2020年12月

   
純情 日本独立 桃色(ピンク)電話 探偵事務所23
くたばれ悪党ども
白い閃光 闇に光る眼 美しき悪女 ヱヴァンゲリオン新劇場版:Q
さよならが言えない 無頼 あまい唇 ある脅迫
ヱヴァンゲリオン新劇場版:破 アンダードッグ後編 アンダードッグ前編 野良犬
(森崎東監督作品)
田舎刑事(デカ)
まぼろしの特攻隊
ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序 サイレント・トーキョー 脳天パラダイス

純情


日時 2020年12月31日 
場所 TSUTAYA
監督 金田 敬
製作 平成22年(2010年)


フリーライターの戸崎圭佑(栩原(トチハラ)楽人)はIT企業の社員、倉田将成(高橋優太)を取材した。実は二人は高校の同級生。あまり話したこともなかったが、実は圭佑にとって将成は初恋の人だった。将成も部活中に圭佑が自分を見ていることを知っていた。取材が終わったあと将成は圭佑を飲みに誘ってホテルに入り、圭佑を抱いた。
そんな圭佑を先輩編集者の宮田(篠田光亮)は気にしていた。以前はつきあっていたが今は別れた身。しかし圭佑が気になって仕方ない宮田は将成が来ている圭佑の部屋を訪ねる。
「前の男から仕事をもらう神経が分からない」と宮田のことを敵視する。


BLドラマ。この年末年始はコロナ禍のため帰省もせずに東京で過ごす。
映画ざんまいとは行かずに他のことをやろうとしているのだが、なかなかはかどらない。それでも目処とか方向性までは行きたいと格闘中。
そんな中、最後に1本ぐらい映画見るか、と選んだのがこれ。

まあレベルの低いBLドラマ。というかもともとこんなレベルなのだ。
28日に今年の私の映画ベストテン3位(1位「fukushima50」2位「アルプススタンドのはしの方」)の「Life 線上の僕ら」をブルーレイで再鑑賞したので、そのギャップにあきれる。

将成という人間がよく分からない。やたら圭佑を早急に求めるので「てっきり実は余命半年なのかな」「熱出したりしてやっぱり体が悪いんだ」と期待(というか想像)させておいて何もなし。
高校も途中で転校したし、その辺もなにかあるだろう、と思わせて何もなし。

もうそれはないでしょう。となると将成は単に相手に優しくできない、自分の気持ちを一方的に押しつけるだけのわがままな男になってしまう。
(下手すりゃDV男だよ)
将成の性急さに何か事情があるかと思った私がバカだった。

役者では宮田役の篠田光亮がよくない。いかにも気障ったらしい恋愛の悪役キャラで恥ずかしすぎ。こういうキャラは「宮田の方が優しくていいぞ」と観てるこっちに思わせてくれなきゃ。
まあ脚本とか演出でもあるのだけれど。

前半のベッドシーンなどで上半身が裸なのは見せてくれていいのだが、他のシーンがひどいのだから、お尻ぐらい見せてほしかった。
主演の栩原楽人が(まあ)よかったのだから惜しい限りである。
高橋優太は「タクミくんシリーズ 虹色の硝子」で病気で死ぬ役がよかったが今回はよくなかったな。








日本独立


日時 2020年12月27日13:20〜 
場所 TOHOシネマズ日比谷シャンテ
監督 伊藤俊也


昭和20年、敗戦により日本はGHQの支配下におかれることになった。
GHQは日本の憲法を変えることを占領政策の要と考えた。
近衛元総理(松重豊)はGHQの言いなりに憲法作成を考えたが、戦犯として裁かれる男は関わらせることは出来ないと近衛を外した。
幣原総理(石橋蓮司)は松本国務大臣(柄本明)を憲法改正の特命大臣として草案をまとめさせようとした。
外務大臣の吉田茂(小林薫)は白州次郎(浅野忠信)をGHQとの連絡係にし、日本の主権確保のために奔走する。


あらすじを書くとこんな感じ。
どこが作ったかよくわからないけど現・日本国憲法の作成の過程をドラマ化したもの。
描かれている内容の真偽は問わない。こちら側にそれを反論できるほど詳しくないから。

ただ作者のスタンスとしては「現日本国憲法はアメリカの占領政策の都合、極東委員会でソ連などの介入を防ぐためにアメリカ側のタイムスケジュールで作られ押しつけられた憲法」ということ。
憲法改正論者がよく言うことである。
私自身はたとえ「押しつけ憲法」だとしても内容が納得できればいいじゃないかというスタンスなんだけど。

「戦争の放棄」に関してはとにかく第二次大戦で敵対した日本を二度と戦争を起こせないようにしたかったという「時の感情」だったということ。
そしてその後の冷戦下においては絶対に矛盾が生じることはその当時からわかっていたのだ。
そして吉田茂は「とりあえずアメリカの言い分を聞いておいてアメリカがいなくなってから改正すればいい」と考えていたと描かれる。

それに平行して吉田満の「戦艦大和ノ最期」が出版禁止になった事件が描かれる。要するに「占領軍は口では『表現の自由』を言いながら、一方では検閲もする二枚舌」ということが言いたいらしい。
出なければここに「戦艦大和ノ最期」のエピソードは不要だろう。

松本案は全く占領軍には受け入れられなかったが、私が過去に読んだ本では「明治憲法をちょっといじっただけ」というシロモノで、抜本的改正を望む占領軍には受け入れられなかったようだ。
映画では「日本人が一生懸命作ったものをろくに検討もしなかった」と描かれる。

また人権に関する条項を作ったベアテ・シロタさんはお尻ふりふりふり登場し、それをアメリカ人にからかわれている。(今時の小娘という描かれ方なのだな)
「各国の憲法の本を借りてきました」というのだが、描くスタンスは「なにも知らない人が一夜漬けで憲法を勉強し作成しました」というもの。
ご丁寧にこのとき字幕で「憲法の専門家はいなかった」と出る。

コロナがなければ安倍政権下で憲法改正の話がもっと具体化していたかも知れない。それを援護射撃する映画だったのだろう。

さらにご丁寧に「アメリカ人やドイツ人は45歳の成熟した大人だとすれば日本人は12歳の少年」というマッカーサー発言が描かれる。
とにかく「アメリカ人の素人(なんか小娘まで加わって)が作った押しつけ憲法。だから早く改正しよう」というプロパガンダ映画。
時々あるんだよね、こういう映画。

でも浅野忠信、松重豊、柄本明、小林薫などの豪華俳優陣の演技を楽しんだことは事実。(野間口徹が昭和天皇を演じたのは驚いた)
自民党に近い方が金持ってるんだろうなあ。
そう言えば「日本の青空」っていう同じく日本国憲法を扱った映画があったけど、自主上映ばかりで一般劇場では公開されずに終わったな。
観たかったな。






桃色(ピンク)電話


日時 2020年12月26日21:00〜 
場所 ラピュタ阿佐ヶ谷
監督 西原義一
製作 昭和42年(1967年)


白百合クラブはデートクラブ。電話をかけた男性相手にデートする女性を派遣するシステムだ。一般会員入会金1000円、2時間デートで2000円だ。特別会員入会金1万円を払うとサービスが向上する。
今日もキョウコはスケベでやたらとしつこい客相手に閉口していた。
そんな女性たちを束ねるケンちゃん(椙山拳一郎)は妙な女を拾ってきてしまった。というより勝手についてきたのだが。その女トモコ(香取環)は顔も汚れていて素性もわからない。なにも聞いても答えない。丼物を一杯食べさせて追い返そうとしたが、帰らない。顔は悪くないので仕方なく働かせてみることにした。
キョウコは女学生設定で、ある中年男性の客がついた。なんだかんだとじらしてやらせない。
トモコにケンちゃんは仕事を教えようとするが、トモコはどうにもかみ合わない。


香取環特集3本目。
今回はデートクラブの話。今のデリヘルと同じシステム。昭和のスケベ親父たちが群がる。この小金持ちの親父たち、髪型はポマードが丹頂チックで頭を固め、ダブルのスーツに蝶ネクタイ。いやあこういうファッション見なくなったなあ。私も年齢的には映画中の「紳士」と同じ年頃なのだが、まったく違うもんなあ。

前半は売れっ子キョウコのあの手この手のじらし作戦。女学生風で現れてホテルに誘われると「また今度にしましょう。特別会員になればその先もありますよ」と言い、次にホテルに行っても「でも・・」「そんな・・・」とか言ってやらせない。本来は笑う所なんだろうけど私は男の客に同情してちょっとムカついた。

