2021年6月

   
夏への扉 暗黒街全滅作戦 マンズマンズワールド 2gether
ジュ・テーム・モワ・ノン・プリュ HOKUSAI 葵ちゃんはやらせてくれない 淫靡な女たち イキたいとこでイク!
海底悲歌(ハイテイエレジー) 花と蛇 〜飼育篇〜 レスキュー 白い粉の恐怖
サラリーマン無鉄砲一家 胸が鳴るのは君のせい 炎の男たち グリーンランド
―地球最後の2日間―

夏への扉


日時 2021年6月29日13:15〜 
場所 新宿ピカデリー・スクリーン5
監督 三木孝浩


1995年。ロボット学者の高倉宗一郎(山崎賢人)は自分も株主であるFWE社を追い出され、研究資料もすべて奪われてしまう。
宗一郎は小さい頃に親を亡くし、父の親友だった松下功一(橋爪淳)に育てられた。功一の娘の璃子(清原果耶)は功一を兄以上の存在として意識していた。その松下も亡くなり、松下の意志を引き継ぎ、松下の弟の和人(眞島秀和)とFWE社を作ったのだが、研究が一段落した段階で和人は宗一郎の研究の成果を他社に売り渡そうとしたのだ。
失意の宗一郎はその頃流行っていた冷凍催眠で30年過ごす保険に入り、現実逃避をしようとした。
2025年。宗一郎は目覚めた。2025年の世界ではロボットは実用化されていた。30年のブランクを取り戻すためにPETE(藤木直人)というヒューマノイドが5日間手助けにつくことになる。
璃子という女性から連絡があったというので、行ってみたらそこには璃子ではなく、今では落ちぶれた鈴がいた。鈴は和人とともにFWE社から宗一郎を追い出した本人だ。彼女の話では和人は1996年に病気で亡くなり、FWE社も今はガーディアン工業という会社に変わっていた。
ガーディアン工業の社長を訪ねると、宗一郎のことを覚えていたが、宗一郎は会った覚えがない。しかもヒューマノイド型ロボットPETE1号を完成させたとかプラズマ蓄電池を完成させたというのだ。だが全く記憶にない。
宗一郎は1995年に話題になった時空間を越える装置のプロトタイプを発明した遠井博士(田口トモロヲ)を思い出す。その男を訪ねる宗一郎。
遠井博士は宗一郎を歓迎する。そして1995年へと戻っていく。


ストーリー紹介だけでも結構かかったなあ。
原作はロバート・A・ハインラインの同名小説。初の映画化だそうだ。
山崎賢人主演なので何でも見てしまう。
基本、タイムトラベルものは好きではない。何か矛盾が生じるし、話がなんとでも出来てしまう気がして好きになれないのだ。
とはいっても主演が山崎賢人となれば観る。

なかなか2025年にもならないし、1995年にも戻らない。
どうも話が前半もたついてるなあ。と思ったら後半はそれなりに伏線が回収されていく。現実の1995年と同じところもあれば違うところもある。特に違うのは時空間を越える発明か。

2025年は今の私たちにとっては近未来。スマホの登場は1995年から来た宗一郎には驚きだろう。実際こんなものが出来ているとは思わなかった。

ヒューマノイドのPETE。宗一郎は猫のピートを飼っているから、私は猫のピートの心を移植してヒューマノイドになっているというオチがあると思っていた。何回も「まだ気づきませんか?」っていうし。

後半1995年に戻ってからの展開は面白かったし、退屈な映画、とは思わないが、やはり山崎賢人のピュアな笑顔に支えられている部分は多い。
というか結局は山崎賢人の笑顔しか記憶に残らなかったな。

あと内容とは直接関係ないが、PETEの蓄電池の構造を宗一郎が確認するために男子トイレに入って「いいから上を脱いで裸になれ」って声が聞こえてきて関係ない人がぎょっとするって笑いのカットがあるが、ああいうセンスはゲイを揶揄してるようでいやだなと思った。
のだが、それは深読みで単なる強盗かなにかと思われた、というギャグでよかったのかな。







暗黒街全滅作戦


日時 2021年6月27日10:30〜 
場所 ラピュタ阿佐ヶ谷
監督 福田 純
製作 昭和40年(1965年)


愛知県の東海市。ここは関東の片岡連合会、関西の大門組の両方の組織の接点になる場所だ。その東海市の根津組の会長が列車の中で殺された。
葬式の日、片岡連合の尾形燐太郎(三橋達也)がやってきた。
根津の会長を殺したのはこの町の根津と対立する西条組がやったと思われていた。しかし実際に殺したのは尾形だった。片岡連合はどっちにも正式に杯を交わさない根津の会長に業を煮やして殺したのだ。そして混乱に乗じて根津組を傘下に押さえる腹積もりだ。
会長の後継は会長の養子の島田(平田昭彦)に決まった。しかし幹部の兵藤五郎(佐藤允)はそれを許さない。会長の葬式にやってきた若い女。彼女・千加子(浜美枝)は実は自分は会長の隠し子だという。
五郎はそれは嘘だったと知ったが、それを利用して会長の跡目はこっちと言い出す。
根津の組員が報復に西条の組長を殺す。戦争を恐れた島田は西条組のバックにつく大門組に仲裁を願い出る。大門組は根津組を参加する代わりに西条組は島田の傘下に入るようにした。
しかし片岡組の尾形、この機に乗ってこの街を支配しようとする五郎はこの決定に従わない。
かくして抗争のますます悪化した。


東宝「暗黒街」シリーズ。これが最終作になる。
観てる間は東宝テイストなのであまり気にならなかったが、あとから考えると東映の実録路線的な映画だ。「仁義なき戦い」の「代理戦争」「頂上作戦」をミックスさせたような。

これは観てるときも思ったけど、抗争が本格化してダイナマイトで五郎たちが殴り込んだとき、敵味方入り乱れて島田の部下が五郎の車に乗り込んでしまう、というネタがこの映画にも出てくる。
これ「頂上作戦」でやってたじゃん。

佐藤允が菅原文太の役を、三橋達也が梅宮辰夫の役を演じているような感じだ。しかもこっちの方が7年ほど早い。
へー、映画史って面白いなあ。

今回は浜美枝特集での上映。
浜さんがゴーゴー好きでラジオの音楽にあわせて下着姿で踊る。背も高いし、プロポーションがいいので(日本の女優ってぼてっとした体型を感じることが多いが浜さんは足が長いせいかそういう感じはしない)、見とれてしまう。

三橋さんがエンジン音とかの騒音に特に敏感で頭痛を感じる設定。頭の中に散弾が入ってるからと説明が入るがもう一つ生かし切れてなかった気もする。
佐藤允さんの役名五郎は「暗黒街の顔役」とのつながりか?

