2018年10月

   
恍惚アパート
悶々時代
ブルーフィルムの女
ちっそく
縄と男たち4 契(きずな) 旅猫リポート
止められるか、
俺たちを
教誨師 パーフェクトワールド
君といる奇跡
クワイエット・プレイス
冷たい女
闇に響くよがり声
ノーパン痴漢電車
まる出し!!
不倫女房 絶品淫ら顔 覚悟はいいか
そこの女子。
あのコの、トリコ。 消えた拳銃 殺しの接吻 偽の売国奴
寒い国から帰ってきたスパイ あの頃、君を追いかけた のんけ2
〜幸せになろうや!〜
僕らのラプソディ

恍惚アパート 悶々時代


日時 2018年10月29日 
場所 DVD
監督 中村幻児
製作 昭和52年(1977年)


浪人生のケンイチはオンボロアパートから東大目指して予備校に通っていた。隣の新婚夫婦の山田さんは毎晩してるし、6号室のチンピラは毎晩女を連れ込んでるし、色っぽいホステスはいるし、大家のおばさんは迫ってくる。
そんな時、公園で「妊娠したならこれで堕ろせ」と若い女が男に金を渡せれてるのを目撃する。
ケンイチは大学生になった友人に「隣の山田さんを犯せ!俺が途中で入っていって現場を見られたらいたたまれなくなって引っ越すだろ」と頼み込む。
引き受けてくれた友人だが、山田さんの奥さんは抵抗し、たまたま手にした包丁で友人は刺されて死んだ。夫婦でそのことを隠し、死体は段ボールに入れてそのまま引っ越していった。ケンイチはそのことを知っているが、もちろん言うことは出来ない。
山田さんの部屋に今度はこの間の公園で見かけた子、あやこが引っ越してきた。ところが6号室のチンピラがあやこを犯そうとする。
音で気がついたケンイチはチンピラをバットで殴る。チンピラは死んでしまった。
あやことケンイチはチンピラの口に酒を入れて橋から投げ落とす。酔って橋から落ちたことにしようとした。しかし二人が去った後、チンピラは生き返った。
あやこは「もう死のう」という。ケンイチは「俺まだセックスしたことないんだ」というとあやこが相手になってくれた。
翌日、ふたりは海で死のうとする。しかし死にきれない二人。


中村幻児監督作品。
昨日見た「ブルーフィルムの女」もそうだったが、予測のつかない展開をする。
山田さんを犯すまではピンク映画らしい展開なのだが、友人の方が死んでしまうというのが意外。そして山田さんは警察に言うかと思ったら、言わずに死体を片づけて引っ越すという展開も意外。

その後、ケンイチは友人の夢を見るので、ホラーっぽい展開になるかと思いきやそうはならない。警察や誰かが気づくというミステリーっぽい展開にもならない。

ケンイチとあやこで殺してしまって死体を捨てたが、その死体は生き返る。死んでなかったのか。
そしてそれを知らずに海岸死のうとする二人。
でも結局死にきれない、という「普通はこうなる」みたいな展開をしなくてこれが中村流なののかなあと思った。




ブルーフィルムの女 ちっそく


日時 2018年10月28日 
場所 DVD
監督 中村幻児
製作 昭和53年(1978年)


ヒロミはつき合っているやくざのチンピラのジロウのためにいやいやながらブルーフィルムに出ていた。「あと1年頑張れば楽させてやる」というジロウの言葉を信じるしかないヒロミ。
原宿。大学生のユウジはナオミとぶつかる。彼女はどうやら万引きしてきたらしい。そのことをネタにビルの屋上で犯そうとするが、逃げられた。
ユウジは町工場の社長の奥さんに1回2万円で買われていた。中古だが、奥さんはユウジに車を買ってくれた。
ユウジは親友のヨウヘイから「ユキが好きだ。彼女の気持ちを聞いてくれ」と頼まれる。早速ユキに聞いてみたが、ヨウヘイはタイプじゃないという。逆のユキはユウジの持っているブルーフィルムを観たいと言いだし、ユウジの部屋へ。そこでブルーフィルムを観ながら1回する。
ヒロミはジロウから「今度の仕事が最後だ。ただし犬とやって欲しい」と頼まれる。さすがに断るヒロミ。
町でナオミと再会するユウジ。ドライブに行って海でやろうとするが、うまく行かない。そのままナオミを送っていくユウジ。彼女の家のまで姉のヒロミと会う。「どこかで観た女だ。そうだブルーフィルムだ」と思いだし、今度はユウジはヒロミを待ち伏せして部屋に連れ込む。
そしてユウジは「好きだ」と言って犯す。
ジロウはヒロミがユウジの車に乗り込むのを見かけ、新しい男が出来たと思う。そしてその恨みでナオミを犯す。
ヒロミは昼間の職場の美容室をやめてジロウのもとを去っていった。
やくざの親分から撮影の女を都合出来なかったことを責められ、指を詰めた。
ジロウはユウジを捕まえ「落とし前に100万円持ってこい」と言われる。仕方なく社長の奥さんをだまし、ヨウヘイとホテルに行かせる。それを写真に撮って社長を脅す。「200万円、いや150万円にまけといてやる!」。ところが社長は警察に恐喝で訴え、お金を取りに行ったところをヨウヘイは捕まった。
お金を用意できないユウジをジロウは責める。取り出したドスで争ってうちにジロウの腹に刺さってしまう。
仕方なくユウジは逃げるのだった。


中村幻児監督作品。今後事情があって中村作品はしばらく観ていく。
話は全部書いた。結構な字数である。ピンク映画って割と字にすると短いことが多いが、これは情報が多い。

観てる途中はトップシーンはヒロミの撮影シーンから始まるからこっちが話の中心かと思ったら、ユウジの方に話が移っていく。
そして友人のヨウヘイとかユキが出てきて話がどんどんわき道にそれていく。

「なんか話がとっ散らかってるなあ」と思っていたのだが、これが中村幻児なのだ。
「巨根伝説 美しき謎」も予想される(期待される)結末ではなく、意外すぎる結末だった。「ウイークエンドシャッフル」も人物が予想しなかった展開に振り回される展開だったが、この予想を裏切る展開をするのが中村幻児、という解釈は成り立つのだろうか?

