2021年9月

   
裸体(はだか)の街 総理の夫
にじいろトリップ 
〜少女は虹を渡る〜
真夜中の乙女たち 恐怖のエアポート 夜空の大空港
MINAMATA
−ミナマタ−
隠し砦の三悪人
(4Kデジタルリマスター版)
亀裂 悪魔の往く町
シェルブールの雨傘 秘密クラブ 人妻専科 ぞっこんヒールズ
ぬらりと解決!
すけべ繁忙期
モーレツたらし込み
劇場版 ほんとうにあった怖い話 事故物件芸人3 水戸黄門漫遊記
怪力類人猿
SWANEE(スワニー)
野毛探偵事務所
水戸黄門漫遊記
幽霊城の佝僂(せむし)男
かぐや姫 白頭山大噴火 鳩の撃退法 遊星王子2021

裸体(はだか)の街


日時 2021年9月26日21:00〜 
場所 ラピュタ阿佐ヶ谷
監督 木俣堯喬
製作 昭和44年(1969年)


タミ子(芦川絵里)はおでんやの娘だったが、継母と折り合いが悪く父親の借金のために売春婦として売られてしまう。家に帰ったが「もうお金はもらってある」といられない。
途方に暮れたが、電車で幼なじみの次郎(黒木護)と再会。次郎も今自動車修理工場を辞めてきたという。
タミ子はあるバーに就職した。先輩のホステスの家に泊めてもらうがそこには旦那(野上正義)がいた。「いい仕事あるよ」と言ってくるがタミ子はきっと裸の仕事だとわかっている。
ある日次郎は居酒屋で喧嘩になり、相手に腹を刺された。相手は逃げて見つからない。とりあえず3万円ほど治療費が必要と聞き、例の仕事を引き受ける。それはブルーフィルムの撮影だった。しかも肩に入れ墨までさせられた。
タミ子は先輩ホステス夫婦とはそれで縁を切ろうとしたが、相手はまた撮影を要求してくる。タミ子は彼らのアパートに行き、写真を破きネガを踏みつける。その部屋を逃げてきたが初めての店の客に再会。
次郎の再就職のためには2万円が必要だった。その客に連絡を取り再び会う。連れて行かれた先は白黒ショーをアベックで鑑賞し、やがてはもつれ込むという催しだった。タミ子はなんとか金を作った。
次郎の仕事先で誰かに何かを吹き込まれる。
その晩、次郎はタミ子を「淫売!誰とでも寝る女だ!」とののしる。「ほかにどうすればよかったのか」タミ子は駈けだした。
そしてダンプと接触してしまうが。


ラピュタ阿佐ヶ谷・プロダクション鷹特集2作品目。
ストーリー紹介に意外と字数を要したな。
要するに不幸な女性があがいてもあがいても抜け出せない物語。

野上正義たちのところから逃げ出すときに入れ墨を消すためにストーブに肩をあて、やけどして入れ墨をわからなくさせようとする。
しかしその後の白黒ショー見学&布団コースでは相手もやけどの痕を気にしないし画面にも映らない。でもこちらも気にしてはいけない。

ラストで信頼していた次郎から汚い言葉でののしられる。ひどいぞ次郎!
元はといえばお前がつまらん喧嘩したからだろうが!彼女だってやりたくてやったんじゃない!お前の彼女に対する気持ちはそんなものか!と怒ってやりたい。

その後道に飛び出すダンプと接触。てっきりここで死ぬのかと思ったらタミ子は生きている。無事。
本来は死んで終わらせる予定が「やっぱりかわいそう!」ということで生き残る展開になったのではないかと思えてくる。

ラストは次郎とタミ子が夜明けの街を歩くカットなのだがここがカラー。
いや別にカラミないんだからカラーじゃなくてもいいでしょ?

あと作家の田中小実昌が特別友情出演。
冒頭のタミ子の客をつれてくる呼び込みと、後半の白黒ショーの相手の男役。だからしっかりカラミも演じている。
16mm短縮版と表記されてるからオリジナルより抜けてると思う。
(今回の上映時間は55分)
次郎とタミ子が出会って「映画でも観ようよ」と言っていて次のカットではバーで働いてるから、ここが抜けてる可能性が高い。








総理の夫


日時 2021年9月26日14:20〜 
場所 グランドシネマサンシャイン・シアター9
監督 河合勇人


相馬日和(田中圭)は野鳥研究家。妻・凛子(中谷美紀)は野党の国会議員。野鳥観察のため10日間ろくに電波も通じないところにいて、羽田に帰ってきたらマスコミに追いかけられ大騒ぎ。凛子が日本初の女性総理大臣になったのだ。
凛子は野党・直進党の党首だったが、長年与党だった党が割れ、新しくできた民進党党首・原九郎(岸辺一徳)の後押しで総理になったのだ。
政権交代し、凛子の人気も安定の支持率は65%と安定。
そこへ日和の勤める野鳥研究所の女性所員・伊藤の罠にはまり、まるで不倫をしてるかのような写真を撮られてしまう。それを日和の元に持ち込んだのは原だった。1千万円払えばスキャンダルはもみ消せるという。
日和は一旦は払う決意をするが、伊藤が男から金を受け取っているのを見つけ、男を追いつめる。凛子もやってきて今回のスキャンダルねつ造を仕組んだのは原だと聞かされる。
凛子は福祉を充実させる法案とともに消費税増税を考えていたが、原は消費税増税に反対していた。
ついに凛子は衆議院を解散。しかし選挙中に凛子の妊娠が発覚する。
直進党は議席をのばした。しかし妊娠中の体で総理が務まるかという問題が起こる。


この映画のことを知ったとき「『総理の夫』ってことはゲイの話?」と思ってしまった。完全に「総理大臣=男性」の思いこみである。反省せねばなるまい。

主役の総理の夫は田中圭。こういう3枚目的な役柄はやっぱりうまい。「おっさんずラブ」もよかったし、こういうコメディ的な役が似合う。テレビの「ナイトドクター」でベテラン医師を演じていたが、どうも似合わない。

山本薩夫のようなハードな政治ドラマを期待するとどうにも軽い。日和が後輩の研究員から誘惑されるシーンなど観てるこっちは写真を撮られることはわかるから「いつまで気づかないんだ!」である。
それに彼女もこの件が発覚した後もよくそのまま勤め続けられるな、と思う。そりゃ凛子と二人で話して心を入れ替えたんだろうけど、やはり居づらくないかなあ。
あとスキャンダル写真を撮った記者も最後には日和や凛子の応援者になっている。その辺なんだかなあ。

そもそも日和が一般人ではない。相馬財閥の次男坊で大好きな野鳥の研究をさせてもらってるという世間知らずの設定だ。
浮き世離れしすぎてるよ。

あと消費税増税して福祉を充実させるってそういう主張はやめましょうよ。
それは今までの自民党政権が言ってきたけど、ぜんぜん福祉充実しないじゃん。
消費税減税、法人税増税、福祉充実って言わないと新政権らしくない。

そういう点はいくらでも気になるし、音楽の多様、セットの派手さなどテレビドラマのような演出が気になる。むしろテレビドラマとしてドラマ化してもいいのではないか。

そうは言ってもラストで凛子は総理辞任を決意し、記者会見の席で「またやり直せばいい。そういう社会を作ろう」という主張には共感した。
テレビドラマらしい軽さが気になるが、それを今の時代求めるのは無い物ねだりかも知れない。

最後に官房長官役の嶋田久作がよかった。








にじいろトリップ 〜少女は虹を渡る〜


日時 2021年9月25日18:30〜 
場所 新宿K's cinema
監督 いまおかしんじ
製作 アイドル文化振興会


小学5年生の晴花(櫻井佑音)は両親と富士山の麓のキャンプ場にやってきた。バーベキューをしてバンガローで一晩を過ごす計画。しかし両親(小林竜樹、荻野夕里)は離婚寸前。母親はシナリオライターで「打ち合わせと称して男と会っている」というのが父親の言い分。今はすでに母親は別居していて晴花は父親と住んでいる。晴花はすでに「キスのうまい石田君」というボーイフレンドがいるらしいのだが、父親が聞いても答えない。
翌朝、一人で散歩に行き、近くの滝を見に行く。一人の地元の少年が現れる。
両親は晴花がいなくなったと大騒ぎ。
地元のハンター(佐藤宏)に発見され、事なきを得た。
結局両親は仲直りすることもなく、晴花と父親は車で帰り、母親は電車で帰っていった。


いまおかしんじ監督の39分の中編映画。
「真夜中の乙女たち」と同日公開で初日舞台挨拶もはしごである。
製作の「アイドル文化振興会」というのはある女優のファンの方がいて本作の脚本の宍戸さんに映画の製作を持ちかけ、紆余曲折あって(最初は別の女優、別のシナリオで計画していた)出来たのがこの「にじいろトリップ」。

アイドル系のチャイルドアイドル(という言い方は正しいのか)を主演にした映画だから(出資者が少女アイドル好きだから)「真夜中の乙女たち」のように(こういってはなんだが)「イタイ」アイドル映画になると想像していた。しかもミュージカル!
これはいったいどうなることか。

