2022年3月

   
パンティ大作戦 猫が逃げた クライマックス
好色日本性豪夜話 カランコエの花 階段の先には踊り場がある 親密な他人
つかずはなれず 遠い場所から 性の完全犯罪 法医学教室の午後
スケコマシの掟
”SEX”放浪記
恐怖の獣人 チェチェンへようこそ―ゲイの粛清― 警視庁物語 謎の赤電話

パンティ大作戦


日時 2022年3月27日21:00〜
場所 ラピュタ阿佐ヶ谷
監督 久我 剛
製作 昭和48年(1973年)


下着のデザイナーで有名な貴美代(谷ナオミ)。彼女はマダムXと言われマスコミでも話題だったが男嫌いで通っていた。世界中を飛び回る彼女だが、自宅の部屋でたくさんのパンティに囲まれるのがほっとするひとときだった。そのパンティには男の思い出でいっぱいだった。
「白いパンティ」
女子高生時代、同級生の女子がエロ本を見て興味津々なので、実際のセックス中の男を見せてやることにした。
たまたま歩いていた遊び人の男と貴美代はホテルへ直行。男が風呂に入っている間に同級生の一人と入れ替わったが、男はかまわずセックスする。
男のセックス中の情けない顔を見る。次には貴美代の母がいつもスポンサーの男を連れ込んでいる最中に乱入。男は別れたいと言っていたが、貴美代と女友達のレズセックスを見せつけ、男をもう一度ふるえたたせた。
「赤いパンティ」
貴美代は母親の紹介で中年だが金持ちの男と見合いをする。結婚にまで至ったが、貴美代には恋人がいた。金がほしい貴美代は恋人をあっさり捨てる。「新婚旅行には来てね」と言い残す貴美代。新婚旅行先の真鶴温泉で「処女とお別れするのが寂しい」と言って一人部屋を出る貴美代。そして元の恋人が待つ部屋へ。一戦して夫の部屋に帰る。
処女の振りをして股間から赤いものが出て夫は満足した。実は赤チンなのだけど。
「青いパンティ」
女が男の車に乗り込み、河原でカーセックス。
貴美代も別の男の車に乗り込みカーセックス。


六邦映画4作目。これで後半戦である。カラー(上映プリントは退色している)
ストーリーもなにもなく、面白くもなんともないが、当時のピンク映画のレベルを知るにはいいだろう。
若松孝二をピンク映画のスタンダードと思っては困る。

第1話ではホテルから出た後、貴美代のほかに3人いた友達の一人が「あたし用事を思い出した」と言って去っていく。貴美代たちは「変な子ねえ」とか言っていて、去った女子高生が別の男と会うのかと思ったら、それはなし。彼女はそのまま消えた。
きっと撮影の途中で抜けることになって無理矢理にそうしたのだろう。

あと3話。
貴美代が男をひっかけてカーセックスはわかるけど、全く関係のない男女のカーセックスを交互に写されてもねえ。
なんで二組出てきたのかさっぱり解らない。
まあ考えてないんだろうけど。
当時のピンク映画のレベルが解ります。











猫が逃げた


日時 2022年3月27日15:10〜
場所 新宿武蔵野館3
監督 今泉力哉


週刊誌記者の町田広重(毎熊克哉)とレディスコミックの漫画家の町田亜子(山本奈衣瑠)は夫婦だが、離婚しようとしていた。離婚届に書いているときに広重が「猫のカンタはどうする?」と言い出した。「当然私でしょう。いつも世話していたのは私だし」と亜子は言うが広重は納得しない。
二人の離婚の原因は二人の不倫だった。広重は記者仲間の沢口真実子(手島実優)と、亜子は担当編集者の松山俊也(井之脇海)とそれぞれ関係を持っていた。
カンタの問題が解決するまでは離婚しないことになんとなくなってしまい、離婚問題はそのままずるずると時間だけが過ぎていく。
そんな日々、カンタがいなくなった。亜子も広重も必死に探すが見つからない。
そんな時、真実子の様子がなんだか変だ。「いとこが来てるから」と何かと帰りたがる。実はカンタを連れ去ったのは真実子だった。


城定秀夫脚本、今泉力哉監督、という「愛なのに」と逆のコラボレーション企画。中心にいるのはスポッテッドみたいだ。
正直、私は「愛なのに」の方が好みかな。

今回では話の展開がかなり遅い。二組の不倫カップルのやりとりを長々と描き、話がいっこうに動き出さない。
カンタがいなくなって、やっと動き始め、そして真実子が連れ去っていた、そして真実子の部屋には松山が来ている!というあたりから話がやっと動き出す。

実は真実子はジャーナリスト魂(?)で松山と亜子の不倫の現場を押さえ、カンタをさらった事を知られたが、協力するように言ったのだ。
広重が真実子の行動を不審に思い、ついにカンタを連れ去ったことがばれてしまう。真実子にしてみれば膠着している離婚問題を進めるためにカンタを一時隠したのだった。

そこから4人で話し合う場面になり、今泉映画でよくある最後には登場人物が集まってディスカッション(?)をする展開。このあたりは面白かった。

しかしねえ、やはり「愛なのに」に比べて見劣りするのはやはり瀬戸康史の出演だろう。瀬戸氏自身がどうだというより、やはりスター、知名度のある俳優が出てるとやはり画面が華やぐのだ。
井之脇海も最近知名度が上がってきたが、やはりスター、というか華やかさではいまいちである。

やっぱり映画にはスターが必要だなあ、と改めて思った。
あと猫のカンタ。この映画では一番の名演技だった。
でもラスト、亜子と広重が元の鞘に収まるのはいいとして、真実子と松山が一緒に暮らしだしたというのはちょっとこじつけがすぎる気がする。