しばらく中村幻児を観て考えてみたい。




縄と男たち4 契(きずな)


日時 2018年10月27日13:10〜 
場所 光音座1
監督 剣崎 譲
製作 ENK


日本舞踊の師匠はひき逃げにあい、踊れなくなり車いすの生活になった。
そんな中、ミキスケ(渋谷和則)だけは師匠の元を離れずに世話をしていた。もう勃起しない師匠はミキスケの体を縄で縛り、自らの欲望を慰めていた。
師匠の元に往診の医者がやってきた短い時間にミキスケは今は師匠のもとを去った兄弟子のタクロウを呼び出し、体を重ねた。確かに師匠を敬愛しているミキスケだが、体は満足を得られなかったのだ。
しかし師匠に「別の男の匂いがする。誰とやったんだ!」といつもより激しく縛り上げた。
買い物で町に出たミキスケはタクロウに再会。タクロウはここのところミキスケのポケベルを鳴らしても返信がなかったことを責めた。「いいところに連れてってやるよ」いやがるミキスケをタクロウは無理矢理ゲイ映画館につれていく。入るときは戸惑っていたミキスケだがやがて他の客と体を重ねる。
最近のミキスケに不信を感じた師匠はミキスケを無理矢理お使いに出し、ミキスケの部屋を探った。そこでゲイ映画館の会員証を発見してしまう。
その会員証を見てその映画館に一人で行ってみる師匠。その前でタクロウに会い、中に入れられる。
帰った師匠はミキスケをSM部屋に連れ込む。そして服を脱がせ3人の男たちを招き入れる。
「私はお前を満足させることは出来ない。しかしこそこそと陰でほかの男とセックスされるのはたまらん。私の目の前でお前がセックスするのが唯一の解決法だ」といい、3人の男たちにミキスケを犯させる。
ミキスケはそんな仕打ちをする師匠を責めた。
師匠は「お前は私の無くした若さも自由に動ける体を持っている。お前がうらやましいのだ」といい、ならばとミキスケは自分の腰を傷つけ自らも車いすの体になった。


話は全部書いた。
「縄と男たち」は割と面白い作品が多いし、剣崎作品は当たりが多い。
今回も期待しすぎない程度に期待して鑑賞。
結論からいうと面白かった。

自分が相手を満足させられない苛立ちというのは切ないですねえ。
3人の男たちに目の前で犯させる苦悩は何とも言えない。

さらに自分も同じ車いすになるというのは谷崎の「春琴抄」を思わせるクレージーさで、インパクトあった。

出演の渋谷和則は佐賀照彦とともに90年代のENKのメイン役者だった。懐かしい。
京都の風情ある町並みが美しい。

あと登場した映画館がシネフレンズ西陣。「映画にもなったんだぜ」というタクロウのせりふがあるから「シネマホモパラダイス」のことなのだろう。(上映されていたのは「僕らのウイニングラン」)
こちらも懐かしく話、出演者、ロケ地とも満足できるお得な映画だった。

本日はN-stageのショー付き。
同時上映は先日見た「僕らのラプソディ」なので感想省略。





旅猫リポート


日時 2018年10月26日19:30〜 
場所 新宿ピカデリー・スクリーン1
監督 三木康一郎


宮脇悟(福士蒼汰)は愛猫ナナ(声の出演・高畑充希)とともに旅に出た。悟は事情があって猫が飼えなくなったため、猫を飼ってくれる人を捜すためだった。
小学校時代の親友・幸介(山本涼介)は妻と別居中だった。幸介の父親との関係が原因だ。猫を使って妻との仲を戻そうと考えたが、そういうことなら新しい猫の方がよいということになった。
中学時代の友人吉峯(前野朋哉)からは「別の猫を飼うことになったので悪いが飼えない」と連絡があった。
次は高校時代の親友・杉夫妻だ。杉(大野拓朗)と杉の妻千佳子(広瀬アリス)とは高校時代、3人でいることが多かった。実は千佳子は悟のことが好きだった。しかし杉が千佳子のことを好きだと知った悟は「自分は転校も多いから」と身を引いたのだった。
ここはナナとすでに買っている犬の虎丸との相性が悪く断念。
旅の終着である九州に住むおばさん法子(竹内結子)の元に着いた。
実は悟は・・・・


福士蒼汰主演映画。数ヶ月前からチラシなどを見て楽しみにしていたので初日に鑑賞。
正直予告で観て予想していた映画とちょっと違ったな、というのが率直な印象。悟と猫の二人でだらだら楽しい旅をしてラストに別れがある、という展開かなと思ったが違った。

ます回想シーンが多い。最初のパートで小学校時代の回想シーンになったので、「福士蒼汰」を目当てで観に来ている私としては福士蒼汰が出なくなってがっかり。「早く小学校時代終われ!」と思ってみていた。
そこで悟が小学校時代に両親が死んだと知らされ、思わぬ展開にびっくり。

次に高校時代のパート。正直、福士蒼汰も高校生役は微妙だ。「BLEACH」みたいな理屈じゃない世界観の時はいいけど、今回みたいに日常に近い設定ではちょっと違和感が出てくる。(髪型とか変えて変化をつけてますが)
そこで悟が薬を飲んでいたり、犬の虎丸に「もう長くない匂いがする」と言わせて、悟の猫を飼えなくなった事情というのは「死期が近い」という展開でまたびっくり。
そんな展開とは予想もつかなかった。

法子おばさんから「あなたは両親とは血が繋がっていなかった」と諸学校時代に知らされていたとこっちが知らされまたびっくり。
育児放棄で生みの親とは別れ、育ての親は小学生の時に交通事故で死亡、そして本人も(病名は出てこないが)若くして死ぬ、って不運の三重苦というかバーゲンセール。
原作がそうなのかも知れないし、原作者もシナリオに参加してるから異存はないんだろうけど、この展開はなあ。私は納得できないよ。

そして法子おばさんの元についてからが闘病生活になるのだが、ここが長い。こういうロードムービーでは旅の終わりが話の結末、みたいな自分ルールがあったので、これも余計に長く感じる。
福士蒼汰も帽子をかぶって(あれは薬の副作用で髪が無くなった状態に鳴ったのだろうか?)車いすってなんかそんな姿見たくないなあ。

ラストでは亡くなるのだが、福士蒼汰が死ぬ役って始めてみた気がする。

予想では旅をして結局見つからずにナナを捨てようとしたが、「やっぱり捨てられない」となって抱き合って終わり、みたいな映画を予想していたが、斜め上をいく展開で戸惑った。

個人的には福士蒼汰がずっとバラクータのブルゾンを着ていて(須散るや映画で観るとネイビーに見えるが、パンフレットによるとモスグリーンだったらしい)自分もお気に入りのブルゾンなので、そこがよかった。









止められるか、俺たちを


日時 2018年10月21日19:30〜 
場所 テアトル新宿
監督 白石和彌


1969年、新宿でフーテンをしていた吉積めぐみ(門脇麦)は友人のオバケこと秋山道男の紹介で若松プロで助監督になった。以前「胎児が密猟する時」を観て衝撃を受けたことがきっかけだった。
なれない現場に右往左往するめぐみ。「俺の視界に入るな!」と若松孝二(井浦新)に怒鳴られる日々。「3年たったら監督にしてやる」と言われたが、脚本の足立正生には「3年持たない奴のほうが多い」と言われる若松プロ。
そんな中、撮影助手として高間賢治という青年が入ってきた。
やがて高間とめぐみは体を重ねるような中になる。
若松孝二は足立正生とカンヌの代わりにパレスチナに行き、そこで重信房子などと会う。彼らを16mmで撮影してきた映像を元に「PFLP世界戦争宣言」を作る。そしてそれを全国で巡回上映をすると言い出す。
そんな頃、めぐみは自分が妊娠していることを知る。


若松プロによる若松孝二とその仲間たちの1969年からの数年間を描いた映画。
若松孝二が主人公ではなくて女性助監督が主人公なんだな。
この主人公が後の有名な誰かになるのだと思ってたのだが、最後に自殺して驚いた。
ここがびっくりというか唖然としたのだなあ。

そもそも自殺する理由がよくわからない。
だから私としてはただポカンと驚くばかりである。てっきり若松プロを描くための案内役として設定した架空の人物かと思った。
でも実在の人物だそうで。
主人公が自殺したら、いったい映画は誰の視点になるんだ?