と思ってマイナス気分で見始めたので、とにかく驚いた。
主演の櫻井さん、めちゃくちゃ歌がうまいのである。そりゃもっとうまい人はいくらでもいると思うが、想像していたより数段うまい。
これならミュージカルも成立するし、彼女には歌を歌わせなければ映画を作る意味がない。

いきなり歌い出すのが気になる、という意見もあるだろうけど、もうこれはいまおか版「シェルブールの雨傘」ですよ。
「シェルブールの雨傘」を先日観ておいてよかった。あれがあったから今回もより楽しめた。

話の方はほんの一晩の話。親同士が喧嘩して子供はそれがイヤになって一人で出かける。不思議な少年に会う。遭難しかける。
結局はなにも解決しない。
でも何か心に残った。
うまい言えないけど。

出演は他にはバンガローの管理人に守屋文雄、西山真来、地元のハンターに佐藤宏。佐藤さんも一曲歌う。
あとやっぱり風景大切。滝をドローンで捕らえたカットとか、朝焼けの富士山のカットとかやっぱりきれいですからねえ。

予想以上に面白かったので得した気分。よかった。













真夜中の乙女たち


日時 2021年9月25日12:30〜 
場所 下北沢トリウッド
監督 いまおかしんじ


3人組のアイドルユニット「ハルめぐ」のメンバー遙、めぐみ、京子はイベントのためあるパチンコ店にやってきた。時間になってもイベントが始まらない。そのとき、店長が「町中ゾンビに囲まれました!なにもできません」と言ってきた。
店長ほか従業員の萌とエリ、お客さんの綾香、祥子、ルミ。合計9人で助けが来るまで待たねばならない。
ゾンビがやってきたが、店長の機転で十字架を見せて撃退できた。店長は一人で様子を見に行くと出て行った。
残された8人は控え室に集まり、それぞれの自分の暴露大会を始める。
ゾンビは多少やってきたが、塩とにんにくで何とか撃退。
朝になり、危機は去ったようだ。彼女たちはそれぞれ帰って行く。


いまおかしんじの30分の短編。
SIRという(SRIではない)サンケイスポーツプロデュースのアイドルユニット主演の映画。話によると製作費は50万円の枠で作られたそうだ。
パチンコアイドルなので、パチンコ屋が舞台。営業時間外のパチンコ店なら借りられるということで2日間で撮影されたらしい。

言っちゃなんだけど、正直地下アイドル的なメンバーなので大してかわいくない。
さらに芝居も下手。素人同様。マイナーな地下アイドルならではである。

映画全体はいまおか監督らしい緩い笑いにあふれている。
店長が様子を見に行ってくる、といって出て行く時の服装がかまれないために段ボールを巻き付けるのはいいとして、頭にはヘルメットではなく、パチンコの玉を入れる箱をかぶっている。

そして塩が利くと聞いて、食塩ではなく、塩ラーメンの5袋パックや、塩せんべいのパックをゾンビに見せて撃退させるあたりが「いまおか節」だと思う。

30分の映画だし、SIRのプロモーション映画なのでそれほど多くは期待しないでみれば楽しめる作品ですね。








恐怖のエアポート


日時 2021年9月24日 
場所 TSUTAYA宅配レンタルDVD
監督 バーナード・L・コワルスキー
製作 1971年(昭和46年)


ミネアポリス発シアトル行きエリスノーザン航空714便は離陸した。この機は深夜に飛行し、朝の5時にシアトルに着く。機内ではラムかチキンの機内食が配られる。
ある女性客が苦しみだした。客室乗務員は飛行機酔いだと思い、薬を出したが、その様子を見た医師のベアード(ロディ・マクドウォール)は食中毒ではないかと疑う。やがて次々と乗客が不調を訴える。全員チキンを食べた者だ。やがて副操縦士も倒れた。
「自分もチキンを食べた」と機長は絶望する。やがて機長も苦しみだし、とても操縦は無理だ。
ベアードは飛行機を操縦出来る者はいないかと機内放送するが、反応はない。しかし隣の席の青年、スペンサー(ダグ・マクルーア)が飛行経験があるようだ。いやがるスペンサーを説得、操縦桿を握らせる。
しかしスペンサーはベトナムでヘリの操縦をしていただけで飛行機の経験はない。
シアトルでは退職したこの機のベテランパイロットを待機させる。
果たして無事着陸できるか?


「夜空の大空港」をTwitterで知ってアマゾンで検索したときにお勧め作品として表示されたのがこれ。ツタヤレンタルで検索したらあったので、「夜空の大空港」と一緒に借りてみた。
本作はテレビムービーなので73分と短い。たぶん90分枠での放送だったのだろう。
パラマウント製作。(「夜空の大空港」はユニバーサル製作だった)

離陸までのドラマはなくさっさと離陸。上映時間が短いからもたもたしてられない。
この飛行機、ジェット機ではなく4発のプロペラ機だ。
「この時代に?」と思ったが、運行予定だったジェット機が故障のため急遽このT400というプロペラ機になったという設定である。

前半はベアード医師が乗客の手当をし、一人また一人と食中毒を起こしていく。副操縦士が倒れ、「30分遅れで私も食べた」と機長がいう。
体調がいいうちに着陸したいが、近くに空港はない。
やがて機長も倒れる!という設定。

飛行経験者はいたが、ヘリのパイロットで飛行機の経験はない。
さてどうなる!
って感じだが、シアトルからの誘導を持って着陸だが、手順が細かく描写されるのでリアルさが増す。

ステップを踏むごとに飛行機が揺れ、墜落しそうになりハラハラが満載だ。ここをちゃんと描いたのがこの作品の成功だろう。

結局着陸するが、車輪はへし折り、胴体着陸に近い状態。スピンしたものの、着陸成功。
よかったよかった。

乗客が喧嘩するとか(少しあるけど)、暴れ出すとかそういう贅肉をそぎ取って73分の中で見せ場を「緊急着陸!」の1点に絞った構成がよかったと思う。
小品傑作で「夜空の大空港」より出来はいい。

ちなみに昔「エアポート75」がテレビ放送されたとき、たしか高島忠夫が飛行機関係者(パイロットだったか)を招いての解説をしていた。
この映画の話題をしたわけではなかったが、「機長と副操縦士はこういう事態も想定して同じものは食べないルールになっている」と話していた。
だからこの映画のようなことは現実にはない。(筈である)












夜空の大空港


日時 2021年月日 
場所 TSUTAYA宅配レンタルDVD
監督 ウィリアム・グレアム
製作 1966年(昭和41年) 


ロサンゼルス空港発ニューヨーク行きインターナショナル航空6便は18時40分に離陸した。約4時間半の飛行でNYに着く。
しかし「爆弾を仕掛けた。1万フィート以下のどこかまで降下すると爆発する」と電話がある。
FBIはトンプソン捜査官を派遣。機長にも連絡。犯人は10万ドルを要求してきた。爆弾は解除できる場所にあるはずだから、乗客の手荷物を調べ、今度は客室の天井などを調べ始める。しかしなにも出てこない。
一方犯人は配送会社にお金の引き渡しを要求、そして配送業者にある住所を送り先として連絡してきた。しかし運転手が事故を起こし、用意したお金は焼失した。
果たして6便の運命は?


Twitterを見ていたら「『新幹線大爆破』の元ネタ映画」ということでこの映画のことを話してる人がいたので、早速検索したらレンタルがあるじゃないですか。
しかも脚本はあのロッド・サーリング!
もう見るしかないでしょう。

ということで期待値大で見始める。
1966年製作だから「大空港」より4年早い。しかもこの映画テレビムービーで4:3。
正直、ちょっとがっかりである。

飛行機側はトラブルが起きない。まあパニックになる乗客がいないわけではないが(映画スターが割とわがまま)、暴れ出したりじゃましたりはしない。
あとトンプソン捜査官の妻が飛行機に乗っているんだが、これがまるで生きたこない。まあ身内が問題の機に乗ってるっていう設定はやめてほしいとは思いますが、それなら最初から出さなくてもよいだろう、ってことで。
(「新幹線大爆破」がよい理由の一つに宇津井健の家族とかが109号の乗ってないということもあるんだよね)

マスコミの方もある記者がかぎつけるが、「まだ発表しないと誓ってくれ」と言われ、あっさり従う。
犯人の方も牛乳瓶のそこみたいなめがねをかけて、なんだかグチグチと世の呪い、「本当の俺はすごいんだ!」的なことを酔っぱらって言う。
いやいや酔っちゃいかんでしょ。まじめに犯罪しましょうよ。

で結局酔っぱらってバーのマスターに「4000フィート以下になったら爆発する」という話をして、持病の心臓病の発作で死んでしまう。
あと燃料が30分、という時にこの情報が伝えられ、「5000フィート以上の高地にあるデンバーならいける!」とデンバー空港に行き無事着陸。

