ノイズ日時 2022年1月29日18:10〜 場所 新宿ピカデリー・シアター2 監督 廣木隆一 伊勢湾に浮かぶ猪狩島。過疎に悩む島田が島の若者、泉圭太(藤原竜也)がいちじく農園を始め、島の新しい産業として注目されていた。 そんな時、保護司の鈴木(諏訪太朗)が幼女殺人を犯したが今は更正中の小御坂(渡辺大知)という男をこの島で就職させようと連れてきた。しかし小御坂は鈴木を殺害。小御坂は圭太の愛娘を見かけて近づく。 娘がいないことに気がついた圭太は親友の田辺純(松山ケンイチ)と一緒に探す。挙動不審な小御坂を見かけ、問いつめているうちに死なせてしまった。その場にやってきてしまったこの島の出身の新人の駐在警察官守屋真一郎(神木隆之介)は「すべてなかったことにしましょう」と持ちかける。しかし近所の横田庄吉(柄本明)に見られてしまう。 翌日になって鈴木の死体も発見され、本土から県警の刑事・畠山(永瀬正敏)ら警官が大挙してやってきた。 鈴木を小御坂が殺したと判断し、小御坂を捜索する県警。 しかし畠山は圭太や純に何か不審なものを感じる。 やがて圭太や純の前に庄吉や庄司町長(余貴美子)がやってきた。 しばらく前から予告篇を観て楽しみにしていた映画。見終わって廣木隆一が監督と知った。(気づいたかも知れないが忘れていた。最近は映画監督の名前を前面に出さないからなあ) 藤原竜也、松山ケンイチ、神木隆之介の3人がすごい! この3人の競演とは最強だ。松山ケンイチは去年のテレビ版「日本沈没」でもいいなあと思ったが、やっぱりいい。 神木隆之介の警官制服姿もいいですねえ。「桐島」の頃よりいい男になったと思う。20代後半になって色気さえ出てきた感がある。 話は町長に感づかれ、「国からの交付金をもらうには圭太の農園が必要」と最初は真太郎、そして純が罪をかぶれと言ってくる。そこへ庄吉もやってきて結果的に町長も庄吉も死んでしまう。庄吉は心臓発作で急死、小御坂が町長を殺したことにしてごまかそうとするが、畠山は何か嘘のにおいを感じて・・・・という息もつかせぬ展開。 結局真太郎は追いつめられて拳銃自殺するのだが、スマホで「すべて自分がやりました」と動画を残す。その動画が画面いっぱいに出てくるが、ワンカットで長回し。神木隆之介、見せ場です。さすがです。 彼はこれからもすばらしい仕事をしてくれるでしょう、と思わせる迫力。 結局バレるのだが、最後に警察にリークしたのは誰か?になる。 ここは直前にわかったけど。 その男は圭太の妻に昔から恋い焦がれていたのだが、それを表すのが彼の部屋に壁一面に張られていた圭太の妻の写真の数々。 この写真の数が彼の執着を表現してますねえ。すばらしいカットです。 面白かった。今年のベストテンに入る作品です。 廣木隆一作品ははずれが少ないなあ。 松本清張のスリラー 考える葉日時 2022年1月28日19:00〜 場所 ラピュタ阿佐ヶ谷 監督 佐藤肇 製作 昭和37年(1962年) 井上代造(鶴田浩二)は銀座で酔って暴れて留置場に入った。そこで山梨から出てきた崎津弘吉(江原真二郎)という青年と知り合った。 井上は板倉(仲谷昇)という男に雇われていた。板倉は戦争中に東南アジアの国から金、ダイヤなどの金目のものを略奪しそれを元手に政財界に関わった男だ。その奪った国からムルチという男が日本訪問団を結成して来日するという。奪ったものの返還を要求されたら困るのは板倉や与党幹事長候補の代議士だ。 崎津は井上の紹介で大日建設の警備員に雇われた。更地の管理だったが、初日からそこで大原という男の死体が発見された。 崎津は井上から明日の晩にある場所で夜の9時から10時にいてほしい、そこで男があるものを渡すから受け取ってきてほしいという奇妙な依頼を受ける。訳は後で話すという。 その仕事は板倉が絡んでいた。仕事に嫌気がさした井上は「明日の仕事は中止だ」と崎津に伝言を託した。がそれは伝わらず、崎津は頼まれたとおりに行った。渡されたものは拳銃。近くのホテルでムルチが殺されており、崎津はその犯人にされたのだ。なんとか釈放された崎津だが、戻ってみると井上は殺されていた。 ラピュタ阿佐ヶ谷「松本清張をみる」の1本。わざわざ「松本清張のスリラー」という副題付き。もちろん松本清張の原作にはない。東映が映画公開時に勝手にサブタイトルとしてつけたものだ。 井上(鶴田浩二)が酔って銀座をあるいてサンドイッチマンの看板を取り上げて宝石店のガラスをぶっ壊すシーンから始まる。そこで崎津と知り合うという展開なのだが、井上が主人公と思っていたら、井上は板倉の裏の仕事に嫌気がさして崎津に中止を伝える、が板倉一味の捕まってしまう。 鶴田だからてっきり相手をぶちのめして捕まらないかと思ったら、あっさり捕まって板倉の部下に拳銃で撃たれる。 てっきり「実は生きていた」という展開になるかと思ったら、本当に死んで鶴田は映画からフェードアウト。 おいおいまだ4割ぐらいしか話は進んでないぜ! 後半、今度は崎津が主人公になり、自分の身に起こったこと解明していく。最初に死んだ大原の遺族に会い、島根に住んでいる大原が東京にでる直前、同じ新聞を何度も読み返していたという証言を得る。 その新聞を読んでみると板倉が紹介されていた。板倉は大日の事実上の社長。そしてムルチの国から財宝を奪った財宝が隠された場所に来たのだが、殺されたのだ。 崎津は板倉が持っている鉱山に行き、そこに財宝が隠されていることを知り、井上の妹も誘拐されていて崎津も殺されそうになって・・・というアクション調のクライマックス。 板倉と代議士のほかに書道の先生というのが登場するのだが、これが実は殺された大原の元上官。隠匿物資のことも知っていて板倉を通じておいしい思いもした男。 警察も大原や井上の死から捜査を始めていて板倉たちにたどり着き、もはやこれまでと書道の先生と自分が一緒に車を崖から転落させる。 しかし結局与党幹事長まではたどり着かなかった、というオチ。 鶴田浩二が主役として始まって途中で主役が江原真二郎に交代してしまうというのは驚いた。崎津が拳銃を渡されるというのも驚いたけど、驚きの種類が違うね。 でも江原真二郎が主役とはちょっと華がない。 話も最初から崎津の視点で語られればもう少し違ったかもしれないが、それは原作と離れたものになったのかも知れない。 原作はどうだったか、興味ありますね。 殺されたスチュワーデス 白か黒か日時 2022年1月23日13:05〜 場所 シネマヴェーラ渋谷 監督 猪俣勝人 製作 昭和34年(1959年) 羽田空港の出国審査所、要注意人物として連絡を受けていたダニエル修道士が出国。しかし書類に不備はないため出国せざるを得なかった。 彼は栃木県中善寺湖で死体で発見されたヨーロッパ航空のスチュワーデス、若月綾子(久保菜穂子)殺害の容疑がかかっていたのだ。 綾子が経験なクリスチャンでそのこういう関係からダニエル修道士が捜査線上に浮かび上がった。 捜査課長(根上淳)や刑事たち(殿山泰司、笠智衆)はなんとか参考人としてダニエルを事情徴収にこぎ着ける。しかし弁護士同席でのらりくらりといいわけをする。 引き続きの刑事たちや新聞記者・毛利(田宮二郎)の裏付け捜査で、ダニエルと綾子がホテルで休憩したり、東京で偽名で隠れ家的アパートを借りていたり、徐々に証人も現れ言い逃れが出来なくなる。 いよいよ逮捕かと思われたとき、ダニエルは出国したのだ。 毛利は今までの捜査でわかっていることをまとめ、事件の全貌をレポートにしてデスク(原保美)に提出。しかしデスクは「面白いね。しかし君の想像の域を出ない」とボツにした。 熊井啓の「日本列島」や松本清張の「黒い福音」でも描かれた世にいう「BOACスチュワーデス殺人事件」の映画化。 田宮二郎出演でこの事件が映画化されていると知ったのは10年くらい前か。 「日本列島」も「黒い福音」も知っているのでこの事件を事件直後(事件発生は3月10日、容疑者が出国したのは6月11日)に描いた作品には興味があった。 観ていて気がついたのは熊井啓や松本清張とは視点がややことなるのだなあ。 