2021年1月

   
劇場版 ほんとうにあった怖い話
事故物件芸人
さんかく窓の外側は夜 がんばれ!若大将
真紅の男 太平洋ひとりぼっち 熟女藤本聖名子
悶絶色情狂い
哀愁のサーキット
三十路銀行員 極太狂い 暴行爛熟未亡人 好色回春日記 佐々木、イン、マイマイン
ネズラ1964 売春暴行白書 燃えよデブゴン/TOKYO MISSIO 不思議の国のゲイたち
新世紀エヴァンゲリオン
DEATH(TRUE)2/Air/まごころを、君に
引裂れた処女 美しき覚醒 AWAKE

劇場版 ほんとうにあった怖い話 事故物件芸人


日時 2021年1月31日15:30〜 
場所 池袋シネマロサ1(2階)
監督 天野裕充


売れない芸人・綾野(屋敷裕政)はテレビのプロデューサーから「事故物件に住んでレポしろ」と言われ、売れたい一心で住んでみる。
そこでは出かけるときに独りでに鍵がかかったり、髪の長い女性の姿を見かけたりする。
その2年前、福島から上京した二郎と崇の芸人コンビが住み始めた。
部屋には汚いぬいぐるみの人形が落ちていた。しかしそれを捨てても捨てても戻ってくる。後輩の方が言われるがままに何度も捨てたがだめだった。やがて先輩の方が何かおかしい。ひょっとして何かにとりつかれたのでは?
その2年前お笑い芸人のシンジ(みちお)は彼女にも相方にも逃げられ、格安のアパートに引っ越した。やがて彼は何かにとりつかれ、行きつけの店で知り合った人を次々と連れ込む。
彼女や相方がシンジが気になって部屋に行くとそこの押入には9人の遺体があった。


ブロードウエイ(スカイウエイ)製作のホラードラマ。
今回は昨年ヒットした亀梨和也主演の「事故物件 怖い間取り」のパクリというか後追い企画。
まあいくらでも作れそうである。昨年の11月ぐらいに撮影してもう公開だからハイペースだ。

ホラーといっても今回はまったく血が出ないので私の好みである。
第1話が髪の長い女が出てきて腕を捕まれたところで終わり、結局どうなったかはわからない。
2話目で捨てても捨てても戻ってくる人形が登場し、徐々に怖さが増す。
「先輩の方もなんだかおかしい」という終わり方。芸人だけに不気味に笑うと怖さが増す。
そして3話。
みちおという坊主頭の太った芸人なのだが、これがすごむとまた怖い。
たまたま知り合った仕事に悩む男に「芸を見せてください」と言われ見せたがおもしろくない、そしてお愛想で「おもしろかったです」と言われて絡み出すあたりは怖いですねえ。
この徐々に怖くなっていくのがいい。

この部屋に昔住んでいたシングルマザーが子供を変質者に殺されてそこからおかしくなった、という話が最後に出てくる。
それと人形(ユキエという名前で死んだ子供と同じ名前らしい)と同感系があるのかとかなぜシンジが人殺しをするようになったのか判然としないのだが、まあ野暮なつっこみはよそう。
(シンジは「記憶がない」とか言ってるけど、警察はどう対応するのか?)

とにかく血が出ないホラーなので、血しぶきが嫌いな私としてはよかった。血しぶきさえ使えない低予算のホラーの方が私にはあってるのかも知れない。
(中途半端に予算があると造形物に凝るような気がしてきた)






さんかく窓の外側は夜


日時 2021年1月30日11:05〜 
場所 新宿ピカデリー・スクリーン1
監督 森ガキ侑大


三角康介(志尊淳)は子供の頃から霊が見える体質。大人になっても見たくもないものが見えるその能力におびえていた。
ある日冷川(岡田将生)という男に「君のおかげではっきりと見える。僕の助手になってほしい」と言われる。冷川は除霊をしている謎めいた男で、三角の体に触れることで自分もはっきりと霊が見え、仕事に役立つという。
神奈川県警の刑事、半澤(滝藤賢一)は冷川たちにある調査を依頼した。数ヶ月前からコンビニの店員(水澤伸吾)が連続バラバラ殺人事件を起こしたのだが、その死体の一部が未発見で探してほしいという。殺害現場に冷川と三角は出向き、そこで見えたものから死体が隠してあった廃ビルを探し出す。
一方で横浜のある雑居ビルで複数の人間が行方不明になっていた。
半澤は二人をつれてその現場へ。そこでヒウラエリカ(平手夕梨奈)を見かける。


ホラーチックなミステリーもの。岡田将生=志尊淳のW主演。岡田がバックハグの姿勢で霊を観るシーンがかっこよくてそれで観た。
実際、「BLもの」という表現も見られ、美青年同士が抱きあうカットに美しさを感じるのは私だけではないようだ。

で事件ものというので見たわけだが、ちょっと予想と違ったなあ。
冷川=三角コンビがホームズ=ワトソンコンビのように事件を解決していくのかと思ったが、そう話は単純ではない。

事件の背後には冷川も子供の頃に怪しい教団の教祖に祭り上げられ、その教団で大量殺人事件があったとか、彼の生い立ちが絡む。
またヒウラエリカの方も別の教団にいてその教祖に利用されて人間の邪気を横浜の雑居ビルに集めて犯罪を犯すという流れになってくる。

最後にはその雑居ビルの部屋にある邪気を払いにいくのだが、その邪気の中心にあるのが、冷川が子供の頃に親しんだカレイドスコープ。
あらかじめカレイドスコープを取り戻せば邪気が払える、という設定がなければどこがカタルシス、目標、ゴールなのかさっぱりわからん。
だからなんかモヤモヤのうちにクライマックスを迎え、映画が終わるんだよね。
なんだかなあ。

舞台は横浜で大桟橋の入り口の交差点がよく登場するし、例の邪気のある雑居ビルも日ノ出町(野毛)らしい。
やりすぎになるかも知れないけど、志尊淳と岡田将生が上裸でバックハグしていたら、BLファンとしてはもっと受けたろうになあ。
コロナの影響もあるだろうが、2週目の土曜日で新宿ピカデリーは1日に8回上映。でも私の見た11時の回は500人入るスクリーン1で2〜30人しか入ってなかった。大丈夫か、松竹。






がんばれ!若大将


日時 2021年1月28日 
場所 DVD
監督 小谷承靖
製作 昭和50年(1975年)


芝のとんかつ屋・梅長の息子・梅野正三(草刈正雄)は京南大学のアメフト部のエース。が、大学リーグの今シーズンではチームはいい成績を残せなかった。合宿しても食堂のおばさん(賀原夏子)の扱いは厳しい。
隣の空手部では青大将(湯原昌幸)の力で豪華に焼き肉を食べている。
そこへ若い女の子・鮎子(いけだももこ)がやってきた。かわいい鮎子を巡ってアメフト部と空手部は大喧嘩。
翌年の新入生歓迎会でも部員獲得で大喧嘩する若大将と青大将。
部の予算を減らされ困っている時に、青大将の父親(藤木悠)がOBだと聞いて寄付をお願いする。芸者の力を借りてなんとか100万円の寄付を手にした。
しかしマネージャーの松原(丹波義隆)がその100万円で株に手を出し、失敗してしまう。相談された若大将は父親(フランキー堺)に内緒で店の小切手で穴埋めをする。
軽井沢の合宿に若大将の妹志津子(関根恵子)がやってきた。どうやら無理にお見合いさせられるらしい。その見合いを破綻させるために家に帰る若大将。お見合いは破綻したが父親から感動させられてしまう。
鮎子の紹介でファッションモデルの仕事を始める若大将。
やがてアメリカンフットボールの試合の季節がやってきた!