簡単すぎるよ。
悪天候で高度を下げるとか乱気流で飛行機が揺れるとかなんかいろいろトラブるほしいなあ。
犯人のだいたい目星がついて追いつめるとかさ。
その辺「新幹線大爆破」や「ザブウエイ・パニック」なんかは一流である。

そしてこの映画、見始めて見ていることに気がついた。ほとんど記憶になかったのだが、冒頭で機長の鞄がアップになるシーンがあり、いかにも「この鞄を覚えていてくださいね」という感じなのだ。
昔実家でテレビの洋画劇場でラストに「機長の鞄に爆弾がしまってあった」というオチの映画を思い出したのだ。

そしてやっぱりラストはそのオチだった。
結局昔からこの手の映画は大好きで観ていたんだなあ、と再確認した次第。
「大空港」や「新幹線大爆破」がいかに名作かよくわかった。








MINAMATAーミナマター


日時 2021年9月23日13:40〜 
場所 TOHOシネマズ新宿・スクリーン3
監督 アンドリュー・レヴィタス


かつてはLIFE誌で数々の話題を提供したフォトジャーナリスト、ユージン・スミス(ジョニー・デップ)も今は酒浸りの日々。LIFEからも今は疎まれる存在だ。
そんな時、日本の富士フイルムのCM出演の話が舞い込む。どうにもやる気のない仕事だったが、通訳をしたアイリーン(美波)が「日本の水俣を写真で報道してほしい」と言われる。一度は断ったが、アイリーンの持ってきた写真を見て水俣行きを決意。
生まれたときから障害がある娘を持つ松村(浅野忠信)、自身も軽度の障害を持ち、16mmでとり続けるキヨシ(加瀬亮)、粘り強く交渉を続けるヤマザキ(真田広之)らと出会う。
水俣病の原因になっている日本チッソの工場が出す廃液だ。チッソの病院や研究室に潜入するユージンたち。そこで15年以上前からチッソは自分たちの廃液の有害性を把握していた。
工場前で抗議活動をするヤマザキ。その時、ユージンは中に連行され社長のノジマ(國村隼)と面会した。ノジマは5万ドルと引き替えに写真のネガを渡すよう要求した。断るユージン。しかしユージンの現像場が放火にあった。
ヤマザキたちはノジマ社長と直接交渉する事ができたが、ノジマは「お気持ちはわかった。しかし全額を支払うことはできない」と断った。
外での抗議活動の撮影するユージン。しかし暴漢によって怪我をさせられる。
ユージンは患者たちの写真を撮る。そして松村の娘が風呂に入っている姿がLIFE誌に掲載された。
ノジマはそれを見て「払わなきゃならんだろう」。
裁判も勝訴し、大きな前進を見せた。


水俣病は日本人なら誰でも知ってる。しかしユージン・スミスという男の存在は知らなかった。映画の創作ではなく、実在の人物だ。
これをハリウッドスターのジョニー・デップが演じる。

「アメリカではこういう大企業批判の映画が出来るのになぜ日本では出来ない」という意見も少なくないだろうし、その意見にも同調する。しかし日本には出来ない事情もある。

映画の流れはかつては栄光の主人公、今は酒浸り、復活、抵抗、勝利!というハリウッド映画の王道のキャラクター。
こういう映画って批判しにくくなるけど(ほら、水俣病運動を批判してるようになっちゃうから)、「映画として」テンプレートすぎて少し食傷気味である。

加えてアイリーンが途中でユージンと恋仲っぽくなるから「え〜勘弁してよ」と思ったが、実際には映画に描かれた時代のあと結婚したそうだ。
あっ、事実なら仕方ないですね。

一番心を動かされたのは國村隼演じる社長である。
はじめはユージンを買収しようとしてなにやら典型的な悪役である。
しかし団体交渉でヤマザキやキヨシの話を聞くうちに心を動かされる(ように見える)。「ちょっと時間をくれ」と幹部と相談、しかし結果は「希望には添えない」

案外彼はLIFEに写真が掲載されたときに内心ほっとしたのではないか?
「これでももう板挟みにあわなくて済む」と。
実際はどうだったかわからないけど、この時の國村隼の演技がそんな感じなんだよなあ。悔しくて怒ってるようには見えなかったし。

あと出演者。
真田広之、加瀬亮、國村隼、浅野忠信、と今までハリウッド映画経験のある人ばかり。もう少し新味がほしかったかな。











隠し砦の三悪人(4Kデジタルリマスター版)


日時 2021年9月23日9:00〜 
場所 TOHOシネマズ新宿・スクリーン1
監督 黒澤明
製作 1958年(昭和33年)


ストーリー省略。
この映画は2007年にもテアトル新宿で行われた黒澤明全作品(だったと思う)上映でも観ている。いやそれ以前にも高校生の頃に観ているので今回観るのは3回目。
(そのテアトル新宿での上映では加藤武さんのトークイベント付きだった。冒頭に殺される落ち武者の役だが、舞台出演があるので時間が限られていて、でも黒澤さんは粘ろうとして時間との戦いだった、という趣旨の話をされていたと思う。しかもその話を「このぐらいの劇場なら」とマイクを使わず、地声で話されていたのを思い出す。ちなみに関係ないけど、そのときに加藤さんにある映画のDVDをプレゼントして、後日お礼のはがきをいただいた)

今2007年の感想文を読んだが、まったく同じことを思った。特に感想が変わったということはない。
一言で言えば「面白いことは面白いが、他の黒澤作品と比べるとイマイチ」ということになる。
だからDVDなどの映画ソフトも買ったことがない。

それでも今回見直したのは4Kデジタルリマスター化したから。

オープニングのクレジットタイトル。黒字に白抜きのスタッフキャストの文字がくっきり浮き上がる。黒字は濃いグレーではなく、「黒!」って感じである。

う〜ん、でもそれだけなんだな。
もちろん映画本編もデジタルらしいくっきりとした映像で、「さすが4Kリマスター!」である。

もともとこの映画にどれだけ好きか、今まで何回観たか、ということが4K化の価値の実感するんじゃないだろうか。
「フィルムと比べてここが違う!」って。

残念ながら私はそこまでこの映画が好きではないので、もともと何回も観ていない。
だから特に違い、面白さを実感できずに終わってしまった。
残念。










亀裂


日時 2021年9月22日21:00〜 
場所 ラピュタ阿佐ヶ谷
監督 木俣堯喬
製作 昭和43年(1968年)


京都の出版社の週刊誌の女性記者の芦川(水城リカ)は同僚の松山(吉川次郎)と夜に車に乗っている時、松山が人を引いてしまった。松山は「誰も見てないに決まってる」とその場から逃走。あきれた芦川は車から降りる。しかし封筒を忘れてしまった。その封筒には生原稿が入っていた。
実は芦川は今世間をにぎわせている「第2のチャタレー夫人」と猥褻か否かで争われている小説の作家だったのだ。
それを知った松山は「覆面作家の正体をばらされたくなかったら、おとなしくしてろ」と犯されてしまう。「ひき逃げをばらす」と言っても「それなら作家の正体もばらす」と言われてどうにもならなかったのだ。
翌日、芦川は編集長に「東京から来る作家の高山にインタビューしてこい」と言われ松山とともに出かける。高山は先日妻を亡くし、その心境などを聞いてこいというのだ。失礼な態度でずけずけ質問する松山に怒る芦川。勢いで高山の泊まる旅館の池に落ちてしまう。
それがきっかけで高山と芦川は急接近。
やがて二人は愛し合うようになるが。


「葵映画特集」に続いて60年代のエロダクションの一つ、プロダクション鷹の特集上映。この「亀裂」が本特集1本目。(合計7作品上映)

冒頭から唐突にひき逃げシーン。ここが実際に引くわけではなく、引かれる人のアップ、運転手の驚き、急停車の車、倒れてる被害者、という感じで強引な編集で説明。
いかにもピンク映画である。

この映画、週刊誌編集部が舞台なので東京かと思ったら京都である。
プロダクション鷹を率いた木俣が東映京都の大部屋俳優だったことから、京都が制作の拠点だったのだろう。でも京都に編集部がある週刊誌なんてなんか変である。

そしてお約束のごとく中年作家と芦川は恋に落ちる。途中で芦川にやたらとよってくるフーテン娘も登場。バーで作家と芦川がキスしてるところに松山とフーテン娘がやってきて喧嘩になって、成り行きで作家とフーテン娘はホテルに行く。(たぶんそうだったと思う)

芦川は処女なのに松山に犯され、女医に「処女に戻れるでしょうか?」などと相談したりする。
「ひき逃げはどうなったんだ?」と思っていると唐突に松山は捕まり、「いや私は自首しようと思ったんですが、芦川が無視しようと言ったので」とあることないことデタラメな供述をする。

ばあやから松山逮捕の知らせを受ける芦川。芦川は先生と二人で旅行中だった。芦川は「先生、私がいなくなってらどうします?一緒に死んでくれます?」などという。
先生は女の戯れ言だと思ってテキトーに返事をする。

このあたりから突然編集がおかしくなる。
いきなり松山と芦川が週刊誌の編集部で編集長から「例の猥褻小説の覆面作家が京都の国文学の教授らしいから片っ端から当たってこい」と言われ、二人で京都の大学の教授たちに聞き込みにいき怒られるシーンが続く。
「あれ、松山は逮捕されたんじゃなかったの?」と思っていたら、冒頭の交通事故のシーンになる。

「え?今の回想シーンだったの?」とこちらは混乱する。
それで高山と芦川の旅館のシーンに戻るけど、結局芦川が高山にも薬を飲ませ自殺する。

なんかこう話がつながってない。16mm短縮版(今回は上映時間67分)とラピュタのチラシには表記されてるから、オリジナルは90分ぐらいあったのではないか?

