2020年10月

   
最短距離は回りくどくて、
―雨とソーダ水―
花の高2トリオ 初恋時代 とんかつDJアゲ太郎 花と沼 UFO真相検証ファイルPart1 
戦慄!宇宙人拉致事件の真実
スパイの妻 神田川 花火思想 星の子
劇場版ほんとうにあった怖い話2020
〜呪われた家〜
愛のラビリンス 望み 狭霧の國
浅田家! JA750号機行方不明 コーンフレーク LOVE STAGE!!

最短距離は回りくどくて、―雨とソーダ水―


日時 2020年10月31日18:00〜 
場所 池袋シネマ・ロサ スクリーン1(2階)
監督 山内大輔
製作 OP PICTURES


悠斗(向理来)は売り専を辞めて男の最初の恋人の青山先生と一緒に南の島に行こうと誓った。しかし出発の前日青山はどこかへ姿を消した。青山は死体で発見された。
3ヶ月後、悠斗の前に柴原という男が現れ、「君が知らないことを教えてあげる」と近づいてきた。柴原は六本木のある店に連れて行く。
彼もまた裏社会の風俗の世界の男だった。そこで流花という少年と引き合わせる。
柴原の話では青山は悠斗が働いていた店のオーナーの矢崎(竹本泰志)の店の金を管理していただけのはずなのに持ち逃げしようとしたことで裏組織から殺されたのだ。そして悠斗に今度は新しい店の店長兼プレーヤーとして働き、毎月200万円を2年間納めたら自由にさせてやるという。
その店の名前は流花の提案で「雨とソーダ水」と決まった。
ボーイの面接にやってきたのはタクミという少年。彼は以前は女の子とつきあっていたが、彼女に無理矢理女装させられ、それがきっかけで彼女とは別れたが女装の癖だけは残ったのだ。ある日宅配便の青年がやってきて「男が好きなんだろ?」と暴力的に犯され、それ以来その男、セイヤの虜になり、今は一緒に暮らしていた。
流花が最近生き生きしてして柴原は悠斗に嫉妬する。柴原は流花と青山の関係について説明してくれた。青山は悠斗とのことで学校を辞めた後、家庭教師をしていたのだが、その時の生徒が流花なのだという。
流花と青山は関係を持ち、流花は青山に夢中になる。だが青山は悠斗に罠を仕掛けるために裏社会を使ったが、その代償として流花を柴原に差し出したのだ。それでも流花は青山を愛していて、柴原への拒否の証として自分の男根を傷つけていた。
柴原は悠斗の頼みでタクミの彼氏のことを手下のケンに調べてもらった。
タクミの彼氏はかつて矢崎の店でナンバーワンで、それを嫉妬されて悠斗の男根を傷つけたセイヤだった。しかも矢崎はまだ生きていて、セイヤが面倒を見ていたのだ。
果たして彼らの行き着く先は?


あらすじを書くだけで800字以上費やしたよ。
この映画、前作を見ていないとさっぱりついていけない。私も去年の公開の時に見たきりだから細部は忘れていた。

「最短距離は回りくどくて、」というタイトルだけが同じで内容は別物かと思ったが、完全な続編。いやいや前は2つのエンディングがあったぞ。
話が純愛ではなくて、「すべて青山の仕組んだことだった」というノワールの方の続編になるのだろう。
やたら登場人物が出てきて、しかもほとんどが柴原の説明によるものだから、気をつけてないとなにがなんだか分からなくなる。
私も映画を見ながら脳内で反復の復習しながら観た次第。

悠斗は一応主役だが、出演シーンは少な目でサブキャラのシーンが多い。
流花のシーンや、タクミのシーンや、果てはケンのシーンまで話が広がる。ケンもゲイで(しかもウケ)恋人に犯されるシーンあり。
でも本筋とは関係なさそうだが、後編で関わってくるのだろうか?

カラミのシーンはバストショット(顔のアップよりもう少し引いた感じ)が多く、全身とかお尻とか胸とか男の色気があまり写っていない。
ゲイポルノとかAVじゃないからどうにも中途半端である。

とにかく後編を観てないので話は評価のしようがない。
しかし男根を傷つけられるシーンが2回あり(一つは前作の回想だけど)、ああいうのは観ていて痛々しいからやなんだよなあ。こういうの、山内監督はお好きなので(あと袋かぶせて殴るとか)私とはあわないかな。

でも男根のシーン、悠斗も流花も完全に切り落とされてるのだろうか?
それとも傷ついて男性機能が衰えただけなのかな?後編では流花と悠斗の関係が深まっていくようだが、なんだかなあ。

とにかく前作で完結した話を無理に続編を作ったから話が込み入ってくるばっかりばかりである。
タイトルは同じでも「姉妹編」として別の話でよかったと思うけど、なんでこんな話になったかねえ。








花の高2トリオ 初恋時代


日時 2020年10月31日15:00〜 
場所 ラピュタ阿佐ヶ谷
監督 森永健次郎
製作 昭和50年(1975年)


ミドリ(森昌子)は長野県上田から、アカネ(桜田淳子)は秋田から、アオイ(山口百恵)は長崎からそれぞれ夏休みを利用して東京にやってきた高校2年生。ミドリは叔母である矢沢恵子(南田洋子)を訪ねたが連絡の行き違いで恵子は不在。アカネもアオイも恵子には縁があり泊めてもらおうとしていたのだった。出会った3人は今は別居中の恵子の夫一平(フランキー堺)を訪ねるがゴキブリが出る家のため退散。
困っているときにアカネの高校の先輩が大学のボート部で合宿してるのに出会う。合宿所に泊めてもらおうとしたが、部長の柳田(夏夕介)に断られる。仕方なく無断で倉庫に泊まる3人。
翌朝、恵子が迎えにきてくれた。一平は小説家志望だったが、今は熱気球作りに夢中。そんな一平に不満を恵子は持っていたのだ。
そんな一平は近所で足を怪我した少年、弘(安藤一人)に出会う。足のリハビリをがんばる弘に一平は思わず「おじさんが気球に乗せてあげるからリハビリ頑張れ!」と言ってしまう。
熱気球を作るために資金が必要と助手の啓太(クロベー)と窓拭きのバイトを始めるがあっさり怪我をしてしまう。
仕方なくアオイたちが熱気球作りを引き継ぐことに。そのためには自分たちだけでは無理で柳田たちの協力が必要だが、「大会準備に忙しい」と断られてしまう。


ラピュタ阿佐ヶ谷ではアイドル映画特集。今日の13時からは「急げ!若者」が上映された。「急げ!」はもう20回前後観てるのだが、妙に癖になった映画で今でも上映の機会があると観に行く。ソフト化されていないので上映の機会があれば観に行くというのはあと「その場所に女ありて」もそうだ。
小谷監督も来館されていて、上映後には寺脇研さん(「昭和のアイドル映画」の著者)もお見えになって監督と舞台挨拶。(小谷監督は足が悪く、最後列の席にすわったままだったが)