だから彼女を主要人物にするのはいいけど、語り部となる主人公は別の人物である必要があると思う。めぐみの恋人(?)だった高間賢治になるか。
でもそうするとめぐみが若松プロに入るシーンが出せない。

結局は「若松プロ」を描きたいのであれば、主人公は特に定めずに群像劇的な話でもよかったのではないか?
でもそもそも「止められるか、俺たちを」というタイトルからして(めぐみは自分を「俺」とは言わないから「俺たち」はめぐみの発言ではなくなる)いやなんだけど。

というのは「俺たちの若い頃はもっと燃えていた。それに比べて今の若い奴はどうだ?」というジジイの若者論になってしまっている。
満島真之介が音声ミキサー助手役で出演し、若松が金のために作った純粋エロ映画(現存しないらしい。監督名も大杉なんたらの変名)を「こんなの若松孝二の映画じゃない!」と興奮して怒るシーンがあるが、いや金は大切だよ。そういう金になる映画も作らなきゃ作りたい映画も作れないよ。

で、単に若松孝二をはじめとして足立正生、高間賢治、荒井晴彦、大島渚らの交流を描く再現ドラマにしかなってない。
そもそも今若松プロを描く映画が必要かどうかさえも気になる。

それでも井浦新の若松孝二は思ったより似ていたし、大島渚(高岡蒼佑)もなかなかよい。
創造社のメンバーとの飲み会で佐々木守が書いた「ウルトラマン・故郷は地球」の話題をしていたのは驚いた。そうかあ、やっぱり観ていたんだ。
あと大島渚が「『絞死刑』とか結局は死刑反対の人が観て、自己確認するだけだ。本当は死刑賛成の人に観てもらわなければ意味ないんだよな」と「結局自己満足にしかなってない」という悩みを持っていたのは驚いた。

私だったら、この大島のつぶやきとかの「作っても作っても響かない」焦りなんかを中心にして欲しかったかな。

あとラストで足立正生はその後海外に行ったことも字幕でいいので示して欲しかった。そこ重要だと思うけど。






教誨師


日時 2018年10月20日16:00〜 
場所 有楽町スバル座
監督 左向 大

牧師の佐伯(大杉蓮)は拘置所に出向いて6人の死刑囚と話をする。
なかなか心を開かず何も話さない鈴木(古館寛治)、ヤクザの吉田(光石研)、関西出身の饒舌な野口(烏丸せつこ)、ホームレスだった進藤(五頭岳夫)、気弱な小川(小川登)、大量殺人者の高宮(玉置玲央)。彼らの佐伯に対する態度にも変化が見られ、また佐伯自身も兄との過去がよみがえり退治せざるを得なくなる。


本年2月に急逝した大杉漣。その最後の映画主演作で最初のプロデュース作品だ。
6人の死刑囚との会話が平行して行われる。1日に複数の死刑囚と対話していくそうだ。
彼らがどんな罪を犯したのか、どんな殺人を犯したのは彼らの会話から推測するしかない。

吉田はヤクザ生活の中で何人も自ら武闘派として戦ったようだ。高宮は17人殺した、というせりふがあるし、「俺はこの世界をよくするために殺人をした」というぐらいだから「やまゆり園事件」がモデルなのかも知れない。鈴木はどうやらストーカーで最後には相手を殺したらしい。
進藤、野口、小川はよくわからない。

高宮が一番そうだが、みんな自分を正当化していて「俺は(私は)悪くない」というスタンスでいる。特に高宮は屁理屈としかいいようのない理屈で佐伯に喧嘩を売り続ける。
そして佐伯もかつて母の再婚相手と喧嘩になり、兄が相手を殺してくれた事件を思い出す。

ホームレスだった進藤は字が読めない。今の日本で字が読めないということは(彼とて戦後生まれだろし)、相当な貧困家庭に育ったのだろうか?
借金を背負わされても気にしてないように見える。
それでも最後に佐伯に託したメモには「私に罪はあるのだろうか?」と問うてくる。
野口には虚言癖があるようでそれが罪の原因になったのだろうか?

しかし見えてくるものはいずれにしても「死刑ってなんだろう?」ということである。高宮の言う「殺しちゃって手っ取り早く片づけようって政府が仕事を放棄してるだけだろ?」ということである。

進藤なんか死刑にしたって日本が変わるとも思えない。
そういうことを声高に言うではなく、じりじりと迫ってくる。
教誨師と面談する部屋が、奥が三角形になった奇妙な部屋で、居心地の悪さが、その気持ちを増幅させる。

監督の左向は以前同様の死刑をモチーフにした「休暇」の脚本だ。この映画、スルーしようかと思っていたが、このことを知ってそれならちゃんとしてるだろう、と観に行った。
そしてそれは裏切られなかった。

日本の死刑制度について考える時にはいいテキストになるような映画である。
死刑について考える人は是非参考テキストに観て欲しい。






パーフェクトワールド 君といる奇跡


日時 2018年10月14日16:55〜 
場所 TOHOシネマズ上野・スクリーン4
監督 柴山健次


川奈つぐみ(杉咲花)はインテリアデザインの会社で働いているが、仕事の関係で行った飲み会で高校の先輩、鮎川樹(岩田剛典)と再会した。
川奈にとって鮎川は初恋のあこがれの人だった。7年ぶりに再会した鮎川だったが、大学時代に交通事故に合い、車いすの生活になっていた。
仕事の関係で再び川奈と鮎川は一緒になることが多くなり、それから休日なども一緒に絵の展覧会に出かけるようになった。
鮎川は高校時代からつきあっていた彼女がいたが、今は別れていた。同窓会で再会する鮎川とその元彼女。みんなは彼女の方が別れたと思っていたが、実は「こんな体の自分が相手に負担をかけるわけにはいかない」と思って別れたのだった。その元彼女も今度結婚するという。川奈は結婚式場に鮎川を連れて行き、祝福させて鮎川の心の負担を取り除いた。
やがて鮎川も川奈に心を開くようになる。
毎日鮎川の元に行って食事を作る川奈。しかし過労から駅でホームから転落し、怪我をする。
上京してきた川奈の父親は鮎川に「娘と別れてくれ」と頼む。鮎川はそれを承知した。


岩田剛典主演映画。「三代目なんちゃら」で活躍する彼はちょっと不良性感度が高そうだが、「植物図鑑」に引き続きの恋愛映画では育ちの良さそうな上品なイケメンぶりを発揮する。
この映画も数ヶ月前から予告編を見てそのさわやかなイケメンぶりが目的で観に行った。

