2020年5月

 警視庁物語
12人の刑事
 五人の軍隊 怪竜大決戦   無謀な瞬間
 裸の町  透明人間(1933)  失われた世界(1960) 失われた世界 
 警視庁物語
不在証明(アリバイ)
 キング・コング  ロスト・ワールド  キングコング2
 YETI GIANT OF THE 20TH CENTURY  A*P*E 猿人ジョー・ヤング クィーン・コング
トワイライト・ゾーン
超次元の体験
金融腐食列島 呪縛 警視庁物語
魔の伝言板
コングの復讐
来るべき世界 SF巨大生物の島 君に届け ジャッカルの日
警視庁物語
七人の追跡者
弁当屋の人妻 もう一品、私はいかがですか? 恋する弁当男子 水滸伝
警視庁物語
夜の野獣
ドラゴン危機一発 悪魔が最後にやってくる! ハンガー18
グリズリー 仁義なき戦い
完結篇
仁義なき戦い
頂上作戦
仁義なき戦い
代理戦争
仁義なき戦い
広島死闘篇
仁義なき戦い 警視庁物語
上野発五時三五分
警視庁物語 白昼魔

警視庁物語 12人の刑事


日時 2020年5月31日 
場所 DMM配信
監督 村山新治
製作 昭和36年(1961年)


(資料ではタイトルは「十二人の刑事」と表記される場合もあるが映画のタイトル表記に従った)

宮城県松島のグリーンホテルで女性の絞殺死体が見つかった。身元は分からない。宮城県警は周辺の聞き込みから前夜は別のホテルに泊まったことを突き止める。また遺留品の中から手がかりをあたる。千葉県の白浜温泉の旅館の石鹸箱が見つかり、それを配った46個の中から被害者が見つかった。被害者は谷口初枝。パチンコ店店員。彼女にはクギ師の原山という男が言い寄っていたとわかる。年格好から原山はグリーンホテルから消えた男に似ていた。
一方初枝の父から名古屋の戸籍に入籍しているという。その相手は原山だった。しかし原山にはアリバイがあったし、グリーンホテルなどの従業員も初枝と一緒の男ではないと証言があった。初枝は川崎一郎という男と結婚しようとしているので原田は嫌がらせに勝手に結婚届けを出したのだ。
その川崎一郎はトラックの運転手。近所の話では近々結婚してトラックを買って独立する計画を話していたという。


「警視庁物語」シリーズ第17作目。今回はニュー東映作品。
警視庁管内の事件ではなく宮城県の事件から始まる。そして被害者が東京方面に縁があるとわかり、刑事二人が東京へ派遣される。
タイトルの12人の刑事とは東京の7人、宮城県の2人、名古屋の1人、三島の1人では11人。はて後一人は?宮城県の課長とか入れるのかな。
名古屋の刑事は中山昭二で三島の刑事は南廣。宮城から来た刑事もどうやらかつて「警視庁物語」に出演経験もあるメンバーらしい。
私が顔をよく覚えていないので気づかなかったけど。

いつものように手がかりを一つずつ追求していく。
その中で今回は「野球」がバックボーンに描かれる。
白浜温泉の石鹸箱の旅館の主人は野球好き。地元の高校野球のチームにもお金を出しているらしく、「甲子園に行ったら高級旅館に泊めてやる」と豪語し、刑事が聞き込みに来たときも非協力的だったのに刑事がポケットにスポーツ紙をちらつかせると話に乗ってきてぺらぺら話し出す。
(もっともこの刑事は巨人嫌いだが、話を合わせるために巨人が大好きと答える)

また犯人の川崎一郎もかつてはプロ野球選手。しかし肩を壊してお払い箱。多額の契約金は親戚のおじさんに横取りされたらしい。
川崎一郎の恋人はカオルという女でこれが最後の最後に登場する。これが佐久間良子でまあ特別出演みたいなもんだろう。

このカオルと待ち合わせるために新橋の駅前広場にやってくる。街頭テレビで野球中継をしている。川崎と同期のピッチャーがテレビの投げている。逮捕されたとき、それを恨めしげに見る川崎。このカット、せりふはないが、「肩さえ壊さなきゃ」という川崎の無念が伝わってくる。
このドライな描き方が「警視庁物語」である。

あと珍しく今回は真夏が舞台で全員夏の服装。コート姿の多いこのシリーズにしては珍しい。
シリーズの中でも上位に入る出来。よかった。






五人の軍隊


日時 2020年5月31日 
場所 THE CINEMA録画
監督 ドン・テイラー
製作 1969年(昭和44年)


メキシコ革命の時代、ルイスという男によって3人の男が集められた。大男で怪力のメシード、爆破の専門家オーガスタス、そしてナイフ投げや剣の達人のサムライ(丹波哲郎)。ルイスは3人と彼らを集めたダッチマン(ピーター・グレイブス)に引き合わせた。
今度の仕事のために旧知の彼らはダッチマンは集めたのだ。その仕事とはメキシコ政府への外国から利権の賄賂として50万ドルの砂金が送られるが、それを革命軍の為に強奪しようというものだった。
その砂金は列車で輸送されるがその警備は尋常ではない。まず20分前に先行列車が走り、線路の状況を確認、その後重機関銃が装備した貨車、兵隊が乗った貨車、砂金の積んである貨車、そして大砲が装備してある貨車が連結された本隊が走り、さらに10kmごとに小隊が警備している。
果たして彼らは成功するのか?


丹波哲郎が出演した外国映画の一つ。「007」の後である。
なぜ日本人のサムライがメキシコにいるのか全く説明はない。メキシコ革命は1910年〜17年だから日本でいえば明治末から大正の初めだ。
サムライは明治生まれの可能性が高い。でもまああまり考えるのはよそう。夢がなくなる。なぜか流れてしまった日本人もいたかも知れない。
そしてせりふは全くない。メキシコが舞台だが、マカロニウエスタンなのでイタリア映画である。イタリアはせりふが直前まで決まらないからせりふ覚えの悪い丹波哲郎に配慮したとかの意見(この放送時の町山智弘の解説)もあるけど、無言の方が「東洋の神秘」的たたずまいでよいと判断されたのではないか?「七人の侍」の久蔵みたいな黙々と働くキャラクターで。でも言われたことは理解してるから、この映画の「サムライ」は英語が分からないわけではないようだ。

列車には前の晩に貨車の下にベルトでつるされた状態で待機(出発時に目線の低い子供に見つかるというハラハラ付き)、そして出発してからサムライがナイフでまずは大砲の砲手を倒し、次に重機関銃の兵隊を倒す。
そして兵士の乗った貨車に外から鍵をかけてる時にサムライは列車から落ちてしまう。

ここ正直驚いた。でどうするのか、近くにいる馬でも捕まえるかと思ったらひたすら走るのだ。走る!走る!走る!緊張感満点である。
列車を止めたら兵士に気づかれるので止められない。多少速度は落とすものの、サムライはひたすら走り続ける。乗ったときはこっちも疲れたよ。

そして砂金の入った列車だけダイナマイトで切り離し(このときダイナマイトの入った仕掛けを落としてしまう、さあどうする?というサスペンス付き。とにかく何かで覆えば爆発音は低いのでその何かに選ばれたのは鐘だった!)、引き込み線に砂金の入った貨車だけを引き込む。
この引き込み線のシーンは「新幹線大爆破」の浜松駅に匹敵するハラハラ。

砂金を奪取に成功した5人は近くの村に行く。そこでダッチマンが他の4人に一袋ずつ渡し「あとは俺が貰う!」という。すわ裏切りか?といやな味がしたが、「俺は革命軍に協力するんだ!」といい、最初の話の通りである。

結局他の4人も笑って同意し(この4人が笑うシーンで最初に笑うのは丹波哲郎。笑い声は丹波自身の声だ!)、丹波哲郎だけ黒髪のメキシコ美女と出来てしまう。地味な役柄のようで結構いいところはさらっていく。

「ミッションもの」としても面白く、満足のいく映画だった。





怪竜大決戦


日時 2020年5月31日 
場所 TSUTAYA宅配レンタルDVD
監督 山内鉄也
製作 昭和41年(1966年)


近江の城主尾形は家老結城(天津敏)の謀反により殺され、その幼い息子雷丸(〜いかづちまる)は湖を家臣ととも逃げたところを大鷲に救われた。大鷲は雷丸を飛騨のがま道人(金子信雄)の元へと連れて行った・
14年後、雷丸(松方弘樹)はがま動人に育てられ、立派な忍術使いになっていた。実はがま道人にはかつてもう一人弟子がおり、その弟子大蛇丸(〜おろちまる)(大友柳太朗)は結城に荷担していた。その罪滅ぼしもあってがま動人は雷丸を助けたのだ。
大蛇丸はがま道人を殺した。がま道人は死に際に大蛇丸のことや近江の城主の息子であることを雷丸に話した。
雷丸は父母の仇、がま道人の仇を打つために近江へ向かう。
途中、かつて飛騨の国にいたという父を捜している娘・綱手(小川知子)と出会う。


東映唯一の怪獣が登場する映画として名前は知られている。私も聞いたことはあったが観たことはなかった。まあ基本的に時代劇はあまり好きではないし(積極的に観ない程度。嫌っている訳ではない)、話に上ることもないし(特撮関連本でも話には出ない。少なくとも「大魔神」ほど話題にもならない)、なんとなく観ないで過ごしていたのだ。
来週の週末には映画館も再開してるようで(神奈川県では一部の映画館はこの週末から営業再開している)連続DVD鑑賞も今週でいったん終了するので宿題の片づけとして鑑賞。

冒頭の数分で湖から怪竜登場!「おお、この怪竜が若様を助けるのだな」と思っていると(もっとも若様は「あ、お城が燃えてきれいだなあ」と脳天気なことを言ってるけど)、途端に竜は暴れて小舟は転覆。何人かの家来とともに若様は湖の中へ。
そこへ空から何かが飛んできて若様をさらっていく。

この何かがよくわからないのだが、ラドンのような空飛ぶ怪獣だったらもっとよかったが、これが単なる大鷲。
そしてがま道人によって忍術、妖術を教え込まれる。
雷丸はがま道人を「お師匠様」と慕っているが、これが10年も立たないうちに「仁義なき戦い」では敵味方になるから東映の変化もおもしろい。

この頃の松方は完全に王子様、若様の立場である。70年代に実録やくざ映画で「狂犬」となるとは思えない。
確かにきりっとした美青年だもんなあ。

この映画、怪獣映画と言うより忍術映画で、途中雷丸が首をはねられて、首と胴体が別々に動くという忍術を披露。合成技術はなかなか見物である。

とは言っても忍術、妖術がメインなので、ワイヤーアクションで大蛇丸や雷丸が飛ぶシーンなどの方が多い。
怪竜はやっと最後の最後に登場。(それこそあと10分で終わる頃)
雷丸は大がまに変身し、大蛇丸は怪竜(というか大蛇か?)に変身して戦う。

この時に大がまがお城の中から登場し、お城が破壊されるカットのミニチュアは瓦一枚一枚まで作ってこれが崩れていくカットは見事!
ここは満足。

その後、大がまの方が劣勢になるが、綱手が旅の途中でばあさん(原泉)からもらった蜘蛛のかんざしを投げると大蜘蛛が登場し、糸をはいて怪竜を苦しめ、逆転。
(書き忘れたけど綱手の父は予想通り大蛇丸です。娘をだまし、雷丸を殺そうとたくらみます。綱手の父は大蛇丸というのが判明するのが最後だと思っていたら、割と途中でわかります)

まあ基本忍術映画なので、特撮はありますが、怪獣はあまり出て来ませんね。やはり怪獣映画で話題にならないのも納得です。




無謀な瞬間


日時 2020年5月30日 
場所 DVD
監督 マックス・オフュルス
製作 1949年(昭和24年)


ハーパー夫人の夫は仕事でベルリンに単身赴任中。ロサンゼルス郊外に義父と娘のビー、息子のデビッドと4人で暮らしている。
夫人はビーがつき合っているテッドという男に会いに行く。彼は悪い男なので絶対に別れさせねばならない。しかしテッドは「別れて欲しければ金をくれ。ただの約束では自信がない」と言ってのける。夫人はそれを無視し家に帰ってビーにテッドに別れるように言ったが金を出せと言ってきたと打ち明ける。しかしビーは信用しない。
その晩、家のボートハウスでこっそりテッドと会うビー。しかし金の話になり「そんな人とは思わなかった」ともみ合いになってしまい思わず懐中電灯で殴ってしまう。ビーはその場を離れたが、テッドは殴られてもうろうとし、手すりから落ちてしまう。母に謝りすべてを話すビー。
翌朝夫人が現場に言ってみるとテッドの死体があった。落ちたとき下にあった錨に体をぶつけて死んでしまったのだ。夫人はテッドの死体を湖に捨てたが、やがてそれは発見されてしまった。
ハーパー夫人をドネリーという男が訪ねてきた。ドネリーが言うにはビーはテッドに何通も手紙を書いておりそれを5000ドルで買い取って欲しいというのだ。警察に渡されたらビーが疑われる。
果たして夫人は?


「裸の町」は犯罪映画10本セットなので、せっかくだからどれか観るか、という気持ちで上映時間の短い(80分弱)のこの映画をチョイスした。
ボタンの掛け違いから脅迫されていく主婦を描くサスペンス。
ハーパー夫人の夫は建設の仕事でベルリンに行っている。戦争復興の仕事なのだろう。生活ぶりは悪くない。今の日本の貨幣価値で言えば年収1000万円行くか行かないかじゃないか。

夫人は家族と暮らしているのにドネリーという男は自宅にやってくる。義父には「トムの同僚」を紹介したので、「じゃあ一杯飲んでいけ」「夕飯食べてくか」ときさくに話しかける。夫人の立場からするとそれどころじゃない。また息子にもドネリーは話しかけさらにハラハラする。

しかもビーの方はショックで引きこもりのノイローゼになりかけている。金を作るためにロスにいく。消費者金融に行くが「目的は?」など聞かれるがはっきり答えられず帰ってきてしまう。
仕方なく宝石を質屋に入れるが800ドルにしかならない。
夫に相談できない。誰にも頼れない。
この「夫が海外赴任中」という設定がよい。

っていう感じでどんどん追いつめられていくのだが、後半になってドネリーが夫人を好きになりはじめる。最初は一緒に出かけたときに夫人のヘビースモーカーを心配してやにとりフィルターをこっそり買ってやる。
このフィルターの話、てっきり何かの伏線かと思ったらさにあらず。
本当にドネリーは夫人に好意を持ってしまったのだ。

えええ、それはないだろう。話をどう納めるか、第2の殺人が起きるのか、とハラハラ観ていたのでちょっとがっかりだなあ。
ドネリーの裏にいるもっと悪い男のネーゲルが訪ねてきて直接脅迫を始める。それを知ったドネリーが止めにきて結局ネーゲルを殺してしまう。
ネーゲルは死体を処理するために車で走り去るが、夫人は家政婦とともに車で彼らを追いかける。
えええ、家政婦にはもう話しちゃったの?

結局ドネリー事故を起こし、最初のテッド殺しはネーゲルやドネリーがやったということですべて収まる。
途中から腰砕けだったなあ、惜しい映画だった。







裸の町


日時 2020年5月30日 
場所 DVD
監督 ジョルジュ・ダッシン
製作 1948年(昭和23年)


ニューヨーク。大都会の夜、ある若い女性がアパートのバスタブで殺され、その仲間の一人も殺され川に投げ捨てられた。
翌朝、家政婦が若い女性の死体を発見。直ちに殺人課のマルドゥーン警部補以下ハロラン刑事たちが出動した。
被害者の名はジーン・デクスター。衣装モデルをしていた。家政婦の話ではヘンダーソンと呼ばれる50歳ぐらいの男が出入りしていたようだという。ジーンのモデル仲間のルース・モリソン、そして友人のフランク・ナイルズなどに聞き込みが行われた。このフランクという男、昨日ジーンとはランチを食べて、モリソンと婚約しているにも関わらず、モリソンは「フランクはジーンを知らないはず」という。しかも彼が話した経歴は嘘が多く、仕事もはっきりしない。
ジーンのしていた指輪は盗難品とわかり、しかもその持ち主はモリソンだった。フランクはメキシコ行きの切符を買い、高級シガレットケースを宝石店に売った。フランクを再び尋問しようと彼のアパートに行くとフランクは何者か襲われていた。ハロランが賊を追いかけるが逃げられた。
またジーンの死体は両手で首を絞められその上でクロロホルムをかがされた形跡があった。犯人は複数だ。
そのころ川に死体が上がった。その男が殺されたのはジーンが殺された2時間後と思われた。その男バカリスは宝石泥棒の前科があった。バカリスが以前捕まった時、もう一人いたが逃げられたという。そのときの盗難品にハーモニカがあったことからハーモニカが好きなのかも知れない。
ハロランは「ハーモニカ好きの大男」を頼りに聞き込みを続ける。やがてウィリー・ガルツァという男が浮上した。
マルドゥーン警部補は再びフランクを尋問する。フランクはヘンダーソンことストーンマンという医師がジーンに夢中なのを利用し、彼から金持ちのパーティの情報を聞き出し、彼らの家から宝石泥棒をしていたのだ。
フランクはその泥棒の実行犯がガルツァで彼は分け前のもめ事からジーンを殺したと話した。


「警視庁物語」を観てネットで調べるとダッシンの「裸の町」の影響を受けているというのを目にする。また黒澤明の「野良犬」も「裸の町」の影響を受けたと目にする。
実は学生時代にテレビで放送されて(たぶんテレビ東京の昼間の放送だったと思う)録画して観たことがあったが、もう一度観たくなり「犯罪映画コレクション」(みたいなタイトルで)10本セット1900円販売していたので早速購入。それこそ30数年ぶりに再見した次第。
まあ観たことがあると言ってもワンシーンも記憶になかった。

冒頭から「この映画の製作者です。この町はさすがに今は眠っています。でもこの時間でも働いている人はいますし、楽しんでいる人もいます。この映画はすべてロケです。この映画の監督はジョルジュ・ダッシン、出演者は〜」とナレーションが続く。以下映画の途中途中で解説ナレーションが入る。
ナレーションは他の映画にはあまり引き継がれかかったが、こういった犯罪捜査を通じて町を、町の人々を描く、という映画に引き継がれていったのだろう。
観ている途中で気がついたが、黒澤の「野良犬」の冒頭の「その日は一番暑い日だった」で始まるナレーションはこの「裸の町」の影響だったのかも知れない。

またロケの多用、というのも「フレンチ・コネクション」などに影響を与えたのかも知れない。
ただし本作は「すべてロケーション」と製作者がナレーションで言っているが、若手刑事のハロランが自宅へ帰る途中の地下鉄(というか高架を走ってるけど)のシーンはスクリーンプロセスとかセットではないか?