小谷監督の追悼(2020年12月没)で鑑賞。去年の9月に「激突!若大将」と一緒に買ってそのままになっていた。
この映画、公開は「東京湾炎上」と2本立てて観ている。記憶では割と笑った覚えが。でも名画座などで上映される機会もなく、45年ぶりに鑑賞。

大笑いしたのは最初の方で合宿所でアメフト部がくみ取り便器のふたを鉄板焼の鉄板にしたため、喧嘩になったときに青大将が跳び蹴りをしてそのままつっこんでしまうシーン。ここ45年前に大笑いしたことはよく覚えている。
そしてラストで若大将が「もう1回最初からいこうか!」と言ってバッと「東宝マーク」が出たシーン。ここもそんなギャグは観たことなかったので驚いた。
(マークで遊ぶというのはそれまで観たことがなかったのだ)

スポーツものというより完全にギャグ、コメディ映画としての要素が強い。
フランキー堺、湯原昌幸などがコミカルな動きで笑わせてくれる。
また食堂のおばちゃんの賀原夏子、お見合い相手の母親の塩沢ときなどこの時代にはいつも似たような役をやっていたが、それでも今観ると懐かしさも手伝って楽しい。

それにしても草刈正雄のかっこよさ。この時代、「エスパイ」にも出演したりして東宝としては次世代のスターとして期待されていたと思う。
しかし角川映画の台頭で「役者だけで客を呼ぶ」という手法は廃れてしまったんだけどね。
(余談だが草刈を観ていて今なら福士蒼汰にこの役をやらせてみたいと思った)

ヒロインのいけだももこはその後はあまり活躍がなかったのか知らない女優さんだった。割とかわいかったんだけどね。
あと「急げ!若者」が小谷監督のこの前の映画になるわけだが、キャストもかぶる。藤木悠、藤村有弘、塩沢とき、など。(藤村はお得意の「外国語に聞こえるデタラメ語」の芸も披露する)
この映画でチアリーディングをしていた女の子の一人が「急げ!」で江木俊夫が最初に勤めたブティックで働いている女の子だったので驚いた。

70年代のプログラムピクチャアのほぼ最後の映画だと思う。
もう1本の草刈若大将、「激突!」も見る予定。






真紅の男


日時 2021年1月24日16:40〜 
場所 シネマヴェーラ渋谷
監督 本多猪四郎
製作 昭和36年(1961年)


夜の波止場。隠しカメラで何かを撮影した男はその直後に銃で撃たれた。
その現場に居合わせた勝田隆(佐藤允)は何者かに怪我を負わされた。
隆は4年前にこの町を仕切る勝田組と対立する大杉一家の親分を殺した罪で服役し、今日この町に帰ってきたのだった。
隆の幼なじみの牧川(久保明)は今は刑事になっていた。隆がかつての恋人トミ子の勤めていたバーに行ってみると店は変わっていて、トミ子のことは誰も知らないと言う。そのバーのママ伊久子(白川由美)を牧川から紹介される隆。実は先日波止場で殺されたのは麻薬Gメンで伊久子はその妹だという。牧川の話ではこの町の麻薬は勝田組が関わっているようだという。
バーのみかじめ料のことをきっかけに勝田組の幹部・三隅(伊藤久哉)に近づく伊久子。隆も組の状態が気になり、父親の親分(清水元)に会う。
実は大杉の親分を殺したのは勝田なのだが、孤児だった自分を育ててくれた恩に報いるために自分が身代わりになったのだ。
三隅は「大杉を本当に殺したのは勝田」ということをネタに組の実権を握られてしまったというのだ。その三隅が麻薬の売買をしている。トミ子(原知佐子)も今はヤク中にされていた。
牧川も殺され、隆の怒りが爆発する。


こんな感じの話。シネマヴェーラでの「原知佐子追悼特集」の1本で上映。本多猪四郎監督の非特撮映画。本多作品は全映画作品鑑賞を目指しているので、それで観た。

いわゆる東宝暗黒街もの。刑期を終えた主人公が町へ帰ってみれば今はその町は悪の組織に支配されていた、というのは日活や東映やくざ(まだないけど)にありがちな話。でもなんか格落ちを感じるのだなあ。
(タイトルの「真紅の男」は佐藤允がずっと赤いポロシャツを着てることに由来してるようだ)

主役の佐藤允。いやもちろん佐藤さんはいい役者なんだけど、私の中では「準主役の時に光る」という感じなのですよ。主演級が3人ぐらいいてその中の一人、とか助演に徹した時の方が私にはよく見えるのです。

脇の役者も親分が清水元。悪役が伊藤久哉。刑事役に久保明。久保さんもクレジットではトップなのだが、あまり活躍もしないうちに死んでしまう。なんだか中途半端。
そしてヤクの売人で天本英世登場。でも活躍がないのだなあ。

前に東映やくざものを観たときに思ったが、こういった「パターンの話」の時には脇のキャラクターで特色を出してほしいんだよ。そういう遊びとか濃いキャラはいないとどうにも「単なるパターン」になってしまう。

そのあたりの脱線がないのが本多監督の真面目さなのか、「岡本監督とおなじことをしても仕様がない」と思ったのか不明だが、もう一つはじけ方が足らなかった。
そつのないアクションものではありますがね。







太平洋ひとりぼっち


日時 2021年1月24日12:50〜 
場所 ラピュタ阿佐ヶ谷
監督 市川 崑
製作 昭和38年


西宮の堀江謙一(石原裕次郎)はヨットによる単独太平洋横断を計画した。まだ日本人では誰もやったことのないことだ。両親をはじめヨット仲間(ハナ肇)も反対。ヨットによる遠洋航海は認められないため、堀江は「密航」という形で出発するしかなかった。
出発したときは風がなく、なかなか日本近海から抜けられない。
そして台風に遭遇、船には海水が入ってくる。
船底の付着物を除去しようと思ったら危うく鮫に襲われるところだった。
やがてサンフランシスコに到着した。

ラピュタ阿佐ヶ谷「実話にもとづく・・・」という実話映画特集。
円谷特技プロダクションが初めてが特撮に参加している(プロダクションとしての初めての作品という意味)ので観たかったがなんとなく見逃していた映画。(DVD化されてると余計に「いつでも観れる」と思っちゃうし)
石原プロモーションの第1回映画作品でもある。

石原裕次郎の一人芝居のシーンばかりかと思ったら、回想シーンとして親に反対されるシーンが思ったより多かった。
母親役の田中絹代がすばらしい。心配だから何とか止めさせたい、でも言っても聞かないだろう、なんとか無事に帰ってきてほしい、という親の苦渋が痛いほど伝わってくる。
親は子供を過小評価しがちで「あんたなんかに出来るわけがない」とつい思ってしまう、言ってしまう。

堀江が「日本人で誰もやったことがないんだ。俺は人がやってないことをやってみたいんだ」という。しかし母は「あんたがやらんでも誰かほかの人がやればいい」と言ってしまう。
成功した後だから何とでもいえるが、出発前ならそう言いたくなるものよく分かる。ヨット仲間も危険だからやめとけと思ってるし。

その後の航海は「今はどのあたり」ということはあまり説明せず、なんとなくエピソードの羅列が続く。
サンフランシスコに着くときも「あと何マイル!」的なことはまったく強調せずなんとなく着いてしまった印象。
別に金門橋が見えてもファンファーレがなる訳じゃないしね。
このあたりのセンスが市川崑=和田夏十らしいと言っていいのか。

また驚いたのはラストカット。
日本領事館に止まるのだが、ベッドで眠るこける堀江、日本から国際電話です、と起こされるが「今行きます」と小声で答え、また寝入ってしまう、という裕次郎のアップで終わる。
勝手に両手をあげてガッツポーズにファンファーレ!でストップモーションみたいなラストカットを想像していたので違ったので驚いた。

本作は石原プロモーション第1回作品。
周りに反対されても大平洋に出航する姿は、裕次郎自身が石原プロを立ち上げて「映画界」という太平洋に小さなヨットで出発する姿と重なってしまった。
もちろん裕次郎のヨット好きもあったろうが、そういう冒険精神が裕次郎も刺激を受け、本作の映画化につながったのかも知れない。邪推ですけど。







