2021年2月

   
劇場版ポルノグラファー
〜プレイバック〜
ターコイズの空の下で すばらしき世界 ヤクザと家族 The Family
短編集 さりゆくもの あの頃。 ぼくどうして涙がでるの すばらしき映画音楽たち
ようこそ映画音響の世界へ ぼくとダディのこと ガメラ2 レギオン襲来
<4Kドルビーシネマ版>
名も無き世界のエンドロール
俺の空だぜ!若大将 真昼の惨劇 花束みたいな恋をした 激突!若大将

劇場版ポルノグラファー〜プレイバック〜


日時 2021年2月27日15:25〜 
場所 新宿ピカデリー・スクリーン6
監督 三木康一郎


小説家の木島(竹財輝之助)の腕を怪我させてしまい、その口述筆記をすることから交際が始まった久住春彦(猪塚健太)。しかし木島が実家に帰ってしまったことから遠距離恋愛になった。学生だった久住も今は就職し、忙しいながらも時々木島の実家を訪ねていた。
しかし実家には妹夫婦もいて何となく居づらい。ある日、一緒に出かける約束をすっぽかして一人で春彦とよくいくラブホテルに入った。そこでカップルの喧嘩に遭遇し、止めに入ったが逆に転んで怪我してしまう木島。
全治2週間。利き腕の左腕を怪我し今度は本当に字が書けない。
カップルの女性・明実春子(松本若菜)はスナックをしていて「しばらくうちで暮らせば?」と提案する。春子には静雄(奥野壮)という息子がいた。木島の家出を知った春彦は木島の居場所を探しだし訪ねてきた。
そこで木島がかつて自分にやらせたように静雄に口述筆記をさせているのを目撃。激怒する。


「ポルノグラファー」はフジテレビの深夜ドラマか配信のドラマで放送されたBLもの。私はこれをレンタルDVDで観ている。木島役の竹財輝之助にはまったく興味がわかなかったが、猪塚健太はまあよかったので、続編が映画化され早速鑑賞。
あと木島の若い頃の担当編集者とのいろいろを描いた前日談もあるのだが編集者が髭で興味がわかない。竹財も興味がないのでこちらはたぶんみないだろう。

木島の性格がひねくれていてなんだかいらいらする。それに静雄が登場したのだから、二人の間に入って三角関係になった方が面白そうだが、そうはならない。個人的には春彦と静雄のカラミの方が観てみたい。

基本的に木島も演じる竹財にも興味がわかないからどうにも盛り上がらない。
BL好きの女性ファンにはいいのかな?

結局木島と春彦は仲直りして、実家の1階でセックス。キスジーンがあるがこれが結構舌を絡ませ激しい。上裸とかバックヌードとかは出ないけど、こっちの方が俳優にしてみれば抵抗あるんじゃないかなあ。まあ女優さんとキスするときもそうか。

しかし竹財にしても猪塚にしてもそれほど売れてる俳優でもない。10年前の「タクミくんシリーズ」の頃のイメージフォーラムあたりで2週間レイトショーで終わるような映画と大して出来は変わらん。
去年の「窮鼠はチーズの夢を見る」は行定勲に成田凌、大倉忠義という一流ところだったが、この映画ははっきり言って二流クラス。それでも新宿ピカデリーという有数のシネコンで上映されるとは時代も変わってきたな。製作元もフジテレビだし。
現実社会のゲイに対する立場が変わったとはまだ思わないが、着実に何かは動いていると思う。いや思いたい。






ターコイズの空の下で


日時 2021年2月27日13:10〜 
場所 新宿ピカデリー・スクリーン3
監督 KENTARO


大企業の社長・三郎(麿赤児)は終戦後の1945年、モンゴルで強制労働をさせられた。そこで知り合った現地の女性と知り合い娘をもうけた。
しかしその後日本に帰国。忙しさにかまけてモンゴルに残してきた娘ツェルマは気になっていた。
三郎の牧場から馬が盗まれた。盗んだのはモンゴル人のアムラ。三郎はアムラを訴えず、代わりに孫のタケシ(柳楽優弥)とともにツェルマを探してくれるように頼む。
タケシは観光気分でモンゴルを訪れるが、高級車はアムラが返し二人でオンボロのバンに乗って旅にでる。
しかし途中で車はエンジンが故障。近くの遊牧民からバイクを譲ってもらうが、アムラは過去の馬泥棒の容疑で逮捕されてしまう。
一人になるタケシ。夜は狼に襲われ、やむなくバイクのガソリンに火をつけ倒す。その場で倒れているところを遊牧民の少年に発見され、彼らの家でしばらく世話になる。そしてアムラも戻ってきた。
偶然にもツェルマと会うことが出来たタケシ。


まったく知らない映画だったが、先日ピカデリーの近日公開作品を見ていたら発見。柳楽優弥の主演作は「誰も知らない」以来観ているたちなので、無条件に鑑賞。でもこの映画、事前情報が全くない。

ます監督のKENTAROという人が謎の人物。パンフのプロフィールを読むと「海外で育ち欧米のインデペンデント映画などに出演」とある。さっぱり解らない。そんな人間がなぜこの映画を作る資金を得たのか不思議である。
昨日封切りで昨日このピカデリーで舞台挨拶があったのだが、その様子が今朝の「めざましテレビ」で放送されていた。
柳楽が「初回の打ち合わせの時に実は別の人にオファーしたが断られたので柳楽さんに頼んだと聞かされた」というエピソードを披露。
普通役者さんには「誰それに断られたのでお願いした」という話はしないものだ。(考えてみれば失礼な話だし)
でも言われると気になる。柳楽は「でも僕その役者さん好きなので気にならなかったです」と言っていた。同世代の俳優だと誰だろう。佐藤健とかかな。根拠ないけど。

1945年に20歳だったとして今なら95歳である。95歳でも会社の社長をしてる設定が変。そして何の手がかりもなく娘を探しに行くのも変。モンゴル人の馬泥棒が日本で馬盗んでどうするのよ?シナリオがずいぶん適当である。というかそういうことは考えていないのだろう。
要はタケシがモンゴルで色んな経験をすればいいのであり、それだけの映画だ。

でもタケシって冒頭から数人の女とベッドにいるシーンから登場したり、絵に描いたような設定なんだよなあ。遊牧民の出産に立ち会ったり、狼(野犬かと思っていた)に遭遇してバイクを爆破するとかずいぶん後先考えない。
しかも偶然にツェルマは見つかるし。

ラストでは大企業の社長としてバリバリ働くタケシになっている。
なんか胡散臭いKENTAROという男に回りみんな振り回されてない?っていう感じの映画。
たぶん内容はしばらくしたら忘れるだろう。
モンゴルの景色と柳楽優弥が主演と言うだけの映画。