で、本日次にラピュタで上映されたのがこの「初恋時代」。この映画初公開は「東京湾炎上」「がんばれ!若大将」の2本立ての次の番組で8月公開。だからタイトルは知っていたが観てなかったので気になったので拝見。(調べてみたら同時上映は三浦友和が出演した「青い山脈」)

でこの「初恋時代」だが、どこをどうすればこういう話になるのかねえ。
「初恋時代」というからには東京へやってきての彼女たちの初恋、柳田とかへのラブコメにならねばならないのではないだろうか?
あと桜田淳子が出会ったバイク青年とか。そういうのはいなかったけど南田洋子がファッション関係の仕事なのだから、モデルの青年とかさ。
そしてモデルの青年に処女を奪われそうになるけど守るとか。そういう恋愛一辺倒で話を進めることも出来たろうに。

でもなんだか熱気球作りなんて方に話はいくし、納得できない。それにフランキー堺のキャラクターが私は好きになれないのだよ。

話の方は結局は柳田も気球作りを手伝って初飛行ではなんとかクロべーも含めて少年と5人で行く予定だったのだが、クロベーはドジだから乗り込みに失敗して4人で飛行し少年の祖父母の住む霞ヶ浦へ。
(霞ヶ浦が出てきても特攻隊の話にはならない)

ラストシーンは少年を祖父母の元に残し(少年の両親は交通事故で亡くなっている)3人は気球に乗って東京に帰る。
初恋要素はほとんどなく、なんだかなあ、という感じである。









とんかつDJアゲ太郎


日時 2020年10月30日19:40〜 
場所 新宿ピカデリー・シアター3
監督 二宮 健


渋谷で創業60年を越える老舗とんかつ店、しぶかつの三代目揚太郎(北村匠海)は特にしたいことがないので店を継ぐつもりで手伝っている。
毎日同じ渋谷の三代目たちと円山旅館の一室でゲームをして過ごす日々。
そんな時出前で行ったクラブのフロアの熱狂ぶりを見て心を動かされる。
そのDJをしていたオイリー(伊勢谷友介)に弟子入りを志願するが、「DJは人から教わるもんじゃない、自由にやれ」と言われ、仲間と独自のDJブースを円山旅館に作り練習する。
揚太郎は円山旅館から見えるビルに勤めるスタイリスト助手の苑子(山本舞香)に一目惚れしていた。
揚太郎は「とんかつDJ」としてYouTubeで動画を公開し、少しは話題になってきた。苑子にその動画を見せるが「何これ?ネコDJみたいなもの?」とウケなかった。
揚太郎は家賃滞納でアパートを追い出されたオイリーに丸め込まれて円山旅館のたまり場に住む代わりにDJを教えてもらうようになる。
初めは教える気などなかったオイリーだが、揚太郎の才能に気づき、イベンター(川瀬陽太)に紹介し、イベント出演をさせてもらうが、大失敗。
揚太郎はDJをやめようと思うのだが。


本来は6月公開だった北村匠海の新作映画。
コロナ禍で公開延期になり、その間に伊勢谷友介が大麻所持で逮捕、なんとか公開できそうになってフジテレビ製作(配給はワーナー)なので「めざましテレビ」にマンスリーエンタメプレゼンテーターとして週1回出演させ盛り上げようとしていた。
しかし人生「上り坂下り坂まさか」である。
10月28日の夕方、出演の伊藤健太郎が外苑西通りで交通事故を起こし、その場から立ち去ったとしてひき逃げの疑いで29日に逮捕。
芸能ニュースはこれ一色で映画館のチケットも発売されてるし、もういまさらどうしようもないのか、予定通り公開が決定。
初日30日の朝には「めざましテレビ」に出演の予定だったが、急遽キャンセル。さすがにニュースのコーナーで伊藤健太郎の話をしたあとで「ではその伊藤健太郎容疑者も出演の『とんかつDJアゲ太郎』本日公開です!」とはやれなかったんだろうなあ。

その伊藤健太郎だが、出演シーンは思ったより少なかった。別にカットされたわけではない。

で映画の方だが、どうもイマイチ乗れなかった。
なぜだろう?
ストーリーは冴えない主人公が未知の世界に出会う→自分もやってみる→師匠に出会う→とりあえずそこそこうまくいく→しかし大失敗→ライバル出現→励まされて復活→成功!という王道のストーリー展開。
出演者も悪くない。加藤涼や栗原類などの三代目たちもいいアンサンブルである。伊勢谷友介もいつもの嫌みなキザさがなく、いい感じである。
監督の二宮健はこういったメジャー大作は初めてのまだ29歳の新人。
演出も特にクセがない(出せなかったのかも知れんが)。

結局DJとかクラブの世界に私が乗れない(入れない)からだろうか?
そうとしかいいようがないのだな。
冒頭、揚太郎が弁当を配達しオイリーがそれを食べるのだが、オイリーは箸を使わず手づかみでとんかつやキャベツを食べる。
このシーンはオイリーの「自由人」ぶりを演出しているのはわかるのだが、妙に生理的に受け付けなかった。ここからこの映画に対して私が勝手に距離を置いてしまったんだろうか?

伊藤健太郎は最初に揚太郎が失敗するイベントで揚太郎のせいでフロアが下がったときに盛り返すDJとて登場。こいつがDJだけでなく、IT企業の社長もしている天才という設定。
その後揚太郎の前に立ちふさがるかと思ったら、新人DJコンクールの審査員として登場し、揚太郎の盛り上げに自分も参加してしまうという割とあっさりと揚太郎を認める。
ライバルというほどの活躍はなかった。

なお本日は初日でどこかの映画館(丸の内ピカデリー?)で3回の舞台挨拶。1回目は北村匠海が「公開できて心のそこからうれしい」と言ったという報道。
3回目の舞台挨拶は全国の各地の映画館でライブビューイング実施。私はその回をねらっていたのだが、満席ということはなかった。
この回には加藤諒も登壇したが、持ち前のテンションで場を盛り上げ、北村匠海に「テンション高いねえ、俺たち今日そんなテンションでやってこなかったよ」と感謝のつっこみを入れられていた。
いつもはちょっとくどさを感じる加藤諒だが、今日ばかりはそのテンションの高さに救われたと思う。
私の中の好感度は確実にあがった。