脇では佐藤允さんの部下のチンピラに古谷敏さんがいたり、警察幹部でワンシーンの出演で中山昭二さんが出て、大門組から西条組にやってきてる幹で春日章良(本作では春日俊二名義)が出演。特撮ヲタ的にも楽しい。






マンズマンズワールド


日時 2021年6月26日11:00〜 
場所 光音座1
監督 池島ゆたか
製作 ENK(2001年)


信濃町。サラリーマンの和彦は会社で上司から「役立たず。リストラ候補」とののしられ、つきあっていた彼女にも「ヘタクソ」とふられる。
方南町。ゲイカップルがベッドで絡み合っている。
成城。往年の大歌手鳴滝シンノスケは恋人に逃げられ寂しがっていた。その鳴滝のスキャンダルを追う記者が張り込んでいる。
北池袋。地下のパーティ会場に先ほどの方南町のカップルが訪れ入り口で一人が入り、一人は仕事に出かけていく。浮浪者が現れ、仕事にいく方に物乞いをする。
和彦はビルから飛び降り自殺をしようとする。そこへ男が現れた。「どうで死ぬんなら助けてください」と和彦を鳴滝の家に連れて行く。鳴滝は和彦を見て去っていった恋人が戻ってきたと勘違いする。鳴滝はすでに認知症だった。
ベッドで時間を過ごした後、和彦は先ほどの男から金を渡される。男は鳴滝の執事だった。和彦は断ろうとしたところを鳴滝に見られる。鳴滝は「また私を捨てようとする!」銃を撃ってきた。執事が弾除けになり、和彦は逃げ出す。
公園でさっきの浮浪者と遭遇する和彦。浮浪者は包丁で襲いかかってきたが、血をはいて倒れる。通りかかった男に「人殺し!」と叫ばれ、その場を逃げ出す和彦。
血のついたセーターを脱いだ和彦。話しかけてきた男に「パーティに行かない?」と言われ、先ほどの池袋の地下パーティに連れて行かれる。
そこは男同士が絡み合う秘密のパーティだった。しかし女もいて、S嬢に攻められる和彦。死にそうになるまで攻められたとき、男が助けてくれた。
そこから逃げ出す和彦。助けてくれた男は方南町のカップルの片方。和彦はその男に男の世界を教えてもらう。しかし片割れが帰ってきて、「浮気しやがって!」と大喧嘩。なんとか仲直りした3人。「そんな会社辞めちゃえよ」と言われ、いろいろ吹っ切れる。
夜明けの道を歩く和彦。そこへ1台の車が。鳴滝だった。鳴滝は「許さない」と和彦を撃ち殺す。和彦の死体を持って行く鳴滝。
それを記者がカメラに収めた。しかし「鳴滝様をお守りするのが私の使命!」と執事に殺される記者。
それを浮浪者が血を吐いたの時にいた男が「人殺しだあ」と騒ぎ出す。

話は全部書いた。
各所でバラバラにストーリーが始まるだし、それが徐々につながっていく展開は最初はおもしろかった。
そして生きる希望を無くしていた和彦が「別の生き方もあるんだ。別の愛し方もあるんだ」と思い直す展開まではいい。

しかしラストは必然性を感じない、「どんでん返しのためのどんでん返し」のように感じてしまし、後味が悪かった。
残念。






2gether


日時 2021年6月20日9:10〜 
場所 TOHOシネマズ新宿・スクリーン7
監督 ノッパナ・チャウィモン


大学に進学したタイン(メータウィン・オーパッイアムカジョーン)は女の子の恋人が欲しかったが、男のグリーン(コラウィット・ブーンスィ)に告白されてしまう。何とかあきらめさせようとしたが、だめ。タインの親友たちは「なら男の恋人を作れば?もちろん演技で」と言ってきた。
それを頼む相手は大学で一番のイケメンで軽音楽部のサラワット(ワチラウィット・チアワリー)。タインはサラワットに「恋人になってくれ。俺は女が好きなんだが男に告白されて困っている」と打ち合けた。しかしサラワットは「は?」とつれない。
サラワットに近づくためにタインもギターは弾けないけど軽音楽部に入部した。サラワット人気で軽音楽部には入部希望者が殺到。入部テストではだめだと思ったタインだが、なんと入部できた。
タインは軽音楽部の女子、ペアを気に入ってしまう。


昨年あたりからネット配信ドラマなどで噂には聞いていたタイ発のBLドラマ。本来は13話のドラマを2時間の映画版に再編集したもの。ドラマは未見だが、それなりに話は分かる。(ただし後半などかなり話は端折るが)

「恋人の振りをしてください」というなど「オオカミ少女と黒王子」などにある「嘘から始まった恋が本物になる」というBLラブコメ話。
日本の少女コミックの実写映画化でも妙にエフェクト音(キラリン、などの音)があるので気になったが、徐々に少なくなる。
(基本ラブコメだとこうなるらしい)

ギターをサラワットがタインに教えるのだが、左手の弦の押さえ方を教えるときに指先が触れるあたりはもうドキドキである。いいねえ。
そして新歓コンパでポッキーゲーム(っていうのか、あのポッキーを両側でくわえて徐々に食べていく奴)やったりしてドキドキ感が増していく。
サラワットはまだ告白はしないが、ドラマとしてはサラワットは実はタインを好きなんだろうな、とリードしていく。もう胸キュンキュンである。

サラワットが過去写真をインスタに投稿し、それの隅にタインが写っていたことから「実はサラワットは昔からタインを意識していた」と判明、事態は急展開。
「実はお前が好きなんだ」「なら何故早く言わない」「だってお前、最初に『女が好きだ。男に告白されて困ってる』って言ったろ」とかあって結局キス。
うははは。楽しい楽しい。

そしてつきあうようになったが先輩のミルがタインにちょっかいを出し始めるという展開。まあ日本の少女コミックの展開などを研究してるんだろうな。
(ミル役のサッタブット・ラディキが眉が濃すぎてちょっと苦手だが)

