2021年11月

   
唐人街探偵 NEW YORK MISSION
犬神家の一族<4K修復版> 友よ、静かに瞑れ 彼女の好きなものは 大いなる旅路
愛のまなざしを 老後の資金がありません! 怒濤一万浬 胸騒ぎがする!〜ヒールズ爆誕〜
8時間の恐怖 弾丸大将 カウンセラー 007/ドクター・ノオ
日本沈没 4Kデジタルリマスター版 007/ロシアより愛をこめて 風来坊探偵 赤い谷の惨劇 ひらいて

唐人街探偵 NEW YORK MISSION


日時 2021年11月28日20:45〜 
場所 ヒューマントラストシネマ・スクリーン3
監督 チェン・スーチャン
製作 2018年(平成30年)


北京の探偵、チン・フォン(リウ・ハオラン)は探偵の叔父タン・レン(ワン・パオチャン)が結婚するというのでニューヨークにやってきた。
だが会場の雰囲気がおかしい。実はNYの唐人街のボス、アンクルセブンの孫が臓器を抜き取られて殺された事件があり、その犯人を捕まえるために世界中の名探偵を集め、懸賞金500万ドルをかけたのだ。タン・レンはチン・フォンにその犯人を捕まえてもらおうと思ったわけだ。
数日前に白人女性が臓器を抜き取られる事件があった。二つの現場の監視カメラの動画を探偵でハッカーのKIKOが見られるようにした。
日本の探偵、野田(妻夫木聡)とチン・フォンが見て、ある中国人の男が両方の現場で発見する事が出来た。
その男ソン・イー(シャオ・チャン)を容疑者とし、チン・フォンとタン・レンは向かう。ソンに会ったがこの男は右利き。検視の結果犯人は左利きと推定されていた。チンはこの男は犯人でないと考える。
しかしアンクルセブンの義理の息子はとにかく犯人をあげろ!とソンを拉致しようとする。
チンたちはソンを助け、逃亡。やがて真犯人が分かってくる。


この夏公開された「唐人街探偵 東京MISSION」の前作。東京編は3作目でニューヨークを舞台にしたこの映画は2作目。
これには妻夫木も出ているとパンフに書いてあった。2作目も見たいと思ったが、たぶん劇場公開はないんじゃないか、来年あたりレンタルDVDで見られるかな、と思っていたが、今日昼間Twitterを見てたら京都みなみ会館で上映されてる。「えっ?」と思って検索したら11月上旬から公開されてるじゃないですか。
東京は渋谷だけ。時間を調べたら今週は20時45分からの1回しか上映がない。まあそんなものか。
日曜の夜に見るのは迷ったが、もう終わりそうなので無理して見に行ってきました。

お目当ての妻夫木聡は前半の15分ぐらいで退場。
防犯カメラ映像を16倍速で見て男を発見するのだが、その男が解ったところで「これで事件は終わった。俺は興味がないから帰る」と帰ってしまう。
そう言っておいて帰ってないとかかと思ったが、ホントに出てこない。
(まあ東京編に続くようにラストで野田がチンたちを呼び寄せるワンカットだけはあったけど)

そんな感じだからもうどうでもいい気分で見た。
2つの現場に風水の記号があり、それから今回の犯行は風水に関係があると思い、犯行現場も日付、時間、抜き取られる臓器もすべて風水がらみ。
そこで結局病院の医師が犯人と分かる。

事件はそんな感じ。
それでも繁華街をスパイダーマンとかドナルドダックもどきのコスプレをして歩くとか、ラストで女性が危機に陥るとか東京編にも通じるお約束があると解った。

東京編の方がヘリコプターをとばしたり、豪華なんだよね。
これはシリーズが進むにつれて派手になったのだろう。だから逆に観ていくとだんだんしょぼくなると言う。
次回はロンドン編のようですが、日本で公開されたらとりあえず観てもいいかな。
自分、おじさんのキャラがくどくて好きにはなれないんですが。








犬神家の一族<4K修復版>


日時 2021年11月28日15:20〜 
場所 テアトル新宿
監督 市川崑
製作 昭和51年(1976年)


ストーリー省略。
ひょっとしたら日本で一番有名なミステリーではないだろうか?何度も映画、テレビで映像化されている。それもこれもこの角川映画第1作の市川崑版の成功があってのことだろう。
見る人のほとんどが犯人を知っていて、それでも観に来るのだ。

今回は公開45周年を記念しての4Kデジタル修復版。
画面サイズもスタンダードではなく、東宝ビスタといわれる通常のビスタとスタンダードの中間の1:1.5だそうだ。
この映画、ほとんどの映画館ではスタンダードサイズで上映され、全国で6館だけでこのサイズで上映されたそうだ。
そして冒頭に角川春樹事務所のマークが入るのだが、これがアニメーション。
あれ、最初は青地にフェニックスのマークの下に「角川春樹事務所」とだだけ記されてたと思ったが、これも東宝ビスタと同じ劇場だけでついていたらしい。今回の4K版は市川監督の意図したとおりのサイズだそうで、そこも「修復した」ということだそうだ。
(でも東宝マークはない)

実は昨日の「友よ、静かに瞑れ」はお客さんが10人くらいしかいないようながらがらだったのだが、さすがに「4Kリマスター化」の宣伝が効いたのか、満席状態。
45年前の熱気を思い出しましたねえ。

数年前に購入したブルーレイを観たときに、「全体的に紫がかってなんか変」と思ったが、今回はそんなことはなし。ちゃんとした色で、出演者の肌の質もちゃんと写っている。

で、6月にあるトークイベントが後に監督になった方が、この映画の助監督についていて、犯人が斧を振り下ろして血しぶきを浴びるという回想シーン、市川監督はどうも血しぶきの具合が気に入らなかったらしく撮り直しを希望された。しかしそのときはセットもバラしてしまい、美術スタッフからは「出来ないよ」と言われたが「箪笥一つおいておくだけでいいなら」と言われ、暗がりの中で背景に箪笥一つおいただけで撮影した、という話を聞いていたので、そこは特に注意した。

確かに背景には箪笥の角しか写っていない。でもつながりに違和感が全くない。

とにかく70年代の日本映画の歴史に影響を与えた1作で、角川映画の第1作がこの「犬神家の一族」でなかったら、その後の角川映画の歴史、日本映画史にも影響を与えていたかも知れない。
その思いを新たにした。








友よ、静かに瞑れ


日時 2021年11月27日16:50〜 
場所 テアトル新宿
監督 崔 洋一
製作 昭和60年(1985年)


沖縄・多満里。この街に新藤(藤竜也)という男がレンタカーでやってきた。泊まるホテルはフリーイン。この街は今は下山(佐藤慶)という男によって再開発の為の買収が行われていた。その中でフリーインの主人・坂口だけが反対していた。
数日前、坂口は下山の部下の高畠(原田芳雄)を襲ったとして逮捕されていた。「坂口はそんな男ではない」。学生時代からの親友の新藤はそう思ってやってきたのだった。
この街の警察の刑事、徳田(室田日出男)は下山から買収されていいなりになっているらしい。
新藤がフリーインにいる坂口の息子に尋ねると誘拐もどきのことをされ、脅かされたようだ。
しかし息子は報復を恐れてそれを言わない。新藤は高畠と対決。徳田が下山から金を受け取った金銭貸借書を手に入れた。
坂口は釈放された。フリーインに帰ったとき、視察に来た下山と出くわした。恐怖に駆られた下山は・・・・