花と沼


日時 2020年10月29日20:50〜 
場所 テアトル新宿
監督 城定秀夫
製作 OP PICTUERS


沼田(麻木貴仁)は第三企画課の課長。課内ではバカにされキモい、ヤメロとさんざんな言われよう。でも一花(七海なな)は別だった。密かに課長をスマホで盗撮し、その動画を見ながらトイレでオナニーする。
一花はちょっと変わった趣味の持ち主。人が「キモイ!」というものを愛おしく感じるのだ。同僚に連れて行ってもらった一課との飲み会でも韓国料理の虫の料理を好んで食べた。イケメンの青山(山本宗介)に「それ美味しいの?」と聞かれて「味は普通ですが、見た目がいいんです」。
青山は一花を気に入って口説いてくるが一花はその気がない。
一花は退社後の沼田の後をつける。風俗店に入っていくのを見かけたが、中でなにをしてるのかわからない。
翌日、沼田のペンの盗み、そこに盗聴器を仕掛ける一花。その夜も沼田は風俗店に入り、女の子(しじみ)にキモられながら「お尻にペンを入れて!」とせがむ。それを聞いて興奮する一花。
オナニーも終わった頃、青山から電話があった。そのままホテルへ。
でも青山に抱かれながらも頭の中では沼田がいっぱい。
沼田は自分の動画を配信で流していたのだが、そこで会社の悪口をいい、それが会社にばれて結局クビ。
後任は青山になって喜ぶ同僚たちだが、一花はがっかり。
そこで今は警備員になった沼田と再会するのだが。


今年も開催のOP PICTURES+の上映イベントで鑑賞。本日が最終回の最終上映。つまりトリ。(結局今回はこの1本だけの参加)

前半の麻木さんのキモ課長ぶりがいい。でもちょっと「私もそう見られてるかも?」と思うと切なくなった。
(素顔の麻木さんはジャッキー・チェン似のイケメンだと私は知っています)

後半、一花と沼田が再会して彼女の部屋で結ばれる。翌朝、沼田は「付き合おう。恋人になろう」と持ちかける。
当然私なんかは結ばれるとも思うのだが、一花は拒否する。

うーん、そうかあ。女心はわからんなあ。
というか城定監督の発送なわけだが、確かにこのまま結ばれたんじゃ当たり前すぎるしなあ。「悦楽交差点」でも麻木さんは結ばれることはなかったしなあ。

なんか作劇としていろいろ考えさせられるラストでした。
本作は70分なので、ピンク版とも尺の差はないと思われる。











スパイの妻


日時 2020年10月22日18:55〜 
場所 新宿ピカデリー・スクリーン9
監督 黒沢 清


昭和15年、神戸。福原貿易を営む福原優作(高橋一生)は仕事仲間のイギリス人がスパイ容疑で逮捕されたことに憤っていた。「日本はだんだん息苦しくなる」。そんな彼の楽しみの一つが妻・聡子(蒼井優)や甥の文雄を出演者にして映画を作ることだった。
「大陸を見てみたい」と優作は文雄を伴って1ヶ月満州に渡った。しかし旅は2週間延びた。聡子は気づかなかったが、優作は弘子という女性を連れて日本に帰ってきた。
聡子の幼なじみの津森泰治(東出昌大)は憲兵隊の分隊長となって神戸に赴任してきた。泰治は聡子に「時局柄西洋風の生活様式は慎むように」と忠告するが、聡子はかえって反発するだけだった。
弘子が死体となって発見された。泰治は優作や文雄も何か関係してるのではと聡子を尋問する。
帰ってから優作に「満州でなにがあったか」と訪ねても「君が心配することでではない」と答えない。文雄も優作の会社を辞めて有馬温泉で小説を書きたいと籠もった。
優作は果たしてスパイなのか?


今年のヴェネチア国際映画祭で監督賞を受賞し話題の作品。
16日から公開が始まったが、あいにくと「鬼滅の刃」の超メガヒットの話題の陰に隠れ、全く芸能ニュースにはあがってこない。
NHKが制作母体なのも関係してるかも知れないけど。

話はその後、聡子は優作が金庫に隠していたノートとフィルムを見つける。それは関東軍の人体実験の記録だった。それを告発しようとしたのだ。文雄はそれを英訳するために籠もったのだった。
優作を救うために原本のノートを泰治に託す。ただちに文雄は逮捕されたが、口を割らなかったために優作は事情聴取だけで済んだ。
聡子は文雄を犠牲にして夫だけ助かればよいと考えたのだ。
優作は証拠の英訳ノートとフィルムをもってアメリカに発とうとする。

713部隊(という固有名詞は出てこないが)の話になるとは思わなかった。日本の劇映画で731が扱われるのは珍しいのではないか?
いいのか、右翼、ねつ造とかなんとか言わなくて。

なんとなく底知れない感じのする優作だが、実はもともとイギリスのスパイだったとか、聡子は憲兵のスパイだったというオチになるかと思ったら、そういう意地悪な展開にはならず、あとは夫婦力を合わせてアメリカに行って告発しようとなる。
最後の最後に逆転があるかと思ったら、最後までこの基本設定は変わらなかった。
ちょっと肩すかし。ここは逆転があるかと思った。

で、聡子と優作は別々にアメリカに渡ろうとするが、聡子は捕まってしまう。匿名の手紙が来たというのだが、これはおそらく優作が出したもの。
聡子は証拠になると思ったフィルムは優作によってすり替えられていた、というオチ。
妻には危ない思いをさせたくないという夫婦愛!

その後聡子は精神病院に入れられて終戦を迎える。病院を訪ねてきた旧知の医師野崎(この医師は前から名前だけ登場し、姿を現すのはここだけ。カットされたのだろうか?)(笹野高史)との会話で「私は正常ですよ、でもそんな私が狂って見えるというのが日本が狂ってるのでしょうね」と聡子がいう。
いやそれは台詞にしなくてもいいでしょう。却って興ざめしました。

ところでこの映画、どういう訳なのかNHKエンタープライズ制作。
パンフレットの黒沢監督の話では「最初、脚本家を通じて神戸を舞台にして8Kで撮ってほしいと言われて脚本家に任せていたら話がだんだん具体化していった」という感じ。
なんでNHKが映画を作ったのかよくわからない。大河ドラマ「いだてん」のセットをもう1回使って撮ろうという話だったんだろうか?

でもとは8Kだが、新宿ピカデリー(でなくてもたぶん他の映画館もそうだろうけど)では8Kが上映できる設備がある訳ではなく、2Kぐらいにダウンコンバートした状態。だから8K感全くなし。むしろ他の映画より画質が落ちるぐらい。
では8Kはいつ公開されるのか?NHKの放送用の2時間ドラマだったのかなあ?それがヴェネチアで賞を取ったものだから作品の格が上がってしまった。

でも悪い映画とか思わないけど、それほどの作品かあ、と思ってしまったのは本音。









神田川


日時 2020年10月18日19:00〜 
場所 ラピュタ阿佐ヶ谷
監督 出目昌伸
製作 昭和49年(1974年)


