演で女優も全く知らない人だし上映時間も71分だから完全に添え物扱いだ。
昔の日活などでは「添え物の方が面白かった」ということもあったそうだが、今回などはそのパターンだろう。
この映画、完全に黒澤明の「野良犬」と野村芳太郎の「張込み」の影響下にある。「僕のせいで事件が起きた」と責任を感じてる若手刑事とそれをなだめるベテランという構造は、完全に「野良犬」である。
まあ「張込み」が「野良犬」の影響下にあるのだが、本作は二重の影響下にあると言っていい。
もっとも数馬刑事は何で警察が現金輸送の警備をする必要があったか?とか疑問点もあるので、たぶんシナリオ書いてるうちに後付けの設定ではないか?「野良犬」は自分の拳銃が盗まれたのだから、責任を感じるのは当然だが。
ベテラン刑事が最後に犯人(菅原ではなく3人組の井上昭文)に撃たれ、若手刑事が犯人と対峙する、という設定も完全に「野良犬」のパクリだ。
その逮捕シーンも追いつめて手錠をかけるというのも同じ。
ご丁寧にその後に数馬が宮下を病院に見舞うシーンもある。
また当然ヒッチコックの「裏窓」の要素も入っている。
しかし「刑事たちとは別に悪い奴も菅原を張り込んでいる」という点を加えたのが目新しい(もっとも私が知らないだけで元ネタが別にあったのかも知れないが)。
そして宮下刑事を殺した井上昭文と兄貴格の加原武門(初めて意識した役者だが、なかなかの悪役の面構え!)が逃亡のために団地の中の幼稚園の先生の部屋に隠れる。
翌朝、迎えにきた幼稚園のバスを二人の悪党が奪って逃走。
数馬刑事はそのバスに飛びついてバスの中でも乱闘を演じるという後の「西部警察」並のアクションが行われる。
音楽は注意して聞いたが、管楽器の使い方など、「ウルトラQ」にも近い物がある。
地味なノースター映画だが、脚本はパクリもあるとはいえひねってあったし、拾い物の映画だった。
面白かった。
そうそう張り込み中に刑事たちが食事でチキンラーメンを食べるシーンがある。織田政雄が「おっ朝からチキンラーメンというのはオツだね」という台詞有り。
その後小高雄二が藤井を追いかけるシーンで止めた車が日清食品の営業車。タイアップですね。
日時 2018年4月14日19:50〜
場所 新宿バルト9・シアター7
監督 内藤瑛亮
東京から新潟県の田舎に越してきた野咲春花(山田杏奈)は地元の中学ではいじめにあっていた。下駄箱の靴は盗まれる、その靴を返してもらおうとして泥だらけにされる。
親が学校に相談するが、担任教師は「あと2ヶ月で廃校なんです。波風を立てないでください」と言われる。父親は帰りに春花の同級生に階段で後ろ方け飛ばされ、危うく大けがとなるところだった。
クラスで唯一、自分の味方になってくれる相場晄(清水尋也)と休みの日に散歩していると、帰ってみたら家が火事になっていた。晄は焼ける家の中から妹を助け出してくれたが全身やけどだった。
春花は今回の火事がいじめグループがやったものだと確信していた。
「あんた知ってるんでしょ?」といじめグループに呼び出される。
春花はそのグループ女子3人組を殺す。男子も殺す。
何かを察した相場晄が「一緒に東京で暮らそう」と言ってくれた。
父母の亡き後、一緒に暮らしてくれてるおじいちゃん(寺田農)が何者かに殴られて重傷を追った。相場晄の手は血だらけになっていた。
「先生を流産させる会」の内藤瑛亮監督の新作。予告編をネットで観ていじめ問題とか釘で目を刺しちゃうとか苦手なシーン連発で止めようかと思ったが、内藤監督は応援したいので覚悟して観に行った。
いや〜やっぱり凄惨だ。正直こういう映画は観ていてつらいし、俺は関わりたくない。原作があるわけだから一から作る訳じゃないけど、この映画の脚本は書く気にはなれないよ。自分で落ち込むから。
それに精神的だけでなく、目を釘で刺すとかのバイオレンスがだめ。
正直、途中で帰りたくなった。
そんな中で相場晄の存在はほっとする。演じる清水尋也は最近の映画ではよく観るが、本作がいちばんよく感じた。それは彼が出てくると救われる感じがして私がほっと出来たからだろう。もっともそんな安心感を作り手は与えてくれず、彼の中の狂気も見えてくるのだが。
映画の中では特に言及されなかったが、あの人々の狂気は「田舎だから」ということではないだろうか?