ダニエル修道士は他の女性信者ともつきあっていたり、結婚を迫る綾子がうるさくなって殺した、そして教会の面子を保つために出国させたという見解だ。 これが熊井啓の「日本列島」だと「そもそもこの教会には密輸などの黒い噂があり、彼女がスチュワーデスになれたのもこの教会が裏から手を回し密輸に荷担させようとしたのに彼女が拒否したから殺された」というさらに上を行く説だ。 こっちを先に見たからこちらが真実のように思っていたけど、犯人は逮捕されていないので、猪俣説が真実かも知れない。それはわからない。 映画自体は田宮二郎の恋人がデスクの妹でカソリック信者。だから修道士を悪く書く記事に心を痛める、という恋愛描写あり。 しかも最後のレポートを読んだ妹がショックを受けて家を飛び出しダンプにぶつかる交通事故に合い亡くなるという割と大胆な展開。 主人公もこの記者でもなく刑事でもなく、集団劇というほどまとまっておらず、そして最後にはレポートという形で事件の再現をする、という展開。 どうも脚本としては勢いだけでまとまりが悪いなという感じもするが、本日のトークゲストの丸山昇一さんによると「猪俣さんはそれもわかった上で作っている。最後の30分の事件の再現の部分が『これだ!』といういいたかったことなんだ」とおっしゃっていた。 本作、シナリオ文芸協会製作で大映配給。もっとも田宮二郎とか根上淳とか大映陣が出演しているから完成してから大映の配給が決まったというより、(資金の有無はともかく)製作に大映の応援はあったのだろう。 実際脚本のタイトルは「神と愛欲」だったのを永田社長が「白か黒か」に変えたそうだ。 猪俣氏の怒りは「聖職者が女におぼれ果ては殺してしまうとは何事か!」という点。これが当時の世論だったのかも知れない。 とにかくラストのレポートでは「ワタシが寂しかったのを慰めてあげましょう」「(首に垂れたワインを)ワタシがきれいにしましょう」となめてしまったりと、ピンク映画(当時はまだなかったが)にもなりそうな愛欲描写。 映画制作中にもカソリック信者から脅迫状が届いたり、撮影隊が乗ったバスの前にルノーがやってきて油を蒔いたりとかの妨害も多かったそうだ。 これを猪俣氏は「カソリックの権威」と解釈していたが、熊井啓や松本清張によると「国際的謀略機関が陰にあるから」となるのだろう。 映画では冒頭の飛行機に乗ったダニエルの足下を写す。これの意味するところが分からなかったが、最後において日本から追放される時に修道士の服をはさみで切られる、という描写がある。これは「もうあなたは修道士ではない」という宣言だったのだろう。 映画はそんなカソリック側からの抗議もあって上映開始5日間で打ち切り。 その後もラストの事件再現の部分をまると30分カットした短縮版しか上映されなかったとか。今回の完全版の上映は封切り以来になるかも知れない、ということ。 全体的に独立プロ作品(実際そうだが)らしい「いいたいことが先走ってる映画」で出来はイマイチなのだが、キワモノではない真摯な姿勢は良く伝わってきた。 黒い樹海日時 2022年1月22日13:00〜 場所 ラピュタ阿佐ヶ谷 監督 原田治夫 製作 昭和35年(1960年) 笠原祥子(叶順子)は雑誌編集者である姉信子が東北旅行に行くので見送った。しかし数日後、浜松でバス事故にあって亡くなった。しかし同じバスに乗っていた人の話では信子には連れがいたが、途中で後ろの席に変わったという。しかしその連れはバスが事故にあっても信子のことは何もしないで立ち去ったというのだ。姉の死は事故だったが、何か不信だった。 祥子は姉が勤めていた出版社の編集部で働くことになった。姉の同僚だった町田和枝は「あなたの姉さんについて知っていることがある」と意味深なことをいう。詳しく聞こうと思ったが、その晩、彼女は死んだ。 この事件を同じく不審に思った町田の弟という雑誌記者(藤巻潤)と協力してこの事件を調べ始める。 和枝も信子も会社の手帳が遺品からなかった。このことから手帳に名前が書いてある人物が持ち去ったのではないかと疑う。 和枝と信子が担当していた文化人は美術評論家の妹尾(根上淳)、整形外科の西脇、生家の家元の佐敷、画家の鶴巻(浜村純)だった。 信子をバスで見かけた人に会う祥子だったが、彼女は翌日殺された。祥子の下宿のおばさんも自動車のひき逃げにあった。 果たしてこの4人の中に犯人はいるのか? 「姉が行く予定のなかった浜松旅行で死んだ。しかも男と一緒だったらしい。それを証言してくれた女性は姿を消した」っていうアバンタイトルでもうつかみは十分。 「予定にない旅行」「男がいなくなった」「目撃者が姿を消した」ってもう完全に松本清張ワールド! 脚本は「警視庁物語」の長谷川公之。(石松愛弘と共同)。監督の原田治夫という方はたぶん初めて観る監督。 さらに何かを知ってる姉の同僚女性まで殺されたらますます心は捕まれる。さらに同じように手帳がなくなってるというから。 というあたりまではよかったのだが、手帳がなくなったのは「二人に共通して書いてある人物が疑われるから」と結論づけ、姉と亡くなった同僚の担当を調べ、4人に絞られるっていうあたりから越し砕けてくる。 そして目撃者が亡くなって「おいおい強引だな」と思い、それを知ってたのは一緒に調べてる藤巻潤の記者じゃいないのか?ってこっちが疑い出したら、「同僚の妹っていうのは嘘でした」と認める。 でも犯人ではなかった。 結局やっぱり4人の怪しい奴の中に犯人はいて、4人のうち2人が共犯で罪を犯していた、という真相。(備忘録で書くけど、妹尾と西脇) 最後はヒッチコックばりに祥子がビルから落っこちそうになる展開。 たぶんこれは原作にない展開なんじゃないかな。 全体として後半に行くに従って萎んでいく印象。 黒幕日時 2022年1月16日15:00〜 場所 シネマノヴェチェント 監督 小林 悟 製作 昭和41年(1966年) 精力剤玉精の販売で独走する大阪の岩倉製薬は倉庫が何者かに襲われ玉精が大量に盗まれた。現金問屋に流して価格の値崩れをさせるのが目的だ。犯人はライバル会社の東京の赤玉製薬とにらむ。実際に指揮したのは赤玉製薬の社長直属の任務をする利根(天知茂)であった。特命任務は千石(野川由美子)も行っていた。 実は赤玉の社長も玉精を飲んでいる。利根は玉精の秘密を調べるようにいわれる。玉精は淡路島にある小さな製薬会社で親父(殿山泰司)が一人で作っていた。親父の留守にその若い妻と会う利根。特殊な薬草を使ってることなどを聞き出す利根。それだけでなく「東京見物しよう」と言って若い妻を東京に連れ出し、赤玉製薬の研究所に連れ込む。そこで分泌物からの成分を調べ研究に役立てようとした。 一方妻がいなくなった親父は大騒ぎ。息子(左とん平)がいる東京に向かう。 岩倉も先日の仕返しとばかりに架空の会社が買うとして5000万円と取引を1割現金、残りは小切手で払うと千石を通じて申し出た。その取引が怪しいとにらんだ利根は取引の現場に行き、取引は止めたが、荷物を積んだトラックは2台とも崖から落ち、争ったときに利根も重傷を追った。 さらに岩倉は赤玉と取引のある会社に3億円の融資をさせ、計画倒産をさせた。 小林悟特集の2本目。創映という会社が製作し、松竹は配給のみ。ポスターには「成人映画」の表記がある。東活で小林監督が活躍するのはこの後なので、創映というのがどういう会社でどういう経緯で小林監督が撮ったのかさっぱりわからない。 何せ精力剤の話なので裸のシーンも多少ある。殿山泰司が若い妻を脱がせたりしてご満悦のシーンなど。ポスターでは野川由美子がもだえている姿があるが、そんなシーンはない。 結構金もかかっていて天知茂がトラックを止めようとして、結局トラックが崖から落ちるシーンなど特撮ではなく本物を落としたようだ。 すごい。 また天知茂もトラックを止めようとしてドアに捕まり振り落とされるシーンを2回もやっている。すげーなー。 話の内容は恐らくは大映の「黒」シリーズの影響を受けた企業もの。 