大学の人形劇サークルで活動する真(草刈正雄)は地方公演に行ったときに美しい女性と出会う。
東京に帰り、バイト先でその女性・みち子(関根恵子)に再会することができた。「一緒にお昼を食べよう」と近くの神社で弁当を食べる二人。
人形劇サークルの新作として真は「新・かぐや姫」を書いた。それはかぐや姫は月に帰らず、地球の男と幸せなる話だった。
地方巡業に行く前の晩、真はしばらく会えなくなる寂しさから、つい彼女のアパートで無理に抱きしめてしまう。驚いて拒絶するみち子。
そのまま地方公演に出かけた真だったが、みち子は追いかけて雪深い山の中にやってきた。かまくらの中で結ばれる二人。
やがて真はみち子の部屋で一緒に住むようになる。
真にはエリート官僚の兄がいた。兄は真に「いつまでこんなことをしてるんだ。まじめに勉強しろ!」と迫る。
みち子は妊娠した。それを知った真の兄はみち子をだまして産婦人科に連れて行き、堕胎させてしまう。
それを知った真は兄を殴る。兄は仕送りをやめると宣言。真は働き始める。真だけに働かせるのは忍びないとみち子もホステスとして働き出すと言い出す。そんなことから二人の間はぎくしゃくする。
真はサークルの友人・ビゼン(所雅樹)に「兄にみち子のアパートの場所を教えたのはお前か!」と追求した。実は真を好きなサークルメンバーのマキシ(黒沢のり子)が教えたのだ。真は子供を堕ろす羽目になったことを責めた。
ある日、ビゼンとマキシが行方不明になったと連絡があった。二人は雪山で睡眠薬を飲んで自殺したのだ。
荼毘の時、真はみち子に「ちゃんとやり直そう」というが、みち子は首を振った。


話は全部書いた。
大ヒットしたかぐや姫の「神田川」の映画化。と言っても歌詞とは関係ない。紹介記事によると「神田川」の作詞の喜多条忠が自らの愛と焦燥の学生生活を小説にし、その映画化。
どこまでが喜多条氏の経験かわからんけど。

まあとにかく暗い。草刈正雄も当時は二枚目だったのだが、出る映画がみんな暗い話でこれではなんだかなあ、という感じである。
でもそれは今観るとそう思うのであって。70年代はそうでもなかったのか?
当時「草刈正雄は陰がある」とか言われたが、それは役柄からくるのではないのか?もっと明るい話ならもっと陽性なイメージになったと思うよ。

人形劇にシーンから始まるのだが、その人形劇が「官憲の手先」とか「権力に負けない」とか完全に学生運動ののりである。74年というと浅間山荘事件後で学生運動は衰退していたと思ったが、まだ残り火があったのか?
74年当時はまだ小学生だったからその辺の空気は感じなかったが、後の三菱重工爆破事件とかあって完全に左翼活動は地下化してテロリスト認定を受けていた。

真がみち子にレイプまがいのことをするシーンでは関根恵子のおっぱいがちらっと(1〜2秒くらい)片方だけ写る。やっぱり関根恵子って「脱ぎも出きる美人女優」だったのだなあ、と改めて思った。大映のレモンシーリーズのころからそうだったしね。

かまくらでの二人が結ばれるシーンでは草刈も関根も全裸である。
ただしうつ伏せに寝転がってお尻は隠し気味だから期待するとはずされる。でも70年代らしいエロ描写である。
草刈に関してはその後同棲を始めてからジーンズに上裸のカットがあるけどね。

そんな見所はおいていて、とにかく話は暗い。
「新・かぐや姫」で使った姫と青年の人形が部屋に飾ってあったのだが、最後で真とみち子が喧嘩になった時に真はそれを川(たぶん神田川)に捨ててしまう。

ラストシーンはその姫の人形が都会の汚水にまみれた川を下っていきながら、「神田川」の曲が流れるという展開。
暗いなあ、とにかく暗い。日本のフォークが一番暗かった時代だよな。

真の友人のビゼン、サングラスに髭面で顔がよくわからない。声が山本圭に似てたし、やたらニヒルなので山本圭かと思ったが、あとで調べたら所雅樹という知らない人だった。

この映画の公開は1974年4月。ってことは「ゴジラ対メカゴジラ」の後だ。ふーん、そんな時代だったんだなあ。
そしてもう少しすると角川映画の「犬神家の一族」が登場し、こういった小さな暗い映画は消えていくことになる。

草刈正雄のイケメンぶりは十分に楽しめた。






花火思想


日時 2020年10月18日16:00〜 
場所 ネオ書房
監督 大木 萌
製作 2013年公開


ロックバンドでギターを担当していた優介(櫻井拓也)は今はギターを辞めコンビニでバイトしている。かつてのバンド仲間、幸夫と再会した。今度結婚するという。
アパートの風呂が壊れていたのでしばらく銭湯に行っていた優介だったが、そこで船田(久保健司)と出会う。船田はホームレスだったが、自称元バンドマンだという。
優介は船田と出会い、何かをふっきる為にコンビニも辞めホームレスになった。
優介は元々ベースの幸夫、ドラムの健二と3人でやっていたが、そこへボーカルの太郎(四宮勘一)が加わった。太郎は「売れるためにはなんでもしたい。売れなきゃ何にもならない」そのために「ドラムを変えろ」と言い出す。健二も自分がバンドの足を引っ張ってると分かっていたが、優介は言い出せない。そんないきさつがあったのだ。
ホームレス仲間の松波は小説家志望だった。何かしたいことがあるなら何かを殺さねばならないと彼はいう。


櫻井拓也さんの一周忌上映会としてネオ書房の切通理作さんと大木監督のコラボで開催。今年3月にユーロスペースでも上映があったのだが、そのときは大阪でのアジアン映画祭に行って観れなかったのだ。
今回は大木監督と脚本の阿佐谷氏のトークイベント付き。

主人公はバンドマンだけど、結局は「クリエーター」とがテーマ。
船山も「ロックだぜ!」と叫び、優介も共感する。
バンドのボーカルは「売れなきゃ何を言っても始まらない。そのためには何だってやる!」とドラムを替えろとか馬の被り物をしろとかいう。

映画の冒頭は優介ではなく、松波だ。松波が編集者から「小説ってのはなあ」と説教されると怒ってコップを居酒屋の床にたたきつけて出て行く。

ああ、若いなあ、と思う。
これは否定しているわけではなく、「自分のやりたいことと売れること」の狭間で悩む青春後期のクリエーターの姿である。
私なんかはそういう悩みは乗り越えて(忘れ去って)生きてきた。
それなりに人生と折り合いをつけたと言うべきか、妥協して妥協したことすら忘れたというべきか。

そういう悩みを恥ずかしくもなく大声で映画で言えるとはすばらしいことである。
実際に大木監督も脚本を読んで恥ずかしさを覚えたようだから。

トークイベントで語られたが、脚本の阿佐谷氏が最初は監督で自主で作ろうとしたんだそうだ。しかしやってみたら1日で無理だとわかり、その組は解散したという。そして阿佐谷氏と親交のあった大木監督が(長編映画は撮ったことがないにも関わらず。番組制作会社でADの経験はあったそうだが)監督をすることになったという。
(それにしても制作資金はどっから出たのだろう?)

