2019年7月

   
パラダイス・ネクスト 浜の記憶 花は咲くか 平成風俗史 あの時もキミはエロかった
義母狂い 夫、義父、息子・・・ 桃尻パラダイス
いんらん昇天
アルキメデスの大戦 テレマークの要塞
ひだまりが聴こえる アイアン・スカイ/第三帝国の逆襲 同棲時代
―今日子と次郎―
背くらべ
渚のファンタジー 最短距離は回りくどくて、
<noir>
最短距離は回りくどくて、
<blanc>
警視庁物語 十五才の女

パラダイス・ネクスト


日時 2019年7月28日14:35〜 
場所 新宿武蔵野館・シアター1
監督 半野喜弘


台北で暮らす日本人、島(豊川悦司)。彼は地元のやくざのガオの元でひっそりと生きていた。何かの事件で姿を隠すことになったようだ。
ある日、食事をしている時に牧野(妻夫木聡)という日本人が話しかけてくる。「俺のこと覚えていない?俺もあのパーティにいたんだけど」
島は自分の親分の加藤(大鷹明良)に「この男を殺せ」と牧野の写真を見せられる。その頃、牧野は島の部屋にいついていた。
結局島と牧野はガオの助けで台北を離れる。ガオは田舎に家を用意してくれていたが、その家にはすでにサラ金から追われて逃げている親娘が住んでいた。仕方なくその家を出る二人。途中で立ち寄ったバーに少し日本語が話せる台湾の女性シャオエンがいた。彼女の家は大きく、周りが「泊めてやれ」というので仕方なく二人を泊めるシャオエン。
壊れていたシャオエンの家にあったセドリックを直す島。その車を「今月のラッキーカラー」と言って青に塗り直すシャオエン。
「3人で出かけよう」と海辺の町へドライブする3人だったが。


妻夫木聡の出演作は必ず観るので、本作もそれで鑑賞。しかしトヨエツとダブル主演だが、話題になってる気配がない。
正直(私には)面白くないもん。

説明的なせりふはなく、イメージの回想シーンがあるばかりなので、話がよく見えない。そもそも島が責任を感じてる事件とは何なのか?
どうやら誰かを死なせたらしい、その人は女性でガオの娘なのか。
その死んだのが「あるパーティ」なのだ。
加藤は途中でガオに殺される。最後に牧野が「俺が彼女に毒を飲ませた」と自白する。
んで理不尽にもシャオエンはガオの手下に殺される。

ポスターなどには「ノワールサスペンス」とか書いてあるけど、まるでノワールもサスペンスも感じない。暗黒街が舞台ならなんでもノワールって訳じゃなかろう。
どうもこういうエンタメぶったアート系の映画は苦手である。
奇しくも同じ劇場の同じスクリーンでみた「アイ・カム・ウイズ・ザ・レイン」を思い出す(タイトル違ったっけ?木村拓哉とジョシュ・ハートネットとイ・ビョンホンが共演した映画)。
あれも探偵映画っぽい要素だったけど、何かわからん映画だったなあ。

映像はきれいでワンカットワンカットが「画」として決まっている。しかし映画はお話で見せてほしいし(事件の真相とか、追っ手とのチェイスとか、意外な犯人とか、裏切りとか)、ノワールと言われるとそういうのを期待しちゃう。
(こっちが勝手に期待するのが悪いとも言えますが)

映像がきれいすぎて逆に俳優が暗かったりで役者を観るのを楽しみに行くとはずされる。
何度も同じことを言うけど、私には合わない映画でした。








浜の記憶


日時 2019年7月28日10:30〜 
場所 新宿k's cinema
監督 大嶋 拓


鎌倉の海岸で地引き網の漁師を営む93歳の繁田(加藤茂雄)はある日、由希(宮崎勇希)という女の子と知り合う。繁田のことを「写真映えする」と写真撮ったことがきっかけだった。
別の日、また由希と出会う繁田。しかし日に当たりすぎたせいか海岸で倒れてしまう。繁田を自宅まで運ぶ由希。由希は昨年亡くなった自分の祖父と繁田を重ね合わせて繁田の笑顔を見ると安らぐという。由希は両親が離婚し、祖父と暮らしている時間が長かったのだ。
鎌倉の神社仏閣を一緒に見て回る由希と繁田。由希は写真を勉強したいというが、写真の専門学校に通うにはお金が必要だ。
繁田は「200万円ぐらいなら私が貸そう」という。
繁田の家に由希がいるとき、繁田の東京で暮らしている実の娘・智子(渡辺梓)がやってきた。智子は由希が繁田から金をだまし取ろうとしているのではないかと疑う。


東宝の大部屋俳優で今では鎌倉で漁師もしている加藤茂雄さんの初主演作。53分の中篇映画だ。
自主映画なので、スタッフも少なく、脚本、監督、撮影、編集は大嶋拓。従って技術的にはちょっと残念。画質がドキュメンタリー映画で見るような画質だったが、それはたぶんカメラによりものだろう。
録音班はいないので、一部アフレコ、ほとんどがカメラにつけたマイクで同録だろう。
こういう自主映画でも一般劇場で公開される時代である。

加藤さんはベテランの貫禄だが、相手役の宮崎勇希がすごくいい。
あんな子に「おじさんの笑顔すてきですね」とかいわれたら200万ぐらい出す気にさせる。

由希は祖父の形見、というニコンのカメラを使っていて、フィルムを巻き上げる動作をしてるのでフィルムカメラかと思ったら、最後にそれは出てくる。
娘の智子が「どういうつもり?」と由希を問いつめるシーンがあるが、彼女のカメラを手にしてふたを開けてフィルムが入ってないことを示す。
彼女が実は撮影していなかったことを一瞬でわからせる演出だが、デジカメだとこうはいかない。うまい方法だと思う。

彼女は「最初は写真を撮っていたが、残るとかえってつらくなる。だから心に焼き付けておく」という。矛盾してるようだが何となくわかる。
最近写真を撮ることはあっても見返すことはないからなあ。

結局彼女はお金を受け取らず、「2年間北海道でバイトしてお金を貯める。2年ぐらいすぐだよ」という。
このシーンは切ない。彼女にとっては2年ぐらい、だが、93歳の繁田に取っては2年後はいないかも知れない。

彼女が金を持ち逃げするラストもあるが(松本清張っぽいけど)、それをしないで淡い恋とも違う心の交流を描いた作品で好感を持てた。

本日は加藤さんのトークイベント付き。特撮とか本多監督の話が中心になるはずだったが、時間が15分ぐらいしかないので、ものすごい残念だった。また別の機会にゆっくり伺いたいと思う。




花は咲くか


日時 2019年7月28日 
場所 TSUTAYA宅配レンタルDVD
監督 谷本佳織
製作 平成29年(2017年)