熟女藤本聖名子 悶絶色情狂い


日時 2021年1月23日14:12〜 
場所 シネロマン池袋
監督 林 功
製作 エクセス(1992年)


歯科医の聖子(藤本聖名子)は戸田歯科医院で働く通いの歯科医。沢村という若い恋人がいたが、セックスでは満足できない。25歳になっても頭まで突き抜けるような快感、というものを味わったことがない。
元気がない聖子を院長の戸田(牧村耕次)は飲みに連れて行く。酔いつぶれた聖子を戸田は彼女の部屋まで送っていく。そして体の関係になる。
戸田のセックスのテクニックに酔いしれた聖子はやがては沢村を避けるようになる。
戸田に連れて行ってもらったスナックのママは「恋愛は若い子としなさい。妻子ある男性を好きになっても結局泣きをみるのは女」と諭すが聖子は聞く気がない。
今日も戸田先生を家に呼び、セックスを楽しむのだった。


こんな感じ話。身も蓋もドラマもない。
藤本聖名子はAV出身らしく、確かに笑顔はかわいくて女優としての華がある。その前に観た「哀愁のサーキット」のなんたら言う女優より数倍いい。

藤本聖名子(みなこと読む)の名前がタイトルにあるように完全に彼女が中心。ピンク映画では3人ぐらい脱ぐことが多いが、この映画で脱ぐのは藤本とこの歯科医院につとめる助手の女の子。彼女は本筋とは関係なく出入りの製薬会社の営業マンとからむシーンあり。

それにしてもオチがなにもない。
スナックのママ(脱ぐかと思ったら脱ぎなし)に「妻子ある男性はやめときなさい」と言われても意に介さず、戸田先生と関係を持つ。
最後は戸田先生が腹上死するとは戸田先生の奥さんと修羅場になるとか沢村に見つかって喧嘩になるとかのオチが来るかと思ったら、普通に戸田先生とセックスしてるシーンで終わり。

藤本聖名子を楽しむにはそんなオチもいらないかも知れませんがね。





哀愁のサーキット


日時 2021年1月23日12:44〜 
場所 シネロマン池袋
監督 村川 透
製作 昭和47年(1972年)


レーサーの滝田和郎(峰岸隆之介〜徹)はテスト走行中にサーキットの観客席でたたずむ女性を見かける。レーススタッフの話では今ヒット中の歌手の榊ナオミ(木山桂)だという。
その後、砂浜に立ち自分のレコードを海に投げる彼女と出会う和郎。
テレビの歌番組が続くナオミだが、心はなぜか晴れない。
そんな毎日に疑問を感じある日マネージャーのいう集合時間を守らずにたまたま出会った和郎とともに出かけてしまう。
二人はホテルで愛し合う。そんな日々が何日も続くが、やがてお金もつきてきて、とまった旅館は逃げ出すし、停めてあった車からガソリンを盗み出す。
お金がなくて安いドライブインで食事中に地元の不良に絡まれる。そこを救ってくれたのが、以前バイクで勝負したことのある若者のチームだった。
観念し元の生活に戻る二人。ナオミは今回の経験を元に「海は女の涙」という歌を作詞し、新曲として売り出す。
和郎もドライバーに戻った。
しかし事故を起こして死亡。歌番組の出番直前にそれを聞くナオミ。


日活ロマンポルノとして製作。しかし男優は峰岸隆之介(徹)で全然ロマンポルノっぽくない。普通ポルノ映画というのは女優が目立って男優はその引き立て役だが、本作は完全に峰岸徹の男臭さの魅力で成り立っている。
この頃はロマンポルノと言っても水商売とか人妻の話ばかりではなくて、こういう青春映画もあったのだなあ。勉強になった。

とにかく峰岸徹の肉体的(だけではないのだが)魅力全開の映画だ。
引き締まった肉体美を惜しげもなくさらけ出す。思わずこちらも照れて目をそらしてしまいそうだ。

和郎はレーサーだけでなく、モデルとしても活躍。ビールやらなんやらのCM写真を撮るのだが、なぜか周りにいる女性モデルはヌード。
美人モデルと一緒に男性人気タレントがCM商品を手にする宣伝写真は昔からあるけど、それがヌードとは!そんなの昔もあったかあ?とは思うのだが、そこは映画的誇張として納得する。
第一ロマンポルノだから予算の許す限り裸は出さないと。

シャワーシーンでは峰岸のバックヌードもある。
女優とのカラミもあり、キスシーンはフレンチキス(ベロチューともいう)で大胆である。
この映画、むしろ女性向けのポルノ映画ではないか?

なんでこんな気持ちになるかというと主演のはずのナオミ役の木山桂にまるで華がないのだ。顔さえも記憶に残らない。だいたい名前も聞いたことないから、それほど活躍しなかったのかなあ。

話の方は70年代らしい破滅的ラスト。
歌手の小川知子とその恋人だった福沢幸雄(ちなみに福沢諭吉の曾孫だそうです)の事故死が話の元ネタらしい。ただし失踪事件はなかったのかな?(Wikiには記述がないので)
逃避行というのも70年代らしい。
峰岸徹さんに会う機会が会ったとき、この映画のことも話題にしておけばよかった。悔やまれる。





三十路銀行員 極太狂い


日時 2021年9月23日11:36〜 
場所 シネロマン池袋
監督 瀧島弘義
製作 エクセス


銀行員のトモコは夫(森羅万象)と二人で新居に住んだものの、ローンの返済に苦しんでいた。先輩(吉行由美)に教えてもらった手口で外回りの営業で客から預かった金を一部着服してた。そのときは顧客には体を与えていた。
そんな日々が続くとき、トモコはふと学生時代の彼氏ケン(川屋せっちん 現・河屋秀俊)を訪ねてみる。町の商店街で小さなおもちゃ屋を営み、古い家に住んでいた。3年ぶりに体を重ねる二人。
ケンは近所の主婦・アキコとも密会を重ねていた。年上のアキコはホテルで会う度に数万円をケンに渡していた。


「れいこいるか」の河屋秀俊さんの主演映画と聞いて滅多に観る機会もないだろうと思い、観に来た。一昨日までシネマロサで「れいこいるか」が上映されていたので池袋は河屋秀俊週間である。

今日映画を3本観たのだが、正直この映画がいちばん印象に残らない。
なんかドラマに山がないのだなあ。
トモコの先輩(トモコは彼女とも体の関係があるのだが)はラストには逮捕される。
トモコは今まで得た金を持って逃避行だ。

ケンとの関係も結局特に進展もなく大きな山もなく別れる。アキコともなんとなくうまくいかなくなる。
なんかずるすると二人とも別れる、という山のない展開で印象に残らないんだなあ。

河屋さんの作品を観られたことはよかった。






暴行爛熟未亡人


日時 2021年1月22日21:00〜 
場所 ラピュタ阿佐ヶ谷
監督 西原儀一
製作 昭和52年(1977年)


秀夫は7歳年上の圭子(杉佳代子)とつきあって結婚まで考えたが、結局は年下の芳子(原悦子)と結婚した。新婚生活は順調だったが、ある日、先輩の上村に連れられてあるスナックに行った。そこでホステスをしていたのは圭子だった。
その晩、上村は別のホステスとホテルに行き、圭子も強引に秀夫をホテルに連れて行った。
上村がホステスに話したところによると秀夫は圭子と結婚を考えたが、結局親の反対にあい別れたという。
しばらくは圭子にいわれるままに秀夫は何回か付き合ったが、やがて店に来なくなる。上村の話では子供が出来たという。
それを知った圭子はつき合いのある化粧品のセールスマンに芳子をレイプするように依頼する。レイプは成功。
そのことがきっかけで子供は流産し二人は離婚。秀夫は圭子に復縁を申し出るが、笑って断られた。それは以前秀夫が圭子にした仕打ちだった。
圭子は別の若い男と寝ていた。彼は「結婚しよう」と言ってくれたが「バカ言いなさい。今は興奮してるだけよ。若い娘と結婚しなさい」と諭すのだった。