櫻井さんの出演は「犀の角」の助監督を大木さんがやったことが縁で櫻井さんにオファーしたという。櫻井さんはギター経験はなかったしバンドのシーンは音なしだからギターを弾いてる振りだけでよい、と大木監督は伝えたそうだが、それなりに練習して発表会に出るレベルにまでなったという。
すごいなあ、櫻井さんやっぱり努力家だよ。

タイトルの「花火思想」、映画の中に花火は出てこないし、花火について語るわけではないのでどういうことかと質問したら「花菱草」という花があり、その花言葉が「私の願いを聞いて」みたいな感じなので、それをもじって「花火思想」になったとか。花火は関係ないんだ。

櫻井さんの未見の主演作が鑑賞することができ、ただただ懐かしかった。
彼はもうこの世にいない。






星の子


日時 2020年10月18日11:45〜 
場所 テアトル新宿
監督 大森立嗣


ちひろは未熟児として生まれ、赤ちゃんの頃発疹が収まらず、両親(永瀬正敏、原田知世)は心配した。ある日、父親が「水が悪い」と知人から聞き、その人の紹介で「宇宙のエネルギーを帯びた水」金星の水を教えてもらう。
その水でちひろの体を拭いたところ、発疹は収まった。それ以来両親はその水を売る宗教を信じている。
15年後、ちひろ(芦田愛菜)は中学3年生になり、新任の数学教師、南(岡田将生)にあこがれる。数学の授業中、南の似顔絵を描く。
ちひろには姉がいたが、両親の宗教に反発し家を出ていた。
ある日、クラスの文集の編集で遅くなり、ちひろと同級生2人で南の車で送ってもらうことになった。ちひろの家の前で千尋の両親が金星の水を浸したタオルを頭に乗せているところをみられてしまう。
「不審者だ」と言い放つ南。翌日、南はちひろに「何で俺とお前が夜のドライブをしたことになってるんだ」と怒っている。
そしてホームルームの時間にも「授業中俺の似顔絵を描いてる奴がいる。はっきり言って迷惑だ!その変な水もしまえ」と怒鳴り出す。
宗教の合宿に行くちひろ一家。
今回は両親とは別々の部屋。母親が自分のことを探していると聞かされるがなかなか会えない。やっと会えた。両親と3人で夜の星を観に行く。


話は最後までだいたい書いた。あとお母さんの兄(大友康平)が「金星の水を公園で汲んできた水と入れ替え両親を宗教から抜け出させようとする話」が途中で出てくる。

この映画には縦糸がない。
ちひろの現在と小学校時代のエピソードが時系列がばらばらで挿入される。
南との関係も傍観的で南との関係が近づいていく(変化していく)エピソードもない。南もちひろを拒絶してるしドラマとも言えない。

おじさんには「志望校はおじさんの家から近いから、合格したらおじさんの家から通えば?」と誘われるがきっぱり断る。
かといって「私はお父さんお母さんを信じてます!」ときっぱりいうシーンがあるわけでなく、ドラマ的クライマックスがあるわけではない。

ラストは両親と3人で夜空を見上げて、流れ星が見えた見えないを繰り返してるシーンで終わる。
結局何か大きな変化や決断が一歩を踏み出したわけではなく、まだ途中で映画は終わった。

まあ「まだ迷っている」で終わるのもありだとは思うけど、それにしても結論がなさすぎるなあ。
もう少し結論っぽいものがほしかった。
原田知世と永瀬正敏の共演はなんか懐かしかった。




UFO真相検証ファイルPart1 
戦慄!宇宙人拉致事件の真実


日時 2020年10月17日21:30〜 
場所 ヒューマントラストシネマ渋谷・スクリーン2
製作・撮影 ダーシー・ウィアー
(チラシに「監督」の表記はなし)


ドキュメンタリー映画。最近「れいこいるか」の件でミニシアターによく行ったのだがそこでチラシをみたのがこれ。
ちなみにPart2も今月末に公開される。

正直言って期待とは違ったな、というのは本音。
数々ある宇宙人による拉致事件一つ一つゆっくり丁寧に解説してくれると思ったら、その辺はあっさりした説明で駆け足で説明される。

そしてその事件に対する世間の評価などが解説される。その世間の評価をウィキペディアではこう書いてある、とウィキの画面を写して説明するのだ。

しかも英語ナレーションによるものだからずーっと話っぱなし。
これが日本語字幕を追うのに疲れる。映画見てるより字幕を読んでる感じなのだな。
古い事件だと当事者は亡くなっていて、その姪が出てきて「叔母の話は史実だと思うわ」と話す。

とにかく「画で見せる」「初公開の映像がある」という訳でもなく、やたら延々とナレーションで説明するだけだから疲れるんだよな。
昔の木曜スペシャルの矢島正明さんのナレーションで観るこの手の番組はよかったなあ。好きで観たものな。
9時半からのレイトで、しかも字幕を読むばかりで疲れてしまい、数秒寝落ちすることも何度か。

でも「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」風に(というか「ブレア」が後だが)作った「ある晩に宇宙人が家にやってきた映像」がクレジットなどを編集で切ってテレビで放送されて「真実だ」といわれた事件がアメリカであったそうだ。作った監督が「これはフィクションだ」と言っても信じてくれなかったとか。(そこまで迫真だったのだからそれはそれでうれしかったようだが)

期待と違っていたからちょっとがっかりだな。Part2を観るかは思案中。


劇場版ほんとうにあった怖い話2020〜呪われた家〜


日時 2020年10月17日19:05〜 
場所 池袋シネマロサ2(地下)
監督 天野浩充


女子高生の小川汀(井桁弘恵)は祖母が亡くなって埼玉県の父の実家にやってきた。祖母は梯子から落ちて死んだという。近所の人の話では屋根に登って誰かの名前を呼んでいたという。祖母と一緒に暮らしていた叔父の洋二(草野康太)もいない。洋二さんはお酒の飲み過ぎで体を悪くし一人では歩けない体になっているはずなのに。
父と母が葬儀社と打ち合わせで出かける間、汀は一人で留守番をする事に。そこへ洋二がやってきた。しかし何か様子が変だ。
その洋二に追いかけられ恐怖を体験する。あまりの怖さに失神する汀。
起きたとき、すでに3日が経っていた。
1年後、新人ライターの高橋(和田琢磨)は編集長からある地方に残る「たまよばい」という風習について取材するようにいわれる。埼玉県のN.Oという女子高生から恐怖体験の投稿があったのだ。
「たまよばい」というのは古くからある日本の因習で、死者の魂を呼び戻す儀式だというのだ。
高橋はN.Oさんの投稿を元にそれと思われる土地に行ってみる。梯子がかかっている空き家らしき家があった。ところがそこにはおばあさんがいた。おばあさんは親切に家に招いてくれた。その時、おばあさんの息子らしい奇妙な男が帰ってきた。男は高橋に酒を勧めるのだが。