クライマックス


日時 2022年3月26日11:05〜
場所 光音座1
監督 小林 悟
製作 OP PICTUERS


座長と役者が二人、大道具が1人の合計4人の弱小劇団、ザ・トリオ座。
今日も座長が役者キヨヒコとケンに芝居をつけている。しかしキヨヒコが下手で座長はケンを贔屓にしている。
座長は大道具の三四郎に「芝居とは何かを教える」と言って夜に酒の席に呼び、そのまま犯してしまう。翌日三四郎は逃亡した。
キヨヒコには「今度の芝居、泉鏡花と松本清張をあわせたみたいで変だよね」と懐疑的。キヨヒコを誘って劇団を抜けようと誘うがキヨヒコは「考えておく」と歯切れが悪い。
翌日、座長から嫌味を言われるケン。キヨヒコが言いつけたのだ。座長はケンと関係を持つ。「下手な役者なんかやめさせましょうか」と二人で相談。
キヨヒコの妹が「公演用に」と500万円持ってきた。キヨヒコは公園で妹に会う。「小道具に必要って言ってたから」と格闘用のナイフを渡す。
「刃はつぶしてあるから危険じゃないよ」と言われ受け取る。
500万円を前にしてキヨヒコは「『カルメン』やりましょう!私がカルメン」と演目を変えてしまう。
座長と関係を持つキヨヒコ。キヨヒコにばかり目を向ける座長を見て落ち込むケンだが、キヨヒコはそんなケンを慰める。
翌日の練習ではキヨヒコとケンがべったりし、「そんなにくっつかない!」と座長に言われるが平気な二人。
ケンはキヨヒコを「誰にも渡さない!」といい、座長も「下手でも金持ってる方がいいよな」とキヨヒコを離すつもりはない。
海岸。
砂浜でカルメンを踊るキヨヒコ。そこでケンと座長がやってきてキヨヒコを奪い合う。キヨヒコの妹が持ってきたナイフを使う座長。しかし勢い余ってキヨヒコを刺してしまう。逃げ出す座長、追いかけるケン。
二人は崖の上で争い、やがて二人とも崖の下に落ち、死んだ。


話は全部書いた。
キヨヒコと妹が会うシーン、ラストの海岸のシーンを除いてはすべて劇団の建物の中で話が進む。この劇団、合計4人しかいないのに、自分たちの稽古場を持ち、二階ではケンとキヨヒコが暮らしている。

キヨヒコを演じるのは初期のゲイ映画の常連だった沢まどか。この方、なんか暗いんだよね。
小林悟のゲイ映画はいつもそうであることが多いのだが、着衣のまま行為に及ぶことが多い。全裸で絡み合うってほとんどない。本作でもない。
上は着たままズボンとパンツをずり下ろし、脱がずに挿入するのだ。
だから胸も足もでない(ケツだけ出る)。
こういうシーンが多いので、「なんかやる気ないな」と感じてしまう。

それにしても後半、カルメンの曲を流しながら稽古場で座長とキヨヒコ、キヨヒコとケンが体を絡ませたまま踊る姿(着衣のまま)はなかなかシュール。うん、シュールとしか言いようがない。

そして座長がナイフでキヨヒコを刺したとき「あれ、刃はつぶしてあるんじゃなかったの?」と思った。
あと座長とケンが死んだ海岸は小林映画でよく出てくる狭い砂浜で海の方に穴があいた崖がある場所。(うまく文章では表現できないが)

3人の人間関係がキモなのだが、心の変化とかの細かい描写はなく、ただただ「あいつとあいつが出来て、こっちとあいつが出来て」という作者の都合でやらされてるだけ。
話は破綻してないけど、かといってまとまってる訳でもない。
いつもの小林悟レベルである。
助監督に国沢実が参加していた。

同時上映は「指まがりのダンディー」。感想は以前書いているので省略。
このところ見た映画ばかりでいよいよ光音座のゲイ映画も見尽くしてきたな。






好色日本性豪夜話


日時 2022年3月25日21:00〜
場所 ラピュタ阿佐ヶ谷
監督 図師 巌
製作 昭和46年(1971年)


身の丈が一寸の一寸太郎(椙山拳一郎)は都へやってきた。女性の悲鳴を聞き、駆けつけたら2人の鬼が女性を暴行しようとしていた。太郎は戦って女性を救う。負けた鬼は「何でも言うことを聞きます」というので打出の小槌で背を大きくしてもらったが鬼は意地悪をしてペニスはそのまま。
助けた女性とも1回交わるが、去っていった。
竹の中から生まれたかぐや姫、大きくなって求婚者が耐えない。3人の求婚者にかぐや姫は「蓬莱山の麓にあるという万華鏡を持ってきた人と結婚する」という。蓬莱山の麓に住む妖婆によって一人は死んだ。
そこへ大きくなった一寸太郎が登場し、妖婆の力で動物にされてしまった元村人の力を借りて、妖婆を落とし穴に落とし、降参させた。
妖婆から万華鏡をもらって若者二人とかぐや姫のところへ。
かぐや姫と太郎は結婚し、万華鏡やかぐや姫の力でペニスは徐々に大きくなった。しかしかぐや姫は月へ帰って行った。
やがて鶴の化身と結婚し、子供まで出来たが、妻と交わっている姿を見られ子供に「鶴がおとうを食っている」と言われてしまう。
万華鏡の力を借りて鶴を人間にし、親子3人幸せに暮らした。


六邦映画特集3本目。
先週の金曜日は7割ぐらいだったが、今日は満席である。
しかも狭苦しい中、疲れもあって寝落ちしかけた。
まあ余りにばかばかしかったんだけどね。

最初は完全にオムニバスだと思っていたので、かぐや姫の話の途中で太郎が出てきて驚いた。えっ話つながってたの?
そして今度は鶴の恩返しを話がミックスされている。
なんかこう、ここまで脱力する話はびっくりである。

そして昔話部分はアニメで作られているという珍品ぶり。
無駄に金をかけている超大作である。
状態は悪いけど、この映画だけは残し、時々「珍品映画」特集で上映されるべきだね。その価値はある脱力ぶりである。






カランコエの花


日時 2022年3月21日
場所 TSUTAYA宅配レンタルDVD
監督 中川 駿
製作 平成30年(2018年)


月乃(今田美桜)は高校2年生。英語の先生が休んだ日、保健の先生がやってきてLGBTについての授業があった。でもほかのクラスではしていない。「このクラスに同性愛の奴がいるんじゃね?」とクラスでも噂になってしまう。噂を聞きつけた担任の加藤先生は「そういう訳ではない」と否定するが逆効果。
沙奈が月乃に「私知ってる」と打ち明けてきた。「先週具合が悪くて保健室に行ったとき、その生徒が保健の先生と話しているのを聞いてしまった」という。それは桜だと。
その日、月乃は桜から「一緒に帰ろう」と言われる。自転車を二人乗りするが、桜は月乃の背中に頬を寄せた。
桜は何か言い掛けたが、そのまま別れた。
翌朝、学校に行くと教室の黒板に大きく「小牧桜はレズビアン」と書いてある。桜がやってきて教室を飛び出す。追いかける月乃。
桜は「ごめん、黒板に書いたの、私なんだ」
どうすることも出来ずただただ涙するだけの月乃。