水川蓉一(渡邉剣)は幼い頃両親が事故で亡くなった。しかし母親は重い病気であり、前日に遺書を書いたいたことから「夫婦二人で自殺したのでは?」と親戚でも噂になっていた。そんな蓉一も今は美大に通う19歳。
水川家は立派な日本家屋で広かったため、近くの美大生を下宿させていた。両親亡き後、両親の友人がその下宿の管理人となってくれていた。
ある日。広告代理店の桜井和明(天野浩成)が広告の撮影のため、水川家を訪れた。画家の父の血を引く蓉一も美大に通っていたが、いつも抽象画を描き、周りからは何を描いてるか分からないと思われていた。
しかし桜井は蓉一が描く絵を「花を描いているんだね」と言い当て、蓉一を驚かせる。その日から蓉一は桜井を意識し始める。
そんな時、美大の同級生、藤本がやたらと話しかけてきた。藤本は「俺は蓉一と友達になりたい」と言う。


BL映画を見たくてTSUTAYA宅配レンタルで検索してひっかかったので観た映画。東映ビデオ製作配給作品。BLものには結構東映が多い。
原作はコミック。

正直、あんまり面白くない。
作中でも言われてるけど、蓉一は両親の死後、心を閉ざし誰とも交わろうとしない。会話は必要最小限度。
めんどくさい奴である。
そんな蓉一に何故桜井は惹かれたか?もともとゲイ、という設定があるならともかく、別にそういう訳でもなく、普通のサラリーマンが少年に惹かれていく、という展開をやりたかったのだろう。
そういうのってなさそうだけどね。
女子向けのBLでは「あり」なのだろう。

でまたさらに藤本というのが絡んでくるが、これがやたらうざい。
観てるこっちが引いてしまうから、実際にいたらめんどくさいだろう。こういうキャラクターは私には書けないなあ。

水川は来年の春には大阪転勤が決まっている。それならそれであと半年の間に十分関係を深めれば良さそうだが(物語の始まりは初夏なので)、ずるずると踏み出さない。
「俺は30過ぎでもう大人だから」という理由だが、30過ぎならまだ大丈夫だよ。50過ぎたらさすがに逡巡するのもわかるけど。
だからいっそ50過ぎの大人と少年の恋も思うけど。

話も夏から(秋の描写はないけど)、コートを着ている冬があって、春がくる。半年の長さの割には物語の展開が少ない。

そして体の接触も着衣で抱き合うのとキスだけ。
エロドラマじゃないから裸にはならないけど、少しはなって欲しかったなあ。
タクミくんだって少しは体の接触(セックス)はあったよ。
ゲイ映画ほどじゃなくても少しは欲しいよなあ、そういうの。

という感じ物足りなさ、不満が残る作品でした。






平成風俗史 あの時もキミはエロかった


日時 2019年7月27日12:21〜 
場所 上野オークラ劇場
監督 竹洞哲也
製作 OP PICTURES


千景は以前は漫画家を目指していたが、今は夫と結婚し専業主婦。夫婦仲良くセックスの日々。昭和が終わって平成が始まったときもセックスした。アパートの隣に住む正太(櫻井拓也)はAVビデオを見ながらオナニーの日々。セックスするためにテレクラに電話するがいつも空振り。
いつも駅前で待ち合わせをしている正太を「テレクラ地蔵」と呼んでいるのは正太の隣に住むサツキだった。
サツキは会社の先輩、アヤにいつも昼食につきあわされてうんざりしてた。「サツキにはこれ似合うよ、買いなよ」と無理強いされて買い物を続けるうちに買い物中毒になってカード地獄に落ちてしまう。
アヤは結婚、サツキは会社を辞めて援交を始めるが妊娠させられ、借金が増えた。
正太もテレクラやQ2ダイヤルを試したがまったく成功しない。気が付けば30も過ぎた。いまさらフリーターでもなかろうと就職を考える。
サツキは新しい会社で会社の金を横領し、逮捕された。
千景夫婦は子供が出来たが、千景は子育てで忙しくしている時に自分の体調不良を単なる疲れ、と思っているうちにガンで亡くなった。
千景の子供、朋子は20歳になってアイドルを目指す。恋人がいて迷うが何とか合格。しかし数年後、アイドルを辞め結婚した。
平成の30年は終わる。


監督:竹洞哲也、脚本:当方ボーカル(小松公典)コンビの新作。
令和元年にふさわしい平成の30年を同じアパートに住む3世帯を軸に描いていく。

写ってる小道具もテレビデオとかVHSテープとか細部も出来るだけ平成初期になっている。
平成が始まった頃はバブル期で、まだまだ日本経済は順調だった。
ジュリアナ東京で遊ぶ人もいたが、それに乗れない人もいた。テレクラもQ2も流行ったけど、それに乗れない人もいた。援助交際をして失敗した人もいた。

そんな世相や風俗を折り込みながら「時代に乗れなかった人々」の支店から描いていく。
後半、サツキは逮捕、でも平成のうちに出てこれなかったのかな?
正太は2000年代頃に就職を決意したがうまく就職出来たろうか?
アイドルを目指した朋子も結局結婚した。

時代を描くとなると、つい時代のピークに乗った人の話になりがち。しかし本作では「そうは行かなかった」人たちを描き出し、地に足がついた話でよかったと思う。
OPフェスで上映されたらもう1回観てもいいな。








義母狂い 夫、義父、息子・・・


日時 2019年7月27日11:20〜 
場所 上野オークラ劇場
監督 新田 栄
製作 エクセス


愛子(遠藤陽子)は義弘(なかみつせいじ)と再婚した。夫は出張中でも電話をかけてきて「テレフォンセックスしよう」といい、愛子も楽しんでいた。
そんな様子を実は義父の忠夫に覗かれていた。ある日警察から電話があり忠夫が痴漢で捕まったという。もらい下げに行く愛子。その帰り道、「もう一度女性のアソコが見たい」と忠夫は愛子に頼む。
「見るだけですよ」というが結局忠夫は挿入までしてしまう。
義理の息子の高校生のノブヒコは近所に彼女がいたが、愛子が気になってしようがない。勉強も手が着かないので愛子が心配すると「お母さんとやりたくて仕方ないんだ」と告白される。一度は拒否した愛子だが、ノブヒコが風呂場で自分の名前を呼びながらオナニーしているのを見てつい許してしまう。
夫から電話があったが、テレフォンセックスをしながら夫は部下のOL(林由美香)とセックスしていた。
ある日、忠夫が外出から帰ってくると愛子がいない。手紙が置いてあったが、その手紙の醤油をこぼしてしまい、一部が読めない。
がその手紙に書いてあったのは「心配しないでください」「帰りません」などの文字。愛子が家出したと思い、ノブヒコと忠夫は近所を探し回るのだが。