すばらしき世界


日時 2021年2月27日8:55〜 
場所 新宿ピカデリー・スクリーン2
監督 西田美和


三上正夫(役所広司)は13年の刑期を終え旭川刑務所を出所した。
身元引受人の弁護士・庄司(橋爪功)の世話で東京のアパートで暮らすことになった。テレビの制作会社を辞め作家を目指す津乃田(仲野太賀)の元に三上を取材してみないかと依頼が入る。三上の半生を知った津乃田は興味がわき、引き受ける。
刑務所で免許を失効していた三上は完全に0からの受験になると知らされる。教習所に通うお金もなく、体も悪いため庄司の紹介で生活保護を受給するようになる。
ある日、スーパーで万引きの疑いをかけられた。それは間違いだったがそれをきっかけに店長(六角精児)と親しくなった。
津乃田はある日、チンピラに絡まれてるサラリーマンを助けた三上がチンピラを半殺しにあわせる現場を目撃した。
居場所のない三上はつい昔のヤクザ仲間を訪ねてしまう。しかし今はヤクザとしても生きることを許されない社会だった。
三上は介護施設でやっと職を得た。しかしそこでも我慢我慢の生活が待っていた。


役所広司主演作。基本的に役所広司の映画は全部見るたちなので、今回も鑑賞。でも元ヤクザの話と聞いてすこし足が遠のく。
先日観た「ヤクザと家族」もそうだったが、「犯罪者の生きる権利」みたいなものを真正面から描かれると私は戸惑う。

後半の就職が決まってのささやかなパーティーで弁護士やその妻(梶芽衣子)などから「見逃すことも大事。見過ごして見ない振りをするのも生きていくことも大事」と言われる。
案外そうかも知れないなあ。
自分の中の「正義」を貫こうとするから三上は暴力に出る。そして結果的に人を殺してしまったりする。

絡まれてるサラリーマンを救ったり、周りから「使えねえ」と言われる介護施設の仲間をバカにする奴を放ってはおけない。
後者のシーンでは「耐えるのか三上!」と問われてるようで緊張感たっぷりだった。
三上は「やり過ごす、無視する」ことを覚えて自分の身を守る。
それが正しいかどうかはわからない。しかしきっとそれは生きていく上での術なのだろう。
「政権が腐敗している」と怒るのも大切だが、それをやり過ごすという方法も「勇気ある撤退」として一つの方法ではないかと言われてる気がした。
この点は印象に残った。

あとはやっぱり役所広司。去年は役所さんの新作がなかったと思うので、役所広司を堪能出来た。
仲野太賀は「あの頃。」に続いて鑑賞したが、両作とも風呂場でケツを出している。北村有起哉は「ヤクザと家族」にも出ていたが、本作は正反対の区役所のケースワーカー役。面白い偶然だな。






ヤクザと家族 The Family


日時 2021年2月23日8:55〜 
場所 TOHOシネマズ新宿・スクリーン3
監督 藤井道人


1999年
山本賢治(綾野剛)は父親を覚醒剤で亡くし今は仲間の細野(市原隼人)、大原(二ノ宮隆太郎)とつるんでいた。ある日、侠葉会のチンピラの覚醒剤の売買の現場を見てしまい、その覚醒剤を奪ってしまう。焼き肉屋で飯を食ってるときに柴咲組の組長(舘ひろし)を見かけ、組長が侠葉会に襲われたところを助けてしまう。そのことがきっけで柴咲組の一員になる賢治。
2005年。
今や柴咲組の幹部となった賢治。街の再開発をきっかけに侠葉会との対立が再燃。そんな中、学費の為にホステスをしている由香(尾野真千子)と出会う。
侠葉会との対立で、大原は組長の身代わりとなって撃たれる。賢治はついに侠葉会の幹部を殺そうとする。しかし柴咲組の幹部・中村(北村有起哉)が幹部を殺す。賢治は中村の罪を引き受けて刑務所へ。
2019年。
14年の刑期を終えて賢治は出所した。しかし暴力団排除の条例により、組は解散同然、細野も組を抜けていた。細野は一般人に車をぶつけられ修理代を請求しただけでパクられたという。しかも組を抜けても5年ルールで就職もままならない。しかし今は子供も出来幸せな日々を送っていた。
由香はシングルマザーとして賢治の子供を育てていた。その女の子も中学生。細野の廃品回収の会社に何とか就職した賢治だが、会社の奴がツイッターにアップした写真がきっかけで細野も元ヤクザということが周りにばれ、そのとばっちりは由香にも及んでいた。
組長も末期のガンに冒されていた。昔からの知り合いの焼き肉屋の息子、木村翼(磯村勇斗)も今は反グレ集団になっていた。翼の父は昔侠葉会に殺されたのだ。それを知った翼は侠葉会の組長・加藤(豊原功輔)を殺しに向かう。


パスしようかと思ったのだが、案外評判がいいので鑑賞した次第。二ノ宮隆太郎さんが評判がいいので期待したが、前半で殺されてしまう。当然その後は出てこない。いやいやこれでは「アンダードッグ」の方が数倍いい役でしょう。

1999年と2005年の話は今までのヤクザ映画でもありがちな話で特にという感じ。
2019年の第3部がこの映画の特徴だろう。
暴力団排除の条例でヤクザとちょっとでもかかわり合いになることは許されない。ヤクザの家に出前を持って行っただけでも「利益供与をした」と言われると最初は騒がれた。
このあたりのヤクザの生きづらさはドキュメンタリー映画「ヤクザと憲法」に詳しい。ヤクザを辞めたものまでも縛る条例では組を抜けた者の再生の機会まで奪ってしまいそうでやりすぎの意見もわからないではない。

しかし岩松了演じる刑事が賢治に「ヤクザに生きる権利なんてないんだよ。お前等が今までやってきたことを考えろ!」というのも「私は」正しいと思ってしまう。

ただし「指定暴力団」でなければ悪さをしても、例えばこの映画の翼のようになんとか「条例」の適用は免れるのかなあ。
だとしたら現在の「条例による」締め付けもあんまり意味がない気もしますが。
暴力団に無縁の映画を観ただけの人たちは「ヤクザもかわいそう」と思えるかも知れないけど、やっぱり実際に遭遇すれば迷惑でしかないですよ。
「男を磨く」とか「義理を重んじる」とか絶対に今は(いや昔も)ないと思うけどなあ。

結局ラストは細野が「あんたさえ帰ってこなければよかったんだ!」と賢治を殺してしまう。
親がヤクザが原因で親を亡くした子供同士、翼と賢治の娘は出会ってこの映画は終わる。
この二人、恋人になってやっぱり「裏稼業」に染まっていくのだろうか?
「泣いた!」とかツイッターで観るけど、私には全く響かなかった。