「彼女が好きなのは」が公開されたとき、パンフレットで「過去のLGBT関連映画」として紹介されていたのがこれ。
全く聞いたことがない映画だったので「?」となったのだが、レンタルDVDが出ていたので借りてみた。
39分の中編。短い映画なので劇場公開されたのかな?と思ったら特典映像の「公開100日記念舞台挨拶」を見たら2018年7月K’sシネマで上映が始まったそうだ。それから渋谷アップリンク、吉祥寺アップリンクに広がっていったそうで。

正直、見に行かなかったことを恥じる。
冒頭、保健の先生が「LGBTって知ってますか?好きになった人がたまたま同性だったと言うだけです。人を好きになるのに理由なんかいりません」
映画の舞台は東京ではなく、どこかの田舎町だ。出てくるバスが「水戸駅行き」だから撮影は茨城県で行われたのだろうが、別に茨城の話ではない。日本のどこかであるかもしれない話なのだ。

LGBTの授業が行われたことで生徒が逆に騒ぎ出す、という展開がうまい。そしてやっぱり「誰かいるんじゃね?やばくない?」とLGBTを嫌う発言が出てくる。
う〜んやっぱりそうか。今の時代でもまだまだ同性愛は嫌われるか。
確かに「妙に騒がれる」ことがイヤでカミングアウトしないもんなあ。
「言われた奴のこと考えろ」と言う正義感の奴も登場する。

担任の先生が朝礼で「このクラスにそういう人がいるとかいないとかの話ではありません」と話すのだが、その前にこの担任はうそをつくと鼻を触る癖がある、というのを生徒に知られていてそれを知らずにさわってしまう。それで一気に生徒が騒ぎ出す、というのが面白い。

そして主人公の友人が一緒に帰ろうと言ってくる。彼女がLGBTだとすでに主人公は知っている。自転車で背中に頬を寄せられて、リアクションに困っている。
このあたりの微妙な感じがうまいなあ、演じてる今田美桜もいい。

最後は桜はその教室にいられなくなり(まあ帰ってくるんだろうけど)、主人公もどうすることもなくて泣いてしまう。
映画はここで終わる。

結論を出さずに困ってしまって終わるのがいい。
作者だって答えは持ち合わせてないのだろう。
説教すぎず、ドラマにすぎず、リアルに「ありがち」な話でよかった。
面白かった。








階段の先には踊り場がある


日時 2022年3月20日20:00〜
場所 池袋シネマロサ2(地下)
監督 木村聡志


芸術大学の舞踏科に通うゆっこ(植田雅)は演劇科に通う先輩(平井亜門)と同棲をしていたが、別れている。ゆっこの友人多部ちゃん(手島実優)は先輩に気があるらしい。
多部ちゃんのバイト先でバイトを始める先輩。「ゆっこと別れているのに一緒に暮らす神経がわからない」というが、先輩は「まあお金のこととか、応援しているパートナーというか」となかなか煮え切らない。
大学で臨時職員としいて働く滝。彼はかつてはこの大学の舞踏科にいたが、今は単なる職員。大学時代の同級生港(朝木ちひろ)と今は同棲している。彼女には子供ができたという。でもいきなりの話で動揺し、あいまいな返事をしたら実家に帰ってしまった。


「アルプススタンドのはしの方」以来注目している平井亜門さんの新作。「ほとぼりメルトサウンズ」という映画が先日ケイズでムージックラボ枠(だったかな)で公開されていたが、見逃した。正式公開の際には見たいと思っている。

その平井亜門さんだが、本人もパンフレットで「自分史上最高のせりふの多さ」とコメントしてたけど、しゃべりまくる。
いや別に平井さんだけじゃないけどさ。

演劇によくある「言葉尻をとらえてそのことで延々と話を引っ張る会話劇」的な感じがあったので、最初はちょっと引いたが、それも平井さんの魅力で徐々に気にならなくなった。

後半、滝が大学の総務課の自席をたつと、カットも変わらずにそのまま別の男が座って、隣の同僚と会話を始める。そうするとカウンターに学生の滝がやってくる。その瞬間完全に「?」となった。

そうか、先輩と多部ちゃんたちの話と滝の話は時制が違うんだ!滝が現在で先輩たちは数年前なんだ!と引っかけられた。
滝もアメリカ留学が決まっていたが、けがで行けなくなってゆっこに順番が回ってきたのだった。

そしてもうゆっこには心がない(と思われる)けどそれをはっきり言わない卑怯な(と言い切っていいのか)先輩はゆっこが「留学したくない。日本にいたい。アメリカには先輩はいない」というのを何とか行かせようと説得するあたりも面白い。

またベランダでたばこを吸う先輩に「私も」という多部ちゃん。「どんなの時に吸うの?」と聞かれて「好きな人が吸ってるとき」と聞いてキスをする先輩。いや〜女たらしだなあ。
行定勲の「劇場」の山崎賢人の演出家も女に甘えまくる男だったけど、これに通じるのかな。まあ演劇やってる奴がすべてこうではないだろうけど。

とにかく演劇的な会話が初めはちょっとなじめなかったが、後半になると軽妙な会話にはなれてきた。
平井亜門さんのキスシーンも2回あったし、彼もせりふが多いのでそこは満足した。
でもアメリカに行くゆっこを見送るとき、ゆっこが「キスしていい?」と訊き、「ゆっこがいいなら」とあくまで相手の意志でキスをした、とする先輩は相変わらす小ずるい。
このキスした後でゆっこがびんたをするのかと思ったが(というか期待した)、それはなかった。