赤玉が負けて実は千石も岩倉のスパイだったで終わりそうなところを最後は岩倉の社長たちを警察に逮捕させる。また玉精の親父も自分が飲む分しか作らなくなったというオチが付く。 天知茂や野川由美子が出ていて大手の映画っぽいのだが、何となく安っぽさが漂う。なぜかと思ってみていたら、どうも音らしい。 せりふの音しかなく、町の音がない(少ない)のだ。 これが何となく安っぽさを漂わせている。アフレコ感が出てしまうし。 左とん平がコメディリリーフで出演していて、後の「非情のライセンス」のコンビがすでに誕生していたのだな。 興味深い映画を観た。 不能者日時 2022年1月16日13:15ぐらい〜 場所 シネマノヴェチェント 監督 小林 悟 製作 昭和42年(1967年) ススム(島たけし)は職場の同僚のシズから迫られた時、アソコが勃起せず「役立たず」呼ばわりされる。職場の工場でも男の同僚と勃起の比べっこをさせられ、ますます笑われる。シズはススムの幼なじみのマリにもその姿を見せる。 惨めになったススムは母に「何で俺を生んだんだ!」と責める。そしてススムとマリは東京に出る。 東京ではススムはバーで働き、マリは喫茶店で働き始める。 不能は手術で治る可能性があると聞き、やってみることにするススム。しかし金が必要だ。節約したり、マリも働く時間を増やしたりするが一向に貯まらない。そんな時、マリの店の支配人が「僕が10万円くらいなんとかしてあげる」と言われ、仕方なく体を許してしまう。 やっと手術に行くススム。 二人の仲もこのままうまく行き、母親も呼んで3人で東京で暮らそうという。 ススムもバーの女性客に言われてホテルに入った。しかしうまく行かず「役立たず」と呼ばれる。 やけになったススムは部屋に帰ってマリにも当たり散らし、そしておいてあったスーパーカブでどこかへ走った。 自分でもどこか解らない林で眠るススム。起きたところでやってきた女子高生(白川和子)に「道を教えてくれませんか」と話しかけたが、「人殺し、痴漢!」と騒ぎになる。いつのまにか首を絞めて殺してしまったススム。 実家に帰るススム。母親を前に泣き崩れる。 マリはやけになったかゴーゴー喫茶で踊り続けた。 小林悟追悼上映会として「黒幕」との2本立てて上映。タイムテーブルでは「黒幕」が13時からだったが、機材トラブルで急遽「不能者」が先に上映された。 ピンクの初期作品らしい安っぽさが漂う(これは致し方ない)。 今観るとエロさのかけらもないのだが、トークゲストの池島ゆたか監督によると「当時は観客で観ていたが観客は十分興奮して満足してた」そうだ。 まあ満足してなきゃこれほど作られないよね。 映画自体は「不能」ということで「そこまで思い詰めなくても」と思うのだが若くして勃起しなきゃ悩むわな。でもそれを笑いに持って行くのではなく大まじめに追いつめられるというのが興味深い。 仕舞いには人を殺してるし。 また手術する前も母親が働く料亭で客たちが不能手術の話題をしてるし、ススムが東京で勤めたバーでも「不能の人に男性ホルモンをたくさん射って治そうとしたが、毛深くなっただけ」という酒場の会話までしている。 この映画80分以上あって無駄に長いが、この当時のピンクならそんなものか。 もう一人のゲストの白川和子さん。 ピンクは2本目ぐらいでこのあと小林作品をはじめたくさんのピンクに出た。とにかく衣装もメイクもいない現場なので、脚本を読んで「この役ならどんな衣装、メイクがいいか」を考える習慣がついたのですごく勉強になったという。 また日活で「ロマンポルノの女王」とまで言われ、一度美空ひばりさんと仕事をしたときに「あなたも女王なんですって」と言われ、ひたすら恐縮したことがあったとか。 とにかく60年代のピンク映画は観る機会がほとんどないので、観れるときに観ておこうと思う。 (今日の上映素材はビデオテープをデジタル化したものらしい。役者が左右に見切れてるカットがあったから、本来はシネスコなのをスタンダードにしたものらしい) 天使の顔日時 2022年1月15日 場所 DVD 監督 オットー・プレミンジャー 製作 1953年(昭和28年) 救急車のドライバーのフランク(ロバート・ミッチャム)はトレイメイン家に出動した。主の夫人のキャサリンがガス中毒を起こしたのだ。幸いにも夫の気づきが早く、事なきを得た。事故として片づけられたが、誰かがガス栓を開いたままにした疑いは残った。フランクはそこで娘のダイアン(ジーン・シモンズ)と出会う。キャサリンはダイアンにとって継母でうまくいってないようだ。 フランクは帰ったが、ダイアンは彼の後をつけてきてフランクを食事に誘った。そこで自分の彼女、メアリーのことや将来は自動車修理店を開きたい夢を話す。 翌日、ダイアンはメアリーに会い自分が昨夜はフランクと一緒だったこと、フランクの店の開店資金に1000ドルを出そうと言い出す。 メアリーはフランクと距離を置くようになったが、逆にフランクはダイアンに頼まれてトレイメイン家の運転手になる。 ダイアンの口利きでキャサリンに店の資金援助をお願いした。感触はよかったが、後日ダイアンから企画書がゴミ箱から発見されたと言われる。 フランクがダイアンに言われて出かけているとき、キャサリンの運転の車がバックで暴走してしまい、同乗していた夫も死亡した。 車に工作した疑いがあり、裁判となる。車に詳しいフランクか、キャサリンに疑いがかかった。弁護士は二人を同時に裁判をするために形だけでも結婚させた。 ミステリーの軽めの映画が観たいと思って以前買ったコスミックのDVDセット「犯罪の世界」の1本からの鑑賞。 昭和28年の映画だが、古さは感じない。(日本未公開らしい) まずこのダイアンという女が今で言うメンヘラである。メンヘラなんて最近のことかと思ったら、この頃からメンヘラはいたのですね。 明確には描かれないが、最初のキャサリンの部屋のガス栓が開かれたのもダイアンだろう。 フランクの店の企画書をゴミ箱に捨てたというのもおそらくはダイアンの自作自演。 夫婦が亡くなるのが映画のちょうど半分。 そして裁判へとつながっていく。裁判では「ダイアンがやった」と証明しきれなかったので無罪。 いよいよフランクもこのやばそうなダイアンという女に見切りをつけるが、メアリーはすでに別の恋人がいた。 一人で別の土地に行こうとする。ダイアンが長距離バスまで送っていこうと言い出す。 しかし・・・・ええい備忘録で書いちゃうけど自分の父母の時と同様に車をバックさせ、二人とも死亡。 このダイアンという女、おっそろしいメンヘラ。 こういう異常性格の女性はこの頃の映画からあったんだなあ。 今ホラーとしてリメイクしてもいけそうなくらいの映画。 トレメイン家には夫婦で働く使用人がいるが、これが日本人夫婦。 だから二人で日本語で会話するシーンが2回ある。ちょっと微笑ましいものがあった。 決戦は日曜日日時 2022年1月14日19:30〜 場所 新宿バルト9・ 監督 坂下雄一郎 千葉の地方都市が選挙区で防衛大臣もつとめた川島昌平。しかし病に倒れ、次の選挙では後継者として娘の有美(宮沢りえ)に決まった。谷村(窪田正孝)たち秘書は政治の世界の素人の有美に振り回されながらも当選を目指してがんばっていく。 しかし所詮素人の有美は「子供を産まないのは怠慢」、原稿の「各々」を「かくかく」と呼んだり、炎上系ユーチュウバーの挑発に乗って炎上を繰り返す。その都度なんとか収めていく谷村たち。 しかししがらみだらけの政治の世界になじめない有美は「いっそ落選してやる」と決意。今までは政治の世界のルールにどっぷり浸かっていた谷村も協力することにした。 だが支持率低下のために行ったこともすべて影響しない。 数ヶ月前からチラシを見て楽しみにしていた映画。なにも解っていない候補者に宮沢りえ、秘書に窪田正孝とくれば豪華キャストである。 1月7日公開で、新宿バルト9は2週目に入っても1日5回ぐらい上映してくれているが、見ようかと思ったユナイテッドシネマとしまえんでは2週目は1日1回上映となり苦戦しているようだ。 