「犬神家の一族」公開45周年を記念しての「角川映画祭」、目玉はもちろん4K化した「犬神家の一族」だが、主要作品は上映される。
その中で「友よ、静かに瞑れ」をチョイスした。
この映画、私の生涯のベスト20には入れてもいい映画である。
でも劇場で観たのは封切り以来ではないか?
(しかし今回はフィルム上映ではなく、デジタル上映らしい。この映画、夜のシーンとか暗い部屋のシーンが多いのだが、逆に全体が白っぽくなってちゃんとリマスターしていないデジタル状態、という感じである)

劇場では観ていないくてもVHSの録画は持っていたから、全部通しではなくても冒頭だけとか、ラストだけとかは何度も自宅で観ていたので、前半の30分ぐらいはせりふも(その間、も)覚えていた。

この映画のキモはなんといってもロケ地である。原作では地方(山陰だったかな)のひなびた温泉町が舞台だが、それを沖縄に改変した。
そして英語と日本語の看板の入り交じった不思議な町並み、そしてこれまたエキゾチックな音楽。
この二つがなかったら、私にとってそれほどの映画にはならなかったかも知れない。
(観た当時は特にハードボイルド探偵ものにあこがれていたのだ)

90年頃、時間ができたときに1泊2日で沖縄に行き、ロケ地まで空港からレンタカーで行ったのだ。
ビデオを観ているときかなにかで「ロケ地は辺野古というところらしい」と知り、地図で確認していったのだ。
そう、今は米軍基地移設問題で揺れ続ける辺野古である。

撮影して数年のレベルだから、まだまだロケした頃の趣は残されていた。今、もう一度行きたいと思うが、30年以上経った今では影も形もないかも知れない。
それほど魅力的な街だった。
朝羽田を発って沖縄に着き、それから2時間ぐらいかけて場所に着いたのだから3時前後か。冒頭に新道がコーラ(ドクターペッパー?)を買うバスターミナルのような場所もすぐ近くにあった。(中には入れなかったけど)
そして那覇で1泊して翌日は沖縄戦跡巡りをして18時頃の飛行機で羽田に帰ってきた。

この映画、説明は省かれ最初は断片的な情報のみで男(新藤)がなにをしにやってきたのか、フリーインの坂口はなぜ嫌われているのかがわからない。説明的な描写は一切ない。

そして徐々にこの街における下山の立場や街の人間の考えが明らかになっていく。
あの晩、坂口が逮捕され夜、なにがあったかを知る女性(倍賞美津子)が教えてくれた。

終始言葉の少ない新藤、藤竜也が素晴らしい。
そして下山と坂口の最後を見届けた後車で去っていく。
この時の長い長い坂道を上っていく車をとらえた長いカットが素晴らしい。

長々とは書くまい。言葉にならない素晴らしさがある。










彼女の好きなものは


日時 2021年11月26日19:10〜 
場所 TOHOシネマズ新宿・スクリーン9
監督 草野翔吾


高校2年生の安藤純(神尾楓珠)はゲイ。そんな彼が立ち寄った書店でクラスメートの三浦紗枝(山田杏奈)がBLのマンガ本を買っているところを目撃してしまう。純は大人の男性が好きで、妻子ある大人の男性のマコトさん(今井翼)と付き合っていた。
紗枝はこのことを黙っていてくれるよう懇願。秘密を守ってくれた純に感謝し、次の日曜日にBL関連のグッズ販売イベントにつきあってくれるよう頼まれた。
そのことをきっかけに紗枝は純を好きになる。「女性を好きになって家族がほしい」と思っていた純も、紗枝には好意を抱く。
友達とよみうりランドへ遊びに行った日、観覧車で紗枝は純に告る。純はOKした。
中間テストも近くなり、二人でファミレスで勉強し、やがて純の家で勉強しようとする。純は紗枝を蛇行とするが、いよいよというときに勃なかった。
試験の終わった純と紗枝は紗枝のBL仲間の大学生とダブルデートで日帰り温泉に行った。その日、マコトさんが家族と来ると知っていて選んだのだ。
だが、紗枝と一緒の時、ネットでの親友のファーレンハイトからメールで遺書が届いた。混乱する純。出会ったマコトに慰められるうちにキスをする。それを紗枝に見られてしまう。


一昨年、「腐女子、うっかりゲイに告る」のタイトルでNHKでドラマ化された「彼女の好きなのはホモであって僕ではない」の映画化。
原作は同性愛の高校生が感じる「生きづらさ」を描ききった小説で大変心を動かされた。もう1冊買っていまおかさんにも貸して読んでもらった。
ドラマ版はまだ観ていない。
映画は12月3日公開だが、本日から日比谷、新宿、梅田などのTOHOシネマズで先行公開だ。早速見に行ってきた。

う〜ん、一言でいうと「だめじゃない」って感じかな。
神尾楓殊をはじめとする出演者は全員好演している。特に亮平役の前田旺志郎が原作のイメージを損なわずよかったと思う。また今井翼がこういう歳の役を演じる歳になったのかと感無量。
私の中では今でも純が演じられるような年齢のままだから。

原作ファンだからどうしても原作との比較になってしまう。
冒頭で紗枝が純に「ホモホモあんまり言わない方がいいよ。ホモは一部の人には侮蔑用語だから」という。ここが原作では冒頭ではなく最後に「純」が「紗枝」にいうのだ。これでは真逆になってしまう。
原作では「周りの人間はそのつもりはなくても当事者を傷つける場合がある。いちち指摘しないけど」という趣旨のメッセージを私は感じた。これが紗枝が言ってしまったのでは意味が狂ってしまう。

監督は草野翔吾。知らない監督だ、と思っていたらプロフィールを読むと数年前に、めちゃくちゃ酷評した「あまくてにがい」の監督である。
パンフレットのインタビューを読むとやはり本人にも自覚があったようで「『あまくてにがい』では当事者のことがよくわかってなかった」的なコメントで本人にもなにかしらの自覚がある。

しかし一番この映画についていいたいのはタイトルの変更である。
「彼女の好きなものは」ではなんのことかさっぱりわからない。まあもっとも今年の夏の「Summer of '85」で内容が伝わるかと言われればそうでもないのだが。
なぜここでタイトルを変えなければならなかったのか?
監督のインタビューでも「撮影中に変えたくなった」ということで理由ははっきりしない。(正確にはなんか言ってるけど納得出来ない)

この原作タイトル、「彼女が好きなものはゲイであって僕ではない」「彼女が好きなものはBLであって僕ではない」でも十分である。
しかし「ホモ」という単語を使った。
原作中にも説明があるように「ホモは侮蔑の意味もある」と書いている。
タイトルの「僕」は純であり、「彼女」は紗枝だ。
純は同性を恋愛対象とする自分を「ホモ」という単語を使って侮蔑している。つまり純の「自分を肯定できない」感を表現するタイトルなのだ。