あとこの映画、2005年のシーンではシネスコだったのが2019年ではビスタになっている。シネスコの時は今はスクリーンの上下左右が黒縁になっていわゆる「額縁」状態。「あれれ?」と思っていたら最後にはビスタになっている。
帰りに映画館のスタッフに聞いたら「制作者の意図で時代によってスクリーンサイズが変わります。映写事故ではありません」と教えてくれた。
結局上映の時は一つのDCPファイルになるからビスタに合わせて上映しちゃうからシネスコになったら上下が切れてしまうんですよね。
あんまり意味のある演出とは思えなかった。








短編集 さりゆくもの


日時 2021年2月21日12:30〜 
場所 K's cinema
監督 ほたる 小野さやか 山内大輔 小口容子 サトウトシキ


女優で映画監督のほたるさんが監督した1本目「いつか忘れさられる」が15分の短編として完成し、公開するために短編集として公開することにし、4人の映画監督に参加してもらって完成した映画。
ドラマ、ドキュメンタリーもあり、35mm、8mm、など素材もさまざま。

「いつか忘れさられる」
監督 ほたる
田舎の渡辺家では父、母、娘、祖母で今日も朝食を食べていたが、長男が家でしたきりいない。祖母は長男のことを「まだ帰らない」と口癖のように言っている。
長男は亡くなった。そして父もなくなった。

35mmでサイレント。全く無音。映画ってほんとに無音だとつらい。眠くなる。昔サイレントは弁士や音楽があって完全に無音ではなかったと思う。いまさら35mmの意味は共感しないし、映画自体にもちょっとついていけなかった。

「八十八ヶ所巡礼」
監督 小野さやか
小野さやかは故郷の愛媛県で巡礼してる人を撮ったドキュメンタリーを作る。北海道からやってきた山田芳美さん(女のような名前だが男)。
ラッシュが出来た段階で山田さんに連絡を取るが亡くなっていた。小野さやかは北海道に山田さんの息子夫婦を訪ねる。

「あひるの子」「恋のボルバキア」などのドキュメンタリーの小野さやか。ここで遭遇するとは思わなかった。

「ノブ江の痣」
監督 山内大輔
顔の半分に痣があるノブ江(ほたる)はその顔のせいで友達もいない人生を送ってきた。夫(森羅万象)は「すぐにやらせてくれそうだから」という理由で結婚したという。夫のDVから逃げるために家出をするノブ江。
若い男が助けてくれて自分のアパートに住まわせてくれた。
実はその若い男はそうやって助けた女を次々と殺す殺人鬼だった。

今度はドラマ。さすがに山内監督だけあって(「最短距離」の今年の分はいただけなかったが)ホラーとして十分にエンタメしている。
この作品とラストのトシキ作品がワンツーである。

「泥酔して死ぬる」
監督 小口容子
映画監督の小口は脳出血で倒れ死を意識した。酒の飲み過ぎが原因と思った小口だが、周りの人間が「正月だ」「打ち上げだ」と酒を飲ませようとする。

8mm作品。アップリンクで昔この監督の自主映画を見たことを思い出した。いまおかさんの学生時代の映画(「汗ばむ破壊者」)とセットで上映されたのだ。タイトルも忘れたその映画だけど、サイトを調べたら「もうこの監督の映画は観ないだろうな」と書いていた。人生は因果なものでまた遭遇した。
冒頭、小口監督がおっぱいをさらした姿で男とベッドで話しているシーンから始まる。やめてくれ。おばさんのおっぱいなんか見たくない。私はもうこの時点でドン引きである。
酒飲みの言い訳映画で基本的に酒飲みが好きではない(酒席は嫌いではないのだが、酒を飲み過ぎて飲まれるような人は苦手である)。
酒をやめられない言い訳をぐだぐだ聞かされるだけで面白くもなんともない。5本のうちで最低。

「もっとも小さな光」
監督 サトウトシキ
母と二人で暮らしてきた光太郎(櫻井拓也)は東京で杏子と同棲していたが結婚はしてない。そんな生活の元に母親(ほたる)が北海道からやってきてもう1ヶ月も同居している。光太郎は昔から母が好きではなかった。
ある晩母親と大喧嘩になるがそこでやっと母親は話した。「実は今度結婚して家を売って夫と二人で民宿をするつもり。そのことをいいにきた」
結局光太郎はそれを許すことは出来なかったが、母は翌日北海道に帰って行った。母は帰り際に杏子にあるものを渡す。
それは光太郎が生まれたばかりの頃につけていた育児日記だった。

櫻井拓也さんの未公開だった作品。この映画を目当てで観に来たのだ。
ラストに育児日記が読まれて彼女の息子に対する愛情を実感するなんてあざといと言えばあざといのだが、嫌いではない。
母親は光太郎が子供の頃に離婚してその後は「男が来るから出かけてろ」とか「バイトした金で高い服を買った」とか決していい母親でもなかったようだ。そうは言っても母親の愛情を再認識して、光太郎はバイト先の交通整理をしながら飛行機を見送る。
しかし櫻井さんはもういないんだな、と寂しくなる。
まさにタイトルの「さりゆくもの」となった。






あの頃。


日時 2021年2月21日9:00〜 
場所 TOHOシネマズ新宿・スクリーン4
監督 今泉力哉


2004年、大阪でバンド活動をしている劔(松坂桃李)だったが「ヘタクソ」とメンバーからもののしられ落ち込んでいた。そんなとき「これでも見て元気出せ」と松浦亜弥のライブDVDをくれた。すぐに魅せられる劔。駆けつけたCDショップで松浦亜弥のCDを見ていると店員のナカウチが声をかけてきた。「ハロプロ好きなの?今度イベントやるので来てよ」
それはライブハウスで行われたファンによるトークイベント。単にファンが自分の推しのメンバーへの愛を語るだけのイベントだったが妙に楽しかった。
そのイベントに出演していたコズミン(仲野太賀)やナカウチたちとも意気投合。劔もイベントに出演するようになる。
後輩の女子大生から学園祭の出演をお願いされ、メンバーは喜んで出演。それを誘ってくれた子といい仲になれるかと思ったが、友人の彼女だった。
やがてアールというメンバーが新たに加わる。アール君はギターをやっていて劔も再びベースを手に取る。そしてメンバーと「恋愛研究会。」というバンドを結成。アール君の彼女にストーカーがいてそのストーカーにコズミンが喧嘩を売り大騒動に。
ナカウチが知り合いに頼まれて東京でライブハウスで働くようになる。劔も同じ店で働くために東京へ。その頃、コズミンがガンに冒されたとmixiに書いていた。


今泉力哉監督の新作。撮影は去年の今頃で、コロナ禍が本格化する前である。いまおかしんじ監督がワンシーン出演していると聞いていたので(それだけじゃないけど)早速拝見。
いまおか監督は劔の20年後の姿として出演。
剣が女の子をアヤヤのコンサートに誘ったが結局来なかった。空席に見たことのない中年男が現れ「誰ですか?」と問うと「俺?君の20年後だよ」ということで登場。
「お前アイドルのおっかけなんかやってると惨めな大人になるよ」的な感じで出てくるのかと思ったら「俺は今幸せだ」と20年後の劔は答える。