数年後、先輩はどうなったかを一瞬でもいいから描いてほしかったが、それは俺が平井さんのファンだからだろうか。
面白かった。

本日は監督、平井さん、植田雅さん、朝木ちひろさんの舞台挨拶付き。
平井さん、いまやってる仕事の関係だそうだが金髪になっていて驚いた。









親密な他人


日時 2022年3月20日16:15〜
場所 ユーロスペース1
監督 中村真夕


シングルマザーの石川恵(黒沢あすか)はベビー用品のブティックで働きながら、去年失踪した息子、心平(上村侑)の帰りを待ちわびていた。ネットの掲示板で報酬付きで情報も求めている。
オレオレ詐欺の受け子で暮らしている雄二(神尾楓殊)。ネットの掲示板を見て恵に会う。「去年、ネカフェで会ったよ」と教え、とりあえず5000円恵は渡した。また雄二から連絡があった。雄二は「あなたの息子にもらったのが出てきた」とゲーム機を渡す。
雄二がネカフェに泊まってると聞き、「しばらく家にいれば?」と恵は自分のマンションに住まわせる。
「あちこちさわらないでね」と言って恵は仕事に出かける。
恵は店に来た母親が目を離している赤ん坊にあやそうとするが、かえって怪しまれた。また他人を寄せ付けないところがあり、職場の同僚から変人扱いされていた。
雄二にはオレオレ詐欺のリーダー大沢から「いつまでやってるんだ!早く心平を見つけろ!」とメッセージが来ていた。
恵と雄二、お互いが何かを隠している。


全く知らなかった映画だったが、「チェチェへようこそ」を見に行ったとき、ドカンとユーロの1回入り口に看板があり、最近注目の若手、神尾楓珠がエロティックな表情をしていて興味を持った。ポスターイメージで観る気になったから、やはりポスターは大事です。

舞台はコロナ禍で、登場人物は現実と同じく、必要な場面ではマスクをしている。しかし映画の80%が恵のマンションでの恵と雄二のシーンなので、二人はマスクをはずしている。

初めは恵は「息子に失踪された悲しい母親」として描かれ、「雄二が殺したのか?」と思い、心平の服を着て「サイズが同じ」とまで言われるので、「ひょっとして心平が整形して雄二になった?いやいやそれは無理あるよな」と思いながらみていく。

しかし長年暮らしているはずなのに管理人に「息子です」と雄二を紹介したり、なんか変。
「髭のそり残しを剃ってあげる」といってカミソリを持ち出すあたりからも恵の方がやばくなってきて、雄二に「逃げろ!」と声をかけたくなる。

そしてついに自分の本当の子供は赤ん坊の時に死んだとあかす。
オレオレ詐欺の受け子としてやってきた心平も殺した(らしい)のだ。そしてラストでは雄二もことも情報掲示板にアップされている。

正直、サスペンスとしては非常におもしろく、どきどきさせられた。
音の使い方が効果的で、洗濯機の音や水道の音などの生活音が大きくなってなんだかドキドキさせられる効果を上げていたと思う。

でも中村真夕監督って「愛国者に気をつけろ!鈴木邦男」を撮った方で、何か社会的テーマがその奥にあるのかと思ったらそれは私にはわからなかった。
いや別にサスペンスとして面白かったのでそれで十分ですが、そういう社会派的な映画を作られた方なので何かあると思ってしまった。
それとも私が読みとれなかっただけなのかな。

今回の上映はバリアフリーのために日本語字幕付き。
日本語字幕がつくと字幕を読む方が早いので、せりふを言う前に内容がわかってしまう。善し悪しだな。

上映後には主演の黒沢さんと中村監督のトークイベント。
衣装についてのこだわりをお話しされていて、私は全く気にしなかった点だな、と感心した。







つかずはなれず


日時 2022年3月19日19:30〜
場所 早稲田松竹
監督 河井優花
製作 令和3年(2021年)


夜、テレビを見ながら「今度これ作ってあげるよ」とベッドに話しかけるシオリ。しかしそこには誰もいない。
半年前に恋人カズキが亡くなり、彼女はまだ忘れられないでいた。カズキの両親の元に行くシオリ。カズキに貸してあったままのハンカチを返してもらった。シオリの部屋にはカズキがよくきていた青いジャンパーがおいたままだ。
シオリの地元の幼なじみがやってきた。台所にあったカズキの歯ブラシやヘアトニックなどを捨てようとする。口論になる。
シオリもジャンパーをカズキの母親に返す。
彼女も一歩踏み出したようだ。


「遠い場所から」に続いてのもう1本。
そういう風に番組を組んだのだろうが(この番組はBプログラム)「死んだ人との関わり方」をモチーフにしている。これに「れいこいるか」が加わるから、さらに「死者との関わり」だ。

シオリのカズキに対する思いはやや行き過ぎとも思え、ホラーチック。
相手が死んだにも関わらず、病的なまでにシオリはカズキを思っている。
大学生が作った映画というのが意外。
若いのに生と死とかを考えるんだなあ。逆に若いからこそ気になるのか。

2本とも女性監督で、女性監督というのも珍しくない時代になっていくんだなあと映画には関係ないことを実感した。







遠い場所から


日時 2022年3月19日19:00〜
場所 早稲田松竹
監督 石名遙
製作 令和3年(2021年)


大学生の伊織の元に父が亡くなったという連絡が入る。父は10年前に家族を捨て家出していた。沖縄で孤独死をして死後しばらくしてから発見されたそうだ。
母は「私がお父さんを孤独にさせたのかしら」と自責に駆られ、妹は自分たちを捨てた父を憎む。
伊織は父が使っていた携帯ラジオを引き出しから引っ張り出す。一度は捨てようとしたが妹がゴミから出してきた。
今は故障していたラジオだが、修理に出した。
父の遺品となったラジオを通じて、ラジオを通じて父の記憶がある伊織、ない妹などの温度差はあったものの、やがては父を許すようになる。


早稲田大学では映像制作実習というコースがあり、1年間映像制作の実習を行い、最後に短編作品を作るそうだ。この作品はその作品の1本。
去年完成したが、早稲田松竹で再上映。実習作品のほかに「参考上映」として映画が1本上映されるが、その参考上映に「れいこいるか」が選ばれたので、上映会に行ってきた。25分の短編。

早稲田の学生が作った映画なのだが、「家出した父の死」というテーマで思いっきり暗い。
上映後、舞台挨拶があったが、こちらの思いこみで申し訳なかったが、監督は女性だった。
いけませんね、「映画監督=男性」という刷り込みができている。