古典ミステリーのように最初から登場していた人物の誰かが犯人だったという展開ではなく、徐々に犯人をたどり最後に登場する、という展開もその後の作品に影響を与えたろう。

ラストは刑事たちに追いつめられたガルツァが橋の上の塔に逃げて刑事たちを撃ち、応戦されて橋から落ちて死ぬ。
しかしエンディングでジーンの両親が実家で彼女の死をいたんでるカット、フランクも殺人は犯してないが宝石泥棒の一味と言うことで逮捕されて留置されていたり、何より「彼女の死も5セントの新聞とともに忘れられていくのです」(正確には違うがだいたいそういうことを言う)のナレーションとともにジーンの写真が一面に掲載されたタブロイド紙がゴミ箱に捨てられていくカットがよかった。
町にとっては彼女の死も日常茶飯事の一つに過ぎないと。

なるほど数多くの刑事映画に影響を与えたとされるだけの作品だ。
よかった。






透明人間(1933)


日時 2020年5月27日 
場所 DVD
監督 ジェームズ・ホエール
製作 1933年(昭和8年)


ある郊外の村に吹雪の晩に全身包帯を巻いた男がやってきた。その男はライオンズヘッドという酒場の2階に部屋を借りてこもって何かをしている。部屋代もたまってきたのでおかみさんや主人が「もう出てってくれ」というと男は突然暴れ出した。そして「姿を見せてやる」というと包帯をとった。その下にはなにもなかった。男は透明人間なのだ!
そして「俺は万能だ!」と叫んで村で自転車に乗ったりものを投げつけたりやりたい放題。警官が駆けつけ、上司に報告したが誰も信じない。
その頃クレンリイ博士の下で研究していたジャック・グリフィンが行方不明になっていた。博士は「そのうち戻ってくる」と気にしていなかったが、娘のフローラや同僚のケンプは心配していた。グリフィンの荷物を調べてみるとモノケインという薬を注文していたと解った。博士によるとその薬は色素をなくす効能が期待され洗剤として研究されたが失敗に終わったのだ。そしてその薬を投与した犬は毛が白くなり、しかも性格が獰猛になっていた。
透明人間がグリフィンで、元の体に戻す薬を研究していたのだ。


1933年は「キング・コング」の年。同じ頃に制作された特撮映画。
ずっと以前に買ったままになっていた500円DVDを棚から引っ張り出してきた次第。

いや正直面白かった。特撮は人間を透明にする技術はこの頃から完成していたのだと実感。東宝の「透明人間」でもオートバイが走るシーンがあったが、この映画でも自転車が走るシーンがあり、これが元ネタだったのだな。

東宝の怪奇人間シリーズや「怪奇大作戦」と同じテイストだが、正直、東宝の怪奇人間はあまり好きではなかった。
それはギャング団の抗争とか、埋蔵金を巡る争いとか、美しい女性への悲恋とかどうも怪奇人間に「余計な」ひと味を加えてしまっているのだ。

今回は透明人間は暴れまくる。
地元の警察の警部を殺し、そして大報道され今度は列車転覆など殺人がエスカレート。「この薬を飲むと凶暴になる!」という設定が加味されているので、これでよいのである。
この辺がうまいなあ、その手があったか、と感心した。まあその手は何度も使えないけど。

警察も手配をして見えない敵をどうやって捕まえるかのアイデアを募集したりする。市民は大騒ぎ。
そして雪が降る。「これで足跡が付く!」とこのチャンスを生かす。
納屋の藁が揺れることで透明人間が発見。その納屋を包囲し、逃げられないように警官が手をつなぎながら輪を縮める。そして納屋に火を放ち、透明人間を追い出す、雪に足跡が付いたところで銃を撃つ。

倒したかも利にかなっていて「怪奇大作戦」のテイストいっぱい。
面白かった。








失われた世界(1960)


日時 2020年5月27日 
場所 DVD
監督 アーウィン・アレン
製作 1960年(昭和35年)
(DVDジャケットでは「ザ・ロスト・ワールド 失われた世界」の表記だがここでは公開時の表記とした)


偏屈で知られるチャレンジャー教授だが、イギリスの動物学会で恐竜を見たと発表。再度確認に行くための同行者を募る。冒険家のロクストン卿、新聞記者のエド・マローン(ディビッド・ヘディソン)にサマリー教授。
アマゾンについて見たらスポンサーの通信社の副社長の娘ジェニファー、弟のディビッドも同行することになった。
そして現地のヘリコプター、パイロットのゴメス、地元の手配人のコスタも加わった。
チャレンジャー教授に案内されてヘリコプターで降り立ったのは絶壁に囲まれた高台だった。火山活動で出来た高台だという。
早速キャンプをした一行だが、夜の間に何者かにヘリコプターを壊された。
翌日、人間はいないと思われていたが先住民の女性を発見した。また前にここを訪れたホワイトの日誌を発見した。実はロクストンはホワイトとこの近くまで来たことがあったのだ。ホワイトたちはこの高台に来てロクストンは残ったのだが、ロクストンは女にかまけてホワイトを救助に行かなかった。
巨大生物が戦いあう危険な世界で、先住民たちに捕まってしまう彼ら。
果たして無事帰還できるのか?


「キングコング」の元ネタということで「ロストワールド」をアマゾンで検索してるときに出てきたこの映画。安かったので(1754円)つい買ってしまった。
アーウィン・アレンという人名につい惹かれたのだ。
この映画でこの映画はテレビの洋画劇場で見た覚えがあった。

まあしかし恐竜目当てで見るとちょっとがっかりだな。
失われた世界での冒険、がお話の中心で恐竜はあくまでそのアイテムの一つだ。
だから中盤に恐竜同士の戦いがあるだけで。それほどメインではない。
アレンにしてみると、恐竜あり、人喰い人種あり、火山の爆発あり、復讐劇ありのサービス満点の冒険映画のつもりなのだ。
(ロクストンは特にそのつもりはなかったようだが、3年前に来たホワイトたちを見捨てたとゴメスに思われている。ホワイトたちの一行にゴメスの兄がいたのだ)

でもあれもこれも入れるとかえって散漫になるのが世の常。難しいよね。
かえってどれも盛り上がらずに終わってしまった。
恐竜は1950年版の「失われた世界」(原作も違うので話は全く違う)に出てきたと同じようなワニもどきと大とかげもどきの対決がある。
お互いに首を噛み合っていてどうやってやらせたんだろう。何かで怒らせたのかな。

しかし今見るとその後のアレンの作品に共通する項目も多い。
まず、冒険談。これは「シービュー号」「宇宙家族ロビンソン」「巨人の国」「ポセイドン・アドベンチャー」などにつながっていく。
「シービュー号」で艦長を演じるデヴィッド・ヘディソンも出演してるし。
また冒険する一行にヒーローがいて女性キャラがいて、その弟がいて、金が目的の奴がいて、インテリがいて、と役割分担もつながっている。

しかしながら今回に関しては8人も9人も出てくるのでキャラが多すぎ。
これは上映時間を長くすればいいというものではなく、映画でグループものをやるには5人から7人が限界なのだ。それ以上を越えるとどうしてもキャラに濃淡がでてしまう。

最後に火山は爆発して恐竜たちの世界もぶっ飛ぶ。しかしチャレンジャー教授は恐竜の卵を発見していて、それを持ち帰るとする。
最後の最後にそれが割れてしまって恐竜の赤ん坊(この場合はワニの赤ん坊)が登場する。

このシーンは以前(それこそ子供の頃)のテレビの洋画劇場で見て記憶にあった。
そして高島忠夫の解説があり(だからゴールデン洋画劇場か)「最後に恐竜を都会に連れて行って大暴れ、という展開もありなのですが、僕も出たことがありますがそれだと「ゴジラ」と同じになってしまうのでここで話を終わらせたようです」と言っていたのを覚えている。

アレンの後の作品を伺える映画。必ずしも名作と言うほどではないけど。









失われた世界


日時 2020年5月24日 
場所 DVD
監督 ノーマン・ドーン
製作 1950年(昭和25年)


1830年、アメリカの帆船時代。海の男、カール・ハミルトンは新しい船の処女航海に出た。しかしオーストラリアの近くで海賊船ファントム号の攻撃に合い負傷した。近くの港に待避し、負傷したハミルトンは治療を受けることになった。船は目的地に向かい、2ヶ月後の帰りにハミルトンを迎えに来ることになった。
オーストラリアの牧場主マーティン・シャノンは町の実力者の娘エレーンと婚約してた。しかし新しいアメリカ人、カールに心惹かれていく。
シャノンとカールの仲は険悪になる。そんな時、海賊船がこの町を襲った。自警団を組み戦う町の人々。エレーンとその妹は海賊船にさらわれた。
救出に向かうシャノンとカール、町の人々。海賊船に追いつき、エレーンたちは取り返したものの、敵味方の船は火災となり、沈んでしまう。
エレーン、シャノン、そしてカールほかはなんとか近くに島にたどり着く。
この島は無人島だったが、大きなトカゲや恐竜のような生き物が争いあう世界だった。そしてこの島の火山が爆発!
そのころハミルトンの船が目的地の帰りにシャノンたちの町に寄っていた。話を聞いた船長はカールたちの捜索に乗り出す。そしてカールたちは無事発見された。


1925年のコナン・ドイル原作の「ロスト・ワールド」に抱き合わせで収録されていた映画。同名タイトルでドイルのリメイクかと思ったらさにあらず。タイトルは同じだが、全くの別物。原作者もポリス・ペトロフとなっている。原題も「Two Lost Worlds」。
原作自体がドイルの便乗企画ではないかと思ってしまう。

この映画、61分のSPサイズである。
はっきり言うけどタイトルに偽りあり。パッチもんのC級映画だ。冒頭10分ぐらいで海賊船対カールの船の対決。まあこの辺はいい。
しかしその後、オーストラリアについてからカールとシャノンのエレーンを巡る三角関係が延々と続く。いやいやこの映画60分ですよ。早く恐竜のいる世界に行ってよ。

そしてまたまた海賊船がやってきて町が襲われて肉弾戦があって、船で追いかけて対決。(ここも敵味方が区別がつかなくなり優劣がわからない。結局両方とも火災にあって沈むんだが)
いやいや海賊映画じゃないんだから。早く恐竜世界に行け!!!!

で40分過ぎてやっと島へ。そしてやっと怪獣登場。
コマ撮りではなく、鰐に恐竜風の背鰭をつけたのと大トカゲの対決!
本気で噛みつきあってるからさすがに迫力あるよ。(2、3分しかないけど)

そして果物も発見し、食料も出来てイカダを組んで海に出ようとたったらいきなり火山爆発!
山が崩れ、恐竜もどきたちが割れ目に落ち、岩につぶされる。これ今じゃ動物虐待で撮れないね。
またたぶんハワイのキラウエア火山の爆発の実写フィルムと組み合わせ、なかなかの迫力だ。
さっきの恐竜もどき対決と火山の爆発で合わせて5分ぐらいだと思うけど、ここは(まあ)満足したなあ。

でも関係ない水増しドラマが延々と続き、さすがにげんなりした。
とにかく看板に偽りありの詐欺みたいな映画で、それは昔も今も存在するのだとわかった。






警視庁物語 不在証明(アリバイ)


日時 2020年5月24日 
場所 amazon primeビデオ
監督 島津昇一
製作 昭和36年(1961年)


ある官庁の分室で守衛が殺された。その資材課に強盗が入り、金庫を漁ったのだ。翌日出勤してきた係長の岡本(小沢栄太郎)は何も盗まれていないというが、刑事たちは疑う。犯行時間は守衛の壊れていた時計から9時13分頃と思われる。
まずは昨日の退勤時刻以降の行動。昨日は岡本、秋田、根岸の3人が残業したという。彼らの話では7時半頃まで残業し、あるいて15分の店に7時45分頃入り一杯飲んで8時過ぎに店を出て、岡本はタクシーで帰宅。
秋田、根岸は秋田の恋人の志村良子に会ったという。志村と秋田は結婚のことで家庭の事情でもめていた。根岸もその助っ人で話したのだが物別れ。9時前に秋田は店を出て、根岸と志村は近くのパール座という演芸小屋に入ったという。そして10時半にパール座を出た。
秋田のアリバイがあやふやなのでまずは秋田が疑われた。秋田は大家から借りている30万の返済を求められており、それが結婚の障害になっていた。
岡本の妻の話では彼は12時頃帰宅したという。長田刑事(堀雄二)が追求すると女の家に行っていたことを認めた。一応アリバイは成立した。
その頃、近所の食堂の出前持ちから9時過ぎにタクシーを降りた秋田が役所に入るのを見たものがいた。秋田を追求すると役所に帰ったことを認めたがすでに守衛は死んでいたと供述。そして実は金庫には業者からのリベート30万円が入っていたと言う。
秋田が降りたタクシーを探す刑事たち。それは見つかり、秋田を下ろした後すぐ別の客をパール座まで送ったという。客は根岸だった。


「警視庁物語」シリーズ15作。最近順番に見ていたが一挙に飛んだのは14作までは以前に見ていたから。
刑事には中川刑事として新人・千葉真一が加わっている。

相変わらすの没個性の刑事たちで今回は特に前半で岡本、秋田、根岸の3人の供述を聞くシーンが長く、外にはあまり出ない。
その代わり、捜査主任の神田隆が話しっぱなしで各刑事たちに指示を出す。おもしろいなあ、飽きないなあ。

とにかく最近のドラマは個性を主張しすぎるのだ。とにかくキャラクターを際立てようとする。そういうことではなくてもドラマは成立するということだ。描きたいのは刑事のドラマではなく、「犯罪捜査」なのだから。

とはいっても今回は秋田が疑われてその恋人が自分の気持ちを確かめるために秋田に会いに来たりする。ラスト、疑いの晴れた秋田を中川が警察署の入り口まで送っていく。そこで外で志村良子が待っていたのだが、それを無視して秋田は去る。自分を信じ切ってくれなかった良子では結婚できないと感じたのだ。
それに対し中川刑事は何も言わない。普通なら何か言わせたくなる所だが何も言わないのが「警視庁物語」らしさ。

肝心の犯人の方だが、根岸の妻が資材課長に出世のお願いの菓子折りに20万円入っていたと課長から情報提供あり。かくて根岸が疑われる。
良子に確認したところ、パール座には一緒に入ったが、満席で自分だけまず座り、終わったら根岸は別の席に座っていたという。
パール座は演芸小屋なのだが、やはりテレビの普及前はこういった演芸場も今以上にあったんだろうな。時代を感じさせます。

今回も面白かった。







キング・コング


日時 2020年5月24日 
場所 blu-ray
監督 メリアン・C・クーパー
    アーネスト・B・シュードサック
製作 1933年(昭和8年)


ストーリー省略。
今「キング・コング」関連映画を集中的に観ているのだが、やっぱり本家も再見しなくちゃと観た次第。
いや〜ため息が出るねえ。

コングが登場するまで約40分あり、ここまではさすがに長いな、と思ったのだが、そこから先は怒濤の特撮名シーン祭り。

合成とかスクリーンプロセスが実に見事。
手前(画面下)に海や川がある奥でコングが動いたり、画面いっぱいにコングや恐竜でその前に人間の後ろ姿とか、フルのスクリーンプロセスで「えっ、当時も出来たんだ!」と関心する。

またコングの右腕の中にいるフェイ・レイを左腕の指先で触ったりする。
しかもフェイ・レイは人間の実写で人形じゃない。
どうやら右腕に捕まってるフェイ・レイは実写で左手で触ってるのはスクリーンプロセスなどの合成らしい。しかも背景はジャングルですよ。
さらにフェイ・レイを握ってる右手の指が少し動くのだ。すごいなあ。

コングが人間を口にくわえるアップなど、人間は明らかに実写だから(そういうカットが髑髏島とニューヨークで2カットある)実物大も作っていたのですね。

書き出したらキリがないけど、単なるコマ撮りと人間の実写のカットバックだけなら誰でも(とは言わないが)出来そうだけど、この合成技術だよ。

円谷英二がムビオラで繰り返し観ていたそうだが、これは観たくなるよなあ。我々が映像ソフトをコマ送りや一時停止をしてるようなものだ。
ただしコマ撮りのコングはやっぱり「カクカク」感が否めず(それが味とも言えるが)、やっぱり「ゴジラ」の着ぐるみの方が生き物としての自然さは感じられる。

昨日観た「ロストワールド」は元ネタだけど、それを発展して完成させたのがこの「キング・コング」。
技術は進歩したかも知れないけど、根本的な表現方法においてはもうこのころ完成されてるね。

この映画が「ゴジラ」の20年以上前、第二次世界大戦前の作品とは未だに信じられない。
ブルーレイで観直してよかった。






ロスト・ワールド


日時 2020年5月24日 
場所 DVD
監督 ハリー・O・ホイト
製作 1925年(大正15年)


ロンドン・ジャーナルはチャレンジャー教授の「恐竜生存説」を批判したことで、逆に教授から訴えられた。ロンドン・ジャーナルは若手記者のマーロンに彼の講演会を取材に行かせる。そこでマローンは旧知の探検家ロクストン卿に出会う。チャレンジャー教授は「今日の講演会では弁明をする気はない。私と一緒にアマゾンに行ってくれる同志を募るためにきた」と宣言。昆虫学のサマリー教授やロクストン卿も参加を表明、しかしマロンはロンドンジャーナルの名前を出したので却下された。しかしなんとしても行きたいマローンはチャレンジャー教授の自宅に押し掛ける。
そこでマローンはポーラという女性を紹介される。彼女の父、メープル・ホワイトはアマゾンの奥地で恐竜を目撃し、それを手帳に記していた。また彼女も恐竜を見たという。父は恐竜のいた高台に取り残されてしまってるという。その話を聞いたマローンは、彼女の話の独占出版権と引き替えに今度のアマゾン探検の費用をロンドン・ジャーナルに出させることにした。
アマゾンの奥地、ポーラのいうところに行ってみると話の高台は存在した。そして翼竜プテロダクトルが飛んでいるのを目撃する。やはり恐竜は実在するのだ!