原作は実際のハロヲタをしていた劔樹人氏のエッセイ。原作にはこのシーンはどう書かれていたのかな。
映画自体は当時の思い出を綴ったものだろうから、映画自体もエピソードの羅列になる。

私自身はハロヲタじゃないけど、これを「特撮」「ゴジラ」「ガメラ」「ジャニーズ」とかに置き換えれば納得である。ファンがイベントしてるなんて特撮界ではよくある。
サイン会などのイベント会場で友達になってその後交流が続く、なんて「ゴジラ」ファンの間ではよくあることだ。
ファン同士、通常の学校や職場では話題に出来ないことを何時間も話すのはどのヲタク世界でもあることなのだ。たぶん「エヴァ」ファンもそうなのだろう。
劔があややの握手会に出席するエピソードがあるが、ゴジラ界なら中島春雄さんのサイン会に出席したようなものか。

そして一般の友人には(特に女子)には引かれて人間扱いされなくなる。「彼女になってくれるかな?」と思った子には自分の友人が彼氏になっていたとかありそうである。

そうは言ってもみんな実生活では年をとっていくわけでずっと同じではいられない。劔も東京に出てくる。そしてベーシストとしても活動を再会する。
コズミンはなかなか性格が悪いけどガンになる。死線をさまようが結局は亡くなった。
ラストは今はベーシストとして何とかやっている劔。
「今が一番楽しい」
私もそういえる人生でありたい。









ぼくどうして涙がでるの


日時 2021年2月20日12:30〜 
場所 ラピュタ阿佐ヶ谷
監督 森永健次郎
製作 1965年(昭和40年)


伊藤紀子(十朱幸代)は21歳のクリスマスの晩、家族や恋人川口(藤竜也)と過ごしていた時に心臓に痛みを訴えた。東京女子医大病院で診察したところ、心臓に重い病気があり、あと2、3年の命と言われる。しかし手術すれば成功する可能性は五分五分と言われる。
入院を勧められたが、入院はなかなか出来ない。やっと入院できたのが8月。死ぬかも知れない手術を前にして刹那的になり病室を抜け出したりして看護婦を困らせる紀子。しかし婦長の説得により「自分よりももっと苦しい人もいるのにもっとがんばっている」と思いなおす。
そんな時小児科のベッドが足りずに小学生の芳宏が入院してきた。芳ちゃんと仲良くなることでこころを紛らわす紀子。紀子の手術はなんとか成功した。
今度は芳宏の番だ。


後に雑誌「薔薇族」編集長として有名になる伊藤文學さんの妹の闘病記。この映画の頃はまだ「薔薇族」は創刊してない。(「薔薇族」の創刊は71年だったかな)
文學さんは紀子の兄として(映画では文夫)佐藤英夫が演じている。

率直に言って2000年代に難病ものがはやったときは「けっ」とバカにしていたがこちらが歳を重ねたせいか、ぐっと来るものがある。
この映画のやりやすい点は難病ものだと「患者は助かるか助からないか」で一種の緊張感が生まれるが、この映画の場合、それが2回あるのだな。

考えてみれば妹さんは原作者としてクレジットされてるのだから助かるのはわかるのだが、それにしても前半のやさぐれぶりとかにも感情移入してしまうし、手術も「5時頃には終わると思います」と言われたのに8時になっても終わらないのは緊張感がある。

この病室にはジンクスがあってそれは「手術の時に泣いたら帰ってこれない」というもの。不安な気持ちで思わず泣きそうになるのだが、紀子はこらえた。しかし芳宏はつい涙が出てしまった。(これがタイトルにつながる)
そして観客の期待もむなしく、芳宏は帰らない。

「ブラックジャックによろしく」という妻夫木聡の医療ドラマがあったが、その中で心臓外科医の原田芳雄が「ガンの手術では手術中に死ぬってまずない。しかし心臓は失敗したらその場で死ぬからね。これは堪える」っていうせりふがあったけど、この映画では北竜二や鈴木瑞穂演じる医師たちも精神的にはきつかったろう。

藤竜也が恋人役で、彼女が病気になりしかも助かっても子供が産めるかどうかわからない体、ということがわかって結局は自分から去ってしまう。
冷たい奴にも見えるけど、致し方ないよね。

ちなみに伊藤さんの仕事は「第二書房」という弱小出版社の経営。これは実際と同じで看板も出てくる。

先週の日曜日からこの20日までの1週間の上映だったが、初日には伊藤文學さん自身も駆けつけ、舞台挨拶をしたそうだ。ラピュタの石井支配人が文學さんに手紙で伝えてその実現となったらしい。(文學さんのブログに書いてあった)

Wikiで見るとこのことがあって子供の心臓病を支援する活動を伊藤さん兄妹は始めることになった。後の薔薇族創刊もそうだが、弱者に寄り添う活動が文學さんにはある。









すばらしき映画音楽たち


日時 2021年2月13日11:50〜
場所 新文芸座
監督 マット・シュレーダー


新文芸座で「ようこそ映画音響の世界へ」と同時上映。形式は同じの関係者インタビューや有名作品の効果についての解説ドキュメンタリー。
同じような映画を見させられて飽きてくる。
いやもう音響とか音楽の効果の重要性は解ったからさあ。

ハンス・ジマーだったかが「面白い企画がある」と言われて面白そうで引き受けるが家に帰ってなにも浮かばなくて断りの電話を入れたくなる、というエピソードは面白い。
有名作曲家でもそうなのだなあ。
まあそうは言ってもやり遂げるのが一流クリエーターなのだけど。

バーナード・ハーマン、ジェリー・ゴールドスミス、ジョン・ウィリアムズなどの作品が紹介される。
ヒッチコックの「サイコ」の例のシャワーの惨殺シーン、「音楽だけ聴くとただのスクラッチのいやな音でしかない、映像だけみるとあまり怖くない。両方合わさって最高の効果を生んでいる」という解説が興味深い。

あと「007のテーマ」がジョン・バリーの曲として紹介されたが、「あれ、テーマ曲はモンティ・ノーマンじゃないの?」と思ったが、どうもノーマンが作曲したとは言い切れないらしい。で一応「ノーマン作曲、バリー編曲」で落ち着いているようだ。

そして70年代以降の大作曲家と言えばジョン・ウィリアムズ。
「ジョーズ」「インディ・ジョーンズ」「スター・ウォーズ」「ジュラシック・パーク」とどれか一つだけでも映画殿堂入りしそうな曲を何曲も何曲も書いているのがすばらしい。天才としかいいようがないですね。

ディズニー映画の作曲家が「とにかくプレッシャーをかけられる。製作費は高騰して、興行収入歴代20位以内に入らないと元が取れないような学になってしまった。社運がかかってるってプレッシャーをかけられるのがつらい」とこぼしていた。それに音楽は一番最後の仕事だから納品まで時間が迫ってますからねえ。他の部門に比べれば後半にもっとも延ばしにくいパートですから。