キョウコにはいろんな客がつくが、その中の一人が「その場所に女ありて」で西銀広告が作った中年男の人差し指をあげてるモデルに似てる気がした。同じ人の可能性もあるが、単なる似ているだけだったかもしれない。

また普段は電話番の女の子ががんばって客を取るのだが、化粧がケバすぎて客が逃げてしまう。

肝心のトモコだがちょっと頭が弱くてなにを教えても「ギャハハハハ」と笑うだけ。この笑い方が快獣ブースカみたいな感じ(オバQみたいとTwitterで言ってる人がいたけど、そんな感じで昭和40年代の子供向け番組でよくあるような笑い方)。
ちょっとこういうキャラクターは苦手なので、私は好きにはなれなかったけど。

ケンちゃんが「お前はプロなんだから!」「でもお客さんはプロっぽくないのがいいっていうけど」「だからプロならプロと思わせないのがプロなんだ。分かるか?」「わかんない」って感じ。
でもトモコは何かと優しくしてくれるケンちゃんに惚れてしまい只でやらせる。

でもキョウコと組んで女学生のフリをしたとき、あまりの下手さに客が逃げられる。
その件もあったりして「もうお前はやめろ」とケンちゃんに言われる。彼女なりに必死になって町で男に「デートしよ」と声をかけまくるが、それが元で検挙されてしまう。

釈放されて迎えに来てくれたのはケンちゃん。自分の仕事の出来なさに自らその場を去ろうとする。がそれを「結婚しよう」と引き留めるケンちゃん。
ハッピーエンドのラスト。

でも「あまい唇」「美しき悪女」と3本続けて「男見迷惑をかけまいとして女の方から身を引く」というラストは共通。監督の女性観なのか昭和の女性観なのか、そういう視点は面白い。
ラピュタ制作のチラシによると本作では香取環も脚本に参加しているそうだ。

またやっとおっぱいが数秒写るようになった。エロ描写も進化している。






探偵事務所23 くたばれ悪党ども


日時 2020年12月26日15:00〜 
場所 ラピュタ阿佐ヶ谷
監督 鈴木清順
製作 昭和38年(1963年)


深夜の武蔵野街道。武器の取引を行おうとしたやくざ2組だったが、突然別の車がやってきて2組を襲撃する。そして武器を積んだトラックを盗んでいったが、襲撃した方の仲間の男・真辺(川地民夫)がその場に残されてしまった。
武蔵野署の熊谷警部(金子信雄)は弱っていた。真辺の犯行現場付近にいたというだけで犯罪の証拠は何もない。今夜10時には釈放せねばならないが、警察署の表には襲われた方のやくざたちが真辺を殺そうと待ちかまえている。そこへ探偵の田島(宍戸錠)がやってきた。自分が潜入捜査をしようというのだ。
最初は断った熊谷だが、やはり田島に頼むことにした。
まずは釈放された真辺をやくざたちから救いだし、無事警察署前から脱出させることに成功した。そして真辺の女の部屋、ついにはアジトへと案内され、ボス畑野(信欣三)と会うことが出来た。
しかし畑野はなかなか信用してくれない。田島は田中一郎と名乗り、本物の田中一郎は刑務所に服役中。田中の実家にまで訪ねていく。しかし万事警察が手配しており、田中の実家(実は田島の実家でもある)の教会では話を会わせてくれた。その教会の懺悔室で熊谷と会い情報を提供する。
しかし畑野も上手で田中の面会した相手が熊谷だとばれてしまう。
はたして田島の潜入捜査の行方は?


ラピュタ阿佐ヶ谷「日活映画を支えたバイプレーヤーたち」特集の1本。今回は普段バイプレーヤーが主役をする、という訳ではなく、バイプレーヤーが活躍する映画。

まずは信欣三。「帝銀事件 死刑囚」の平沢役が印象深いが、こういった悪役もなかなか。実直そうな男がこういった悪役を演じるのは実に面白い。
そして助手役の土方弘。実は存じ上げない俳優さんだったが、馬面の顔で田島の助手役笑いを誘う。さらに探偵事務所とは実は関係ないゴシップ紙の編集長の初井言栄。この土方弘と初井の助手コンビが笑いを誘う。

また畑野に連れられていったキャバレーで自分の元カノと遭遇してしまう田島。彼女が歌っているところに乱入し、なんとかその場を取り繕う。
そのときに宍戸錠が歌い、踊る。宍戸錠の幅広い芸を堪能出来る。

笹森礼子が畑野の女として登場。畑野が最後の方で「俺の上にはまたボスがいるんだ」というこというので、てっきりこの笹森礼子が大ボスか?と思ったが、そこまでの逆転はなし。
でも脇の活躍に押されていまいち見せ場がないのが残念。

最後は結局畑野の隠していた武器も見つかり、それを取り返そうとするやくざたちもやってきての大乱闘の上警察が駆けつけて終わり、の大団円。
楽しい映画でした。

(HPを更新しているときに気が付いた。この映画、DVDで以前にも観ていた。しかし二度目だという事を全く気付かないくらい記憶になかった。困ったものだ)







白い閃光


日時 2020年12月26日13:50〜 
場所 ラピュタ阿佐ヶ谷
監督 古川卓巳
製作 昭和35年(1960年)


警視庁白バイ隊の朝見一郎はパトロールに出かけたが戻ってこなかった。
交通違反のダンプカーを追跡中に相手の車が急ブレーキをかけ追突してしまったらしい。
弟の達郎(小高雄二)は単車のテストドライバーだったが、兄を殺したドライバーを見つけるため自らもダンプの砂利運びの運転手になってこの世界から犯人を探そうとしていた。
達郎は恋人の弟がオートレーサーになったのだが、八百長がいやでやくざに追われながら逃げたことを聞いて心配になっていた。
兄の犯人の手がかりは57年型のダンプ、ダンプの後部に「M」の文字が書いてあるということ。先輩のドライバー(佐野浅夫)から「変なことばかり聞く奴だな」といわれながらもドライバーについての情報を当たる。そこでついに「M」の字がかかれたダンプを発見した。
そのトラックの持ち主を砂利採石場で発見する。その採石場で例のやくざに追われてるオートレーサーとも再会した。


ラピュタ阿佐ヶ谷「日活映画を支えたバイプレーヤーたち」特集での1本。上映時間49分。同じくSPの「闇に光る眼」との2本立てのプログラム。

期待はずれもいいところ。
「闇に光る眼」もひねりがないがこれはさらにないどころか破綻している。

最初のダンプの事件、交通違反を振り切るために警官を殺したわけだが、実は交通違反ではなくもっと大きな犯罪(密輸とか何か)が絡んでいたとか、実は事故の犯人はそのダンプではなかった、とかの逆転もない。
破綻しているというのは例の八百長でやめたオートレーサーが何も絡んでこないのだ。

ここでオートレーサーの八百長事件とダンプ事故が実は何か大きな事件で結びつく、とならねばならない気がするのだがなあ。
まあ添え物だからな。
いやでもSPでも面白い映画はあるぞ。







闇に光る眼


日時 2020年12月26日13:00〜 
場所 ラピュタ阿佐ヶ谷
監督 春原政久
製作 昭和35年(1960年)


暴力団撲滅のために日夜奮闘する刑事の庄司(高原駿雄)。今日も非常呼集があり、やくざの事務所の手入れに。「兄さんが仕事で出かけたため、バイトがいけなくなった」と電話する弟の繁夫(川地民夫)。バイト先は音楽喫茶だったが、その店のママはメモをボーイに渡す。ママは警察の動きを繁夫から得ていたのだ。刑事たちが手入れをしている間に三宝製薬の倉庫がおそわれヘロインが奪われた。
庄司たちの努力もむなしく手入れは空振りに終わる。庄司は繁夫に大学進学を願っていたが、兄が苦労するのが見ていてつらくバイトして学費を稼ごうとしていた。庄司にバイトがばれ、バイトをやめるようにいわれる繁夫。だが兄に反発して家を出てしまう。
繁夫のバイト先の歌声喫茶は実はやくざの東西組本拠地だった。
東西組は2代目と目されていたママの夫が殺され、跡目も正式に決まらないままごたごたしていた。刑事たちはヘロインの襲撃現場の警備員の目撃から犯人の中にびっこを引いた若い男がいる、拳銃型のライターが落ちていたということを手がかりに聞き込みをしていく。
拳銃型ライターだが、例の歌声喫茶の前の店の主人が知ってそうだがお礼参りを恐れて何も証言しない。
だがついに証言が取れた。さらに今の東西組を仕切っている政吉(深江章喜)が2代目を殺したのだ。
繁夫も自分の電話が兄の仕事の邪魔をしたとわかった。