女子グループのリーダー格の妙子にしても「美容師になるために東京へ出たい」と思っている。しかし親は絶対に許さない。
自分は中学高校と私立だったから転校生というのは基本的になく、そういう「東京からきた奴」には会うことはなかった。しかし会っていたら友達になりたい気持ちと嫉妬が入り交じったに違いない。
役者としてはとにかく清水尋也がいい。
今回は役柄もあるが、やっぱり独特の空気を持った若手だ。
まだ19歳。イケメンとは違う、実力派若手として今後が期待したい。
日時 2018年4月14日17:00〜
場所 新宿ピカデリー・シアター7
監督 スティーヴン・S・デナイト
地底の裂け目から現れたKAIJUたちとの戦いから10年。イェーガーたちを抱える環太平洋軍はその存在を疑問視されていた。友人パイロットによるイェーガー操縦から中国のシャオ産業によって開発された無人機の導入が検討されていた。
かつての環太平洋軍の司令官スタッカー・ペントコストの息子ジェイクは今や軍を離れ、イェーガーの違法パーツの売買をしていた。
そこで同じくパーツを盗む少女、アマーラと出会う。
ジェイクの義理の姉の森マコ(菊地凛子)は今は環太平洋軍の幹部だったが、無人機の導入には反対していて、ジェイクを復帰させ、アマーラと訓練生として入隊させた。
マコがシャオ産業に向かったとき、見たことのないイェーガーから襲撃を受ける。
無人機の導入が決まったところ、その無人機が暴走をはじめ、世界各地の環太平洋軍の基地が破壊され、KAIJUが出現した。
残るは旧式のイェーガーと訓練生だけ。KAIJUたちは日本、いや富士山を目指している。富士山を噴火させ、それにつながる世界の火山群を爆発させる計画なのだ。
KAIJUたちとイェーガーとの決戦が東京で始まった!
前作「パシフィック・リム」は何年前だったろうか。アメリカ版「ゴジラ」が2014年でその前だからもう5年になる。
今日、時間があったので昼間に「パシフィック・リム」をながら見して復習。
今回は前半が乗れなかった。主人公がパーツの不法売買をしているとか、そういう不良が再生するみたいな話、好きじゃないです。
さらに今回、前半はイェーガー対イェーガーのシーンばかりで、(アマーラの登場シーンとか、香港でマコがやられるシーンとか)「え?怪獣でbないの?俺怪獣映画が観たいんだけど。これはロボットアニメじゃん」と観ている途中でイライラした。
またシャオ産業が無人イェーガーを使って世界制覇をたくらんでいる?と前半は思わせるのでこの辺も「おいおい怪獣はどうなった?」と思ってしまい、いらついた。
最後の最後にKAIJUが出てきて(まあこれも日本の怪獣とは違う感じでデザインに魅力を感じないのだが)東京で大暴れ、となってからは満足した。
この東京決戦だが、現在の東京ではない、といういいわけはあるだろうが、現実の東京の具体的にここ(たとえば銀座とか新宿とか渋谷とか)という場所ではなく、架空の東京。それが「現実の場所」に登場するのを目指している日本の怪獣映画と違うなあ。そこが不満。
それにしても看板類が何か違うんだよね。今更予算の問題でもあるまいし装飾チェックぐらい日本人のスタッフにやらせることは出来ないのだろうか?
どうようにイェーガーが戦ってるバックに富士山が見える。この富士山の稜線が実際とちがってちょっと急角度になっている。日本人は富士山の形はなじみがあるから、ちょっと違うと違和感が出るんだよね。
また火口の中が少し写るが、なんだかボコボコと噴火している。そうかあ??
あと前作でも登場した怪獣オタク科学者二人組。ニュートは今はシャオ産業に雇われいて、もう一人気難しそうだったハーマンは環太平洋軍に残っている。
ニュートの脳に怪獣の脳とシンクロしたときに逆に侵入されてしまい、怪獣を操ってる異次元の者が乗り移ってる設定。
前作では「KAIJUを操ってるものがいるらしい」という存在ははっきりとしなかったのだが、今回はニュートの口を通じて台詞まで発している。
この正体不明の敵、というところが自分としては好きだっただけにちょっと興ざめ。
続編ってやっぱり難しいですね。
日時 2018年4月14日
場所 GYAO!(ネット配信)
監督 村山新治 若林栄二郎
製作 昭和34年(1959年)
夜明け前の東京。パトカー108号の金原巡査部長と石川巡査はラジオが20ダース盗難にあったという連絡を受ける。道路に駐車中のトラックを不審に思い、石川巡査が職務質問をしようとした時、銃声が響き石川巡査は死亡した。金原はそのトラックのナンバーを確認した。
捜査を開始した警視庁の刑事たち(神田隆、堀雄二、花沢徳衛、南廣、山本隣一ら)。まずはそのトラックのナンバーの持ち主を洗う。すぐに解って持ち主の電気店に行ってみる。そのトラックは先月、修理工場を通じて売ったという。修理工場の社長(東野英次郎)に聞いたところ、売った人の名前は解ったが、偽名と解った。免許は持ってるはずだ、と府中の試験場で免許写真を見てもらったがやはり特定出来なかった。
その車で交通事故や違反を犯している可能性もある。車の売買があった日以降の記録を調べる刑事たち。
その線から木谷という男が浮かび上がる。だが木谷の行方は解らない。そんな時、最初の電気店からトラックの売買の手続きのために印鑑証明がほしいという連絡があった。
刑事たちは現れた若い男を連行。だが木谷じゃない。若い男はついに木谷と組んでラジオなどの窃盗をしたことを認めた。そして今夜7時に有楽町の駐車場で待ち合わせの約束をしていた。
刑事たちはその場所へ向かう!