新田栄監督作品。
再婚した妻が夫の留守中に義父や義理の息子と関係を持つ、って典型的な官能小説にありそうな話でいいじゃないですか。
ひねりもないとかいう気もするけど、これほど直球の話もいいと思います。だってピンク映画なんだから。

さらに妻の乱れだけでなく夫が出張先で浮気をしているというサービス付き。この林由美香だけど、出てきたときは赤い縄で縛られた姿で登場というサービス精神には脱帽である。

面白い面白くないかで言えば話は無茶だし面白くないのだが、王道の展開が逆によかったと思う。

でも女優がほとんど遠藤陽子だけしか出ておらず(林由美香はゲスト程度)、この遠藤さんがどう見てもただのおばさんでまるで魅力を感じない。
それも含めて「昔の王道のピンク映画」って感じでした。





桃尻パラダイス いんらん昇天


日時 2019年7月27日10:20〜 
場所 上野オークラ劇場
監督 渡邊元嗣
製作 OP映画


裕二(なかみつせいじ)の出張中に妻の若菜と上司の部長が情事を重ねていた。そこへ裕二が帰ってきたが、逆に「君なんか地方へ転勤させることが出来る」と言われ追い出されてしまう。
缶ビール片手に夜の町をふらついていると点から女の子がやってきた。彼女は星からやってきたという。星子と彼女を名付けた裕二は彼女に誘われるままにホテルへ。彼女は星の世界から地球のガイドブックを作るためにやってきたという。
数日して裕二にはタイ支店への転勤が命じられる。再び星子と町でばったり会った裕二はホテルへ。
そこでもし若菜と結婚してなかったら、という別の世界を星子の力で見せて貰う。
結婚前、裕二にはミユキという自分に好意を持ってくれているOLがいた。


上野オークラに竹洞監督の新作を観にやってきた。朝からピンク映画である。
「もし今の妻と結婚しなかったら」というIFの世界の話なのだが、IFの世界を見せたり、3年前にタイプスリップしたり、交通事故にあってしまうミユキを助けようとしたり、いろいろあってまともに考えると話が非常にややこしい。

しかし逆にあまり深く考えずに過去とかIFとか適当に今繰り広げられ世界だけを楽しむといい。
でもそれを見せてくれるのが宇宙人の女の子、という「その必然性があるか?」という感じもするのだが、脚本の整理もなく、整理する気もなく話が進んでいく。

そんな話の整合性を考えちゃいけないんですよね。
最後はミユキが交通事故に会うのを助ける。まあハッピーエンド。






アルキメデスの大戦


日時 2019年7月26日18:10〜 
場所 TOHOシネマズ新宿・スクリーン3
監督 山崎 貴


昭和20年4月、戦艦大和は米軍の攻撃で沈没した。
その12年前、帝国海軍では老朽化で引退する戦艦金剛の後継をどうするかで会議が行われていた。山本五十六(舘ひろし)を永野修身(國村隼)は空母の建造を主張、しかし嶋村繁太郎(橋爪功)は「日本の象徴となるような巨大戦艦」を主張する。
空母建造を願う山本五十六たちは巨大戦艦の建造費の見積もりが空母より安いことに不信を感じる。その金額の不正を暴くことが出来れば、戦艦建造計画はつぶれる。
料亭で知り合った櫂直(かい・ただし 菅田将暉)が数学の天才と知り、なんとか口説き落とし主計少佐に任官させ、見積もりを精査させる。
しかし基礎となる資料はなにもない。
「とりあえず戦艦を見に行こう」そういう櫂は田中少尉(柄本佑)を伴って横須賀の長門に向かう。


春頃からチラシがおかれ楽しみにしていた戦争大作。
だったのだが、ちょっと期待していた映画とは違ったというのが本音。

冒頭、大和の沈没シーンから始まる。
前日の新聞の紹介記事などで「冒頭に大和が沈没」と知っていたので、ネタバレされていた。これがフルCGなのだが、どうにも映像の緻密さにかける。
これがなんかハイビジョンテレビでDVD(SD画質)を観てるような荒い映像。いつも予告編しか観てないけど、アメリカのマーベルヒーローものの映像と比べると見劣りは否めない。

で本筋に入ってくのだが、櫂少佐は大和の設計図がないなら長門を実寸して設計図を作る。そして何とか図面を起こし、それを元に見積もりを作ろうとするが、材料費、人件費の単価が分からない。

とここで櫂が以前書生をしていた家のお嬢様(このお嬢様と心が通じたこともその家を追い出されるきっかけになるのだが)の協力で大阪の造船会社から知ることが出来る。ところが決定会議が「明日の11時」と連絡が入り・・・という展開。
この辺の展開はもう戦争映画というよりビジネス映画でまるで池井戸潤原作作品のような展開で数学はあまり関係なく、戦争映画っぽくない。
だから面白いことは面白いのだが戦争映画としての楽しみはない。
ぶっちゃけちょっとがっかり。

なんとか会議の席で巨大戦艦の見積もりの不正のからくりを暴いたものの、戦艦派の平山造船中将(田中泯)は「戦艦の金額からどんな戦艦を作ろうとしてるかばれないために嘘の価格を出した」と詭弁を言う。

しかし櫂が作った図面を見て台風時の構造計算の違いを知る平山。自分の設計が間違っていたと知り、案を撤回する。
(パンフによると結局この時の建造計画は中止になったが、巨大戦艦案は別の機会になったという)

しばらくして、平山は櫂を呼び、「君は一度巨大戦艦の図面を作った。この美しい船を造ってみたいとは思わないか?」と言われ、櫂は逡巡するというシーンでフェードアウト。
ここでエンドクレジットかと思ったが、その後大和が完成し、山本司令長官が乗り込むシーンで終わる。

櫂は「こんな象徴のようなものを作ったら、逆に戦意をあおってしまう」と反対する。平山は「だからこそだ。このままで行けば日本はアメリカと戦争になる。しかし国力から考えて負ける。その時に『これがなくなったら戦意を亡くす』という象徴が必要なんだ」という激論を交わす。

あれ、戦艦大和の存在を日本国民が知っているという前提だが「大和の存在は軍事機密であったので多くの日本人は知らなかった」、という話を聞いたことがある。
それが正しければこの平山中将の論は成り立たない。
それに大和が撃沈されても沖縄が陥落してもまだ日本は降伏しなかった。だから平山さんのおっしゃってることは全く結果的には違っていたことになる。