あと映画が公開されてから劇場に見に行って、スクリーンの横に立ち観客の表情を見るという作曲家の話も面白かった。映画が終わったあとにはトイレの個室に入ってお客さんがテーマ曲を口ずさんだり鼻歌を歌ってくれたかを聞くという。

映画に携わる方にはほんとに頭が下がります。この調子でいくと「編集」についてドキュメンタリーを作ってほしいと思う。
「OKカットをつなぐだけが仕事ではない」とは思いますが、編集者の違いが映画にどう違いを及ぼすかイマイチ実感できないので。





ようこそ映画音響の世界へ


日時 2021年2月13日9:50〜 
場所 新文芸座
監督 ミッジ・コスティン


映画が始まってからの音響の歴史を振り返り、関係者へのインタービューで音響の仕事を紹介するドキュメンタリー。
去年の8月に公開され、下高井戸シネマなどでも上映されたが時間が合わず見逃していたが、今回新文芸座で上映され鑑賞した次第。

チラシやポスターに「あの名作映画の音はどうやって作られたのか?その秘密に迫る」的なことが書いてあり、登場する映画がずらずらと並んでいて、その中に「七人の侍」があって、「おお黒澤映画も登場するのか」と思い楽しみにしていたが、だまされた。

関係者へのインタビューで「子供の頃は黒澤の映画も見ていた」という人がいて「七人の侍」が数秒登場するだけだ。
嘘はないけど裏切られたなあ。
でも「七人の侍」の音響に関してはラストの雨の決戦がすごいのだよ。
あれ5分ぐらいしかないのだが、音楽が一切ない。
馬の蹄の音や、馬の鳴き声、雨の音、水をはじく音、倒れる音、人を斬る音などなどの現実音だけでクライマックスの音響が構成されている。
これ、見本にしてほしいよ、近頃のアクション映画にも。

あの音はどう作ったんだろう、っていうのが例えば「スターウォーズ」のチューバッカなどが紹介されたが、動物園の虎やライオンの声を録音しスピードを変えたり逆回転させたりとかの話。
特撮ファンからすると「ゴジラ」などの怪獣映画のことも知ってるので完全に「なんだ、そんなことか」という程度のレベル。
いやもちろん彼らの仕事はすごいですけど。

そしてエジソン以来の映画の歴史でアル・ジョルスンのトーキー映画「ジャズシンガー」(例の「お楽しみはこれからだ」のせりふのシーンが紹介されていた〜You ain't nothing yetだったと思う)、が登場しサイレント映画に生で音をつけていた時代からトーキーになり、録音技術の進歩が紹介される。

その中でも音の仕事は軽く扱われ、「銃の音」「車」「爆発」などはすべてライブラリーで毎回同じものが使われてたという話。
そこでコッポラ、スピルバーグ、ルーカスなどの新世代が「ゴッドファーザー」「ジョーズ」「スターウォーズ」で音響にも凝り出したと紹介される。

やっぱり70年代のあの動きは映画の歴史の転換点だったのだなあ。
その時代を同時代者として体験できたのは幸せなことであった。

そんな感じで完全に期待はずれ。
もちろん映画音響担当のお仕事には敬意を払う。
「ドキュメンタリー映画」として何かの映画の特典映像のレベルだったということです。






ぼくとダディのこと


日時 2021年2月11日14:10〜 
場所 光音座1
監督 池島ゆたか
製作 ENK(1999年)


中年男(池島ゆたか)が道で若い男に声をかける。自宅に連れ帰って体の関係をした。男の名前は山浦。雑誌の名編集長で近頃はテレビにも登場する。
山浦の表札の家では女性が別の男とリビングで食事をしている。彼女は山浦の妻。山浦は仕事柄都心で別居している。
もう一人、山浦の息子、尚也は大学を卒業し就職し今は一人暮らしをしていた。仕事の帰り道、高校の先輩で今は俳優の和彦を新宿の雑踏で見かける。和彦は尚也に気づかずに行ってしまったが、和彦は中年男と合流した。そしてキスをした。相手は父親の山浦だった。
後日尚也は和彦を呼び出し事情を聞いた。自分の恋人が尚也の父親とは知らなかったという。雑誌のモデルの仕事で山浦と出会い、俳優の養成所の月謝や公演のノルマなどで困ってると相談すると山浦が援助してくれるようになったという。
「俳優の世界ではよくあることだ。演出家の梶川(杉本まこと)って知ってるだろ?あの先生が・・・」と俳優仲間で梶川にホテルで抱かれた男の話をしてくれた。
父親にも会う尚也。「いやいや結婚したの?」「お母さんのことは好きだ。お母さんも親友になってくれたんだ」と母も理解してくれたと話す。
少なくとも母が悲しむことはなかったと知ってほっとする尚也。
だがまだしっくりこない。
和彦にそのことを話し、「自分は今までに女性を好きになったことがないから解らないのかな?」と複雑な気持ちを吐露する。
和彦は「女を好きにならないってことはそういうことだろ?」と尚也を抱く。尚也もはじめは抵抗したが、やがては受け入れた。
尚也の母も別の男と再婚するという。妊娠したんだそうだ。
複雑な思いを持ちながら、尚也は行きつけのバーのマスターを休みの日に一緒に遊びに行く約束をした。
和彦と山浦の交際は続いている。


話は全部書いた。
監督・池島ゆたか、脚本・五代暁子のコンビ作。
こういう「ゲイが家族を持つ話」ってこのコンビのゲイ映画には多いけど、今回もそう。

私は「ゲイだけど女も嫌いなじゃいので結婚して子供も作ったがやっぱり男の恋人を作った」という男の話が嫌いなのである。
男も女も好きで子供もほしい、家族もほしいってどんだけ欲張りなんだよ!