そもそも芦川が覆面作家とばれると自殺するのがよくわからない。芦川の家にはばあやがいるぐらいだから、京都の名家だったのかも知れない。
あと高山は妻を亡くした喪失感と例の猥褻小説を読んで「この作家の裁判の応援をしようと思ってとりあえず会いに来た」という設定。
だから作家として最初から認めてくれていたんですね。

フーテン娘は単なる脱ぎ要員か。松山とのからみのあったしね。
あと女医も芦川が死の直前に電話したりしてたけど、もう少し出番があったんじゃないかなあ。

白黒&脱ぎのシーンだけパートカラー(プリントは当然退色している)、という昔のピンク映画である。
話のテキトーさ、役者のへたくそさ、つながりがおかしいなどなど(完全版はもう少しまともかも知れないが)この当時のピンク映画らしい印象を受けた。








悪魔の往く町


日時 2021年9月20日 
場所 DVD
監督 エドマンド・グールディング
製作 1947年(日本未公開)


スタン(タイロン・パワー)は旅回りの見せ物小屋でジーナとピートの透視術のショーをしていた。スタンが客に質問の書いた紙を集め、それを壇上で燃やす。だがジーナがその質問を読み上げるというものだったが、実は燃やす直前にピートがすり替え、舞台の下から内容を見せているのだった。ピートとジーナは古いコンビだったが、ピートは今はアル中でほとんど仕事が出来ない。だからこそスタンが雇われたのだが。
ある晩、酒をせびるピートにスタンが自分が買った酒を酒瓶ごと渡す。翌朝、ピートは亡くなった。スタンが渡した瓶は燃料用アルコールの瓶だったのだ。スタンは悪気はなかった。
そのことは誰にも気づかれずにスタンはジーナとコンビを組み、目隠ししたジーナに対してスタンが客の持ち物を示し「これはなんだ?」「時計よ」とするものだった。スタンはジーナにアクセントなどの暗号で答えを送っていたのだ。
だが同じ旅回りで働く若いモリーとの仲を疑われ、旅回りを追い出されてしまう。
スタンとモリーはコンビを組み、一流ホテルなどでジーナと組んでやっていた読心術の出し物をやって大成功をしていた。
その客の一人だった精神分析医のリターという女医と知り合う。
やがてリターが知った彼女の患者の秘密を使って、ショーを行い、その患者が自然と寄付をしてきた。
グリンドルという金持ちをひっかけることが出来たが、グリンドルは35年前に死んでしまった恋人に会わせてくれという。リターからグリンドルの恋人の写真を手に入れたスタン。恋人役をモリーにやらせてグリンドルから金を得ようとしたのだが。


以前購入したコスミック出版の廉価版DVD10枚セット、「犯罪の世界」の1本。「裸の町」が観たくて購入したのだが、時間がある時に他の映画も見ている。この映画を見終わったのであと4本である。
昭和22年の映画で、さすがに今観るとだるい。(ちなみに日本劇場未公開らしい)

お話の方はモリーにグリンドルの恋人役をやらせるが、結局モリーが良心に耐えられず自分からばらしてしまう。リターに相談に行くのだが、「とりあえず街からでなさい」と言われ、スタンが預けていた金を渡す。「君の分も」と分けようとするが停める。その時パトカーのサイレンが聞こえてくる。「警察を呼んだな!」とスタンに言われると「私にはなにも聞こえない。あなたの心の罪悪感が聞こえさせるのよ」とか言ってごまかす。

駅へ行くタクシーの中で金の入った封筒を確認するとなんと札束は実はほとんど紙だけ。このリターが結局は一番の悪人だ。

スタンは結局金もなくなり浮浪者になり、浮浪者仲間からいいようにからかわれる。
もう一度見せ物小屋で雇ってもらおうとするが、与えられた仕事は「オオカミ人間」の偽物役。
この「オオカミ人間」というはネットで観た映画ファンの解説文によると、「オオカミ人間という体裁で生きてる鶏を食べるような男が雇われていたが、実際は単なるアル中がそれを演じさせられていた」とあり、「なるほどな」と思う。

映画の冒頭にもその「オオカミ人間」は登場するが、映像には出てこない。観客の陰に隠れている。そこまでスタンも堕ちてしまったというラストなのかと思ったら、この一座にいたモリーによって発見され、助かるということでエンド。

うーん、でもジーナのタロット占いがピートの死を予言し、今度はジーナはスタンに死を予見させるカードが出てきたのだから、やっぱり悲劇的な最期を迎えなければならないのではないか?
もっとも当時の映画では主人公を悪人にしすぎるのもためらわれたのかも知れない。

ちなみに映画の始まる前に20世紀FOXのマーク映像が出るはずだが、ここは音のみで、コスミックがつけた「悪魔の往く町」のタイトルが表示される。映画そのものはパブリックドメインだが、マークはまだパブリックドメインになっていないということのようだ。
作品の内容には関係ないけど。









シェルブールの雨傘


日時 2021年9月19日15:30〜 
場所 シネマネコ(青梅)
監督 ジャック・ドゥミ
製作 1964年(昭和39年)


第1部 1957年11月。
フランス北西部の港町、シェルブールで自動車整備工のギイと傘店の娘、ジュヌヴィエーヴは恋人同士。二人は結婚を考えていた。
しかし二人はまだ20歳と17歳。ジュヌヴィエーヴの母は反対した。
そんな時、ジュヌヴィエーヴの母の元に多額の税金の督促状が届く。迷った末に死別した夫との思い出の宝石を売ることに。売りに行った宝石店ではいい値段をつけてくれなかったが、居合わせた宝石商のローランと出会う。ローランは高く買ってくれると約束し、翌日店にも来てくれた。
しばらくしてギイの元に召集令状が届く。フランスはアルジェリア戦争のただ中だった。別れを惜しむ二人だったが、ギイは入隊した。
第2部 1958年1月
ローランはジュヌヴィエーヴとの結婚を彼女の母に願い出る。彼女の気持ちが決まるまで待つと言ってくれた。しかしジュヌヴィエーヌは妊娠していた。ローランはそれでも子供は自分たちの子供として育てると言ってくれた。迷った末、ジュヌヴィエーヌはローランと結婚する。
第3部 1958年3月
足を負傷したギイは除隊した。しかしジュヌヴィエーヴの結婚とパリへの転居を知って驚く。元の整備工に戻ったが、仕事も投げやりになり、酒と娼婦に明け暮れる。やがて唯一の肉親の叔母も亡くなった。叔母の面倒を見ていてくれたマドレーヌも離れようとするが、ギイは彼女にいてほしいと頼む。ギイは彼女に結婚を申し込み、叔母の遺産でガソリンスタンドを購入。
1963年12月
ギイとマドレーヌの間に男の子が産まれた。マドレーヌと息子が出かけている間に1台のベンツがやってきた。


今年青梅市に出来た映画館、シネマネコ。ネットニュースで話題にもなった。70年代に青梅には映画館がすべて閉館していたが、新たな人が映画館を立ち上げたのだ。地方で映画館なんてどう考えても商売にならないような感じがするのだが、やる人はやるのである。映画とは恐ろしい。

時間のある時に行ってみよう、と思っていたのだが、三連休にも関わらず食指の動く映画もないので(「マスカレードナイト」が公開されたが、観る気にならん)、小旅行がてら行ってみた。
拝島で青梅線に乗り換えて15分ほど。思ったより近い。福生より先はプライベートでは行ったことがない。青梅駅は正直なにもないようなところだが、「映画看板の町」として町の所々に映画館の看板(だけ)がある。
シネマネコは木造の映画館だが、中は改装してるので新築同様。今時の映画館らしくカフェも併設している。

という感じでシネマネコにやってきた。今回はミュージカル映画特集、とうことで「ラ・ラ・ランド」や「ヘアスプレー」が同時上映。入れ替え制なので他の映画は見ていない。

「シェルブールの雨傘」というのはタイトルだけはよく知っていた。音楽も聴いたことがある気がする。まあシネマネコに行くことが目的の大半なので、今回は映画はおまけのようなもの。有名な映画なのに観たことないのでとりあえず見に来たのだ。

全く知らないのもなんだから、上映前にネットで調べてみたら、「全編セリフなしのミュージカル」とあるので驚いた。知っておいてよかったな。何も知らずに観ていたらただただ驚いたろう。
カンヌ国際映画祭でグランプリ受賞ということだが、それも納得の出来。
デジタルリマスター版なので黄色やピンクの衣装や壁紙の美しさが余計に際だつ。