映画とは直接関係ないけど、母親は再婚している訳でもなく、フルタイムで働いてもいるわけでもなく、一軒家に住んでいて妙に生活感がない。
単にロケ場所の都合なのかも知れないし、「母子家庭=低所得」というこちらの思いこみがあるのかも知れない。

私の知識の限界なのか、学生の限界なのか。
早稲田の学生は比較的高所得の家庭の子という思いこみなのか、私のひがみなのか。
映画とは直接関係ないが、そんなことが気になった。





性の完全犯罪


日時 2022年3月18日21:00〜
場所 ラピュタ阿佐ヶ谷
監督 久我剛
製作 昭和48年(1973年)


女子高生(谷ナオミ)が家に帰ると男に犯される。「お父さんやめて!」彼女、綾子を犯したのは母が再婚した義父である会川(山本昌平)だった。
会川は強欲な金貸しでしかも絶倫の男だった。綾子の母は毎夜毎夜、縛り上げられて会川の性奴隷となっていた。ある日、真鶴海岸に夫婦で遊びに行ったが、綾子の母は海で亡くなった。それからすぐに会川は妾だった益江と結婚した。
数年後。
会川には綾子の上に娘がいた。その娘ゆかりは菅沼という男と結婚していたがゆかりは家出したという。
綾子は会川に心を許し、会川も綾子を可愛がっていた。会川は「自分の周りにいる奴は財産目当ての奴ばかりだ。でも綾子は財産目当てじゃない。俺が死んだら全財産を綾子に渡したい」と言い、弁護士の宮脇に遺言を託した。
綾子の誕生日を祝おうと会川、綾子、益江、菅沼、宮脇、会川の仕事のパートナーの山路などが真鶴海岸に泊まった。菅沼は浮気相手のバーのママ蘭子とやってきた。
しかし益江は会川を心臓発作で海で殺そうとしていた。宮脇たちの前にゆかりがやってきた。
さらに会川に融資を打ち切られた杉田もナイフを持って会川に近づく。


六邦映画第2弾。
カラーである。プリントでは退色してるけど、オールカラーである。やっとピンク映画もオールカラーになってきた。
「処女を奪われた女性が復讐する犯罪映画」みたいな紹介されたけど、そうでもないよなあ。

登場人物が多くてややこしい。冒頭でいきなり女子高生が犯される映像がでて(つかみはいい)、母が海で死んだ話になり(これが事故なのか自殺なのか他殺なのか説明なし。一応事故ということで話が進む)、そして大人になった綾子が表参道で山路という男に声をかけられる。父の会川の知人だ。食事でもしようと車に乗ったが、代々木体育館の前で男女を見かける。
その男の方が車に乗った綾子を認めて連れの女性蘭子に「あれは妹だ」と言い出す。「えっ兄がいたの?」とこっちが混乱する。そこへ兄の知り合いが合流する。これが蘭子の店のホステス麻里。そこで綾子も車を降り、兄たちと合流しようとするがタクシーに乗って行ってしまい、そこで残った麻里と立ち話、という短時間でたくさん人物がでて人物紹介が悪いなあ。
まあこの辺の雑さがピンク映画ならではですが。

んで真鶴に綾子の誕生日パーティに行ってそこで会川は男から金を返済してもらっている。いきなり登場で面食らうなあ。このおっさん。
そして真鶴の海岸で菅沼と蘭子が崖の下にいるところを上から岩を投げて殺そうとする女は妻のゆかり。
ラピュタのロビーに貼ってあったプレスシートを見ると、菅沼と蘭子は殺し屋ジョーを使ってゆかりを殺そうとしたが、ゆかりが殺し屋を金で誘惑し、殺させなかったとか書いてある。そんなのなかったよ。こっちが寝落ちしたのかな。
さらに菅沼と蘭子は崖で石を落とされて死んだが、プレスを読むとここで崖から落ちて死んだそうだ。あれ、寝落ちしたのかな。

そして母が死んだ真鶴の海岸で益江は会川を殺そうとしたが、そこで融資を断られた杉田がナイフを持ってやってくる。
結局杉田が殺したんだが、益江も心臓発作を起こす薬を飲ませていたことが発覚し、逮捕される。益江と関係を持っていた山路も事情聴取される。

元々映画の大枠が母が死んだ話が終わったあたりで、刑事から「お父さんについてお話ください」と事情を聞かれる綾子という形式になっている。

でもどう考えても登場人物は自滅していき、綾子が罠を仕掛けた訳ではない。
登場人物が多くて(会川がお手伝いの若い女性を犯す話も出てくる)ぜんぜん整理できていないよ。それに「完全犯罪」なんか仕掛けていない。

昔のピンクのテキトーさの見本みたいな映画だけど、もう1回見てもいいかな。たぶん見ないけど。






法医学教室の午後


日時 2022年3月13日14:00〜
場所 シネマ・ノヴェチェント
監督 大森一樹
製作 1985年(昭和60年)


7年前、ある建設会社の社長が不倫相手の秘書の部屋で腹上死した。神奈川医大の法医学教授・新島(菅原文太)は警察にはありのままに報告したが、建設会社の幹部たちは「社長は昼食中に腹痛を起こし、近くの秘書の家で救急車を待つ間に死んだ」ということにしてほしいと言ってきた。特に事件性はないので、幹部たちが遺族に説明する分には警察も口出ししないこととなった。
春。法医学教室の二人の新しい教室員が入った。一人は皆木令子(紺野美沙子)、もう一人は小林(大江千里)。皆木はなんと7年前の建設会社の社長の娘だった。小林は実家の宮崎には帰りたくなく、「教授にでもなる!」と実家に宣言し、一番教室員の少ない法医学を選んだのだった。
法医学は変死体の検分が主な仕事だ。警察から殺人が疑われる死体が持ち込まれる。助教授の江間(佐藤オリエ)、講師の羽田(寺尾聡)、浦上(小倉一郎)たちと数々の死体、そして遺族と向き合っていく。


シネマノヴェチェントで不定期に行われる大森一樹の映画塾。今回は1985年に日テレの水曜ロードショー枠で放送されたTVムービー。
TVムービーだから95分、16mm、画面サイズは4:3だ。
シネマハウトの製作だが、現在大森監督が納品に使用したプリントを所有しており、今回はそれを使っての上映。
関係者以外がスクリーンでこの作品を観るのはこれが初めてとなる。
(テレビ作品なので一般劇場では上映されていない)