ここにこの原作の意味がある。
同性を恋愛対象としてしまうことへの自分への嫌悪感、そこから自殺未遂事件を起こすし、ネット上の親友、ファーレンハイトは自殺する。
そういった自分を認められないもどかしさを表現したタイトルなのだ。

原作での意味を理解せずに改題したらなら言語道断だし、原作の意味を理解しつつなんからの事情でタイトルを改題しなければならないとしたら、それこそが「今の日本」ということだ。

今回、先行公開初日の19時10分の回を観た。スクリーン9というTOHO新宿の最大の大箱である。ここで観客は20名ぐらい。
この大箱で20名はきついよ。寂しすぎる。
日比谷の舞台挨拶回は満席だったようだが、寂しすぎるだろう。
これも意味不明、内容不明な「彼女の好きなものは」のタイトルのせいか?
とにかく訴求力がなさすぎる。NHKの「腐女子、うっかりゲイに告る」の方がまだ訴求力があった。

そして原作では最後に大阪に転校した純が自己紹介をしようとしたところで終わる。たぶん、彼はカミングアウトしたろうと。
(事実原作の続編「彼女が好きなのはホモであって僕ではない 再会」ではカミングアウトするところから始まる)

これが自殺したファーレンハイトに「QueenU」のアルバムを捧げる帰り道で終わる。ここはどうなんだろうなあ。
私なら新しい学校で紹介しようとする純のアップで終わるけど。まあそれは若松孝二のお得意の回答「あなたが監督ならそうしてください」と言うことなんだろうけど。

ファーレンハイトがHIVのキャリアであるとか、その恋人の死などが完全に省かれたし。まあ時間の関係もあるからすべては描けないのはわかるけど。

まあとにかくモヤモヤ感は残り、完全にだめではないがとしか言いようがない。着替えのシーンで神尾楓殊の上裸が見られたのはよかったけど。
最初に書いたように映画向きの小説ではないとは思うけど、諸々残念すぎる。








大いなる旅路


日時 2021年11月23日13:00〜 
場所 ラピュタ阿佐ヶ谷
監督 関川秀雄
製作 昭和35年(1960年)


大正末期、盛岡機関区で働く岩見(三国連太郎)は同僚の佐久間(加藤嘉)を見送った。佐久間は社内の試験に合格し、東京で働くことになったのだ。佐久間と岩見は同じ村の出身だったが、岩見は試験に落ち、ひがんでいた。酒に酔って大喧嘩をするなどの失敗もし腐りきっていたが、雪崩での脱線事故に合い、機関士が最後まで仕事を全うする姿を見て心を入れ替えて働くようになる。
やがてゆき子(風見章子)と結婚。4人の子宝に恵まれた。やがて戦争。
長男の忠夫(南廣)はすでに機関士助手として働いていたが、召集。やがて戦死。次男・静夫(高倉健)は岩見がかつて落ちた試験に合格。東京での教習生活が始まった。三男・孝夫(中村嘉葎雄)は予科練に入った。
やがて終戦。予科練から帰った孝夫は価値観が逆転し、戦後の生活になじめない。そして東京へ出ていった。末娘咲子(小宮光江)は親から見ると心配な男と結婚した。
二人の生活に戻った。帰ってきた孝夫だったが病気で体を悪くしており、亡くなった。咲子は結婚に失敗し実家に帰ったが、岩見は許すことができず追い出した。
静夫は順調に出世し、佐久間の娘と結婚した。咲子も今度はまじめな男と結婚した。
勤続30年強。岩見は社内で表彰されることになった。


「シェルブールの雨傘」を観に青梅に行ったとき、青梅は「映画看板の街」(由来は忘れた)ということで昔の映画看板があちこちに飾ってある。それで青梅駅のホームにも映画看板があり、それがこの「大いなる旅路」という映画だった。
今回のラピュタでの乗り物映画特集で上映されることになり、(金欠なので迷ったが、招待券をもらっていたので)鑑賞。

「喜びも悲しみも幾年月」と同様な戦前から戦後にかけての男の一代記。
三国連太郎はこの映画でブルーリボン主演男優賞を受賞。

若い頃に観たらあまり感激しなかったかも知れないが、こちらも年をとると共感する部分も多くなる。働いて30年かあ。
いろいろあったよねえ。

ラストは三国も風見も老けメイクで80歳ぐらいに見える。
でも映画の始まりが20代前半としたら、それから30余年だからまだ50代後半なんだよな。
このころは定年も55歳だったし、50代なんておじいさんだったんだなあ。
今ではまだまだ働け!って言われるけど。

「沖縄が取られた」と言ってる頃に忠夫は召集されるわけだが、そうなると忠夫は20歳になるかならないか。
それを南廣が演じ、その弟か高倉健に中村嘉葎雄である。キャラが濃すぎる。
さらに高倉健が結婚した相手の兄(つまり加藤嘉の息子)がまだ二枚目だった頃の梅宮達夫。
濃すぎてクラクラするようなキャスティング。

働く男の一代記で青梅駅の看板がなければ観なかった映画だが、この歳で観ると共感する部分も多く、結構ぐっときた。
フィルムセンター所蔵作品なので、上映は3回まで。
そのせいか混んでいて、12時半頃来た人は満席で帰っていた。
早めに来てよかった。









愛のまなざしを


日時 2021年11月21日16:05〜 
場所 イオンシネマ板橋・スクリーン7
監督 万田邦敏


精神科の開業医の滝沢貴志(仲村トオル)は6年前に死んだ妻・薫(中村ゆり)のことで悩んでいた。喪失感、自責の念。
そんな時、水野綾子(杉野希妃)が患者としてやってきた。綾子は恋人のような関係の男に連れられてきたが、綾子本人の話ではつきあっているようではないようだ。彼女の話では小さい頃に両親を事故で亡くし、叔父に育てられ、邪魔者として扱われていたという。
「先生しか私の理解者はいないんです」。そういわれて貴志は患者として綾子と話すようになる。しかし綾子はそれだけではなく、「先生が苦しんでいるなら私が寄り添いたい」と言い出す。
交際を望む綾子だが、「医者と患者だから」と一旦は断ったが、「もう直りました。ですから患者ではありません」と言い出す。
それから結婚を考えた交際をするようになる貴志。貴志は綾子の家に通うようになる。貴志は中学3年の息子祐樹(藤原大祐)がいたが、死んだ妻の両親に世話をしてもらっていた。祐樹に結婚のことを話すと祐樹は拒絶する。
薫の弟の茂(斎藤工)が貴志を訪ねてきた。祐樹が貴志と暮らしたくないと言っているという。「薫のことは忘れていない」という貴志だがそれを綾子に聞かれてしまう。
綾子は茂と会った。そして綾子は貴志に「祐樹君は実はあなたの子供ではなく薫さんと前の彼氏との間に出来た子だ、と茂さんが教えてくれた」という。
茂は水野綾子の名前で検索すると実は郊外に母親と妹が住んでいると解った。