だから戦争映画ではなく、ビジネス映画の様相だし、基本的認識に疑義を感じるし、CGはいまいちだし、そうにも「残念な」映画なのである。
原作はどうであれ、やはりクライマックスは櫂少佐も最後に大和特攻に参加し、大和と共に死んでいかなければ盛り上がらないんじゃないかなあ。
そうしないのでものすごい消化不良感が残った。残念。

舘ひろしの山本五十六は意外によかった。あと田中泯は圧巻である。
さすがだった。








テレマークの要塞


日時 2019年7月21日 
場所 ザ・シネマ(録画)
監督 アンソニー・マン
製作 1965年(昭和40年)


1942年、ナチスドイツ占領下のノルウエー。
テレマークの化学工場ではベルリンから重水の増産の指示が届いていた。工場の責任者はレジスタンスのクヌート(リチャード・ハリス)にマイクロフィルムを渡した。そのフィルムを持ってオスロ大学のベイダセン博士(カーク・ダグラス)を訪ねる。ベイダセンとクヌートはそのフィルムを持ってイギリスに向かう。テレマークの化学工場では重水を大量に生産しており、それは原爆の製造に必要なものだ。ナチスによる原爆製造を阻止するためにはこの重水の生産をストップしなければならない。
クヌートとベイダセンはノルウエーに戻った。空爆を主張するベイダセンだったが、イギリス軍は破壊部隊を派遣することに。しかし部隊が乗った輸送機は撃墜された。クヌートとベイダセンはやむなく10名のレジスタンスで破壊に向かう。
工場の設備を爆破したが、ドイツはベルリンから設備を運び2週間で再開。続いて空爆を行ったが破壊には至らず、重水生産は続けられた。
その重水を船で運ぶと聞き、最後の作戦として重水を運ぶフェリーを爆破することにした。


60年代の戦争アクション。「ナバロンの要塞」のようなミッションものだ。「テレマークの要塞」というが別に要塞ではなく目標は化学工場。

始まって1時間で化学工場に進入、爆破させる。おいおい話が終わっちゃったよ、と思っていると直ちに工場再開。そもそも工場内に簡単に進入しすぎ。

その後空爆となるのだが、最初「地元の人が犠牲になるじゃないか」「それよりももっと多くの人々を救うためだ」という議論をしたのに、1回失敗したからかクヌートもあっさり空爆を認めてしまう。
ちょっとその辺、映画として腰が砕けたな。

ノルウエー人の中には自分の妻を助けるためにナチに加担する市民とかその辺の葛藤のドラマはまああるんだけど。

で最後のフェリー爆破も船にあっさり進入できすぎ。
この映画、全体的にナチが弱い、というか敵に強力なキャラクターがいないのが残念。敵が強くないとやはり盛り上がらない。

でもラストの爆弾を仕掛けたフェリーに死んだ仲間の妻と赤ん坊が乗ってしまい、それを何とか助けようとするあたりは、クライマックスとして多いに盛り上がった。

全体的に地味さを感じる戦争アクションだったが、それなりに面白く観た。





ひだまりが聴こえる


日時 2019年7月21日 
場所 TSUTAYA宅配レンタルDVD
監督 上条大輔
製作 平成29年(2017年)


中学3年生の時の病気が原因で難聴になった航平(多和田秀弥)は大学生になった今でも人とは距離を置いていた。全く聞こえないわけではないが、友人の声が聞きづらく会話に参加できないことから人と話すのを避けるようになっていたのだ。
そんな時明るく声の大きい太一(小野寺晃良)と知り合う。お金が無くて困っていた太一にその明るさに負けて弁当をあげたことがきっかけだった。
航平のためにノートテイカーという授業のノートを取ることを始める太一。報酬は弁当だったが、料理教室を営む航平の母(高島礼子)の弁当はうまく、その明るい表情に航平は徐々に心を開いていく。
ある日、太一の友人から、その友人の従姉妹美穂が太一に会いたいと連絡があった。期待していったが、実は美穂はイケメンの航平が目当てだった。
航平が耳が悪いと聞くと美穂は「今読んでいる恋愛小説観たい!」というのでその無神経さについ怒ってしまう。
太一は航平にも美穂のことは内緒にしていたが、航平は逆に太一が美穂が好きなのだと思ってしまう。遠慮して自分から連絡を絶つ航平。しかし逆に太一は不思議がり、二人の仲はこじれてしまう。


若手イケメンが主演のBLもので宅配レンタルを検索して見つけた映画。
もう若手イケメンが出てればそれだけで楽しめるのだ。
でも私自身はこういう肉体的ハンデを恋愛に絡めるのは苦手である。

理由はこういう内容って当事者からするとどうなんだろう?と疑問を感じてしまうのだ。こういう内容で作ってるけど、当事者からするとめちゃくちゃ迷惑になってないか?

それは作者(コミックが原作らしい)も気づいているのか、美穂という女の子が「今はまってる恋愛小説が難聴の男性に恋する話で主人公が彼のために何かしようとするがうまく行かなくてもどかしい想いをしてるの。まるで小説みたい!」というシーンがある。
これは作者が自責の念で書いたシーンなのだろうか?

それを言ったらBL自体も女性ファンにとってはエンタメだけど、当のゲイからすると生活だからなあ。まあその辺はあまり突っ込んではかわいそうか。

疎遠になってしまった航平を探しだし、「なんで避けるんだよ!」と攻める太一。そこで「お前自分の気持ちをちゃんと話せよ」とか言われて、唐突に太一にキスする航平。
その前に太一に想いを寄せるシーンも特にないので、正直唐突である。
それまでは友人のいなかった航平にとって久しぶりの友人、という感じでの気持ちしか出てなかったからね。
だからBLものというには淡すぎる。

太一の小野寺晃良は神木隆之介と菅田将暉をミックスした感じのイケメンというか親しみある感じ。航平の多和田秀弥はまあイケメン。
私としては親しみのある感じの小野寺の方が印象に残った。






アイアン・スカイ/第三帝国の逆襲


日時 2019年7月20日21:40〜 
場所 TOHOシネマズ日比谷・スクリーン3
監督 ティモ・ヴオレンソラ


2018年、月面のナチの残党と地球は全面戦争になり、核爆発により人類は地表に住めなくなった。一部の人間は月面に逃げ、かつてナチスが使っていた基地に住んでいた。
それから30年の2047年。月面基地の設備も古くなり、エネルギーも底を突きかけ、将来への希望がなかった。
そんな時、地球から一機の宇宙船がやってきた。彼らは旧ロシアからやってきたという。操縦士はサーシャ。
月面基地のリーダーの娘で各部の修理を行っているオビ(ララ・ロッシ)は彼らがやってきてから怪しい人影を見かけるようになる。
問いつめてみると彼はかつての月面総統だったウォルフガングだった。彼の話では地球の恐竜時代に地球にたどり着いた異星人ヴリル族が地球の猿を進化させ、人類を作り、様々な指導者に変身して人類を導いてきたというのだ。
地球は実は空洞になっており、その中にあるエネルギー源「ヴリル・ヤー
」を使えば人類は生き残れるというのだ。
オビは例のロシアからやってきた宇宙船でサーシャや月面の宗教、ジョブズ教の信者たちと地球に向かう。