「警視庁物語」11作目。
ヤフーの動画配信サービス「GYAO!」で配信されてるので(1話税込み324円)今回ネットで鑑賞。(前に配信していたDMMはやめたらしい)
PCで受信してテレビにつなげてるから、DVD感覚で鑑賞は出来る。
今回もいつものように刑事たちが手分けして誰かがヒーローになることもなく事件に迫っていく。
毎回同じことを書くけど個性的すぎない刑事たちの集団劇で面白い。
今回警官射殺事件だが、その中で殉職警官の遺骨の一部は専用の場所に分骨されるという。いまでもそうなのかな。知らんかった。
妙に刑事たちが熱くなったり、死んだ巡査とレギュラーが友人だったりという展開がない、ドライなところが好きだ。
また時々配信でもいいから(ホントは映画館で観たいけど)観てみよう。
日時 2018年4月12日19:05〜
場所 TOHOシネマズ日比谷・スクリーン7
監督 三浦大輔
一流大学の学生、森中領(松坂桃李)は下北沢のバーでバイトをしながら、何事も「つまらない」と感じていた。女も、セックスも。
それは彼の幼少の体験が関わってるのかも知れない。彼が10歳の頃「暗くなる前に帰ってくるから」と母は出て行き、そのまま横浜で心臓発作で死んでいた。
そのバーに友人の紹介で御堂静(真飛聖)という女性がやってきた。彼女は店が終わった後、領を赤坂の自分の家に連れて行く。「セックスなんてただの運動だ、って言ったわよね。見せてくれる?あなたのセックスを」と言って耳が聞こえない咲良(冨手麻妙)という女の子とセックスすることを命じた。
終わった後「5000円ね」と5000円札を渡す静。しかし咲良がさらに5000円を渡し、領は合格となった。
静は女性相手にデートをする男の派遣をしていた。静は領は来ないと思ったが、やってきた。プロフィール写真を撮り、初めての客がついた。
最初は喫茶店でお茶を飲んだだけ。しかしすぐにその女性からリピートの電話が入る。彼女は「すぐにセックスしては面白くない。待たされないと」と思う人だったのだ。翌日のデートでは領とセックス。
そして領は売れっ子になっていく。
石田依良の小説の映画化。出版された頃に原作は読んでいた。言ってみれば売り専ボーイの話なので興味がわいたのだ。
去年、舞台化され大盛況だったそうだ。
今回の映画と同じ主演は松坂桃李だったそうだ。そりゃ満員だろう。
正直、今の松坂桃李では大学生役はちょっときつい気もするのだが、こういった大人の役なら大丈夫だ。
一言で言えば「男版・エマニエル夫人」だな。
暗めにピンスポットで照明を当てたおしゃれな映像で松坂桃李がセックスしまくる。最近は女性が男性に対する性の欲望を以前ほど隠さなくなったせいか、女性客で満員である。
女性限定上映会を開催したり、前日のレディースデイの19時の回は満員だった。
領はこの後「おしっこするところを見てもらいたい女」「セックスレス夫婦の主婦」「乱暴されているところを夫に見てもらいたい夫婦」「死んだ夫を思い手を握るだけでイッテしまう老女(江波杏子)」などなどが登場する。
途中、バイト仲間の東(猪塚健太)とクラブに行き、その個室で東の性癖(彼は体を傷つけられることが快感。かなりやばい)を告白され、彼によって射精させられ(東はしっかり飲み干す)、さらに小指の骨を折ってほしいと頼まれる。
かなりやばすぎる性癖でちょっと見てる私はつらいが、こういうのも女性はいいのかな。
その前に東が領を全裸にして絡み合い、「ボーイズラブ」的な展開もバリーションを増やしている。
話の方はその後領を想ってくれる大学の同級生女子にバイトがばれてしまい、領を「不潔」と罵倒するが、指名してしまうなどの展開はある。
原作は読んでいるが、ラストが映画では老女は挿入を希望するが果てそうだったか?たしかやっぱり手をつなぐだけでイッてしまった気がするのだが。
結局は領のセックスのバリエーションを幾通りも見せてくれることが目的。それで間違いではない。ピンク映画でやってることと同じであり、これは完全に松坂桃李がピンク女優になっただけだ。
映像をきれいにしておしゃれにしているが、要はそういう映画。
それがいけないのではなく、そういう映画として照れもなく作ったことがすばらしい。
同様の男がセックスを見せる映画も増えていくのかも知れないし、それは色んな意味で歓迎すべきだな。
ちょっと気になったのが、「1時間1万円」という料金。2時間コースならホテル代とか別で2万円。ホストクラブなどに比べて安すぎないか?