シャーロック・ホームズで有名なコナン・ドイルの原作「ロスト・ワールド」の映画化。チャレンジャー教授はこの後も活躍するシリーズがあるそうだ。
1925年だから当然サイレント。「キング・コング」を手がけたウィリス・オブライエンが特撮を担当。原点ともいえる。

確かに見終わってこれが「キング・コング」の元ネタなのだなあ、と実感。
話はこのあとその高台に上るが、高台に降りる階段状の岩に橋代わりにかけた丸太がブロントサウルスによって落とされてしまい、チャレンジャーたちは帰れなくなってしまう。

しかしそこで繰り広げられるのは恐竜たちの戦いの世界。アロサウルス(今ではティラノサウルスと呼ばれる2足タイプの恐竜)とブロントサウルスの対決とか、同じくアロサウルスと別の恐竜との戦いとか登場。コマ撮りの技術はこの頃から出来ている。驚いたのは「猿人ジョー・ヤング」で驚いたコマ撮りの画面の下の方(つまり手前)で川が流れているのだよ。えっ、この頃から合成が出来てたんだ!

しかしまあ68分の映画だが、テンポは遅い。アマゾンに着くまでに20分かかっている。そして翼竜(みんな大好きプティラノドン)が登場するのは26分ぐらい経ってから。遅いなあ。
サイレント映画ってそれでなくても字幕が出た段階で映像が止まるから、テンポが遅くなりがちなんだよね。しかも今回見たDVDソフトは誰の仕業か知らんが終始クラシック音楽が流れている。この音楽が全く映像とあっておらず、緊迫感のある対決シーンでものんびりした曲が流れていた。
いっそ音なしで観ようかと思ったほどだ。

話の方はロクストン卿が洞窟の向こうに抜け穴を発見。そして同時にポーラの父の遺体(骨だけになってたけど)も発見。
一方探検隊のスタッフは飼っていた猿のジョッコがポーラがいないので元気がないと気づく。そうかポーラに抜け穴の出口まで来てもらってジョッコに縄ばしごの先端を持って行ってもらえばいいと気づく。

一方、この台地の近くの火山が噴火を始め、溶岩も流れ出る。恐竜たちも溶岩にやられてしまう。(といっても画面が暗くて解りづらいが)
そして早くしないと!という空気になって何とか全員下に降りることが出来た。
そして目の前の沼地を見ると、アロサウルスとの対決で崖から落とされたブロントサウルスがいるじゃないか!泥にはまって抜けられないのだ。
それを檻にいれてロンドンまで運ぶ。

いや、アマゾンで映画は終わると思ってたから(あと5分ぐらいしか時間は残ってないし)、この展開は驚いた。でも途中で恐竜を逃がしてしまい、ロンドンを歩き回る恐竜!
しかし恐竜はロンドン橋から川に落ち、泳いで帰って行く、でおしまい。

ああ、そうかあ。
「キング・コング」の元ネタだと確信したね。
秘境に恐竜がいた、そこでが恐竜同士が対決している、ヒロインが登場する、そのヒロインを猿は好き、最後に恐竜を大都会につれて帰る、それが暴れ出す、などの共通項も多い。
何となくは解ってたけど、猿とヒロインの関係などは観てみないと解らないものだなあ。

68分の映画で、まったりした映画で面白くはないけど、いろいろ発見があった。観てよかった。






キングコング2


日時 2020年5月23日 
場所 TSUTAYA宅配レンタルDVD
監督 ジョン・ギラーミン
製作 1986年(昭和61年)


ニューヨークの世界貿易センタービルでキングコングが倒されて10年、実は彼はジョージア州のアトランタ大学で生かされていた。人工心臓を研究する女医のエミイ・フランクリンによって人工心臓は完成したが、その手術を行うには大量の輸血を必要とし、研究は暗礁に乗り上げた。
そんな時、ボルネオで探検家のミッチェルによって雌の巨大ゴリラが発見された。ミッチェルはその雌ゴリラを各大学に売り込み、キングコングの人工心臓の結果を出したい大学はミッチェルの要求を飲んだ。
雌ゴリラの登場がコングを刺激すると心配したエミイだったが、結局はそのレディー・コングの血液を使って手術する。手術は成功。
だがコングは近くに雌の存在を察知し、まだ完治していない状態で鎖をちぎってレディーを連れ去り山へ。
そして彼らは愛し合った。しかし軍隊のネビット中佐の攻撃により、コングは川に落ち、レディーは軍にて檻に閉じこめられてしまう。コングは発見されず、死んだと思われた。
数ヶ月後、実はコングは生きていた。レディーの叫びにコングが反応する。町に下りたコング。軍隊が出動。コングを異常に敵視するネビット。
エミイとミッチェルは2匹のコングを助けようとするのだが。


引き続きコング映画の研究。1977年版「キングコング」の正当な続編。製作はディーノ・デ・ラウレンティス。監督は前作に引き続きジョン・ギラーミン。
この映画は公開時に観ていない。怪獣映画だから観ても良さそうだが、個人的に映画から遠ざかっていたし、それに「キングコングの続編なんてあり得ないだろう。しかも雌が出るの?バカにしてるのか?」と思ったのだろう。事実、そう思った人も多かったろうし、酷評されたし、当然ヒットもしなかった。ラウレンティスも何で作ったんだろうね?ギラーミンも何で引き受けたのか?

そんな感じでいたのだが、やっぱり実際に観てみると違うもので、案外これが面白かったのだ。
話はほとんどジョージア州の田舎で展開される。田舎で展開されるSF映画ってB級なのが常識だが、これはそれなりに低予算さは感じない。
(ひょっとしたら当初の脚本ではラストは大都会で暴れる展開だったのかも知れないけど)

普通怪獣映画では2頭が出会うと対決するが、この映画ではいちゃいちゃするのだよ。これは画期的だったなあ。
それに触発されて、エミイはミッチェルを寝袋に誘う。さすがに風呂も入ってないし、抱き合って寝るだけかな、と思ったら、翌朝起きたミッチェルは裸だし、エミイもおっぱいが一瞬見えた。ああそうですか、そうですか。

後半、コングが一人で生きていたのだが、餌を鰐にしている。鰐を何匹も捕まえて岩の上にならべ、それをちぎって食べていく描写はえぐいなあ。
あとコングが再登場し、地元のハンターが大量に山に入るのだが、その中には不良ハンターがいて、酔っぱらってコングを崖に来たところでダイナマイトを爆発させ生き埋めにする。
そのコングをからかって仲間の一人が「いじめはやめなよ」と言っても聞かない。ついにコングが怒るのだが、一人を捕まえ人間を二つにへし折るシーンもなかなか残酷。

軍隊のネビット中佐はとにかく偏執的にコングを倒すことに執着。
ワシントンからの「生け捕りに!」という命令も「そのチャンネルは故障だ!」と言い切ってしまう。命令違反だよ。
コングはレディとエミイたちの助けで再会できるが、レディは実は妊娠していた!で出産!

すごい展開。ラストはネビット中佐はコングに倒されるが、結局は軍隊にコングは倒される。今度は死んだようだ。
ラストはジャングルで母と息子のコングが戯れているシーンで終わり。
あわよくばこの息子コングが大きくなってからの話を作る「3」を計画したんだろうが(あるいは「コングの復讐」のリメイク)、結局ヒットしなかったからこのプランはなし。

やっぱり「実はコングは生きていた!」っていう観客を裏切る設定がいけなかったんだろうな。「宇宙戦艦ヤマト」でも「沖田艦長は生きていた!」って不評だったもん。





YETI GIANT OF THE 20TH CENTURY


日時 2020年5月23日 
場所 アメリカ版DVD
監督 
製作 1977年イタリア映画


アラスカの氷が溶け、中から氷漬けにされていた巨人が発見された。発見したヘンリー教授はヒマラヤなどでも語られているイエティとスポンサーのモーガンに報告する。モーガンの孫のジェーンとハービーも発掘現場にやってくる。そしてイエティは蘇生。
しかし途中で暴れだし、ジェーンとハービーを連れ去ってしまう。イエティによって洞窟に隠されるジェーンたち。
ジェーンたちの愛犬エンジェルによってヘンリー教授たちに発見される。
そしてカナダに連れてこられたが、報道陣のカメラのフラッシュにより驚いて暴れ出す。
ジェーンは攻撃を止めさせようとイエティを倉庫に隠す。しかしモーガンのスタッフのクリフの裏切りに合い、ヘンリーは殺された。
それを見たイエティはクリフたちを殺そうと暴れ出す。イエティをなだめ、ジェーンはイエティにアラスカに帰るように説得。
イエティは帰って行った。


こんな感じのお話。「A*P*E」と同じく「キングコング入門」に書いてあったから鑑賞。
アメリカアマゾンから購入したけど(1000円ぐらい)驚いたことにDVD-Rだった。時々あるんだよね、アメリカ版では。その代わり「リージョン0」と書いてあり日本のプレーヤーでも問題なく再生。
そして画質。VHSをDVDに焼いただけ。んで英語字幕もなにもないから鑑賞意欲は下がる。(「A*P*E」も画質はイマイチだったが、あれは昔の香港映画みたいにもともと画質が悪いのだと思う)

何しろ字幕もなにもない状態で英語セリフ(イタリア映画なので英語吹き替え版なのかも知れない)だけで観たのでよく解らない。
それでもジェーン(これがなかなか美人でよい)姉弟との心の交流が解れば映画は理解できるけどね。

イエティの造形は顔は完全に人間のまま。それに髭とカツラを付け全身が毛むくじゃらになるスーツを着ている。
「キングコング入門」にも書いてあったけど、イエティの手にジェーンとハービーが乗っていてついジェーンがイエティの体にさわってしまうのだが、それがたまたま乳首でイエティがうっとりし、さらにへこんでいた乳首が勃つという謎の描写あり。ここ、俳優の表情だけでなく陥没していた乳首が勃つカットがあり(たぶん裏から空気を送った感じ)で芸が細かい。

イエティは池から魚を捕ってきて二人に与える。怒らせるとまずいから、ハービーは小さい魚を食べたふりをする。大きい方の魚をイエティが食べ、食べ終わった魚の骨を櫛代わりにしてジェーンの髪をとかすというまたまた謎の愛情表現あり。

そしてクリフが勝手に別の金持ちたちにイエティを売り渡し(たぶん)、イエティは見せ物にするために大都会に連れてこられ、またまたマスコミのカメラのフラッシュを浴びて暴れ出す。
ジェーンは街で暴れ出したイエティを倉庫に隠し、祖父のモーガンに連絡。しかしクリフの仲間によってヘンリーが殺されるのを見て彼らを襲い出す。愛犬のエンジェルもクリフたちに殺され、怒り絶頂となったイエティは暴れ出すはジェーンによって人気のないところに連れてこられる。

クリフは抵抗するが、結局はイエティに殺される。そしてアラスカに帰って行く。一人で帰れるのか?まあカナダとアラスカは陸続きだから帰れるのかな。

ラストにはイエティの生命力のおかげ(?)でエンジェルが復活する描写があり、イエティとジェーン姉弟、エンジェルの心の絆は強かったようである。

特撮はほとんどがスクリーンプロセスによる合成でミニチュアは必要最低限。夜の大都会をあるくイエティのバックはスクリーンプロセスによる合成だ。

見せ場の一つがイエティがカナダに連れてこられた時に、イエティはビルの屋上にいるのだが、そこから暴れ出しエレベーターに乗っているジェーンを連れさろうとする。そして屋上からエレベーターを引っ張り出そうとしたり、エレベーターの箱から落ちたジェーンを、イエティがビルを降りてエレベーターのパイプに手を入れてジェーンを助けるところ。

それにしても全体としてVHS画質なので興ざめである。
ちゃんとした画質、日本語字幕付きで再鑑賞したい映画である。怪獣映画は好きなので。





A*P*E


日時 2020年5月22日 
場所 アメリカ版Blu-ray
監督 ポール・レダー
製作 1976年(日本未公開)


貨物船が夜の海を航行する。船員たちがたばこを一服しているときに貨物室に入っていた大猿が突然暴れだし、船を破壊。そしてやってきた大鮫も捕まえて倒してしまう。やがて大猿は韓国に上陸。倉庫群を壊していった。
金浦空港に一人の女優が降り立った。彼女は恋人・トムと再会。彼女は主演映画の撮影のためにソウルにやってきたのだ。そのころ警察のキム署長には昨日の大猿のことが報告されたが、最初は気にもとめなかった。その情報は在韓米軍のデイビス大佐にも伝えられたが、信じない。
やがて大猿は遊園地に現れ、開園前に忍び込んで遊んでいた子供たちを脅し、大蛇をブン投げ、ハングライダーの若者をからかい、村に入る。
その頃女優は映画撮影をしていたが、男優が彼女を無理矢理迫るシーンで監督と男優の意見が対立。トムの撮影の合間に女優と会う。
やがて大猿は時代劇の撮影隊に遭遇、撮影隊は火のついた矢で応戦するが歯が立たない。今度は女優の撮影隊に遭遇。さっきと同様に男に襲われるシーンを撮影していたが、大猿は女優がほんとに襲われてると勘違いして助けるために連れ去ってしまう。
いよいよ在韓米軍も出動。手榴弾やライフル銃で応戦。トムは一人で何とか彼女を助け出す。
やがて大猿は女優を求めて街へやってくる。米軍も本気で応戦。
大猿はあえなく倒れた。


話は全部書いた。
今訳あってキングコング関連映画を観ているのだが、洋泉社が出した「キングコング入門」という本のなかで「パチモン・キングコング映画」(というタイトルではないが)を紹介する章があり、その筆者がめちゃくちゃ押していたのが、これ。
アメリカアマゾンを覗いたら2D、3D両方はいったブルーレイが2000円じゃありませんか。つい買った。(ただし今コロナ渦で航空便が激減しており、送料が一番高いのしか受け付けてなかった。ほかにも併せて3本買ったが、送料だけで2000円ぐらいしたよ。トホホ)

この大猿、どこからきたかさっぱりわからない。ひょっとしたら冒頭の船員の会話で示されたのかも知れないけど。いきなり暴れ出して船を壊す。
この船の爆破が真っ暗な夜で、周りまっくら。明らかにホリゾント代をケチったと思われる。そして船が爆発するが、もうチープさ満開でまるでお風呂に浮かべた船ぐらいしかスケール感を感じない。

続いての上陸で倉庫群を壊すがこれもノーマルスピード撮影のためなのか、炎が小さく感じるね。朝になって大蛇を倒すが、ただ木にまきついていたのをはがしてブン投げるだけ。大猿の大きさは15mぐらいなので、そこから比べると蛇だって10mはありそうだ。おいおい、韓国にそんな大蛇がいるのかよ!

んでドラマ部分で自称ジャーナリストのトムと女優が出てくるが、冒頭の金浦空港からホテルまでの車の中でのキスが熱い熱い。いや怪獣映画でえんなねっとりしたキスはいらんだろ。
そして撮影もなぜか(リハーサルなのかな?)では刑務所のような場所で行っており、男優が女優を犯そうとする。監督(ポール・レダー本人らし)がNGを出す。「もっと優しく!」男優「は?優しくなんか出来るかよ!」と口論し、休憩になって訪ねてきたトムとまたディープキス。
「撮影再開しま〜す」の声がかかってもまだ何度もキス。おい、おまえやる気があるのか!って俺が監督なら怒り出すね。

このシーンで女優は真っ赤なガウンのような衣装を着ており、一度ちらっとブラ(ベージュなので一瞬おっぱいが見えたかと思った)とパンティ(白)をさらす。
変わって今度は韓国のお寺のシーンで同様のシーンを撮影中に大猿と遭遇、となるのだが、女優が走って逃げるシーンでは前がすこしはだけでパンティが見える。
大猿は彼女を助け出し(?)、岩場に隠し、米軍やっと出動。
ヘリコプター部隊や空挺部隊まで出動。この米軍がやたら豪華なのだ。不思議だな、と思っていたが気がついた。これはきっとありものか何かの映像で、この映画のために米軍に協力してもらったわけではないと思う。
その証拠に実際にコングを攻撃しているのは歩兵で、手榴弾やライフルなのだ。そしてそのライフルもM16のような連発式ではなく、三八式歩兵銃のような単発式でいちいち弾送りをしている。おいおいおい!