だいぶ前に「月面にナチスが基地を作っていた!」というトンデモな設定のSFコメディの続編。
前作はそこそこ笑った覚えがあるし、2作目というのでとりあえず観てみた。

うーんでも今回はあまり面白くなかった。
日本人には分からないパロディネタがあったのかも知れない。
それ第一、前作ではキモだった「ナチが月面で生きていた」というインパクトが薄れ、今度は先住異星人がいて・・という展開。
ナチが月で生きていたというアイロニーがなくなってしまったのだな。

そして今度は空洞の地球ではまだ恐竜が生息していて、風呂敷を広げすぎてどんどん脱線してる気がする。
だから焦点が定まらなくなってしまった感じが否めない。

主人公たちを助けるマッチョな兵士が登場し、周りはオビの恋人、と思っていたが、ラストで彼は「俺は筋肉ムキムキが好きで・・・」とゲイっぽい発言をしてオチとなる。そうですか、ゲイネタですか。

オビたちは「ヴリル・ヤー」を入手して、地球や月を捨てて約80年かけて火星への旅にでる。
映画では画面は火星のアップになり、旧ソ連のマークが火星の表面に描かれていた、というオチ。
そうですか、火星にはソ連の残党がいるのですね。

風呂敷を広げすぎて、散漫になった感じの映画でした。







同棲時代―今日子と次郎―


日時 2019年7月20日14:00〜 
場所 シネマ・ノヴェチェント
監督 山根成之
製作 昭和48年(1973年)


今日子(由美かおる)は小さな広告会社で働くが、デザイン学校時代の友人・次郎(仲雅美)と同棲を始める。
広告会社の社長からプロポーズされたり、今日子の高校時代の友人が「花粉病で結婚できない体」と悩みを打ち明けにきたり、アパートの隣の夫婦の五十嵐澄江(ひし美ゆり子)が肺病のため亡くなった。五十嵐夫婦も同棲の上に結婚したのだった。
やがて次郎の子供を妊娠する今日子。悩んだ末に子供を堕ろす決意をする今日子。自分を想ってくれる今日子を次郎は抱きしめるのだった。


4月14日公開。GW作品だ。この後もGWには山根監督の郷ひろみ主演映画が公開されたり、70年代の松竹のGWは青春映画だったのだな。
この映画が公開された頃はまだ小学生で、映画自体は観ていない。しかし由美かおるが後ろ姿で全裸で立っているポスター(お尻は丸見え、体を90度横にひねっているので、おっぱいが横からチラリと見える)はよく覚えている。
観たいとは思っていたが、なかなか機会がなく、本日に至った次第。

とにかく今から考えると「70年代だなあ」と思える描写のオンパレード。
先ほどのポスターからしてそう。
日活のロマンポルノのポスターじゃないのに、美女の全裸のポスターですよ。小学生には刺激が強かったですよ。ああいうのが平気で町に貼ってあったからなあ。

冒頭、まだABCマートではなく、ワシントン靴店があった頃の新宿東口。今のアルタ前の交差点で次郎と今日子は再会。
飲みに行ってそのままホテルにゴールイン。で、スクリーンに赤い丸い染みが写され、今日子が処女だったと表現される。
こんな表現今時しないよ。

ここに限らず、本作ではジャンプカットがあったり、ストップモーションが多用されたり、マルチスクリーンになったり、画面の一部が黒くトリミングされて逆にトリミングされなかったところが次のカットで出てきたり、なんかこう意欲的なカットが続く。
これは山根監督の第1回作品だからこその意欲なのか?それとも原作の劇画を意識してのカットなのかな?

そして社長はいやらしい目で今日子を見つめ昼食に誘い、いきなり「今夜僕の母に会ってほしい」と言い出す。「変なプロポーズの仕方になっちゃったね」というけど、あんた今ならパワハラだよ?

そして今日子と次郎が日曜日に「どこにも行く気がしない」と言ってセックスしようとすると訪ねてきたのは今日子の高校時代の友人。
(書き忘れたけど最初にホテルに誘ったのは今日子だし、同棲しようといったのも今日子。今日子はかなり積極的である)
この友人が「私は花粉病(ママ)で結婚出来ない」と言い出す。
当時は花粉病は結婚出来ないような重病と思われていたのか。
でも80年代末ぐらいから今と同じような話題のなり方だったけど。

それで今日子が布団で寝てる前で結婚出来ないのを不憫に思った次郎は彼女にキスをする。かなり悪い男だが、まあ若いうちはその位のことはするか。

またアパートの隣に住む澄江さんは肺に病気を持つ。医者(穂積隆信)は「入院しなきゃ死ぬよ」と言うのにその前で堂々とタバコを吸う。いまじゃ考えられないよ。
そして同棲の末にやっと結婚した夫婦だそうだが、相手が子供をほしがらず、三度も堕胎したとか。だから肺病とか分かると離婚されかねないので夫には病気を内緒にしたいと。その夜夫に捨てられたくないばかりに「あなたのやりたがってることをしていい」といい、その夫に縛られ、鞭で打たれる。
なんかこう頭クラクラするよ。

んでいつもコンドームをしてるんだけど、「同棲して1年目の記念日」(女性というのはこういう記念日にこだわるらしいのは今も同じ)に急に仕事の打ち合わせ(という名の飲み)が入って次郎は遅く帰る。喧嘩になるが、次郎は指輪を持っていたのであっさり仲直り。
そしてゴムなしでセックス。そして妊娠。

その頃、どうなっていたかと思っていた社長のプロポーズについて社長の方が「母がもう危ないんだ。フリだけでもいいから母に会ってくれ」と言われてついに会いに行く。しかし亡くなったあとだったという展開。

妊娠したが次郎は「俺は将来海外で勉強したいとかの夢があるんだ。子供なんて邪魔だ!シングルマザーなんて今流行だろ!」と言い放つ。
こんな男捨てちゃえよ、とも思うのだが、そこは惚れた弱みで今日子は堕胎する。一応最後は抱き合ってハッピーエンド風なんだけどね。

とにかく二人を観てると「このままだらだらと暮らしていきたい」と言ったりして、「今がよければそれでいい」的思考で、同棲というのも結婚のように縛られないが一緒に暮らしたいという無責任というか自由さがあるわけだけど、その裏腹にどこか幸せになれない感じがあって、それが「切ないが美しい」という退廃さを賞賛しているように見える。