とにかく私がタイに持っていたイメージ(屋台とか売春とか)は全くなく(まあ私のイメージも偏見だが)、世界中と同じような明るいキャンパスが舞台。
タイのイメージがだいぶ変わったなあ。それはそれで偏見なんだろうけど。

主役の二人がとにかくイケメン。タイン役の役者は通称ウィンになるらしいのだが(そりゃあんなに長い名前では覚えられない)、岡田健史風で、サラワット(通称ブライト)はくっきり二重の中島健人風か。
タインがシャワー上がりの上裸シーンがあったが、サラワットはなし。観たかったなあ。ここは水着シーンとか欲しいですね。

こんなイケメンが登場しては韓国のBTSとかもあってジャニーズ帝国はどんどん崩壊していく。
今ジュニアのHiHiJetsとか美 少年とか一部のメンバーは魅力あるけど全般的にレベルは落ちたと思う。

ラストは卒業式。冒頭のシーンが主役二人が正装をしてるのだが、物語としては時制が戻る。この二人が正装してるので「結婚式?」と思ったが、そこまでは行ってなくて卒業式だった。

そして書いておきたいのが今回スクリーン7での上映だということ。
TOHO新宿では9番についで二番目の大きさの箱なのだ。今緊急事態宣言中で定員が半分(1席開けで販売)なのだが、それにしても7番での上映はすごい。この映画、6月4日公開で今週が3週目なのだが、興行成績は尻上がりである。東京では日比谷、池袋のTOHOで3館のみだが、テレビドラマの再編集版ではとにかく大当たりだろう。
これからもBL映画、ドラマがどんどん増えてくれることを望む。
いい時代になったと思いたい。





ジュ・テーム・モワ・ノン・プリュ


日時 2021年6月13日18:30〜 
場所 K's cinema
監督 セルジュ・ゲンズブール
製作 1975年(昭和50年)


トラックで二人の男がゴミを捨てにいく。運転手はクラスキー(ジョー・ダレッサンドロ)、助手席にいるのはパドヴァン(ユーグ・ケステル)。二人は仕事の帰りにあるドライブインでジョニー(ジェーン・パーキン)と出会う。ジョニーは最初はクラスキーが男かと思ったくらいボーイッシュな子だった。髪は短く胸はない、タンクトップにジーンズで確かに男っぽい。
クラスキーは彼女を気に入った。ジョニーも週末に近所の若者が集まるこの店でのパーティに誘う。
ジョニーとクラスキーは意気投合し、二人で出かけるようになる。パドヴァンは気に入らない。実は二人は一緒に住むゲイカップルだった。
ジョニーとクラスキーはホテルでセックスしてみた。しかしクラスキーはいざという時に勃たない。クラスキーはジョニーにアナルセックスをしてみた。彼女は痛さのあまり大声を出してしまう。周りから煙たがれ追い出される。
やがて二人は屋外でセックスをすることを覚えた。
ジョニーに嫉妬するパドウィンはついにジョニーを殺そうとする。


タイトルも監督も何も知らなかったのだが、チラシのデザインがよかったので鑑賞した。なんかBLっぽい映画みたいだったので。ツイッターなどで「BL映画ではないらしい」とは解ったが、何か不思議なイメージに引かれ鑑賞。
監督のセルジュ・ゲンズブールってどんな人か知らなかったが、映画と同じタイトルの曲で物議を醸したそうだ。私はそのことは知らなかった。

正直面白く観た。作り手の意図の通り解釈してるのかは不明だが。
ゲイの青年がボーイッシュな女の子を好きになるのはよくわかる。
一緒に食事に行ったときにアスパラガス(?)みたいなものを食べるのだが、それがフェラチオを連想させるのがエロい。

セックスもするが挿入が出来ず(やっぱり女性器では勃起しない)、アナルに入れてみる。彼女の方はとにかく悲鳴。
パンフレットの解説などを読むと放尿とか放屁とか中年女性のストリップとかとにかく悪趣味全開、みたいな書かれ方で、アナルセックスのその一つとされている。ああそうですが、ゲイにとってはアナルセックスは日常なので特別悪趣味とかは思わなかった。
それよりパーティの余興で素人のおばちゃんがステージでストリップするのは勘弁だなあ。

ジョニーも店の主人から「あんなオカマ野郎とはつきあうな」とまでいわれるがジョニーは意に返さない。
とにかく70年代ぐらいでは今よりずっとゲイに対する風当たりは強かった。ゲイ=キモイ、で唾棄すべきものだった。
パドヴァンがジョニーに嫉妬して嫌うのだが、相手を見つけるのが大変だもん、そりゃ取られたくないと必死になるよ。

一方クラスキーに「仕事終わったら着替えて出かけよう」といわれていたジョニーがついワンピースを着ていくとクラスキーはつい怒ってしまう。
この怒りをジョニーは理解しないが、俺はよく解るね。

どう話の決着をつけるかと思ったら、ジョニーがシャワーを浴びてるときにパドヴァンが窒息させようとビニール袋をかぶせる。あわや死ぬかと思ったところでクラスキーが助けてくれた。
「こいつ殴ってよ!」とジョニーが言ってもクラスキーはパドヴァンを殴れない。
「このオカマ野郎!」とついジョニーは行ってしまう。しかしそこでクラスキーの心は完全に離れた。
つい言いたくなるジョニーの気持ちも分かるし、これでおさらばするクラスキーの心も痛いほど解る。

なんか不思議な愛の映画だった。作り手の意図を完全に理解しているとは思わないが、それでもよかった。







HOKUSAI


日時 2021年6月13日12:00〜 
場所 TOHOシネマズ六本木ヒルズ・スクリーン3
監督 橋本 一


文化文政の江戸の町、1800年代の半ばでは歌舞伎、遊郭などの町人文化が花開いていた。歌麿(玉木宏)は女性画で人気を博していたが、それも版元の蔦屋重三郎(阿部寛)がいてのことだった。
蔦屋は勝川春朗(柳楽優弥)という絵師に興味を持つ。「うちで描かないか」と誘うものの、「俺は描きたいものし描かない。人に指図されたくない」という。しかし同時代の歌麿や写楽に触発される。
一人旅にでて海を見ていたときに無性に絵が描きたくなった。江戸に帰ってそのときのイメージで描いた波の絵を蔦屋に見せる春朗。
やっと描きたいものが見つかった春朗は「北斎」と名乗り、人気絵師になっていく。