ミッシェル・ルグランの音楽もすばらしい。
それにしても切ない話だなあ。
男が戦死したわけでもないのに、金持ちに求婚されて妊娠してるのに結婚しちゃうんだよ。それはないだろう。切ない、ただ切ない。
そりゃギイも仕事が投げやりになるよ。

女は金と普段から横にいることが重要なのか。戦争に行ってるんだから待ってやれよ。別に戦死したとか行方不明とかじゃないんだから。

ラスト。
雪の降る晩に妻と子供がいない時にベンツがやってくる。運転するのはジュヌヴィエーヴ。幼い娘もいる。ギイとの娘だろう。
「あなたに似てるわ。会ってみる?」首を振るギイ。
ほんの数分立ち話をして去っていくジュヌヴィエーヌ。
そしてギイもマドレーヌと息子の生活に戻っていく。
ただただ切ないラストだった。
名作と言われるのも納得。











秘密クラブ 人妻専科


日時 2021年9月18日14:35〜 
場所 上野オークラ劇場
監督 新里猛作
製作 新東宝


明子の夫は「セックスと仕事は家に持ち込まない」と言ってセックスレス。まだ若い明子は我慢できずに知り合いから教えてもらった秘密クラブに電話してみる。そこは女性たちが男を買うクラブだった。
優しい相手に明子は満足。その姿を隣の部屋から見ている女がいた。
彼女はドSでMの男を奴隷として買い、徹底的に責めていた。彼女は貿易会社の社長の妻で、夫の前では一緒に風呂に入るのもためらうウブな女性を演じていた。
レイプ願望の女はレイプをされるプレイを楽しんでいた。
そのクラブの顧客の一人が夫にばれて殺される事件があったが、クラブはなくならなかった。
明子は次の予約を入れるのだった。


3本立ての1本の旧作。
ピンク映画にありがちな典型的なダンゴ構成の映画(勝手に命名。一つの設定でそれぞれのセックスを15分ぐらいかけて描くのを3つか4つつなげてそれぞれの濡れ場の間に少しドラマがある構成)

2つ目のドSの女性が「夫の前では純情」を表現するのに、テレビのワイドショーが公園で「いけてる夫婦にインタビュー」という形式でリポーターがインタビューしている形式なのが面白い。

あとはまあ何言うかフツーのピンク映画。








ぞっこんヒールズ ぬらりと解決!


日時 2021年9月18日13:15〜 
場所 上野オークラ劇場
監督 塩出太志


占いが出来ない占い師のあゆみ(きみと歩実)は上野というお客から「最近女性につけられてる気がして」と相談する。金になる話なので解決しようと友人の催眠術がたまにしかかからない催眠術師のマキ(西山真来)に相談する。二人は上野の身辺を調べるがなにやら怪しい女が上野の周りをうろついている。二人はその女を捕まえる。その女茂子(手塚けだま)は自称霊媒師、上野に何かが取り付いていると悟り、除霊しようとしていたのだ。しかし茂子はなにかを感じるだけで観ることはない。
まずは上野の事件を解決しようとあゆみは上野の家に。そこでいい感じなったが、ベッドの上で上野は人が変わったようになり、首を絞めだした。
その時に鬼が出てきた。あゆみとマキにはその鬼が見えるが、茂子は感じるだけで鬼は見えない。
なんとか解決した3人だが、今度はマキの元に夫のDVに苦しむ女性や口が交通事故で裂けてしまった女性が訪れる。


先週、光音座に行ったとき(「サンタモニカの白い薔薇」「男街行き快速急行」)、隣の2で上映されていたのがこれ。西山真来さんが主演なので「観なきゃ!」という感じで観た。(光音座ではもう時間が合わなかったので、今日上野にきたのだよ)

ゴーストバスターズ的な話のなのだが、3人ともそれぞれの能力がテキトーなのだ。
そこが緩くていい。
3人並ぶと西山さんだけが頭一つ背が高く、そのアンバランス感がいいのだな。
また西山さんだけが関西弁(彼女は京都出身だが、今回は大阪弁ぽい)。
そしてきみとさんがセンターでかわいい系だが、手塚さんがお笑い担当、という感じで個性を分かれており、その辺の呼吸が絶妙である。

後半は西山さんが主役となって第2話。DV夫(折笠慎也)を捕まえたら緑色の何かが出てくる。こいつが悪さをしていた!ということでその緑色の奴を最近仲が悪くなった自分の恋人に乗り移らせる。
しかしDVは終わらない、口裂け女の事故の元になったのもこの男。
3人でこの男を懲らしめる!ということで解決。

この3人の活躍はまたみたい。
シリーズ化を要望するところだ。








すけべ繁忙期 モーレツたらし込み


日時 2021年9月18日11:50〜 
場所 上野オークラ劇場
監督 加藤義一


イケメンの繁(折笠慎也)は仲の良いトモミから相談を受ける。ともみが付き合ってる会社社長の西野(なかみつせいじ)のアソコの勃ちが悪いというのだ。そこへ西野がトモミの部屋にやってきた。成り行きから繁がともみといちゃいちゃしてる所を見せつける結果に。そうすると嫉妬から西野は勃起、無事に済ますことが出来た。
社長に気に入られた繁は西野の会社OP商事に入社。入浴剤の担当だったが、電話アポをかけまくり、女社長の徳子にアポを取った。
早速徳子を訪問する繁。徳子は繁を求め、満足したため契約を取り付けた。
OP商事では幼なじみの花畑香(久留木玲)と再会。早速アタックする繁だが、営業部長の高山がなにかと邪魔をする。
西野はトモミについにプロポーズ。西野にしてはトモミを喜ばせるつもりだったが、金の話しかしない西野にトモミは怒る。
繁に相談する西野だが、金の話しかしない西野に繁も怒る。それがきっかけで会社を辞めてしまう。
高山部長は香に手を出していたが、仕事上、徳子を満足させられなくて大変なことに。
しかし結局西野とトモミもうまくいき、繁も会社に復帰する。高山は自分の高飛車な性格を反省し、徳子に気に入られ彼女の会社に移っていった。
繁と香もうまくいった。


話は全部書いた。
西山真来さんが主演した「ぞっこんヒールズ」を見に来たのだが、同時上映で今週公開の作品がこれ。
(オークラ映画は去年から新作は4週間上映なので新作が2本見られる)

う〜ん、ピンク映画になにを期待するかで満足度が違ってくると思うが、セックスがうまくて就職が出来るとか、セールスマンがセックスで営業するとかピンク映画としてあまりにも手垢が付きすぎてないか?
それをよしとするかどうかでこの映画の好みも変わってくるのでは?
昔の旧作ならともかく、令和の新作でそれをやられるとどうにも古くささが気になってしまう。

折笠慎也って体がきれいだな、って思った。








劇場版 ほんとうにあった怖い話 事故物件芸人3


日時 2021年9月12日16:00〜 
場所 池袋シネマロサ2(地下)
監督 天野裕充


第1話 お笑い芸人の桃井(たける)は怪談トークも売りにしていた。アメリカに行ったときに聞いた背の高い男が子供を連れ去る話、スレンダーマンの話をした後、プロデューサーの井出がお昼に行った店で自分が子供の頃に聞いた背の高い女性が女の子を連れ去る話をしてくれた。
その直後にかかってきた電話を受けて出かけた井出はそのまま行方不明になった。日を改めて怪談トークをしようとした日、新しいプロデューサーはまた行方不明になった。この収録スタジオはやがて閉鎖された。

第2話 1年後、もう一つブレイクしないコンビの岩井紀夫と高橋明美は男女コンビ。廃屋になった例のスタジオを体験取材していた。
なにも起きないことにいらだつ二人だが、岩井の肩が重い。明美は何かに手を捕まれる、カメラを通して見るとそこには女性が写っている。
二人は逃げ出す。そこへマネージャーの芦屋がやってきた。芦屋は二人がカメラを置いてきたというので取りに行く。しかし戻ってこなかった。

第3話 その7年前、ピン芸人の大和田は学生時代の友人の紹介である映画撮影の応援に来ていた。主演女優の小柴陽子に声をかけられる。大和田を芸人と知った小柴は「今度ネタ見せてください」という。
数日後、大和田は小柴に呼び出される。そこは例のスタジオだった。


ブロードウエイ配給、日本スカイウエイ製作の「ほんとうにあった怖い話」シリーズの新作。最近ははまってます。新作が出来る度に見に来てます。
こういう「血のでないホラー」は好きです。血が出るようになると「スプラッター映画」で(私にとっては)ホラーではないです。

キャスト費が抑えられるせいか最近、芸人シリーズが全開ですね。
「芸人が体験した話」とか言ってますが案外オリジナルかも知れません。

今回はアメリカで話題になった(そうで私は知らなかったけど)スレンダーマンの女性版。身の丈八尺(2m以上だ)になる女性が人をさらう話がベース。

1話でその話をした井出がいなくなり、その後任のプロデューサーもいなくなる。
2話ではスタジオにその八尺の女性が現れる。3話でその由来が話される。この女優が子供の頃に八尺の女性に村の外に連れて行くように頼まれ、連れて行ったはいいがそのまま女性が小柴の体にとりついてしまったらしい。