ラピュタ阿佐ヶ谷「日活映画を支えたバイプレーヤーたち」特集の1本。50分のSPにつき、同じくSPの「白い閃光」と2本立てで一つのプログラム。
先日偶然見た「ある脅迫」が拾いものだったので何となく見たのだが、ハズレだった。

島田一男の原作だが、特にひねりもない脚本。高原駿雄はいい役者だけど主役の華がない。物語を引っ張っていく力がないのだな。
クレジットでは川地民夫がトップで、彼が主役の話かと思ったら、話の中心はやっぱり刑事の方で、弟は基本わき役である。
これが川地が主役だったら(たとえ刑事役でも)まだよかった気もする。

私としては見所は赤木圭一郎の映画でよく弟分を演じていた杉山俊夫が十文字屋という店から拳銃型ライターをかつ上げするチンピラ役で出演し、比較的出演シーンが多かったのはよかったかな。
それにしてもかつ上げしたライターを犯行現場に落としてくるとはアホである。

後は特に見所なし。






美しき悪女


日時 2020年12月20日21:00〜 
場所 ラピュタ阿佐ヶ谷
監督 西原義一
製作 昭和41年(1966年)葵映画


洋子(香取環)はSM好きの男(鶴岡八郎)と暮らしている。男はヒモで洋子の稼ぎで暮らしていた。洋子は新しいバーにと勤め始める。
地味なサラリーマンの村山(椙山拳一郎)は25歳で「童貞」と会社で噂されていた。同僚がいやがる村山に遊びを教えようと無理矢理バー「渚」に連れて行く。
そこで村山は洋子に出会う。純情な村山は洋子に惚れてしまう。
毎日のように渚に通う村山を見て同僚も「いい加減に目を覚ませ」と忠告するが聞かない。逆に村山は渚から出てきた洋子を待ち伏せ、彼女のマンションまで送っていく。男が「何で送らせた?」「だって無理に断ったらまずいじゃない。結婚しようって言われた」と話す。
村山の田舎まで言った洋子だったが、直前になって「私実は借金があるの。父が死んで残した借金を返すためにバーに勤めだしたの」と話す。
思わず「ある程度なら僕が何とかしよう」と言う。だが実家に帰ると「バーの女給なんかと結婚は認めない」と追い返してしまう。
ついに同僚が止めるのも聞かず洋子に30万円ほど渡す村山。それを見て喜ぶ洋子。
再び渚に行った村山だったが、洋子はすでに辞めていた。洋子の同僚のホステスから「あの娘はそんなにいい子じゃない」と言われる。
村山は洋子のマンションに行く。そこで洋子と会うのだが。


ラピュタ阿佐ヶ谷の香取環特集第2弾。本作から葵映画の専属になったそうだ。(チラシにはパートカラーとあるけど、全編白黒だった。もとはシネスコだったものをスタンダードにトリミングした映像。

「バーのホステスに純情男が惚れてしまう」というありがちな話だが、そういうのは大好きである。いまおかしんじの「白日夢」もそういう話で感動した。

村山が最初に同僚に渚に連れて行ったもらうときに酔っぱらいに絡まれる。そこで転んで手にけがをする。ここがミソ。
そして渚についてから洋子に傷口にハンカチを巻いてもらう。これで村山は惚れてしまう。
いいねえ、この描写。
そして代わりのハンカチを送ろうとするが受け取らない。「ハンカチをもらうと縁が切れるといいますから」
そこまで計算してハンカチを巻いたのか!と言いたくなる計算。

次に高級そうなコンパクトを送る。
そのコンパクトを見ながら洋子とヒモが笑うシーンは村山の気持ちを思うと何とも悲しい。

そしていきなり結婚しよう!田舎の母に紹介するというのも行き過ぎだが、ついに洋子は「父親の借金話」を持ち出す。
その金を用意し渡したら洋子はバーを辞めてしまう。
マンションの前まで送っていったことがあったのでマンションまで行ってみて、階段を上がっていき部屋を探していると洋子と出会う。

そして部屋に入れる洋子。村山も広い部屋を見て不信に思うが洋子は「友達の部屋であたしは居候なの」「その友達は男なんだろ?」「そうだよ!それでお金を返せってか?」と言い放つ。
しかし村山は「君はその悪い男にだまされてるんだ。僕が幸せにする!」
その言葉に心が変わる洋子。実は前の晩にヒモにたばこの火を当てられていい加減イヤになってきた矢先だったのだ。
二人で部屋を出るがちょうどそこへヒモが帰ってきた。
ヒモはエレベーターに乗ってナイフで二人を脅す。

ここからが急展開。
エレベーターが1階に下りると刺されて出てきたのはヒモのほう。
ナイフを持っているのは洋子だ。エレベーターを出て緊張の為か洋子の手はナイフを握りしめたままで離せない(「日本のいちばん長い日」の中谷一郎のシーンみたいである)。

二人でマンションを出るが、その手を振り払って洋子はエレベーターに乗る。
村山も階段で追いかける。しかし洋子は屋上から飛び降りていた。
それを見て村山は呆然とする、で終わり。

この手のドラマは最後をどう決着つけるかがキモだと思うが、そうきたか。
先週観た「あまい唇」もラストは男に迷惑をかけまいと女の方から去っていく。
完全に悪女に描かずにどこか女の良心が男を救う展開は、二つの作品とも通じてる気がする。
西原監督の女性観なのかなあ。
面白かった。

あと野上正義がバーテン役で出演していた。この頃から出演していたんだな。






ヱヴァンゲリオン新劇場版:Q


日時 2020年12月20日17:00〜 
場所 TOHOシネマズ六本木ヒルズ・スクリーン4
総監督 庵野秀明 
製作 平成24年(2012年)


葛城は戦艦の艦長になっていて大戦闘から映画は始まる。
そしてシンジも登場するが、葛城が船を操艦していてなにがなんだかさっぱりわからない。戦闘も一段落し、実は14年の月日が経っていたと知らされる。サードインパクトの直前でくい止めて人類絶滅は一歩手前でくい止められたが、第3東京市は無くなっていた。葛城たちは反NERV組織ヴィレを組織したというのだ。
シンジは「綾波は?」と問うが誰も教えてくれない。その時綾波の声がした。綾波の乗ったエヴァに助けられた。ヴィレの面々は「二度とエヴァに乗らないで」とシンジにいうが意味が分からない。
NERVに戻ったシンジだが隔離されてしまう。そこで会った綾波はなんだかかつてのシンジが出会った綾波と違う。
そして渚カオルという少年に出会い心が安まるシンジ。
元の世界に戻すためには地下にある剣が必要と渚にいわれたシンジは二人で新しいエヴァに乗って向かう。
しかし何かが違うと渚が感じたとき、新しい使徒が襲撃してきた。


「ヱヴァンゲリヲン新劇場版」も3作目。これで見終わることになる。
いきなり14年も経っていてこちらは驚く。
「破」でサンプルとして隔離されたアスカも元気に戦っている。そしていつの間にやら反ネルフ組織が出来上がっている。
あまりの設定の変化にこちらもシンジ同様に「?」である。

綾波の母親がエヴァの開発チームのメンバーで綾波はクローン人間らしい、人類補完計画というのは全人類に恵みをもたらすわけではなく、一部の人間だけが得をし大多数は死ぬ運命にある計画らしい、という情報が小出しに出てくる。
相変わらず細かいことはよくわからない。

でも案外面白く観た。
それは「序」「破」であった妙に笑いのシーン(葛城のマンションでのペットのあたりとか)、シンジの中学校でのシーンとか私にはちぐはぐに見えたシーンがなくなり、ダークな世界観で統一されたのが「私には」よかったのかも知れない。

確かにダークな世界観で渚とシンジが剣を引き抜きにいく場所が頭蓋骨の山の中である。地面一面に頭蓋骨があるシーンはアニメとはいえ、実に不気味だった。

そして絵の方も冒頭の戦闘シーンは実に緻密で実写と思うぐらい、絵の動きがなめらかだった。素人の私がそうかんじるのだから通な人にはもっと感動があったのではないだろうか?