さわやかな恋愛映画だった。妙に泣かせようとしないのがいい。車いすが主人公と聞いて「感動ポルノ」的に「がんばってる物語」だったら少し引いたが、さわやかである。
これはもうひとえに岩田剛典の力である。この映画の成功はひとえに岩田剛典をキャスティングしたことだ。

ヘルパーの女性が出てきて、ちょっと川奈がやきもきしかけるが、そういった「あなたには出来ない」的な宣戦布告することもしない。
同じく須賀健太が川奈の高校時代の友人として登場するが「俺だったら君を守ってあげられる」的なことを言って川奈や鮎川を惑わすこともない。
全体的にそういう「どろどろ感」がないので見ていていやな気持ちにならない。

父親(小市慢太郎)も「お前では娘を守れん!」と怒鳴るつける訳ではなく、「すまない、娘と別れてくれ」と非常に真摯で紳士である。
このあたりもすごく好感が持てた。
まあ仕事先などで「こんなカタワに何が出来る!」という差別意識むき出しで来て最後には改心する、というご都合主義もない。

いい人ばかりが登場するというナナメの見方もあると思うが、岩田剛典のさわやかな笑顔がすべてを吹き飛ばす。
観るのをちょっと迷ったのだが(予告編で全部解った気がしたから)、見逃さなくてよかった。
さわやかな映画だった。








クワイエット・プレイス


日時 2018年10月14日13:40〜 
場所 TOHOシネマズ上野・シアター6
監督 ジョン・クランシスキー


地球に隕石と共に怪物がやってきて89日目。アメリカの田舎に住むアボット一家は近くのスーパーまでやってきた。
その怪物は盲目なので光には反応しないが、音には反応して相手を倒してしまう。末っ子のボーがスペースシャトルのおもちゃを見つけ、持って行こうとするが父親のリーは電池を抜いて止める。しかしかわいそうに思った長女のリーガンがおもちゃを渡してしまう。心配したとおりボーはおもちゃで音を立て、怪物に喰われてしまった。
1年が過ぎた。相変わらず音を立てないで生活する彼ら。リーは息子のマーカスを連れて釣りに行く。川のような大きな音がある場所では話しても怪物には聞こえないので大丈夫と話す。そしてリーガンは弟を死なせたことを気に病んでいて父親にも嫌われていると悩んでいることを相談する。
しかし父親は「大丈夫だ」と諭す。
妻のエヴリンは妊娠していた。その日、階段で釘を踏んでしまい、音を立ててしまう。その音に反応したのか怪物がやってきた!
彼らの運命は?


「音を立ててはだめ!」みたいな広告が頻繁にツイッターのタイムラインに出てきた本作。スターも出ていないし、宣伝費も少なそうだから新しい宣伝方法なのだろう。
本作の存在は知っていたが、ホラー系はそれほど好きではないのでパスするつもりだったが、「お化けが出てくると言うより、エイリアンが出てきて怪獣映画っぽさもある」と友人に聞いて観に行った。

でもやっぱりホラー映画だった。
静かなシーンでドーン!と音を鳴らして驚かすタイプの映画。こういうの、私あまり好きじゃないです。もちろんお好きな方もいらっしゃるでしょうから、否定はしませんが、後ろからいきなり「わ!」って驚かされるみたいで芸がないというか・・・・

それに設定上、妻が妊娠してるのも気になった。いや異変が起こる前から妊娠してるならともかく、映画の後半は怪物がやってきてから472日目でしょう?怪物がやってきて明日をも知れぬ状態で子作りしていたとは恐れ入る。
赤ん坊が生まれれば泣き声がするんだから、落ち着くまで子供は作らないんじゃないか?
こんなの設定を100日目にすればいいんじゃないかなあ?

最後はどうやら人間の耳には聞こえない高周波を聞かせれば怪物は爆発してしまうと解る。
「もっと早く解れよ!」という気がしないでもないが、低予算ホラー、怪物映画の定番である「田舎の町が襲われる」という伝統を受け継いだ映画として評価したい。
好きか嫌いかで言うと「音ドーン!」で驚かす映画は好みではないので、好きにはなれなかったです、はい。






冷たい女 闇に響くよがり声


日時 2018年10月13日11:36〜 
場所 上野オークラ劇場
監督 池島ゆたか
製作 OP PICTUERS


真亜子(成宮いろは)は印刷所を経営する夫・道雄(竹本泰志)から心が離れ、結婚前につきあっていたノアール作家の誠(山本宗介)と不倫をしていた。ホステスだった真亜子は大手広告代理店に勤める道雄と結婚したのだが、結婚後、会社を辞めてしまい、儲からない親の印刷会社を継いでしまった。真亜子はそれが不満で誠とよりを戻したのだ。
真亜子は誠に道雄を殺してくれるように頼む。「今度の金曜日は同窓会だから、その日残業している夫を殺してくれ。6時すぎたら夫しかいないはず。鍵は工場の入り口の植木鉢の下に隠しておく」
真亜子はその晩、同窓会で友人たちと飲み歩いた。
だがその晩、道雄を襲ったのは誠ではなく、女(長谷川千紗)だった。女は道雄を縛ってもてあそんだが、隙を見て道雄は逆襲し、女を殺してしまう。
道雄から連絡を受けた真亜子は驚いた。「警察に自首する」という道雄を真亜子は引き留め、死体を誠と共に山に埋める。
女は誠が頼んだプロの殺し屋だったのだ。
しかし道雄は罪の意識にさいなまれ、会社での不倫相手・武藤(佐倉萌)も殺した女に見えてきた。
自殺を考えた道雄。それを見て夫を再び愛するようになる真亜子。
ところが今度は誠が道雄を殺して真亜子と一緒になろうとする。


池島ゆたか監督の新作。池島作品だからと言って全部見てるわけではないが、ツイッターでヒッチコックの「ダイヤルMを回せ!」を題材にしてると知り、また真亜子が同窓会の後、友人たちとカラオケスナックに行くシーンで、私もエキストラ出演したので観に行った。

前半はヒッチコックでは「夫が不倫した妻を殺す話」だったのが「妻が夫を殺す話」になっている。そこまでは予想される変更だったが、後半が大きく異なる。

道雄は逮捕されない。ここで大きく展開が異なる。
その前にヒッチコック版では殺すタイミングを知らせるために電話を書けるのだが、時計が止まって時間が遅れたり公衆電話がふさがっていたりでサスペンスが盛り上がるのだが、ここが携帯電話を持っている現代ではうまく行かなかっただろう。

道雄が逮捕されないので、警察も出てこないし、誰かが道雄を助けるために奔走することもない。

真亜子が殺し屋の持っていた鍵を隠すのだが、犯人の死体から鍵を抜き取ってそれを実は犯人の家の鍵、というのを知らずにいて最後に鍵の隠し場所を知っていたことが決め手、というオチが生かされなくなった。

第一、真亜子と道雄がよりを戻すという展開が「私は」気に入らなかったので、鍵の件もまったくうまく行ってないようにしか見えなかった。
脚本は高橋祐太。
私が脚本だったら、道雄と不倫していた武藤さんがおばさん探偵となって活躍する話になったと思う。
その辺はいい悪いではないと思います。





ノーパン痴漢電車 まる出し!!