葛飾北斎の生涯を映画化。北斎の青年期を柳楽優弥、老年期を田中民(サンズイに民)が演じる。
北斎は好きな絵師である。
紀伊国屋書店本店の店頭で何ヶ月に1回はその絵を販売している。版画だから今でも当時と同じような複製が可能なのだそうだ。
版画だから基本的に小さい(板の大きさもあるので)。今でいうならA3サイズぐらいかな。
1枚3万円ぐらいだったので買おうと思えば買えたが、カレンダーを買って有名な「神奈川沖裏波」をしばらく飾っていたこともあった。
そんな感じで北斎には興味があったので鑑賞した次第。柳楽優弥だし。

当時、こういった歌舞伎、浮世絵などの文化は幕府の弾圧を受けたいたとはあまり知らなかった。こういったのは今の文化庁の支援に対するいやがらせ、あいちトリエンナーレ展への抗議などを思わせる。
「言いたいことが言えるような世の中にしたい」と北斎も言うが、それは200年経っても実現されていない。

しかし絵の力とはすごいもので、実際にフランス絵画にも影響を与えたし、今でも北斎の絵は愛されている。「神奈川沖裏波」などは「ザ・日本」というぐらいの知名度だ。日本で一番知られてる美術、と言っていいかも知れない。

後半、自分の息子のような作家の柳停種彦(永山瑛太)の挿し絵を描くのだが、種彦は武士でありながら幕府批判のような物語を書いたことで、結局は殺される。
そこまでの時代への影響力があったのに、今では種彦のことは全く知られてない。
こっちも残酷な話だ。
絵画の方が寿命が長い。
映画では話に出てこなかったが、蔦屋で働いていた若者が後の滝沢馬琴だったようだ(パンフレットには書いてある)

果たして映画はどうだろうか?
映画自体がまだ120年ぐらいの芸術である。映画は数百年残るだろうか?映画を見終わってそんなことを気になった。









葵ちゃんはやらせてくれない


日時 2021年6月12日18:55〜 
場所 シネマート新宿スクリーン1
監督 いまおかしんじ


2019年、川下さん(森岡龍)が練炭自殺した。
2020年の川下さんの命日に川下さんの大学の映画研究部の後輩だった信吾(松嵜翔平)の元に川下さんがパジャマ姿でやってきた。大学時代の後輩の葵ちゃんとセックスがしたくて帰ってきたという。信吾と川下さんは大学時代にタイプスリップ。
葵ちゃんとは出来る寸前までいったが、葵ちゃんが怪我して鼻血を出したので結局やれず仕舞い。
2021年、またまた川下さんはやってきた。信吾は一応は映画監督をしていたが、なかなか食えない。
川下さんは今回も結局葵ちゃんと出来なかった。
2022年、今やホームレスになった信吾の元に川下さんはやってきた。今度も大学時代にタイムスリップした二人だが、今度は川にバーベキューに行って逃げ場をなくす。
果たして川下さんは思いを遂げることが出来るのか。


いまおかしんじ監督作品。本来は5月のGW開けに公開だったが、緊急事態宣言で大型映画館は休館しており、6月の公開になった次第。
だから元々5月に公開予定だった名古屋のシネマスコーレの方が先に狡獪になった。
撮影は昨年の1回目の緊急事態宣言開けの6月、去年の今頃だそうだ。夏の後半にポスプロをして秋には完成していたようだ。キングレコードのリリース計画で今の公開になったようだ・
ちなみにもう1本撮影が終わっている「虹色トリップ」は去年の4月の緊急事態宣言の直前に撮影されたそうだ。

いうまでもなく「川下さんは何度もやってくる」のリメイク的作品。
川下さんの自殺はいまおか監督の38歳ぐらいの頃のことだそうだから監督デビューしている。今回いまおかさんの役は今西信吾という役名で山嵜翔平が演じている。

今回、森岡龍さんが川下さん役。本日の舞台挨拶の話では緊急事態宣言中のコロナ太りに前の川下さんの佐藤宏さんが太っていたからなんとなくいいか、と思って撮影に行ったが、やはり衣装あわせの時に「太りすぎ!」といまおか監督に注意されたらしい。

映画自体は「ゾンビバンド」というゾンビがバンドを組むという話の映画を撮影中。映画中の信吾は彼女(佐倉絆)もいる。
ゾンビメイクも高校生の映画並のチープさで、わざとチープなのかも知れないが、すこし引くなあ。

結局いまおかさんの良くも悪くも「死者との関わり方」をテーマにしたゆるきコメディで、今回は「川下さん」の焼き直しだし、90分以上で無駄に長い気がするし、イマイチの出来だった。






淫靡な女たち イキたいとこでイク!


日時 2021年6月12日13:00〜 
場所 上野オークラ劇場
監督 山内大輔
製作 OP PICTURES


一流大学を卒業しエリートサラリーマンのユウキを夫に持つヤヨイは毎日毎日夫の叱責にイヤになっていた。靴下に穴があいていた、味噌汁がまずいなどまど容赦がない。当然セックスも一方的。
ある日ヤヨイは瞬間移動する技を身につける。移動した先はラブホテル。
そこではサラリーマンがデリヘルの子を呼んで追加料金を払って本番していた。女の子の靴を盗んで部屋を抜け出すヤヨイ。
不動産会社に勤める幹夫はあまりうまくない食堂に通っていた。目当ては食事ではなく主人(森羅万象)の娘のすみれ。実はさっきのデリヘル嬢だ。ヤヨイは幹夫に引っ越し先の内覧をさせてもらって、手頃な家を見つける。当座の金は町で男に声をかけ、ホテルに入って金だけもらって逃げ出した。
ヤヨイは時々怪しい男の部屋に移動する。その男はヤヨイの初恋の先生の藤森先生だった。藤森先生は作家を目指し、その後1冊だけ本を出したが今はデリヘルのドライバー。
幹夫はすみれに告白するが振られる。先輩に言われて気晴らしにデリヘルを呼ぶが、来たのはなんとすみれ。


最近は上野オークラも(たぶんコロナの閉館から営業再開したころから)新作は1ヶ月上映し、同時上映を変えていく方式。
だから新作2本プラス旧作が週替わり、という形らしい。
まあ「海底悲歌」の上映も作品本数を減らした分の穴埋めもあったのかな。