話の細部がよくわからない、とかの不満はあるのだけれどなんだかんだ言っても3本観たのは結局のところへたれな少年・碇シンジが好きなのだな。その声も含めて私には魅力的である。

さて3本鑑賞し、来年の最終章鑑賞の準備は出来た。
この「Q」が2012年。本来今年公開される予定だった最終章だがコロナの影響で来年に延びた。9年待って最終章か。
「シン・ゴジラ」の時にエヴァファンから「ゴジラやらないでエヴァ作れ」と言われてたけど、その気持ちが今はわかる。
俺は3週間続けて観てるからいいけど、ファンはずっと待ってるだもんなあ。
来年1月23日、無事公開されれることを祈る。





さよならが言えない


日時 2020年12月19日11:00〜 
場所 光音座1
監督 橋口卓明
製作 ENK


友紀(佐賀照彦)は恋人はいたが、どこか満たされていなかった。またよく夢で河原で般若の面をかぶった男に犯される夢を見ていた。
雑誌の投稿欄に掲載を依頼する友紀。「19歳の大学生です。よく人からは年下に見られます。優しい兄貴を求めます」。
回送の返事はすぐにあった。だがその手紙は恋人に見られてしまう。
その手紙には「当方25歳。扇町公園で今度の日曜日に会いましょう」
友紀は指定された時間に公園に向かったが、誰も来ない。そこへ「友紀くん?」という声がした。しかしやってきたのはおじさんだった。「本当は52歳なんだ」。思わずその場から立ち去る友紀。しかし先回りされおじさんに遭遇した。今度は走って逃げたが、アパートまで来られてしまった。
「何も走って逃げなくてもいいんじゃない?」おじさんはそういうと部屋に入ってきた。そして黄色いふんどしをしたおじさんと体の関係を持つ。
ことが終わってそのふんどしを渡し、「また会ってくれるならこのふんどしをベランダに下げておいてくれ」。おじさんはそう言って去っていった。
おじさんのことが気になる友紀はそのふんどしを洗濯してベランダに干す。
おじさんはまたやってきた。「おじさんにも君の年頃の息子がいるんだ。君と会ってると息子に会ってるようだ」「その息子さんは今は?」「死んだ」
おじさんと友紀が絡んでいるところを友紀の恋人は見かけてしまう。しかし見つからないように部屋を出る。
おじさんを送っていく友紀をつける友紀の恋人。そして電柱に貼ってあった指名手配写真からそのおじさんが殺人犯とわかる。
また友紀の部屋にやってきたおじさんだったが、警察に逮捕された。恋人が通報したのだ。


こんな感じの話。
破綻してるというかまとまりのない話である。
冒頭友紀と彼氏のカラミがある。それがシルエットを多用した映像で顔がよく見えない。きれいな映像を撮ったつもりかも知れないが、顔がよく見えないので、その後のストーリーのつながりが悪い。

そのシーンの後、彼氏の方は「東梅田ローズ」に出かけ(懐かしい!)、トイレで若い男とハッテンする。その後中之島あたりでその相手の男に「何を考えているの?」とか言われるが、その相手の男はその後物語に絡んでこない。
友紀も彼氏もお互い浮気をしているけどなんだか続いてる関係だ。

そしておじさん。このおじさんが「アイスクリームのかほり」の梁井紀夫だ。両手に紙袋を持ち、ホームレスっぽい。そして友紀をつけ回しレイプ同様で犯してしまう。犯罪じゃないか?
んで黄色いふんどしをベランダに下げてくれ、ってまるで「幸せの黄色いハンカチ」だ。山田洋次の映画とこの映画は10年は離れてるだろう。ここ笑うとこなの?

おじさんは池山ヤスオという殺人犯なのだが、妻と息子を殺したそうだ。でもなぜ殺したのかは説明なし。
連行されるおじさんを見て友紀が切なそうな顔をするが、彼氏が「殺人犯と知って友紀になんかあったら大変だと思って通報した」って言う。まあ彼氏にしてみたら、一応恋人が変なおじさんとセックスしていてそのおじさんが殺人犯なら通報したくなるよ。

ここで実はおじさんにもやむにやまれぬ事情があった、とかおじさんい同情できる説明があればまた違ったかも知れないが、今のままではおじさんが悪い。

そういうストーリーはアラだらけなのだが、佐賀照彦主演なのですべて許す。佐賀さんはENK最高のスターなのは間違いないです。

(同時上映は先日見た「サラバ記念日」)









無頼


日時 2020年12月13日12:00〜 
場所 新宿K'cinema
監督 井筒和幸


井藤正治(松本利夫)は親が稼ぎがなく、母親は2歳の時に死んで父親は中学の時に死んだ。中学を出た頃は日米安保の頃。1960年。
それからやくざ社会に入り北陸の親分(小木茂光)の子分になり、静岡に一家を構えた。
それから40余年、数々の抗争や好景気不景気をくぐり抜け、60になった頃引退を決意した。
最近に行ったアジアの貧しい子供を見て、かつての自分を見た気になったのだ。
この子たちのために何かしてやりたいと思うのだった。


あらすじを書くとこんな感じ。
特にどこかの時代の抗争を詳しく描くわけではなく、時代時代を描いていくヤクザ一代記だ。

時々の時事ネタ(安保、ケネディ暗殺、田中角栄逮捕、オイルショック、三菱重工爆破事件、ソウルオリンピック、リクルート事件、暴対法施行など)を織り交ぜながら進んでいく。

映画ファン向けには映画ネタも織り込む。
井藤と親分の会話で「『ゴッドファーザー』って観たか?」とか「北陸代理戦争」を観て「親分もよくこんな映画許したなあ」とか出てくる。
この「北陸代理戦争」は劇中で映画を観てるんだけど、その出てくる映画がオリジナルの映像ではなく、わざわざ撮り直している。これ使用料が高かったんだろうか?それともわざわざやりたかったのか?
映画では雪原のシーンも出てくるから撮り直す方が手間のような気がするが。

ラストは井藤と一緒に若い者が実家にかえって米作る、という。
その若者がしみじみと「夜一人で酒を飲んどるとヤクザなんかやめようという気になる。しかし朝になって若いもんに囲まれると夕べのことはすっかり忘れてしまう」という。
これは「仁義なき戦い」のラスト近くの酒井(松方弘樹)のせりふ。

まあヤクザ社会の本音が出てるような名せりふだと思うが、それをそのまま使うのはいかがなものか。
もちろん映画ファンなら「引用」って解るけどど、「仁義なき戦い」を観たことのない人には単なる「パクリ」じゃないかなあ。
(これがこの映画の中で「仁義なき戦い」のせりふだとあかしていれば許すけど)

あれが引用と解らない奴は観なくていい、という主張もありだとは思うが、それはもう作家としての敗北宣言である。
だから好きになれない。

フィクションなのだが、1カ所だけ明らかに野村秋介をモデルにした人物が出ていた(木下ほうかが演じている)。なんか特別に思い入れがあったのかな?それともこの映画自体にモデルがいたんだろうか?

あと致命的なのは主人公役の松本利夫。こいつがまるで魅力がない。
ただのオッサンである。EXILE出身らしいが、私にとって初めての役者でもいいのだが、それにしても何の魅力も感じなかった。
これがこの映画の致命的な欠点である。
菅原文太をつれてこいとは言わないが、もう少し魅力のある役者出してよ。

ちなみにこの映画、パンフレットは2200円もした。映画料金より高い。
パンフレットは買う主義の私だが、さすがにその主義を反することをさせてしまう金額だった。





あまい唇


日時 2020年12月12日21:00〜 
場所 ラピュタ阿佐ヶ谷
監督 千葉隆志
製作 昭和41年(1966年)


人気画家の岡田(森幸太郎)は美大生・松本弘美(志摩みはる)にモデルにしてくれと迫られ、体も押しつけられる。
「明日アトリエに来てくれ」と言い残し、軽井沢の別荘に逃げた。そこへ出版社の武見(椙山拳一郎)がやってきて随筆を書いてほしいという。岡田は引き受けた。武見に誘われていったバーでカヨ(香取環)というホステスに出会う。
その晩、岡田はバーのママと武見はカヨと一夜を過ごす。
翌日、忘れ物を届けにカヨが岡田の別荘を訪ねてきた。カヨに惚れてしまった岡田はカヨを招き入れ、その後も時々会うようになり、一緒に住もうと言い出す。
カヨは学のない女で岡田は自分の理想の女にしたくて、彼女に勉強を教えようとする。英単語を教えようとするが、カヨは全く覚える気がない。
武見も原稿を受け取りにやってくる。岡田がカヨといい仲になっていると知った武見だが、岡田の別荘に泊まった晩にカヨと再び関係を持つ。
そんなカヨを岡田はなじる。武見は「カヨのような女に勉強を教えるなんて無駄です。それを先生にわかって欲しかったんです」という。
そこへ松本がやってきて岡田を自分から逃げたと責める。松本は岡田の心に自分はないと思い、自殺しようとする。
それを偶然見たカヨは松本を止める。カヨは「自分のような女は先生にふさわしくない」と自分から去っていった。


鈴木義昭著「ピンク映画水滸伝」の復刻文庫化を記念してのピンク映画の上映。初期の製作プロ「葵映画」での初代ピンク映画女優・香取環の特集上映。
60年代の初期のピンク映画は若松孝二の映画ぐらいしか観たことがないので(私は若松映画を観てピンク映画を語るのは反対。あれは若松孝二のいわば自主映画みたいなものでピンク映画ではない)、いい機会なので干渉。

この時代のピンク映画をよく知ってる人からしたら当たり前のことかも知れないけど、いろいろと初めて知ったことがあった。
冒頭、映画の前に葵映画のマークが出るが、この時にファンファーレがなる。これがその後の新東宝映画でおなじみの「パーパ、パラパッパ、チャンチャカチャーン」(っていう感じの気の抜けた曲)がすでに使われていた。(それとも再公開の際にでも後で付け加えられたのかな?)