日時 2018年10月13日13:55〜 
場所 上野オークラ劇場
監督 深町 章
製作 新東宝


満員電車で女性のスカートをハート型にくり抜いて切り去る事件が続発していた。女警部補パイ子は痴漢対策省から派遣されたペッパー(久保新二)と共に捜査をするが、頼りないので私立探偵・イザ公に協力してもらう。
ペッパーが痴漢をスカート切り裂き魔を逮捕したが、イザ公は切ったハートの形が違うことから今までの事件の犯人とは違うと判断した。
となると犯人は?
この映画の登場人物からすると彼しかいないじゃないか。
そうペッパーだった!


池島作品の新作を観に来て、その同時上映。
絡みのシーンが多く、しかも比較的長い。そのためストーリーはあまりない。久保新二の相変わらずのサービス精神旺盛のやりすぎ演技が記憶に残る。

イザ公が黒いスーツに赤いシャツという完全に松田優作のスタイル。ホントみんな好きだなあ。
あと映画の後半で「もう映画も後半だろ。登場人物はこれだけしかいないんだ。もう犯人は解るだろ?解らない?それでよく国家試験に受かったなあ」とイザ公がパイ子にぼやくシーンがあるけど、こういう自由度がピンク映画っぽくて楽しい。

電車の中での痴漢シーン、イザ公が複数の女性と絡むシーンがあり。久保新二が好きな人は楽しめる。




不倫女房 絶品淫ら顔


日時 2018年10月13日12:56〜 
場所 上野オークラ劇場
監督 佐々木尚
製作 エクセス


忠夫(真央元)は田舎で母親と暮らしていたが、その母親も亡くなりいとこ真由美の誘いで東京に出てきた。真由美は夫・康弘(杉本まこと〜なかみつせいじ)妹・美紀の3人暮らしだった。
ある夜、真由美と康弘の寝室を見てしまう。康弘は「昼間男のことを考えてただろ!」とドSに真由美を攻めていた。
忠夫は康弘の紹介で就職したものの、会社勤めが性にあわない。今日も上司(久須美欽一)に小言を言われた。
早退した忠夫は家にいた真由美を犯す。それを知られ、今度は美紀も犯す。
田舎にいた頃の彼女が訪ねてきたが、彼女ともホテルでセックスした。
やがて些細なことから上司と喧嘩し、会社も辞めてしまう。
康弘の出張中に真由美と美紀ともセックスし、やがて3人で絡むようになる。
やがて忠夫は「東京はあわない」と帰って行った。


池島作品の新作を観に来て、その同時上映。
こんな感じのお話。
特に感想はないのだが、忠夫が繁華街を歩いている時にSMAPの「シュート!」の看板があったから、そのころの撮影なのだろう。
劇中に写る映画の看板は比較的大きいから写りやすいし、公開時期を調べるのも簡単だから、いいタイムスタンプだな、と今更ながら思った。

主演の真央元はゲイ映画でも見たことがある。どの映画だったかは忘れたけど。その程度の印象なのだろう。





覚悟はいいかそこの女子。


日時 2018年10月12日19:30〜 
場所 新宿バルト9・シアター5
監督 井口 昇


イケメンで子供の頃から周りの女性に愛されてきた古家斗和(中川大志)は「女の子にちやほやされているが、実は彼女がいたことがない。お前は単なる鑑賞用男子」と言われたことが悔しくて彼女を作ろうとする。
ターゲットにしたのは「今まで何人もの男から告白されたが全員撃沈している」という三輪美苑(唐田えりか)。
廊下で告白されるも完全に無視される斗和。
彼女について行き彼女のアパートを知る斗和だが、彼女の母親は水商売で夜はいつもバイト先でもらったパンを食べているだけと知る。
寂しそうに見えた斗和は、彼女のアパートの隣の部屋が空いていると知り、そこに引っ越す。
借金取りが来たりして実は彼女の家はお金に困ってると知る。また美苑は美術教師・柾木(小池徹平)を好きなようだ。
借金取り(荒川良々)から彼女の内情を知った斗和は学校行事の合宿にお金の事情で不参加の美苑のためにバイトを始める。


流行の少女コミックの実写化。今年本当に増えたと思う。去年ぐらいまでは年に数本だったのに、今年は毎月のようにやってる気がする。
東映作品でバルト9にほとんどいかない私は情報が入ってなかったが、数日前に飲み屋で「ゲイの男の子が出てくるらしい」と聞き、気になって観た次第。

結果的にいうとその情報は不正確。本作はこの映画の前に30分5本のテレビドラマがあってその続きの映画だ。でも直接の続編ではないので、ドラマを観ていなくても全く困らない。
そのドラマ版の第4話のエピソードにゲイの男子が出てくる話があったのだ。

中川大志の映画は何本も観ているが、どうにも印象が残らなかった。福士蒼汰に似ていると一部では言われてるらしいが、そういわれるとそう見えなくもない。でもちょっと格落ちの感は否めない。
そんな中川だが、本作はよかったと思う。

この間、ブルーレイで福士蒼汰の「好きっていいなよ。」を見直したのだが、2回目となると全体像が改めて解る。主人公同士がつきあい始めてもそれを邪魔する(福士を好きな女の子とか、川口春菜を好きになる男とか)いろんなキャラが登場するのだが、本作はそういうくどさがない。

美苑は柾木先生が好きで、合宿にいけない時に斗和必死にバイトして彼女の費用を貯めたのだが、先生は「僕の助手としてスタッフとして参加してもらおう。だから無料だ」とあっさり「大人の力」で彼女を合宿に連れて行く。
このあたりの挫折感は大人になっても味わうもので、非常に共感した。

でもそもそも斗和が学校一のイケメンである必要はなく(美苑に「あんた斗和に近づくんじゃないよ!」と喧嘩を売ってくる子もいない)若干設定に疑問を感じるが、斗和の一途な思いは大いに共感できたので、面白かったと思う。