3本目だがバラバラに登場した人物が藤森先生を中心に(幹夫は実は藤森先生の子供。というと正しくないか。藤森先生が再婚したときの連れ子で、幹夫の実の母はその後別の男と心中した。だから藤森先生と幹夫は血はつながっていない)人間関係がつながっていく。

このあたりの人間関係の妙が楽しいのだが、それをヤヨイが「瞬間移動出きる」とう特殊能力でつないでいくのは強引すぎ。
この設定が私には乗れずに引いてしまった。
だから人間関係の妙はおもしろかったが、映画としては乗れなかったです。





海底悲歌(ハイテイエレジー)


日時 2021年6月12日11:40〜 
場所 上野オークラ劇場
監督 堂ノ本敬太
製作 大阪芸術大学卒業制作


温泉街で新人コンパニオンとして働く文乃。彼女の父(川瀬陽太)はそれほど歳ではないが認知症になっており、文乃を妻と思いこんで毎日のように犯していた。そんな日々に教え子だった木村と再会。木村はピアノが好きで演奏家になりたかったがかなわなかった。
いつものように文乃の父が文乃に乱暴しているとき、木村がたまたまやってきた。「誰だ、この男は。お前浮気していたのか!」と文乃に暴力を振るう。それを止めた木村だったが、父は頭をぶつけて死んでしまった。
「逃げよう」と木村は文乃の手を引き逃避行へ。
廃校で家出してきた少女と会い、港町では漁師に助けてもらった。
しかしその漁師に犯された。二人はまた逃げ出した。
ある廃墟となった倉庫で二人はお互いの体を確かめ合う。


大阪芸術大学の卒業制作。なんで大阪芸大の卒制が上野オークラで上映されているのか。ツイッターなどで聞いた情報をちょっと備忘録で書いておく。

堂ノ本敬太監督は今時の若い人には珍しくピンク映画が好きなんだそうで、卒業制作もそういうジャンルの作品を作った。
ピンク映画と言っても十分通用するカラミの多さだ。
(特に前半はコンパニオンとして温泉街の旅館に行くと、先輩コンパニオン(元教え子)はお客としているし、自分も客に犯される。
木村は実はコンパニオンの送迎ドライバーをしている。
父にも犯されるから、前半は特にカラミが多い。)

んで大阪芸大は卒業制作を近所のシネコンで上映会を開催するそうで、この映画もシネコンで上映されるはずだった。しかし「18禁のそういう映画はうちの劇場ではちょっと・・・」と難色を示され、すったもんだの末に上映中止に。ユーロスペースとかのミニシアターで上映されるのかな、または自主上映とかするのかな、と思っていたらなんと上野オークラで上映が決定。
この間の事情はよくわからない。大森一樹が学科長(だったかな。とにかく「制作」としてクレジットされている)なので機会があったら聞いてみよう。

堂ノ本監督にしたらピンク映画が好きなら自分の作品が上野オークラで上映されたら万々歳ではないか?会う機会があったら聞いてみたい。

映画自体はしっかりした作り。
性を描きながら運命のようにもてあそばれるような主人公の数奇な行動は情感たっぷりである。
「女は男に頼って生きていけばいんだよ!」と言われ続けた主人公だが、最後は木村を捨て一人で出て行く。
いいラストである。

撮影もしっかりしているし、木村と文乃が車に乗ってるシーンなどスクリーンプロセスかCG合成ではないか?
また最後の廃墟のシーンもロケセットだと思うが作り込みがしっかりしてる。
ラストカットはトンネルの中で、トンネルの出た先は雨が降ってるのだが、その外に主人公が歩いていくカット。
あの雨は作った雨だったのだろうか?
下手なピンク映画よりよっぽど作りはしっかりしている。

堂ノ本敬太監督の今後に注目していきたい。







花と蛇 〜飼育篇〜


日時 2021年6月12日10:20〜 
場所 上野オークラ劇場
監督 西村昭五郎
製作 にっかつ


遠山商事の社長の若き妻、静子は夫の財力で平和に暮らしていた。遠山は最近取引業者の吉田(港雄一)を取引停止にし、恨まれていたが気にしていない。
遠山は顧問弁護士の杉本が結婚前の静子とつきあっているのを知っていたが、自分の妻にした。杉本は大学の学費を出してもらった恩があり逆らえなかったのだ。静子は自宅で書道教室を開いており、ミツコは一番の弟子だった。お手伝いのチエは自分と同い年の静子に厳しくされ、陰では恨んでいた。ある日、静子が出かけたとき、吉田たちに誘拐された。実はチエが手引きしたのだ。チエは遠山には「最近奥様には若い男から電話がかかってました」と言い、静子は若い男と逃げたと遠山に思わせた。
遠山の代理で吉田を訪ねる杉本。吉田は「杉本先生に見せたいものがある」と言い、そこに連れて行く。そこには縛られた静子がいた。
杉本は最初は吉田を警察に通報するとか言っていたが、遠山に恨みを持つ杉本は吉田に協力することになる。そしてチエも遠山の仲間と知る。


久しぶりの上野オークラ劇場。「海底悲歌」を観に来て同時上映。
にっかつロマンポルノ作品。
遠山という奴は妻とのセックスの最中にチエにベッドルームに酒を盛ってこさせ、静子にハメながら「水割りを作っていけ」と命じる極悪な男。
また静子もチエが書道の教室の最中にうっかり墨汁の瓶を倒してしまいミツコの作品にかけてしまったとき「書道の時はそそうのないようにって言ってるでしょう!」ときつい。

そんな夫婦だからこれはもうお仕置きが必要である。
静子は吉田たち一味によって縛られつるされ、おしっこをさせられ、杉本に飲ませる。
静子は杉本に「やりたいんなら手錠を外しなさいよ」と挑発され、つい外すがその隙に静子は逃げ出す。そして吉田の事務所の電話を使って自宅に電話をかけるがミツコが出て夫には伝わらない。
ミツコは「チエさんも来て」と一緒に救出に行くつもりがチエによって逆に囚われの身に。

そしてチエもお仕置きに加わり、「書道の先生なんだから」と女性器に筆を持たせて書道をさせるという仕打ち。
いや〜前半の静子たちの仕打ちがあるから静子が攻められてもこっちは逆に喜んでしまう。
なるほどねえ、SMものはこういう語り方もあるんだ。