ちなみに今回の上映は白黒16mmスタンダード版。でもクレジットはシネスコ画面をレンズを外してのスタンダードに圧縮したものだった。だから本来は35mmシネスコだったものをスタンダードにしたのかも知れない。
時々変なカットつなぎ(3人の人物がいて二人だけ写っていて3人目の会話の時、ちょっとずれた位置のフレームに変わったりしたのだ)があったのでおかしいなと思ったのだ。

そして美大生が先生の前で服を脱ぐのだが、乳房は0.1秒ぐらい写るだけ。後半になってもカラミはあるけどおっぱいもお尻も写さない。
もうこれではカラミじゃなくて単なるいちゃいちゃだよ。
裸は写らないけど、セックスはしているという訳。
おいおいこれで当時の観客は満足してたの?
今ならこの映画、映倫に出しても一般映画だよ。せいぜいR15だよな。

内容の方はどこかで聞いた話だと思ったら、谷崎潤一郎の「痴人の愛」がベースだとチラシに書いてあった。なるほどね。
私も武見の意見に賛成で、勉強なんて本人に覚える気がないとだめですよ。
学生のうちは試験だ、進学だと勉強しなければならない理由があるけど、愛人に無理矢理教えられたんじゃなあ。
まあ恋人が立派な人で「その人にふさわしい人物になりたい」って自分から勉強する美談もありますけどね。

内容云々よりまずは60年代ピンク映画の実体を知ることが出来てよかった。これが数年たってカラーになって日活ロマンポルノだから随分進化するのだな。
引き続きピンク映画史勉強(というか好奇心で)時間の許す限り観ていきたいと思う。










ある脅迫


日時 2020年12月12日19:10〜 
場所 ラピュタ阿佐ヶ谷
監督 蔵原惟繕
製作 昭和35年(1960年)


新潟銀行直江津支店の次長、滝田(金子信雄)は本店の業務部長に栄転が決まり未来が約束されていた。彼の妻は頭取の娘で滝田はゆくゆくは頭取も夢じゃない。
そんな時、熊木(草薙幸二郎)という男が訪ねてきた。滝田が東京出張の際に関係を持った女の夫だった。浮気のことはあるが、それ以上に彼女に浮き貸しをした際に作った印鑑の証拠を握られていた。300万円明後日の朝6時までに用意できなければこのことを警察と新聞にたれ込むという。「銀行の金庫から金を持ってくればいい」と拳銃を渡す熊木。
滝田には中西(西村晃)という中学の同級生がいたが、彼は庶務課の平社員で、いわば雑用係のような立場で、滝田は下に見ていた。
滝田は知人に300万円の借金を申し込むが誰も相手にしない。
期限の前の晩、銀行の当直が中西と知ると酒を飲みに連れ出し、よいつぶしてしまう。そして滝田は覆面をして銀行の裏口から侵入した。守衛(浜村純)を縛り上げ、起きてきた中西に拳銃を突きつけ、金庫の鍵を開けさせる。しかし滝田は中西が強盗だと気づかれたと思った。


今日から始まるラピュタ阿佐ヶ谷での鈴木義昭著「ピンク映画水滸伝」の復刻文庫化を記念しての香取環特集を観に行ったのだが、7時前に到着し、「ある脅迫」(「日活映画を支えたバイプレーヤーたち」という特集)という金子信雄・西村晃主演映画が上映されるので(過去に観てないことを自分のサイトで確認してから)急遽鑑賞。
66分の尺だしSP、添え物扱いの映画だったのだろう。

さすが金子信雄、西村晃の対決だ。金子の滝田は中西の妹(白木マリ)とも関係を持ち、滝田の妻は元は中西の彼女だった女だ。二人とも滝田を恨んでいる。
しかし中西は平然として「僕と滝田さんでは人間の出来が違うから」と自分を卑下する。

銀行強盗がばれるのも金庫から300万円しか持ち出さず、中西に「300万円でいいんですか?」と言われ、そのときにベルが鳴り響く。
非常ベルか?と思わせて、昼間滝田に取引先から送られた時計のベルだったというオチ。しかしその時計を中西は「これをお持ちください」と言われ完全にバレたと悟る。
しかし滝田も笑いだし「防犯実験で僕が銀行強盗をやってみたんだ」と言い逃れをする。

しかし金は出来なかったので、熊木にはなんとか時間をくれと頼むが応じない。もみ合ってるうちに熊木は崖から転落し死亡。
証拠がなくなったと喜ぶ滝田だが、翌朝「熊木という男がきた」と中西に言われる。言ってみると誰もいない。「実は熊木に証拠を渡したのは僕なんだ」と中西が後ろにいたと判明。
さらに新潟行きの列車で中西と遭遇。(その前に「滝田さんですね」と男が話しかけ、観客をドキッとさせるとか芸が細かくてニクい)
中西は銀行を辞めてきてこれから滝田の世話になると脅迫。

ここで終わってもよかったのだが、別の男が「滝田さんですね?警察の者です」とやってきて終わり。
なぜ警察が気づいたかは解らないけど、中西にしても善玉ではないので二人との一巻の終わり。

見応えのある映画だった。








ヱヴァンゲリオン新劇場版:破


日時 2020年12月11日18:10〜 
場所 TOHOシネマズ新宿・スクリーン12
総監督 庵野秀明
製作 平成21年(2009年) 


新たな使徒に襲われた第3新東京市。それを救ったのはヱヴァ2号機に乗ったアスカだった。アスカは綾波レイを「えこひいき」、碇シンジを「親の七光り」と呼び、彼らの力を認めようとしなかった。
しかし大型爆弾型の使徒が襲来、それはヱヴァでキャッチするしか方法がなかった。墜落予想地点に到着した零号機、初号機、2号機だったが、アスカは「自分一人でも大丈夫」と言ったが、3機一緒に行動することで撃破することが出来た。この事件でアスカの綾波やシンジに対する気持ちも変化し始める。
アメリカで開発されていた4号機が突如爆発した。エネルギーシステムも新しいこの4号機が事故を起こしたのだ。そのために開発中だった3号機の起動実験は日本で行われることになった。
アスカがパイロットとして乗り込んだが、そのときに新たな使徒が襲来。しかし3号機の中に使徒が侵入し、暴走を始める。NERVは3号機を新たな使徒とし、初号機とシンジが対決する。しかしアスカがまだ乗ったままと知ったシンジは対決を拒否する。シンジの父ゲンドウはダミーシステム(遠隔システムのことらしい)によって初号機を操縦。
3号機は破壊されたが、アスカは精神を使徒に犯され、検体として隔離されることになった。
この件でシンジはヱヴァのパイロットを辞めると言い出す。
そこへ新たな使徒が出現。新しいパイロットマリが2号機で迎撃。綾波の零号機も出撃するが苦戦。綾波の苦戦を見てシンジもパイロットとして参戦する。
シンジは使徒を撃破することに成功するが、ヱヴァと一体化してしまい、サードインパクトが引き起こされようとする。


先週に引き続き、ヱヴァンゲリオン新劇場版。
相変わらず細かい設定がよくわからないまま話は進んでいく。
そもそもセカンドインパクトってなに?セカンドってことは「ファースト」があったの?などは説明されてない。いやせりふで説明されてるのかな?
そもそも時代設定はいつ?2050年ぐらい?それとも2200年とかの未来なの?
第3新東京市ってことは第2があったの?古くさい町並みもあるけど、そんな何十年もたってないでしょ?電車もたくさん走ってるし。そういうのは気にしちゃいけないのかなあ?
それとも「設定集」とかの別の本を読めば書いてあるの?ファンの人はそういうの読んで勉強してから観てるの?