それがよくないと言ってるのではなく、そういうのが受ける時代だったという時代を表現している映画だったと思う。
決して嫌いではない。ブルーレイとかほしいと思う。

出演では由美かおるがとにかく美しい。それで結構他の映画でも脱いでるし(「エスパイ」とか)小柄だが大きく形のよいおっぱいをしている。
後の「水戸黄門」の出演でも入浴シーンがどうとか話題になったが(私は観ていない)、まあ当時の男性陣を夢中にさせるセックスシンボルではありますね。
この由美かおる効果で続いて野村芳太郎監督で「しなの川」が公開される。そのまま松竹も由美かおるで10本ぐらい作っても良さそうだが(「男はつらいよ」のマドンナとか)なぜか松竹では2本で、小松左京に気に入られ、「エスパイ」TV版「日本沈没」に出演。
やっぱり由美かおるはいいですよ。

相手役の仲雅美。本日は仲さんのトークイベント付きだったが、今でもお元気。子供の頃、大衆演劇の世界に入り、それから歌手、歌手としてテレビに出演したところ、木下恵介アワーをやっていた木下恵介に「ドラマに出てほしい」と言われ、歌手としてデビューしようとしていくところだったので、本人は迷ったが周りに「やった方がいい」と言われ出演。
それからしばらく歌手と役者を平行して行っていく。

当時も知っていたが、時々仲雅美と沖雅也がごっちゃになりそうだった。
仲と沖は似てるし、3文字だし、真ん中に雅の字があって両方イケメンだから混同しそうになった。
仲雅美の方はイケメンだが、どこか女性的な美青年。「ベニスに死す」のビヨン・アンドルセン風な感じもすこし受けたのではないか?

ずいぶん書いたなあ。
いろいろ「トンデモ映画」みたいな書き方したけど、好きな映画です。
ブルーレイ買おうかな。








背くらべ


日時 2019年7月15日19:35〜 
場所 ラピュタ阿佐ヶ谷
監督 大槻義一
製作 昭和37年(1962年)


富士山の梺の富士吉田市。
貞夫(川津祐介)は工場で働き、母の操(乙羽信子)は近くの小さな紡績工場で働き、次男の勉を東京の大学に入れるのを夢見ていた。
しかし勉は「自分も働く」と言いだし、貞夫と喧嘩していた。貞夫には村上愛子(島かおり)という母が働く紡績工場の社長の娘とつきあっていた。愛子は「こんな町は将来がない。東京へ行きたい」と貞夫に東京に出ることを進めていた。
貞夫の先輩の向井さんは近く上司の係長が定年退職になり、今度は向井さんが係長になるものだと思っていた。しかし実際には東京の本社から赴任してきた。
貞夫も「こんな町にいたんじゃダメだ」と思う。そこへ東京のおじさん(多々良純)から工場を手伝ってほしいという手紙がやってきた。
いいきっかけと東京へ出た貞夫だったが、実際は工員たちがスト決行中で、貞夫はストライキを弾圧する立場になる。
富士吉田に戻ってくる貞夫。しかし東京の工場で出会った人が訪ねてきた。「君も弾圧なんかやらされてつらかったろう。僕たちは別の工場で働き始めたんだ。君もよかったらこないか」と誘われる。
もう東京に出るのはやめた貞夫だったが、母親から「このままではお前は東京に負けたことになる。もう一度行ってこい」という。
勉も東京の大学を目指せと言われ、二人で母を支えてもう一度一歩進む決意をする。


話は全部書いた。ラピュタ阿佐ヶ谷SP映画特集で鑑賞。同時上映の「燈台」(原作:三島由紀夫 監督:鈴木英夫)が目当てで行ったので、ピンク映画で別の映画まで見させられる気分である。

松竹マークが出て、その後のファーストカットが富士山の全景だ。意図があったかどうか分からないが、似たようなカットが続く。

どってことない松竹らしいホームドラマで見てる私は退屈。
貞夫が工場に着いてストが行われてびっくりしてるあたりでシーンは変わって富士吉田に戻ってきている。
大胆に省略したのかなと思っていたら、その後回想シーンでストの工員と対立する過程が描かれる。まあここに重点を置くところが松竹(というかこの場合は若き日の山田太一(脚本)というべきか)らしい生真面目さである。

それにしても昭和37年で安保闘争は終わっていたが、まだまだこういう運動は盛んだったのだなあ。このあと東大紛争とか起こっていくしな。
インターナショナルを歌い、労働者が団結してストライキして社長と交渉をする。
確かにこれを見れば会社(経営者)からしたら、共産主義は怖かったろうし、徹底的につぶす方向に権力側が動いたのも納得だ。国会前のデモだけではなく、会社単位で運動されたんじゃ会社なんてやっていけないよ。
そして運動はつぶれていき、現在の非正規労働が多くなり、すべては会社側が命運を握り、労働運動は壊滅した。

映画を作った側の意図とはまるで関係ない、無意識に作った時代背景を感じ、そのあたりは興味深かった。
映画そのものはあまり好きじゃないけど。

あと出演で貞夫の工員仲間で常田富士男、貞夫の恋人役で島かおり。どこかで観た人だと思ったら思い出した、「急げ!若者」で青山孝が船に乗ってる時の同僚だ。






渚のファンタジー


日時 2019年7月14日15:25〜 
場所 光音座1
監督 新倉直人
製作 OP映画


二浪で女性にもフられた吾郎(大原勝利)は海辺で落ち込んでいると神田(坂入正三)という男に声をかけられた。「これを飲んでごらん、元気がでるよ」と言われて薬を飲む吾郎。「島にある宝物を探しにきたんだ、一緒に探そう」と言われる。
森の中に入っていく二人。木々や鳥の声が聞こえてくる。神田はそれは生霊の声だという。しかしめまいがして倒れる吾郎。神田が乗ませた薬のせいだ。
森で倒れている吾郎はある男に助けられ、その男の家に連れて行かれる。
「夜の森は危ない。今夜は泊まって行きなさい」と言われ従う吾郎。
しかし男は寝ている吾郎の服を脱がせ愛撫するのだった。
夜中にまた吾郎の部屋にやってきた男だったが、奥の部屋に入っていく。
そこのベッドには別の青年がいて、男はその青年を愛撫していく。
夜中に目が覚めた吾郎は隣の部屋をのぞき見てしまい、二人の愛撫を知る。男は去っていく。青年は赤いジュースを飲み干す。それを見て「吸血鬼だ」。青年に見つかった吾郎だが、翌朝、助けてくれた男に見送られて家を出る。
帰り道、吾郎は海岸で倒れていた別の青年に出会う。男の名はテルキ。テルキは神田を知っているようだ。ここで絡み合う吾郎とテルキ。終わった後、テルキが汗をかいて具合が悪そうなので、「薬を買ってくる」とその場を離れる。そのころ、夕べの青年は「ここに居たらダメになる」と逃げ出す。
神田と出会う吾郎。神田がテルキとその弟のユウキを探していると知る。吾郎が出会った青年はユウキだ。適当に神田を巻いて再び町に向かう。
しかしその間に神田はテルキを発見し、自分の宿に連れて行く。町で自分を助けてくれた男に出会う吾郎。ユウキとテルキは血液の病気だと教えられる。
神田はテルキと部屋で絡み合う。吾郎は島中の旅館に電話して吾郎を探す。やっと見つけた神田のいる旅館に向かう吾郎。そこで二人が全裸で居るのを見る。神田の首筋には二つの歯形があり、テルキも吸血鬼と確信する吾郎。
泊まって行けと言われてそのまま部屋に泊まる吾郎。
翌朝、テルキと海岸に行く吾郎。「僕の血を吸っていいよ」と自分の首筋を出す吾郎。そこへ神田がやってきてテルキを連れて行く。
「脱走吸血鬼か」吾郎はつぶやくのだった。