万田邦敏作品は初めて見た。この映画、ユーロスペースをメイン館で上映だが、一部のイオンシネマでも上映があり、イオン板橋ではdポイントを使って鑑賞も可能だから、「老後の資金がありません!」とハシゴして鑑賞。

観た動機は内容とかではなく、息子役の藤原大祐を最近注目しているから。撮影は2年ほど前だそうだが、藤原大祐にとっては初の演技経験だったとか。顔立ちも今と比べるとちょっと幼い。

この映画、とにかく杉野希妃の綾子がやばい。完全なメンヘラ女でこんなのと関わったら完全に不幸になる。事実ラストは綾子が「私を殺して!」と言って貴志に包丁を握らせるという展開だ。
絶対に関わってはいけない女である。
(「私だけ見て!」「今日は仕事休んで私といて!」とかもうやばいやばい)

普通のサラリーマンなら彼女とは「やばそうだ」となった時点で別れればいいかも知れないが、貴志はメンタルクリニックの医師なのでそうもいかない。それでも医者と患者の一線を踏み越えてしまったのは死んだ妻の心の呪縛のせいか。

とにかく平気で嘘をつく人というのは存在する。前にも書いたけどそういう人間をかつて2人会ったことがある。一人はおつきあいした人として、一人は仕事の同僚として。
おつきあいの方は別の男に行ってしまったし、同僚は会社を辞めたので向こうが離れてくれたので大丈夫でしたが。
(ちなみにおつきあいの方、次の男も嘘をつかれて大変な思いをしたらしい)

それがまた杉野希妃が演じるからさらに怖い。彼女、一般的には(いや映画ファンでも)知られてないけど、かつて(10年くらい前だったが)に東京国際映画祭でも特集を組まれたりして知り人ぞ知るなのである。
(2019年3月だったが、広島に行ったとき横川シネマに行ったら舞台挨拶があったらしく、劇場前でお見かけした。そのときは横川有楽座に行ったとき前を通ったのだと記憶する)

そういう愛の狂気(凶器)をビンビン感じてとにかく不快な不可思議な感情がわき上がって恐かった。
虚言癖の人はとにかく恐いです。
もうそれ以上のことは言えません。
斎藤工、藤原大祐の出演が一服の清涼剤でした。












老後の資金がありません!


日時 2021年11月21日10:45〜 
場所 イオンシネマ板橋・スクリーン1
監督 前田 哲


後藤篤子(天海祐希)53歳、夫・章(松重豊)は56歳。結婚30年目の夫婦。横浜の郊外に一軒家を持ち、ローンはまだ2000万円残っている。長女まゆみ(新川優愛)はフリーター、弟の勇人(瀬戸利樹)は大学4年だが就職は決まっている。
そんな時、夫の父親(綾田俊樹)が亡くなった。章の妹からは「私たちは両親の面倒を見てきたのだから葬儀費用は払ってほしい」と言われる。
元浅草の和菓子屋だった章の父親は母親の芳乃から盛大にやってほしいと言われ、400万円以上の費用がかかった。「香典でまかなえますよ」と言われたが、香典は42万円で約380万円の赤字。700万円あった貯金は一気に半分以下になった。
篤子も働いていた家電量販店も契約が切れ無職、さらに夫の会社も倒産し、退職金は全くでない。
母親の芳乃に9万円の仕送りをしていたが、これも無理になり、それならと芳乃と同居することになった。
しかし老舗和菓子屋のおかみさんだった芳乃は散財癖が抜けない。


2年ほど前から「老後資金は2000万円必要」などと言われはじめている時代。こういうお金にまつわるコメディーは時代劇(「決算忠臣蔵」とか「殿、利息でござる」とか)でもやっていて一定のヒットが見込めるジャンルらしい。

でも私なんか笑えなかったなあ。後藤家は700万円貯金がある。そして映画の大半は280万円貯金がある状態だ。ローンがまだ2000万円残ってるから精神的には余裕がないかもしれないが、とりあえず家はある。
息子は就職してくれた。娘の結婚相手は年収150万のバンドマンで心許ないが、彼の実家は宇都宮で餃子店のチェーンを営んでいて、お先真っ暗ではない。

もちろん芳乃のすき焼き牛100g3000円の感覚は腹が立つ。5000円弱のティーセットをおごる感覚もイヤである。
オレオレ詐欺で100万円の被害もいやである。

そして無職になった章が交通整理の警備員の仕事をするが、あれを底辺のように描くのはやめてほしいなあ。
篤子の友人が父親が喧嘩で出て行って、市役所の年金課が本人確認に来るから誰か替え玉を、と言われて芳乃が変装するのもだます相手が一般人ならともかく、役所の人間でははっきり言って詐欺である。
詐欺を「人助け」と言って荷担するのは道義的にいかがなものか?
これでは「オレオレ詐欺」も責められません。

そして最後は芳乃が「生前葬」を開く、と言って篤子は反発して欠席するのだが、その席で芳乃は篤子に対する感謝を述べる、ということでハッピーハッピー。
世の中そんなうまくいかないよ。

それに章の妹の夫はベンツに乗っていて、そこそこ裕福である。もちろん金はいくらあっても「足らない」と思うだろう。
「家族はつらいよ」を「年収1500万円の家族の悩み」と書いたけど、この章は月給50万円ぐらいはありそうだ。私にすれば十分裕福である。
もちろん子供もいて出て行くものも多いだろうけど。

全体的に主人公の悩みを共有できなかったなあ。
結局貯金は280万円を減らすことなく過ぎ、夫も親友の会社に(たぶんいい条件で)再就職でき、家は売ってローンも払って1200万円残った。それでシェアハウスに住みはじめ、芳乃は妹の家に引っ越していった。

結局貯金は1400万円。もちろん老後2000万円には足らないけど、それでも未来は暗くない。
見終わって見ていたお年寄りが「そうよねえ、突然お金がいるときってあるのよねえ」と言っていたのが印象的だった。

私には「私よりワンランク上の生活者の悩み」だった。
ラストに篤子は臨時収入で93000円のブランドバッグを買ってたけど、私は絶対に93000円の鞄を買うことはない。










怒濤一万浬


日時 2021年11月20日 
場所 ラピュタ阿佐ヶ谷
監督 福田純
製作 昭和41年(1966年)


ラピュタ阿佐ヶ谷の「のりもの映画特集」の1本で上映。
この映画は2002年に浅草東宝のオールナイトで鑑賞。聞いたことのない映画だったので期待せずに見たのだが、非常におもしろかったという印象が残った。

その後、どこかで上映されたこともなく(いや私が知らなかっただけの可能性も高いですが)、再見したいと思いつつ機会がなく、今回19年ぶりの鑑賞。
(ちなみにこの映画のタイトルを「どとういちまんり」と思っていた。正しくは「どとういちまんかいり」。「浬」は「かいり」である。バカがばれた)

業績がイマイチの組織に本社から新しい上司が派遣されてきて古参のメンバーたちと衝突を繰り返しながらはやがてはこころを一つにしていく、っていうありがちなパターンの映画。

でもこれが面白い。
三船敏郎(新漁労長)、三橋達也(船長)、佐藤允(航海士)、中丸忠雄(無線係)、平田昭彦(現地支店長)、堺左千夫(ボースン)に新人で医学生の田村亮、船員の人見明などが活躍する。