その後大猿は街に入りビルを壊す。中年男がホテルに赤い服を着た女性を連れ込んでそこへ大猿の腕が伸びてきたり、普通の会社にいきなり大猿のパンチが繰り出されたり、同様に平和な一家の食事中に襲ったりする。
しかしまあ全体的にベニヤ板で作った模型バレバレである。
(そういえば実景では南大門が写ってたな)
そして最後には米軍の攻撃で倒される。

この映画、公開時は3Dだったそうで、ブルーレイには2Dと3Dの両方が入っている。先に2Dを観たけど3Dも後で観ようか知らん。
だから3Dを意識したカットが多い。
意味もなく登場した時代劇の撮影隊が火のついた矢を観客に放ったり、歩兵が小銃を撃つときに同じく観客に向かって撃ったり。

まあ決定的にだめなのは、この映画、合成カットが1カットもない。
猿と人間はすべてカットバック。
これじゃあ臨場感はないですよ。

味はそんなでもないけど安くて量の多い中華料理を食べた感じ。
本来の怪獣映画らしいチープさが味でした。
「キングコング入門」で絶賛されてたのも納得です。
ちなみに監督は「ディープ・インパクト」の監督、ミミー・レダーの父親らしい。そして助監督役でミミー本人も出演してるとか。




猿人ジョー・ヤング


日時 2020年5月20日 
場所 TSUTAYA宅配レンタルDVD
監督 アーネスト・シュードサック
製作 1949年(日本公開1952年昭和27年)


アフリカで農場の営む一家の娘、ジル・ヤングは父に内緒で現地の人が捕まえてきたゴリラの赤ん坊を飼おうとする。母が亡くなって寂しかったのだ。父は反対したが、結局は飼うことになった。
それから12年後、ニューヨークのイベントプロデューサーのマックス・オハラ(ロバート・アームストロング)はハリウッドに建てるアフリカリゾート型レストランの準備のためにアフリカ遠征する。サーカスで投げ縄を得意とするグレッグ(ベン・ジョンソン)も同行した。
そこで彼らは体長3mを越える巨大なゴリラと遭遇する。ジル(テリー・ムーア)が飼っていたゴリラがここまで成長したのだ。
オハラはジルにジョーとともにハリウッドに行ってスターになろうと持ちかける。アメリカへの興味が押さえられずに承知するジル。
ハリウッドでオハラが開いたレストランは大盛況。しかしジョーが檻に入れられる生活にジルは耐えられない。
ある晩、酔った客が楽屋に入りジョーに無理矢理酒を飲ませる。酔ったジョーは暴れ出す。警察が介入し、ジョーは射殺されることとなった。


33年版「キング・コング」のスタッフキャストが集結して作った第2のキングコング映画。
南の国から巨大ゴリラをつれてきて興行する、という骨子は同じだが、細部が違う。まずはそもそもジルと信頼関係があるとか。

そんなことより特撮である。
まずはジョーとオハラたちの遭遇。オハラたちが捕まえたライオンの檻を壊すところから始まるが、その檻が小川のほとりにおいてある。
従って画面の下の方は川が流れているのだ。手前で川が流れてその奥でジョーがライオンの檻を壊すコマ撮り!おお、すげえ。

またまた次にグレッグが投げ縄を使ってジョーを捕まえようとする。
そうすると人間が縄を投げる、ジョーに縄が絡まるというスクリーンプロセスを使った高等技術!
同じことがジルが投げたバナナをジョーが受け取るという高度な職人技!
このあたりのカットは何度も巻き戻して観た。

そしてジョーがレストランの中で暴れるカット群。
まあ細かいミニチュアを壊していく様はみていてほれぼれする。
酔わしたタチの悪い客にはホント腹立ったなあ。

それで今度はジョーの射殺命令。
私、怪獣映画をかなり観てますが、怪獣に感情移入をしたことはほとんどないです。しかし今度はジョーは殺さないでほしいと思った。

そしてジル、オハラ、グレッグによるジョーの救出大作戦!
トラックで逃亡させてアフリカ行きの船に乗せようとするんだけど、(話は強引だと思うが)火事になった孤児院に遭遇し、燃える建物から子供を救い出す。

これがすごいのは炎とジョーのコマ撮り画面の合成だ。
はあ、あまりのすばらしさにため息がでる。
特撮を担当したのは後に有名になるレイ・ハリーハウゼン。特撮監督(という言葉は内容だが)ウィリス・オブライエン。ハリーハウゼンは本作からの参加となり、後の「空飛ぶ円盤」などの名作を作る。

で、最後の最後にアフリカに帰ったジルとグレッグから映画フィルムのメッセージがオハラに届く。
ジル、グレッグとジョーが合成された画面の映画をさらにオハラの部屋で上映するという三重以上の合成。いやはや恐れ入りました。
話云々より「こんな映像を撮ってやろう!」という技術アイデアが先にあって脚本が作られた感じだけど、ここまでやられるとそれも納得です。
見応えがありました。

ちなみに本作の製作者にはジョン・フォードも名を連ねる。







クィーン・コング


日時 2020年5月18日 
場所 TSUTAYA宅配レンタルDVD
監督 フランク・アグラマ
製作 昭和52年(1976年)


演出が容赦ないことで知られる映画監督ルース・ハビットは今度はアフリカの秘境ものを準備していたが、リハーサルで厳しい演出で男優が逃げてしまう。
仕方なく代わりの俳優を探しているところを市場でリンゴ飴(!)や「キングコング」の複製ポスターを盗んでいる青年、レイ・フェイ(ロビン・アスクウィズ)に出会う。彼を睡眠薬で眠らせて、アフリカのラザンガへ。
そこでは現地の住民たちの広場に「クイーンコング」と書かれた巨大な椅子が用意されていた。レイは現地の女性たちにねらわれたが、とりあえず自分たちの船に戻る。しかしその晩、現地の女性たちによってレイは誘拐されてしまう。
そしてその巨大な椅子の前のテーブルへ。そこへクィーンコングの名の巨大なメスザルがやってきて。レイをさらう。
クィーンコングはティラノサウルスと死闘を繰り広げる!


ラウレンティスのリメイク版「キングコング」に便乗して作ったコメディ。
この映画のポスターはみた覚えがあるから80年代ぐらいに公開されたと思っていたが、日本公開は2001年だったらしい。はて記憶違いか。

とにかくビキニ姿の美女満載で、前半のアフリカのシーンなど現地も撮影クルーもほとんど女性でビキニ姿。おっぱいが出てきそうだが、そこまではしていない。あくまでお色気程度である。
ミュージカルコメディで、時折音楽が流れて美女がダンスする。
怪獣映画でミュージカルって企画が流れた「ネッシー」とかぶる気がするが、たぶん偶然で何の関係もないだろう。

時事ネタ(というか当時のネタ)も多く、鮫が出てきて「ジョーズ」の音楽に似た音楽が流れてレイも「え〜と何だっけ、この曲」と言って腰を振る。
書き忘れていたが、このレイ・フェイ(フェイレイの逆!)はミック・ジャガー似のいかにも70年代のいい男。しかも裸にデニムのベストを着てるだけだから、セックスアピールは満載である。

んで渡された映画の台本には「ラストコンガ・イン・ラザンガ」とあり、70年代に話題を集めた「ラスト・タンゴ・イン・パリ」のパロディ。
ティラノサウルスが出てくるが、それを見てレイは「ジミー・カーターみたいな歯並びだな」という。カーターは当時のアメリカ大統領。そういえば彼、歯並び悪かったですね。

この後ジャングルのことを「スコットランドみたいだなあ」というけど、単に「クソ田舎」と言いたかったらしい。「翔んで埼玉」みたいな感覚か?

で結局お決まりでコングはロンドンへ。
ここでテムズ川を上っていくのだが、ビッグベンのミニチュアが可愛い。
公開の初日にはエリザベス女王まで見に来てる。
ショーの最初でルースはレイと結婚を発表。それを見て嫉妬したコングは暴れ出す、という展開。

でレイはコングに捕まって夜のロンドンを移動。そこの映画館で「ロナルド・レーガン特集」をやってたけど、レーガンってこの頃はまだ大統領候補にもなってなかった気がするが。

その後突然ジャンボジェット機の機内になり、子供に変な歌を聴かせる尼さんが出てきて、飛行機はコングに激突。これって当時はやった「エアポート」シリースネタ?

最後はビッグベンに上るのだが、ここからが大きく異なって、レイはマイクで「コングを打つな!彼女はすべての女性の代表だ!」と訴える。
そしてロンドンの多くの女性が「コングは私たちの代表!」とデモになって警察当局も「コングをアフリカに返せ」と命じる。

ラストは女性賛歌なのか、あるいはそれをおちょくってるだけなのかはっきりしないネタ。
日本で言えば河崎実が作ったような映画。女性エキストラがみんなビキニか集めてるから、それなりに金はかかっている。

ゆるゆるのコメディだが、特撮も可愛く、それなりに楽しめました。




トワイライト・ゾーン 超次元の体験


日時 2020年5月17日 
場所 DVD
監督 ジョン・ランディス他
製作 1983年(昭和58年)


1959年スタートのテレビシリーズ「トワイライト・ゾーン」(邦題『ミステリー・ゾーン』)の映画リメイク。

オープニング 監督ジョン・ランディス
夜の道を走る1台の車。運転手の男と助手席の男(ダン・エイクロイド)はカセットテープの音楽に合わせて歌っていたが、テープが巻き込みを起こしてダメになる。二人はテレビ番組の曲のクイズを出し合ったが、「怖い話をしよう」と運転手がいい、助手席の男が「じゃ車を止めて」という。車を止めた途端、助手席の男が怪物となって運転手に襲いかかる。

第1話 監督ジョン・ランディス
セールスマンのビル(ヴィック・モロー)は同僚のユダヤ人の方が出世したのが気に入らなかった。酒場で友人相手にそれをグチる。ビルは黒人が幅を利かせ、アパートのオーナーが日本人なのが気に入らなかった。
酒場の客の黒人に注意されても止めない。
酒場を出たビルだが、そこはユダヤ人を迫害するナチス・ドイツの街だった。そして自分はユダヤ人とされた。
逃げ出したら今度は黒人差別のKKKの儀式で黒人と同様に縛り首になりそうになる。今度はベトナムで米軍から追われる。それも逃げ出したがまたナチスの世界へ。そして強制収容所へと送られていった。

第2話 監督スティーブン・スピルバーグ
ある老人ホーム。老人たちは子供時代を懐かしむ。最近入った黒人の老人が、「夜みんなで缶けりをして子供時代に帰ろう」というその夜不思議とみんな子供になった。翌朝、また元の老人になっていたが、気持ちだけは若返った。

第3話 監督ジョー・ダンテ
ヘレンは学校の教師をしていたが変化を求めて車で旅に出た。そして目的地に着く前に道を間違えてある街にたどり着いた。そこである少年アンソニーと知り合う。アンソニーを彼の家まで送った行ったが、唐の家族はなんだかおかしい。実はアンソニーは周りを彼の意のままに変える力を持っていて、みんな恐れていた。彼のおじさんや両親は実の家族ではなかった。
ヘレンはただ言いなりになるのではなく、学校教師らしくアンソニーを導こうとする。アンソニーも従ってくれた。

第4話 監督ジョージ・ミラー
バレンタインは飛行機恐怖症。乗った飛行機で気分が悪くなってトイレにこもってしまった。飛行機は嵐に巻き込まれ、バレンタインが窓の外を見ると何かが翼のエンジンを壊している。彼のの恐怖は頂点に。
航空局の係官が持っていた拳銃を取り上げて、その怪物を殺そうとする。乗客もパニックに。なんとか飛行機は着陸したが、バレンタインは病院に連れて行かれた。


この映画は公開時にも観ている。新宿のミラノ座で観た。調べてみたら2月公開だから大作ではない。
当時「スター・ウォーズ」に始まるSFブーム到来のころで、彼らに影響を与えた作品と言うことで「ミステリー・ゾーン」の話題になっていた。
でも放送は完全に終わっていたし、ビデオもまだ発売になっていなかった(と思う)からオリジナルの「ミステリーゾーン」はこの映画の公開時には観ていない。
この映画の公開時は「ミステリー・ゾーン」から「トワイライト・ゾーン」にタイトルは戻され、以降日本でも「トワイライトゾーン」と呼ぶようになる。トワイライト、という単語もこのときに覚えた(と思う)

後にレンタルビデオで「トワイライト・ゾーン」のタイトルで1本に4話入って10巻ぐらいあったと思う。その第2巻に今回の第4話は入っていた。「宇宙大作戦」のカーク船長のウィリアム・シャートナーがバレンタインの役だった。
この映画の怪物はエイリアン風の形だったが、テレビ版は雪男みたいな着ぐるみでちょっとユーモラスだった。
(同じ組み合わせでDVDにもなり、第2巻は数年前に中古で買った。このこの巻には「本好きの男が核戦争で誰もいなくなった世界で本が好きなだけ読めると喜んだが、眼鏡を落として壊してしまう」という有名な「廃墟」のエピソードや、旅客機がタイムトラベルを繰り返す「33号機の漂流」など私のベストエピソードが詰まっている)

今回もオープニングのエピソードで二人が「トワイライト・ゾーン」の「廃墟」のエピソードの話をしていて、やっぱりベストエピソードの評価なのだろうなあ。

今回の第1話を公開当時に観たときは「日本人にはユダヤ人差別とか黒人差別とかピンとこないよな」と思ったが、今ではよくわかる。
嫌韓、嫌中にあふれる日本ではビックモローはネトウヨだ。日本のネトウヨと同じように「奪われた」とだけ言っている。これが分かるようになるとは日本も退化してしまったものだ。

これは映画のオリジナルエピソード(他の3話はTVシリーズでもあったエピソードのリメイク)。このエピソードの撮影中にビック・モローが事故死したことは一般紙にも出ていた。ビック・モローは「コンバット」で日本人にもおなじみだったからなあ。
wiki情報によると最後はベトナム人の子供を助けて改心して元の世界に帰る、という話だったらしい。ところがベトナム人の子供を撮影中にヘリコプターを使ったカットで事故が起こったらしい。
ってことは完成版ではナチのシーンに戻って収容所に送られて終わるが、最初は収容所に送られる列車のあとにKKKに襲われるシーンだったのだろう。

第2話は老人が子供に戻るっていうファンタジーで、「怖い話」や「皮肉な話」を期待してしまう自分としてはぜんぜん響かなかった。
さっき書いたビデオで観たときも結構心温まるファンタジー系のエピソードもあったよな。確かロバート・レッドフォードが出た話しもあったはずだ。

第3話はなんか観ていてオリジナルを観た記憶がある。そして少年の役を「宇宙家族ロビンソン」のウィル少年のビリー・マミーが演じていた。
クレジットを観ると出演者の「ビル・マミー」ってあるじゃん。
またまたwiki情報だが、冒頭のレストランの客役の一人で出てるのがビリー・マミー。今は60代のマミーだが、当時は30歳ぐらい。確かにレストランの客役で30歳のビリー・マミーがいた。
いや、すごい得した気分がした。

第4話のラストで救急車で運ばれるバレンタインに「怖い話をしようか?」と話しかける助手席の男がダン・エイクロイド。なるほど、最初につながっている。

初見の時よりいろいろと知ってみると面白く感じた。





金融腐食列島 呪縛


日時 2020年5月17日 
場所 DVD
監督 原田眞人
製作 平成11年(1999年)


朝日中央銀行(略称・ACB)は総会屋への巨額な不正融資が連日問題になっていた。役員会でも話題になったが、顧問弁護士たちの「商法には違反していない」という言葉を頼りに気にしない空気があった。
しかし企画部副部長の北野(役所広司)をはじめとした中堅クラスは「こんな融資をしていいと教わった覚えはありません!」と異を唱える。
そして検察による強制捜査、ガサ入れをされていよいよ本気になる。
ACBには佐々木相談役(仲代達矢)というドンがいて、誰も逆らえないでいる。久山常務(佐藤慶)は北野たちを応援していた。
北野の妻は佐々木の娘(風吹ジュン)だった。二人の結婚を応援してくれたのは久山で、二人とも久山には恩義を感じていた。縁故による出世を予想する声もある北野だが、純粋に銀行の再建を願っていた。
やがて経営陣も逮捕、総会屋と佐々木の関連を知る久山は自殺した。
新頭取には海外畑を歩み、今まで総会屋とは無縁だった常務(根津甚八)が選ばれた。今度の株主総会は大荒れになることが予想された。


公開時以来20年ぶりに鑑賞。先に書いちゃうけど公開時にがっかりした覚えがある。ラストの株主総会で総会屋たちがワーワー騒ぐ中、一人の一般株主(内藤武敏)が現れて「ACBも新たな一歩を踏み出したと評価しようじゃありませんか」的なことを言って丸く収まる。このシーンで「え〜、そんなうまくいくかい!」と違和感を持ったものだ。

DVDを観て原田監督のベルリン映画祭での質疑応答が収録されているが、「この話は実話です。モデルになったのは第一勧業銀行です。原作者の高杉良さんは取材に基づいて小説を書かれました」って言っていて驚いた。
えっ、実話だったの?
話がうまく出来過ぎてて嘘くさく感じたのだな。これが当時観た友人も同様のことを言っていた。

まあそこは我慢しよう。
しかしこの映画を観た20年前と今では環境が違いすぎた。いや社会情勢ではなく、私自身のサラリーマンとしての変化である。
20年前は私も30代で、この映画に登場する北野たち改革組より年下だった。今は完全に年上だ。

30代のころは「俺も将来は北野たちのように正しい会社を作ろう」と思えたのかも知れない。だからこそ共感を持ってみることができた。
しかしこの歳になると、もう所詮は「大銀行のエリート社員たちのコップの中の戦争」である。全く雲の上の存在だ。
「日本のいちばん長い日」だって雲の上の話だが、それでも過去の歴史だから、それなりに観ることが出来る。だから共感とか感じないんだよね。
同じ役所広司でもテレビドラマ「陸王」は零細企業が大企業に挑む話で、なんだか自分の物語として(あり得ないとは解っていても)応援し、共感することが出来た。

こういう大企業のエリートのドラマが楽しめなくなったんだよなあ。
「突入せよ!あさま山荘事件」はまだ現場に立たされる男の話だから、主人公が警視正でもまだ近かった。

そして原田眞人はいつものことだが、これだけ登場人物が多いが紹介テロップをつけない。そうしないと誰が誰やら解らなくなるのだよ。だからつけて欲しいなあ。
ベルリン映画祭の質疑応答でも完全に英語で答えてたし、日本の映画監督でここまでペラペラなのは珍しい。たぶん原田眞人は頭がいいので他人がバカに見えて仕方ないのかも知れない。知らんけど。

追記しておくと仲代達矢の孫で役所広司の息子役の10歳ぐらいの少年、目がくっきりとしてイケメンだなあと思ったら、エンドクレジットを見ると三浦春馬だった。調べて見ると三浦春馬の出演歴にちゃんと載っていた。へ〜、芸歴思ったより長いんだなあ。この映画を見て一番驚いた。






警視庁物語 魔の伝言板


日時 2020年5月16日 
場所 amazon primeビデオ
監督 村山新治
製作 昭和33年(1958年)


警視庁管内で連続してタクシー強盗殺人事件発生。今夜もパトカーにより警戒が行われていたが、あるパトカーが不審なタクシーと遭遇。そのタクシーはパトカーと接触しそうになり、街路樹に激突。中から3人の男が逃げ出した。警官により二人は逮捕。一人は逃がした。ぶつけたタクシーのトランクから運転手の死体が発見された。
翌日の取り調べで一人はすぐに自供した。北野明。彼は夕べ初めて仲間に加わり前の事件は関係ないという。そして他の二人の本名は知らない。
北野は昨日の事件の前まで山形の実家に帰省していてアリバイも証明された。他の二人とは上野の職安で声をかけられたという。そして昨日の23時に上野駅の掲示板前で待ち合わせたというのだ。
もう一人は黙秘を続けたが指紋から身元が割れた。小川勝次(織本順吉)。小川は最近出所して刑務所で大沼三之助という男と親しかったというのだ。北野も主犯の男は三チャンと呼ばれていたという。
5件の事件の被害者の一人は生き残り、やっと事情徴収に応じられた。別の一人のモンタージュ写真を作ってくれた。それを手配したところ、赤羽署で別件で逮捕された男に似ているという。
刑事たちは色めき立つ。しかし逮捕された後にも事件は起こっている。もう一人犯人がいる!