あと小池徹平を久しぶりに観た。大人になった小池氏だがまだまだ彼の活躍は観たい。
連ドラ版もDVDや配信で観られるようなので、そちらもチェックしたい。







あのコの、トリコ。


日時 2018年10月9日14:40〜 
場所 TOHOシネマズ新宿・スクリーン8
監督 宮脇 亮


頼(吉沢亮)、雫(新木優子)、昴(杉野遥亮)の3人は幼なじみ。3人で俳優になろうと誓い合ったが、頼はいつも声も小さく自信なさげでオーディションも落ちていた。
親の転勤で田舎に引っ越した頼だったが、雫がモデルとして活躍してるのを知り、子供の頃から雫にあこがれていた頼は雫の高校に転入する。
頼と再会した雫は事務所の社長(古坂大魔王)に頼んで頼を付き人にしてもらう。
今はモデルだが女優になるのが夢の雫。CMの仕事が来たが下着のCMだった。少し抵抗があったがなんとか乗り切ろうとする。共演は今や人気スターとなった昴。だが雫は下着姿になるのに抵抗を感じ、控え室で迷ってる間に時間は過ぎ、昴の事務所の社長が怒って帰ってしまった。
スタッフは雫に対し怒り心頭になるが、頼が機転を利かせて「僕が代役をします!」と言う。スタッフはあきれるが監督の近藤(岸谷五朗)は依然事務所で頼を見て気にしていたのだ。「取り合えずやってみよう」となり、現場は進行した。
頼と雫の下着のCMは頼も話題になったが次の仕事につながるまでには至らない。
雫に「ロミオとジュリエット」の舞台の話が来た。演出は近藤だ。だが稽古中に昴は交通事故に巻き込まれ、しばらく稽古が出来なくなった。
雫の相手でせりふが全部入っている頼が代役に立候補する。近藤も「とりあえずそうしよう」と代役で稽古を続ける。本番には昴の復帰が間に合った。
舞台もうまく行き、雫は女優として歩み出す。頼を認める近藤は新作のアート系の恋愛映画の主役に頼を抜擢する。
昴は「雫は俺のだ」と宣言、頼も「この映画で新人賞を取ったら僕のものだ」の宣言する。


今人気急上昇中の吉沢亮主演作。しかも女子に人気の「少女コミック」の実写版。
予告とか観て最初の下着のCMで吉沢亮が注目されて、逆に雫よりも売れてしまう、という展開かと思ったがさにあらず。芸能界そんなに甘くない。

しかし昴の代役でCMに出て、昴の代役で舞台のゲネプロまで行くって展開が2回同じことをするのはいかがなものか。
私はてっきり近藤監督がゲイで、頼をくどく展開になるかと思ったら、それは私の妄想である。

あと頼の主演映画の相手役の女優が「共演者キラー」と呼ばれてると伏線があるのだから、相手役女優が頼を口説いたりして雫がやきもきする展開もあったのではと思う。

最後にはハリウッドに行く、といいながらエンドクレジットでは3人で共演したりして、結局アメリカではどうだったのか?

吉沢亮がめがねをかけてヘタレを演じてる時間が長すぎて、早く色っぽさを出してくれたらもっと良かったと思う。
完全にだめではないが、やや消化不良感が残る。

やっぱり「オオカミ少女と黒王子」の吉沢亮は良かったですよ。
これからも吉沢亮には期待しています。






消えた拳銃


日時 2018年10月8日19:30〜 
場所 シネマノヴェチェント
監督 バズ・キューリック
製作 1966年


殺人犯の張り込みをしていたヴァレンス刑事(デヴィッド・ジャンセン)は怪しい男を見かけ高級アパートに追いつめる。そのプールの前で男は拳銃を抜いたため、ヴァレンスも拳銃を抜き射殺した。
しかし現場検証では相手が抜いたという拳銃は見つからない。撃たれた医者は張り込んでいた事件の犯人ではなかった。ヴァレンスは過剰防衛ではないかと世間の非難を浴びる。
「確かに拳銃を持っていた」そう確信するヴァレンスは事件の真相を探る。
医者は患者の定期的な往診に行っていたのだが、他に用事があったのでは?たとえば女と会っていたとか。このアパートに住む美人モデルが行方不明と解った。その女性の部屋に入ってみると死体で発見された。
妊娠中絶手術をしたのだが、術後の処置が雑で死にいたったのだ。
ヴァレンスは死んだ医師がその処置をしたのではないかと思ったのだが。


本日4本目、オオトリの映画である。「殺された男が持っていた拳銃はどこへ行った?」というミステリー。オチを聞くとシャーロックホームズの時代のような古典的ミステリーにありがちな内容。

モデルの死は別の男が愛人と認め、無免許の医師が処置をしたと解ったので本件とは関係なかったとすぐに解る。こういう事件とは無関係なエピソードが挿入されるというのは好きである。

死んだ医師が2年前に破産してるにも関わらず最近金に困ってる様子はない。またメキシコ(字幕では「半島」としか出てこないが、メキシコだろう)で無料医療をしていて世間ではますます医師の評判が高くなりヴァレンスの評判は悪くなる。

現場にいた同僚刑事が拳銃を隠したのでは?と私は最後に疑ったら、その刑事がヴァレンスを逮捕しにきたのでやっぱり!と思ったら、医師の助手が殺されてその疑いがかかったのだ。

結局拳銃はおもちゃの拳銃で、半島から麻薬の運び屋をしていたのだ。
往診した先の患者の愛犬が現場に落ちていたおもちゃの拳銃が医師のにおいだったので持ち去った、というオチ。いや古典的ミステリーだなあ。

その拳銃には麻薬が仕込んであったのだな。

本日は4本の「一定レベルの娯楽映画」を連続鑑賞し、本来の映画鑑賞の面白さを味わった。
やっぱり映画は頭を空っぽにするために見ましょうや、と思った。







殺しの接吻


日時 2018年10月7日17:30〜 
場所 シネマノヴェチェント
監督 ジャック・スマイト
製作 1968年


一人暮らしの老婆が殺される事件が連続で発生。モーリス・ブランメル刑事(ジョージ・シーガル)は新聞記者に「きわめて緻密で計画的な犯行だ」と発言。個人的な意見だったが、これが記事になった。
そのことがきっけでモーリス宛に犯人から電話があった。
以後、犯行の度に犯人から電話が!
モーリスは犯人を挑発するため、架空の事件をでっち上げ新聞で発表する。犯人からの電話を待った!


ジョージ・シーガル主演の刑事映画。てっきり「ダーティハリー」の便乗企画かと思ったら、こっちの方が早い。
この刑事の設定が変わっている。母親と二人暮らしだが「早く結婚しろ」と口うるさく言われるさえない刑事。

母親からの重圧、という点では犯人と共通するのだが、かといってシンパシーを感じるわけではない。
最初の事件の目撃者だったちょっとセクシーな女性をデートに誘ったりするのも変わった刑事である。

犯人は女優(というか劇団)の息子で死んだ母親から口うるさく説教ばかりされていたために、それが母親と同じくらいの女性への殺意に変わっていったという話。

むちゃくちゃ面白かった訳ではないが、刑事映画として十分面白かった。



偽の売国奴


日時 2018年10月8日15:00〜 
場所 シネマノヴェチェント
監督 ジョージ・シートン
製作 1962年


1942年、第2次大戦中、北欧の中立国の石油商エリック・エリクソン(ウイリアム・ホールデン)は「反国家的人物」のリストに加えられたと新聞で報じられた。
それは実は連合軍側の謀略で、「そのリストから外す代わりに我々に協力しろ」とイギリスのスパイが迫ってきた。
アレックはドイツと石油の取引をしていたが、「ドイツの石油設備が攻撃されてお困りでしょう。スウエーデンに製油所を作りましょう」とドイツ側に持ちかける。実はその計画は嘘なのだが、それをきっかけにしてドイツの石油関係の設備に出入りしてエリックから情報を得ようと言うのがイギリス側の作戦だった。
エリックは「親ドイツ」と思わせるためにユダヤ人の友人をののしったりした。そしてドイツの石油関係の友人知人も仲間に引き込んだ。中には書類を残したりした。
作戦はうまく行き、イギリス側にはドイツの石油設備の情報が筒抜けだった。
しかし書類のやりとりをした友人が亡くなった。証拠の書類を取りにいかねばならない。