話は最後まで書いた。ラピュタ阿佐ヶ谷の葵映画特集もこれで終了。上映の7作品すべて観た。完走。
本作はやっとオールカラー。しかもシネスコ(上映素材は16mmらしい)

映画は白糸の滝の前でどうどうとキスをする秀夫と圭子のシーンから始まる。キスのアップにタイトルが重なる。「え、キスシーンは見せなくていいの?」と変に心配してしまう。

そしていきなりおっぱいのアップ。
秀夫の新婚生活である。若い新妻と朝食をとりながら「今日は早く帰れると思うよ」と判で押したようなせりふ。
会社の先輩に無理に誘われて新橋あたりのスナックへ。
そこで圭子と再会!とびっくりする。
これが後の会話で解るが、先輩上村は昔の圭子と秀夫の関係も知っていて、おそらく上村は偶然に再会したのだろう。そして圭子が秀夫を一度店に連れてくるように頼んだのだ。

そしてホテルに行って圭子の恨み節と語るシーンと上村の別のホステスがホテルに行って「ねえねえ、あの二人どういう関係?」と聞かれて上村が話すシーンがカットバックされる、という凝った構造。そんなに凝らなくても。
でもここまでで30分ぐらいある。60分の映画で半分くらいが説明なのだ。

そして第3の男の化粧品セールスマンが登場し、レイプを依頼する。
レイプが終わってそれを発見する秀夫だが、二人の夜の生活ももはやたたなくなったらしく、芳子は離婚を切り出す。

んで圭子に復縁を迫る秀夫。
ここで回想シーンが生きてくる(でも長かったけど)。
前の別れ話をしたのと同じ喫茶店で話すのだが、秀夫からの別れ話の時はその場を去ろうとする秀夫が伝票を持って立つ。それを圭子がその伝票を取り上げ、最低限のプライドを保とうとする。
しかし2回目の圭子が秀夫を捨てるときには圭子がいったん伝票を持って立つが、やはり伝票を秀夫に押しつけて去る。
この伝票のやりとりが圭子の意地を示していいシーンだった。

そしてラストに圭子が別の若い男と寝るシーン。なかなかいいラストだった。前半がだらだらしていたが、後半一気に盛り上がり、もう少し後半を丁寧にしてくれたらもっとよかったと思う。

でも圭子は未亡人?映画中では「離婚して子供は引き取っていたが秀夫が結婚してくれそうなので子供は前の夫に渡した」みたいな説明があったような。じゃ未亡人じゃないじゃん。どうなってるんだ?

でも全体的に言えたのは「知らない役者」「下手な芝居」「大げさな音楽」のオンパレードでこれこそ昔見た私の記憶にあるピンク映画だった。
記憶がつながった気がした。







好色回春日記


日時 2021年1月16日21:00〜 
場所 ラピュタ阿佐ヶ谷
監督 武田有生
製作 昭和45年(1970年)


資産家の社長・カネマツ(鶴岡八郎)は家族もいなく、伊豆の別荘で暮らしていた。しかしお手伝いさんに毎回手を出し、しかも絶倫でみんな逃げ出してしまう。今夜もお手伝いのチエを抱いたが「5回もしたじゃない」とさすがに嫌がられてしまう。
弓子(青山美沙)という子が新しくお手伝いでやってきた。しかも行儀作法を厳しく指導してほしいという。料理もそつなくこなす弓子をカネマツは気に入る。そしてマッサージをさせる。
しかし弓子も実はカネマツの財産が目当てだった。体の関係も出来、「俺の子供を産んでくれ」というカネマツだが、さっぱり妊娠しない。婦人科に行ってみたが特に悪い場所はないという。
だが病院に行ったところを清水次郎という男に見られてしまう。清水は弓子に接触し、自分はカネマツの甥だがカネマツの資産は実は自分の父親のものだったのに独り占めしたのだという。「俺がお前を妊娠させてやるから二人でカネマツの財産を山分けしよう」という。
清水と旅館通いをする弓子。しかしそれをカネマツの秘書、城所に知られてしまう。
やがて弓子は妊娠した。それをカネマツに報告すると別れを告げられる。
「お前は浮気をしたのだ」。カネマツは戦争中の怪我が原因で無精子になっているという。
弓子はカネマツの元を追い出され、清水も自分の彼女から妊娠を告げられる。


葵映画特集6本目。脚本は新人時代の石森史郎だそうだ。
このカネマツが絶倫男でリポビタンDやまむし酒、まむしの肝を酒の肴にしていている。
「戦争中の慰安婦は1日に2、300人相手をしたもんだぞ。5回ぐらいで何だ!」と怒るような男。おいおい1日20時間働いたって1時間で15人、一人4分で終わらせなければ300人はできないよ。
カネマツは戦争中は海軍少佐、と言ってたけど、1970年頃は戦争経験者がまだまだ現役世代だったんだなあ。

最後はどういう結末を迎えるのかと思ったら、「実は種なしなのだが、子供を作って財産をあげようと言えば逃げないでいてくれるので夢を与えた」という。
女も女だけど男も男である。

僕なんか威張りくさったようなカネマツが女に財産をとられて「ギャフン」となるのを観たかったが、カネマツの方が勝つ。
これは「男をだまそうとする女は悪者」でやっぱり男尊女卑の考え方を肯定されていてちょっと後味悪かったかな。

この頃はまだパートカラー。
秘書の城所が最初のお手伝いさんのチエとのからみ、カネマツと弓子のからみ、あとは清水と清水の彼女との公園でのセックス、という感じ。

でも1971年には日活がロマンポルノを始めたときはまだまだピンク映画の方は白黒パートカラーだったのだな。
これじゃ日活の進出をピンク映画界が驚異に感じたのがわかった。
やっぱり原点にこわだることは大切だな。







佐々木、イン、マイマイン


日時 2021年1月16日15:40〜 
場所 新宿武蔵野館スクリーン2
監督 内山拓也


山梨から上京し役者を目指した悠ニ(藤原季節)だったが、なかなか芽が出ないでいた。後輩の俳優・須藤(村上虹郎)から共演を申し込まれるが乗り気でない。悠二は彼女と別れていたが、同棲生活はずるずると続けていた。
バイトをしている工場で高校時代の同級生多田と出会う。
多田はこの間の同窓会で佐々木と会ったという。悠二は高校時代、佐々木、多田、木村とよくつるんでいた。放課後、どこかで過ごすのはたいてい佐々木の家だった。佐々木は学校で「佐々木コール」が起こるとよく全裸になってしまうようなノリのいい奴だった。
しかし佐々木の家庭はなにやら複雑らしい。家に行っても誰もおらず、父親がたまに帰ってくる程度で「今度いつ帰る?」と聞いても「まあ仕事が落ち着いたらな」というだけ。
その父親が亡くなったと先生が言う。「佐々木は当分学校には来れない」と言ったその時、佐々木はやってきた。なんだか無理してるようだ。
5年ほど経った頃、悠二は祖母が亡くなって一度田舎に帰った。
その時に佐々木に会ったが、今はパチプロで暮らしているという。
数年後、知らない女性から深夜に電話があった。佐々木が死んだという。


昨年11月末に公開の映画。
Twitterとかでも評判がいいので観ようかなとは思ったが何となく止めた。
でも昨日いまおかしんじ監督に会って、そのときに激賛していたので(「打ちのめされた」とおっしゃってた)、今日時間も合ったので武蔵野館で拝見。
パンフを読んだら内山監督は武蔵野館でバイトしていたんだそうだ。だから武蔵野館での上映にはこだわりがあったらしい。

うーん、いい映画だとは思うけどなあ。
結局は私は高校時代佐々木と同じクラスだった場合、佐々木とは友達になっていなかったからだろう。さらに卒業後、パチプロとか完全にだめである。全否定してしまうだろう。だからまずその点でこの映画は乗れない。