日本海に作られた「海を元の状態に戻す実験施設」を見学するシーンがあるが、今の海は赤くなってるの?生態系も変わってるの?
さっぱりわからないよ。

そういう置いてきぼり感はあるのだが、戦闘シーンなどの絵の美しさは立派だったと思う。アニメ素人にはこの程度の感想で申し訳ないのだが。

それよりも音楽の使い方。
アスカが使徒に倒されるシーンでは「今日の日よさようなら」が流れる。戦闘シーンには似つかわしくない曲を流すというアンバランスなことをする。
さらにラストの初号機の戦闘シーンでも「翼をください」を流す。
いやー攻めてるなあ。
この曲を知らない若い世代のファンはトラウマになるんじゃないか?
「ゴジラ」でこういう演出をしてくれなくて本当によかった。

また朝のシーンで「太陽を盗んだ男」のBGMを使用。
葛城の携帯の着信音がキングギドラの声(でもあり「ウルトラマン」だったかでの通信の着信音)が使われている。
これらのことはウィキペディアにも書いてあり、やはりみんな気になったのだなあ。

「ヱヴァンゲリオン」自体はそれほど好きではないのだけれど、「ヱヴァ」を観ないと若いクリエーターの作品が理解できないので、次も観よう。
幸い今回のリバイバル上映では特別料金で1100円だからな。ポイントもたまるし。









アンダードッグ後編


日時 2020年12月6日17:10〜 
場所 イオンシネマ板橋・スクリーン6
監督 武 正晴


宮木との一戦では引き分けだった晃(森山未來)だが、素人同然のボクサーに互角にされたことは事実上敗北だった。晃は引退を考え別居中の妻との修復を考える。しかし妻からは「結婚したい人がいる」と離婚を迫られた。
宮木は芸能界引退を報じられている。
大村龍太(北村匠海)は順調に勝ち進み、これからのボクシング人生も順風満帆に見えた。子供も生まれ施設で育ち親を知らない龍太は幸せを感じていた。
晃がデリヘルの明美の常連客まで送っていったが、帰りは客に送ってもらうからいいと言う。深夜の晃のジムで晃が練習しているとき龍太が遊びに来た。そこへ明美は送ってもらった。例の車いすの客は送ったジムにかつて自分を暴行し、車いすの体にした男がいるのを見かける。龍太だ。
車いすの男は龍太の家を確かめ、ついに復讐に出る。刃物で顔を切られ重傷となる龍太。医者からは「ボクシングをしなければ普通の生活が出来るがボクシングをしたら右目が失明のおそれがある」と言われ、「天罰だな」とボクシングを止める決意をする。しかし引退の前に一試合だけしたい。相手は晃だ。
一方晃の勤めるデリヘルの店長(二ノ宮隆太郎)は上納金が納められなくて追いつめられていた。逃げる前に一度自分の店から女の子を引き抜いた店に仕返しをしたい。包丁を買い込み相手の店に行く店長。
晃と龍太の対決の行方は?


「アンダードッグ」後編。
宮木(勝地涼)は事実上姿を消すが、その代わりサブキャラだった晃の勤め先だったデリヘルのメンバーが重きをなしていく。

まずは明美。
一人娘がいるが今の男に虐待を受けている。そして追いつめられ、ついに展望台から突き落とす。最後に頼れる晃に連絡し、娘はなんとか助かったが、警察に自首していく。晃はこの女と結婚する決意を固める。

そして明美の常連だった車いすの男。実は車いすは交通事故などではなく龍太の暴行によるものだったのだ。このあたりのリンクは見事です。
また北村匠海が演じる龍太にもそんなことがあったとは!

最大の見せ場はデリヘルの店長。
単なるわき役だと思っていたら、後半になるにつれて重きをなす。
ヤクザから上納金のことで責め立てられ、おそらく後輩だった男に今は小突かれる始末。最後の最後には包丁をもって殴り込む。
演じるのは二ノ宮隆太郎。いまおかしんじ作品で何本かチンピラ役で出ていたが、今回は追いつめられた男の意地を見せる。
いや今まで観た二ノ宮さんの出演作の中では最高ではないか。

龍太はボクシングを始めたきっかけが晃が孤児院にボクシングを教えに行ったことがきっかけだったのだが、その時の相手が晃だったのだ。
晃をいつか殴り倒さねば気が済まない。
これが対戦したい理由だったのだ。

そして今までこたつで酒飲んでいるだけだった晃の父(柄本明)も観戦に駆けつける。(切符売り場で晃の息子と合流するシーンがよい)

そういう対戦の両方とも応援したくなる状況になっている中で試合は始まる。
これがまた長く激闘が続く。二人とも徐々に顔が腫れていく。
結局龍太の判定勝ち。でも「世界チャンピョン目指せよ」と龍太はエールを送る。

人間なんて大抵自分は負けていると思っている。そんな中で「ここではないどこかへ」へ向かおうと戦い続ける姿には素直に感動する。
よかった。

北村匠海は先月の「さくら」でも成長したと思ったが、本作ではさらに躍進した。
まず冒頭で肩にタトゥーをしているには驚いた。
ボクシングシーンではタトゥー隠しのシールを貼っていた。あれ、なんか規則でもあるんだろうか?
そして今回は妻とのセックスシーンあり。子供も産まれて父親役。
「思い、思われ、ふり、ふられ」では高校生役だったのに今回は父親役。
今年の彼の躍進はめざましい。
本気で讃えたい。

そしてボクシングジムの会長の芦川誠。渋い役者になったなあ。
私なんか未だにテレビドラマ版「翔んだカップル」(1980年)のイメージが強いが、考えてみればあれからもう40年である。






アンダードッグ前編


日時 2020年12月6日12:25〜 
場所 イオンシネマ板橋・スクリーン6
監督 武 正晴


末永晃(森山未來)はかつては日本ライト級1位になった男。しかし今はボクシングをやめられずにデリヘルのドライバーをしている。試合に出ても負け続きで会長からも引退を考えるようにいわれている。でも深夜に箕島ジムで練習している。そんなところへ「今度プロテストを受ける」という若者がやってきた。グリーンジム所属で名前は大村龍太(北村匠海)。
龍太は晃のことは一目おいているようだ。
龍太がプロテストを受ける同じ日、やたらにぎやかな男もプロテストを受ける。売れない芸人の宮木瞬(勝地涼)だ。芸人の瞬はテレビの企画でボクシングに挑戦中だった。
晃はデリヘルの店に新しく入った明美という女性を客のところまで送っていった。娘もいる明美だがなにやら事情がありそうだ。明美の常連客は大きな家に住み、明美を上品な女性が出迎える。つい中を覗いた晃だったが、明美や客に覗いていたことはばれていた。客は車いすの男で勃たない代わりにバイブで明美を弄ぶ男だ。
会長からエキシビジョンマッチとして瞬と試合をするように言われる。そんな芸人の遊びのような試合はしたくなかったが、ギャラがいいという事で会長から受けるように命じられる。しかも4ラウンド中で瞬のパンチを数発受け、2ラウンド目で一度倒れてほしい、3、4ラウンドは負かせてもかまわないとテレビ局から言われる。ますます不本意だったが金の為に仕方なく同意する。
瞬の父親は有名な俳優で瞬は常に2世としての負い目を背負ってきた。
この試合をがんばって父親や周りを見返してやりたい。
晃と瞬の戦いが始まる。


ストーリー紹介が長くなった。北村匠海がボクサー役というのでそれだけで観る動機は十分だ。「さくら」でムチムチボディを見せた北村だが果たしてどうなっているか。初日舞台挨拶の芸能ニュースを見たが、10kg減量して役に挑んだそうだ。
その回あって堂々のボクサーぶりである。しかし後編に見せ場があるらしく、前編での出番は多くない。前半は瞬の意地が見せ場である。

登場の時はちゃらい芸人だったが、徐々に彼の抱えるものを明らかになる。高級マンションに住むが、なぜか毎日のように友達の友達がやってきてやりたい放題にされている。芸人として全く受けずに「面白くない」と言われ続ける。有名な俳優の父親には「お前クスリとかやってないよな」「もう芸人辞めろ」と言われる始末。

前半のクライマックスは瞬と晃の対決だが、復活を夢見る晃、「負けるに決まってる」とジムの先輩からも言われ続ける瞬、見てる方はどっちも応援したくなる。
結果は引き分け。晃と瞬の実力差を考えると瞬の大善戦だ。父親も自分の頑張りを認めてくれた。