新人の田村がやる気がなく、「足手まとい」ということで三橋達也の船長は衛生管理という船医扱いをしていたが、新漁労長によって現場に出されムクレているという感じ。
堺左千夫が最初のミーティングで三船がたばこをくわえるとライターに火をつけるが隣の三橋船長にだけ火をつけるとかの反感ぶりが楽しい。

そしてスペイン船が網を絡ませ、スペイン船の網を逆に切った切らないと丘で大喧嘩。
最後のクライマックスでアメリカ人のヨットが嵐で転覆し、SOSを出しているので今度は逆に漁労長が「漁は中止、救助に向かう」といい、堺左千夫たちが「漁の方が大切だ!」と逆に対立。
このあたりの展開はうまいなあ。

そして今まで喧嘩したスペイン船が、三船たちがあきらめた網も魚も回収してくれたというオチ。なんか泣けてくるよ。

こういう男たちが真剣に仕事に取り組む映画は好きである。
仕事人間と言われようが、やっぱり男には(もちろん女性にも)仕事は大事で、それに真剣に立ち向かう姿はかっこいい。
「お仕事映画」っていうジャンルを分類したいですね。

あと紅一点、浜美枝が日本から来て病院で働く看護婦役。
相変わらずおきれいである。







胸騒ぎがする!〜ヒールズ爆誕〜


日時 2021年11月14日18:30〜 
場所 テアトル新宿
監督 塩出太志


0P PICTURES+フェス2021での上映。
9月に上野オークラで観た「ぞっこんヒールズ ぬらっと解決」のR15版。
OP版「ゴーストバスターズ」だが、3人の主人公がそれぞれ主役のエピソードで構成される1話30分のオムニバス形式。
ピンク版では1話2話しかなかったが、今回はそれに加えて幻の第3話を付け加えての公開。
1話2話は私の記憶では特に大きな改変はなかったように思う。

第3話
茂子(手塚けだま)はある妻から「寝ている間に何かがさわってくる。除霊してほしい」と助けを求められる。
とりあえず行ってみる茂子。除霊を適当にして「ゴリラの霊がいました」とテキトーなことを言って帰ってくるが、彼女は侍の霊を呼び出していた。
その侍が実はその家の寝室で妻をさわっていたのだ。
侍の霊が見えるあゆみとマキだが、当の茂子には全く見えない。
侍に話を聞くとこの家には別の霊がいて、それから女性を守ってやったという。
実際にゴリラの霊が出てきた!実はこの家には以前そのゴリラの動物園の飼育係が住んでいて、亡くなった飼育係をゴリラの霊が訪ねてきたのだ。
なんとか解決させた3人だった。

こんな感じの話。
3人のアンサンブルが相変わらず絶妙。それに今回は茂子のバイト先のコンビニの後輩店員とか茂子の両親(小滝正大ら)も登場。
しかも茂子の父も昔除霊師をしていたが、やっぱり霊が見えなかったという。

そんな個性的なキャラも増え、ますます好調。
今回の第3話はもともとあったけどピンク版の時にばっさりカットされたのかな?
でも今日舞台挨拶があったが(登壇は監督、ヒールズの3人、侍役、エンディング主題歌の歌手)、そこで侍が「次回作でも使ってもらいました」と言ってたと聞こえたから、すでに次は撮り終えてるのかも知れない。
今後ともこの3人のボケとツッコミを楽しみたいので、また見に行きたい。










8時間の恐怖


日時 2021年11月14日13:00〜 
場所 ラピュタ阿佐ヶ谷
監督 鈴木清太郎(清順)
製作 昭和32年(1957年)


ある山間の駅の午前2時。夜行列車が崖崩れのため列車が停まったままで再開の見通しが立っていない。急ぎの客に責められ、国鉄は臨時バスを発車させることになった。しかしその時二人組の銀行強盗が山へ逃げ込んだという情報が入った。山道は危険、そして銀行強盗に遭遇する危険もあるので多くの乗客は駅で待つことに。
しかし「株主総会がある」という会社の重役、下着のセールスマン(柳谷寛)、学生大会があるという学生の二人連れ(二谷英明など)、殺人犯(金子信雄)などどうしても急ぐ者たちはバスに乗り込んだ。
おんぼろバスでしかも道は悪く、崩れそうな橋を渡ったり危険なことこの上ない。さらに赤ん坊をつれた若い女性が途中の川で自殺を図った。
何とか助けた乗客たちだったが、今度は赤ん坊の具合が悪い。殺人犯はもとは軍医だったので、手錠をはずし、赤ん坊を甦生させる。
しかし二人組の銀行強盗が乗り込んできた。彼らはピストルを持っていて迂闊に手出しは出来ない。


ラピュタ阿佐ヶ谷のメイン企画「のりもの映画祭 出発進行!」での上映。映画の中で乗り物がメインの映画ばかりの特集だ。
その中でも鈴木清順の清太郎時代の映画である。この映画も普通のサスペンス映画で十分に面白い。

よくありがちな横柄な男も登場し、自殺しかけた女、若い男をつれたマダム、護送される殺人犯、そして学生運動の学生カップル(片方が学ランを着た二谷英明だ!)などなどのバラエティさ。
さらに追い打ちをかけるように銀行強盗の二人組。

この強盗の若い方を女性客は森に連れ込み、動物をしとめる罠を発見し、うまくそれに誘い込む。罠にはまった男は足手まといになったと兄貴分は殺す。
そうやってるうちにバスは発車し、なんとか銀行強盗の撃退に成功。
しかし手柄の女が実は米兵のオンリーだと解り、さげすむ男の乗客。
このちょっと横柄なセールスマンを柳谷寛が好演。
嫌らしさに満ちていて、同じく威張る重役(社長?)とともに映画の乗客たちの一筋縄では行かない感じを出していた。

迂回しながら走るバスを追って山を下ってきた銀行強盗の兄貴分がやっと追いつく。ところが例の若いツバメ君が「俺だってやれば出来るんだ!」と銀行強盗の金が入った鞄を奪って逃げ出す、という展開。

とにかく乗客が個性があって一癖もふた癖もあって目が離せない展開で面白かった。
もちろん最後は銀行強盗は倒されますけどね。
77分の映画ですが、十分にサスペンスを堪能しました。








弾丸大将


日時 2021年11月14日10:30〜 
場所 ラピュタ阿佐ヶ谷
監督 家城巳代治
製作 昭和35年(1960年)