この映画の吉行由美演じる母親は夫が男が好きだと受け入れたけど、そうでない人も多いだろう。「結婚して夫がゲイでした」って正直悲劇だよ。
結局自分のことは愛してくれないことじゃん。
妻のほかにも女がいるより罪が深い気がするのだな。

ストーリーとしてはよくできてるし、まとまってるのだが、どうにもこうにも根本の思想が好きになれないのでだめ。
さらに「女に興味がないってそういうことだろ?」と言って尚也を抱く和彦も下品である。発想が下品。

杉本まこと(なかみつせいじ)の演出家が俳優を抱くシーン、本来ならいらないシーンだけど、加えなきゃいけないのはゲイ映画ならではか。

それなりにまとまってる映画だけど、私は好きになれません。

同時上映は「ミレニアムZERO」。
以前に観ているので感想はパス。
それにしてもこの映画、全体的に映像が暗くてなにが起こってるか非常に解りづらい。国沢実の円谷好きを評価する人もいるだろうが、私は好きになれないな。





ガメラ2 レギオン襲来 <4Kドルビーシネマ版>


日時 2021年2月11日11:15〜 
場所 Tジョイ横浜・スクリーン4
監督 金子修介
製作 平成8年(1996年)


ストーリー省略。
昨年11月の「ガメラ大怪獣空中決戦4K」のヒットを受け(あくまで劇場単位で考えれば、というレベルだけど)、2作目の4Kドルビー版の劇場公開。本日より全国のドルビー設備のある劇場で公開だ。
東京近県では丸の内ピカデリー、MOVIXさいたま、そしてこのTジョイ横浜。
本日は光音座にも行く予定なので、昨年開館したTジョイ横浜にした次第。

この映画、封切り時にも観ているが「1作目より劣る」という印象だったが、今回劇場で再鑑賞して(封切り時以外ではブルーレイとかの鑑賞だと思う)この映画のおもしろさを堪能した。
いつもは最後列に座る私だが、今回は中程の列に席を取った。ドルビーの音で体を包まれたい思いがあったからだ。

以前観たときにいい印象がなかったのは主演の永島敏行があまり好きではないことと、レギオンの形態が鋭角的な80年代以降にありがちな形態で好きになれなかったからだ。
その印象は今でも変わらないが、それ以上によかった点も多い。

まずは北海道での謎の事件。光ファイバーの通信途絶から始まって地下鉄で怪物出現、自衛隊による迎撃作戦、ガメラ登場の一連の流れはうまい。

そして仙台対決、北関東での首都防衛戦。
特に怪獣同士の決戦になると登場人物は「ガメラ頑張れ!」という観てるだけになりがちだが、穂波(水野美紀)は仙台でのガメラの復活を祈り、そして帯津(吹越満)らによる小型レギオンを集めて(「最大出力で頼む!」というおきまりせりふ!そう怪獣映画では「最大出力」はマストなのだ!)殲滅戦。
小型レギオンに襲われた帯津たちを永島が拳銃で助けるシーンはいいですねえ。

怪獣映画の楽しさを本当に堪能した。
平成ガメラは怪獣映画の名作である。それを再確認した。







名も無き世界のエンドロール


日時 2021年2月10日18:10〜 
場所 TOHOシネマズ新宿・スクリーン8
監督 佐藤祐一


親のいない境遇同士、キダ(岩田剛典)とマコト(新田真剣佑)は兄弟のようにいつも一緒だった。そこへ小学生の時にノッチ(山田杏奈)が転校してきて、同じように親のいないノッチも仲間に加わった。
マコトはいつもキダにドッキリのいたづらを仕掛けてきた。キダもそれを笑い過ごしていた。
高校を卒業し、自動車修理工場に就職した二人。
そんな時、工場にリサという女が真っ赤なポルシェを修理してほしいと言ってきた。左の前部を何かにぶつけたのだ。犬と当たったとリサは言ったが、車検証も免許証も出さずになにか怪しい。修理代300万円の見積もりにも彼女はあっさり承知した。
マコトは彼女を食事に誘ったがあっさり断られた。「どうやったら彼女に近づけるかなあ」
1週間後、マコトは修理工場を辞め、どこかへ消えた。
2年後、道路の拡張工事のため、工場は閉鎖されることになった。社長(大友康平)はキダに横浜の川畑(柄本明)という男を訪ねろと言う。「裏社会に通じる男だが、力になってくれる」
マコトの行方は川畑によってわかった。二人は再会。マコトはある計画を練っていた。


岩田剛典、新田真剣佑のイケメン共演。予告編を見ると「ラスト20分、思いも寄らない展開で日本中が震撼する」みたいな(あくまで印象)感じで日本や世界に影響を及ぼすような大犯罪の映画らしいと思い、楽しみにしていた。
しかし1月29日に公開されてから全くと言っていいほど評判を聞かない。同日に公開された「花束みたいな恋をした」の方がヒットしてるし、評判もいい。「ヤクザと家族」の方が評判がいい。
よほどこの「名も無き〜」をパスしようかと思ったが、来週で終わりだし、11日以降は1日1回の上映になるので、やっぱり今日はこっちにした。

正直、期待した映画とは違ったなという印象。
キダとマコトの計画というのが「ノッチの復讐」という実に小さな話だったのだ。ノッチがキダとマコトが大人になってから全く出てこなくなるのだが、ノッチはひき逃げにあっていたのだ。
そこへリサの車がやってきて、リサがひき逃げ犯と解るというわけ。
時系列の通りに話が進んだら、あまり面白くないのだろう。

時系列を変えることによって話に興味を持たせてるが、こういう話法はあまり好きではない。
それにキダと再会したマコトは4000万円貯めて会社を買おうとしていたが、そんな金どうやって作ったんだよ。「金を作るって大変だな」の一言で片づけてるけど。

リサは国会議員の娘で親父の力で交通事故ももみ消した設定。それで何百人という人の前で告白させれば親父の力でももみ消せまい、としたのだが親子共々とっとと殺してしまえばよかったのでは?
キダも裏社会に通じてるようになったんだからさ。
やることが回りくどく、その割には結局リサとマコトは自爆するのだから同じじゃん。それにホテル爆破したら誰か巻き添えで死ぬかも知れないよ。

期待と違った映画だったのでがっかり感も大きかった。







俺の空だぜ!若大将


日時 2021年2月9日 
場所 TSUTAYA宅配レンタルDVD
監督 小谷承靖
製作 昭和45年(1970年)


若大将・田沼雄一(加山雄三)は今は青大将・石山(田中邦衛)の父(北竜二)が社長をしている建設会社で働いていた。若大将の実家・田能久の近所にマンション建設を進めていたいたが、地元の反対にあっていた。
その中でも風呂屋が反対の急先鋒。若大将の父・久太郎(有島一郎)と風呂屋の主人(伴淳三郎)が会社に押し掛けてきた。
立ち退き交渉を命じられた若大将。風呂屋で粘るうちに主人とはとりあえず打ち解けるが、まだ交渉は成立していない。そこで主人の姪の節子(酒井和歌子)と知り合う。
若大将は趣味でスカイダイビングをしていた。母校の京南大学の後輩・太田茂夫(大矢茂)がやってきて顧問をしてほしいという。そのスカイダイビングクラブで英子(応蘭芳)という女性と知り合う。
遅々として進まない立ち退き交渉に青大将は建設を開始する強硬手段に出る。その態度についに若大将は会社を辞める。
英子の父(上田吉二郎)から英子と結婚すれば若大将が夢見る富士の麓に新しい町を建設するプロジェクトを進めてもいいといわれ、心が動く。
一方茂夫の母親(久慈あさみ)に一目惚れする久太郎。久太郎は最近相場を覚え、それを茂夫の母親にも進める。はじめはもうけた2人だが、やがて小豆相場で2000万円の損失をしてしまう。
それを知った英子の父は英子と結婚すれば損失は面倒みてもいいという。
「節子さんのことはいいんですか!」と茂夫に責められる若大将。そんな時節子と伊豆の離島に行った青大将がまむしにかまれるという事態になる。
若大将と茂夫は血清を届けるために飛び立った。