話は全部書いた。
新倉直人(小林悟)だから別に期待はしていないが、素人以下の話である。
伏線とかあって最後に解決するのが普通だが、伏線がめちゃくちゃ。

話も撮影しながら書いたんじゃないか?と思えるような出来。

野暮を承知でつっこむとまず神田が何故吾郎に声をかけたかが分からない。
薬を飲ませてしかもその薬で気分が悪くなった訳だから、普通は「これはなにか神田が悪巧みを仕掛けたのだな」と思うわけだが(しかもそのシーンで「そろそろ薬が効いてきたな」という神田のナレーションが入る)、そのままほったらかしで別の男に拾われる。

で家に連れ込むのだが、これがどう見てもホテルの一室。ベッドサイドに電話がある家はあんまりないよ。
んで次に同じような場所でベッドに寝ている青年が襲われるから吾郎とのシーンと混同した。さらに吾郎が起きてベッドから抜け出して、扉を少しあけて見ると男同士のカラミになるから、「吾郎が自分のカラミを見ている」というシュールな展開になったかと思った。

そして赤いジュースをユウキが飲んで「吸血鬼だ!」と突然言い出す。
何故それを言う?もう吾郎はユウキ兄弟は吸血鬼と根拠なく信じ込む。
そしてユウキは出て行くわけだが、最後にユウキとテルキが出会うわけでもない。
ユウキを囲ってる男は神田に言わせれば「元使用人でテルキたちの家の土地をだまし取った」という。なんだかよく分からない。

結局その悪い男はうろうろするだけでユウキやテルキとも出会わない。
神田がテルキを見つけて連れ戻し、吾郎が「脱走吸血鬼か」(よく聞き取れなかったが、たぶんそう言った)とつぶやいて終わり。

なにがなんだかさっぱり分からない。
そのそも最初に神田と吾郎が出会った海岸から、別の島に行ったのかと思ったら、そうでもないらしい。猿島のような小さな島かと思っていたら、旅館とか民宿が何軒もあるようなある程度の大きさの島だ。

神田がなんで吾郎に「一緒に宝物探しに行こう」というのか分からないし、薬を飲ませるのも分からないし、二人が吸血鬼かどうか分からないし(たぶん違う)、結局は吾郎の勝手な妄想ということか。
だから吾郎のカットで終了でいいのか。
私は最初の方で「森の生霊が云々」というから、森の生霊の生け贄とかに吾郎がなるのかと思ったら、完全に訳分からなかった。

新倉直人の薔薇族映画でこんなに多くの字数を使うとは思わなかったよ。

同時上映はカジキ監督の「鎖縛SABAKU」。むかしレンタルDVDで見て感想はUPしてるので感想はパス。
でもバーナーで人間を焼いたり、グロテスクで私はダメ。
照明が独特で映像はシルエット中心で個性的だが、好きな映画ではないですね。







最短距離は回りくどくて、<noir>


日時 2019年7月7日19:00〜 
場所 池袋シネマロサ2(地下)
監督 山内大輔
製作 OP PICTURES


昨夜はハッピーエンドのblancヴァージョンを観たが、本日はもう一つのエンディング、noirヴァージョンを鑑賞。

男性機能を失った悠斗が矢崎の知人を訪ね、それが青山だった、というところまでは同じ。
ところがホームレスとして再会したのも悠斗が捕まったのも実は青山の計画だったという展開。
矢崎と知り合ったきっかけは一緒だが、noirではずっと矢崎を受け入れ、資金管理を任されていて金には困ってなかったという。
そして悠斗が涼馬の店に入ったのは偶然、しかし矢崎を通じて自分とつながっている店で、女を送ってわざと売り掛けを踏み倒させ、矢崎の元で働かせるようにした、というオチ。

こっちの方が伏線などが効いていて私は好きである。
さらに最後には青山と悠斗は絡むのだが(悠斗は受けなら出来る)、翌朝、裸でベッドで寝ている悠斗の写真を撮る。
(このときにやっと向理来のお尻が写る。昨日も思ったが、全体的にもっとバックヌードのカットを増やした方がいいと思う)

その写真を青山が見るのだが、写真をめくっていくとやがて違う男の写真が出てくる。どうやら死んだ聖夜の写真だ。
青山は聖夜とも関係があったということになる。
悠斗くん、今は青山とうまく行ってるけど、青山って実はとんでもないサイコパスかも知れない、という余韻を残したエンディングだった。