「警視庁物語」シリーズ第8作。
しかしなんだろうね、この「警視庁物語」を観るとほっとできる感覚は。なんか「こういう刑事ドラマが観たかった!」と思えるのだなあ。

今回は今までと描き方の手法が異なり、ロケは少な目。(日数が短かったとかの事情があったのだろうか?)
半分以上のシーンが捜査本部内のシーンで、報告を受け事件が解明されていくシーンが多い。だから今回は神田隆の出番が多い。
いつもは先頭だって捜査する長田刑事(堀雄二)も神田隆の横で報告を聞いてるだけなのだ。
さすがにそれだけじゃだめだと思ったのか、長田刑事は大きな模造紙に事件の時系列とわかった犯人を表にしていく。これを使って観客にも説明するのだ。「七人の侍」で村の地図とか倒した野武士の数を示すのと同じ手法だ。

相変わらず刑事の個性は少なく、林刑事(花沢徳衛)、金子刑事(山本麟一)と長田刑事ぐらいしか区別がつかん。あとは名前も覚えられない。
しかしながらいつもはせりふも一つか二つしかないような刑事も割とせりふが多めで、活躍も平均している。
山本麟一なんか黙秘を続ける小川の担当にさせられて今回はロケなしだもんな。ラストで犯人を追いつめ逮捕するのは長田刑事、林刑事、そして名前もよく知らない刑事。逮捕の報告を受けた金子刑事が「僕も行きたかったですね」というのは「ロケにでたかった」ということの裏返しか。

それにしても駅の掲示板の書き込みでやりとりするというのが面白い。今掲示板っていうとネットの掲示板のことになってしまうが、本来の掲示板はこっちである。

上野駅の掲示板で大沼と最後の一人が掲示板でやりとりして上野の「ビンゴゲーム」の店で合流するところを逮捕。
このビンゴゲームの店ってどんなんだろう。あのパーティなんかでよくやるビンゴゲームと同じことをやってるが、どういうシステムだったのかな。

一見すぐに犯人が捕まったように思えて共犯者がぞくぞくと登場する新しいタイプだった。同じように見えて少しずつ変えている。おもしろかった。





コングの復讐


日時 2020年5月16日 
場所 DVD
監督 アーネスト・B・シュードザック
製作 1933年(昭和8年)


キングコングをニューヨークに連れてきたデンハムは今やコングが暴れて破壊した損害賠償を訴えられていた。同じく船を差し押さえられていたエングルホーン船長と海外へ逃げ出す。海運をして儲けようとしたがどこにもいい話はない。
ダカンに行ったとき、小さな小屋で猿のショーとヒルダという美人の歌手が歌ってるのを観る。ヒルダの父は元は大きなサーカスにいたが酒で失敗したのだった。その父はその晩友人と酒を飲んでいたが酔って喧嘩になり、それでろうそくを倒してしまい、それが原因で火事となった。
ヒルダは父を助けようとしたが、すでに息が切れていた。
翌日、デンハムとエングルホーンはある男と再会した。それはかつて髑髏島の地図をくれたヘルストームだった。ヒルダの父を殺した男だった。
この地を逃れたいヘルストームはデンハムたちに「髑髏島には財宝がある」と話を持ちかける。翌日、その話に期待して出航するデンハムたち。
しかしこの土地から出たいヒルダも乗り込んでいた。
髑髏島に着いたが、ヘルストームが船員たちに「髑髏島に行ったら怪物にみんな殺される」と吹聴していたため、船員たちは反乱を起こしてデンハム、エングルホーン、ヒルダは船から降ろされてしまう。今度は船長になろうとしたヘルストームだったが、こちらも船員から海に落とされ、仕方なくデンハムたちと髑髏島へ。
だがそこにはコングの息子というべき3.5ほどの巨大な猿がいた!


事情があってこれから「キング・コング」関係の映画を観る。以前ブックオフで500円で買ってあってそのままになっていたDVDから見始める。

亜流のパチモン映画ではなく、オリジナルのスタッフ・キャストによる続編で、オリジナルが3月、これが12月公開だからかなり早い。(「ゴジラ」と「ゴジラの逆襲」に比べれば長いけど)。
しかしまあ完全に失敗している。

まあ「キング・コング」の続編と言っても作りようがないよね。「新幹線大爆破2」って作れないよね。それと同じだよ。どう考えてもまた主人公たちが髑髏島に行かなきゃいけないし(そう考えるとゴジラは向こうからやってきてくれるのでやりやすい)、またニューヨークに連れてくるわけにも行かないもんなあ。
となると髑髏島で話は完結せねばならない。

そして製作期間の短さが影響してるのか、70分の映画なのに髑髏島に上陸するのは始まって40分目なのだ。
ヒルダとヘルストームの話とか結果的にはあんまりつながってこないし。

先に書いちゃうけど、最後に突然髑髏島は沈没するのである。
いやスペクタクル的にはそれでもいいのだが、話として唐突すぎるのだ。
今思いついたが、「髑髏島が沈むかも知れない」と思った地震学者が主人公で、「調査のため案内を頼む」とデンハムたちを連れて行く、財宝をねらう奴とかいたりして向こうの恐竜とかと遭遇し、っていうのもありだが、やはりコングに息子がいた、って無理あるよね。
キングコングは雄だから、母親は?ってなるし。
(本作では誰もその疑問を感じなかったが)
やはりどう考えても続編が成り立つ話ではないのだ。

かといって本作に魅力がないと言うわけではない。別物として割り切ればストップ・アニメーションの見事さだ。
ちびコング(と呼ばれている)毛のグレイのコングが沼にはまっているのを助けるシーンが登場だが、人間が手前でコングが奥にいたりの合成から奥が人間で手前がコングの合成もあったりする。
スクリーンプロセスだと思うが、見事だなあ。

また恐竜対人間のシーンで恐竜に追いかけられて洞窟に一時避難するところとか、ウミヘビ登場とか後半30分は(ドラマはともかく)見せ場は多い。

そしてあんまり唐突で頭に入ってこなかったが、最初に人間に助けられた恩をコングは忘れずに、人間たちを助け続ける。最後には髑髏島は岩の大きさになるまで沈むのだが、デンハムだけを握りしめて上に上げ、自分の体は海に沈んでいくシーンの健気さはなかなか。

話にあまりに無理がありすぎて完全に失敗した映画。
やはり「キングコング」のタイトルになるから出さないわけにはいかないし、難しかっただろうなあ。失敗するのもわかる気がする。








来るべき世界


日時 2020年5月10日 
場所 DVD
監督 ウィリアム・キャメロン・メンジース
製作 1936年(昭和11年)


1940年クリスマスのエブリタウン。いよいよ戦争が始まった!
街は空襲で焼かれ、敵は毒ガス兵器を使用した。1960年代になると生物兵器が使用され、「さまよい病」なる病気が流行した。
1970年、病気は収まったが、ザ・ボスと呼ばれる男がこのエブリタウンを支配していた。街には資源はないが、敵を攻めるために技術者・ゴードンは飛行機の整備を強要されていた。そこへなくなってるはずの飛行機がやってきた。乗ってきたのはジョン・キャベルという男。キャベルは今や地中海に平和な国が出来、文明は進歩してるという。ザ・ボスはキャベルを拘束するが、ゴードンはキャベルの協力を得て、1機飛べるようにする。
その機でゴードンはキャベルの国へ向かい、助けを願い出た。彼らはエブリタウンを「平和なガス」と呼ぶ催眠ガスで向かい、ザ・ボスの支配を取り除いた。
2036年、文明は復興し、エブリタウンは巨大都市になっていた。今はジョン・キャベルの子孫がこの街を統治していた。そしてスペース砲という月に人類を打ち上げる計画を立てていた。しかし「もう文明など進歩させる必要はない」と考えるグループもおり、リーダーの呼びかけに応じて一部の民衆はスペース砲の発射を阻止しようとした!


「宇宙戦争」などSF小説のH・G・ウェルズの映画化。この映画、1936年である。第ニ次世界大戦もまだ始まっていない。
そんなときにこの映画が出来ていたとは恐れ入る。

戦争が始まり、毒ガス兵器を使い出した頃、敵の兵士が空から毒ガスを散布、しかし結局は墜落させてしまい、自らの巻いたガスで死んでいく。
今日、同じウェルズの「巨大生物の島」を観たが、ネモ船長の主張は「戦争を終わらせるための戦いをする」ということだった。
戦争がいかに無意味なものかはウェルズにとって永遠のテーマだったのだろう。

1970年になって戦争は終わり、平和な世界へと舵を切る。
2036年になってさらなる発展のために宇宙への旅を計画している。普通は主人公側の宇宙発展組が正しいと結論づけられるのだが、反対派を一蹴してるようには感じられない。

果たして科学の果てしない発展は人類に幸福をもたらすのか?
これは現代でも通じるテーマ。果たしてIT化はすべての人に幸福をもたらしたか?
文明が発展すると新たな問題が発生し、それを解決するとまた新たな問題が発生する。エンドレスな行いを我々は強いられてるのではないか?

この映画はスペース砲が発射され、二人の男女が宇宙に向かうところで終わる。月に到着したかは定かではない。
そのラストがウェルズによって我々に問題を投げかけている気がする。

しかしこの映画、核兵器やロケットの開発はまだ考えられていなかった。最終兵器は毒ガスや生物兵器である。これはたぶん第一次大戦でも使用されたものだからだろう。巨大爆弾など全く考えてもいなかったろう。
そしてロケットのように自ら推進力を持つものも。
飛行機やヘリコプターなど、あくまでもプロペラから抜けていない。

しかしそのデザインはなかなか見所があり、つるんとした形状の戦車が登場し、平和ガスを落とす巨大な飛行機もなかなか見所があり、「スター・ウォーズ」に登場する巨大な母船の宇宙船を思わせる。
そしてラストのスペース砲。すごいねえ。大砲のすごいので人間の乗った砲弾を月まで打ち上げるのだから。
またこの2036年の世界に登場するヘリコプターもなかなかのデザイン。さすが後に「サンダーバード」を生み出す国である(まあ直接の関係はないけど)。

1936年という時代、第2次大戦に対する不安が大きかった時代の空気の「不安と希望」が詰まった映画である。







SF巨大生物の島


日時 2020年5月10日 
場所 シネフィルWOWOW
監督 サイ・エンドフィールド
製作 1961年(昭和36年)


南北戦争の頃、南軍にとらえられていた北軍兵士は敵の観測用気球を奪って逃走した。乗り込んだのはハーディング大尉、ネブ伍長、ハーバート、それに従軍記者のギデオン、たまたま乗り込んでしまった南軍のペンクロフト軍曹だった。
気球は嵐に巻き込まれ漂流した。そして太平洋を漂う。いよいよ気球も落ちるとなったとき、陸地が見えた。彼らはなんとかしてその島にたどり着く。ハーディングだけが最初は行方不明だったが、たき火の煙でやがてすぐに見つかった。しかしハーディングは自分でたき火をした記憶がない。
この島には巨大のカニがいて襲われたが、なんとか撃退。
そんな時、二人のイギリス人女性が漂流した。
そして彼らは洞窟を発見。そこには海賊船から下ろされ、失意の内に自殺した男の死体があった。
ハーディングたちは脱出のための船を作り始める。そんな時船がやってきた。だがそれは海賊船だった。砲撃を始めた海賊船。だが突如沈んだ。
だれが沈めたのか?


ハリーハウゼンの特撮特集ということでシネフィルWOWOWで放送。
調べてみたら「巨大生物の島」という映画もあるのですね。こちらは公開時にチラシを見た覚えがある。

巨大生物と人間の格闘、もっと言えばゴジラの「怪獣島」のようなものを期待したが、そこまで大きくはない。
最初に登場した巨大ガニも横幅5mぐらいじゃないか?もちろんそれでも十分大きいけど。

そして次に登場するのは巨大な鳥。(ダチョウの倍ぐらい)コマ撮りとうまく組み合わせてあり、なかなか見応えがある。
次は巨大な蜂。

という感じだが、正直期待したほどじゃなかったなあ。
海賊船を沈めたのは誰だ?ということなのだな、ここでネモ船長登場。
オープニングにクレジットが出るのだが、この時にネモ船長の名前が出てくるので、最初からネモ船長の存在はネタばれしている。
だから驚きなし。
そして数々の巨大生物もみんなネモ船長が食糧問題解決のために研究したと語られる。

んでノーチラス号が登場し、これが動くのかと思ったら、「もうこの船は動かない」とネモ船長。え〜がっかりだよ。これでノーチラス号が動いてくれたら潜水艦好きとしては満足したのだがなあ。

最後、この島の火山が爆発するので一度沈めた海賊船を引き上げてみんなで脱出しようとなるが、結局ネモ船長だけ助からず。
巨大生物は数も大きさもイマイチだし、ノーチラス号は動かないし、期待したほどではなかった。








君に届け


日時 2020年5月9日 
場所 blu-ray
監督 熊沢尚人
製作 平成22年(2010年)


黒沼爽子(多部未華子)は長い黒髪とまじめすぎる性格でなんだか暗い印象を与え、ホラー映画の「貞子」のようだと貞子とあだ名された。
高校に入り、見た目もさわやかで性格も分け隔てない性格の風早翔太(三浦春馬)と出会い、初めて友達が出来る。
夏休み前の肝試しで「貞子の役をやってほしい」というのを聞いて友達がほしい爽子は自分から買ってでる。そのことが二人の女子友達も作った。
しかし「貞子と付き合ってると風早君や女の子の株も下がるよね」と他の子が言ってるのを聞いて、風早たちと距離を置こうとする。
だがその誤解も解けてまた仲良くなるが、風早を好きな胡桃沢(桐谷美鈴)から嫌がらせを受ける。胡桃沢をあきらめさせ、風早も爽子に告白しようとするのだが。


2010年作品。「LDK」あたりから少女コミックの映画化があったのかと思っていたら、この頃からあったのですね。そういえば「僕の初恋を君に捧ぐ」もこの前だし。この映画も存在は知っていたが公開時には観なかった。
まだ山崎賢人、福士蒼汰も登場前で少女コミックの映画化をまだ好きになっていなかっただろう。2015年にこの作品のソフトが中古ショップで比較的やすかったので、ジャケットの三浦春馬と多部未華子の笑顔に惹かれて買ったのだ。(でもいままでそのままだったけど)

相変わらす「だめだめな私(女子)を学校一のさわやかイケメンが好きになってくれる」という女子の妄想である。
しかも今回は「貞子に似ている」としてハブられてる女の子が主人公だ。
前半は完全にイジメの世界に近い。
観ていてちょっとつらい。

でも映画だから多部未華子だろうけど、現実世界にも妙に暗い感じの子がいるよなあ。この映画では「実はいい子」の性格だけど現実なら性格ねじれちゃうよ。

4パートに別れていて「友達が出来るまで」「友達として付き合ってくれるのか悩む」「恋のライバル登場」「風早の告白」って言う感じ。
恋のライバル登場とか完全に定番の展開で今回は大晦日の年越しがイベントとして登場だ。
父親(勝村政信)が地元の交響楽団に参加してて、年越し第九演奏会に出るのだが、それに行くか、風早が待ってる年越し花火大会に行くか、というのがクライマックス。
まあ結論は結ばれるんだけどね。

あと担任教師役でARATA(現・井浦新)が出演。最初からやたら風早と親しいのだが、親戚とかそういう設定が実はあったのだろうか?
爽子の母親役で富田靖子出演。もうすでに10年前から富田靖子は母親役なのか。時は流れるねえ。いまでもかわいいけど。




ジャッカルの日


日時 2020年5月9日 
場所 ムービープラス
監督 フレッド・ジンネマン
製作 1973年


1963年、ドゴール大統領はアルジェリアの独立を認めたことから右派の反感を買い、彼らはOASという組織を作って何度となくドゴール暗殺計画を実行した。
逮捕者も続出し、今や幹部だけとなり資金も底をつきかけた。もはや自分たちが実行するのではなく外国人の殺し屋を雇うことに。そしてある男が選ばれた。その男は50万ドルという法外な金額を提示し、自分のことをジャッカル(エドワード・フォックス)と呼んだ。OASはその資金を稼ぐため、銀行強盗などを繰り返す。
そんな動きにフランス警察も何らかの動きを察知。国外に逃げている幹部の一人を強制的に逮捕、尋問。そしてジャッカルという名前を聞きだす。
殺し屋を雇ったと考えたフランスは世界各国の警察に協力を依頼。捜査をルベル警視に全権を一任する。
ロンドンで数年前のコンゴの要人暗殺でチャールズ・カルスロップというイギリス人が捜査にあがったこと思い出した。チャールズ・カルスロップのパスポートを確認、同姓同名をあたるうち、一人の行方が不明だ。
ここ3ヶ月の間に新規のパスポート申請を洗うイギリス。子供の頃に亡くなった人の名前で申請している可能性が高い。該当する人物が見つかり、直ちに各国の警察へ。
しかしすんでのところでジャッカルはフランスに入国。果たしてルベルは暗殺を阻止できるか?