小谷承靖監督の監督昇進作。若大将シリーズももう終わりかけである。
でも東宝としては加山のバックバンド・ランチャーズのメンバーの大矢茂を2代目若大将として育てようとしたいたようだ。
このDVDのオーディオコメンタリーで小谷監督も証言している。
実際になかなかのイケメンだし、いい感じなのだがもう一つ突き抜ける魅力がない。なんかオーラがないっていうか。加山の前では負けてる感じなのだな。

最初の風呂屋の立ち退き問題は最後には決着がつくかと思ったら、そうはならない。(なにも説明がない)
富士山麓プロジェクトも青大将を助けたのだから「検討してください」と一言で終わり。結局前半で出された問題はなにも解決していない。
まあお仕事の話じゃないですからね、若大将は。

大矢茂についてもう少し書くとこの太田君、スカイダイビング部のキャプテン的立場でありながら「飛ぶのが怖い」というヘタレ。
なんだそれ?
1回目の降下は突き飛ばされてだし、2回目は断念。
でも血清を届ける時に「僕が行きます!」と男気を見せる。ここがクライマックスなんだろうけど、前半が2枚目の役柄なので、あまりヘタレだと若大将というより青大将になってしまう。
次作「若大将対青大将」でシリーズはいったん中断だが、次回は大矢がメインになるそうだ。
今回は中途半端な2枚目だったが、もう少し見てみたい。

青大将の秘書役で菱見百合子さん出演。胸のあいた衣装でセクシーさを見せつける。「ウルトラセブン」の後だけど、「セブン」の活躍は次にはつながらなかったという時代の作品だ。

あと「急げ!若者」の途中でフォーリーブス・メドレーがあるが、あの映画で出てきたスカイダイビングのカットはこの「俺の空だぜ!若大将」からの流用カットだと分かった。
「急げ!」の時に音楽シーンが「今のPVのよう」と思ったが、何のことはない、この若大将シリーズの頃から「歌のシーン」はあったのだ。
勉強になった。








真昼の惨劇


日時 2021年2月7日16:10〜 
場所 ラピュタ阿佐ヶ谷
監督 野村企鋒
製作 昭和33年(1958年)


千住のバタヤ部落に平井一家5人がやってきた。力造と妻・あき(望月優子)、そして16歳の君子、13歳の芳江、5歳の常夫の一家だ。
力造はくず拾いの仕事を始めるが、もともと酒好きで酒で身を崩した男だ。少しの金が入るとつい酒屋に入り酒を飲んでしまう。
くず拾いのリアカーを放り出して道に寝てしまう有様で周囲の者も力造を厄介者と思っているが、あきや3人の子供がかわいそうで追い出すわけにもいかない。
力造は働かなくなり毎日酒ばかり飲むようになる。君子は近くの総菜屋で働くようになるが、力造には内緒だった。金を取られてしまうからだ。
ある日、君子がもらってきたコロッケを家族で食べているときに力造が帰ってくる。「俺には食わせないのか!」とあきを殴る力造。
その晩、ついにあきは家出した。翌朝、君子たちは母を捜すが見つからない。ますます酒を飲んで暴力をふるう力造。
芳江が「父さんなんか死んでしまえばいい」。近くにあった帯ひもで父を絞め殺す。
芳江たちは自首した。新聞記事を見てあきも帰ってきた。


ラピュタ阿佐ヶ谷「実話にもとづく」特集の1本。
昭和33年に起こった尊属殺人事件がベースだそうだ。といってもその事件は今は話題になることはない。この映画、公開は8月24日だが、事件そのものは6月に起こったようだ。ハイペースだ。

冒頭、銀座の繁栄が映し出され、(たぶん)日劇のウエスタンカーニバルの様子や、乳房を出して踊るショー(日劇ミュージックホールか)が紹介される。(この乳房のカット、数秒あって先日の香取環で見たピンク映画の乳房カットより長い)
それに比較して、という感じで千住のバタヤ部落に話は移る。
この映画中では何度も有名な「おばけ煙突」(本来は4本だが見る方向で2本になったり3本になったりする煙突)が何度も登場する。
このあたりの土地のアイコンなのだろう。

映画はこの後力造のダメ男ぶりを延々と映し出す。
この映画自体は80分の割と短いのだが、周囲の人がいい人ばかりで母と子供にはみんな親切だ。ダメ男は力造だけ。
(部落の人で左卜全、清水元、賀原夏子など登場)
殺されてもいいんじゃないかなあ、と思えてくる。

歌舞伎座製作、松竹配給という珍しい製作体制。このあたりの周囲の人々の「いい人」ぶりは松竹ならではと言っていいのか。

事件が終わって警察の取り調べでまだ事情をわかってない末っ子の常夫までが「お父ちゃんなんか死んだっていいよ」というあたりにことの根深さが伺える。

ラストカットは国会議事堂。ここに「貧困は犯罪の温床となる」という意味のタイトルが出る。いかにも「国はもっと貧困の福祉政策に力を入れるべきだ」という主張で終わる。
去年見た「子供たちをよろしく」の昭和版とでもいう映画だった。






花束みたいな恋をした


日時 2021年2月6日17:40〜 
場所 TOHOシネマズ新宿・スクリーン4
監督 土井裕泰


大学生の麦(菅田将暉)と絹(有村架純)。本やお笑い、映画が大好きな二人。京王線明大前駅で終電を逃した二人は、同様のサラリーマンとOL風女性と深夜喫茶に入った。そこで押井守を見かける。麦と絹は解ったがサラリーマンとOLは解らない。麦と絹は意気投合し、居酒屋に入り、本やお笑いの話をした。麦のアパートの調布まで二人で歩いて帰った。
上野で開催された「ミイラ展」に行く二人。やがてお互いはどちらともなく「つきあいましょう」と言い出す。
絹は就職活動をしたがうまく行かない。泣いている絹を見て「一緒に暮らそう」と言い出す二人。イラストレーター志望の麦は先輩の紹介で1カット1000円でイラストのバイトを始める。しかしやがて「3カット1000円で」と言われ、心が折れた。一緒に暮らすために就職するを決意する。絹もアイスクリーム屋でバイトしていたが、簿記の資格を取り就職した。
イラストとも何の関係もない物流会社に就職した麦。「5時には帰れる」と聞いていたが残業残業の日々。一方絹はやっぱりイベント関係の仕事がしたくて転職。やがて心はすれ違っていく。


菅田将暉と有村架純の恋愛ドラマ。と思って「この二人じゃ今更って感じだなあ」とパスするつもりでいたが、ツイッターで評判がいいので見に行くことにした。
「主人公の二人はサブカル好きらしい」「京王線沿線が舞台」ぐらいしか知らなかったのだが、よかったなあ。今年のベストテン候補。