そして佐々木はガンで亡くなるのだが、いまおか監督は「死んだものと残されたもの」ということをモチーフとしてよく使う展開なので、いまおか映画と共通する点もあり、感じるものがあったのかも知れない。
さらに主人公が役者を目指していてなかなか売れないという設定。これも学校を卒業してピンク映画の助監督をされていたご自身とオーバーラップするものがあったのだろう。

佐々木みたいな奴と友達になれたか、というのがこの映画に対する好き嫌いが分かれる気がした。

藤原季節は今泉力哉監督の「his」に続き好演。後輩の俳優で村上虹郎。
佐々木がパチプロになってからの友人役で三河悠冴出演(吉行由美の目黒シネマを舞台にしたドラキュラBL映画「真夜中君はキバをむく」の主演)。






ネズラ1964


日時 2021年1月16日13:00〜 
場所 ヒューマックスシネマ池袋・スクリーン2
監督 横川寛人


昭和38年、映画会社太映の社長ナガノは新企画を考えて会議を開いた。特技監督のツカジは怪獣映画を提案する。怪獣映画で考えることに決まり、ツカジはどんな怪獣がいいかと動物園にヒントを探しに行く。
そんな時、ナガノがある鳥が出てくる映画を見て小動物が暴れる映画を思いつく。他社とは違って大怪獣ではなくネズミが牛ほどの大きさで襲いかかるという映画を思いつく。特撮は本物のネズミを使うことになる。
とりあえずテストをしてみようとネズミとミニチュアを組み合わせて撮影したがうまくいかない。野生のネズミを使おう、と繁華街のドブネズミを捕まえてくる。
テストフィルムはなかなかの迫力で企画も正式にゴーサイン。39年の正月映画に決まった。「大群獣というからには道路を埋め尽くすぐらいのネズミがいなくては」という監督の提案で町中のネズミが1匹50円で買い集められた。
本編の準備も進んでいたが、近隣住民から、そして保健所から衛生上の問題で撮影中止の勧告を受け、やむなく中止にいたった。
残されたネズミは焼却処分された。そのとき、ナガノは大怪獣ネズラの叫びを見た。


「大仏廻国」の横川監督が再び放つ「幻の特撮映画」を題材にした映画。
今回はリメイクではなく、メイキング形式を取っている。純然たるドキュメンタリーではなく、フィクションという言い訳なのか、映画会社の名前は大映ではなく、太映(タイエイと読むらしい)。
「大仏」がだめだめだったので、あまり期待しないでいた成果、がっかり感は少なかった。しかしいくつか気になった点はある。

ますスタッフの「ユカワ」がメイキングフィルムを回すという設定。
いやいや、昭和38年当時はそんな発想なかったでしょう。そもそもメイキングを回すというのは映画がソフトとして販売されるようになってからの発想なのだ。しかも8mmか16mmとして撮っている。
映画の映像とそのメイキングフィルムの映像が交互に出るが、メイキングでも音声が出る。いやいや当時の8mmは音撮れないよ。

なんかこの辺で引くんだよなあ。監督は88年生まれだから32歳ぐらいか。まあ昔のことを知らないんだろうけど、それを助言する人はいなかったのか。
しかも特撮シーンだけではなく、会議室の模様までメイキングで撮影しようとする。それはないんじゃないかなあ。

そして割と撮影は順調に進んでいるのだな。少なくとも悪戦苦闘した様子が感じられない。衛生上の問題で近所から苦情が来たというのも唐突だし(近隣住民代表がマッハ文朱!)保健所から勧告がきてあっさり了承。
この辺の「何とかしよう」という苦悩が誰からも感じられない。
近所からの苦情にしても何かあって徐々に反対運動が盛り上がっていく、という作りではなく、要するに脚本が弱いのだ。

横川監督は企画はいいのだから脚本家をちゃんとした人にやってもらった方がいいのではないか?
あと「なんとかQ」という「ウルトラQ」の番組告知をするテレビCMが出てきたり、とにかく現代の感覚でものをとらえすぎ。
実相寺昭雄が撮った円谷英二のドキュメンタリーが出てきて古谷敏が円谷を演じる。その中で佐野史郎が演じた円谷の対談相手は誰がモデルなのだろう?

さんざん文句ばかり言ったけど、実際のネズミを使っての特撮再現シーンはなかなか迫力があった。
ここは誉めておきたいし満足できた。

「大群獣ネズラ」、いまならCGで出きる企画だからねえ。
「ゴジラ」だけでない怪獣映画を観てみたいものだ。






売春暴行白書


日時 2021年1月11日21:00〜 
場所 ラピュタ阿佐ヶ谷
監督 渡辺 護
製作 昭和45年(1970年)


光子(青山リマ)の父は漁師。父は浜代(大月礼子)と再婚し、ぞっこんだった。父は遠洋航海に出かける。その間に浜代は村のトメキチと関係を持つようになっていた。予定より早く帰ってきた父はトメキチと浜代の情事を知ってしまう。喧嘩になった二人だが、トメキチは父を殺した。
2年後、浜代は別の男と再婚し、光子も工場につとめるようになった。工場で仲間に声をかけられ二人で森へオートバイで出かける仲になったが、体は許していない。
そんな時、浜代の元にトメキチが訪ねてくるのを見た光子は浜代に関係を絶つようにいうが聞く耳を持たない。そんなある日、トメキチが訪ねてきているところに浜代の新しい夫がやってきた。トメキチは追い出され、怒りは浜代に向けられるが、浜代は耳元で何かをささやく。今度は夫の方が光子を襲う。浜代は、光子を差し出す代わりに自分の罪をおあいこに使用としたのだ。犯された光子。
例の工場の仲間の元に行ってみたが、別の女を抱いていた。
行き場を失った光子は義理の父の友人、中山(堺勝朗)が以前から東京行きを誘っていたので行ってみることにした。「ホステスになるのを紹介する」という話だったが、小松という男の売春組織だった。
客を取らされたが、客に「サービスが悪かったと言ってやる。そうすればお前はどうなるかな」と脅かされ、仕方なくどんな変態プレイにも応じるようになる。
小松の元に新しい女の子がやってきた。かつての自分を見るようだったが、助ける気にはなれなかった。しかしそのとき警察がやってきた。
しばらくは浜代の元に帰る光子。浜代は今は病床にあった。
光子は義理の父に自分を抱くようにし向けた。父は光子を喜んで抱いた。
その様を見て浜代は死んでいった。
小松たちが迎えにきた。光子はそれに応じる。
「行かないでくれ」という父に「お金頂戴よ、あんた私をただで抱けると思った。そうねえ2、300万でいいわ」と言い放つ。
「そんな無茶な」という父に小松が殴りかかった。
一人で外にでる光子。その目には涙が光っている。


話は全部書いた。ラピュタ阿佐ヶ谷での「香取環と葵映画の時代」の特集。本作からは香取環の出演作ではない。パートカラーでシネスコ作品。

話は全部書いたけど、もう不幸の連鎖としか言いようのに光子の人生。
そして最後には浜代の男を寝取り、男から「タダであたしを抱けると思ったのかい」と啖呵を切るかっこよさ。

陰々滅々となるような不幸話のエピソードが続くが最後はきっちり落とし前をつけたのでカタルシスはある。
そして最後に涙を流す女の優しさ。(まあ流さなくてもいい気もするが。この辺が「女は実は弱い」と考えるミソジニー的発想に思えるので)

それにしても東京へ出てから変態の客相手のシーンで、光子の胸にマヨネーズを塗りまくってセックスするというのは面白かった。
あと東京へ出てきてからが新宿なのだが、歌舞伎町や新宿3丁目界隈のネオン、夜景が懐かしい。(それにしても1970年でもまだピンクは白黒パートカラーだったのだな)