こんな感じで進み、てっきり1話でいなくなったプロデューサーは以前に小柴に何かしていたため、というオチがくるかと思ったがそういう訳ではない。

でも今回も現代の都市伝説の再現映像的なテイストで十分面白かった。
これがスター級の俳優たちが出演してるともっといいんだけどなあ。
でも数年後、これに出ていた芸人が大ブレイクしてるかも知れないので青田買いということで。

そうそう1話でAD役で三河悠冴が出演。








水戸黄門漫遊記 怪力類人猿


日時 2021年9月12日 
場所 東映チャンネル録画
監督 伊賀山正徳
製作 昭和31年(1956年)


銚子に来た黄門一行はある宿で立て続けに人々が殺される事件に遭遇した。人間業とは思えない怪力で殺し、中には腕までちぎられたものもあった。黄門一行はその事件に遭遇。追っていくとある船の帆に巨大なゴリラいる。そのゴリラは中に入っていった。奉行所もその船を捜索しようとしたが、「これは御三家紀州の御用船」と言われ引き下がることに。
だが黄門一行はその船に沢山の砲弾が積まれているのを発見。見つかった黄門たちは敵の手によって樽に積められ断崖から海に投げられた。
ある海岸の村では土地の若者佐吉は実力者によって土地を奪われ、その実力者が主催する相撲大会で力士によって命まで奪われようとしていた。
実は佐吉によって助けられた黄門一行だったが、その計画を知り、相撲の席で自らが水戸黄門と名乗り、佐吉を助けた。
紀州の連中は将軍が日光に参拝する道中に砲弾によって将軍を亡き者にし、紀州家から将軍を出そうとしていた。
それを知った黄門一行は将軍に日光参拝を中止するよう進言。しかし聞き入れられなかった。ついに将軍一行を砲弾で襲撃する紀州家老本田。だが籠の中に将軍はいなかった!


昨日に引き続き「水戸黄門漫遊記」。以前何かのムック本(怪奇映画を特集したムック本だったと思う。15、6年前に出版されたような気がする)に「水戸黄門にキングコングのようなゴリラが登場する映画がある」と紹介されていて、ずっと気になっていたのだ。
今回東映チャンネルで放送され観てみた次第。シリーズとしては7作目。

のっけから殺人が起こっていてゴリラも登場。ゴリラは最後の最後に現れるかと思ったら、6分ほどで画面に登場。早い。
このゴリラ、徳川家に恨みを持つ福島家の家臣や孫娘・お浪(喜多川千鶴)が南蛮から連れてきたもの。しかもお浪の吹く笛で自在に操れるという優れものだった。

で映画の中盤で黄門一行は殺されかかるが、映画は急に佐吉の話になる。この佐吉の話は将軍暗殺にはまったく関係なく、黄門様の活躍を描く。
前回もそうだったが映画の中盤で黄門様一行は殺されかかって助けられるっていうのがセオリーなのか、このシリーズの。
しかも助けられるシーンは描かれずにいきなり助かっていて台詞で説明されるだけという。

将軍一行の砲撃に失敗した本田は、悪事がばれるのを恐れ協力した福島家を亡き者にしてしまう。お浪は偶然格さんに助けられる。
そして本田は宇都宮に泊まった将軍をつり天井の部屋に誘い込み、黄門一行ともども天井が襲いかかる。
天井の上には大きな石がありとても人間では押しとどめられない。
そこでお浪が笛を吹くとゴリラが暴れ出し、将軍、黄門、お浪が閉じこめられている部屋を入り口を壊し一同は逃げ出すことができた。
でもゴリラがその部屋に入ったとたん、天井がゴリラを踏みつぶす。

結局最後はゴリラは将軍や黄門を助けたのだった。
最後はいい奴じゃん。思ったのとちょっと違ったなあ。
てっきりゴリラを使った暗殺計画かと思っていたら、砲撃と吊り天井だから最初からゴリラは計画には入ってなかったみたい。
冒頭の殺人はたまたまゴリラが逃げ出して暴れただけ、とあまり重要視されていない。

てっきり大暴れするゴリラに対して黄門が大活躍する話かと思ったら、普通に将軍暗殺計画で。ゴリラの必然性が感じない。
もったいないなあ。

ラストでは敵だったお浪は格さんといい仲になる。黄門一行に美人がいて、これが助さん(だと思う)と夫婦になる約束でベタベタしているのだが、最後に黄門が「なんのことはない、わしは二人の嫁探しの旅をしているようなもの」と言っていたから、この女性もシリーズの過去作で登場したのかも知れない。
1作目から観たくなった。
あと偽の水戸黄門も登場するが、「また会ったな」と言ってるからシリーズの過去作にも出てるのだろう。
江原慎二郎が水戸藩の主君で黄門の息子役で出演。

なおテレビの黄門のように印籠は出さないよ、この黄門様は。












SWANEE(スワニー)野毛探偵事務所


日時 2021年9月11日11:30〜 
場所 シネマノヴェチェント
監督 市川 徹


横浜・野毛で「ジャズ喫茶ちぐさ」で探偵事務所を開いているのはジョージ(デヴィッド伊東)。金が無くて自身のもので売れるものはネットオークションに出しているがさっぱり売れない。
そんな時、旧知のジャズシンガー水木リサ(ナオミ・グレース)が「木島美帆という女性を捜してほしい」と依頼があった。乗り気がしないジョージだったが報酬がいいので引き受けた。美帆のことを調べてみると横須賀の出身で子供の頃親は行方不明になり、養子となり育てられたという。その育ての母はリサの姉らしい。
古いジャズ仲間が「ちぐさ」でジャズライブをやらせてくれと言ってきた。急に予定していた会場がキャンセルになり、スポンサーの都合で場所を変えてもどうしても行わなければならいというのだ。
引き受けたジョージだったが、商店街の人たちから「そのライブはIR賛成派の決起集会になる」と聞かされる。どうもIRが絡んで政治家まで絡んできてるようだ。
横須賀でジョージは中国人に絡まれる。どうやら思ったよりややこしそうだ。


富山などのご当地映画を作ってきた市川徹監督。市川監督の引退作と表記されてる。氏の映画は数本見ている。最近作った藤棚商店街を舞台にした映画も見た。(タイトル忘れたけど)

ジャズ、横浜、私立探偵、とどうにもなんだか揃いすぎである。それで演じてるのが聞いたことのない役者がほとんどなので、要するに素人よりうまい、という程度にしか思えないので観ていてこっぱずかしくなる。
「脚本監修 柏原寛司」とあるけどどこまで監修してるのか。

でもまあ脚本はセオリー通りで謎の中国人から襲われたり、政治家が裏で絡んでいたり、死体を発見してしまったりとセオリーなのである。
悪くはない。
だがどうにも「イタイ」映画なのだ。

役者にせりふが多すぎる。何でもせりふにするからしらける余計にしらける。音楽も多すぎる。役者の演技も過剰だ。
そう、何かにつけてすべて過剰なのだ。
だから「クドさ」を感じて「いや、もういい」という気分になってしまう。

肝心の事件の真相だが、美帆は実はリサの娘。ジャズの才能を感じて一緒にレコードを出したいと思ってる。そこでスポンサーが絡んでIR関係の接待でラスベガスに行ったときに美帆はそこで日本の政治家が金や女やドラッグで骨抜きにされるのを動画に撮り、それを政治家たちは狙っているのだ。中国人はラスベガスの業者のライバルで相手のスキャンダルを得ようとしている、という訳。美帆はリサがホテルにかくまっていたのだ。
ではなんで探させたのかというと「そういう形で守ってほしかった」という。
なんだかちょっと無理がある気がしないでもない。
最初に死体が出てきたが、あまりこれは追求されずに「美帆を守るためにリサが殺した」というもの。

刑事役で六平直政さんが出演で、唯一名前を知ってる俳優さん。
でも過剰演技だったなあ。演出の問題だと思うけど。

横浜を舞台にした探偵もの、と聞いて見に行ったが、逆に「パロディ」を見せられてるような気になった。

ラストの美帆の動画を奪いにきた日本人、中国人、ジョージ、美帆が揃って対決するシーンはシネマノエチェントの劇場で撮影。自分が観てる映画に自分が観てる席が写るのは不思議な感覚。

あとジョージはスマホが嫌いで持ってない設定なのだが、そのくせネットオークションには出品している。矛盾してないか、それ。







水戸黄門漫遊記 幽霊城の佝僂(せむし)男


日時 2021年9月10日 
場所 東映チャンネル録画 
監督 伊賀山正徳
製作 昭和30年(1955年)