見終わって「うーん、悪くはないんだけどなあ」というのが感想。 地方の選挙戦を通して日本の選挙を描くとか面白そうだし、私も見たい。 しかしどうもうまくまとまっていない気がした。 第一に各キャラクターの説明不足。 有美は政治家の娘だが、政治の世界に入るまでいったい何をしていてどういう女なのか。我々が共感すべきキャラクターなのか。 せりふで一言「ネイルサロンを経営していた」と出てくるが、実業家として順調だったのか、無能で経営は行き詰まっていたが父親の財力でなんとかなっていたのか。周りに言われたとはいえ、なぜ政治家になる決意をしたのか。政治家の娘なのだから、今まで父親の選挙を経験し全くの素人ではあるまい。 想田監督の「選挙」というドキュメンタリー映画で選挙に出る「山さん」は切手商という自由業で「もし選挙に落ちても何とかなる」という人物だった。そういうバックボーンがほしい。 有美が観客にとって応援したくなるような人物なら「かくかく」や「子供を産まないのは怠慢」は不要だし、「かくかく」を生かせば最後までいや奴だが「これが仕事」と割り切る秘書の姿もそれはそれで面白かったと想う。 秘書の谷村。「学生時代から先代にはお世話になっています」と言っていたが、いったいどういう関係なのか。その辺の関係性が詳しく知りたい。 また後継者が有美に決まるまでも詳しく知りたい。 県議や市議が後継者を狙っていれば選挙戦における彼らの立ち位置が変わってくる。次を狙って取り入るか、逆に引きずりおろそうとするか、ひたすら応援するか、その辺も描いていたらもっとよかったかも。 そして後輩秘書の岩渕(赤楚衛ニ)。これも若い割には政治の世界のローカルルールにどっぷりである。「父親に言われてやってきた」みたいなことを言っていたが、父親は誰なのか説明がない。地方議員の一人だったのだろうか。もう少し活躍しても良さそうなキャラクターだが。 最後の選挙戦「開票まで解らない」という接戦な感じが伝わってこない。 当確が出たのは夜遅いらしいのだが、その辺のハラハラがあるともっとよかったと思う。 いろいろ苦言を書いたけど、基本的には好きな話である。 出演者としてはやはり窪田正孝がすばらしい。言葉は丁寧だが、脅すように諭すように有美に接する姿は窪田正孝ならではである。 特に有美が抗議の屋上から飛び降りるシーンでは「はいどうぞ」「止めません」「まだ降りないんですか?」などと迫るシーン、そして有美がマスコミにぶちまけると言った後、「そうなりますと我々は全力で否定します。有美さんは精神不安定という筋書きを書いてそのように描いていきます。そうなりますと有美さん自身が社会的に立ちゆかなくなる恐れがあります」と諭す(脅す)シーンはさすがだった。 それにしても画がなんかスカスカだった。美術にお金をかけていないって言うか。もっともこういうスカスカの建物が今の日本なのかも知れないけど。 悪い映画じゃない。レンタルとか配信になったらもう一度見たいと思う。 坂下監督は今回が初だけど、過去作品にも興味が沸いた。 漫画映画のできるまで日時 2022年1月12日 場所 東映チャンネル録画 監督 島田太一 製作 昭和34年(1959年) 今月、東映チャンネルで名作アニメスペシャルとして放送してるのだが、その中の1本。23分。東映教育映画作品なので、劇場公開とか宣伝用とかではなく、小学校の教材としての映画なのだと思う。 映画は漫画映画の制作の過程を追っていく。 まず脚本を元に登場人物のキャラクターを作ったり、音楽担当者が作曲を始めたりする。そして音楽が録音され、登場人物のせりふが役者によって録音される。 絵が作られてから音を入れるのかと思っていたら、必ずしもそうではないらしい。音楽やせりふにあわせて絵を作っていくのだとか。 なるほど、案外そっちの方が正しいのかもしれない。 そして下から明るくする机で、動きを1枚1枚絵にして、それを重ねて動きを見る。それを原画(この場合はキャラクターの元の絵を描いた人)にチェックしてもらって、それに合わせてセル画がかかれ、着色される。 それで撮影となるわけだが、アニメの撮影のカメラがこんな大がかりとは知らなかった。距離を置いて4つのセル画を重ねて遠近感を出したり、キャラクターの移動に合わせて絵を動かしたりするのがすべて電動式で行われる。 そして映像が出来上がり、効果音を録音し、すべての音ネガを1本に焼き付けて完成。 音が先、そしてアニメーターの多さ、撮影カメラの大がかりさなど、初めて目にすることも多く、勉強になった。 もちろん今はデジタル化してまったく違うとは思いますが。 火の鳥日時 2022年1月10日 場所 監督 市川崑 製作 昭和53年(1978年) 邪馬台国のヒミコ(高峰美枝子)はその鳥の血を飲めば不老不死になるという火の鳥を求めていた。マツロの国のユミヒコ(草刈正雄)に「火の鳥を射止めればおまえの国は攻めない」という条件でやらせる。 ユミヒコは国の決め事より自分が火の鳥を一度仕損じたことが悔しくて火の鳥を射るために鉄の矢を作る。 一方マツロの国は海の向こうからやっていた騎馬軍勢に滅ぼされた。マツロのウズメ(由美かおる)は美しさを隠し、騎馬軍の首領ジンギ(仲代達矢)に取り入る。 ヒミコの部下だった猿田彦(若山富三郎)だが、クマソの国を攻めたとき、子供のナギ(尾美としのり)を助ける。最初は反発した二人だったが、やがて親子のように心を通わせあう。だがヒミコの意に反してナギを殺せなかった猿田彦は邪馬台国を追われてしまう。 金田一耕助を4本撮り終えた後に市川崑が挑戦した手塚治虫のマンガの実写化作品。 角川映画の影響や「とにかく今までと違ったことを!」という東宝の勢いもあって作られた映画。 結果的にあまりヒットしなかったように記憶する。そのせいか、その他に理由があったのか今までDVDにもならなかったが、去年の暮れにブルーレイが発売。それも東宝からではなく、「復刻ドットコム」からの発売だ。 そんなことで封切り時以来44年ぶりに再見した。 見終わって「意欲的な実験作だったが、結局は失敗だったね」というのが率直な感想。 どの辺が意欲的だったか。 まずは脚本が谷川俊太郎、音楽ミシェル・ルグランなど今までの東宝作品にないようなスタッフを起用した。 アニメと実写を合成させ、実写では表現出来ないような動きをアニメで表現しようとした。 この辺が冒険ところで金田一シリーズでヒットを飛ばした市川崑に大御所の漫画家手塚治虫を組み合わせようという安易な発想。 そんなあたりが融合したのが、この「火の鳥」のような気がする。 でその実験は成功だったかというと、失敗だと思う。 面白くない点を検証する。 やはり実写とアニメの融合は無理である。 ナギたちが狼(?)に襲われるところで狼はアニメになって、当時のヒット曲のピンクレディーの「UFO」を歌い出す。 馬に蹴られたナギが鉄腕アトムになって空を飛ぶ。 これ、マンガでやると笑えるのだが、実写でやると笑えなくて失笑するだけだ。 そして背景。 ヒミコのいる宮殿(?)もただの地味な土を固めたような壁だけで、表の広場もごつごつした石が転がっている。 また合戦も草が生えている荒れ地でなんかその辺の広場でやってるようだし、兵士が着てる衣装も地味な茶色の皮の衣装。 戦国時代になると着物やら甲冑やらのぼり旗やらでなにやら画的に豪華さがでるけど、なんか派手さがないのである。 兵隊も2、30人で迫力ないしなあ。 もちろん戦国時代と違ってヒミコの時代の日本なんて広野ばかりだったかもしれないけど、画的にはしょぼいなあ。画にならないよ。 あと猿田彦の鼻。これがマンガで見るとこの大きな鼻があっても違和感はなく、それなりにかっこいいのだが、実写でやると珍妙なだけ。 若山富三郎もよくいやがらなかったなあ。 それに火の鳥も出てくるが、ユミヒコが射抜いてからはなんかモフモフのぬいぐるみみたいなのを抱えて出てくる。ぜんぜん神秘性がなくなってるよ。 とにかくすべてが企画倒れでうまくいかず、完全な失敗作になった。 その後、「瞳の中の訪問者」とか手塚マンガの実写化はあったけど、対策というわけでなく消えていった。 