カラーシーンは浜代が新しい夫とセックスするシーンと例の光子とマヨネーズ男のカラミ。退色してややセピアっぽくなってたけど。

不幸な境遇でもたくましく生きていく光子の姿はなんかよかった。
力作だと思う。







燃えよデブゴン/TOKYO MISSION


日時 2021年1月10日18:05〜 
場所 TOHOシネマズ川崎・スクリーン8
監督 谷垣賢治


香港警察のフクロン刑事(ドニー・イェン)は優秀だったが、犯人逮捕に熱心なあまり彼の逮捕の後には街が破壊されていて、実は仲間からは疎まれていた。
銀行に行ったときにたまたま銀行強盗に出くわし、またまた街を破壊してしまう。そのことがきっかけで証拠品保管係にされてしまう。また婚約者の女優、ソン・ホーイ(ニキ・チョウ)との約束に遅れ、結局婚約解消に。
数ヶ月後、デスクワークで食べることが増えたフクロンはでっぷりと太っていた。フクロンを復帰させたいと思うファン警視はフクロンにある人物の日本への護送を依頼する。
その男山本勇二は日本のAV監督だが日本で交通事故を起こして香港に逃げてきたらしい。その身柄引き渡しだったのだ。
日本に着いて遠藤刑事(竹中直人)と合流したがトイレに入った隙に山本は逃走してしまう。
ファンに言われてファンの知り合いのシウサー(ウォン・ジン)を訪ねるフクロン。シウサーは新宿で焼き栗屋を営んでいたが、その前にある中華料理屋のマダム、フォンワー(テレサ・モウ)に惚れていた。
この新宿は東野組の東野(渡辺哲)に支配されていたが、部下の島倉が東野組を乗っ取ろうとしていた。


香港映画とかカンフー映画って普段はみないクチなのだが、日本を舞台にしていると聞いて見に来た。
フォンワーやシウサーの店の周りで暴れるのだが、これは新宿を模したすべてセット。しかし看板などは「天下一品」などの看板もあり、違和感はないくらいに再現されている。

この映画、かなりロケハンはしっかりしてるし、監督が日本人なので変な日本、は登場しない。架空の日本ではあるけれど。
映画の始まる前に「この映画に登場する東京タワーはセットとCGによるものです」と説明が出る。何のために出したのかね?どっかからクレームでもくると思ったのか?

話の方は山本は翌朝死体で発見。遠藤刑事に「帰れ」と言われるがフクロンはシウサーと捜査を開始。山本の部屋に行き、彼のスマホに何か動画が残っていることを発見する。その動画は築地の市場で島倉がマグロの中に覚醒剤を入れて密輸している現場を撮ったものだった。企画もののAVの撮影中に偶然撮影したのだ。
そして築地で大暴れ。実は遠藤は島倉の手先で山本を逃がした手引きをしたことも暴露される。そして島倉とフクロンの一騎打ちが東京タワーの上で行われるという展開。

それにしても事件の現場を撮影したのがAV監督だってのが発想がすごいなあ。
普通、島倉組を追うフリーの記者とかの設定でしょう。
そんなに「日本=AV」のイメージが強いのか。AVはマグロを抱いてもだえる人魚の設定のAVだしな。
やはり東京タワーは外国人にも人気のスポットだと再確認。
ライトアップされた東京タワーはかっこいいですからねえ。

女優の恋人が日本にやってくる理由が、香港のドラマにはまっている東野が「この女優をイベントに呼べ」と言ったからだし、そういうものかと思った。

私なんかはどうしても香港映画とかカンフー映画には乗れない人で、すごいアクションをされても「そんなアホな!」と心の中で思ってしまい、引いてしまう。

昔は香港の映画なんて画質も悪く、どこか貧乏くさい感じがしたのだが、CG技術もすばらしく日本の映画より豪華さでは上である。
そんな思いを新たにした。





不思議の国のゲイたち


日時 2021年1月10日12:15〜 
場所 光音座1
監督 伊藤清美(第1話)ソルボンヌK子(第2話)五代暁子(第3話)
製作 ENK


8日の金曜日から2回目の緊急事態宣言。今回は映画館の休業は特になしで20時終了を政府は要請。光音座は土曜日から20時終了にタイムテーブルを変えている。
この「不思議の国のゲイたち」も1月6日からの上映でまだ1ヶ月もあるのだが、感染者数はたぶん減らないので追加措置で映画館の営業も来週再来週はどうなってるかわからないと思い、1月2日に光音座に来たにも関わらずまた来た。「美しき覚醒」が同時上映で観たくなかったのだが、1時間寝た。

オムニバスのゲイ映画。
第1話「エチカ」
監督・脚本 伊藤清美
トオル(樹かず)はノブオと交際中。今夜もノブオのマンションに泊まった。翌朝、トイレに入って会社に出勤。しかしマンションを出たあたりで大学時代にすこし交際していたユウコと出くわす。ユウコは「トオルさんはノブオという男と付き合ってるんでしょう!私にぜんぜん手を出さないから変だと思ってあの8月15日にこっちから誘ったけど何もしなくてゲイですって告白されてあたしは・・・」と一方的になじる。
なんとかその場を逃げ出したトオルだが、ふとあることに気がつきノブオのアパートへ。
そこではノブオとユウコが下着姿でもたれ合っていた。
驚くトオル。ノブオは「これは違うんだ!」といい、ユウコは「この男反応したよ!」という。
しかしトオルはそれを察知して帰ってきたわけではなかった。
実はトイレを流し忘れていたのを思い出して戻ってきたのだった。

ユウコとノブオがちょっとHモードになっていたというのがオチ(二人は以前から関係があったわけではなく、「トオルの知り合い」と言って部屋に入ったらしい)かと思いきや、トイレを流してなかったと言うだけ。
オチとしては観ていて弱い。弱すぎて、戸惑う。


第2話「世界の中心(まんなか)でアイを叫んだけだもの」
監督・脚本ソルボンヌK子
シンジ(中野貴雄)は新しく入ったゲイバーのオーナーのゲンドウに一目惚れ。
ゲンドウが「100Kg以上じゃないとだめだ」と言えば、体重を増やし、「俺はSM好きで相手はMじゃなだめだ」と言えば自らの体を縛ったりろうそくを垂らしたりでMになる。やっと抱いてもらったがゲンドウは超巨根で入らない。シンジは自らを缶ビールも入るように努力したが、その時にはゲンドウは別の男を抱いていた。
シンジは落ち込むが周りから励まされ、いつの間にかゲンドウを犯すようになった。周りからは拍手され祝福される。

これね、「エヴァンゲリオン」を知らないとさっぱり分かりません。
このところエヴァは観てるので分かった。
オープニングのクレジットで「シンジ 中野貴雄」と出た段階で(「雄」の字だけ「貴」の字の下にある。市川崑に影響を受けたエヴァの書体)もろ分かる。そしてオーナーの名前がゲンドウである。

私はデブ専ではないので大きなお腹の男がたくさん出てきてもキモいだけです。
ゲンドウはあごひげを蓄え、めがねをしているからゲンドウ風なのだが、実写で太ると樋口真嗣みたいだった。
そしてエヴァのテレビシリーズみたいに真っ暗ななか、みんなが声をかけ最後には拍手されるというラストは同じ。
エヴァを知ってる人には爆笑かも知れないが、でも基本的にデブは苦手なので私はダメだった。

ゲイバーの客役で石動さんや、漫画家の加藤礼二郎さんなどがエキストラ出演。あとゲイバーのママ役で快楽亭ブラック師匠ね。


「在宅介護」
監督・脚本 五代暁子
ホームヘルパーの和彦(野口四郎)は自分の担当する千吉(野上正義)から「私はホモだ」と告白される。和彦は千吉のかつての恋人に似ているのだという。
一度は「僕はノンケです」と断った和彦だが、やがて思い直し千吉を体を重ねる。千吉は自分の形見として昔の恋人とお揃いでそろえたマフラーを和彦に渡す。和彦はそれを周りの女性から「ダサイ」と言われながらも身につける。
千吉はやがて亡くなったが、和彦の心は何か晴れ晴れとしていた。