最初1時間1万円というのは領が受け取る金額かと思ったら、客が払い料金だ。
ボーイは1時間6000円の手取りだというから、領は「バイトの何倍もも時給だ」と驚いてたけど、1日1回2時間で毎日あったとして120000円×30日=36万円。もちろんバーのバイトでは稼げない金だけど、無茶苦茶儲かるというほどではない。
その辺、あまりリアルにはしなかったのかも知れない。
日時 2018年4月7日19:10〜
場所 TOHOシネマズ上野・スクリーン5
監督 スティーブン・スピルバーグ
1960年代、ベトナム戦争は泥沼化し、一向に戦局は改善しない。国防長官マクナマラをはじめ合衆国政府は知っていながら撤退をしなかった。
そんな中、シンクタンク・ランド研究所のアナリスト、エルズバーグは政府のベトナム戦争の全貌を記録した機密文書をコピーする。
1971年、ワシントンポスト紙は会社の経営基盤の安定のために株式を公開しようとしていた。社主のキャサリン・グラハム(メリル・ストリープ)はワシントンポストの創業家の娘だったが、本来継いでいた夫が自殺し、やむなく経営者になっていた。夫が亡くなって初めてビジネスの世界に入り、周りに助けてもらう一方だった。
そんな時、ニューヨークタイムズがこのベトナム戦争に関する機密文書を報道する記事を掲載した。
ポストの編集主幹ベン・ブラッドリー(トム・ハンクス)も後追い記事を書く方針とした。社の中にランド研究所の元職員だった者がいて、エルズバーグが文書の出所ではないかと思い、連絡を取ってみた。
そのころニューヨークタイムズはニクソン政権から「スパイ行為だ!」と記事差し止めの仮処分が出ていた。
この件を報道することは完全に政府を敵に回すことになる。
しかも株式の公開直後で下手をすると会社の存続が危ぶまれる。ベンは報道の自由の尊重を訴える、役員たちは経営の存続を訴える、その中でキャサリンが取った判断とは?
スピルバーグの社会派作品。今回は準備も含めて数ヶ月で完成させたという曰く付きの映画だ。トランプ政権になり、大統領はマスコミを「偏向報道だ、フェイクニュースだ」とののしり、今こそマスコミが民主主義に果たす役割が問われている時期もないだろう。
日本でも昨年より森友学園への国有地の不正売却があったのではないかという森友事件が起こり、今年3月にはその売却に関しての記録文書に改竄があったとしての朝日新聞の報道からこの問題はまだまだ終わりそうにない。(この感想文は数年後にも読む機会があるだろうけど、そのとき政治はどうなっていることやら)
マスコミの「報道の自由」に関しての問題はアメリカだけでなく、日本でも重要な問題だ。
映画は数日間の物語だし、クライマックスの掲載するか否かは一晩の話だ。政府との駆け引きが何ヶ月も続く話ではなく、キャサリンの決意に絞られており、小さな話だが、そこを映画として盛り上げたのはスピルバーグの力量だろう。
案の定掲載後、政府から訴えられるが最高裁でもマスコミ側(一緒にニューヨークタイムズの裁判も行われた)の勝利。
判事の言葉として「新聞は政府の為ではなく民衆のためにある」的な言葉が紹介される。この件は感想のツイッターなどで何度も目にしたが判事が直接発言するシーンはなく、出演者の発言として出てきたな。
正直、映画としては勧善懲悪で「正義が勝つ!」が過ぎて、フィクションなら「出来過ぎ」の感想を持ってしまうだろう。
でもこれが事実なのがアメリカの立派なところである。
ラストでこの事件が後に「ウォーターゲート事件」につながっていくと示される。
うん、「大統領の陰謀」も観たくなった。
日時 2018年4月7日15:55〜
場所 上野オークラ劇場
監督 滝田洋二郎
製作 新東宝
山内組と竹田会の抗争が始まった。山内組長(大杉漣)は子分に「竹田(池島ゆたか)の首を穫れ!」と命じたが、組員はみんな逃げてしまい、役に立つのは残っていない。
殺し屋組織に属するジョーク東郷(蛍雪次郎)は組織から「竹田会長を殺せ。依頼主は山内だ」という指令を受ける。
殺されるのを警戒している竹田は逆に人混みに出て殺されないようにしていた。今日も満員電車で移動。東郷はその電車の中で竹田を襲おうと車掌の変装をしていたが、女子高生のジョリエに切符を売っているうちに竹田を見失ってしまう。