注・マンガの実写化、というのは「野球狂の詩」(1977年)とか「花の応援団」とかあってこちらが先だから、「マンガの実写化」ということでは「火の鳥」は後発だったと考えるべきか。 ひとつぼっち日時 2022年1月10日10:30〜 場所 新宿K's cinema 監督 副島新五 介護施設で働く木村波子(広山詞葉)。彼女の施設に新しい入居者がやってきた。名前は華絵(美村多栄)。その名前を聞いて驚く波子。華絵はかつて自分を捨てた実の母親だった。 華絵を見てつい敵意を抱いてしまう波子だったが、何も知らない周りは華絵の担当を波子にする。 華絵は波子を捨てて別の男と結婚していたが、その夫が入院し華絵と仲の悪かった義理の娘が施設に入れたのだ。その娘も華絵を憎んでいて、遺産を渡したくないということで無理矢理にでも離婚させようとしていた。 スタッフが見ていない間に離婚届に判を押させる娘。だがそれから華絵は外にでる。 波子をはじめスタッフ総出で華絵を探す。華絵を見つける波子。 義理の娘に捨てられた華絵を許そうとするが、華絵は「お前なんか生まなきゃよかった!」と騒ぎ出す。勢い余って華絵の首を締めてしまう波子。そこへ施設の仲間で今まで波子に気を使ってくれたタカハタが駆けつけ、心臓マッサージをして華絵は蘇生した。 波子は華絵を許し、これからも世話をしていこうと決めた。 備忘録なのでストーリーは全部書いた。 「れいこいるか」に出演の美村多栄さんが準主演の映画。 見ていて暗澹たる気持ちになった。 金もなければ家族もいない私なんぞは認知症になったらどうなるのだろう。野垂れ死ぬのならまだいいが、マンションで火事でも起こして周りに迷惑かけたらと思うと何かこう見たくないものを見せられてしまった気がする。 さらに私が苦手な児童虐待、育児放棄がベースになっている。学生の「いじめ」問題と同じくらい見ていてつらい。途中で出ようかと思った。 この手の題材がテーマな映画は見るのやめようかな。金使って暗澹たる気持ちにさせられることもないし。 しかし映画を見ていて疑問に思ったのが、なぜ波子が施設のスタッフに「あの人は私の母親で私を捨てた人です」といわなかったのだろう? 途中で同僚のタカハタが「波子さんはなんでも抱え込むところがあるから」というだけではなあ。 「波子が誰にも言えずに悩む必要がある」という脚本家の都合だけで話が動く。 まあ私なら疑問に思ったタカハタが華絵の過去と波子の過去を調べて結びつける、という探偵役をやらせるが、それはそうはならない。 脚本家の方向性の違いである。 最後、波子が華絵を殺してしまって「夢も希望もない絶望しかない映画だなあ」と思っていたら、あっさり蘇生して一緒に生きていく(たぶんタカハタも)ラストになって、「ハッピーエンドすぎ」と思ってしまう私も勝手なものだ。 とにかく、介護とか児童虐待とか育児放棄とか私が見たくないものをストレートに提示され、見ていてつらかった。 すけべ妻 夫の留守に(ラフレシア)日時 2022年1月8日16:30〜 場所 北千住BUoY 監督 佐藤寿保 製作 平成7年(1995年)国映 ある島でアリサは父親と二人だけの生活を送っていた。しかしアリサは島をでて外の世界を見たいと思っていたが、父親がそれを許さない。 ハルミ(吉行由美)は夫ヨシオ(今泉浩一)と結婚して数年が経つがまだ子供には恵まれない。義母(伊藤清美)にはネチネチといじめられる毎日。ヨシオが寝たし、義母は町内会のボランティアと言って出かけていった。ハルミも夜の町へと繰り出す。 アリサは一人で島からでて海を渡った。海岸で浮浪者(小林節彦ら)と出会う。浮浪者に犯されそうになったところをある男に助けてもらった。 その男が連れてってくれたのはなんと義母が経営するSMクラブ。 赤ちゃんプレイを楽しもうとするお客(切通理作)の相手をさせるが、チェーンソーで危険な目に遭わされて客は激怒!怒られたアリサだが、金の入ったバッグを持ち出して逃げ出す。 そのバッグには政治家のプレイの入ったビデオが入っていたのだ。なんとか取り返そうとする義母と男。 ハルミもトラックにヒッチハイクしたり、その男としたりして街へ着いた。そこで追いかけられたアリサと出会う。アリサと旅にでるハルミだが、ヨシオに追いつかれた。そのヨシオを鉄パイプで殴って気絶させるアリサ。 一方、アリサの父も東京にやってきた。 アリサとハルミはある廃墟に隠れたが、そこも義母たちに見つかってしまう。アリサの父も占いに従い、その廃墟にやってきた。 ハルミと義母が対決。ハルミが買って、義母や男は死んだ。ビデオは置いて金を持って逃げ出す二人。 一方ヨシオは助けられたが、記憶喪失。公園でオカマに話しかけられたが、結局は服を脱がせただけ。 今泉浩一特集が北千住から徒歩10分のBUoYというイベントスペースで行われた。目当ては「伯林漂流」。今回で3回目になるが、上映の機会があるたびに見に行く。また上映があれば観に行きたい。それで今泉氏が出演したピンク映画も上映されたので、予備知識なく鑑賞。 登場人物が複雑に絡み合い、そしてまとまっていく構成は好きです。 ただ途中、切通さんをチェーンソーで追いかけ回すのは私は怖くてだめ。 こういう残酷描写が寿保さんの苦手なところなんですよ。 映画の上映後に寿保監督、伊藤清美さんがら参加したトークイベントがあったが、国映で一度ボツになったそうだ。 たぶんチェーンソーのシーンも(映画では切通さんはパンツを切られるだけ)本当は切り裂かれたのではないかと想像する。 映画の方はラストも書いておくと、アリサの父が廃墟から抜け出して新宿駅をさまよっていると赤いドレスの人とすれ違う。「アリサ!」と話しかけ抱きしめる。しかしそれはヨシオ! ヨシオも「僕はアリサって言うんですね」と二人で抱き合う。おそらくはこれから二人で島で暮らすんでしょう。 アリサやハルミは手にした金で「ラフレシアをジャングルに見に行こう」と最初に会った浮浪者たちを誘って終わり。 ラフレシアはハルミが子供の頃に見てみたいと思った花だ。 真っ赤なドレスを着たオカマは女池充さん。これはすぐにわかる。 殴られたヨシオを助ける男(顔は写らない)は坂本礼さんだと寿保さんがトークイベントで話していた。演技ができないし、アフレコでも合わないし、苦労したとか。 チェーンソーのシーンを除けば比較的残酷さはなくて見やすかった。 四天王の頃のピンク映画はエッジが立ってますね。 今日上映された素材は「HDリマスター版」と表記があったが、まるで4Kリマスターぐらいの美しさはあった。素材だけでなく、プロジェクターそのものも立派でスクリーンとの距離も近いから明るかったんだろうけど、新作でも味わえないくらい綺麗だった。 サンダーバード55/GOGO日時 2022年1月8日19:20〜 場所 新宿ピカデリー・シアター5 監督 スティーブン・ラリビエー エピソード1「サンダーバード登場」 ジェフ・トレーシーの誘いでトレーシー島にやってきたペネロープと執事兼運転手のパーカー。 トレーシー島のサンダーバードメカの発進の様子をこの目で確かめる二人。 そしてサンダーバードのロンドンエージェントとして活躍を誓うのだった。 エピソード2「雪男の恐怖」 各地のウラン工場が爆破される事件が勃発。またヒマラヤの奥地では雪男の目撃談と雪男に襲われたのではと疑われる事件が頻発していた。 まだサンダーバードが出動する段階ではないが、気になるジェフがインドを訪れているペネロープに調査を依頼。 しかしガイドと称した男が実は武器商人フッドでヒマラヤの奥地のウラン鉱山に捕らえられてしまうパーカーとペネロープ。フッドは各地のウラン工場を爆破し、ウランの価格をつり上げようとしていたのだ。 ペネロープの依頼を受け、出動するサンダーバード。 エピソード3「大豪邸、襲撃」 イギリスの豪邸が襲撃され、お宝が盗難される事件が相次いでいた。ペネロープ邸も襲われたが、二人は無事だった。発信器により犯人の目星はついた。その二人は今度はイギリス王室の財宝をねらった。