米軍演習地。ここでは毎日のように砲撃訓練が行われていた。砲撃が終わった後、その演習場に入る人たちがいる。それは近くの村の人々が不発弾や機関銃の薬莢を回収にくるのだ。それを屑鉄として売って生計を立てている。
その中でも「不発の善ちゃん」と呼ばれる善ちゃん(南広)はまだ砲撃が終わらないうちから演習場に入り、誰よりもはやく不発弾を掘り当て儲けていた。ある日、その仕事中に大谷という男が死んだ。
仲間に言われて大谷の家に焼香にいく善。その大谷の妻・マキを見て一目惚れする。
しかしマキは同じ村の誠実な但馬(木村功)に好意を寄せている。但馬もその気だったが、言い出せないままに砲弾処理の最中に爆発させ亡くなった。善は再びアタックするが、マキは道に迷った米兵を助けた縁でその米兵とつきあい出す。
善は米軍から便宜をはかってもらうために、洗濯や女の世話までしていた。しかし地元のやくざは縄張りを荒らされた、と善の仕事場に米軍の標的となる旗を立て、仕事場を破壊してしまう。
米兵が村人の一人を射殺する事件が起きた。村では基地反対運動が起きる。米軍の演習場がなくなっては善たちは商売が出来ない。反対運動をなだめようとしたり、米軍に取り入ったりする。
そんな時、マキがつきあっていた米兵から「アメリカで百姓して暮らそう」と手紙が来る。マキは行くつもりになったが。


ラピュタ阿佐ヶ谷「『基地』の街から」特集での上映。米軍基地が主題になっている映画の特集だ。
その中での「弾丸大将」。全く聞いたこともない映画だったが、ニュープリント上映だし、何より南広が主演だし、ソフト化もされないだろうから観に来た。

まず米軍の演習場で空薬莢や不発弾を拾ってきてそれを屑鉄屋に売るという商売があったことに驚く。日本も貧乏だったんだなあ。こういう貧乏世界も映画にするのが東映である。東宝ならこういう企画はなかったんじゃないだろうか。
もっとも今でも貧乏な商売はあるんだろうけど、そういうのはドキュメンタリー映画で描かれて劇場映画にはなかなかならない。

それに不発弾の処理とか軍隊時代に経験した人から教わったとか、この時代ならではの背景もあったのだろう。善がどこで不発弾処理の方法を身につけたかは描かれなかったが。

後半、基地反対運動に対し、その反対運動を起こす善。「米軍が田舎うなったら俺たちは飯の食い上げだ!」とばかりに村の弾拾いの仲間を集めて組合を作ったり村長(東野英治郎)に賄賂を送ったりする。

しかしマキがアメリカに行くと知るとマキにたいし「そもそもアメリカ人なんてロクな奴じゃない。戦争終わって10年以上経つのにまだ基地を作って日本の土地でどんぱちやらかす」と言う。
なんか日本人の基地に対する感情の矛盾を体現しているのが善なのだ。

結局米軍は去り、今度は陸上自衛隊の演習場になる。「自衛隊は日本人同士だから安心だ」と喜ぶが、いつものように薬莢拾いに行くと「これは国庫に属するものだから勝手に持って行ってはいけない!」と追い払われる。起こった善は自衛隊の弾薬箱ごと盗んでいく。
自衛隊に追われる善のカットで映画は終わる。

脚本は橋本忍。1960年は安保の時代。
基地とか米軍とか自衛隊とか、そういうものに対する日本人の矛盾した気持ちを描いた作品で見応えがあった。
もっと広く知られていい映画だと思う。












カウンセラー


日時 2021年11月7日15:40〜 
場所 下北沢トリウッド
監督 酒井善三


心理カウンセラーの倉田真美(鈴木睦海)は妊娠のため、明日から産休に入ることになっていた。最後の患者を送ったあと、ある女性が訪ねてきた。「やっぱり予約なしではだめですよね?」
とりあえず話だけでも聞いてみる倉田。女性は吉高アケミ(西山真来)と名乗った。
彼女の話では最近妖怪が見えるという。もちろん幻影だとは分かっているが、なんとか出てこなくしたいと思っている。吉高は結婚して子供もいる。きっかけは5年前の会社員時代にあると思うと言い出す。
5年前会社員時代に知り合った宅配便の配達員(田中陸)と時々体の関係があったという。すでに結婚していたが何となくその男に抱かれていたというのだ。
その男とは体以上の関係になることはなかったし、妊娠して会社も辞め、それで縁がなくなっていた。
最近その男から電話があり、「エイズになった」という。彼はアケミも感染している可能性があるから、検査を勧められた。
しかし彼女は検査に行くことができず、自分の子供が実は夫の子ではなく、その男の子ではないかと思う。そして夫はすべてを知っていて知らない振りをしている妄想にかられる。
その話を聞いて倉田はおかしな気分になる。実は彼女も同僚と一度だけ寝た経験があり、吉高が自分に思えてきたのだ。


西山真来さんから聞いていた映画。なにせ43分の中編で、料金も特別料金1000円である。チラシも他の映画館でも観たことがなく(いや私が知らないだけなのかも知れないが)、ひっそりとした公開である。
それでも10月30日にトリウッドで公開し、1日1回だが2週間の上映だ。
本日は主演二人と田中陸、監督の舞台挨拶付きなのでそのときを狙って見に来た。

吉高の話を聞いて徐々に追いつめられていく倉田がいい。
途中で吉高と倉田の位置が変わり、倉田が自分がカウンセリングに来てるのでは?と錯覚させるのは面白い。
結局は吉高も自分の立場は変わらないのだが。

そして吉高は突然拳銃を取り出し、自殺する。
ナレーションで「彼女は吉高ではなく、結婚も子供もいなかった。拳銃の出所も分からない」と説明される。
まあ夢オチに近い内容だが、観てる間は面白かった。













007/ドクター・ノオ


日時 2021年11月7日 
場所 DVD
監督 テレンス・ヤング
製作 1962年(昭和37年)


MI6のジャマイカ支局のストラングウエイズとその秘書が行方不明になった。ストラングウエイズはCIAから依頼を受けてジャマイカ付近から発信されるアメリカミサイルの妨害電波について調査していた。
事態を重くみたM(バーナード・リー)は007ジェームズ・ボンド(ショーン・コネリー)を派遣することに。
ボンドはジャマイカについて早々に正体不明の男の車に乗せられた。取り押さえて雇い主を吐かせようとしたボンドだが、相手はたばこに仕込んだ毒を使って自殺した。
その後、CIAのフィリックス・レイターと合流。彼のジャマイカでの助手で漁師のクォエルも交えて捜査にあたる。
スララングウエイズは周辺の島、クラブ・キーが怪しいとにらんでいたようだ。その秘密に迫ったために殺されたらしい。
ボンドはクォエルを伴ってクラブ・キーに上陸。そこでたまたま貝を取りに来ていたハニー・ライダー(ウルシュラ・アンドレス)と知り合う。
やがて彼らは島の所有者、ドクター・ノオに捕まる。


いわずとしれた007シリーズ第1作。
007シリーズを見直してるわけだが、順番として自分が最初に観た順に見直している。実は3本目に観たのは「サンダーボール作戦」が先だったのかも知れない。
だが一応ルーツを確認するということで、第1作に。

正直、そんなに面白くないんだな。これが大ヒットしてシリーズ化されるとはなあ。
007でお決まりの秘密兵器は全く登場せず、それらしいのは冒頭でMからベレッタをやめてワルサーPPKを使うように指示されるところ。
しかもこの兵器係はデズモンド・リーウエリンではない。彼がQのキャラクターを作ったと言っていいだろう。シリーズが進むにつれ、出番も増え、「二度死ぬ」では日本出張もしてくるのだから。