「ほんとうにあった怖い話」シリーズの最新作。よく聞くタイトルだがみたのは今回が初めて。日本スカイウエイが製作。

「一般の方の投稿を元にした再現ビデオです」という体裁だが、本当に投稿があったかはわからない。もっとも私が知らないだけで募集してるのかも知れないけど。

ホラーはあまり観ないタチなのだが、こういう心霊現象的なホラーはOKだ。これが頭かち割って、包丁で刺して血しぶきがぶわーとなるとだめなのである。
これが草野康太の顔つきが代わり(普段と魔物になったときでは役者がちがうとエンドクレジットを観て知った)、高橋を襲い出す。
その前に二人で酒を飲んでるときに「つまみがほしいな」と包丁をとってきて自分の指を切ろうとするシーンは怖かった。あそこで指を切ったら私はだめなのである。

恐怖を増幅される音楽や効果音がなり、普通の恐怖感が増す。
ここで映画作家は自分のカラーを出そうとしてしまうだろうけど(「普通にやっては面白くない」とばかりに)、そういうのはなしでとにかく基本に沿った演出も(この場合は)よかった。

この程度の怖さなら私はOKである。他の「ほんこわ」もちょっと観たいなと思った。









愛のラビリンス


日時 2020年10月11日15:25〜 
場所 光音座1
監督 池島ゆたか
製作 OP映画(2004年)


佑介(森健人)はフリーのスタイリストをしながらゲイ雑誌のグラビアモデルもしている25歳。カメラマンの篠崎(牧村耕次)とも関係を持っていた。佑介は年上好きでファザコンと篠崎に言われる。5歳の時から自分を育ててくれた父親の尚也(池島ゆたか)を尊敬しており、家事の出来ない父親の食事や洗濯などをしていた。
佑介は友人カズヒコのゲイバーも手伝っており、彼とも体の関係があった。また美容学校の後輩のマコトも佑介を慕っている。
尚也は実はエリという年の離れた恋人がいた。エリは結婚を望んでいたが、佑介になかなか切り出せない。エリは佑介のことをゲイではないか?と言い出す。エリが佑介の写真を見たいと言ったことから佑介の写真を探しに彼の部屋に入る。そこでゲイ雑誌のグラビアに掲載されている佑介を見てしまう。
佑介は篠崎が別のモデルとスタジオでセックスしている姿を見、そしてそのモデルから篠崎にかわいがってもらっているという話を聞かされる。
また佑介はマコトからも告白される。
そんな時、佑介のつとめるバーにエリがやってきた。


同時上映の「アイスクリームのかほり」で先日来たばかりだが、10月の後半は来れないかも知れないので1本だけ見にやってきた。
「アイスクリーム〜」が終わると広木隆一の「ぼくらの瞬間」だからしばらく来なくても大丈夫。

冒頭、篠崎によってセミヌードの撮影をしている佑介のシーンから始まる。ホットパンツに上裸に派手な白のベスト姿で実にセクシー。
出演の森健人がそこそこイケメンなので、むちっとした姿にはそそられるものがあり、つかみはばっちりだ。
このあたりはやっぱり池島演出は娯楽映画のツボを押さえている。

ゲイバーのカズヒコとのベッドシーンはピンク映画らしく濡れ場を増やすためでストーリー上の必然性はないのだが、「僕が好きなのは篠崎先生とカズヒコだけ」と言ってるがこの場合「だけ」はないだろう、というツッコミは野暮というもの。

エリが店に訪ねてきて話をしたことで、エリのことを認め結婚も承諾する。篠崎とも別れて後輩のマコトと二人で美容室を出すことになる。
最後に佑介の母の墓参りを尚也とふたりでするのだが、「サトミ、今から報告がある。心の中でいうからちゃんと聞いてくれ」として二人で墓前で手を合わせる。いちいち言葉にしないのがよかった。

父親の尚也と篠崎が実は昔恋人だった、というような無理矢理な展開もなく話はまとまっている。
ツッコミどころも特になく(さっき書いたことは小さなこと)きれいにまとまっており、エリの裸が出てきてトーンを乱すこともない。

名作という訳ではないが、破綻もなくよかったと思う。

望み


日時 2020年10月11日12:15〜 
場所 109シネマズ川崎・スクリーン5
監督 堤 幸彦


建築士の石川一登(堤真一)は妻・貴代美(石田ゆり子)高校1年生の息子・規士(岡田健史)と中学3年生の雅(清原果耶)と暮らし、仕事も順調だった。
しかし規士がサッカーで怪我をしてしまい、サッカーが出来ない体になってしまった。ふさぎ込み部屋にこもりがちな息子に「なにもしないとなにも出来ない大人になる。何か別の道で頑張れ」と声をかけるが彼に届いたかは定かではない。
ある晩、規士は出かけたまま帰ってこない。朝になっても帰ってこず、一登や貴代美の心配は募るばかりだ。近所で高校生が殺された事件があり、どうやら被害者は規士と同じ高校らしい。
やがて刑事が訪ねてきた。刑事の話では殺された現場から二人が逃走するのを目撃されており、被害者の友人関係を洗うともう一人行方不明の高校生がいた。計3人が行方不明なのだが、その一人が規士なのだ。
やがてマスコミが退去して押し掛けてきた。ネット上では規士が犯人と思われていて、一登たちの家にも嫌がらせの落書きがされていた。
しかも事件前に規士が購入して預かったはずの小刀がなくなっている。
しかし被害者の祖父が石川の仕事の関係者とわかり、工務店から「今後あなたの仕事は受けない」と言われてしまう。


雫井脩介原作のサスペンス。正直岡田健史が目当てで見に行ったが、(映画自体は面白かったが)岡田健史は最初と最後にしか出てこず、ちょっと不満が残る。

それはさておき、わたしなんかは子供はいないけど男だし、完全に一登と同じ立場で見てしまう。
妹の雅はもし兄が加害者だったら自分の将来にまで影響がでるので加害者でなければ被害者でもいいと考える。母親はたとえ加害者でも生きていてほしいと考える。一登はただただ「規士は人を殺せるような人間じゃない」と考える。
そうした三者三様の思いが交錯する。

そして取り上げたはずの小刀がなく、それは規士が持ち出したと知ったときの衝撃、それが見つかったときの喜びはこちらもうれしくなる。

結局は被害者であり、規士は死体で発見される。元はといえばサッカーで上級生からわざと怪我をさせられて、そのもめ事から始まったことだった。
最初の被害者の祖父(渡辺哲)や仕事仲間(竜雷太)から殴られたりしたのだが、最後には土下座して謝ってくれてほっとした。

息子が死んでそれはバッドエンドなのだが、息子には自分の言葉は届いていて、スポーツで怪我をした人のためのリハビリを仕事にしてみたいとか、ジャーナリスト(松田翔太)も記事にしないでいてくれたとか、妹も無事高校入学出来たとか他の要素はハッピーエンド過ぎる気がしないでもない。