最後には吉田が「奥さんに関しての情報がある」と遠山を呼び出す。
行ってみると大勢の客が。「裏ビデオのお客さんです」といい、静子とミツコは見せ物にされる。
吉田は「奥さんの裏ビデオを買ってくれませんか?1万本で2億円です」という。

攻めの倉庫のシーンは暗がりだが照明がしっかりしてるので逆に見応えがある。
今日の3本の中では一番好みの映画だった。






レスキュー


日時 2021年6月9日18:25〜 
場所 新宿ピカデリー・シアター10
監督 ダンテ・ラム


ガオ・チエン(エディ・ボン)隊長率いる海難救助隊のチームはチームワークや隊長の優れた能力で普通ならできないような救助もやってきた。
今回も海底油田のプラットフォームからの救助も成功させた。しかしチームのヘリコプターの機長はその救助をきっかけに「恐怖を感じた」という理由で退職。新任の女性機長ユーリン(シン・ジーレイ)が着任した。
ユーリンは成功してきたといて無茶な行動が多いチエンに対し「隊員が死んでは元も子もない」と苦言を言う。
崖から落ちたタンクローリーの運転手を濁流から救助。これは成功した。
しかしその次の旅客機の海面不時着事故ではついに部下を一人亡くしてしまう。
チエンは一度は現場を離れるが、天然ガスタンカーの事故を受け、息子にも「パパは行かないの?」と言われ救助に向かう。
果たして救助できるのか?


中国映画。緊急事態宣言で映画館が閉館中にひっそりと公開。東京以外では5月下旬から公開していたようだが、東京での公開は6月1日から。
宣伝が全くないので私も見逃しそうだったが、新宿ピカデリーの前を通ったときポスターを見かけて知った次第。

いや頭ではわかっていたけどやっぱり中国は先進国だ。大都会で再セインテクノロジーに囲まれている。まあ田舎と都市の格差はきっとあるんだろうけど、舞台となる沿岸部の都市は東京にも負けない大都会。

危機また危機。主人公はヘリコプター単位で1チームを構成。隊長と貴重がいるけど、隊長の方が一応格上になるようだ。
最初は海底油田の採掘現場火災で次は訓練中のヘリの不時着。自信出がけから落ちたトラックの運転手の救助。飛行機の不時着。ここはほんとに映画自体のクライマックスかと思ったらもう1回、今度はタンカーの事故。
テンポは早く、ドラマ部分は少ない。
少なくとも「海猿」のように延々と恋愛に走ることはない。

新任の女性機長が隊長に批判的なので救助中に対立のドラマがあるかと思ったらそういうのはない。
逆に隊長は母親は若くして癌で亡くなり息子と二人暮らし。その息子が機長を気に入り「ママになって」という。
その上息子が難病になってその手術の日に最後の大事故。

まあてんこ盛りである。
日本映画の用にグダグダと泣かせに走らないのがいい。
CGとかはハリウッドの力を借りているようだが、制作費は120億円ということで、中国映画はほんとに侮れなくなってきた。
それを改めて実感した。







白い粉の恐怖


日時 2021年6月7日 
場所 東映チャンネル録画
監督 村山新治
製作 昭和35年(1960年)


盛り場では麻薬取締官たちが張り込んでいた。今日も通報者・金本(山茶花究)によって売人の一人を逮捕したが、売人を逮捕しても埒があかないことは彼らも解っていた。
捜査官の須川(三国連太郎)はゆり子(中原ひとみ)という中毒患者と知り合った。ゆり子や金山を使って井本(曽根晴美)という男を尾行しそのアジトを探ろうとしたがばれてしまった。
ゆり子は須川の紹介で病院に入った。数週間後、もう中毒から抜け出したとゆり子は帰ってきた。ゆり子は須川に病院で他の患者から聞いた話だとして、新宿のパチンコ店が売買の拠点になっていると教える。
早速探りを入れる須川たち。そのパチンコ店の店長は都議会議員の息子で昔麻薬患者になった男、田口だった。
須川たちは「大和製薬の社員」を名乗り「裏金を作るためにクスリが欲しい」と田口に接近した。田口は社長の佐伯を紹介。
疑り深かった佐伯だが、須川たちと取引。その場で現行犯で逮捕。
ゆり子は報復をおそれて須川が自分の家にかくまったが。


麻薬撲滅月間にちなんでということで東映チャンネルでの放送。
監督は「警視庁物語」を数本監督した村山新治。シネスコモノクロ。
「警視庁物語」のような集団劇かと思っていたが、今回は三国連太郎を主演に迎えての厚生省麻薬取締官。赤木圭一郎の「男の怒りをぶちまけろ」(だったか?)や「マタンゴ」もそうだけど、このころは麻薬を素材にした映画が多かったのかな。

今回登場する佐伯という麻薬の製造人も「戦争中は特務機関にいて闇資金を作った」と説明されており、やはり時代がそういうことだっただろう。

話のクライマックスは大和製薬社員を名乗って佐伯に近づく。佐伯も疑って大和製薬に電話したり、突然会社に訪ねたりして大和製薬の社員であることを確認する。三国たちは事前に会社に協力してもらっているのでクリア。

そしてこの映画、中原ひとみ演じる麻薬中毒患者。普段は清楚な役が多い中原だが、今回は汚れ役。最後まで「もうやらない」と言いつつ麻薬から抜け出せない。
結局、麻薬から抜け出せずに三国の家に行っても続ける。靴下に隠してあったクスリを三国の妻が洗ってしまったことで激怒。三国のカメラを持ち出し新宿へ。

また情報屋だった金田も佐伯の工場で働いていたりして、なかなか抜け出せない狂気を描く。
ラストは麻薬を大量に打たれて死んだ中原の火葬。
骨がぼろぼろになってしまって、通常骨をハシでもって骨壺に入れるが、運んでいる途中でバラバラになってしまう。
ここでナレーション(加藤嘉だと思う)で「麻薬患者は骨までぼろぼろになる」と説明。

田口は逃亡したまま、中原を殺した犯人は捕まらず、後味の悪いラスト。
まだまだ麻薬撲滅の道は遠いと思わせるラストでよかった。






サラリーマン無鉄砲一家


日時 2021年6月6日10:30〜 
場所 ラピュタ阿佐ヶ谷
監督 筧 正典
製作 昭和38年(1963年)