今度は銀行の前で竹田を狙ったが、撃ったときにたまたま銀行から出てきた銀行強盗に当たってしまい、銀行から感謝されてしまう。
ジョリエは実は山内組長の息子・トミオと愛し合っていた。親同士が抗争しているので二人はつき合えない。
東郷が載った新聞を見たジョリエは東郷に二人の抗争を止めさせてほしいと頼む。
上野オークラ大杉漣追悼特集。
「仁義なき戦い」のパロディに「ゴルゴ13」が加わって「ロミオとジュリエット」の要素も足したコメディ。
正直、映画としては面白いのだが、主演は蛍雪次郎で大杉漣は男優陣の中では一番薄い。(2番目は大杉の息子のトミオ、3番目は池島ゆたか)
なんでだろう?「連続暴姦」以外はたまたまデジタル化されている作品を適当に選んだのかな?
結局山内と竹田はテレビの特番でクイズ対決を行うが、どっちも正解できない。不正解だとそれぞれの子分が番組アシスタントにダーツを投げられる設定。二人とも正解なしで決着つかず。
途中で東郷の失敗に業を煮やした組織の女エージェントがやってきて、東郷の電車の中で相手の体を触ってモールス信号で指令を伝えるシーンがある。
パロディ満載で、それなりに楽しいが、大杉漣追悼としては主演ではないので、物足りない。
日時 2018年4月7日13:50〜
場所 上野オークラ劇場
監督 梅沢 薫
製作 新東宝
新婚家庭の新妻・アキコは自宅マンションで突然男(大杉漣)に襲われ誘拐された。
その晩、アキコの兄でルポライター佐伯(下元史朗)の元にアキコの夫・江藤から妻がいないと連絡があった。しかし翌日の新聞で東京医療機器の社長が殺され、その犯人の江藤が自殺し、犯人と見なされた。
佐伯は拳銃を手に入れ、アキコの救出と事件の真相を追求する。
江藤の勤める紅谷商事は、病院への医療機器納入で東京医療機器と争っていた。その紅谷商事からその病院へ賄賂を送ったことがばれて東京医療機器から脅されていたらしい。その件を担当していたのは江藤だった。
紅谷商事の江藤の上司に事情を聞いたが「何も知らない」というばかり。その秘書を尾行し、東京医療機器の上原専務がアキコを誘拐したらしいと聞き、上原に脅しをかける。そこからアキコの居所を聞き出し、救出に向かったが、アキコは恐怖の為に精神を犯されていた。結局アキコは自殺してしまう。
佐伯は事件の真相と復讐を誓う。
大杉漣追悼上映の2本目。
大杉漣は今回も犯人役。しかし正直、今回は下元史朗が主役なので大杉さんはシーンは少ない。まあ印象的ではあるが、すこし物足りない。
事件の真相は東京医療機器の社長をねらう上原が今回の収賄事件をネタに紅谷商事の社長殺害を依頼し、上原は東京医療機器の社長になって紅谷商事の傘下に入ろうという、なんかよくわからない真相。
佐伯は途中、大杉漣の殺し屋に腕を撃たれる。その後、江藤の上司の秘書が助けてくれ、ウイスキーで消毒し、自分でナイフを使い弾を摘出するというシーンがある。
脚本が片岡修二さんなのでそういうハードボイルド(と言っていいのか)なシーンが出てくるかと思ったらやっぱりそうだった。このぶれないシーンは好きです。
その秘書は佐伯を殺して紅谷商事側につこうと思い、一度は佐伯に銃を向ける。しかし大杉漣の殺し屋がやってきて、大杉に銃を向けて撃つが、弾が出ない(説明はないけど秘書に裏切られることを警戒した佐伯が一発目は弾を抜いていたか?)。
大杉漣に秘書は撃たれるが佐伯が反撃して、佐伯が勝つ。(といった感じだったと思う)
途中、上原専務がセーラー服の女と絡んだり、佐伯が秘書を脅して犯そうとしたりたびたびカラミが入るので(当たり前だ)、退屈するのだな。
まあ私はカラミのシーンは映画の展開が止まって逆に退屈するので。
映画としては面白いのだが、大杉漣特集としてはちょっと大杉さんの活躍が少なく、物足りない。
日時 2018年4月7日12:39〜
場所 上野オークラ劇場
監督 滝田洋二郎
製作 新東宝
ポルノ映画館で臨時の映写技師となったカツオ(大杉漣)は上映されている映画を観て驚いた。それは森の中で女子高生を強姦するシーンだったが、犯人の足の付け根あたりに蛇の入れ墨があった。
「誰も知らないはずだが」つぶやくカツオ。カツオは翌日映画会社に行き、その映画「連続暴姦」について聞いてみた。対応してくれた企画部の男の話では脚本は山崎千代子という名前で本人の経験を反映しているという。山崎は普段はエンター石油でOLをしている。それだけ聞くとカツオはエンター石油の前で張り込む。