二人のきっかけは押井守である。このシーン、押井守の顔を知っていてよかったと思う。彼らと価値観が共有出来たから。もっとも俺なら樋口真嗣あたりを登場させちゃうかもだが。

そしてイラストレーターのバイトを始める麦。「1カット1000円」の約束で始めたが、「追加で3カットをお願いします、1000円で」に「了解です」と答えたところから次に来た依頼が「3カット1000円で」になってしまう。ここはこたえた。なんか「新人クリエーターあるある」だ。ここで断った麦が正しいのか間違っていたのかは分からない。
でもこの時に麦は思ったのだ。「好きなことだけでは食べていけない」。

絹の存在がなかったら麦も就職しなかったかも知れない。麦の人生の目標は「絹とずっと一緒にいること」だったから。
しかし就職すれば残業続き。「5年頑張れ」と言われるが5年経っても楽になる保証はないよ。そんな時、絹は知り合いを通じて知り合ったイベント会社に転職するという。「イラストも全部捨てたのに『やりたいことをしたい』って転職するのか」とつい声を荒げてしまう。「じゃ結婚しよう」
でもここから二人はすれ違っていく。

そして友人の結婚式に参列しながら二人は別れを決意する。
観覧車に乗りながら引き出物の選べるカタログを見る絹。「ここ景色を見るところでしょ?」「夜景とか興味ない」
ああ、そうか。価値観が全部一緒であるはずがないんだな。
そして二人は告白したファミレスに入る。
別れ話をしようとしたが、結局は出来ない麦。
そこへかつて二人が告白しあった席に若いカップルがやってくる。
自分たちがかつてした会話と同じようなことをしている。

あざといなあ。実にあざとい。あんなに偶然のカップルが現れるなんて。
でもあえていいたい。
「あざとくて何が悪いの?」

あるいは別れないのか?と思ったがやっぱり別れた。
そうなのだ。冒頭のシーンは2020年と示され、二人は別々の人と同じ店で偶然再会する。
だから僕らは最初から別れることを知っていたのだし。でも二人には別れてほしくなかったな。

舞台設定は2015、6年の調布駅周辺。でもこの頃は調布駅の地下化工事中で今とはまるで違う。だから撮影も駅舎は写さずにロータリーやPARCOをバックにしています。

出演では水澤伸吾さんが有村架純に絡む酔っぱらいで出演。また就職した麦の先輩役の坊主頭の人、パンフなどでは紹介がなかったが、「桐島、部活やめるってよ」の東出の野球部の先輩役だった方ではないか?久々にみれてうれしかった。

予想以上によかった。もう1回見てもいいかな。早くも今年のベストテンには入ると言っていいだろう。





激突!若大将


日時 2021年2月2日 
場所 DVD
監督 小谷承靖
製作 昭和51年(1976年)


梅野正三(草刈正雄)は京南大学アイスホッケー部のエース。
空手部の青大将(湯原昌幸)とはライバル。今日も青大将が近くの児童福祉施設で働く鮎子(坂口良子)にちょっかい出したところを助けてあげた。
アイスホッケー部の合宿の費用を稼ぐため学園祭で歌手を呼んでコンサートを開く予定だったが、歌手は病気でこれない、雨は降ってコンサートそのものが中止で入場料は払い戻しで200万円の費用が必要になった。
若大将がコンサートの前座で歌ったのだが、その歌を聴いたプロダクションからスカウトされた。金に困った若大将は歌手になる代わりに200万円を借りた。しかしアイスホッケーのユニフォームを着てポスターに出てしまい、それがアマチュア規定に抵触するおそれが出てきた。
合宿中にその知らせを聞いた若大将は一人東京へ戻る。プロダクションに借りた金を返して歌手も辞めアイスホッケーに出ようとする若大将。200万円を貸してくれと親父(フランキー堺)に頼むが断られる。
もう試合に出られないと思った若大将はゆっくり考えるために一人北海道へ。
結局ポスターの件も解決し、若大将は試合に出られることに。青大将が「僕がパパに頼んだから若大将は試合に出られるようになった」と鮎子を誘い出す。鮎子は青大将を利用して北海道に若大将を迎えにいく。


「がんばれ!若大将」に続く草刈・若大将第2弾。「がんばれ!」を結構楽しんだ私は「激突!」も見に行こうかと思ったが、「スリランカの愛と別れ」という栗原小巻(たしか木下恵介監督)と2本立てでどうにも観る気になれなかったので公開時には観なかった覚えがある。(「スリランカ」がメインで「激突!」は添え物だった)
それから20年以上たって、自宅で日本映画専門チャンネルがみれるようになってから一度放送されて録画してみた。2000年前後だったと思う。しかしこの放送での記憶は草刈正雄が雨の中を歌うカットしか覚えていなかった。

「がんばれ!」と「激突!」、話はほとんど一緒。
若大将が金に困る、たまたまモデルとか歌手にスカウトされたのでその申し出にいやいや乗る、店の金を持ち出す、という展開。
「がんばれ!」だと店の金が先でスカウト話があと、という違いはあるが。脚本は田波靖男だが、これじゃもう続かないだろう。
フランキー堺の父親が熟女(今回は加茂さくら)に入れ込むとかの展開も同じ。

「がんばれ!」よりも草刈の歌唱シーンが多く、歌手として東宝が売りたがってるのがよくわかる。(三浦友和は歌わなかったのかな?少なくともヒットはしてないなあ)

それにしても「急げ!若者」と同じようなシーン、カットがあるのは笑った。街角に若大将のポスターがあふれていて、その1枚を妹の関口恵子がはがすカットやシースルーのエレベーターとか、児童施設がクリスマスを迎えるシーンとか。主人公が借金を背負ってしまって窮地に陥るとかそれを歌手のスカウトで何とかするとか。監督脚本が同じだからとはいえ、結構イージー。これでは日本のプログラムピクチャアもそっぽを向かれる。

おきまりのギャグ(肥溜めに青大将が落ちるというのを今回もやる)も多く、さすがにつらくなる。その中でもとんかつ職人の小島三児は出演シーンも増え、よかったと思う。
今回はヒロインも坂口良子で知名度がありよかったと思う。もう一人若大将に好意を寄せる娘に長谷直美で若大将もモテモテである。

ラストも青大将が緊急車両(今回は消防車)を奪って若大将を送り届ける。(今回は試合会場ではなく千歳空港だけど)
70年代の角川映画をはじめとする大作化の時代にあって、もう完全に時代遅れの映画だった。というかこの時代でもまだ東宝シリーズものを作ろうという発想がある意味すごい。
その前年の「喜劇百点満点」は駅前シリーズの流れだし、このあたりで東宝のシリーズものは完全に消える。

そして百恵友和映画、たのきん映画の時代になっていくのだ。