二人は数百年前にリチャード一世によって家をつぶされた一家の末裔だった。 「サンダーバードの新作公開!しかも撮影当時と同じ手法で!」というふれこみの今回の新作。実写版映画や最近のCGアニメ化された作品には辟易していたので、楽しみにしていた。 しかし宣伝などでペネロープの吹き替えの満島ひかりがやたらとクローズアップされている。「えっなんで?」という違和感を抱きつつも初日の夜に鑑賞。 そもそもこの3つのエピソードは1960年代の製作当時に音声エピソード(レコード盤に収録された音だけのエピソード)を元にしているそうだ。 それはオリジナルキャストによる収録だったそうで、その音声にそって今度は映像を作るという形式で作られたのだ。だから英語圏の方々はオリジナル音声で今回の作品を鑑賞できる。 日本で公開するにあたって樋口真爾が構成を担当した。 「ああ、そういうことか」と思った。最初画面サイズもスタンダードなので、現在にあわせてビスタなどにしないのがいいと思ったけど、そういうことではない。 かなりの部分がオリジナルの映像を再編集してるのだ。各メカの発進シーンを再度撮影したわけではない。 だから1話などのトレーシー島を案内する人形のシーンを撮ればよくて(いやもちろんそれだって大変なことは認める)全部新撮影ではない。 それにペネロープの活躍が中心なのだ。 これはもう元ネタが音声ドラマだったことを考えると合点がゆく。 つまり「没エピソード」というべきか、「スピンオフ作品」なのだ。 だからペネロープが主人公のエピソードばかりなのだ。 従って救助メカ大活躍、という訳ではない。2話に至っては鉱山が爆発するというので、2号は現場から離れる始末。 がっかりだよ! あと3話はイギリスの歴史を知らないとよくわからないんだろうなあ。 だから決して悪い作品ではないけど、新作エピソードにより救助メカも大活躍!という期待した作品ではなかった。 おまけとして監督が作った「ネビュラ75」というスーパーマリオネーション作品のパイロット作品(11分)を同時上映。 浅草キッド日時 2022年1月6日 場所 NETFLIX 監督 劇団ひとり タケシ(柳楽優弥)とキヨシは漫才コンビで地方のキャバレー周りもしているが全く受けない。困り果てて二人の古巣浅草フランス座に戻ろうかと言い出すキヨシ。 数年前、フランス座の芸人、深見千三郎(大泉洋)のコントが好きで芸人を目指しフランス座で働き始めたたけし。しかし仕事はエレベーターボーイで芸は全く覚えられない。頭を下げて深見の弟子にしてもらうたけし。 口は悪いが、「笑われるんじゃない。笑わせろ」「芸を見てもらってるんじゃない。見せてやってるんだ」という芸人の心構え、ボケの取り方を教えてもらう。 千春という踊り子は実は歌がうまく、たけしは彼女に歌手になってもらいたいと思っていた。舞台に空きが出たときに深見に頼んで彼女に舞台で歌を歌ってもらう。ウケたかに見えたが、客はやはり裸にしか興味がなかった。別の踊り子に「客はあたしたちの裸が見たいんだ。コントや歌じゃない!」と言われ、「ここにいてもだめだ」と心を決めるたけし。 ちょうどそのとき、抜けていった先輩のきよしから「漫才をやろう」と誘われていた。それに乗っかってフランス座をやめたたけしだが、なかなか受けない。 5日の夜に昨年末フジテレビで放送のあった「志村けんとドリフの大爆笑物語」(そんなタイトル)を観た。志村けんがドリフの付き人となり、人気者になっていくドラマである。期せずして大喜劇人の生涯を描くドラマを二晩続けて観たわけだ。 「座頭市」でたけしがタップを踏んでいたが、ああそういうことかあ、と合点がいった。彼も最初から漫才をしていたわけではないのだ。 映画の中心は座長(フランス座の経営者でもある)深見千三郎だ。 破天荒というほどでもないが、芸に対しては真剣な男。漫才やテレビを下に見ていて、昔ながらの「浅草の喜劇人」というべき存在。 たけしは態度がでかい、などと「THE・MANZAI」で売れ始めた頃に批判があったが、深見の芸風を受け継いでいたんだなあ、と納得。 ツービートの名前の誕生秘話とか、「知らなかった裏話」も知ることができ、興味深い。 ツービートの漫才の再現もくどくない。 昨日観た志村けんの方はドリフのコントを延々と丸ごと再現するのである。それはそれで面白かったし、山田裕貴や勝地涼の演技もすばらしく、そこは賞賛に値する。 しかしそれは実物のビデオを観ればいいことだし、再現することにそれほど意味があったのかと思う。 ドリフのコントは我々も観ている。当時観ていなかった裏側で何が起こっていたかを描いてくれた方がよかったと思う。 その点、この「浅草キッド」の方が再現(特にタップダンス)の具合もちょうどいいバランスだったと思う。 また70年代の浅草の風景が懐かしい。CGもあるけど、セットも組んでるだろう。 大泉洋、柳楽優弥が素晴らしい。特に大泉洋は見直した。 こういう映画がなぜ松竹で企画されて上映されないのか。なぜNETFLIXで製作されてしまうのか。 そこに日本の映画会社の限界を観るような気がする。 まあ「ドント・ルック・アップ」もあるので、日本だけでなくハリウッドでも同じ壁にぶつかっている気もするけど。 ドント・ルック・アップ日時 2022年1月6日 場所 NETFLIX 監督 アダム・マッケイ 天文学の大学院生のケイトは地球に近づいてくる彗星を発見した。ただちにランドール博士(レオナルド・ディカプリオ)に報告。喜んでいた仲間たちだったが、ケイトとランドールはこの彗星が半年後に地球に衝突し、地球に住む生物は壊滅的な打撃を受けるであろうことを発見した。 ただちにNASAを通じてオグルソープ博士に連絡が取られ、事態を重要視してくれた博士は大統領(メリル・ストリープ)に報告した。 直接大統領に会おうにも来年の中間選挙対策で頭がいっぱいの大統領には通じない。やっと大統領と面会ができたが、「静観」を決め込んだ。 ケイトとランドールはテレビに出演。しかし司会者にちゃかされるだけで、真剣にしてもらえず、ケイトは激怒。彼女は「変人」にされてしまった。 中間選挙を前にしてスキャンダルを回避するため、大統領はやっと彗星に関してまじめに取り組むことにしてくれた。スペースシャトルで核爆弾を送り彗星の軌道を変える計画だ。 発射直後、すべてのロケットは軌道を変え、地球に落下した。巨大IT企業の社長で大統領のスポンサーでもあるBASHから「彗星にはレアメタルをはじめとして資源が豊富にある」との提案を受けたからだ。 BASHの計画では彗星を爆破して細かくして地球に落下させレアメタルを使おうというものだった。 NETFLIXで昨年末に公開されたSFコメディ。(一部では劇場公開もされた)社会風刺的な作品でもある。低予算の映画にもありそうだが、ディカプリオも出てるし、大作感は十分だ。 正直言って2021年に公開された映画作品ではベストワンだ。 緊急事態が起こっても大統領は選挙で頭がいっぱい、その危機事態も選挙に利用しようとする、テレビは芸能ニュースの方が大きく扱う、そして歌手の離婚報道すらテレビショー化する、こちらも何でもかんでも面白おかしくすることしか考えていない。 やっと事態が動き出したかと思ったら時代遅れの何でも力で押さえつけるタイプが登場。しかしそれさえも「資源がある」の一言で地球の危機もなんのその。 すべてが金に変えられてしまう。 アメリカは中国、ロシア、インドの大国をこのレアメタルの計画から外す、そしてこの3カ国による彗星爆破計画も阻止してしまう。 すべての危機は金になるかならないか、票になるかならないかで判断されていく。 それは今のコロナ問題や地球温暖化問題、原発問題など、ありとあらゆる問題が「こうすべきである」という科学的根拠のある対策から「金」「票」の尺度で判断されていく。 行き着く先は人類破滅、である。 途中ランドール博士もテレビキャスターと不倫関係になったり(なんかこれもありそうだ)、紆余曲折はあるものの、最終的には家族で最後の晩餐を迎える。 