瞬と晃のボクシングシーンは30分ぐらいあり(体感上。実際は違うかも知れない)、迫力満点である。
それを見ていた龍太。
男の敗者復活戦のドラマとして十分に面白い。
龍太は施設育ちで両親がいない。しかし今は結婚して妻は妊娠している。子供に対してちゃんとした父親になれるか不安を持っているようだ。
果たして3人はどのような結末を迎えるのか。
後編が楽しみだ。








野良犬(森崎東監督作品)


日時 2020年12月5日14:45〜 
場所 シネマヴェーラ渋谷
監督 森崎東
製作 昭和48年(1973年)


蒲田署の刑事、村上(渡哲也)は女性を職質中にひったくりに襲われ、その混乱の時に拳銃を奪われてしまう。そして翌朝古新聞の回収業の社長が殺された。
村上は謹慎を命じられたが、佐藤(芦田伸介)に身柄は預けられる。佐藤は村上を連れて聞き込みへ。村上が見た車のナンバーから犯行に使われたのは盗難車と発覚。佐藤は盗難車の線を洗っていくうちに川崎の工場に勤める朱美という女性が浮上してきた。犯人は複数でこの朱美の仲間の可能性が高い。
謹慎中の村上は佐藤の家を抜け出し単独捜査へ。現場で交わされた言葉が沖縄の言葉だったことから沖縄出身の若者の犯行ではないかと推測する。
佐藤も朱美の線から犯人グループに遭遇。しかし佐藤は撃たれてしまう。
朱美を張り込む村上は犯人の一人と新宿で接触。しかし犯人は仲間をかばって拳銃で自殺。すんでのところで拳銃は別の仲間の手に渡ってしまい、しかも逃げられた。
朱美の引き続き張り込む村上。朱美が動き出す。


黒澤明の「野良犬」の再映画化。この映画、ずいぶん前に(学生時代かな?)レンタルビデオで見ている。「野良犬」は20代の頃から濡s着な映画だったので興味があって見てみたのだ。
あまり記憶がなかったのだが、もう一度見たくて今回時間も合ったので鑑賞。

正直黒沢版とは別物である。若手の刑事が拳銃を盗まれる、刑事の名前は村上と佐藤、佐藤は途中で犯人に撃たれるという3点しか共通点がなく、あとは完全にオリジナルストーリー。

正直、渡哲也ではもう新人刑事という感じではないし(顔が中堅の刑事の顔つきになっている。やはり新人の初々しさが欲しい)、犯人の動機も異なっている。
犯人の設定を「沖縄から集団就職で来た若者グループ」に変えたことは興味深い。
当時沖縄返還で沖縄は大きな話題だったのだ。

今気づいたけど「田舎刑事 まぼろしの特攻隊」も沖縄特攻だったしこの作品は「戦後の沖縄の扱い」がモチーフだ。森崎東の沖縄に対する思いが感じられる。73年だったら別に沖縄でなくても「高度経済成長に乗れなかった者」として犯人の設定を作ることも可能だったろう。

しかし黒沢の「野良犬」は「俺は犯人になっていたかも知れない」とどこか共感しているのだが、本作の渡哲也は鋭い目つきでにらんでいるだけ。
その辺が違うのだなあ。

そして今回は単独犯ではなく複数犯にしたこと。正直新宿での(ミラノ座の前だ!)での捕り物で映画は終わると思っていたらまだ続くので「長いな」と感じた。単独犯ならここで終わらせられたのに。

なお新宿で自殺する犯人、イケメンでどっかで見た顔だな、と思ってみたら内田喜郎。あっあの「高校生ブルース」で関根恵子の相手役だった青年だ。
最後の捕まる犯人が志垣太郎だった。
なお劇中朱美がバスで川崎から新宿まで移動するが、そんな路線はないぞ。その後に乗る新宿→晴海はあるけど。







田舎刑事(デカ) まぼろしの特攻隊


日時 2020年12月5日12:50〜 
場所 シネマヴェーラ渋谷
監督 森崎東
製作 昭和54年(1979年)


大分県の飛行場跡で女子高生のセーラー服を着た遺体が発見された。所轄の杉山(渥美清)は現場に駆けつける。女子高生の遺体の上には桜の花びらがあり、近くには日の丸の鉢巻きが落ちていた。
遺体の着ていた制服と同じ制服の学校は九州にはなく、行方不明者にも該当者がおらず、捜査は難航した。
1年後、桜の花びらは鹿児島県の知覧の可能性があると解る。
そして女子学生は本物の女学生ではなかったと思いエロ写真の専門家大阪府警の山中(浜村純)を訪ねる。山中は桜の花びら、近くに落ちていた日の丸から「マリア物」ではないかと察する。「マリア物」とは終戦後から数年に一度出てくる「特攻隊員が出撃の前の晩マリアと名乗る女子学生と体を重ねる」という内容のエロ映画だった。
「マリア物」の制作者は深沢(西村晃)という男だった。深沢を追って山中と聞き込みにいくと深沢にはスポンサーがいるらしい。今は生け花の名門の家元になっている真理子(高峰三枝子)だった。
その頃深沢は知覧で男たちの殴られていた。その現場を目撃したのは杉山の同僚刑事だった。そして深沢はある女性を訪ねる。


森崎東特集の1本。この「田舎刑事」は土曜ワイド劇場の1本だが、追悼特集としで上映。フィルムではなくビデオ撮りしたものをデジタル化したのを上映で、画質は気になる。

興味深いのは「特攻隊」と「エロ映画」を同じ話に組み込んでいる点。
それにしてもこの作品が作られたのは戦後34年。今年が戦後70年だから終戦からこの作品までの時間より長い時間がこの作品から現在まで経ている。
20歳の時に終戦を迎えた人間がこのときは54歳。深沢の年齢もそのくらいの設定。杉山刑事は「戦争中は飛行兵に志願するつもりだった」というから終戦時には10代前半だったのではないか。となるとこの時40代後半。二人とも今の私より年下である。

深沢は自称特攻隊の生き残りで「マリア物」は実際にあったことで深沢は特攻隊への鎮魂のためと言う。
しかし彼自身は特攻隊ではなく、整備兵だったのだ。彼自身は特攻隊員の制服を借りて特攻隊と偽ってマリアと情交を重ねたのだ。
深沢自身はそんなに潔い男でもない。

真理子は深沢からマリア物を見せられて「恐喝された」と解釈し金を払っていた。深沢はそんなつもりはなかったと言うが。
そのあたりの誤解、あるいは嘘はあいまいで実は当人たちにも解らなくなっていたのかも知れない。

殺人事件はあたらしいマリア物を撮影中にタレント志望の女優を使ったが、撮影中に「話が違う」とごねだしたので思わず殺してしまったのだった。(でもその後に男優役も車ごと湖に捨てて証拠隠滅をはかっているのだから女優の死体も一緒に沈めればよかったのだ)

特攻隊に対する負い目から「マリア物」を撮っていた深沢だったが、全国指名手配され、鹿児島県の浜辺から海に向かって泳ぎだし自殺する。
その他に深沢の娘の可能性もある真理子の娘も登場するが深沢のインパクトの前ではややかすむ。

1979年と言えば鶴田浩二が特攻隊の生き残りを演じた「男たちの旅路」が放送されていた。かたやエロ映画の業者である。
AVが出現する前、特攻隊の生き残りが50代で完全に現役だった、などなど今とは違う時代設定で興味深い。
それもテレビのゴールデンタイムの番組でこういう「エロ映画」と「特攻隊」を組み合わせた作品が成立したというのは今となっては驚きである。








ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序


日時 2020年12月4日17:30〜 
場所 TOHOシネマズ新宿・スクリーン5
総監督 庵野秀明 
製作 平成19年(2007年)


使徒と呼ばれる謎の敵が日本を襲う世界。その第3東京市(かつての箱根付近に存在する)に碇シンジはやってきた。中学生だが、父親が秘密機関NERVの責任者でその父に呼びだされたのだ。シンジは家庭を顧みなかった父を恐れていた。
シンジが到着したとき新たな使徒がやってきた。シンジは到着早々エヴァンゲリヲンと呼ばれる使徒対処用ロボットの1号機に乗せられ使徒と対決させられる。
こうしてシンジは自分の意志とは関係なしにエヴァンゲリヲンのパイロットとして使徒と戦うことになる。


来年1月に「シン・エヴァンゲリヲン劇場版:U」が公開されるのを機に今までの劇場版を1週間ずつ再公開。本当は今日は「バック・トゥ・ザ・フューチャー」を観ようかと思ったが(こちらは公開35周年だそうだ)1日1回で吹き替え版が中心と解ったのでやめてこちらにした。
ヱヴァンゲリヲンの劇場版は一度テレビシリーズが終わった後劇場版が作られたがこちらは「旧劇場版(略して旧劇)と呼ばれていて、この2007年以降に作られたのが「新劇場版(略して新劇)」と呼ばれるらしい。
それでこの「新劇場版」が全く完結せず、来年(本来は今年だった)完結編が登場するわけでファンの期待は高まっている。

オリジナルのTVシリーズは「シン・ゴジラ」の時に観ている。そのときはみんながあんまり「エヴァの影響だ」と関連性を言うのだから、「観ておかないと」と思ってアマゾンで売っていた全話で2500円ぐらいのフランス版DVDを購入し観た。自分自身はファンになることはなかったが、エヴァが与えた影響は理解でき観てよかったと思う。
というか特撮系のクリエーターは何らかの形でエヴァの影響は受けてると思うので、観ておかないと話にならないのだ。

前置きはさておき、今回の「序」。
ストーリーはオリジナルテレビシリーズとだいたい同じ。(というか違いが解るほどオリジナルを覚えていない)
シンジは今までのヒーローものと違っていやいやエヴァに乗っている。
このあたりの「普通の中学生」感がいいのかな?