竜村雲太郎(加東大介)は明治時代にサラリーマンになって今は社長になった立身出世の人。今は伊東の別荘に妻と住んでいるが、時々東京にやってくる。息子の雷太(上原謙)は社長だが押しが弱い。その長女の文子(沢村貞子)は小川(藤木悠)の妻、長男・鳩彦(太刀川寛)は雷太に結婚を勧められている。相手は大企業の社長・荒巻(松村達雄)の娘で和子(田村奈巳)。和子は鳩彦を気に入っているが、鳩彦はレストランで働く千恵(白川由美)と結婚を考えている。次男の鯛二(当銀長太郎)は現在恋人募集中。末娘のさくら(浜美枝)はまだ18だが人気歌手の・糸永一平(児玉清)と結婚したい。
ある日小川が接待で使ったバーの新人ホステス鉄子(若林映子)が実は雲太郎の娘だとわかる。
小川は酒の飲み過ぎでついに入院。入院費は会社が出すと思われたが、実は単なる貸しただけ。文子は浪費癖があり、この間もミンクのコートを買ってしまいお金がない。鳩彦は和子と結婚したくない。
さくらは家族の弱点を握り、雲太郎と交渉して金を出してもらうことを思いつき、家族それぞれから「私が困ったら助けてね」と約束を取り付ける。
さくらは雲太郎に交渉し、父の会社や文子のこともお金を出してくれることになった。


それほど有名な映画だとは思わないが、上映の機会が少ないためか、ラピュタ阿佐ヶ谷モーニングの浜美枝特集の3週目この映画、初日の今日は満席である。

祖父の雲太郎は正直目の前にいたらうっとうしいと思うようなおじいちゃん。自分の成功体験をすべての基準にして「お前はだめなんだ!」という男。

浜美枝の末娘はうまく立ち回って自分の願いを叶える。
今回、若手女優陣が豪華で、浜美枝のほかに白川由美、田村奈巳、若林映子という四大女優が共演。
バーのマダム役の女優、どこかで見た顔だと思ったら「その場所に女ありて」で2分で金貸しをする社員役の方(柳川慶子かな)めがねをかけていなかったのでちょっと解らなかった。

また若手ではいつもは台詞が2つぐらいの当銀長太郎がメインメンバー。
ひょっとしたら久保明あたりがやる予定だったのを、何かの都合で代役だったのかも知れない。
あと児玉清が売れっこ歌手役。歌は吹き替えだが、児玉さんもいい役をやっていたのだなあ。

児玉清は「これからアメリカに行って将来は南米で事業をしたい」というチャレンジ精神が加東大介に気に入られる。
そしてラストはパンナムでアメリカに向かう浜美枝と児玉清のシーン。
加東大介のおじいちゃんが「これでうちも安泰だ」などというカットではなく、ちょっと意外だった。






胸が鳴るのは君のせい


日時 2021年6月5日19:00〜 
場所 Tジョイ横浜・シアター5
監督 高橋洋人


有馬隼人(浮所飛貴)が篠原つかさ(白石聖)の高校に転校してきたのは1年の終わりだった。
有馬はなんとなくつかさに話しかけてくる。それが1年続き、周りの友達に「有馬は絶対につかさが好きだよ」と言われ、2年の終わりに告白するつかさ。しかし「俺つかさのことそういう風に思ったことない」とあっさり振られた。
3年も同じクラスになった有馬と隼人。3年から同じクラスになった長谷部(板垣瑞生)はやたらとつかさに絡んでくる。長谷部のいとこの麻由が実は有馬の前の学校での元カノだそうだ。
林間学校で、他校と同じになりそこに麻由もいた。
麻由と有馬の仲が気になる。


最近なかった(というほどでもないが)少女コミックの実写映画化。主演はなんといってもジャニーズの次世代グループ「美 少年」の浮所飛貴。
(「美少年」の「美」の後に半角スペースを入れて「美」を赤にするのが正式表記。半角スペースとかめんどくさい)
「美 少年」は最年少の金指一世がお気に入りで、テレビ朝日の土曜の夕方の「裸の少年」とか見ている。他のメンバーは未だに覚えられないのだが(というか興味がわかない)、その中では浮所はまあ覚えた方だ。

映画の内容からしたらつかさが主人公なのだが、クレジットでは浮所がトップである。映画初出演にして主演とは恐れ入る。おそらく「美 少年」では浮所がメイン扱いになるのだろう。
そして今回の映画を見て浮所にはその資格があると思った。

正直、浮所はイケメン度からするとそれほどでもない。あのクラスのイケメンならクラスに一人ぐらいはいそうなレベル。
しかし演技力も合わさってそれが逆にリアルな感じである。つかさを演じる白石も美少女すぎず、こちらもリアル。

長谷部といとこの麻由の方がよっぽど浮き世離れしたマンガチックなキャラだ。麻由はもうなんて言うかメンヘラレベル。長谷部のチャラさも病気レベル(私に言わせれば)。

話はいきなりフられる、という展開から始まりひたすら片想い。ライバルというか元カノとか逆にちょっかい出してくる男、合宿、海に行く、夏祭り、文化祭と定番のアイテムを挟みつつ進展していく。
こう言った話だと中盤で結ばれ、後半は元カノなどのライバル登場となることが多い気がするが、今回は最初から。そしてラストに結ばれるというハッピーエンドの展開。

いいねえ。ずっと片想いとかいいですよ、片想い経験者としては。
そして長谷部にキスされて、それは彼女の意志ではなくされたのにそれを悔いるピュアさ。
ピンク映画ではこういう「ピュアさ」というのが描きにくいんですよね。

また浮所も海のシーンで上裸になってスイカ割り。別にここシャツ着たままでもいいと思うのだが、サービスカットか。

少女コミックものでは面白い方だった。浮所飛貴、金指についでファンになりました。今後の活躍に期待。

正直、今日私生活で金の話でいろいろあって落ち込んでいたのだが、見てる間は忘れられた。よかった。










炎の男たち


日時 2021年6月5日11:05〜 
場所 光音座1
監督 浜野佐知
製作 ENK


大病院の医師・後藤(池島ゆたか)は若い入院患者に手を付け欲望の赴くままにしていた。南部(津川たかし)は優しく口で愛撫し、しかし志乃原佑介は「お前は治っているのにだらだらしている怠け者だ!」と責めて楽しんでいた。
そこへ一幡(甲斐太郎)という患者が入院してきた。一幡が南部をマッサージしている姿を観て動揺する後藤。やがて一幡が佑介の部屋にも出入りするようになる。南部のベッドのそばに猿ぐつわのおもちゃがおいてあるのを見てますます動揺する後藤。「お前は一幡とこれを使って遊んでるのか!」と激しく南部を責め立てる後藤。
それはついに佑介にも向けられ、病院の外の森で激しく責める後藤。アナルに木の枝を突っ込み、祐介は出血さえする。
佑介を優しく介抱する一幡。一幡は佑介と南部をつれて後藤に向かう。