それでも007のキャラクターはこの1作で確立されたのだ。
タキシード姿でたばこをくゆらせ、酒やギャンブルや女を楽しむ。登場後、カジノで知り合った女性に名刺を渡すのだが、帰ってみるとその女性がうちにいる。すぐに出かけなきゃいけないのだが、とりあえず、キス。
その後はどうしたかは出てこないけど。
マネペニーとのやりとりもこの映画から始まっている。
そして敵を倒した後にシニカルなジョークをいうのも始まっている。
特典映像のメイキングを観ると原作にあったわけではなく、コネリーのアドリブらしい。
テレンスヤングとコネリーがボンドのキャラクターを作ったのだ。

しかし後の作品に比べると特に前半は地味である。
ホテルのクローゼットに髪の毛を貼り付けたり、アタッシュケースの金具のパウダーをふりかけ、誰かが調べても分かるようにするあたりは、リアルなスパイな感じだが、やっぱり地味である。

だが島についてからはハニー・ライダーと出会う。このハニー、いなくても物語には一切困らないのだが、それでも登場させることにエンタテイメントとしての広がりを感じるのだ。
そしてドクター・ノオ。今回見直してみて思ったが、出演シーンは実に短い。でも圧倒的な迫力だし、後の作品の「カリスマ的悪役」の存在を決定づけた。

余計なことだが、ドクター・ノオの基地、妨害電波を出すだけなのになんで原子炉が必要なんだろ?それにボンドが無茶な操作をして原子炉を爆発させるらしいが、そんなことしたら単なる爆発ではすまないぞ!。
それにあのプールみたいなものはなんだ?
と疑問を感じるが、まあ「映画的嘘」ということで気にするのはやめよう。

あとケン・アダムの美術セット。
ストラングウエイズのカード仲間で実はドクター・ノオの部下の大学教授がドクターノオに呼ばれた部屋のセット。天井に丸い穴があき、そこから格子状の枠があって影が部屋に写る。
このセットはすばらしかった。
これを観たキューブリックは「博士の異常な愛情」の美術を依頼したために「ロシア〜」に参加できなかったということだが、それも納得の出来。

前半は地味だが、やはり007のルーツはここにあった。











日本沈没 4Kデジタルリマスター版


日時 2021年11月6日21:00〜 
場所 日本映画専門チャンネル
監督 森谷司郎
製作 昭和48年(1973年)


ストーリー省略。
今TBSの日曜日夜に「日本沈没ー希望のひと」という日本沈没のドラマ化を放送している。その影響なのか、日本映画専門チャンネルで「日本沈没」の4Kリマスター版の放送だ。
でも日本映画専門チャンネルで放送される4Kリマスター版の映画ってみんな「2Kダウンコンバート版」である。
まあまだまだ4Kテレビが普及してない昨今では2K版でも十分なんだろうけど、なんか複雑である。
しかも4Kリマスターしても別に劇場公開されることはない。
なんだか複雑である。

画もきれいになったし、音もクリアでくっきりした音になっていた。
同録とスタジオアフレコの違いがよくわかる気がする。
台詞も含め画も全カット暗記してるくらい見ている映画だから正直新しい発見というものはなかったが、それでもリアルタイムで鑑賞して全く飽きないのがこの映画のすごいところだ。

ちょっと書いておくと、玲子が富士山噴火で東京へ帰れなくなって小野寺に電話して、小野寺が駆けていくシーン。
夕日に向かって走るのだが、「日本沈没」のあるトークイベントでこの映画の関係者がこの夕陽はライトだとおっしゃっていた。

ところが今回の4Kリマスターを伝える映画評論家の樋口尚文さんの文で(今回のリマスターを行った清水俊文さん、リメイクの樋口真爾監督へのインタビューしたもの)、今回のリマスターの監修をした木村大作さんが清水さんに「この夕陽は本物」とおっしゃっていたそうだ。

はあ?そう言えば私が聞いたトークイベントの聞き手をしていたのは樋口尚文さんだったよな。
どっちかなあ。でも木村大作さんの「本物」の方だと思うな。
ライトではちょっとあの感じがでないと思うんですよね。

とにかくせっかく4Kにしたのだから全国のTOHOシネマズで上映してほしい。
でなきゃ4Kにした意味がないじゃん。

<追記>
ツイッターで「太陽はライトと聞いてたけど、大作さんは本物だと言ってるな」という趣旨で書いたら、樋口尚文さんからリプがきて、「実は私も藤岡弘、さんでの週刊現代での対談との対談で『太陽はライト』と聞いているし、木村大作さんも以前に聞いたときは『ライト』とおっしゃっていました。映画人は話を盛り上げるために膨らませることがあります」という趣旨のリプをいただいた。
となるとやっぱり私がトークイベントで聞いた中野昭慶監督の証言が正しそうだな。
大作さんは話を膨らませることがあるし。
映画人の昔話は話半分にしないといけません。










007/ロシアより愛をこめて


日時 2021年11月6日 
場所 blu-ray
監督 テレンス・ヤング
製作 1963年(昭和38年)


陰謀組織・スペクターはドクター・ノオに対する復讐とソ連と英国の関係悪化のためにある計画を立てた。それは在イスタンブールのソ連領事館の職員が暗号解読機レクターを条件に亡命し、その護送をジェームズ・ボンドにさせるというものだった。
話がうますぎると罠だと思うMだったが、レクターには代えられない。
ボンドはイスタンブールへ飛び、ソ連領事館の職員タチアナ(ダニエラ・ビアンキ)と接触。友人のトルコ支局長のケリム・ベイ(ペトロ・アルメンダス)と共にレクターを奪取することに成功。
ボンド、タチアナ、ケリムはオリエント急行に乗ってイスタンブールを出発。だがケリムは車中で殺された。
やがてスペクターが向けた刺客グラント(ロバート・ショー)が姿を現す。


最近007がマイブームである。先月「ゴールドフィンガー」をブレーレイで再見したが、今度は「ロシアより愛をこめて」だ。
この「ゴルードフィンガー」と「ロシア〜」の2本立て(!)が自分の007映画の始まりである。
正直、この2本立てでは「ゴールドフィンガー」の方が好きだった。
それは今でも変わっていない。

この映画は面白い!という前提で感想を書きます。
「ゴールドフィンガー」に比べるとやや地味、派手さに欠ける感じがするのだな。
いや逆に「『ゴールドフィンガー』以降は派手になりすぎておバカ路線になった」っていう意見もわかるのですが。
この映画、次から次へと見せ場があるのだが、どうもそれがもう一つ派手さに欠ける。まるで「隠し砦の三悪人」のような。

そうは言っても時々横道に話はそれる。
ボンドがホテルに帰らない方がよいということで行った村で行われたガールファイト、本筋には何尾関係もない。ただ若い美女が戦っている姿をほしかっただけという感じ。そういうサービス精神は嫌いではないですが。

あと同様にグラントがソ連の尾行の男を殺したためにスリムの家に爆弾が仕掛けられる。それでスリムの宿敵・クレリンクを殺すシーン。
ここも本筋とはあまり関係がない。でもこの看板の女の唇から逃げ出そうとしてライフルで撃たれるシーンもかっこいい。