私はこっちのほうが断然好きである。
よかった。






最短距離は回りくどくて、<blanc>


日時 2019年7月日 
場所 池袋シネマロサ2(地下)
監督 山内大輔
製作 OP PICTURES


母子家庭に育った悠斗(向理来)は高校時代友人も作らずいつも一人でいた。そんな姿を見た国語教師の青山(塩口量平)は悠斗に交換日記を始める。悠斗が熱を出して学校を休んだ日、青山は見舞いにやってきた。
母親がいないときについ悠斗にキスをしてしまう青山。悠斗はそれを拒絶。悠斗が学校に訴えたために青山は学校をクビになった。
高校を卒業した悠斗だが、今までの自分を変えたくて歌舞伎町でホストになる。しかし客にツケを踏み倒され、それを別の常連客に何とかしてほしいと頼んだが、オーナーの涼馬(初瀬川博人)に知られ、借金が増えてしまう。夜逃げした悠斗は今はホームレスとなっていた青山と再会。
しかしすぐに涼馬に捕まってしまう。「臓器でも売るか?」と言われた悠斗だが、涼馬の紹介の仕事をする事になった。
それは矢崎(竹本泰志)が経営する高級な男性客へ男を紹介する仕事。
とりあえず矢崎に男を経験させられる。それからはヤギ牧場のオーナー岡村(おみのじんや)、IT企業の社長若林(結城駿)らに抱かれる。
矢崎のクラブでナンバーワンの聖夜(服部武雄)が悠斗を抱きたいと矢崎に申し出る。それを許した矢崎だったが、悠斗に嫉妬した聖夜は悠斗の性器を口で噛む。
なんとか助かった悠斗だが男性機能はなくなった。この事件をきっかけに矢崎もクラブを閉店。お詫びにと自分の財産を管理している友人の住所を悠斗に教える矢崎。
訪ねてみたらそこにいたのはなんと青山だった。
実は青山はホームレスになる前に学校をやめて新宿で売り専をしていたのだ。そのときに知り合ったのが矢崎。矢崎は青山を気に入ってくれて財産を任されるようになった。そのころ矢崎は秘密の流出を恐れる裏社会によって殺されていた。
青山は矢崎が残した1億円で悠斗と二人で海外で暮らそうといい、悠斗も承知する。


OP PICTURESが新ジャンルに挑戦!ってことで(私の中では)話題の「最短距離は回りくどくて、」。
この夏の光音座のゲイ映画はこの映画を上映する。つまり同じ作るならBL映画として女性客も取り込もうという企画だ。しかも後半15分は違うエンディングをblancヴァージョン、noirヴァージョンと二つ用意。
すごい。1本の映画を2回観させる周到な企画。同じ作るならこの方がいいよね。ぶっちゃけ光音座、お客さん少ないもん。あのままじゃゲイ映画はなくなるよ。
それをBLブームにぶつけた企画はまだまだ潜在的客層があると思う。
要は今後の商売が期待できると私は思う。

映画の方は前半は先生と生徒がキスしただけでなかなかカラミが始まらない。と思っていたら、後半悠斗がクラブで働き始めてからは怒濤のカラミの連続だ。やっぱり主人公が色んな男と絡むにはこういう売り専の話が作りやすいよな。

それも最初は「子供の頃に仲良かったヤギが忘れられない。いつかそのヤギが人間になって会いに来てくれる」という幻想を持つ男。悠斗は首輪をさせられて絡む。
次は金にものを言わせるIT社長。ここまでは普通だが、次は悠斗がかまれるという山内監督らしいバイオレンス的な展開!

そして青山と再会するというのはかなり苦しいいうか「は?」の展開なのだが、まあ許そう。

とにかくカラミが多い。
悠斗と矢崎、悠斗とヤギの客、悠斗とIT社長、矢崎と聖夜、聖夜と悠斗、青山と矢崎、青山と悠斗と合計7回もカラミがある。70分の映画だから確かに10分に1回のカラミだ。(実際は後半に集中してるけど)

主役の向理来が美青年タイプなので全体的にきれいになる。
やっぱり森羅万象のカラミじゃなあ。
カラミのシーンでも上半身だけとかで下半身はない。この辺がR15なのだな。まあでも全体的に光音座の薔薇族映画よりきれいなのがいい。
私はこっちの方が好き。

今日観たのが白ヴァージョンともいうべきblanc(ブラン)
日替わりでもう一つのエンディングnoirが上映される。こちらも鑑賞の予定。

本日は山内監督、向理来、塩口量平、服部武雄、結城駿、おみのじんや、竹本泰志、本作監修のかさいあみ(たぶんBL好き女子にどんな映画を作ったらいいかを聞いたのだろう)の舞台挨拶付き。
終了後、出演者が階段でお見送りをしてくれたが、向理来は思ったより小柄で顔も小さかった。






警視庁物語 十五才の女


日時 2019年7月6日13:00〜 
場所 ラピュタ阿佐ヶ谷
監督 島津昇一
製作 昭和36年(1961年)


調布市の川の水門で若い女性の遺体が発見された。警視庁の刑事たちが捜査を開始。解剖の結果、年齢は15才ぐらいで性経験はかなり豊富だと思われた。また亡くなる1時間前、昨夜の午後7時頃に中華そばを食べていたこともわかった。
近所の聞き込みの結果、あばらやに住む少女と判明。
彼女は父親がいなくて母親は昔進駐軍に移された性病のおかげで精神を病んでいる。少女は生活のために近所の男相手に売春をしていたらしい。
また川沿いを捜索し、落ちていた靴から犯行現場を特定。その近所も聞き込む。結果少女は30才ぐらいの男と来た食堂も判明。
さらに聞き込むと少女は村上(今井健二)という福祉事務所の役人と一緒のところを複数目撃されていた。
村上のアリバイもはっきりしない。また少女の友達の土建会社の若い社員が犯行日から行方不明だ。


シリーズ第16作目。ラピュタ阿佐ヶ谷「SPパラダイス」というSP映画2本立て上映特集での上映。

毎回同じことを書くけどスター刑事もおらず各刑事が地道な聞き込みを重ねて一歩一歩真相に近づいていく。
その仮定が面白い。

今回も犯行現場の特定のために川の上流をさかのぼっていく。川岸で被害者の靴に似ている靴を見つけて「ここか」と思わせてサイズの違いで違うと判明。またパンツが落ちていたから「被害者のものか?」と思って開いてみたら男物でしかもウンチもついていて、拾った山本麟一の刑事の「うわっ」のリアクションが楽しい。こういった「無駄」が捜査の積み重ねということがイヤというほど実感させられる。

結局貧困の彼女は福祉事務所の生活保護を受給していたのだが、その担当の村上が彼女と関係を持っていたと判明。それを知った幼なじみの少年が村上を「お前の証拠をつかんだ」と追い払い、「もう死にたい」という処女をつい首を絞めてしまったというのが事件の真相。

村上は「彼女が誘ってきた。私は福祉の人間としてもちろん断った」と供述。しかし犯人の少年は「村上は少女と関係を迫った。彼女がもう辞めたいというと、お前たちの生活保護を打ち切ることができるんだぞ!と脅した」という。
映画の中では村上の供述は否定されないが、しかし刑事たちは(もちろん我々観客も)少年を信じる。

今、先生や警官が「その地位を利用して悪いことをした」という事件があるけど、別に今に始まったことではなくて、昔からあったんだよな。
黒澤の「羅生門」的展開は面白かった。

また若手刑事役で千葉真一が出演だが、これが息子である現在の新田真剣祐にそっくり!
血は争えないなあと実感した。

同時上映は同じく「警視庁物語 行方不明」。
こちらは以前観ているので感想省略。ただし前は思わなかったが、いつも犯人ではないが小悪党役で出演の多い今井健二が刑事役で出演していたのは知らなかった。