最近はすでに観ている映画が多くなった光音座だが、これは未見。(同時上映は先日も観た「男心、ゆれる愛」。一応観たけど頭に入らない。でも最後の方でクラゲのカットと主人公がオーバーラップされるカットがあり、クラゲが主人公の心象風景なのかな、と解釈できた)

旦々舎作品なので本作の脚本は山崎邦紀。しかし監督が浜野となると映画はぐっと普通になる。
カラミは多く、カラミに次ぐカラミである。

しかしカラミそのものに意味があり、一幡の登場によって後藤の心は乱され、最初は楽しんでいたのが、やがては心に余裕のない必死のセックスとなり、一幡が後藤を謝罪させることにより、新しい関係で後藤が若者二人に責められて楽しむという流れになった。

カラミもただカラミのためのカラミではなく、主人公の心象を反映させたカラミとなっており、感心した。
同じ山崎脚本でも監督が浜野だとワンランクもツーランクも映画の出来が上である。
今回ちょっとノヴェチェントに「アルプススタンド」を見に行く前に観たから1回しか観れなかった。
機会があればもう一度鑑賞したいなと思う。

ゲイ映画では出来はいい方に入る。

(今日、実はぎりぎりに入ったため場内に入ったときはもう始まっていた。2回目の冒頭だけ観たのだが、見逃したのは30秒ほど、病院の全景カットなどの説明カットだったので、大きな見逃しはなかった。よかった。気をつけよう)






グリーンランド ―地球最後の2日間―


日時 2021年6月4日18:50〜 
場所 TOHOシネマズ新宿・スクリーン8
監督 リック・ローマン・ウォー


未知の彗星群クラークが地球に接近してきた。クラークは無数の彗星が集まってできている。そのいくつかが地球に落ちてくるという。当初は大気圏で燃え尽きてしまうので被害はないと報道されていた。しかし地球に激突した彗星の一つは都市を一つ消滅させた。
ジョン・ギャリティ(ジェラルド・バトラー)は近所の人々とホームパーティを楽しもうとしたとき、スマホから「大統領アラート」を受け取った。一部の人間をアメリカ軍の持つシェルターに避難させようというのだ。選ばれたのはジョンとジョンの妻アリソン、息子のネイサンだ。
近所の人々を振りきって指定された空港にたどり着く。しかし息子が糖尿病の持病があるので搭乗を拒否される。混乱の中、ジョンは妻と子供と別れてしまう。車に戻るとアリソンの父の家で待つというメモがあった。
それぞれが合流すべく、アリソンの実家に向かう。


6月1日から東京都内の大手シネコンの上映が再開された。6月1日には「いのちの停車場」の舞台挨拶が再度行われたようで、報道では吉永小百合が「スクリーンから飛沫は飛びません」と言ったという。これは5月から演劇などのイベントは営業を条件付きで再開したが、映画館は東京都(国ではない)の要請で大型映画館は「人流を避けるため」というだけの理由で営業自粛を求められていたことへの皮肉。
5月25日頃からは「HOKUSAI」の上映劇場に「6/1〜TOHOシネマズ」の記載があったから、正式に営業再開が決まったのは5月末だけど、25日ぐらいからはもう再開で動いていたのだろう。
金曜日の夜に仕事を終わりに映画を見れるのは幸せだ。
(ちなみに本日「ゴジラVSコング」の封切りが7月2日と発表された)


見たい映画が一挙に封切られてこちらは全部観られない可能性さえあるのだが、今日は本日封切りの彗星衝突映画「グリーンランド」だ。

う〜ん、これねえ。私ならこうは作らないな。
たぶん「2012」の頃からだと思うが、こういったディザスター映画では大統領とか科学者とかの国の中枢を描くのではなく、市井の市民を主人公にするようになった。
映画だから主人公はすぐに死んでは困る。少なくとも映画の終わる5分くらい前までは生き残らねばならない。
しかしすんなり生き残っては困る。

というわけでうまくいかない要素を描かねばならないのだが、この映画の場合、息子の糖尿病という持病。
インスリンが常に必要なのだが、子供がリュックを開けたときにうっかり薬を車に落としてしまう。そのためにジョンは車に戻る、という展開になる。アホである。そんなに大事なら車を離れるときに再度確認してほしい。
バッグを暴徒に取られるとかの不可抗力ならわかるのだが。

次にジョンもアリソンもネイサンも飛行機の搭乗許可証になるリストバンドをつけたまま。そんなものつけてたら狙われるだろう。
バカである。
実際、ジョンは乗ったトラックで周りの人間に襲われるし、アリソンも助けてくれたいい人に逆に襲われる事態になる。

そしてアリソンは息子と再開するのだが、その時の軍人がいい人過ぎ。
その前に病気で搭乗できないと言われたとき「あなた自分の家族ならそんなこと言える?」「私の家族も選ばれていない。軍人の99%は助からない。志願やっている」と答えられる。自分のことしか考えてないのは主人公の方である。

ジョンの方もリストバンドの奪い合いから人を殺してしまう。
これがしばらくは罪悪感にさいなまれたようだが、妻と子供と再会するときれいさっぱり忘れている。
(妻の父親役がどっかで見た人だと思ったら「レッドオクトバーを追え!」のスコット・グレンだった)

で、カナダからグリーンランド行きの飛行機がでているという噂を信じてカナダに向かう。
そして最後には離陸しようとする飛行機の前に車を停めて強引に「乗せろ!」という。

おいおい最後はゴネ得かよ!
グリーンランドに着いたのに乗せてくれた「いい人」のパイロットは亡くなる。
結局一家は彗星の衝突直前に逃げ切るのだが、最後には誰でもシェルターに入れてるじゃん。
なにそれ?
それに地元の人とか来なかったのだろうか?

なんだかんだ言っても最後はゴネ得に「やったもん勝ち」という倫理観のない映画で、私は好きになれない。