高校生の頃(だったと思う)にテレビ放送で観て原作本も読んだこの映画。もう一度観たいと思ってはいたが、何となく機会がなくて40年。
ムービープラスで放送されたので早速録画して鑑賞。

いやー面白いなあ。
フレッドジンネマンの演出が派手さがなく、音楽も全くない。
この淡々としたところがいいのだよな。最後の最後なんかジャッカルを追いつめ銃撃戦になるところなど、一瞬で終わり(でも迫力あるのだなあ)ここが実にいい。
(あの殉職した警官、たまたま路上警備をしていてルベルに「ちょっと一緒にきてくれ」と言われて撃たれちゃうんだもん。可哀想だよなあ。彼には殉職として十分に手当してほしい)
この一瞬で決まる派手さのない演出が今でも好きである。

また銃を試射するシーンも印象的。
一度撃ってスコープを調整、また撃って調整、3回撃って調整したところで本番の炸裂弾で撃ってスイカが割れるシーンなどかっこいいなあ。

ジャッカルが潜入したとなるとホテルを一軒一軒当たっていくのだが、当然ホテルに泊まらなければ探せない。そこでパリへの途中で知り合った未亡人の家に行ったり(男女の関係を持つのでエドワード・フォックスのバックヌードもあり。これは覚えていなかった。案外テレビ放送ではカットされていたのかも知れない)して移動。

パリではサウナで知り合った男の家に泊めてもらうが、「これってそういう関係?」と思っていたら、やはりこの男はゲイだったのだ(映画ではそれほどはっきり出ないが、ネット情報ではホモの男の家に泊まったと書いてある)。

また途中情報が漏れていると察知したルベルは政府幹部を内偵。女に情報を漏らした男を特定する。その後で「よくあの男が怪しいとわかったな」と言われ「いや、みなさん全員盗聴しました」と答えるユーモアがいいなあ。

そして今回忘れていたが、途中車の色を塗り替えたり、交通事故にあったりとか、移動中もいろいとトラブル続出。
そして最後の最後に暗殺の瞬間で阻止、というクライマックスだ。

さらに最後に最初に目を付けたカルスロップは別人だったというオチがつく。
ジャッカルの暗殺の準備の丁寧さ、後半のルベル警視の追い詰めなど今観ても全くあせない面白さに感服した。
よかった。






警視庁物語 七人の追跡者


日時 2020年5月8日 
場所 AmazonPrimeビデオ
監督 村山新治
製作 昭和33年(1958年)


マンホールの中から女性の死体が発見された。身元が分かるものはなかったが、ラジオのニュースで該当者があった。マネキン製造会社の経理の事務員・千田文枝だ。彼女は25日の従業員の給料を銀行から受け取ってそのまま行方不明になったという。
会社の同僚や経理課長の黒木は文枝は白いオパールの指輪をしていたといい、銀行の出納係はヒスイの指輪をしていたという。
聞き込みにより文枝は銀行前で男の車に乗っていったという。とちゅうガソリンスタンドで給油しており、その時に文枝は「子供がけがをして病院に行こうとしていた」とガソリンスタンドの証言でわかった。
文枝がよくいく質屋を調べたところ、オパールの指輪が入れたことがあることがわかり、そこから指輪をたどった。そこである貴金属商がその指輪を買い取ったことも分かった。しかもヒスイの指輪と交換しており、その差額を払ったのは黒木らしい。
黒木は女性関係は多く、今は新橋のバーのホステスに夢中のようだ。そのホステスは今度赤羽に店を出すという。その金の出所は黒木ではないのか?


「警視庁物語」シリーズ第7作。東映スコープというシネスコサイズ。監督は戻って村山新治。村山監督の「上野発五時三五分」で黒澤明の「野良犬」の影響を感じたが、本作のタイトルは「七人の侍」の影響ではないか?「七人の追跡者」は長田(堀雄二)、林(花沢徳衛)、金子(山本麟一)などの刑事たち。どの作品にも使えそうなタイトルだ。
前回まで活躍していた波島進の刑事はいなくなり、そのかわり大村文武の太田刑事が加わっている。

本作の今までと違うのは小沢栄太郎のいかにも怪しい奴が早々に登場することだ。今までは聞き込み、手がかりをたぐっていって犯人は最後の最後に登場、という感じだったのだが。
小沢栄太郎の黒木がそのまま犯人じゃ芸がないよなあ、と思っていたら、安心した。黒木はアリバイがあって犯人じゃなかった。
ガソリンスタンドの店員は文枝の車にいたのは黒木ではないと証言したのだ。しかも黒木は犯行時刻、バーのホステスとホテルにいたのだ。
しかし金を出したのは黒木ではない。

では誰が、という話でホステスが別の客の松原といたときに黒木と文枝が一緒にいるところを見かけ、松原との会話で一緒にいる女性は松原の近所の人で「世間って狭いはねえ」と話したというのだ。しかもホステスは25日が黒木の給料日で会社にバーのつけを取りに行ったことがあり、金の受け取りを文枝がすることを知っていて松原に話したというのだ。

文枝を使って松原を呼び出す。その待ち合わせ場所が渋谷のと文化会館前。つまり渋谷パンテオンの前である。今はヒカリエに建て変わったが懐かしいなあ。

あと今回、神田隆の捜査主任がでんと座っている刑事部屋に小鳥が舞い込んできて、羽を怪我しているからしばらく鳥かごに入れて飼う、そして事件解決と同時に羽が直ったその鳥を放すエピソードが挿入。
あまり意味があるとは思えないが、「刑事たちの優しい一面」を出したかったのだろう。
今回もはずれなし。





弁当屋の人妻 もう一品、私はいかがですか?


日時 2020年5月6日 
場所 DVD
監督 堀 禎一
製作 平成15年(2003年)
(公開時タイトル「SEX配達人 おんな届けます」)


オサムと美香は同棲してもう長いがオサムの態度は煮え切らない。美香が「結婚とかどう思う?」と振っても「俺はデリヘルのドライバーだし、こんなんじゃ結婚なんて」と逃げられてしまう。
そんな美香の最近の楽しみは毎日午後3時にイカフライ弁当を買いにくる男だった。ついにその男・ススムから「結婚してください」と言われる。
オサムは新人のチアキを好きになっていた。給料日、彼女を指名してみる。チアキは「倍だからね」といい、その晩二人で十分絡み合うが、翌朝「180分で倍の10万円にしておくね。明日からも運転よろしく」とメモを残してホテルを出て行った。
ススムの誘いに応えるために一度デートする美香。美香は昔風俗でバイトしていてオサムとはその頃知り合ったのだった。ススムは就職もまじめにして将来がありそうだった。しかも彼に言われて思い出したが、かつて客として出会った男だった。偶然立ち寄った弁当屋でバイトしてると知り、通い始めたのだった。しかし「つきあってる人がいてあなたとは結婚出来ない」と断った。
今日もチアキをある客に送り届ける。出てきたチアキは「あたし店を辞めることにした」という。出てきた客はススムだった。
夕べ家を空けたオサムと喧嘩した美香は弁当屋の同僚に家に泊めてもらう。
午後3時、弁当屋にイカフライ弁当を頼む男がやってきた。オサムだった。「結婚しよう」彼はそう言ってくれた。


「夏の娘たち」の公開がポレポレ東中野であったとき、堀監督の過去のDVDを1本1000円で販売していた。それでなんとなく買ってしまった1本。結局そのままになっていたんだが。
コロナ禍でずっと家でDVDを観るGWだが、もはや未見の購入済みソフトの消化週間だ。

ストーカー的なススムがやばそうなルックスなので観てるこちらも警戒してしまう。これがもう少し普通そうな青年だったら、映画の印象もちょっと変わってくる感じ。
彼は結局はチアキが選んでくれたみたいですし。

いろいろあって結局主人公二人は結婚の決意をするというハッピーエンド。個人的にはススムのエピソードは好きです。
デリヘルのオーナー役でマメ山田出演。
久し振りに観たので懐かしかった。







恋する弁当男子


日時 2020年5月6日 
場所 DVD
監督 小泉 剛
製作 平成23年(2011年)


ファッション誌の新人編集者・風間亮(斎藤祥太)は幼なじみで今は売れっ子モデルの小夜(山本博子)が転んだ際に撮影で借りてきた衣装を誤ってだめにしてしまう。その弁償を命じられ、金欠に。
困った亮は行きつけのバーのマスター(クリス松村)に相談すると「それなら自炊しなさい。あたしが教えてあげる」と言われ、料理の特訓を受ける。
そんな時、小夜はとある日本料理店の取材に行った際に新人の板前(白石朋也)と知り合う。
雑誌の企画で「弁当を作る男子」として風間を紹介してみたら意外に好評。その雑誌に風間が持っている包丁が写り、板前の師匠(遠藤憲一)がバーのマスターがかつて自分と一緒に修行した仲間とわかる。
かつて二人の師匠は二人を対決させ、後を継がせようとしたが、少年時代のマスターは「勝負とかする気になれない」として逃げ出したまま、決着がついていないのだ。
そこで風間と新人板前が弁当対決をすることになった!


斎藤祥太は双子の二人とも好きな俳優なので、(今は事実上引退してるようだが)観てみた。監督の小泉さんは国映のメンバーとしてピンク映画も観てるし。(そういえば2011年といえば「スコット・ピルグリム」の映画を観に夕張まで行ったときに斎藤さんとは会ったな)
DVDで観たが、ブックオフの500円均一コーナーでなぜかよく観るのだ。モーニング娘。の飯田圭織が出演してるからそこそこ売れたのだろうか?

ラブコメなのだが、ラブのあれこれはあまりない。モデルの小夜とフードライターの飯田圭織の間でもう少しいろいろあっても良さそうだが、弁当の話になってしまう。
またそもそも幼なじみの今はモデルの小夜が全く魅力がない。そりゃ役によっては似合ったかも知れないが、人気モデルには見えないなあ。

あと私だけの考えかも知れないが、クリス松村のいわゆる「おねえタレント」の起用は苦手である。そもそもオカマを出して笑いを取ろうとするのが安易な感じでいやなのだ。

それと一流料亭の弟子と素人の弁当男子の対決では最初から勝負が見えすぎてないか。事実、風間が負けるし。
ここは街で人気の弁当店との対決ぐらいがよかったのではないかなあ。
どちらが多く売れたの数の対決とか。

あと試合の前の特訓のシーンが風間と板前であるのだが、板前の方がさらしにふんどし姿で妙にエロかった。
斎藤祥太主演で弁当を素材となったらなんかもう少しやりようがあった気がするがなあ。どうだろう。もったいない気がした。




水滸伝


日時 2020年5月6日 
場所 blu-ray
監督 チャン・チェ
製作 1973年(昭和48年)


宋の末期、圧政に苦しむ人々を救う英雄たちが梁山泊に集まっていた。その梁山泊の首領をジブンキョウ(黒沢年男)によって殺された。
首領の仇を討つためにジブンキョウを倒したいが、奴は武道の達人。奴を倒せるのは北京にいるかつてはジブンキョウと同じ師匠で武道を極めたロシュンギ(丹波哲郎)だけだ。ロシュンギを仲間にしようと梁山泊の軍師が行くが、「盗賊の仲間にはなれない」と断わられ捕らえられてしまう。
しかし彼らをかくまったと取られ自分たちの身を滅ぼしかねない。
義理の息子のエンセイも同じ意見。軍師たちを苦そうとしたが、ロシュンギは妻と通じる使用人に裏切られ、先に通報されてしまう。
ロシュンギが通報されて捕らえられたと知った梁山泊の面々は彼を救い出し、ジブンキョウを倒そうとする。


丹波哲郎が香港映画に出演したことがあると知ったのはいつだったろうか?
アメリカでソフトになっていると知り、購入しようかと思っていたら日本語版blu-rayも発売になった。早速買ったがそのままになっていてコロナ問題でステイホームなのでやっと鑑賞。

丹波先生は中国語に吹き替えなので、その独特のせりふ回しは楽しめない。だから楽しみは半減なのだな。
この映画、知らなかった理由に日本では未公開だったのだ。
黒沢年男氏のインタビューが特典として入っていたが(たぶん2000年代前半だろう。同時期に撮影した丹波哲郎のインタビューも入っていたから)、そこで完成後に東宝の試写室で藤本真澄氏と東和の川喜多長政氏と鑑賞し、日本では買わないとなったそうだ。
面白くないもんなあ。

話はぜんぜん進まないのだよ。
ロシュンギを牢屋の見張りを買収して逃がす、捕まる、また逃がす、捕まる、また逃げるを3回ぐらい繰り返し、いい加減飽きてくる。
丹波先生がインタビューで「香港では殺陣師が監督になるようだ」と言っていたけど、そのせいかなあ。
殺陣を効果的に捕らえることが重要で、ドラマには低いのかもも知れない。

丹波先生も丹波節が封印だが、その代わり殺陣、アクションで大活躍だ。
「三匹の侍」などで殺陣の経験はあるが、70年代ともなるとアクションから離れていたが、「難しいことをやってみたくなった」という動機だったそうだ。吹き替えが半分だそうだが、逆にいうと半分は丹波先生なのだ。「沖縄決戦」の出演で藤本氏に気に入られ、それで推薦されたそうだ。
時期的には「日本沈没」「ノストラダムスの大予言」の頃ですね。

ロシュンギの義理の息子で武道の達人がなかなかのイケメン。
それに限らず、この映画、役名と役者名が登場時に表示される。日本では知らない人ばかりだけど、オールスター映画なんだろう。

黒沢年男のインタビューによると当初ショーブラザーズとしては三船敏郎と仲代達矢のオファーだったそうだ。なるほど、それを聞くといろいろ納得できる。
また当時ブルース・リーが出始めの頃で、それこそ「ドラゴン危機一発」の頃にブルース・リーの映画を見て、これが新時代の香港映画だと感じたそうだ。かたや「水滸伝」は京劇風で昔ながらの殺陣だとか。
そんなことも日本未公開になった理由なのかも知れない。
勉強になった。








警視庁物語 夜の野獣


日時 2020年5月5日 
場所 DMM配信
監督 小沢茂弘
製作 昭和32年(1957年)


丸の内線でスリの被害にあった男性は犯人を追いかけ小石川駅で降りる。犯人を追いつめたのはよかったが、逆に犯人の仲間に刺し殺されてしまう。警視庁は早速捜査を開始。被害者の身元は割れたが現金を全く持っていない、聞き込みから被害者は女性関係などなさそうな真面目な人間とわかり、物盗りが濃厚となる。
近くに空の被害者の財布と別の女物の財布が落ちていた。女物の財布は丸の内線で摺られた財布と判明。被害者のゲイボーイが犯人らしき人物の人相覚えていたことから犯人が割れた。
犯行現場の近くにイヤリングが落ちていたが、遺失物届けが出ていたのですぐに落とし主はわかった。だがその場所で持ち主は若い男と浮気をしていた。相手の男にも裏を取った。そして犯人らしき男がルノーのタクシーに乗っていったとの情報を得る。
スリの担当の三課の協力を得てスリを張り込む長田刑事(堀雄二)、タクシーの線を洗う山村刑事(波島進)。果たして犯人にたどり着くか。


「警視庁物語」シリーズ第6作。この映画は83分あり、何よりシネスコサイズ。なんか出世した感じがする。
冒頭の地下鉄は丸の内線。事件現場は「小石川駅」の近くなのだが、そんな駅はない。ロケ地を見ると後楽園遊園地が出てくるから、後楽園駅がモデルだろう。後楽園駅が昔は小石川駅と言ったのかと思ったらそうでもないらしい。

相変わらず地道な捜査。現場近くで客を乗せたルノーを探すが見つからない。「たぶんエントツをしたんでしょう」と言われる。
初めて聞いた言葉だが、客を乗せたことを会社には報告しないでそのまま運転手の収入にする行為、らしい。
山村刑事がエントツをする運転手のたまり場の食堂に行くがあっさり手ぶらで追い返される。新聞に忘れ物を届けてくれた運転手の美談が乗っていたことから今度はこの付近で客を下ろしたルノーを探す。
見つかってその客を下ろしたアパートがわかり、そこが女らしいと判明。
女はコールガールでその組織の元締めを追って・・・と緻密な動きで実に面白い。

刑事は長田、山村のほかには金子(山本麟一)林(花沢徳衛)が活躍。
またスリ仲間の線もつながり、今回の犯人のアジトがわかり、逮捕に向かうが向こうは拳銃を持っていて銃撃戦、と娯楽映画として実によく出来ていた。

前半「刑事たちは相手にいやな顔をされても聞き込みをしなければならない」など説明的ナレーションが多いのが蛇足かなあ。この辺がドキュメンタリータッチと言われるゆえんだろうけど。
あと東野英二郎が時計屋の主人役で出演。被害者が月賦で買った時計が盗まれて未亡人に残りの代金の請求書を出す。そのことを刑事に相談し、「そりゃお困りですね。私から相談してみましょう」と電話する。
主人は「ああもちろんお待ちいただいて結構ですよ。事務的に出してしまったんでしょう」というが、電話を切った後で「時計も戻ってきてないのにどうするんだよ。警察にいいやがって」とグチる人間描写の芸が細かい。

「警視庁物語」シリーズの中でも傑作。
やっぱりこのシリーズはたまらんなあ。





ドラゴン危機一発


日時 2020年5月5日 
場所 blu-ray(ディアゴスティーニ)
監督 ロー・ウェイ
製作 1971年(日本公開1974年)


故郷を離れていとこのシュウの住む都会にやってきたチェン(ブルース・リー)。シュウの親戚に紹介され、彼らが働く製氷工場で働くことになった。
早速働き出したチェンだが、うっかり氷を落としてしまう。割れた氷から何かを見つけた仲間だったが、監督たちから取り上げられる。
帰りに二人は工場長に呼ばれ、今日見たものを黙っているようにいわれ、金を渡されたので金は断ったが、帰りに二人は殺された。
翌日、二人が帰らないのを心配したシュウが工場長に掛け合うと社長にあって見ろと言われたので会ってみたが、帰りに殺された。
シュウの妹のチャオ・メイはチェンに恋心を寄せていた。
次はチェンがシュウのことを聞きに行くが、工場長の接待を受け酒を飲み、女を世話される。女の方は酔って寝てしまったので何もなかったが、宿から出てきたところをメイに見られてしまう。
仲間から工場長の接待を受けてシュウの用件を忘れたことを責められるチェン。
接待を受けたときの女性と再会するチェン。彼女から社長は氷に麻薬を仕込んで売っていると聞き、夜中に工場に行ってみる。そこには氷漬けにされたシュウの死体があった。
襲われるチェン。彼の怒りが爆発する!