本放送時にも観ている。当時は寺尾聡の大ファンだったから、それが観た一番の動機だろう。
大江千里が下手なのだが、それでも新人らしい初々しさがあり役柄とあいまって好演していた。紺野美沙子も美しい。そして何より菅原文太だ。
大森監督の話では京都府立医大の経験で法医学の教授が警察との関係からか一番やくざっぽかったそうだ。
それで文太さんにオファーしたという。
当時、実録路線も終わって「ビルマの竪琴」「鹿鳴館」に出演し、今までにやったことのない役だったので喜んで出てくれたらしい。

大江千里は歌手としてはまだブレイクする前で、役者の経験は初めて。でも吉川晃司の経験からいけると判断したそうだ。

そういったキャストの面白さに加え、孤独死した老人、青酸中毒と思われたが心臓発作だった男の遺族の労災認定の問題、子宮外妊娠で亡くなった女性の父(上田耕一)わがままぶり。
死者を利用してなんとか金にならないかとする遺族たちばかりだ。

ラストはもともと血管に異常があった小学生がいじめのために精神的に負担がかかり、それがきっかけで脳内出血を起こし死に至るという事件があった。
「いじめとは死は直接関係ない」という校長(草薙幸二郎)を許せない小林は校長の自宅前でハンガーストライキ。
新聞沙汰にもなったが記事を見たPTAの方が動いてくれて結局おとがめなしとなる。

話はこんな感じ。
あと寺尾の羽田先生が患者に疲れ外科を去ったが、しかしもう一度外科に復帰する。
小倉一郎の妻が室井滋だったのは驚いた。

本放送の時も教室メンバーで中華街で忘年会のシーンで、円卓の上にカメラを載せ、回しっぱなしにしいて役者にせりふの時に自分の前カメラを持ってきてもらって撮影する手法が楽しかった。
大森監督にこのカットのことを聞いたら「あのカットはうまくいった」とご本人も満足そうだった。

とにかく見所の多い作品なので、埋もらせるにはもったいない。
この続編の「法医学教室の長い一日」とともにDVD化希望。








スケコマシの掟 ”SEX”放浪記


日時 2022年3月12日21:00〜
場所 ラピュタ阿佐ヶ谷
監督 小川卓寛(小川欣也)
製作 昭和48年(1973年)


杉山(山本昌平)は女連れで奥多摩でドライブを楽しむ。車が故障したと見せていったん止め、河原で女を強姦した。しかし抵抗する中、首を絞めたために女は死んでしまった。そんなつもりはなかったのだが仕方なく土に埋める。
杉山はホモではなかったが貢いでくれるオカマに世話になっていた。
杉山は女嫌いで、その原因は田舎にいた頃に見合いをしたクミ(谷ナオミ)に結婚を申し込んだが「中学しか出ていないくせに」と断られたことがきっかけだった。
繁華街で女をナンパし酒を飲ませホテルに連れ込む。処女の女は結婚の約束をせがんだ。小学校の女教師ともうまくやっていた。
そんな時、処女の女が妊娠したと言ってきた。堕ろすように説得する杉山。そのために金を1万円必要だ。同居のオカマもないという。小学校教師も金がなく、財布から黙って1000円くすねる。
そんなとき、道でかつて自分を振ったクミに出くわす。クミが今は大学教授と結婚してると知り、その晩彼女の家に強盗に押し入った。そしてクミを犯す。
しかしクミは年寄りでセックスに興味のない夫には飽き飽きしていて、杉山との再婚を考える。
そんなとき、奥多摩の死体が発見された。


今回の特集は福島県の本宮映画劇場の館主・田村修司がピンク映画の会社六邦映画社長・鈴木邦夫の申し出で買い取ったもの。(チラシより)
オールドなピンク映画が6本これからレイトで上映される。完走したい。

途中、愛国党のビラで「田中内閣打倒!」と書いてあるのでびっくりしたが、あとで調べたら本作は73年。もう日活がロマンポルノを開始している。その時代でもまだモノクロ・パートカラーのピンク映画を作っていたのかと驚く。これではピンク映画も興行的に厳しいだろう。

映画の方はなんだか編集がおかしい。
最初の方で「じゃ7時に会おう」と杉山が言ってその後に例の処女をナンパしている。なんだかおかしい。
途中で杉山がやたらと「1万円ほしい」と言い出す。なんに使うのか全く説明がないなと思っていたら例の処女が「あたし妊娠したの」と言い出す。
ああ、そういうことだったのかと解る次第。これラピュタの巻の違いではなく、編集段階からおかしかったんだと思う。
ピンク映画のテキトーさが伺える。

最初に女を殺してしまった時に同居のオカマからもらったライターを現場に落としてしまう。そのライターから足が着いて警察がやってくる。
警察側を全く描かないのでものすごく唐突。
出かけている杉山を外で刑事と待つオカマだけど、杉山が帰ってきたら「あの人」とあっさり教え、でも捕まったら「待ってえ」と追いかける。
なんか哀れ。

そうそう書き忘れたけど、杉山は前半でも女からナンパされてホテルへ。
でもそのホテルで「足を舐めて」と言われ一瞬戸惑う杉山。女に復讐している杉山も足舐めをさせられるのもなんだか視点が統一していない。
まあそういう「粗さ」を楽しむのもこの時代のピンク映画の楽しみ方。







恐怖の獣人


日時 2022年3月11日
場所 DVD
監督 ロジャー・コーマン
製作 1958年(昭和33年)


人間たちは獣をとり、その肉で暮らしていた。その集落は岩ばかりで獲物も少ない。集落の近くには川があり、その向こうには森があった。
森へ行けば獲物が取れそうだが、ここには「川を越えては行けない」という掟があった。川の向こうには触れただけで死ぬという神がいるというのだ。
若者(ロバート・ボーン)は仲間3人と共に川を渡った。しかし一人が殺され、他の2人はおそれをなして帰った。若者の父はそれを聞いて若者を追いかけ連れ戻された。
しかし若者はもう一度その禁断の地に向かう。