まったく「世界大戦争」と同じである。 そして人類破滅となったとき、プランBとして用意されていたロケットで大統領やBASHの社長は逃げ出す。 2万年後、人類が住めそうな星に着陸するロケット、しかし着いた途端に大統領はその星に住んでいた生物(地球で言えば恐竜の時代だったらしい)に喰い殺される。 シニカルな笑いに満ちたブラックユーモアの傑作。 「博士の異常な愛情」に匹敵する人類終末物の作品だ。 美少女プロレス 失神10秒前日時 2022年1月3日13:15〜 場所 上野オークラ劇場 監督 那須博之 製作 昭和59年(1984年) ストーリー省略。 この映画、数年前にシネロマン池袋で観ている。そのときにも書いたけど、この映画のプロレスの試合シーンに観客のエキストラとして出演したのだ。(さらに去年にも同じくシネロマン池袋でも上映されてたような0 自分がエキストラとはいえ参加した映画が40年近く経っても上映されるというのはうれしい。 そんなに名作かあ?? (DVDにもなったが、今度はブルーレイにもなっている) この映画たしか正月映画だったから出演する女優も多く、豪華な印象。 数年ぶりに観たが、やっぱり面白くないなあ。 夢の島大学のプロレス愛好会のシーンでやたらとしごきのシーンがあり、それが体育会系のしごきでいじめにもつながるようで私としては今観ても不快なのだよ。 そういうのが昔から嫌いな質なのでそれがひっかかるのだろう。 前は自分の中で気になるだけだったが、最近のパワハラ、セクハラ批判の空気の中ではどんどんそれが目立ってきたのだ。 いじめてなにが楽しい?って思うし、そう思ってもいい空気に時代がなってきたからね。 あのシゴキが娯楽になった時代だったのだなあ、と変なことを考えた。 何度も言うけど今でも上映されるのはうれしいが、それほどの映画かあ?と思ってしまうのも事実。 山本奈津子は数少ない好きな女優だけど。 当時はよく知らなかったので、同じスタジオに山本奈津子がいても何も感じなかった。 2000年代の「ウルトラマンマックス」の金子修介監督回(確か1話とか2話)に出演していたが、今はお元気だろうか? まん開ヒールズ 女の魔剣と熟女のアソコ日時 2022年1月3日11:50〜 場所 上野オークラ劇場 監督 塩出太志 製作 OP PICTUERS 「ヒールズ」シリーズ、ピンク版第2作。 1話30分強のオムニバス形式だが、去年のOPフェスのR15版で1話2話そして3話まで上映された。(ピンク版の1作目は1話2話だけであった) 今回のピンク版2作目はどうなるかと思ったら、前半は3作目、そして新作エピソードの4作目が公開された。 今まで霊が見えない茂子だったが、冒頭でだれか知らんけど(というか1作目2作目に出てきたのかな?)発明家が出てきて霊を吸い込む機械とか霊の見えるサングラスなどを渡す。 んで前に出てきたあゆみ(きみと歩実)が依頼した男が出てきて、彼の母親がずっと眠ったままになってしまったという。 その母親の心の中に霊がいると思い、あゆみと茂子は母親の心の中へ。 その間にマキ(西山真来)は依頼した男とセックス。 あゆみたちは心の中で出てきた死に神を何とか倒す。 ほっとした3人だが、やっぱり死に神は出てきて・・・・ で終わり、次回作に続くらしい。 でもなんだかピンク版のせいか今回はカラミのシーンがやたら長く感じられ、話が頭に入ってこない。 前に比べて「ああきたらこうする」みたいなのが足らない気がした。 それに4話の最初に前に出てきた依頼者も出てきて(でも私は詳しくは忘れている)、なんだか混乱した。 ワレメの誘惑 あそこの具合日時 2022年1月3日10:40〜 場所 上野オークラ劇場 監督 深町 章 製作 新東宝 銀田一探偵(岡田智宏)は六つ墓村の実力者、犬山岩造(港雄一)死亡の謎の究明を依頼され、この村にやってきた。頼んだのは犬山家で働いていた玉子だ。玉子は岩造に手込めにされ、恨みを持っていたので殺したのだと言われている。岩造の娘(佐々木麻由子)によると岩造は心臓が悪く、あっちのほうは医者から止められてたのにしたために心臓に負担がかかって腹上死状態で死んだという。死に際に「三段 数の子」と言い残したという。 それぐらい締まりがよかったと推理する銀田一。玉子と同様に岩造に犯されたキン子を訪ねてみる。確かめてみたが、緩くて入ってるかどうか解らないくらい。キン子ではない。 銀田一は鞠子(華沢レモン)という少女と出会う。どこか頭が弱そうな彼女だったが、あそこの締まりはいい。彼女は自分が岩造を殺したとは思っていない。 岩造の娘に頼まれた、彼の財産の隠し場所も解った! 上野オークラ新年1回目。 探偵銀田一とか六つ墓村などの単語で金田一のパロディと知り、観たくなった。 で、岩造の財産の隠し場所は「われときてあそべやおやのないすずめ 岩造」という掛け軸の色紙に隠されているというのだが、これが最初の「われ」と「め」でワレメ岩(という二つに裂けたこの村の名物がある)の下にあると解るのだが、なんで最初と最後の文字なの? 横読みするとかいろいろ考えちゃったよ。 この辺が雑だけど、そこがピンク映画って言えばピンク映画なのだが。 岡田さんの銀田一姿は楽しめました。 点と線日時 2022年1月2日17:00〜 場所 ラピュタ阿佐ヶ谷 監督 小林恒夫 製作 昭和33年(1958年) ストーリー省略。 数年前にDVDで観てるけど、劇場で観たことなかったし、堀雄二も出ていて主役が南廣なので「警視庁物語」っぽいので再鑑賞。 (前にDVDで観たときは「警視庁物語」をあまり観たことがなかった) 前も思ったけど南廣の三原警部補が感情的になりすぎるのはだめでしょう。そして南廣演技下手すぎ。まだまだ堅い。 志村喬が三原の上司の係長役。一緒に増田順司が黒幕の部長(三島雅夫)の部下役なのだが、この増田順司を取り調べに志村喬も参加する。 その時の追い込み方が、「野良犬」の千石規子の取り調べをするシーンを彷彿とさせた。 犯人の高峰三枝子の「女の恨み」みたいなものがもう少し出てればまた違った印象になったと思う。 犯人二人の遺体に手を合わせる加藤嘉の鳥飼刑事もワンショット欲しかった。ここでワンショット入ると鳥飼刑事の印象ももっと深くなったと思う。 とにかく(初見の高校生の時から思ってたけど)、85分で話端折り過ぎだよなあ。調べても調べてもアリバイが崩れない延々と続く壁、が原作のおもしろさなのに。 そこが難点。 共犯者(1958)日時 2022年1月2日15:00〜 場所 ラピュタ阿佐ヶ谷 監督 田中重雄 製作 昭和33年(1958年) 福岡で家具商を営む内堀彦介(根上淳)はここ数年で事業を成功させ、地元の商工会議所では立身出世の人物といわれていた。しかし彼も5年前までは食器の行商をしているしがないセールスマンだった。その時に同業の町田武治(高松英郎)に誘われ、山陰の田舎銀行に強盗で入った。二人で500万円ずつ分配し、「これで俺とお前は他人だ」と町田に言われ別れた。その金を元手に今の家具のデパートとして急成長したのだ。 今は婚約者もいて順風満帆。しかし一つ気がかりがあった。それは町田である。もし町田が生活に困るようなことがあったら自分を脅迫するかも知れない。内堀は町田が現在高崎にいることを突き止め、地方紙に調査員募集の広告を出した。それに応募してきたのが失業中の竹岡(船越英二)だった。内堀は悟られないようにするために町田のほかに数名の高崎の事業家をピックアップし、特に目立った点はないか報告させた。 しかししばらくして町田が離婚して、女と千葉に行ったと報告を受けた。竹岡にも金を渡して千葉に追わせた。それから町田は事業にも失敗し、女にも逃げられたという連絡が入る。彼は西に向かって日雇いなどをしながら転々としている。福岡に近づいてくる。 竹岡から町田は下関のロープウエイの近くに小屋に浮浪者同然で寝ていると連絡がきた。拳銃を手に入れた内堀は下関に向かった。 ラピュタ阿佐ヶ谷の松本清張特集。