本日もGWにも関わらず自宅で映画である。
朝から「グリズリー」「ハンガー18」「悪魔が最後にやってくる!」とBC級映画ばかりだが、この映画も以前ディアゴスティーニでカンフー映画ブルーレイシリーズが出た時の第1巻で購入。第1巻だから900円ぐらい。その価格だから買ったのだ。本当は「怒りの鉄拳」がよかったんだが。

実はブルース・リーの映画は公開当時、これと「怒りの鉄拳」の2本立てで観ただけである。観なくても当時はヌンチャクがおもちゃとして売られていたし、みんな遊んでいた。(しかしヌンチャクって危ないよ。今なら無理じゃないかなあ)
ブルース・リーは「燃えよ!ドラゴン」でその人気に火がついたが、その人気にあやかって急遽輸入したのが香港時代の映画。これが主演第1作で、東宝東和が輸入した(「燃えよ!ドラゴン」はワーナー映画なのだな)。

具体的な映画館は覚えていないが、名古屋のどこかの2番館かまたは前の映画が打ち切りになって代わりの番組として2本立ての再上映だったのだろう。(まだ小学生だったのかな)

この映画があまり気に入らなかったのはヌンチャクを使わないからだろう。「ブルース・リー=ヌンチャク」のイメージがあったから、ヌンチャクが出てこないととにかく物足らなかったのだ。
さらにいうとブルース・リーは上半身裸で戦うイメージがあるが、この映画ではまだほとんどシャツを着ている。
「上半身裸、ヌンチャク」のスタイルが確立する以前の映画と今なら解釈できるけど。まだまだ成長途中だったのだ。

今回約45年ぶりに鑑賞したわけだが、話は詰まらない。仲間がいなくなる、工場長や社長に聞きにいく、「明日警察に頼む」と言われる、帰ってこない、また聞きにいくの繰り返しでまったく話が進まない。
これではだめだろう。途中で麻薬の事が解る、なんとか使用とする、仲間がやられる、警察に行く、手が回っている、今度大きな取引がある、ぶっつぶず、とかの展開がなきゃ。
それも詰まらない理由だろう。

社長の息子で色男だが、腕も強いイケメン登場。これが日活映画で言うところの宍戸錠の役回り。それならそれでもっと活躍させればいいと思うがなあ。

ラスト、ついに堪忍袋の緒が切れて社長の家に殴り込むチェン。最後は社長も殺し、やってきた警察に逮捕されるというラストは完全に任侠映画。
ああ、こういうところに影響を及ぼしていたんだなあ。
それが解っただけでも観た価値はあった。

書き忘れてたけど、香港の美人女優ノラ・ミャオが氷水売りの少女でゲスト出演。冒頭と途中でワンシーンずつ登場。本筋には関わらない完全な顔見せ。
あとウィキ情報では本作のロケは香港ではなくタイだとか。そうか、だから出てくる文字がタイ語なのか。

「怒りの鉄拳」や「ドラゴンへの道」「燃えよ!ドラゴン」もいよいよ観てみるか。





悪魔が最後にやってくる!


日時 2020年5月5日 
場所 DVD
監督 アルベルト・デ・マルチーノ
製作 1977年(昭和52年)

イギリスのケイン社の社長、ロバート・ケイン(カーク・ダグラス)は第3世界の国に新しい原子力発電所を建設しようとしていた。
しかし筆頭株主でもある妻が反対していたが、あるパーティに侵入した暴漢に殺された。逮捕後、その暴漢に会ったロバートも殺されかける。
建設予定地の国の首相に原発反対派が新たに就任。しかしその首相はすぐにヘリコプター事故で死んだ。
ロバートの息子のエンジェルはすでに父の仕事を手伝う立場だった。
建設反対派を説得するために安全性についての意見書をノーベル賞学者のマイヤーに見解を出してもらうようエンジェルは頼む。しかしマイヤーは「原発は危険だ」と意見を覆す。その直後に海の事故で死んだ。
その頃ケインの会社のコンピューターが「2V231」という謎の数字を弾き出す。偶然飛行機で出会った司祭がそれは裏返すと「IESUS」となり、反キリストは何でも裏返すと教えられる。
ロバートはサラという女性と知り合い、再婚を意識するようになる。
またロバートは原発に関わる数字がことごとく黙示録にかかれた反キリストの数字と一致すると知り、原発が人類を滅ぼす予言だと考えるようになる。
サラとの間に子供ができる。果たしてこの子供が悪魔の申し子なのか?


これもツイッターかアマゾンのおすすめ商品で表示されて「つい」買ってしまったDVD。値段も数百円だったようだ。
B級ホラーである。完全に「オーメン」の焼き直し。主演をカーク・ダグラスにしたことまで「オーメン」を意識している。(向こうはペックだからね)

「原発ホラー」とかDVDジャケットにあるけど、期待とは違っていた。
てっきり完成した原子力発電所でホラーが起こると思ったのだ。
ぜんぜん違っていた。
しかも人が死ぬ描写もぜんぜんエグくない。イタリアホラーというからもっとエグいかと思った。ホントはエグいの好きじゃないからエグくなくていいんだけど。唯一エグいのは新首相の頭をヘリコプターの回転翼が跳ねるところぐらい。

そしてロバートが夢にうなされるようになるのだが、夢のシーンでロバートは全裸になっている。なんで全裸なんだよ。カーク・ダグラスの尻には興味ないなあ。案外吹き替えなのかな。でもここで全裸にする意味が分からない。前を見せて走るシーンがあるが、ここだけ股間はボカシが入る。
ここがホラーか。

サラが妊娠して「2番目の息子が悪魔の化身」みたいなことを司祭にいわれてサラを堕胎させようとする。結局エンジェルの方が悪魔なのだ。
エンジェルは実は双子で生まれたときにエンジェルのへその緒が兄の首に絡まって亡くなっているのだ。
それでエンジェルが悪魔と気づく。観客はとっくにわかってたけど。

このエンジェルが吉沢亮を不景気にしたような顔で、確かに美形の不気味さはある。「オーメン 最後の闘争」のサム・ニールより合ってるね。
この辺はイタリアの美的センスと言っていいのか。

最後はなんだかんだあってもロバートとサラは逃げ出すことに成功して、例の原発を作る国に逃れている。そこで無事女の子(この赤ん坊も殺されかけた)と仲良く3人で暮らす。
一方エンジェルは会社を引き継いで原発を完成させようとする、というところで終わり。

スリーマイル島事故があり(映画が作られたのがこの前か後かはっきりしないが)、いくら反対運動があっても次々と作られるのはまさに悪魔の意志のように感じたのだろう。
そういう視点から映画の企画は始まってると思う。
その社会的な志は評価したいと思う。







ハンガー18


日時 2020年5月5日 
場所 DVD
監督 ジェームズ・L・コンウェイ
製作 1980年(昭和55年)


スペースシャトルから人気衛星を打ち上げる実験中に謎の物体が現れた。打ち上げた衛星はその物体に衝突し、衛星発射実験は失敗した。その時に宇宙飛行士の一人が亡くなった。
スペースシャトルと2人のパイロットは無事帰還した。報告を受けた政府高官(ロバート・ヴォーン)は2週間後に迫る大統領選挙に悪影響を及ぼすことを心配し、マスコミに公表しないことにする。シャトルの事故はすでに発表されているので、原因は宇宙飛行士のミスとした。
NASAでも謎の物体のことは知っており、それがアメリカ本土に着陸したこともつかんでいた。直ちに確認にいき、物体は回収し研究施設を持つ空軍基地ハンガー18に移動させる。
宇宙飛行士のスティーブとルーは真実を追求するために動き出す。2人も着陸地点に到達するが、何かを持ち去ったあとを発見する。その2人は別の男から車で追跡を受け、相手の車は事故を起こしてしまう。
NASAの責任者のハリー(ダーレン・マクギャビン)は宇宙船や、その乗組員、書かれている文字を分析する。


ツイッターでこのDVDの発売元のWHDが作品紹介をしてるのだが、「ロバート・ヴォーン主演、ダーレン・マクギャビン出演、UFOと遭遇、ロズウェル事件の映画化」というワードがひっかっかたので、ついアマゾンで衝動買いした。1500円ぐらいだったからだけどね。

観始めて「わっ」と思ったが、これがVHS録画からDVDにしたレベル。
しかも画面サイズが4:3なので、劇場映画ではなくテレビムービーなのだろう。
ロバート・ヴォーンは主役じゃないよ。ワシントンの一室から報告を受けてああだこうだと指示するだけの悪役。こいつが隠蔽を指示する。


物体から出てきた乗組員は人間とそっくり。解剖してみると人間に似ている。文字はナスカの地上絵にも似ていて、ピラミッドに残されている文字にも似ている。結論として地球の原人と宇宙人が交わった子孫が現在に人類。
はあ?一見もっともだが、ナスカの地上絵やピラミッドの文字と原人では時代がかなり違うぞ。
まあ話としてはおもしろいですが。

一方宇宙飛行士の方だけど、政府の監視を追い払おうとしてカーチェイスになり、最初の2人が死ぬ、そして次にやってきた二人も死ぬ。
おいおい悪の組織の一員ならともかく、向こうは単なる公務員だぞ。4人も殺していいのかよ。
飛行士も一人が死ぬ。そして生き残ったスティーブはハンガー18にたどり着く。

秘密がばれることを恐れた政府高官は、事故に見せかけてすべてを消し去ることにする。
それが無人飛行機を研究施設に落として爆発させるということ。
ジャケットに「ラストシーンが911を想起させる」とあるから何のことかと思ったらそういうことだったのですね。

最後は建物は爆発したが宇宙船は残っていて、たまたまその中にきたハリーが記者会見を開く、と伝えるナレーションで終わる。
「あの宇宙船をどうやって基地に運んだんだ?」などの疑問は湧くけど、まあはったりの聞いた話で楽しめました。
画質がまともだったらもっとよかったんだけどねえ。








グリズリー


日時 2020年5月5日 
場所 bllu-ray
監督 ウィリアム・ガードラー
製作 1976年(昭和51年)


アメリカの国立公園。二人の女性キャンパーが何者かに襲われて死亡した。森林警備隊の隊長・ケリー(クリストファー・ジョージ)は熊に襲われたと判断するが、公園の管理者は公園を閉鎖しようとしない。
噂を聞きつけたハンターたちもやってくるが倒すどころか犠牲者を増やしてしまう。
動物行動学者のスコット(リチャード・ジャッケル)は熊はグリズリーという今はいなくなった種と考え、生け捕りを主張する。
やがて被害は拡大。ケリーはベトナム帰りのヘリパイロットのドン(アンドリュー・ブライン)と共にヘリで捜索を開始する。


1976年、誰がどう考えても「ジョーズ」の便乗企画と思える映画が公開。それがこの「グリズリー」。当時は映画を見始めてる頃だったが、この映画は存在は知っていたが観てない。たぶん「ミッドウエイ」と同じ時期で小遣いにも限りがあったから優先順位も低くパスしたのだと思う。
便乗企画のB級映画ってのは中学生でも分かったからね。

後にDVDなどにもなっていたが、レンタルはなく(たぶん。よく探した訳じゃないけど)そのままになっていた。
今回、コロナ問題で映画館は休館で、お金を使わなくなり少し余裕ができたので、スティングレイからブルーレイが発売され(定価5060円するのだよ)、勢いで買った次第。

そんな訳で今回初鑑賞。はっきりいって「テンタクルズ」よりはまとまってるね。
「テンタクルズ」は後半話が破綻してたし、ジョン・ヒュートストンとかヘンリー・フォンダとかやたら大作感を出していた分、落差が激しい。

その点、2番目に襲われるのが女性森林警備隊員が仕事中に(休憩時間?)に滝で水浴びをするのを襲われる。ここで服を脱いで滝に入るのだ。ロングで撮ると白いパンティーだけで上半身裸に見える。
「おおエロもあってB級感満載!」と思っていたら、その次に人物のフルショットがあり、そのときにベージュのブラジャーをつけていたことが分かる。すげーなー、期待させて実はブラジャー着けていたなんてPG対策万全です。

その後、襲われる人が出てくるが、とにかく熊の顔のアップ、腕のアップの繰り返しでグリズリーがせりふで5mと説明されるが、その大きさが実感できない。
木に残った爪痕の場所から判断するとか、見せ方がある気がするのだが。

最後は「俺は一人でやるぜ!」というスコットは一人で行かせ、隊長とヘリパイロットの二組で捜索。
ところがですよ、ベテランの動物学者はあっさり襲われてしまう。
それで血だらけになってグリズリーに埋められるが(熊は餌は一度埋めてまた食べる習性がそるそうで)、足が動いて目を覚ますスコット。
「おお生きてたのか!ここから反撃するのか?」と思わせて起きたところでまたすぐ襲われて今度こそ死ぬ。
何だよそれ!

結局スコットとドンのチームがグリズリーを発見。
空から攻撃するかと思ったら、地上に降りてあっさりヘリも襲われ、パイロットも死ぬ、そしてロケット砲で一挙に爆破。

なんか盛り上がりに欠けたなあ。
滝のエロシーンがよかったけど、やっぱりPGの限界はあったな。
長年のもやもやがなくなってそこは満足した。






仁義なき戦い 完結篇


日時 2020年5月4日 
場所 アメリカ版blu-ray
監督 深作欣二
製作 昭和49年(1974年)


武田明(小林旭)は出所後、天政会を結成。表向きはやくざではなく、政治結社。初代会長には山守(金子信雄)がついたが1年後、自分が2代目会長に就任していた。大友勝利(宍戸錠)を副会長に、早川も幹部に、腹心の若者・松村保(北大路欣也)を理事長にしていた。
呉の広能組の広能(菅原文太)は現在刑務所だが、その若者が天政会の若者と喧嘩になり、呉と広島の対決が始まってきた。広能の舎弟・市岡(松方弘樹)は天政会と関係の深いやくざ金融の男を殺す。
呉との対決を主張する大友派と神戸をバックに持つ広能との抗争は避けたい松村派に分かれるが、武田の後押しがある松村に大友はかなわない。
やがて警察は武田を逮捕。松村は会長代行を務めることに。しかし大友はそれを許さない。市岡は大友と手を結んだ。


「仁義なき戦い」シリーズ最終作。「頂上作戦」で笠原和夫は書き上げたつもりだったが、会社側の希望でもう1本作ることに。そういった事情もあって脚本は高田宏治にバトンタッチ。
「頂上作戦」でも映画の10年前の抗争だったが、今回は完全に数年前の話。実際も松村保のモデルも現役ばりばりの頃で、いろいろと作りにくかったようだ。

そんな裏事情は関係なく、観客として映画を楽しむ。
武田も大友も槇原(途中から登場)も江田も歳をとっている。よく考えると実際は「頂上作戦」から2年後なので、ちょっと老けすぎな感じがするのだが、世代の違う松村が主役となり、世代交代を強調している。

特に抗争の末に槙原、江田が死んだときは「ああ!」と思った。
槙原は第1作から登場し、山守組結成の頃から生き残っている唯一のメンバーだ。
同様に江田は村岡組のメンバーで第2作から連続して登場。
20年以上の物語で、ついに、という感慨でいっぱいになる。

もちろんこの映画はずっと以前(90年代前半)に何度もビデオなどで観ている。記憶に残ってるシーンも多いが、その中で大友が最後に一人で殴り込みに行こうとしてタクシーを拾おうとするシーンは強烈である。

武田がラストで「落ち着いたら一杯飲もう」と言い、広能は「お前とは飲まん。死んだ者にすまんけんのう」と答えるシーンは二人の奇妙な敵味方を越えた同じ時代を生きたもの同士にこそ解る会話である。

若者として桜木健一が登場するが、シリーズを通して今まで登城した若者で一番情けない。水中銃で襲おうとして転んで足に撃ってしまったり、槙原を襲うときも小便漏らしていけない。さらに最後には襲撃されて死んでしまう。
しかし広能がこの若者の葬式に行ったシーンでこの映画は終わる。
映画の途中で網走に収監されている時に広能は手記を書くが、その最後に「つまらん者が上に立ったから下の者が苦労して若者が血を流す」と記されているという。
まさにこれがこの映画を貫く核であり、その犠牲になった若者の葬式でこの映画は終わるのが正しい。

全5部作、圧倒的な迫力のあるこの映画はこれで完結。
日本のもう一つの戦後史を描ききった名作である。
いつまでも語り継がれる資格のある映画だ。






仁義なき戦い 頂上作戦


日時 2020年5月4日 
場所 アメリカ版blu-ray
監督 深作欣二
製作 昭和49年(1974年)


昭和38年、東京オリンピックを前年に控え、池田内閣の所得倍増計画の高度経済成長に沸いていた頃、神戸・明石組をバックにした広能組(菅原分太)と打本組(加藤武)、そして神和会をバックにした山守組(金子信雄)の対立は激化していた。
広能たちは義西会の岡島(小池朝雄)を味方に付ける。縄張りを分け合う川田(三上真一郎)も一応は協力する。
山守組を仕切るナンバー2の武田明(小林旭)は各地から助っ人を呼んだが、金がかかって頭が痛い。
打本は「元は広能と山守の親子喧嘩だろ」と当てにならない。実は川田はこれを機会に岡島にとられている野球賭博のを何とかしたい。
若者は手柄を立てようとする。
果たしてこの戦いの決着は?