ウィリアム・ホールデン主演。この映画は全く知らず、タイトルさえも聞いたことがない。監督は「大空港」のジョージ・シートン。この監督の「大空港」以外の映画は初めてだ。

スパイでもない人間がスパイに仕立て上げられる、という怖さを持った内容。どうやら実話らしい。彼は映画になるほどの活躍をしたわけだが、このように活躍した人間は他にもいたんだろうな。

ドイツ人で連合国側に協力した女性はカトリックとしてユダヤ人などが殺されていくのが耐えられなかったからだが、やがては自分の情報が元で空襲にあう人々がいるのが耐えられなくなる。
そこで教会で懺悔をしようとするのだが、見張っていたゲシュタポが牧師が懺悔室に入ろうとするのを足止めし、牧師の代わりにゲシュタポが自分が連合国に情報を流したことをあかしてしまうあたりはキリスト教徒からすると怒り心頭だろう。この辺の気持ちは理屈では解るけど私にはピンとこないが。

映画は後半、亡くなった友人に預けた書類を処分しに行くところからの後半が大きなサスペンスになる。
亡くなった友人の子供がゴリゴリの軍国少年で(ヒトラーユーゲントだ)、何かって言うと密告しようとする。その密告が国のためになると信じて疑わない。
書類の入った鞄を盗んで書類を見てしまう。だが自分の父親も敵に通じているため、密告できなくなってしまう。でも結局ゲシュタポに懐柔されて話しちゃうんだけどね。

そして主人公の「大脱走」。飾り窓の売春宿に行き、歯医者を照会され(ここでドイツのスパイでないか事前に連合国から渡されていた歯のレントゲン写真で照合する)、列車に乗って船に乗る。
最後の最後の船がドイツの検問にあい、乗せていた収容所から逃げてきた青年が見つかりそうになるが、現場の兵士が見逃してくれるという展開。

一緒に見た知人によると現場の兵士はドイツ人ではなく、ドイツに占領されたデンマーク(だったか?)人なので必ずしも親ドイツではないという側面もあったらしい。

ラストは親ドイツを演じるために仲違いした親友のユダヤ人が「君を信じていたよ」というあたりは泣かせるねえ。
地味でちょっと長い気もするが見応えがあった。








寒い国から帰ってきたスパイ


日時 2018年10月8日13:00〜 
場所 シネマノヴェチェント
監督 マーティン・リット
製作 1965年


イギリスのスパイ、アレック・リーマス(リー・マーヴィン)はベルリンで諜報活動をしていたが、仲間が撃たれても助けられなかった現実にぶつかり、職を辞した。
求職活動をするがどれも長続きしない。そんな時、図書館の図書整理係の仕事につき、同僚の女性とも恋人関係になった。
ある日、「ドイツの現状についてお話しいただけませんか?」というある通信社の依頼が来た。これは東ドイツのスパイ組織の誘いだった。
実はアレックは東ドイツのスパイの責任者ムントをあちらの権力闘争に乗じて追い落とそうというイギリスの計画のため、仕事を辞めたふりをしていただけだったのだ。
彼はその依頼に乗り、東ドイツへ。ムントを追い落とそうとする一派は彼がイギリスの二重スパイだと査問会で証言する。しかし同時にアレックもまだイギリスのスパイだとばれていた。ムント側はアレックはイギリスのスパイだから当てにならないと反撃する。
そして図書館の同僚の女性も査問会につれてこられた。


シネマノヴェチェントの「復刻シネマライブラリー」との提携上映会。
「大いなる眠り」などを出しているが、そのシリーズのブルーレイを1本買えばこれからリリースしている(予定も含む)映画4本が連続で観られるという珍企画。「さらば愛しき女よ」を買って参加した。

スパイ小説として有名な本作の映画化。タイトルはよく知っていたが内容は知らなかった。(勝手にカラー作品だと思っていたが白黒だった)
「007」のような派手なスパイアクションではない。スパイ映画というよりミステリー作品だ。

最後の最後になってムントは実はイギリス情報部の二重スパイというのは本当で、ムントが東ドイツ側の権力闘争で失脚しそうになったので、反ムント側に有利な情報を流し、査問会でひっくり返すことで反ムント側を失脚させるというイギリス情報部の裏の裏をかくような作戦だったというのがオチ。

アレックは東ドイツに捕らえられるが、ムントが助けてくれる。イギリス情報部にとっては「アレックも駒にすぎない」という非情さが泣かせる。
図書館の女性と逃亡するが、ベルリンの壁を越えるところで彼女は撃たれれしまう。
「個人より国家」というスパイ組織の非情さを感じられる良作だった。






あの頃、君を追いかけた


日時 2018年10月7日11:30〜 
場所 TOHOシネマズ川崎・スクリーン3
監督 長谷川康夫


浩介(山田裕貴)と詩子(松本穂香)は幼稚園からの同級生。いつも一緒だったが、同じクラスで秀才の真愛(斎藤飛鳥)は詩子と仲がいい。
真愛は浩介の数学の悪さを心配して自作のテストと参考書を貸し与える。
最初は「数学なんてなんの役に立つんだ」と言っていた浩介だが、真愛の熱意によって徐々に数学の点数をあげていく。
やがて卒業、真愛は東京の医学部へ。浩介は県内の大学への寮に入った。浩介は昔からやっていた中国拳法を本格的に始める。異種格闘技を企画して真愛を呼び寄せたのにあっさり負けた。
結局二人はつきあわなかった。
そして真愛の結婚式。みんなで再会した。


若手俳優などが出演するたとえば少女コミックの実写化などでちょこちょこ見かけていた山田裕貴の主演作。
Vシネのような小さな規模では主演をしたことがあった山田だが、シネコンで上映されるレベルでは初主演ではないか。
さいきんちょっと気になっていたので、観てみた。

うーん、原作は台湾の映画でそのリメイクだそうである。
そこに原因があると思うが、どうも季節が変なのである。
上のあらすじには書かなかったが、キャラクターはあと男友達が4人出てくる。優等生、スポーツマン、旅館の息子、デブの子だ。

みんな卒業して、全員で海に行く。そこはいいのだが、その後それぞれの自分の目標を語り合って、その後勉強とかし始めてそれぞれの進路に進んでいく。
えっそれ時間がおかしくないか?高校卒業してすぐ進学が日本だろ?
そして彼らが上京したりするのに見送るシーンがあるが、服は半袖を着ている。季節感が全くおかしい。

オリジナルを観ていないので、判断の下しようがないけど、もとの台湾映画の設定を生かそうとするから、こんな日本ではあり得ない時期設定になってしまったのだろうか。
そこが気になったので映画の世界に入れなくなったのだな。

それに高校で話が終わると思ったら、大学入ってからも続く。ここで男友達4人が全く出なくなる。群像劇かと思っていたらそうでもなく、浩介と真愛だけの話になる。

そして二人で台湾のロケのシーンになる。いやロケは台湾でしてるけど、設定は日本なのだろうか?台湾に行くなら、それなりにイベントだし台湾に行く準備(電話して「今度旅行しないか」って誘うとか)のシーンがあってしかるべきだが、そういうのなし。
ここはオリジナルへの敬意を込めて変えなかったのだろうか?