それよりも裸の描写が多いのだ。
彼の身元引受人になった葛城の部屋で暮らすことになった碇シンジは風呂に入ろうとしてペンギンがいたのでびっくりして飛び出す。そのときに全裸(もちろん股間は「物」で隠されるが)。
またエヴァ0号機(試作機ということか)に乗る綾波レイの部屋に行って風呂から出てきた綾波とはち合わせるとか、エヴァに乗るときのスーツに着替えるとき全裸になるとか。
アニメだから大丈夫なんだろうけどまかり間違えれば児童ポルノだよ。

そして昨日観た「ガメラ大怪獣空中決戦」(実は昨日もう1回観に行った)と同じく最後はエヴァが新しい使徒を狙撃して倒して「バーン!」で終わり。
でも「ガメラ」の時は「やったー!」てカタルシスがあるのだが、「エヴァ」は「あっそう」って感じ。アニメだと炎も爆発も「絵でしょ?自由に描けるでしょ?」と思ってしまう。(実はそんなことはないのかもしれないけど)
つくづくアニメではカタルシスを感じない体質になってるようだ。
でも「ヱヴァ」は理解したいので「破」「Q」も新作も観に行く予定。






サイレント・トーキョー


日時 2020年12月4日10:45〜 
場所 TOHOシネマズ池袋・スクリーン5
監督 波多野貴文


山口アイコ(石田ゆり子)は夫が好きなカフェのサンドイッチを食べにきた。その近くでは彼女を見つめる男(佐藤浩市)がいた。
テレビ局の報道班員の栗栖(井之脇海)は「12時にショッピングセンターで爆発がある」という予告電話があり、念のため先輩と取材に来た。
しかし着いた途端にベンチに座っていたアイコに「代わりに座って。動くと爆発する」と言われる。先輩が座り、栗栖はアイコと行動をともにすることに。そして犯人から犯行声明が発表された。それは日本を戦争を出来る国にしようとする磯山総理(鶴見辰吾)との対話だった。対話に応じない場合は午後6時に渋谷で爆発を起こすという。
磯山総理は「日本はテロには屈しない」と要求を拒絶する。
渋谷署の世田(西島秀俊)と泉(勝地涼)は周辺の聞き込みを始める。その中で須永(中村倫也)という男に不振なものを感じる。
須永に心惹かれる綾乃(加弥乃)は友人の真奈美(広瀬アリス)とともに渋谷にやってきた。そこで須永を見かける。
世田たちも渋谷にやってきて須永を見かける。爆破予告を聞きつけた野次馬が多数渋谷のやってきて周辺は大混乱。
やがて6時を迎えるのだが。


渋谷で大爆発が起こる!というサスペンス映画とだけ知って観た。その手の映画は好きなので(今日事情で有給休暇を取ったこともあって)初日に見に来た。(東映系なので新宿ではバルト9なので池袋まで来た)

いや面白いことは面白いんだけど、上映時間が99分でタイトすぎ。
これは監督の「映画は90分程度の上映時間の方がいい」という考えに基づくらしい。(パンフに書いてあった)
でもこの場合は失敗だったんじゃないかなあ。

最初は須永が犯人と思われてやがて須永の父・朝比奈(佐藤浩市)が犯人と目される。
この辺の描写が実に雑。爆弾の専門家、という分析から自衛官、爆発物処理班など当たっていき、そして世田の勘から須永、朝比奈と徐々に迫っていく楽しみがあるはずなのだが、その辺は割と省略される。

また朝比奈の自衛隊時代の外国での地雷除去活動が動機のベースになっているのだが、回想シーンで登場しても現在の朝比奈と全く結びつかない。
これが手に傷があるとかなにかないと同一人物と解らないよ。いやせりふで説明されば解るけど、そうすると説明がくどくなる。

磯山総理は右派の政治家で「外国からの侵略に備えて日本の防衛を強化する。日本を戦争を出来る国にすると言い換えてもいい」と宣言する。
地雷除去活動で現地の活動で精神のバランスを崩し自殺した夫を持つのがアイコ。アイコは夫から爆弾についての知識を教わっていて爆弾作りが出来た。「戦争を出来る国にする」という総理に「あんたは何も解ってない」と訴えたかったというのが事件の真相。

明らかに現代の空気をつかんでおり、アイコに協力させられた栗栖はテレビ局のインタビューで「テロに屈しないという総理の判断は間違ってなかった」と無理に言わされそうになり、それを拒絶する。
そういう政権に忖度するマスコミなどのあり方も問いかける。
本来なら事件の真相を聞いて磯山がどういう反応を示したか、例えば無視する、考えを変える、などいろいろ選択肢があると思うが、それを描いてほしかった。

うまくやれば「新幹線大爆破」並の映画になったのだが、なんだか「短縮版」を観させられた気がして物足りない。
渋谷の爆発シーン、渋谷のセットは立派だった。ほんとにロケしたと思わせる出来だった。合成技術もここまで進化すればカーアクションもどこでも出来ることになりそうだ。










脳天パラダイス


日時 2020年12月1日21:00〜 
場所 新宿武蔵野館シアター3
監督 山本政志


ある一家が父親の借金のために家を手放すことになった。父親は妻(南果歩)と離婚し、今は息子(田本清嵐)と娘の3人暮らし。
引っ越しの日、娘はTwitterで「今からパーティします。誰でも大歓迎」と地図付きでツイートしたものだから人が集まり出す。
まずは結婚式をしたいゲイのカップル。一人はラフな服装をしたインド人だが、一人はウエディングドレスを着て日本人。
庭の彫像を仏像のように拝んでいたホームレス(柄本明)は突然死んだ。
父親の親の幽霊も登場。家はカオスと化していく。


山本政志監督最新作。
予告編はやたら目にしたので、存在は行っていたがどうにも観たい気分にはなれない。
それでも観たのはもう義務で、映画の日の1000円デーを狙ってのこと。(それ以外なら武蔵野館の割引券を使っても1600円するのだ)
しかも早い時間ならともかく21時から1回のみの上映なのだよ。

そんなマイナスの気分で見始めたのだが、結局予告編で受けたイメージのまま。これなら予告編だけ観れば十分だ。

その後、映画は妻が今結婚しているコーヒーショップの男が応接間で喫茶店をはじめ、焼きそば屋やビール売場まで出て夏祭り状態。
コーヒーショップのロゴが明らかに「ドトールコーヒー」をもじった名前だった。ドトールも有名になったものだ。

その喫茶店で使ってるコーヒー豆がなんだか生きてるみたいでやがて2mぐらいに巨大化する。
ゲイカップルだが、タキシードを着た男が現れ、実はインド人の方がこの男から略奪してきたとわかる。タキシードを着た男(西洋人)がインド人にもウエディングドレスの方にも首にアイスピックを刺す。
「抜いたら血が出る」と周りにいわれ抜かないのだが牧師に「それではアイスピックの交換を」と言われ、いったん抜いて相手に刺す。
抜いてる間だけ血が吹き出る。
はあ、なんだかなあ、こういうギャグは嫌いである。
コーヒー豆の怪物は燃やされて終わり。

やがて朝になってみなさん三々五々に帰って行く。
まあそういう映画でただがちゃがちゃと騒いでるだけ。
何が面白いんだ一体?
「銀魂」は私はだめだったけど、まだ「好きな人がいるのは理解できる」という感じだった。でもこの「脳天パラダイス」は全く面白くない。
作ってる人が面白がってるだけ。
その割にはヒューマンとラスト渋谷とか公開劇場は多いんだよな。