「仁義なき戦い」シリーズ第4作。公開は1月の正月第2弾。
今回は「代理戦争」の直接の続編である。

「代理戦争」に続き、親分たちの政治的駆け引きが続く。だけでなく今回はもう実力闘争も始まっている。
若者たちを演じるのは夏八木勲、黒沢年男、小倉一郎など。
生粋の東映のいわゆるピラニア軍団(当時はまだ名乗ってなかったが)ではなく、なじみの薄い俳優たち。

その中でも好きなのが、まずは岡部正純。後に「宇宙からのメッセージ」でも活躍するが、岡部が山守が隠れてるキャバレーを襲撃するが、親分の打本はそれを武田にチクる。それで武田たちがやってきたところで警察がやってきて双方逃げ出すのだが、誤って武田の車に乗ってしまう。
そこへ武田が「やめんかい、呉越同舟じゃ」というシーン。
(武田ってさすがインテリなのか「呉越同舟」とか「枯れ木も山のにぎわい」とか言うことに知恵があるのだな)
この後岡部は車がエンストした隙に逃げてきた。
その武勇伝を小林稔侍に話し、「山守にチンコロしたのは親父らしいぞ」と知る。その後に小林が「だからわしらはなめらるんじゃ!」と食べていたラーメンのどんぶりをぶつけて中身が飛ぶシーンは最高である。

そして極めつけは小倉一郎の野崎弘。
川田組の若いもんだが、岡島のナンバー2の藤田(松方弘樹)ともつきあいがあって少し手伝っているのだが、川田は藤田が邪魔。そこで野崎を使うのだが、それをけしかける台詞が「こんなもここらで男にならんと、もう舞台は回ってこんぞ」という。
その後のシーンで広島基町(通称原爆スラム)に住む野崎の家になる。
幼い弟や妹がテレビを見てるが、中古のせいか写りが悪い。
母親(おそらく原爆後遺症)がつらそうな顔をして「テレビ消しないやい」「弘、あんたも仕事もしよらんと!」と叱る。
そこで「今にさらのテレビ買うちゃるけん!」という。
ここが記憶では怒鳴るように言っていたと思うが意外に静かに言っていた。
貧困でおそらく学歴もないのだろう。でも這い上がりたい!という情熱にあふれていた。たとえ法に触れることでも。

この当たりの描写がこのシリーズの肝であり、その魅力はすばらしい。
「損をするのはいつも若者」という作者の主張はやくざ社会だけでなく、戦争をはじめとする国家がそうなのだ。
その執念に近い叫びがこのシリーズのあせない魅力なのだ。

そして戦いは警察によって両者壊滅。まさに勝者なしの不毛の戦いとなった。
舞台となるのは昭和38年なのだが、映画の10年前。これでは関係者も存命が多かったろう。









仁義なき戦い 代理戦争


日時 2020年5月4日 
場所 アメリカ版blu-ray
監督 深作欣二
製作 昭和48年(1973年)


昭和35年の広島。村岡組のナンバー2が白昼の商店街で射殺された。その兄弟分の打本(加藤武)が殺した奴が「村岡さんの客分じゃけえ、出来んよ」とはっきりした態度を取らなかったことが引いては病気療養中の村岡の跡目を継がなかった遠因となる。
打本は全国制覇を狙う神戸・明石組と縁組みをすることで箔をつけ広島の親分になることを考える。顔の広い広能(菅原分太)に仲介を頼む。打本は明石組の幹部と兄弟分になる。
いよいよ村岡の引退が決まり、武田(小林旭)、松永(成田三樹夫)、江田(山城新伍)は呉の山守(金子信雄)に2代目になってもらおうと計画。山守を信用していない広能は反対したが、結局は山守が2代目に。
面白くない打本はますます明石組に近づく。
対立が激化していく仲、新しい若者が極道の世界に入る。倉元猛(渡瀬恒彦)もその一人だった。


「仁義なき戦い」シリーズ第3弾。公開は73年9月25日。「広島死闘篇」がGW公開だから5ヶ月ぐらい。相当ハイペースだ。
かつての「金田一」シリーズも2作目が4月公開、3作目が8月末公開でしたからね。

「代理戦争」は60年代の米ソ対立が各地での戦争がそれぞれがバックについての戦争だったからそう言われ、やくざ社会の戦争でも言われるようになった。明石組と神和会との代理戦争だ。

1時間40分の映画だが、状況も形勢も敵味方も5分に1回逆転する。
このスピード感には恐れ入る。実話がベースだから出来るのかも知れない。作家の頭の中ではここまで状況が変わる本は書けないのではないか?事実は小説より奇なりだなあ、と思ってしまう。

広能たちが幹部になって自分たちは喧嘩の表には出ない。
そこで登場するのが若者たち。今回フォーカスが当てられるのは西条(川谷拓三)と倉元。
西条は女がテレビを欲しいと言ったので組が警備するスクラップを持ち出し金に換える。わびに左手首を切り落とす。後半、彼なりに考えて倉元をけしかけて槇原(田中邦衛)を襲撃するが失敗。

この倉元なのだが、騙し合いを画策する親分連中とは違い、鉄砲玉として活躍する。
また倉元の母親が登場するが、これが泣かせるのである。貧乏していても極道になっても子供を心配する母親。そしてラストで抗争によって命を落とし、さらに骨も襲撃された車によって粉々にされる。
「仁義なき」シリーズは名キャラクターが多いが、この母親と彼らに広能を紹介する先生(汐路章)が印象的で忘れがたい。

この「代理戦争」と第1部がレーザーディスクも買ってシリーズ中、一番観た映画だ。
ラストの骨を握りつぶし怒りに燃える広能のアップに原爆ドームがカットバックされる。
「戦いが起こるときはいつも若者が犠牲になる。そしてその若者は報われることはない」というナレーションは国と国との戦争にも言える。
政治家のしてることはやくざの幹部連中と同様の汚い行為。そのつながっていく思いが作者たちのこの映画に登場する若者に対する共感につながっている気がしてならない。





仁義なき戦い 広島死闘篇


日時 2020年5月3日 
場所 アメリカ版blu-ray
監督 深作欣二
製作 昭和48年(1973年)


昭和25年、朝鮮動乱の頃、山中正治(北大路欣也)は大友組との喧嘩がきっかけで広島の村岡組の一員となる。
戦後のマーケットを仕切っていたテキヤ大友連合の息子、大友勝利(千葉真一)は父親(加藤嘉)と違い、広島が村岡の天下になることを許さなかった。一方山中は村岡(名和宏)の姪にあたる靖子(梶芽衣子)と想い合う仲になっていた。
村岡は山中の靖子への想いを利用しつつ、抗争に利用していく。


「仁義なき戦い」シリーズの異色作。番外編というべきか。
まずシリーズの主役の広能昌三がほとんどでず、広島における新キャラクター、山中正治と大友勝利がメイン。
大友は狂犬ともいうべき己の欲望のままに生きる武闘派。山中は上の命令を忠実に守り続ける殺人マシン。

山中の忠誠心は見事なもので、靖子と出来てしまい、村岡の逆鱗に触れ九州に隠れていたときに土地のやくざから殺しを依頼される。
その時のやり方が「食事をごちそうしたい」と料亭に連れて行き、座敷の座布団の下に拳銃がある。そして隣の部屋の話をわざと聞かし、「あいつをやらにゃいけんの」という話を聞く。それだけですべてを察し、次に相手を殺すような男だ。
実に上からしたら便利な男である。
この構図は最後まで貫かれ、大友はあまりの凶暴ぶりに部下(室田日出男)にも裏切られる始末である。

また大友、山中が主役とはいえ、脇のキャラクターも見逃せない。
私が印象深いのは広能の舎弟の島田(前田吟)。「寅さん」の博のイメージが強い前田吟がやくざ役をやっていたとは驚いた。
遠藤辰雄を殺すシーンで警戒してドアに近寄らない彼に手紙を渡して、それを引き抜くすーっと手紙が動く瞬間に撃つ殺しの芸、そして自首する前に村岡にビールをもらってそれを両手で飲むシーン。
いいですねえ。

また金に困っている広能組として犬を殺して焼き肉にするシーン。
「ここらの犬はしつけが悪いのう」のあとで犬にも肉を一切れやるシーンが秀逸。
(でも犬の肉ってうまいのかね。韓国では犬の肉を食べる習慣があったそうだが、今でもあるのだろうか)

そして大友に捕まってロープで縛ったまま海に投げ出さる川谷拓三。
またこのシリーズは女性のキャラクターがほとんど出てこない。
バーの女以外でキャラクターがあるのは山守の妻ぐらいなのだが、本策では珍しく梶芽衣子の悲劇のヒロイン登場。

「仁義なき戦い」シリーズの中では私はあまり好きではなく(広能が脇に回ってしまったから)、「番外篇」として価値は大きい。
もう一つの「仁義なき戦い」として価値ある作品である。

それにしても「仁義なき戦い」が1月13日公開で本作が4月28日公開。すごい製作スピードだな。






仁義なき戦い


日時 2020年5月3日 
場所 アメリカ版blu-ray
監督 深作欣二
製作 昭和48年(1973年)


昭和21年、広島県呉市。闇市では秩序もない世界で暴力の応酬が起こっていた。広能昌三(菅原分太)はヤクザもの同士の喧嘩がきっかけで刑務所に入り、そこで土居組の若頭・若杉(梅宮辰夫)と知り合う。彼の出所を助けたことから保釈金を都合つけてもらい、出所後、山守義雄(金子信雄)の杯をもらう。
しかしそれは裏切りと保身の抗争の始まりだった!


日本映画史上、名作中の名作、「仁義なき戦い」だ。
この映画を初めて観たのは学生時代の今はなき吉祥寺東映の土曜日のオールナイト番組の「仁義なき戦い」一挙上映の5本立てだった。
眠気も忘れて観た記憶がある。
それ以上に就職したころにレーザーディスクが発売され、それで毎晩のようにちょこちょこと観ていた。(全部観る、という訳ではなく、気に入ったシーンを何回も観る形で。ほかにも「砂の器」もよく観ていた)

物語は呉の闇市から始まる。後に知ったが、呉は海軍工廠があった関係で海軍軍人、関係者が多かった。敗戦により彼らは一挙に失業し治安は悪かったらしい。広能たちが冒頭で海軍の軍服を着ているのはこのことと無念ではなかろう。

今更この映画の魅力を書く気にはなれない。これほど人気のある映画にいちいち説明は不要だろう。

特に好きなのは冒頭の闇市のシーンだ。
広能が飲んでいる。「キャー」という女性の悲鳴、それを見る広能、米兵に追いかけられる女性、立ち上がる広能。この立ち上がって流れてしまってる画像に「広能昌三 のち山守組幹部」と紹介される。その後の山方、坂井なども同様。この流れた映像がこの映画の「混乱」を象徴してるようだ。

そして土居組の若杉による上田の腕斬り、広能の喧嘩の殺しに至る一連のシーンのテンポの心地よさは何度観てもほれぼれする。「間」と「リズム」が最高なのだ。

その後の組の結成後も広能の指詰め、土居組に殴り込むかどうかでの槇原(田中邦衛)の泣き、の笑いのシーンも満載。
いかにヤクザ組織が滑稽で騙し合いと保身の連続であるかが「これでもかこれでもか」と示される。

そして最後まで「ナンボいうても親は親じゃから」と親分の山守に逆らえなかった広能も、最後の最後で坂井の葬式で参列者の香典や花に銃弾をぶっ放す。

「おどれ!腹くくっとるんじゃろうな!」「山守さん、弾はまだ残っとるがよ」
まだまだ書き足りない気がするが、言葉で言えるような映画じゃないんだよなあ、「仁義なき戦い」は。
20年はこの映画をちゃんと観てなかったが、それでもかなりのシーン、せりふは覚えていた。
それだけもう観る必要はないくらい頭に入ってる映画です。

今回アメリカ版blu-rayで鑑賞したが、色がちょっと違う気がした。東映はもっと青っぽいイメージである。
それがコダックっぽい色になってる気がする。
これはアメリカ版DVD(全部観てないけど持ってるのだ。しかもスチールBOX仕様である)もそんな色調な気がした。
アメリカ人が色補正をするとこういう色になるのかな。





警視庁物語 上野発五時三五分


日時 2020年5月2日 
場所 DMM配信レンタル
監督 村山新治
製作 昭和32年(1957年)


オートレース場で大穴が出た瞬間、サラリーマン風の男が「当てた!」と叫んだ。その瞬間、男は倒れた。撃たれたのだ。警視庁の刑事たちが調べると現場には血の付いた手ぬぐいが残されていた。タクシー会社らしいが全部は読みとれない。また被害者はパチンコ玉を弾丸とした手製の拳銃を使用したとわかった。手ぬぐいにあった電話番号をたどっていくとタクシー会社は解ったが、すでに会社はない。20名ほど運転手がいたが、現在の行方が解るのは数名。そのすべてにアリバイがあった。
パチンコ玉の方は浅草のパチンコ店のものと判明。またオートレース場で被害者が大穴車券を買っていたらしいと解り、換金したのは袖にボタンの付いたジャンパーを来た男と解る。
再びパチンコ店に行き店員に心当たりを聞き、そこからたぐってと池本雄一という男と、そのヌードモデルの女にたどり着いた。池本の家を探っていくうち池本たちがさっきまで飲んでいた居酒屋にたどり着いた。
店の前で池本ともう一人の男に遭遇。追いかけたところ長田刑事に向かってもう一人が発砲。長田刑事は撃たれてしまう。


「警視庁物語」シリーズ5作目。監督はこの映画がデビューとなる村山新治。今までは小沢啓一とか関川秀雄だったが、今回は新人だ。この後村山は「警視庁物語」の主要な監督となっていく。
刑事も若手の方が波島進演じる山村刑事。前作までは全く観なかった顔である。

このシリーズ、本当に刑事に個性がなく、誰がどのせりふを言っても大して問題はない感じである。
山本麟一は前作もそうだったが、口ひげを蓄えている。前よりはせりふも多い。前作では刑事役ではなくびっこを引いた闇医者(元衛生兵で医者ではない)を演じていた花沢徳衛も刑事役で復帰。

今回は堀雄二の長田刑事が撃たれることが特徴。このシリーズは後半のものも含めてもう10本以上観ているが、刑事が撃たれる描写を観たのは初めて。

最後に拳銃を持っている方の主犯を山村刑事が追いつめるのだが、「ヤクの取引に深夜2時半に来る」という情報を元に張り込むのだが、結局朝になっても現れない。もう諦めようと言うときに主犯の久保田(多々良純)がやってくる、朝の上野界隈を追いかけ、上野駅をまたぐ跨線橋で追いつめる、というあたりの描写が黒澤明の「野良犬」によく似ている。
絶対影響を受けてるね。してみると長田刑事が撃たれるのも(幸い命には問題ない)志村喬の刑事の影響か。
長田と山村は「野良犬」の三船と志村ほどの関係はなかったけど。

最後には花沢徳衛は犯人の女を洗っているのだが、女が犯人から「上野発5時35分の列車で逃げよう。もしこなくても先に行ってくれ」と言われたので張り込む。
花沢も列車に乗り込んでしばらくしたところで女の隣に座り、警察手帳を見せ、その手帳のアップで終わる。
こういった理詰めのドライな演出が好きだなあ。

久保田たち犯人に行き着くまでの前半はよかったが、後半になると犯人が分かってあとは張り込むだけになるので、やや展開に乏しい。
そこが惜しかった。






警視庁物語 白昼魔


日時 2020年5月1日 
場所 DMM配信
監督 関川秀雄
製作 昭和32年(1957年)


深夜の第一ホテルの前で外人の車が盗まれた。犯人(木村功)はその時に持ち主の外人を無音の拳銃で射殺。パトカーが追いかけたが丸の内で車をおいて逃げられた。
車に血痰が残されていたことから犯人は肺病と推定、また盗難車においてあったシネマスコープレンズ付きの8mmカメラがなくなっていた。
事件の報道を聞いたタクシーの運転手から犯人は関西訛で、タクシーの中に「125」と数字のあるコインを落としていった。そのメダルはジュークボックスに使用されてるもので、機械は日比谷のドライブインに設置されたものだという。
手がかりに行き詰まった頃、大阪でナンバーが同じ車が走ってるのが巡回中のパトカーに発見された。乗っていた男は中川(潮健児)。その男の免許の住所に当たると今は引っ越していたが勤めていた場所はわかり、女の存在もわかる。女は新宿のトルコ風呂でマッサージをしていた。
女の話では中川は鉄村という男をつれてきて、8mmカメラで自分を撮影していったという。
8mmフィルムは現像に出すだろうから現像所に手配したところ、連絡があった。そのフィルムを見せてもらうと、トルコのマッサージ嬢のほかに銀座の洋品店のマダムが写っていた。
中川の自供から車の窃盗団が割れ、一味を逮捕。しかしそのリーダーで主犯の鉄村は行方不明だ。銀座の洋品店を張り込んでいたところ、マダムが出かけた。マダムは鉄村と合流した!


「警視庁物語」シリーズ第4作。
今回は自動車窃盗団と殺し。いきなりパトカーの追跡とはクライマックスである。
冒頭、犯人木村功が消音銃で殺すのだが、刑事たちは「?」という顔をしているし、銃器係が「いよいよ日本にも密輸されてきましたか」と言っている。
60年代の「007」をはじめとするスパイ映画では常識だったが、この頃はサイレンサー付き拳銃って珍しかったのだな。

急に窃盗団の一味が大阪で捕まるという展開がちょっとご都合主義。
ここが惜しい。
「8mmカメラを使ったら現像するはずだ。それを追え」とか、「そう来るか!」という追い方をするのがリアル。
さすが「警視庁物語」である。

トルコ風呂とか登場するが、サウナ風呂にマッサージをするというわけで、この頃はまだ後のソープランドにつながるトルコ風呂ではないようだ。
また大阪で捕まった中川の資料を東京へ送るのに、ロールに紙を巻き付かせてそれをスキャンさせ、受信側もなんらかの準備をしなければならない大きな機械を使っている。ふーん、FAXの原型だなあ。

今回も主に活躍するのは長田刑事の堀雄二と宮川刑事の南原伸二。
普段はラストは大人数の警官で犯人を追いつめることが多いが、今回は南原伸二と山本麟一の二人だけ。
珍しいラストだった。
あと前回からラストに「刑法○○条 殺人は死刑または無期懲役」と表示される。
全体的に警察の科学捜査や法律を紹介する犯罪防止映画にしようという趣旨もあったのだな。

それにしてもこの映画、警察側に女性キャラクターが一切ない。
これも後の刑事物にはない特徴だが、この頃はまだまだ女性刑事(刑事部屋のお茶くみもいない)が活躍する発想がなかったようだ。

今回は前回アマゾンはスタンダードサイズにも関わらずビスタで再生だったので、今回はDMMに変更。こちらもストレスのない再生だった。