この映画、何故かサイレント映画風になっている。カラーだけど少しセピア風の色が付いている。
そして野上、野口の役者の声は聞こえず、字幕が出て、女性活弁士(竹久千鳥)の声でせりふはすべて当てられる。
その字幕が縦書きなのだが、時々2行目の最後の文字が画面に映っておらず、下にパンする。そんなテキトーな字幕見たことないよ。

ラストは和彦がなんとく晴れ晴れと道を歩くのは千吉が死んだからではなく、千吉と今でもマフラーを通じて心が通じてる満足感があるのだろう。
でも老人と若者のカラミは画としてこちらは満足できなかった。
とは言っても千吉がむせてお粥を和彦の顔にかけてしまうのだが、それをなめとる千吉のシーンはエロかったけど。

あと荒木太郎の福祉事務所の職員が和彦に千吉がホモだと教えるのだが、このときに野上正義の写真が何枚も挿入され、生前葬みたいだったな。

3本のオムニバスで池島ゆたかが製作総指揮なので、3人の女性に監督させてみたら何か面白いものになるかも知れない、と考えての企画だろう。
樹かずは安定のセクシーさがありましたが、他の2本はイマイチでした。


本日の同時上映は「美しき覚醒」
次回からの同時上映は「ミレニアムZERO」。
以前観ているのでたぶん、パスします。





新世紀エヴァンゲリオンDEATH(TRUE)2/Air/まごころを、君に


日時 2021年1月9日11:00〜 
場所 TOHOシネマズ上野・スクリーン1
総監督 庵野秀明 
製作 平成(1997年)


ストーリー省略。
Wikiの解説を何度読んでも完全には理解できないのだが、「DEATH」がテレビシリーズの24話までの再編集版、「Air」と「まごころを、君に」が本来の、予定されていた25話と最終話のリメイクらしい。
「DEATH」の後の(TRUE)は一度公開してからソフト化する際にまた直した新ヴァージョンらしい。()のあとの「2」は本来は「2乗」の位置に書くのが正しいらしい。
何度も手を入れてるからややこしくなる。それに初公開時は「シト再生」というタイトルだったようだ。

DEATHの方だが再編集版と言っても名場面集みたいな作りだから、もともとのテレビシリーズを観てないとさっぱりわからないと思う。
今まで「テレビシリーズ」(フランス発売のPAL版DVDで観た。全話で2500円ぐらいだったからなあ)、「新劇場版」(序、破、Qのこと)も全部観てるからだいたいわかったからよかったけど。
でもこれじゃ初心者は入れない世界だなあ。

1時間20分ぐらい経った「DEATH」が終わったところで5分休憩。
その後、「Air」と「まごころを、君に」の連続上映。
オリジナルのテレビシリーズの最終話を観たときに「この訳わからん問答は時間がなくなったからだろうな」と思っていた。
人類補完計画というのは実は現人類をいったん死滅させて新しい人類の世界にしようとするらしい、という実は人類滅亡計画であろうことはなんとなく想像がつく。
実際そうなるらしいのだが、上層部の計画を結局阻止するというアクションがあってカタルシスがあるのが本来の展開か?と期待していたのだが、やっぱり精神世界の問答になって訳わからん。

テレビシリーズの「訳わからん最終回」も納品のタイムスケジュールのせいではなく(それもあるような画のひどさはあったが)、あれはあれで一つの正解だったのだ。
しかも本作のラストカットでは綾波が「気持ち悪い」と言ってカットアウトする。エンドクレジットなし(クレジットは「Air」が終わったときに表示される)

しかも綾波が巨大化したり、全裸になっておっぱいが見えたり、腕が取れたり気持ち悪いような、私に言わせれば「悪趣味」のような描写が続く。
いやーついていけないなあ。
作り直した最終回も訳わからん世界なのだから、こりゃ新作の「シン・エヴァンゲリオン劇場版:U」のラストもカタルシスのあるようなものじゃないぞ、きっと。

なお本作、もとの素材の問題だと思うが、画質が荒く、SD画質を大画面に上映してるようなざらつき、細部のつぶれがあった。
97年公開当時は当然フィルムだったろうからデジタル化がちゃんとしてないのかな。

それにしてもシンジが「綾波!」と名字で呼びかけるのが、なんだか中学校のクラスの男子と女子みたいで私は妙に萌える。
コロナ禍の緊急事態宣言下に昨日から入ったのだが、23日の「シン・エヴァ」の公開の頃にはどうなっていることやら。

感染が止まらないとしてまた映画館も休館になってるかもしれない。
なっていてもおかしくない、そんな気がしている。






引裂れた処女


日時 2021年1月7日21:00〜 
場所 ラピュタ阿佐ヶ谷
監督 西原義一
製作 昭和43年(1968年)


バーでホステスをしていたマサミ(香取環)は身持ちが堅いと評判でいいよるスケベ親父もはねのけていた。しかしその中でサダオという男には惚れていた。そのサダオが「結婚しよう。田舎の両親に紹介したい」というのでマサミは承知する。二人はサダオの故郷の温泉地に行った。「味方になってくれるおじさんを紹介したい。まずおじさんを呼んでくる」とサダオは出かけマサミは旅館で一人待つことに。しかしマサミに昏睡してしまった。旅館で飲んだ飲み物に薬が入っていたのだ。
マサミはどこかの地下室に監禁され、やくざな男たちに囲まれていた。薬漬けにされるマサミ。実はサダオはこの温泉地で売春を営む組織の一員だったのだ。
処女だということで、処女好きの男に高額で売られる。
やがてことは終わり、同じような境遇の女・ヨシコがいるアパートへ。ここは常に鍵がかけられ逃げ出すことは出来ない。
やがて新しい盲目の女(白川和子)がやってきた。サダオの兄貴分の男が東京から連れてきたのだ。なにも知らずに同じ処女好きの男に買われる。
翌日、その盲目の女は首を吊った。
マサミはシャブ中となりクスリを常に求め続ける。見かねたヨシコはチンピラの隙をついて、鍵を開けたままにしておいた。
マサミは一旦は逃げ出したものの、捕まってしまう。指を詰めるように言われるが、サダオが自分の指を詰めることでその場は収まった。
しかしサダオはマサミを逃がす。途中でサダオを刺そうするマサミだが刺せなかった。
二人は森の木陰で見つめ合う。追っ手は迫り来る。


映画はここで終わる。
葵映画特集4本目。今回で香取環作品は終わる。
今日、緊急事態宣言が再び発出。飲食業には20時までの短縮営業を求めていることから映画館も20時終了になるかも知れない。今回見逃すともう永久に観る機会はないかも知れないと思って無理してもやってきた。
10年に一度しか上映されない映画だから、10年後にはフィルム上映なんてなくなってるかも知れない。今回は16mmシネスコ上映。
(切符を買うときに「明日からの上映は?」と聞いてみたら「席は半分に減らしますが、番組は予定通りです。(営業自粛しても)協力金は出ないので」という話だった。
まあそれが本音だろうねえ。
4月の時はまだみなさん少しは経済的体力があった。でも今回はもうみんな疲弊してるよ。政府は協力金出さないのでもうやっていけなくなるだろう。

で、映画のほう。
こういうタイプのピンク映画って今ないなあ。今のピンク映画はこういう暗黒街系の話はないですよ。

どっからどうみてもサダオは悪い奴なのだが、マサミに惚れたのか、自ら落とし前をつけて指を詰める。そして二人は逃避行になるのだが、急に荒野を走り出したりする。リアリティというより殺伐とした感じがよかったなあ。

ラストもマサミはサダオを刺さないし、男がよく描かれているのですね。
また二人が見つめ合うところで終わるのがいい。追ってのチンピラがカットバックで出てくるので、捕まるのは予想されるが、それでもそこを描かないで悲劇的予感、で終わるのがよかった。
この方が余韻があっていい。

この映画、基本白黒だがパートカラーが3カ所入る。
最初はマサミが犯されるところ、2回目が盲目少女は犯されるところ、3回目はこの業界は長いというヨシコさんのところ。ヨシコさんなんか大きな体の熟女なのでどうなんだろうねえ。
前半のバーの話でマサミを好きな親父が別のホステスを抱いて「マサミ」とつい言ってしまい喧嘩になるシーンがあるが、こっちの方がカラーにすべきではないか??