水戸黄門(月形龍之介)と助さん、角さんの一行は伊達藩に入った。この土地では20年前に原田甲斐という男が謀反を企て、その一件を黄門が治めたことがあった。
「もう20年前の話じゃ」と黄門は言うが、乗っていた馬の馬子のせむし男が馬に一鞭、馬は暴走。しかし黄門は事なきを得た。
美しい娘が誘拐されそうになるのを助ける黄門。その娘は今の城主の片倉小十郎の孫。その傍らにいたのが娘の恋人・数馬(江原槙二郎)だが、実は娘誘拐の首謀者で甲斐の息子、大輔の弟だった。
数馬は大輔の弟ではあったが、父甲斐の行いに疑問を持っており、父の復讐を果たそうとする兄にも反対していた。数馬は黄門にこの地を去ってくれと頼む。船で川を下った黄門一行だが、大輔の攻撃もあり、船は転覆してしまう。
土地の庄屋に助けられた黄門一行だが、この地では最近娘たちが誘拐される事件が起こっているという。どうやら原田甲斐の残党が関わっているようだ。


月形龍之介主演の「水戸黄門」シリーズの6作目。今月7作目「怪力類人猿」が放送されるので、ついでに録画して見てみた次第。
白黒スタンダード。昭和30年だからまだまだ白黒スタンダードの時代である。録音が悪いのか役者の滑舌が悪いのか台詞が聞き取りづらくて細かいところがわかりにくい。

まあ話は簡単なのだが、細部が聞き取れないと気になるのだよ。
数馬の勧めでこの地を去ろうとしたが船が転覆するまでが第1部でその後が第2部と言った感じ。(そもそもこの転覆シーンが画面に岩が迫ってくるという黄門一行の視点と驚く顔のアップで終わりで、転覆したのかよくわからない。ここは転覆シーンがミニチュアでもいいから欲しいところ)

そして急に村祭りのようなシーンになる。ここで甲斐の残した城の周りの藪の付近で近頃娘たちがいなくなる事件が起こっており、竜神様のたたりだというのでご祈祷をしているのだ。
さらにこの藪には甲斐が残した小判が眠っているという噂がでる。

娘の誘拐とか埋められた財宝とか面白そうな要素が散りばめられるのだが、それらが後半の盛り上がりに全くつながっていない。
予算とか製作期間の都合でばっさり改変されたのだろうか?
なんかそんな気さえする残念さなのだな。
ちなみに娘たちは幽霊城で働かされるけど、別に猛者たちの夜の相手をさせられている訳ではないようだ。

ここで槍五郎(違ったかな?)とかの剣の強者が登場し、黄門に味方するのだが、そもそも活躍が少ないのでラストの意外な落ちが聞いてこない。
「幽霊城のせむし男」というぐらいだから、なにやらおどろおどろしい怪談話を連想するが、せむし男はあまり(タイトルになるほど)活躍しない。
結局はせむし男も槍五郎も甲斐の息子大輔の変装だった、というオチなのだが、これがオチもなにもなし。そもそも変装する必然性を感じない。
多羅尾伴内が「髷をしてない時代劇」と言われたそうだが、「七変化」というのが時代劇の定番だったのだな。それは主人公だけでなく悪役でも。

「幽霊城」とか「せむし男」などの怪奇性も藪に残された小判という宝探しロマンも生かせず、「アイデアはよかったんだけど」の連続で惜しい映画だった。
やりようによっては面白くなったと思うけどなあ。

出演では江原慎二郎が美青年で驚いた。また数馬の爺役の横川を演じてるのが横山エンタツ。コメディリリーフとして登場。










かぐや姫


日時 2021年9月5日17:15〜 
場所 国立映画アーカイブ地下小ホール
監督 田中善次
撮影 円谷英二
製作 昭和10年(1935年)


竹取翁は竹藪で光り輝く赤ん坊を見つけ、自分の子供として育て、息子の造麿(「みやつこまろ」と読む〜藤山一郎)と結婚させようと思っていた。
しかし都の宰相阿部は息子の細身(「ほそみ」と読む)か太麿(「ふとまろ」と読む)と結婚させようとする。
困ったかぐや姫は「見たこともない宝を持ってきた人と結婚する」という。
細身、太麿、造麿の3人は同じ船に乗って唐に出かけるが、造麿だけが小舟に乗せられてしまい、細身と太麿は帰って行った。
細身たちは宝物の偽物を作ってだまそうとする。造麿はなんとか日本に漂着し陰陽師に助けられる。
困った竹取翁一家は都から逃れることにする。陰陽師は一計を案じる。


国立映画アーカイブ、8月の中旬から「円谷英二生誕120周年記念展」を行っており、その一つとして最近見つかった「かぐや姫」の上映。
本来は75分の作品だが、今回のバージョンは33分の海外向け短縮版。
この短縮版だが、1936年にイギリスの日本文化紹介イベントの一つとして「日本の民話を題材にした映画を上映したい」ということで外務省を通じての依頼で短縮版が作成されたようだ。
その短縮版がイギリスの映画博物館に残っていて日本に帰ってきたそうだ。

この「かぐや姫・短縮版」が発見された時「世紀の大発見」みたいな言われ方をしたけれど、今日スタッフの方の解説がついたのだが、その方によると実はそのイギリスの映画博物館の所蔵作品リストには何年も前から載っていたそうで、その情報が日本に伝わっていなかっただけだそうで。
案外、そうしたことで映画ってひょっこり出てくるものらしい。
(この話を聞いて「緯度0大作戦」の契約書が東宝の書類倉庫からひょこり見つかり、それで権利関係がクリアになりDVD化が出来た話を思い出した)

本日の解説では月のカットが見所だそうで、ただ月を撮影したのではなく、赤く塗った月を赤いフィルターをかけて撮影するとより鮮やかになり、そこへ青いフィルターをかぶせていって月食を表現しているそうだ。
大海原の船とかのミニチュア撮影だけが特殊撮影ではない。

それよりも驚いたのはラストの改変である。
陰陽師が大声で「月食の月を見ると目がつぶれるぞ!」と大声で言い、かぐや姫を警備している細身や太麿も目をつぶる。そして「心の清らかなものだけが天女の姿を見ることが出来る」といい、細身などは「ああ美しい天女が見える」などと堂々と言う。
太麿は「なにも見えません」と言っているので案外いい奴である。
その間にかぐや一家は夜逃げするのだ。

この太麿、3人に唐に出かけたときも49日の船旅を続けねばならないと聞いてさっさと降りるヘタレである。でも細身の方は「旅をお続けなさい」と造麿を嵐の中、小舟で投げ出して自分は大きな船で帰るのだからよっぽど悪い奴だ。

それにしてもかぐや姫が月に帰らず夜逃げする展開には驚いたなあ。
これイギリスで上映されたらイギリス人には誤った話が伝わっちゃうよ。
「新説・かぐや姫」と題してならいいけど。

「かぐや姫」とかも案外本当は夜逃げしたけど「月に帰った」とされた実話があったのかも知れない。それが脚色されて後の世に物語として残ったとか。

あっここでは全く触れなかったけどこの映画、歌劇というかミュージカルです。このころは「鴛鴦歌合戦」とか「ほろ酔ひ人生」とか「孫悟空」とか歌を中心にした映画が多かったんだなあ。
今じゃ完全になくなったと言ってもいいくらいだからな。

歌とか、特殊撮影以上にラストの大改変にびっくりでそちらばかりが印象に残った。当時はどう評価されたか、そっちのほうも知りたい気持ちだ。
(あえて読んでなかったが国立映画アーカイブのHPの今回の上映会のストーリー紹介ページにはラストまで書いてあった)
またあの改変は当時の人なら誰でも解るような暗喩や隠喩だったんだろうか?気になるなあ。

あと追記しておくと、ファーストカットが夜空から星が光って流れ星が落ちていくカットなのだが(それがアニメーションで表現される)、その最初の星がチカっと光るカットが「マイティジャック」のオープニングと一緒だった。へ〜驚いた。









白頭山大噴火


日時 2021年9月5日13:40〜 
場所 TOHOシネマズ日本橋・スクリーン4
監督 イ・ヘジュン、キム・ビョンソ


北朝鮮と中国の国境にある白頭山が噴火した。その被害は韓国ソウルでも大地震となって波及した。事態を重く見た韓国政府は異端の地震学者と言われたカン・ボンネ教授を呼び出す。彼の見解ではあと3回は爆発があり、4回目が一番大きい可能性があるという。
それを阻止するには白頭山の麓の炭坑の近くで核爆発をさせれば力が分散して大爆発を防げるかもというものだった。これ以上の被害を防ぎたい韓国政府は北朝鮮の核ミサイルから核兵器を奪い、それを爆発させる計画を立てた。
そのメンバーには爆発物処理のスペシャリスト、チョ大尉(ハ・ジョンウ)とそのチームが選ばれた。核ミサイルの隠し場所は北朝鮮の工作員でありながら中国にも情報を売ったことで投獄されているリ・ジュンピョン(イ・ビョンホン)から聞き出すしかない。
チョ大尉たちは「核爆弾のセットまで」ということで出発したが、火山灰による輸送機の故障で本隊の機は墜落。実戦経験のないチョ大尉の一行が作戦を実行させることに。
リ・ジュンピョンとは合流したがこの男、一筋縄でいく男ではない。


韓国映画。韓国映画を見るのは久しぶりである。「白頭山大噴火」っていうタイトルだから「日本沈没」みたいな大災害映画かと思ったらそれだけではない。戦争映画のミッション物のジャンルに近い。

冒頭、ソウルは大地震でビルは崩壊しまくり。阪神大震災とか被害に本題震災を知ってる日本人からすると「ああいう壊れ方するかなあ??」って疑問が出てくるけど、韓国と日本では耐震基準が違ったりするのかな?