そこへある女性社員が出てきた。男性社員に「山崎さん、映画に行かない?」と誘われている。断った山崎を尾行するカツオ。
「あと3年で時効なんだ。今更蒸し返すな!」と山崎を暗がりで強姦し殺してしまう。
翌日、山崎の友人、冬子(織本かおる)は恋人で映画会社の企画部で働く彼氏から山崎が死んだという新聞記事を見せてもらう。
実は冬子が山崎千代子のペンネームで「連続暴姦」のシナリオを書いたのだ。
冬子は逆に恋人を通じてカツオのいる映画館に「『連続暴姦』の続編を脚本家が書いている」と伝えてもらう。
すべてを知ったカツオは今度は冬子を襲う。
今年2月に急逝した大杉漣のピンク映画時代の特集上映。こんな企画を立ててくれるのは上野オークラだけである。
でも劇場に行ったみたがいつもより客が少ないように感じた。まあやっぱり女優さん目当てですからね、オークラは。
映画はまずは林の中で女子高生が強姦されるシーンから始まる。そしてカットが変わって大杉漣が映写機にプリントをセットしているカットになる。
秀逸な展開だと思う。
その後、映画館のモギリの女の子ノリコもカツオの足の入れ墨を見て強姦犯と気づき、カツオに殺されてしまう。
実は冬子の姉がかつてカツオに強姦されて、その復讐の為だった。
強姦現場に落ちていた手袋にフィルムをつなぐノリがついていたことから映画館関係者と思い、「連続暴姦」を書き犯人を誘う出そうとしてのだ。
最後は廃倉庫にカツオを誘い出す冬子。
ここで大杉漣との対決になるのだが、その前に冬子が髪をセットするのにヘアスプレーを使うのが伏線になっていて、カツオが冬子の秘部をライターであぶった時に、そのスプレーを噴射させてカツオの顔を焼く反撃がかっこいい。
さらに目があまり見えなくなったカツオが冬子をナイフで刺そうとするとそれは鏡で、勢いあまったカツオは倉庫の窓から転落死。
ラストの対決はアイデアがあってよかった。
DVD化されている評判作だけのことはある。
日時 2018年4月5日19:45〜
場所 新宿バルト9・シアター8
監督 神徳幸治
小暮奈緒(平祐奈)は幼い頃に両親を事故で亡くし、今は母の弟の小暮宗助(高橋優)と二人で暮らしていた。奈緒は高校入学で「怖い、無理」が口癖の自分を変えようと思っていた。そんな時、入学式で2年生と喧嘩している赤い髪の不良と遭遇してしまう。その不良、鬼瀬大雅(平野紫耀)は学校が始まると奈緒の席にやってきて、「放課後、体育館裏に来てくれ」と言われおそるおそる言ってみる。
しかし鬼瀬は意外にも「結婚を前提に俺とつき合ってください!」と花束を差し出した。断りきれなかった奈緒はつい「はい」と言ってしまう。
翌朝、鬼瀬は家まで迎えに来た。最初は怖がっていた奈緒だったが、話しているうちに鬼瀬の良さも理解する。
やがて課外授業で一緒の班になった三咲(横浜流星)や矢代かよ(水谷果穂)とも友達に。
鬼瀬は奈緒が自分と無理してつき合っていると知り、友達になろうと言う。
少女コミックの映画化。3月は「プリンシパル」もあったが、この「honey」は3月31日公開。
ジャニーズの新ユニット「King&Prince」(略称キンプリ)のメンバーの平野紫耀主演。キンプリは正直、平野、永瀬廉、高橋海人のPrinceが中心でKingは添え物だと思っている。
そのメインの平野紫耀の主演ということで楽しみにしていったが、これがイマイチ盛り上がらない。
はっきり言って平野は演技はまだまだだと思う。「下手」というほどではないが、やっぱり主演を張るにはもう一つである。
さらにヒロインにさっぱり魅力を感じない。平祐奈という女優さん、初めて見る人かな?と映画を観てる間は思っていたが、帰りにパンフレットをよく見たら「未成年だけどコドモじゃない」の主演女優だったんだ。
まるで覚えていないとは私はよくよく彼女に魅力を感じなかったのだろう。
叔父役の宗介もそう。知らない顔なのであまり活躍がない役かと思ったら結構出番は多い。新人なのかと思っていたが、クレジットを見たら歌手の高橋優だった。
うーん、この3人がどうにもイマイチなのだな。映画ってのはやっぱり役者が重要だと改めて思う。脚本や演出が立派でもそれを生かせる役者の力がなければ全部台無しだ。