ロジャー・コーマンの映画でロバート・ボーン初主演作。ロバート・ボーン(ロバート・ボーンは1932年生まれ。この時26歳)主演の原始人映画があると聞いていたが、DVDも安かったし前から気になっていたので購入。今日到着し早速鑑賞。(65分だし)

フォワード社のB級SFのDVDなのだが、「リーゼントのまま出演」「大どんでん返しがある」と記載。
ロバート・ボーンの髪型をリーゼントと言っていいのか疑問だが、ナポレオン・ソロの頃と変わらない。
他の出演者も髭を剃っているので、原始人ぽくない。別にロジャー・コーマンにリアルさを期待はしませんが。

川を越えるとそこは恐竜の世界。恐竜同士の争いとかある。でもトカゲ同士の戦いを撮ったものだし、このシーンも何かこの手の映画で見た記憶がある。たぶん流用でしょう。ボーンたちもカットバックで見ているだけで、合成とかないし。

集落には他にも掟というか習慣があって「小さな火を守り続ける」「石の板を回し続ける」というものがある。若者の父親は洞窟に壁画を描く役割をしていて、その仕事が出来る人は集落のリーダーになれる。
なにを描いているかは特に出てこない。

結局そのオチなんだけど、だいたい想像はついたが大体当たっていた。
予想したのは「触れる死ぬ」と言われているものは核物質を扱う施設ではないか?ということ。ラストに星条旗のマークのついた核爆弾とかが出てくるのではないかと思っていた。つまり過去の話ではなく地球の未来なのだ。

実際は、途中途中で熊ともつかない奇妙な大きめな動物が出てきたが、この動物を倒すとそれは被り物で、中から老人が姿を現す。そして手に持っていた本を見ると写真があり、人間が握手していたり、国連ビルが写っていたりする。

予想は当たってたけど、本かあ。たしかに「猿の惑星」のようなモニュメントは考えてみれば作るの大変だもんなあ。本だったら簡単である。
そして冒頭に流れたナレーションの声で、「私は世界戦争が会ったとき宇宙にいた。放射能防護服があったので生き延びてこれた。動物は退化したりした」などと説明が付くが、動物が退化して恐竜化するには何百年もかかる気がするので、いくら防護服があっても生き延びれるかなあ?と思う。

まあ細かいことは気にしない。
「ミステリー・ゾーン」にもありそうな話だった。
この頃は冷戦下で核戦争は現実的だったな。







チェチェンへようこそ―ゲイの粛清―


日時 2022年3月5日11:50〜
場所 渋谷ユーロスペース1
監督 デヴィッド・フランス


2017年頃からロシアに政治的に近しいチェチェンではゲイに対して逮捕、暴行が加えられているという噂があった。
モスクワのLGBTを救済する人権団体が保護し、カナダなどへ出国させた。
チェチェンの大統領ラムソン・カディロフは外国の記者のインタビューで「LGBTに弾圧を加えているという話ですが」と問われても「何かと思ったらそんな話か。そもそも我が国にLGBTはいない。いても許さない」という。
チェチェンではLGBTは家族の恥辱とされ、下手をしたら家族に殺されてしまうのだ。

予告編を観ただけで、というか映画紹介を観ただけで観たくなくなるような映画だが、これも観なければと義務感にかられてやってきた。
21世紀の今になってもゲイの粛清である。

あるレズビアンの女性は父親が政府の高官をしており、同性愛がばれたら絶対に父に殺される。それを知った叔父が「黙っててやるからやらせろ」なんて言ってきているという。地獄である。
彼女はこの救援団体によってなんとかチェチェンを出国してヨーロッパのどこかに匿われた。「難民申請をしてビザが降りるまでしばらく待っていてくれ」と言われたのだがいつまで経ってもビザは降りない。
3ヶ月経って「せめてもう少し広い部屋を。1日中部屋にいると気が狂いそうになる」と言ってくる。PCによる電話で救援団体の男と話すのだが、「気持ちは分かるが一歩も出ないでくれ。ゴミを捨てに行っただけで拉致されたものもいる」となだめる。

以前だったら「部屋にいるぐらい大丈夫だろ」って思ったけど2年前の4月の緊急事態宣言時に2、3日家に籠もっていたらせめて近所の散歩ぐらいしたくなった。「アンネの日記」のアンネ・フランクなど信じられないよ。
この女性、結局半年間待ったが受け入れ先が見つからず、そうこうしているうちに何者かに拉致された。

またチェチェンで人気のシンガーも失踪する。彼も認めてはいなかったがゲイだと言われていた。
チェチェンに住んでいたわけではなく訪れただけのロシア人(たぶん。このあたりの事情がよく飲み込めなかったが)一時期拘束されたが、釈放された。しかし拷問の事実が分かるとまずいと拘束の恐れがある。彼の家族、恋人(男)にも危害が加わる恐れがあるので、彼、母親、妹、妹の息子(この件で離婚した)、恋人で身を隠す。
彼は勇気を持ってロシア検察に拷問の事実を訴えるが、結局は却下。

そもそもロシアのプーチンは親ロシア政権の現大統領を支持してるし、ロシアの後ろ盾があって現大統領も強気なのだ。
とにかく無力感しか残らないような映画なのだ。
ラストの字幕で「チェチェンからの亡命はカナダは受け入れた。しかしトランプ政権下のアメリカでは受け入れなかった」と出る。
うん、トランプらしい。

先のゲイカップルが「なんでこんなことになったんだ!」(という趣旨の)喧嘩をする。喧嘩できるような恋人がいるのはすばらしい。
「海の近くに住みたいね」などと少女マンガでも言わないような会話をする。
そんなカップルのなにがいけないのだ。

そもそもなぜ同性愛とかゲイとかLGBTは非難されなければならないのか。
あんたそれで困ったことがあったのかい!といいたい。

ゲイ反対派は「同性愛者は子供を作らないから」というけど、じゃ子供が出来ない異性愛者の夫婦はOKなのか。いや私ももちろんOKだと思うが、ではゲイだっていいではないか。

だから子供の有無がゲイへの憎しみの原因ではないのだ。それは後からのこじつけである。
ではなんだろう?
それは私は「恐怖感」だと思っている。

異性愛者は同性とキスしたりましてやセックスなど考えられない。おそらく嫌悪感を持つだろう。その嫌悪感が恐怖感へ走らせているのはないか。
そういう理屈では解決できないような恐怖感、嫌悪感に支配されている。
これは法律などで縛ってなんとかなるものではない。