それにしても男友達の一人のデブが実はゲイという設定なのだが、これもイカされてるのとは思えない。
それに浩介が大学卒業後作家になったり他の者もそれなりに成功してるのがなんだかなあ。もうちょっと地味でいいんじゃない?

リメイクがいけないとは言わないが、先月の「SUNNY」みたいに完全に日本にとけ込んで欲しかった。だからどこの国とも知れないような変な無国籍恋愛映画になってしまった気がする。

本編とは関係ないが、浩介は家ではいつも全裸で(父親もそうなのだが)、山田裕貴の上裸やお尻がたっぷり堪能できるのはファンにはたまらないだろう。





のんけ2〜幸せになろうや!〜


日時 2018年10月6日18:50〜 
場所 光音座1
監督 剣崎 譲
製作 ENK


漫才師の故里ウサギ・オイシはかつては新人賞を総なめしたが今はぱっとしない。ウサギこと宇崎は引退を考えていた。オイシこと健太(佐賀照彦)はまだまだ頑張っていくつもりだった。オイシの父は今はなくなったが芸人で母親はかつて新喜劇の美人女優だった。
ゲイのオイシはウサギのことが好きだったが、ウサギはのんけだった。
オイシはゲイバーで不思議な少年と出会い、ホテルへ。少年は自分を「D」と名乗り、「僕と出会うといいことがあるよ」という。
それからオイシは受けまくったが、オイシがとばしすぎてウサギはただyこで笑ってるだけだった。それが余計にウサギの自信を無くさせた。
オイシの母親はオイシに「最近恋人でも出来た?セックスすると声に艶が出てうまくなるんよ。あんたの父親がそうやった」と自分の経験を話す。
ウサギは香と結婚して香の父親がやっている店を手伝おうと思っていた。オイシ、ウサギ、香の3人は高校の同級生で、オイシと香はかつてつきあおうとしたが、オイシがゲイのためにうまくいかなかった。
漫才を続けたいオイシは、Dに頼んで道を歩いているウサギの手をDの股間を握らせることに成功した。
それからウサギの受けるようになり、二人の漫才は乗ってきた。
話からウサギと香もついにセックスしたと知った。そうか、最近ウサギが面白くなったのはDのせいじゃない、香とセックスしたからなんだ。
漫才グランプリに出場することになったウサギオイシ。絶対勝ちたいオイシはバーにいたDを無理矢理非常階段に引っ張り、セックスした。
ウサギオイシはグランプリは手が届かなかったが、審査員特別賞はもらった。
「いつ解散発表する?」と聞くオイシにウサギは「まだや、もう少し落ち着いてからや」と曖昧にした。夜の公園で酔っぱらったウサギにオイシはキスをした。


「のんけ」という映画があってその「2」というタイトルだが話に全くつながりなし。佐賀照彦が主演というだけの共通点。
前作は誰にでも共感できるような内容だったが、今回は漫才の相方に恋してしまった漫才師の話で設定が特殊。さらに両親が芸人というますます特殊な設定で、あまり話に普遍性を感じない。

だからこの映画に「のんけ」とつけられるのは違和感がある。
他の、たとえば「ナニワ漫才道」みたいな漫才師の話っぽいタイトルだったらもっと印象が違ったかも?

そんな感じで全体的にいい印象がないのだが、最後の方でビルの非常階段での佐賀照彦の絡みのシーンはエロくてよかったと思う。
佐賀さんは90年代ゲイ映画のアイドル的存在だなあ、と改めて思った。






僕らのラプソディ


日時 2018年10月6日17:40〜 
場所 光音座1
監督 関根和美
製作 大蔵映画


何でも屋「ドリーム商会」をやっているアニキとケン。しかし仕事はさっぱりで今日も年寄りが落とした物を探して排水溝をさらっていたが、仕事するのはケンだけ。不満がつのったケンはついに飛び出してしまう。
もともとはケンが少年院から出てきて行くところがなくて困っているところをジュンに拾われたのだった。
今夜は仕方なく売り専が立つ公園に行くケン。ある男に声をかけられ、迷った末について行く。しかし男はドSで鞭で打たれ、縛られた。逆らおうとすると「この写真の女を見ろ。逆らうとこうなる」と写真を男は握りつぶす。
翌朝、アニキの元に戻ったケンだったが、買ってきた焼き芋を包んでいた新聞紙の記事を読んで驚いた。夕べの写真の女は有名なデザイナーのファッションブランド「タカナシ」の娘で誘拐された疑いがあるという記事だった。
「これは金になる!」とアニキは行って「タカナシ」の女社長の元へ。
「あなたの娘さんの居所が分かるかも知れない」と金をせびった。とりあえず支度金として10万円。ケンはそのドS男に携帯電話の番号を教えてから、かかってきたらこっちのもんだ。
公園でまたドS男に会おうと張っていたら男たちに拉致され「お嬢さんのことは忘れろ!」と言われる。
「俺たちがお嬢さんのことを知ってるのはあんただけだ。どういうつもりだ?」と女社長を問いつめるが、しらばっくれる。
ついにドS男から電話があった。会ってみて話を聞いてみるとお嬢さんはドS男の元にいた。だが事情は誘拐ではなかった。
娘にとって女社長はデザイナーである父の再婚相手で会社を乗っ取ったというのだ。今は痴呆が始まった父だが、これを切り札にして株主総会で実権を取り戻す予定だという。そのために身を隠したのだが、情報を集めるために女社長が「誘拐されたのか?」という嘘の記事をスポーツ紙に書かせたのだった。
女社長と娘が会った。しかしあっさり女社長は負けを認めた。実は会社は倒産して自己破産したのだった。株券も今はただの紙屑だ。
娘に残ったのは痴呆になった父親だけだ。
翌朝、娘は父親をケンたちの元に残してどこかへ行ってしまった。


話は最後まで書いた。
話が最初はもたつくが、「自分を買った男が誘拐犯かも?」という展開のアイデアは面白い。ここはもっと早めに「有名ブランドの社長の娘が誘拐されている」というのを出せばよかったかも知れない。

あと「女社長が自己破産した」っていうのも伏線なしでやると単なる唐突でしかないと思う。
それと「痴呆の父親を残して娘はどこかへ行った」というオチも後味が悪すぎ。主人公は一攫千金を夢見たが、結局はだめだった、というオチは定番だが、痴呆の父親が残されるというのは笑えない。

最初のアイデアは面白かったが、シナリオをもう少し工夫すればもっと面白かったかも?

助監督に今をときめく竹洞哲也と城定定夫が並んでるのは貴重だと思う。