そして鬼瀬は不良らしく成績は悪いので、図書館で奈緒に数学を教えてもらう。そこで奈緒は寝てしまい、その寝顔を見た鬼瀬はつい彼女にキスしてしまう。
このシーン、完全にだめ。鬼瀬が奈緒に顔をかぶせるカットとか、唇が合わさっているはずだが微妙に唇と唇が写っていないのだな。
本当はキスしていないのが丸わかりで興ざめもいいところ。
平野か平かどちらかの事務所の反対なんだろうけど、それならもう止めとけよ。出演者変えるか脚本変えるかしろよ。こんな中途半端なシーン撮ったって興ざめするだけだよ。
映画はその後、一旦は距離を置いた鬼瀬が転校生の西垣雅(浅川梨奈)がクラスになじめないのを助けるうちに仲良くしている姿を見て、イライラした奈緒が今度は奈緒の方から「つき合って」というようになる。
そして宗介に挨拶にいく鬼瀬。「僕は奈緒さんを守ります!」と言われて宗介に「どうやって?具体的に言って」と言われるシーンは爽快感があった。
そうだよね、以前「好きっていいなよ。」でも思ったけど、高校生が「守る!」って何だよ、お前に何ができるんだよ!っておじさんはひがんでしまう。
結局、出演者の華が足りないために全体的にイマイチになった映画でした。
そうそう鬼瀬の母親役が中山忍だったのはクレジットを見て気がついた。
おばさんになってたなあ。
日時 2018年4月1日
場所 Blu-ray
監督 スティーブン・スピルバーグ
製作 1979年(昭和54年)
真珠湾攻撃から2週間の米国西海岸。今度は日本に本土攻撃される!と住民はピリピリしていた。住民だけではない、軍人も同じ。
21日の夜、ハリウッド大通りのダンスホールではジルバのコンテストが行われようとしていた。そこで優勝すれば映画会社のRKOと契約できる。
そんな時、日本海軍の潜水艦が西海岸に近づいた。ドイツから買った潜水艦で、ドイツ軍の将校(クリストファー・リー)もオブザーバーとして乗艦しているが、日本軍の艦長(三船敏郎)とは馬が合わない。
この潜水艦、羅針盤は故障し現在地がよくわからない。上陸して近くを通っていたアメリカ人(スリム・ピケンズ)を捕虜にする。彼が持っていたおもちゃの磁石を使おうとするが隙を見て逃げられた。
一方西海岸では敵機を打ち落とそうと必死なパイロット(ジョン・ベルーシ)がいた。
そして夜。ダンスホールでもダンスのコンテストが始まった。でもそこではカワイイ娘を巡って喧嘩が起こっていた。
果たしてどうなる!?
封切り時に劇場で観て以来39年ぶりの鑑賞。前から再見したいとは思っていたが、なんとなく今観なくちゃいけない理由もないのでそのままになっていた。
冒頭、車から降りた女性が全裸になって海岸を走り海に入っていく。「あれ『ジョーズ』のパロディかな?」と思ったら音楽が(同じジョン・ウィリアムズ)「ジョーズ」風の音楽になったのでやっぱり。へえ、セルフパロディなんかしてたんだ。
その後日本軍の潜水艦が浮上し、そりの合わない三船敏郎とクリストファー・リーの通訳なしでも通じる会話が始まる。三船敏郎の隣にいる航海長は清水宏さんである。
そしてアメリカ本土に舞台は移るがレストランでのドタバタからなんだか乗れない。食べ物を投げ合うギャグは今はもうもったいない思いが先に立ってだめになったのだ。子供の頃は気にならなかったのはたぶん自分で働いて稼ぐようになってお金や食べ物のありがたみを身に染みるようになったからだろう。
でも途中で気がついた。
アメリカの将軍が映画館に行って上映中の「ダンボ」を観て涙するのだが、この映画は「トムとジェリー」の実写化なのだ。
「トムとジェリー」はこの映画の舞台の1941年にはすでにあったが、あの物をぶっ壊し続ける展開はこの映画に通じる。
でも正直それが2時間続くと飽きる飽きる。
普通のシーンがあって、途中途中でぶっ壊しのシーンがあればインパクトがあるのだが、こう続くと同じギャグを何度も言われてるようで、笑えなくなる。
日本軍に捕まるアメリカ人役の方、どこかで観たことのある人だと思ったが、「博士の異常な愛情」の機長役のスリム・ピケンズだった。「博士〜」からこの映画はまだ15年ぐらいなのだな。お元気でいても不思議はない。
この映画、アメリカではこけたらしい。日本でもあまりヒットしなかった。やっぱりどこか悪のりがすぎる感じがしたのだろうか?