本隊機の墜落、ジョンピュンとの合流、核爆弾の奪取、ジョンピュンの裏切り、アメリカの計画阻止の介入、中国の介入、そして爆発場所の変更、と次から次へと事態が変化し、本当に飽きさせない。

単に映像のスケールだけでなく、話の発想も含めての大胆で緻密な脚本。アメリカ映画ならともかく日本より人口の少ない(市場規模の小さい)韓国でなぜ可能なのか。なぜこんなに予算がかけられるのか。「世界市場を相手にしてるから」の一言では済まないだろう。総人口は少なくても映画人口(要するに一人当たりの映画の観る回数)は日本より韓国の方が多いのだろうか?
2000年以降、完全に負けてるよね。
映画の展開やらアクションやらを楽しむ前にやたらとそんなことばかり気になった。

そしてアメリカは中国との国境付近で核爆発をさせることに大反対。
米軍の特殊部隊がチョ大尉の部隊を攻撃したり、またジョンピョンは中国に核爆弾とチョ大尉を引き渡そうとしたりで事態は二転三転。
最後の最後で韓国、北朝鮮、中国、米国がにらみ合うシーンは朝鮮半島のおかれている立場を象徴している。

その点日本ならアメリカの意向には逆らえず、アメリカの意向に逆らっても作戦を実行する展開にはなりにくいよなあ。
むしろ「シン・ゴジラ」みたいにアメリカ軍の方が協力してくれる展開になる。

日本と韓国の考え方や映画環境の違いを見せつけられる、映画とは直接関係ない、そういうことを考えさせられる映画でした、私にとっては。








鳩の撃退法


日時 2021年9月4日18:25〜 
場所 新宿ピカデリー・スクリーン9
監督 タカハタ秀太


元小説家の津田(藤原竜也)は富山でデリヘルの運転手をしていた。やくざから借金の取り立てにあうが、古本屋の店主(ミッキー・カーチス)は「また小説書けよ」と焚きつける。
2月29日の夜明け前、津田がよく行く深夜営業のコーヒーショップでよく見かける幸地秀吉(風間俊介)に話しかける。
幸地はバーの店長をしており、仕事が終わった後、朝までここで時間をつぶして帰宅するのだ。帰宅して妻から妊娠を告げられる。幸地は「誰の子だ!」と激怒する。
津田はデリヘル嬢のまりこに頼まれて彼女の友人の晴山を駅まで送ってほしいという。晴山に言われた駅に送り届けると向かいに止まっていたベンツで女と出会いキスをした。女は幸地の妻。その晩から幸地一家は失踪した。
古本屋の店主が死んだ。店主から「津田に渡してほしい」と言われていたというキャリーバッグを受け取る。
その中には津田がどこかでなくした「ピーターパンとウェンディ」と言う本と、100万円の札束が30、1万円が3枚入っていた。
その1万円を使って床屋のまえだ(リリー・フランキー)に行く津田。しかし後日デリヘルのオーナーからその1万円は偽札だったと聞かされる。


とここまでで話はまだまだ3分の1ぐらい。以上は実は今は高円寺でバーテンをしている津田が書いた話なのだ。編集者(土屋太凰)が読んだという形式だ。
「これはフィクションですよね?」と聞く編集者に津田は「その質問は受け付けない」という。津田はかつて小説のモデルから訴えられ、出版社はそのことを警戒してる。

さてさて津田の話は小説なのか?、それとも津田が消息を絶っていた3年間に起こった出来事なのか?幸地一家の失踪事件と偽札の関連とは?
そういった謎が謎を呼ぶ展開だ。
そして町の黒幕の倉田(豊川悦司)という男が関わっているらしい。

回想ショットもくどくない程度に挿入され、複雑な話をわかりやすくしている。やりすぎると「そこまで説明されるとクドイ」になるし解りにくいのもおいてきぼりにされる。

結局最初の偽札の出所は明かされないんだけど、それは倉田がどこかから偽札の購入を持ちかけられての見本だったのだろう。その偽札作成は出てこないけど。

「ピーター・パンとウエンディ」ってどんな話なんだろう。そっちの方も気になった。コーヒーのシミがついたこの本があちこち人手に渡る展開も面白い。

本年度ベストワン!とかでもないけど、謎で引っ張っていく展開は近年にない面白さだった。
いまおかしんじ監督が以前に「この本は面白い」と言っていたので映画化で期待していたが、期待を裏切らない面白さだった。







遊星王子2021


日時 2021年9月4日12:30〜 
場所 ヒューマントラストシネマ渋谷・スクリーン3
監督 河崎 実


遊星王子(日向野祥)は故郷の星から300万年光年離れた地球にやってきた。だが太陽フレアによるデリンジャー現象で宇宙船は不時着。
それから200年後。現代の日本の下町。そこへ宇宙の侵略者、タルタン星人がやってきた。あるパン屋の地下に自分たちに必要な鉱物があるというのだ。パン屋の娘・君子(織田奈那)がタルタン人に襲われたとき、マンホールから見慣れない男が現れた。彼こそが遊星王子!
助けてもらったお礼に自分の部屋に王子を入れる君子。だがついに弟や母にばれる。
またマスコミにも見つかり、遊星王子はテレビに引っ張りだこ。
遊星王子は人気歌手の舟木康介に似ていた。テレビ局で康介本人と出会う王子。康介はハードスケジュールでへばっていたため、1日だけ王子と入れ替わってもらう。そこへタルタン人がやってきた。
康介なのでタルタン人に負けそうになったが、なんとか王子が間に合った。
タルタン人は次の手として、君子にホレてる石森を味方にして、王子とタルタン人の因縁を暴露する。それは驚愕のものだった!


河崎実監督の最新作。なんだかんだ言ってもこの数年の河崎作品は観てるなあ。「イカレスラー」の頃は観てなかったけど、最近は特撮関係ネタだから。

オープニングはメインタイトルが出て、主題歌が流れ、クレジット。そのクレジットのタイトルバックが「ウルトラマン」「ウルトラセブン」「帰ってきたウルトラマン」などでの円谷初期作品でおなじみの影絵を使った映像だ。単に遊星王子だけではないですね。

そして遊星王子が他人の家に下宿したり、アンパンが好物、とかなんだか藤子不二雄作品のようだ。
パンフを読んだらやはりそこは意識しているそうだ。

タルタン人によると遊星王子は以前は宇宙各地の文明のある星を巡って宇宙連邦に加盟させるかどうかの判定をしていたそうだ。そして野蛮な宇宙の平和を乱す星と判断すると星ごと破壊していた。
タルタン星にやってきた王子を最初はもてはやしていた。しかしタルタンの貴族の娘であるクローディア姫(織田奈那)にホレてしまう。しかしクローディアには婚約者がいた。困ったタルタン人だったが、その婚約者
のタルタンの王子が説得する。
タルタン人は遊星王子が腹いせにタルタン星を破壊すると思いこみ、星を捨てて脱出した。そして君子の家の下にある遊星王子の宇宙船の中にあるエネルギー鉱物をねらってきたわけ。

王子は地球に落ちたときのショックで記憶喪失なので思い出せない。結局はタルタン星を破壊してないとわかり、タルタンと和解し、エネルギー鉱物を分けてあげるんだけど。

話はこんな感じで近年になく話がまとまっていて面白かった。
あと笑える箇所も何カ所かあったしね。
君子の母親が自分の家をあんぱんに「遊星王子あんぱん」って名付けて打っていい?って康介が入れ替わってる遊星王子に聞いて「いや本人に聞かないと」「ライツが複雑で」というあたりは笑った。

あと康介と遊星王子が似ている件に関しては特に因縁はなかった。「2」が出来たら「実は・・・・」とかの展開が欲しいですね。

本日、ヒューマントラストシネマで観たのだが、私の隣に座ったのがなんと河崎監督本人だった。監督本人の横で最新作を観るという幸運(?)を得る。結構笑ったからよかったかな。気を使って終わったとき思わず拍手しそうになった。
ロビーにいた監督にお声掛けしてパンフレットにサインをいただいた。先にパンフレット買っておいてよかった。
前に「ちょっと今から会社辞めてくる」を観たときもそうだったが、東京の映画館ではたまにはこういうことがある。

あと「ウルトラマン」でホシノ少年を演じていた津沢彰秀さんが「星田理事」という役名で「怪獣や宇宙人と戦ってくれるいい宇宙人は昔にもいました」と証言する役で出演されていたのがツボだった。
パンフレットには団時朗とかきくち英一の話は載ってる。しかし津沢さんはパンフには出てこない。残念。