果たして世界中のゲイが自由に愛し合える日はいつ来るのか。

(映画の内容とは関係ないが、映画に出てくる人物で喫煙者が多い。またスマホをしながらの運転もしてる。う〜ん、習慣の違いを感じた)






警視庁物語 謎の赤電話


日時 2022年3月2日
場所 東映チャンネル
監督 島津昇一
製作 昭和37年(1962年)


銀座のバーの娘が誘拐され、身代金の受け取りには現れずに娘は翌日死体で発見された。警視庁の失態を非難するマスコミ。
しかし青山の小林家でまた誘拐事件が起こった。誘拐された児童の両親は警察に届けることに反対したが、姉が渋谷署に相談に行ったのだ。
捜査主任(神田隆)以下林(花沢徳衛)、渡辺(須藤健)、北川(南廣)らが小林夫妻を説得。警察も動くことになる。
銀座の事件の脅迫状がよく似ていることから鑑定に出したが、活字の特徴から同一犯と断定。また小林氏の会社を不正で首になった社員の山岡が銀座のバーにも出入りしていたこともわかる。まずはこの山岡を容疑者として逮捕できたが、完全にアリバイがあった。
渡辺刑事は小林家に残って犯人からの電話を待つ。また金子刑事(山本麟一)は逆探知のために電話局で待機。
電話はあった。一度目は途中で切られたが二度目は逆探知に成功。浜松町駅前の電話ボックスだ。パトカーが急行する。


「警視庁物語」シリーズ中「ネガ破損のため鑑賞不能」と言われていた「謎の赤電話」。
東映チャンネルでスキャンしHD化した。お見事である。
先にこの件を書いておくと、上映時間35分目ぐらいのところが確かに傷というか歪みというか映像に乱れがある。
しかし音声がはっきりしているのでそれほど気にならない。

映画は冒頭テレビのニュース番組で始まる。
シネスコの画面にテレビを写し(もちろんはめ込み合成だけど)、アナウンサーの解説が加わる。画面には「警視庁物語」の刑事たちが写っている。ここで1回目の誘拐事件の概要が紹介される。これは斬新なオープニング。ニュースが終わったところで次の誘拐事件の連絡が入る。
ここでタイトル「警視庁物語 謎の赤電話」!!
かっこいいねえ。
島津作品は「今までとちょっと変える」をよくやって面白い。

両親は警察の介入を拒み、被害者の姉が警察に届けたのだ。
まずは両親の説得から始まる。今の刑事ドラマでは考えられないが、当時は脅迫状の定番「警察には知らせるな!」が有効だったのだろう。

そして逆探知になるわけだが、これが電話局に行き金子刑事に説明する形で逆探知の方法を説明してくれる。あの昔の犯罪映画でよく見た交換機が「ガチャガチャガチャ」と動くことで何をしてるかの構造を説明してくれる。
「警視庁物語」の初期では指紋鑑定とか銃弾の照合などの方法をよく説明していたが、こんな交換機の仕組みを説明してくれた映画は初めて見た。

脅迫状が活字なのだが、「円」の字に欠けがあり、これも手がかり。刑事の一人高津(大木史朗)が所轄の刑事とともに当たり出す。
また小林家の全員の指紋を採り、脅迫状の指紋と調べるなど相変わらず写実的で興味深い。

小林家と銀座のバーに両方関係のある山岡が浮上する。ちょっと犯人に安易にたどり着いたなと思ったら案の定、この男はシロ。こうでなくちゃいけません。
なお小林の会社にこの山岡の履歴書を取りに行ったとき、林刑事がたまたま隣のビルの屋上で、コックとウエイトレスらしき二人がキスをしているのを目撃する。本筋とは全く関係がないが、こういった描写が「警視庁物語」らしい。

そして犯人から電話。浜松町の公衆電話とわかり急行するパトカー。ここで電話をかけた奴(岡部正純)を逮捕する!
えっ危険じゃないかなあ。犯人なら黙秘されたら子供の居場所が分からなくなるし、共犯が子供を殺すかもしれない。
この心配は小林家の奥さん(風見京子)からもいわれる。
矢面に立つ渡辺刑事が大変だ。

逮捕された男はスリ。北川刑事が三課の出身なので、前の事件では「警察がいる」とばれたのだ。
主犯の家はスリの男は知らないが、手がかりによって判明。
しかも主犯は印刷工場でバイトしていて、その聞き込みにいった長田刑事は活字の線を追っていた高津刑事と合流。
いよいよ迫ってきた。

殺人犯ならここで逮捕、なのだが今回はそうはいかない。
小林家にも電話があり、小林氏は「子供の命を優先させるために今回は警察は手を引いてほしい」という。
主任は了承。
しかし「犯人と会えるのに見逃せるか!」と無断で捜査を続行。

銀座の喫茶店を指定され、姉が一人で100万円をもって向かう。
喫茶店にかかってくる電話。もう一つの電話で犯人が話してるではないか!
別々に店を出る。西銀座駅(今の丸の内線の銀座駅だ。この頃は歌にも歌われた「西銀座駅」だったのだ)から丸の内線に乗って新宿へ。
ミラノ座がある歌舞伎町が懐かしい。

歌舞伎町脇の駐車場で金の受け渡しをしたところで逮捕!
子供は停めてあった車のトランクに隠されていて、無事救出。
今回は犯人逮捕だけでなく、「子供の救出」というのがあるから緊迫感がたまらない。
ハッピーエンドだとは予想がつくけど、それでも「警視庁物語」は「血液型の秘密」のような変化球もあるからハラハラした。

それにしても有名な「吉展ちゃん事件」はこの翌年。
「天国と地獄」もこの映画の翌年。
最近は誘拐事件って聞かなくなったけど、当時は多かったんだろうか。
犯人は浪人して私立城北大学に入ったが学費が払えず誘拐事件を計画したという動機。
遊ぶ金ほしさと違って切ない動機である。
しかしいつもの「警視庁物語」と同じく、犯人には特に感情移入する事もなく、犯人に説教をしたり、観客に何かを訴えることもなく、プロとして淡々と仕事をこなす刑事たち。

「警視庁物語」でも上位に入る名作だ。
復元され鑑賞可能になったのは本当にうれしい。