そういう印象的なシーンは非常に多いのだが、「ここ!」というクライマックスがないのが残念だのだな。
ボンドのアタッシュケースもおもちゃとして発売されたほどだし、僕も一時期アタッシュケースを持っていて、その時にはこれと似た形の金具のものを探したものだ。

そして(これはいつものことだが)ボンドが飄々としているのがいい。
例のガールファイトの村で敵味方入り乱れての銃撃戦で、なんだかこの祭り騒ぎを楽しんでいるかのようにテントのロープを切ったり、テーブルをひっくり返したりする。
またロシア領事館の爆破の際も「あの時計は・・・」と何度も訊き、爆破があって大騒ぎになっている中、にこにこしながら(そんな感じで)中に入っていく様もいい。

一つ一つの山がニヤリとさせられる連続。
危機また危機の連続で(最後の女性ボス・グレッグがついに現場に出てくるまで)楽しめる映画である。
なんだかんだ言ってもやはり最高の映画だ。
(後の「謎の円盤UFO」のドクター・ジャクソン(ヴラディク・シェイバル)がスペクター幹部として出演しているのも楽しい)









風来坊探偵 赤い谷の惨劇


日時 2021年11月3日 
場所 東映チャンネル録画
監督 深作欣二
製作 昭和36年(1961年)


信州・赤岩岳にセスナが墜落した。乗っていたのは新日本開発の社長、南雲とパイロット。最初は死体が発見されなかったが、顔のつぶれた南雲社長の遺体は発見された。
パイロットの妹の美佐子(北原しげみ)は事故が信じられなくて現場にやってきた。美佐子は3人の男に襲われたが、それを五郎(千葉真一)という男が救ってくれた。美佐子は知り合った上田牧場にしばらく世話になる。
五郎はスペードの鉄(曽根晴美)という拳銃使いに挨拶される。五郎はセスナの事故現場で舶来の高級マニキュアを拾う。
そんな時、上田牧場にこのあたりの土地開発をたくらむ北東観光の鬼頭(須藤健)がやってきていた。「上田牧場は南雲さんの土地で牧場をしているが、この土地は私が南雲さんから譲り受けた。出て行くか、これから毎月土地代として60万円払ってもらいたい」。
理不尽な要求に怒る上田(宇佐美淳也)。五郎は実は社長の死を疑った新日本開発に雇われた探偵だったのだ。
鬼頭の持っている土地の権利書はきっと鬼頭が南雲に無理矢理書かせたに違いない。


追悼・千葉真一の企画だと思うのだが、千葉真一の初主演作を東映チャンネルで放送。深作欣二にとっても監督デビュー作である。
監督デビュー作っていうとその後の作品の要素が詰まってることが多いが、この作品はそういうのは感じなかったなあ。

完全に「日活アクション」「渡り鳥」シリーズの焼き直しだ。
曽根晴美が完全に宍戸錠の焼き直し。「チッチッチ」まではしないけど。
曽根晴美は「仁義なき戦い」をはじめとする実録やくざ映画でのやくざ役しか印象にないからなあ。スターの貫録不足だよ。

そして敵役が須藤健。ムービーウォーカーデータベースを見るとこの役は神田隆になっているから当初はそういうキャスティングだったのだろう。
スケジュールの都合で出来なかったとか。これも須藤健では貫録不足である。

んで墜落現場に落ちていたマニキュア。これが証拠なのだが、マニキュアの成分がなにか事故につながったのかと思いきや、鬼頭の情婦が実は元素スチュワーデスで、彼女とパイロットと南雲(実は替え玉)の3人で飛行機に乗ってパイロットを殴って気絶させ後彼女だけパラシュートで降りたという話。スチュワーデスだからってパラシュート出来るのか?

そんな感じで謎解きもがっかりだし、キャラクターも焼き直しだし、62分のSP(シネスコ、白黒)だが、あまりのつまらなさに随分と長く感じた。

千葉真一が拳銃ではなく、ライフルを撃ちまくるというのがちょっと新味だったかな。

正直がっかりだった。
冒頭のセスナの墜落シーンは特撮も使用して迫力あったけど。







ひらいて


日時 2021年11月2日18:35〜 
場所 新宿ピカデリー・シアター4
監督 首藤 凛


高校3年生の木村愛(山田杏奈)は同じクラスのたとえ(作間龍斗)を想っていた。ある日、たとえが誰かから手紙をもらって机に隠しているのを知る。同級生たちと夜の学校に忍び込む遊びをしたとき、その手紙を盗む愛。それはたとえへのラブレターでクラスで目立たない存在の美雪(芋生悠)からのものだと知る。
美雪は糖尿病でインシュリン注射が欠かせない体だった。愛は美雪に近づき、映画も見に行き、そしてカラオケボックスにも行く。そこで「好きな人はいるの?」と問いつめる。美雪はつい「たとえ君」と言ってしまう。
二人がまだ手を握っただけでキスもしていないと聞いた愛は美雪にキスをする。
別の日、美雪の家に遊びに行った愛は美雪に体の関係を迫る。
学園祭の前、遅くまで作業を行った愛はたとえに自分の気持ちを告白する。しかしたとえは受け入れてくれない。
やがて愛はテストを白紙で出したり、授業中に勝手に抜け出したりの行動をする。


ジャニーズJrのHiHiJetsの作間龍斗が出演と言うことで予告を見て知っていた。
よくある少女マンガの実写映画化と思っていたが、ポスターも明るさがないし、どうもちがうようなので(そもそも作間龍斗には別に思い入れはない)パスしようかと思ったが、時間が合ったしdポイントで無料鑑賞も可能なので鑑賞。

まあこの主人公がまったく好きになれない。
別に可愛くもないし、好きになった相手の恋人に「好き」とか言って体の関係を迫ったり(ここで「えっ?彼女って同性愛者だったの?」と混乱した)、学園祭のダンスの練習を途中で抜け出したり、まあ自分勝手である。

人の手紙を危険を冒してまで盗むとかもう完全にストーカーだ。まあおじさんには彼女の行動は言葉で説明することは出来ないが、なぜそういう行動をするか理解は出来る。しかし共感は出来ないなあ。
完全に自己中過ぎる。普通はいろいろブレーキが利いてああいう行動はしないんだろうけど。

もう感想はその一言につきてしまう。

最後はたとえは東京の大学に受かったが、父親はDV男らしく(母はいない)東京に出ることを許さない。
それでまあ卒業式の日になって、という感じで何か決着がつくでもなく終わる。
映画から完全に心が離れていたので、「早く終われ」としか思っていなかった。

監督の首藤凛は17歳の時にこの小説に出会って以来、その映画化を希望していたという26歳の新人。
撮影時には24、5歳だったろう。
今回が商業映画1本目だそうだが、1本目から新宿ピカデリー(というシネコン)で公開とはずいぶんラッキーである。がんばってね。

撮影に使われた高校、これは「ハルチカ」TV「ハイスクールヒーローズ」で使われた高校と同じじゃないだろうか?
足利でロケしていたようなので、その高校も足利にあると聞いているからたぶん同じだと思う。