でもパートカラーになったからといっておっぱいが写るわけではない。
とにかくおっぱいやお尻はろくに見せないで、カラミが描かれるという状態。まだまだおっぱいは遠い。
あと盲目少女は最初は連れてきた男に「俺たち結婚するんだろ?」と言われていやがるのに無理矢理犯している時に途中でマサミも買ったスケベ親父に変わる。盲目処女も気づくのだが「大丈夫、大丈夫」などといいながらスケベ親父が犯すシーンはいやらしさ(エロさとは違う)全開だった。

この頃のピンクってなんか勢いを感じるなあ。




美しき覚醒


日時 2021年1月2日15:30〜 
場所 光音座1
監督 山崎邦紀
製作 OP映画


青年は公園をジョギング中に立ち寄った神社で剣道の姿をした男に襲われた。気がつくと檻の中にいる。若い男がやってきて「何か思い出すことはない?」と問いかける。
そうだ、公園でろうそくを持った中年男(荒木太郎)に声をかけられた。その後、剣道着の男に襲われ、縛られ、ろうそくを垂らされたのだ。
「それだけ?」青年は記憶が甦った。歩道橋でラップを歌ってる男にサランラップを巻き付けられた。そして部屋に連れ込まれ体中をサランラップで巻かれラップ男に犯されたのだった。
「まだあるでしょう?」そうだ、公園で魚を持った男と出会った。そして部屋で魚を口につっこまれ、そしてお尻にも入れられたのだ。そして別の部屋で別の男に野菜のゴーヤを入れられたことを思い出す。
やがて青年はそれらの陵辱を受け入れ、自分の欲望でもあったと理解する。自分の欲望として受け入れたあとは若い男のその部屋を出る。
しかし青年は恋人(佐々木麻由子)に付き添われながら救急車に運ばれた。すべては青年の生死の境での夢だったのか。


やっぱり正月には光音座に行きたいよな、と思って本日はやってきた。その前に「AWAKE」を観に行ったことのなかった横浜ブルク13にもついでに行った。

しかし何が悲しくて正月早々一番嫌いな山崎邦紀作品を観なきゃならんのだよ。
話が訳わからん映画じゃなくて、今回は一応(なぜだか知らんけど)恋人に付き添われて救急車に青年が運ばれるから、まあ夢なんだろう。
その点は(強いて言えば、のレベルで)よかった。

で、荒木太郎のろうそくSMはまあ解る。ろうそくとかはSMプレイの定番中の定番だ。ショーもある。
その後がいけない。

サランラップに巻かれるって何?
しかもラップを歌いながらってここ笑うところなの?
そりゃ世の中いろんなフェチがいるから「サランラップフェチ」もいるだろうけどさ。それって需要あるの?

さらに魚を生で加えさせるってどんなプレイだよ?その後のゴーヤを突っ込むプレイはまあレイプものなんかでは時々聞くけど。

要するに私がいいたいのは相変わらず観客無視の観客のニーズ無視の独りよがりの映画ってこと。これ面白い人いるの?
そりゃ「変わった映画、おかしな映画」が好きで面白がる人もいるだろうけど、「ホモ映画」としてエンタメになってるかということだ。

魅力的な男が裸になってセックスをする、それが「ホモ映画」の醍醐味でしょう。その点同時上映の「さよならが言えない」は話の細かい点に不満はあるものの、佐賀照彦というスターで魅せた。観客のニーズもとらえている。

いくら何を作ったらいいか解らないって言っても何を作っても言い訳じゃないだろう。
オークラはやはりゲイポルノはやる気がなくて「何でもいいよ」って山崎監督に丸投げして、山崎監督も言われないこといいことに訳の分からん誰のニーズがあるかわからんような映画を作ったとしか思えない。

そういった丸投げの態度はENKには感じられない。やはりホモ映画専門会社としてお客さんのニーズに応えようとしたのだろう。だからENK作品は面白いものが多いのだ。


(同時上映は「さよならが言えない」)




AWAKE


日時 2021年1月2日12:25〜 
場所 横浜ブルク13・スクリーン3
監督 山田篤宏


清田英一(吉沢亮)は子供の頃、父親に将棋を教えてもらった。近所の大人たちを負かせ、「天才だ」と言われる。プロの貴紙をめざし奨励会へ。そこで浅川陸(若葉竜也)と出会う。英一と陸はよいライバルだったが、20歳の時、英一は陸に破れ奨励会を自ら辞めた。
大学に入ったものの、特にやりたいことはなかった。しかし将棋に対する思い入れは残っていた。ある日、父親が将棋ソフトで対戦しているのを見て、将棋ソフトに興味を持つ。
大学に「AI研究会」があったのを思い出し、そこに入部希望する。だが先輩部員の磯野(落合モトキ)は素っ気ない。専門書を数冊渡し、「全部暗記してから出直してこい」という。
将棋ソフトを作りたい一心で必死にプログラムを勉強する英一。
やがては磯野もその努力を認め、将棋ソフトの開発を手助けする。
そんな時、IT企業から将棋ソフトとプロ棋士の対戦、電王戦の参加依頼がある。
対戦相手は浅川陸と決まった。


吉沢亮主演作。観た理由はそれである。
ポスター、チラシのビジュアルイメージは暗い部屋で吉沢亮がパソコンに向かってるイメージなので、てっきり「天才ハッカーの話」なのかなと思っていたら全然違った。まあ公開されてからは「将棋の話らしい」とは知ってたけど。

挑戦、挫折、再挑戦という映画の王道を行くストーリー。
「コンピューターに人間が負けるわけにはいかない」「負けるはずはない」というプレッシャー。実際に2015年にあった対局を話のベースにしている。
浅川陸は追いつめられる。

対局に際して公開してからの修正は禁止、というルールに乗っ取り、修正を重ねる英一。公開後、AWAKEと名付けられた英一のソフトと素人との競技大会が開かれる。
その場である素人が勝ってしまう。それはプロの棋士なら指さないような手だった。素人だからこそ指してしまう手だった。その部分だけでも直させほしいと懇願する英一だが、それはかなわない。
「プロならそんな手は指さないよ」と周りは慰める。

陸もそのソフトを使って自宅で対戦をする。
そして本番、例の素人が勝った手を使って勝利する陸。
ここが自分でもその手を勉強し知ったのか、あるいはその対局を知って同じ手を指したのか判然としないが、一晩経ってこの感想を書いている今は後者のその対局を覚えて事実上カンニングをしたのだろう。
だからこそ陸は非難もされたのだ。

結局人間対将棋ソフトの対局はその2年後に廃止されたようだ。それはつまり将棋ソフトの方が強いと証明されてしまったから。

ラスト、今はソフト開発の仕事をしているらしい英一と陸が空港で再会。
陸の甥を通じて楽しみながら将棋を指すラストはさわやか。
青春映画だ。
吉沢亮はここ数年はだいたい観てるが、この映画の吉沢が一番よかった。

この日は正月舞台挨拶中継付きで鑑賞。
監督と吉沢亮が和服姿で登壇し(実際の舞台挨拶はユナイテッドシネマ豊洲?)、事前にファンから寄せられた質問をくじ引きのように引いていき答えるやり方。
その中で「お二人にとって『AWAKE』はどんな位置づけの作品ですか?」の時、吉沢亮は「将来また見直したくなるだろう映画ですね」と答え、監督は「デビュー作として今後プロフィールに書かれる作品。でも次の映画があるかわかんないけど・・・」と言ったら吉沢亮が「そんなこと言わないで撮ってくださいよ、使ってください」と言っていたのが印象的。
監督も大変なんだなあ。