多くは観てるけど、観てないのだけ観てみようと選んだのがこれ。(自分にとって日本映画旧作鑑賞はやっぱりラピュタだなあ) 見始めてすぐに気がついたが、これ数年前に同じ内容でテレビドラマ化されたのをDVDで観ている。家具商ではなく電器店で岐阜が舞台だったと思う。(2時間サスペンスをDVD化したものだと思う) 松本清張らしく、「本来はまじめな男がちょっと道をはずれてしまうあれこれ」が描かれる。 根上淳がとにかく追い込まれていく。 そしてラスト、備忘録として書いておくけど、小屋に入ってむしろをかけて寝ている男に声をかける、出てきたのは竹岡! 竹岡は途中から顔も知らない雇い主に不審を感じ、独自に調べて銀行強盗を感づいたのだ。そして竹岡を脅迫する。とそこへ町田登場! 町田は実は浮浪者にはなっておらず、すべては竹岡の虚偽の報告だったのだ! 町田と内堀で今度は竹岡を脅し、竹岡はひたすら「すいません。私は忘れます」と謝る。結局崖から落ちる。「お前なぜ撃たなかった!」と内堀を責める町田。二人は刺し違えて二人とも死ぬ。そこへ竹岡の妻が警官隊を連れてやってくる、というどんでん返しに次ぐどんでん返し。 いやここは面白かったです。 でも竹岡は結局恐喝も未遂に終わったことからか、警官には何のお咎めもなし。「軽いけがで済んだんだから、あんたも奥さんに感謝して真面目に働きなさいよ」で終わり。 映画の途中で内堀の行商時代の会社の内堀の後任(山茶花究)が「是非先輩に成功の秘訣を伺いたいと思いまして」とやってくる。 もちろん内堀はそれどころじゃないと追い返すが、「ではまた九州を回ってからやってきます」と言い残す。 エンディングで看板をはずされている内堀家具デパートを見上げて唖然とするのが面白かった。 あとはラストカットは婚約者が海を見つめるカットで「終」。 婚約者にしてみればショックは大きかろう。 この「終」が出て観客は立ち上がりかけたけど、クレジットの続き(映画の冒頭にもクレジットはあったけど)が出た。 この時代の映画としては珍しい。 クナシリ日時 2022年1月1日20:30〜 場所 シアター・イメージフォーラム1(1階) 監督 ウラミージル・コズロフ 今はフランスで活動する旧ソ連・ミンスク生まれの映画監督、ウラジーミル・コズロフが撮った北方領土の国後島を撮影したドキュメンタリー映画。これもTwitterでフォロワーさんが感想をつぶやいてて、「国後島の現在が観れるなんて!」と感激して見に行った次第。(ファーストデーを利用したのでレイト上映を見に行った。普段は朝10時半の回もあるのだが、元日なのでさすがに朝一の回はなかった) 撮影は2019年5月から6月上旬。ロシア人といえども自由に行き来できるわけではなく、交通の便の悪さもあるけどいろいろと許可が必要な場所らしい。 兎に角荒涼とした場所である。 たままた天気が悪い時期だったのかもしれないが、とにかく全編曇り空。どよーんとして暗い雰囲気である。 町の人が見せてくれるが、ちょっと掘れば日本人が住んでいた頃の足跡、醤油瓶や茶碗のかけらが出てくる。お寺の金があった場所の石垣は、今は石垣だけが出てくる。 住宅は貧しく、ソ連時代に与えられた住居は便所の場所はあるけど、便器はない。用便は外でいているという。とにかく貧乏で、ソ連からも忘れられたような存在だ。 5月6月は暖かいのかパンツ1枚で海を泳ぐこともできる。千島火山帯の影響からか温泉もあって、露天風呂にも入る。泥は関節の痛みに利くらしい。 旧ソ連軍の戦闘の模様を再現したりする祭り(と言うべきなのか。イベント)もある。 昔の戦車や機関銃を展示して軍事博物館を作ろうという計画もある。 しかしまあ何を言ってもただの過疎の田舎だ。 「日本人が来て雇用を生んでほしい」と願うものもいる。「ここはロシアの土地だ!」と言い張る役人らしい人もいる。 その役人の部屋の時計が故障か電池切れか秒針が動こうとして「カチッ、カチッ」と言ってるだけだ。 要するに本国からも見捨てられている土地である。 「ロシアが北方領土返還に応じないのはアメリカが基地を作る可能性があるから」という話を聞いたことがある。 でもこの映画を見て「ホントかなあ」と思った。 そんなに戦略的重要なポイントなら、ロシア軍の基地があっても良さそうだ。沖縄本島ぐらいのサイズはあるのだから、基地を作る場所がないとは思えない。 それにアメリカも北方領土に基地を作るなら、北海道に基地を作ったっていいじゃない。 「日本人もここに住むつもりはなく、漁業権が欲しいだけ」と住民が言ってたけど、それぐらいしか価値を感じないんだな。 ロシアが返さないのは「一度手にしたものは何があっても手放したくない」という貧乏根性で、日本が返還を要求するのは「どさくさ紛れに参戦し領土だけ奪ったソ連に一矢報いたい」というメンツだけ。 要するに意地の張り合いで土地そのものには両国とも興味がないのではないか。 映画ではそんな話はしていないし、監督もそう訴えたい訳ではないと思うが、この映画の見た国後島の現実を見ると、なんかそんなメンツだけを張り合ってるように思えた。 ダーク・ウォーターズ 巨大企業が恐れた男日時 2022年1月1日16:25〜 場所 TOHOシネマズ日比谷シャンテ・スクリーン2(2階) 監督 トッド・ヘインズ 環境分野が得意の企業弁護士のロブ・ビロット(マーク・ラファロ)は知らない農場主ウィルバー・テナントの訪問を受ける。自分の土地が大手科学企業デュポンによって土地が汚染されたというのだ。聞けば自分の祖母の知り合いだという。会ってゆっくり話を聞く。環境庁がかつて踏査結果を出したというので、ある会合で知り合ったデュポン側の弁護士に頼んでその調査結果を見せてもらった。 問題ないという報告だったがそれを伝えにテナントを訪ねる。そこで普段はおとなしい牛に襲われ、ただならぬものを感じた。 やはりこの調査結果にはなにか裏があるのではないか?そう直感したロブは本気で調査し始める。 ノーマークだったのだが、知人がTwitterで面白かったと言っていたので鑑賞。TOHOシネマズは安くみられないので、元日のファーストデーを選んだ。元日の日比谷界隈はコンビニとか飲食店しかやっておらず、シャンテもミッドタウン日比谷も閉まっていて閑散としている。 (でもTOHO日比谷はレイトショーもあって遅くまで営業している) でもこの映画、7割は入っていたかな。 日本タイトルとは少し違って巨大企業デュポンの方の人間は出てこない。だから恐れていたかどうかは分からんけど。 資料請求したら膨大な資料を送りつける嫌がらせをしたりしつつ、フライパンなどの使われるテフロンが原因と突き止める。 年間10億ドルの利益を生むこの素材をデュポンは有害物質であると知りつつ40年以上に渡って垂れ流したのだ。政府は70年代に環境汚染物質の選定をしたが、それ以前の物質は事実上企業の自己申告だったため、有害物質には選定されなかったという訳。 その後、住民の血液サンプルを69000人分取ったら分析に7年も要して原告側住民から不信を買ったり、結果がでてもデュポンは3500件の訴訟を言い出したりしていろいろあったが、結局は「この調子でやっても勝ち目はない」と判断したらしく、すべて和解に持ち込んだ。 う〜ん、立派な話だなあとしか言いようがない。 頑張った主人公の弁護士は偉い。 それに比べて日本は・・・と暗澹たる気持ちになる。 有害物質の汚染のために鼻の穴が一つしかない状態で生まれた赤ちゃんの話が出てくる。 後半、主人公がたまたま立ち寄ったガソリンスタンドでその赤ちゃんが大人になって登場する。 赤ん坊の写真とか10歳ぐらいの整形した写真が出てきていたが、彼が大人になって出てくるとは! 「ハリウッドの特殊メイクはすごいなあ」と思っていたら、パンフを読んだら本人らしい。 そういえばクレジットでもはじめの方に出てきたもんなあ。台詞も少ししかない役なのに。 これには驚いた。 東京では日比谷と立川だけの上映。こういう告発映画はアメリカにはあるけど、日本はないなあ。あってもドキュメンタリーだもんなあ。 |