特撮やミニチュアのシーンも多く、見所はあるのだが全体として「なんだかなあ」という映画である。
日時 2018年4月1日
場所 DVD
監督 弓削太郎
製作 昭和37年(1962年)
石橋(川口浩)と夢田(川崎敬三)は大学も一緒だったが、同じ大企業に入社した。配属先も渉外課で同じ中村課長(ハナ肇)のもとで働き出す。
3ヶ月後に社長がアメリカ視察旅行に出かけることになり、その随行員として今年の新入社員から2名が選ばれることになった。新入社員の中から7名が候補として選ばれ、石橋と夢田もその中に入った。選抜の条件の一つが女性関係がないこと。
荒牧しのぶ(藤原礼子)がペンダントのロケットの中に石橋の写真を入れていると噂になりかけた。石橋が問いただすと荒牧しのぶは3年前に夫と死別しており、その写真は石橋ではなく亡き夫だった。石橋は亡き夫に瓜二つだったのだ。
夢田は幼なじみの弓子(渋沢詩子)が会社を訪ねてきた。夢田のアパートの近くの食堂で住み込みで働くので保証人になってほしいという。「会社で変な噂になったら困る」といいながらも仕方なく保証人になる。
中村課長のバーのマダムへの浮気をもみ消したり、石橋と夢田の奮闘は続く。
2017年末に「60周年記念」として宝島社から発売されたDVDマガジン。東宝より先に公開されたクレイジー出演映画のDVD発売だ。
何が60周年かと思ったらクレイジーが映画に初出演して60年だそうだ。
この東宝でクレイジー映画が作られる前に大映で2本のクレイジーを売りにした映画が作られてるのは知っていた。昔レンタルビデオ(もちろんVHS)で見たような気がする。ただし内容は全く覚えていない。
正直、詐欺みたいな映画である。タイトルを見るとクレイジー主演のようだが、実際は川口浩と川崎敬三の大して(というか全く)面白くないサラリーマンコメディ。脚本は主に大映で活躍した高橋二三。
代表作は昭和ガメラだが「質より量」というタイプの脚本家だったようだ。何より筆が早かったらしい。だから会社の企画会議で「クレイジーを使った喜劇映画」の企画が通るとまずは脚本がなければ何も進まないので数日で(出来不出来はともかく)1本仕上げる方だったようだ。
量産時代ではそういう職人が必要だったのだろう。
映画史に残るような名作はほとんどないけど、こういうタイプは必要だったのだ。
主役の二人を植木等と谷啓が演じていたら全く違った映画になっていたかも知れない。ひょっとしたら最初はそうだったのかも?
石橋は懸賞に応募しまくっていたり、何かとケチな性格なのだが、これが植木が演じていたら全く違っていたと思う。
同様にアメリカ行きのライバルもクレイジーの面々が演じていたら全く違っていただろう。
大して面白くもなくだらだらと話は進み、結局石橋はしのぶと結婚することになる。弓子の方だが「東京オリンピックの曲の公募に私の書いた詩が選ばれた」と自慢していたが、それが後に盗作と解ってしまう。
「なんでそんなばれるようなことしたの?」と夢田に問われて「解っちゃいるけど止められなかったのよ」と答える。
まあそういう映画である。
冒頭、石橋は田舎で「田んぼ売った金で大学出したんだから出世して買い戻しておくれ」と言われて村を出る。夢田は水上生活者で同じく「陸の家に住みたい」と家族に言われて出てくる。
このあたりの描写が隔世の感がある。
冒頭、植木が登場し「この映画は現代日本の問題点を鋭く描いた作品です」と言い、米ソの核実験のニュースフィルムが出てきて、ケネディ、フルシチョフカが出てきて何かを話す。これを植木が「ケネディさん、なんて言ったんですか?」という台詞があって、メインタイトル。
ここまでは面白かったんですけどねえ。
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