その辺がエンタテイメント映画の限界かな。
話がうまくまとまりすぎという批判も可能だけど、まあよかった。







狭霧の國


日時 2020年10月10日13:00〜 
場所 シネマ・ノヴェチェント
監督 佐藤大介


明治42年、実は双子だったと聞かされた栄二は会ったこともない兄の栄一のために故郷に帰ってきた。生みの母は優しく接してくれた。
そこで蔵に盲目の少女、多紀理と出会う。多紀理は村の人々にはいないことになっていた。多紀理の母はかつてこの村を出て、どこの誰かもわからない男の子をだそして帰ってきたのだ。相手の男が異人だったため、目の色が違い、それを責められた多紀理の母は娘の目をつぶし、娘ともども湖に身を投げたのだった。しかし多紀理はなんとか生き残ったが、村の人々の手前死んだことにされたのだった。
栄二は多紀理が夜出て行くのを知り、あとをつけた。そこで湖の中から巨大な生き物と心を交わして多紀理を見たのだった。
そのころ村には開発の話があった。「湖に化け物が出る」という噂があり、それが原因で開発が中止されたら大変と村の一部の人間は湖に行く。
そこで怪物の姿を見て多紀理を生け贄にして神様に沈めてもらおうと計画。
多紀理に危険が及び、逆に怪物は怒り村を襲い出す。


人形劇プラス着ぐるみ怪獣の新作の自主映画。35分の短編だ。
この映画のことは去年、瑞穂町の公民館で地元に住む怪獣造形の村瀬継蔵氏の展示会があり、その時に怪獣のネブラが展示されていた。
(その後、横田基地での基地祭に行った)

人形劇プラス怪獣特撮ってなんだか新しいようで実は「サンダーバード」の頃からあるのだが、考えてみたら日本では初めてだ。
昔はNHKの子供向け番組で「ひょっこりひょうたん島」や「新・八犬伝」などがあったけど、映像作品では見なくなったなあ。

人形劇だとある意味人間ドラマも特撮だから怪獣も特撮でまったく世界観に違和感がない。これは「サンダーバード」にも言えるけど。
明治42年、日本のある村、という設定がファンタジックな題材にあっていた。

自主特撮映画と聞いて河崎実のような映画じゃないかと疑っていたが、ノヴェチェントで上映されると聞き、見てみたのだが見逃さなくてよかった。
今や怪獣はCGの時代になってきているけど、着ぐるみミニチュア特撮の一つの方向性になったと思う。
人形劇プラス特撮怪獣というジャンルでまだ長編を作ってもらいたいものだと思う。






浅田家!


日時 2020年10月4日12:20〜 
場所 TOHOシネマズ新宿・スクリーン9
監督 中野量太


三重に住む浅田家の次男、政志(二宮和也)は写真好きだった父親(平田満)の影響で自分も写真を撮り始める。大阪の写真専門学校に行ったものの2年ぶりに実家に帰ってきた政志は腕にタトゥーをしていた。
卒業制作で「1枚で自分を表現しろ!」と言われ、昔撮った家族写真を撮ることを思い立つ。まずは父親、政志、兄の幸宏(妻夫木聡)母親(風吹ジュン)を巻き込んで父、兄、自分、が同時に怪我をした日の写真を撮る。
それから「家族みんなの成りたかったもの」というテーマで消防士、レーサー、極道の妻、の写真を撮る。それを持って東京に出たが、どこも出版してくれない。そこで幼なじみの若奈(黒木華)が個展を開いてくれた。
その写真を見てくれた赤々舎の社長が気に入ってくれて出版した。
最初は売れなかったが、賞を受賞したことで成功した。
政志は家族写真を撮ることをするようになり、仕事も入り始めた。
しかし311の東日本大震災が起こった。


妻夫木聡の出演する映画は内容に関わらず観る主義なので、今回も鑑賞。
しかし彼ももう主演作は減ってきた。もう人気俳優って感じでもないのかなあ。私は好きだけど。

政志が出版社に写真を持ち込んだ時、相手に「これ家族写真でしょ?」と言われる。私は過去に他人の家族写真で一度だけ心を動かされたことがある。それは北朝鮮拉致問題の横田めぐみさんの家族写真だ。
自分の一家と年齢構成が似てることもあり、他人とは思えなかった。
しかしそれは横田さん一家はある種の有名人であり、よく知ってる家族だ。だからこちらの心を動かされたと言えるけど、浅田家の写真を出版前に見たら、どう思ったことだろう。
写真集になるとなんだか立派に見えるから。

結局は世間に認められた政志だが、311で家族写真を洗浄し返却するボランティアをしている小野(菅田将暉)と知り合い、再び家族写真と向き合うようになる、というのが第2部。

後半はまあ正直ベタであって少し泣いちゃうが、だからといって好きな話ではなかった。
父親を亡くした少女に「家族写真を撮ってよ!」と言われて写真を撮れない。しかし父親の腕時計を借りて娘にお父さんが写真を撮ってくれた時を思い出してもらうとか、ベタだなあ。
まあこう言うのが受けるのはわかるんですが、ちょっと私の好みではなかった。

また妻夫木聡の主演映画も観たいなあ。









JA750号機行方不明


日時 2020年10月3日15:30〜 
場所 ザムザ阿佐ヶ谷
監督 山崎徳次郎
製作 昭和34年(1959年)


甲府支局に東京から転勤してきた毎朝新聞の長谷(町田京介)は地元の不正を暴こうとするが地元の有力者とつながる支局長に記事を止められ、腐っていた。
そして娘が自殺した事件があり、取材先で写真が欲しいばかりに仏壇から写真を失敬してきた。それを地元の山梨日日新聞のベテラン記者木庭(永井智雄)に返すように言われるが、長谷は無視。
木庭の娘とつきあっている長谷だが、特ダネをとって東京へ帰ることしか考えていない。
ある日、2週間ほど前に行方不明になったセスナのJA750号機が落ちたのを目撃したという話を聞く。翌朝、一人で出かける長谷。
同じ頃、木庭も別の人から同じ話を聞いていた。木庭も出かける。
山で偶然落ち合った二人だが、長谷は斜面を滑って落ち、足を汚してしまう。
木庭は放ってもおけず介抱する。


ラピュタ阿佐ヶ谷の出張上映ということで地下のザムザで日活のレアものSPの上映。ほかに3本ほど上映されるが、今回はこの1本。
タイトルからして航空機パニックもの、と思っていたら違っていた。
新聞記者のスクープの話だ。
だからオープニングのクレジットタイトルのシーンで飛行機が遭難する映像が出てくる。
しかも遭難するのは旅客機ではなく小型のセスナ機。ちょっとがっかり。

新聞記者の話、というのは直前の情報で知っていたが話がすぐに新聞各社のスクープ合戦(「クライマーズ・ハイ」みたいに)なるかと思ったら、まったくそうならない。
政治家のスキャンダルを追求しすぎて甲府に飛ばされてきて手柄を焦る若い記者と地方紙の小さな記事を大事にするベテラン記者の物語だ。

私なんかもう永井智雄の記者の年齢だから、どうしてもそっちに肩入れしてしまう。
長谷はスクープ第一主義なのだが、木庭は「もう搭乗員は死んでるから今更焦っても二人が生き返るわけではない」とスクープの遅れは気にしない。
飛行機を発見したときのための伝書鳩も長谷の救助を頼むことに使ってしまう。

長谷の容態が落ち着いたところで、木庭は遭難機の捜索に向かう。機は見つかり、写真も撮る。
長谷の救助の救急隊も到着し、長谷は何とかなる。娘の恋人だから発見の記事も写真も毎朝に渡してやるという太っ腹。
いいねえ、見習いたいねえ。
長谷がこれで心を入れ替えるかはわからんけど。

ちょっと期待した映画とは違ったけど、SPならではの「ちょっといい話」で楽しめました。








コーンフレーク


日時 2020年10月3日 
場所 配信
監督 磯部鉄平


保険の外交員をしているミホ(高田怜子)は彼氏のユウヤ(GON)ともう6年も同棲していた。ユウヤはミュージシャンだったが今はバンドは解散し、レコード屋でバイトしながらいろんな場所で音を録音し、それを素材にして何かを作ろうとしていたが、出来るあてはない。
ミホの後輩のアミは役者志望で「1年働いてお金貯めて東京に行く」と言っているが、お金は貯まらないらしい。
ある晩ミホはユウヤがバイト先の後輩の女の子シュリに食事をおごったどうのということで喧嘩になり、部屋を追い出した。
ユウヤは仕方なくバイト先のレコード屋に行き、男の後輩の家に泊めてもらおうとするが、だめだった。シュリは「うちでよかったら泊まります?」と言ってくる。
ミホはアミに呼び出され、アミの友人の役者や、その友達のミュージシャンと知り合う。結局遅くまで飲み明かす。
ユウヤとシュリはやっぱりベッドイン。始まりかけたところで「彼女と別れて私とつきあってくれます?」と言われ、「ごめん」と断ってしまう。
翌朝、アパートに帰るユウヤ。ミホと朝食を食べにいったが、ミホは感情が爆発し、「別れよう」と言い出す。


先日知り合った役者さん、GONさんが主演した映画。ちょっと加藤シゲアキ風のイケメンだが、髪の毛がぐしゃぐしゃでちょっともったいない気がする。まるで「劇場」の山崎賢人のリアル版である。

6年もだらだら同棲するとか、20代後半で将来の当てもなくバイト生活とか全然共感できないなあ。まあそういう人はいるだろうし、この映画を作った人たちは自分のことなんだろうけど。

そんななんだか否定的な気持ちが途中まで強かったのだが、後半になってミホが「別れよう」と言ったあたりから座り直した。
今までの惰性をやめて何かを変えようとしたのである。

ミュージシャンの男に「よく長い間音楽を続けられますね。やめようとか思わないんですかとミホが聞き「続けたいっていうより、やめるきっかけがない。今まであったものがなくなるのが怖い」という。これもまた納得できる。
でも何も将来が約束されない現在より、まずは今を変えようとする。
別れたユウヤも知り合いのバーのマスターに「おまえもミュージシャンの端くれなら今の気持ちを何か形にしろ」と言われ、奮起する。

ラストシーン、結局二人は復縁したようだが、でも今までとは何か違うだだろう。二人の成長の映画だ。

映画は全体的に夜の大阪、昼の街角、朝焼け、夕焼けの景色が美しく撮れている。デジタルカメラの特性かも知れないけど、そこが観ていて好感を持った。




LOVE STAGE!!


日時 2020年10月2日18:30〜 
場所 シネリーブル池袋・スクリーン1
監督 井上 博貴


人気俳優の一条龍馬(仲田博喜)は今日の結婚式場のCMで緊張していた。まだ子役だった10年前、このCMの出演が初めての仕事だった。そのときに相手役の女の子が初恋の相手で忘れられなかったのだ。
しかし今回相手役を紹介され、それは男だった!実はその少年瀬名泉水(杉山真宏)の母親は女優で、その10年前のCMに出演したのだが、そのとき龍馬とペアになる女の子が急にこれなくなり、急遽代役として泉水が女の子の役をやったのだ。
それを知らずに来た龍馬だったが、今回この結婚式場のCMの仕事と聞き、「10年前と同じキャスト」と希望したのだった。男同士の結婚式というのも「これからは多様な愛の時代だから」と式場側も納得したのだった。
撮影中にキスまでしてが逆に龍馬はときめいてしまった。
泉水は両親とも俳優で、兄はバンドのボーカルで活躍中の芸能一家。瀬名家のマネージャーの相楽(和合喜一)は何とかして泉水を俳優としてデビューさせたがっていた。しかし泉水はマンガオタクでマンガ家を夢見ていた。
やたらと近づいてくる龍馬をうっとうしいと思いながら、連絡先ぐらいは交換した。マンガ賞の応募に間に合わなくなり、漫研の友人は誰も忙しくて手伝ってくれず、仕方なく龍馬に頼み、二人で完成させた。
出来上がって寝込んだ泉水の頬に龍馬はキスしてしまう。
マンガは持ち込んだが、編集者から「基礎もなにもない」と酷評される。
泉水はショックを受け、家に帰りたくないと龍馬の部屋にやってきた。
泉水が寝ている間に龍馬は泉水のあこがれのマンガ家に頼んでコメントをもらってきた。それを見た泉水は元気を取り戻した。
相楽の願いで俳優デビューもする事になったが、そんな時、龍馬と泉水の路上キスが週刊誌に載ってしまう。
結局記者たちの前で泉水と龍馬は交際を認め、祝福されたのだった。


長くなったけどストーリーは全部書いた。
先週、「リスタートはただいまのあとで」というBL映画のポスターがあり、興味があったので見てみた。
まあひどい出来である。

まず主人公二人がゲイではないところからスタート。そういえば「リスタート」もそうだったけど、ゲイじゃないのに男が好きになるところから話が始まるの?
なんだかなあ、もはや「美少年同士の愛の姿」のためにはなんでもありである。絵として男同士がいちゃいちゃしてればいいらしい、腐女子にとってのBLは。

原作にはあって尺の都合で切られたのかも知れないが、相楽と泉水の兄(DAIGO)もなんか関係があるみたい。

またコメディタッチで描かれるが、龍馬のコメディ演技がバカにしか見えずまったく笑えない。これはなぜなのだろう?脚本の問題か?それとも演者の問題なのだろうか?

そしてキスシーンは多いけど裸はない。
龍馬の家に来た泉水が風呂に入るシーンで上裸が少し出てくるが、それだけ。泉水が風呂から上がって裸を見てしまった龍馬がドキマギするカットがあるけど、泉水のカットはない。
ここはバックヌードぐらい出さなきゃ。「窮鼠〜」では二人ともバックヌード出したよ。それぐらいやらなきゃ。

それにしても「スターの恋」っていうと後半には週刊誌に掲載されスキャンダルになるというクライマックスになる。「午前0時、キスしに来てよ」もそうだったし、映画化されてないけど某氏が書いたスターの恋の話もそうだった。
もはや定番。その他の方法を考えなきゃ。