ムーンフォール | |||
新しき土<日英版> | ジュラシック・ワールド/新たなる支配者 | ほとぼりメルトサウンズ | キングダム2 遙かなる大地へ |
ベン | ウイラード | ベイビー・ブローカー | ビリーバーズ |
シネマスコーレを解剖する コロナなんかぶっ飛ばせ | キャメラを止めるな! | モエカレはオレンジ色 | 神は見返りを求める |
モガディッシュ 脱出までの14日間 | 刑事(でか) | 三十九夜 | ヘタな二人の恋の話 |
ムーンフォール日時 2022年7月31日 場所 amazon prime video 監督 ローランド・エメリッヒ 2011年、宇宙空間で作業中のブライアン(パトリック・ウィリントン)とジョー(ハル・ベリー)は謎の「何か」に襲われ、仲間の宇宙飛行士を死なせてしまった。ブライアンは「何か」が襲ってきたと主張したが取り上げられず、ジョーは「太陽フレアが原因ではないか?」と証言し、ブライアンはNASAを追われた。 10年後。自称天文学者のKC(ジョン・ブラッドリー)は月の軌道が変わったことを察知した。彼は「月は巨大な建造物である」という仮説をたてていたが、誰も信用してくれない。 今はNASAの副所長になっていたジョーにも月の軌道が変わったことが報告される。3週間後には月が地球に衝突するのだ。 KCは今は無職のブライアンと合流した。ジョーもNASAが隠していた10年前の事故の証拠映像を観て、ブライアンを信用した。NASAは宇宙船で月を探査するがそれも「何か」に攻撃された。どうやら電気で稼働するものに襲いかかるらしい。 ブライアンはかつて電気系統が故障したスペースシャトルで地球に帰還した経験の持ち主だ。ブライアンを説得し、月の「何か」を破壊すれば月は元の軌道に戻ると推測。が、月の接近に伴う気象変化のため、ロケットの一部が故障した。しかし月が接近しているので月の引力で月に近づけるとジョーは判断。ブライアン、KCとともに月に向かう。 ローランド・エメリッヒの新作。中国資本でキノフィルムが配給だったようだが、どういう経緯かアマゾンプライムビデオのみの公開。もったいない。こういう映画は映画館で観たい。 KCは「月はエイリアンによって作られた」と主張している男。見た目もデブでいかにもヒーローではない。 そして襲ってくる「何か」は有機体と電気で動く何か、に向かって襲ってくる。月の内部に入ったところ、なぜか助かった。 そこで明らかになる驚愕の事実。実はこの月は人類の祖先が数十億年前に作ったというのだ。そして襲ってきてるのは昔の人類が作ったAIが暴走を始めて人間を襲ったという。んで月を作って地球に逃げてきたという。 なんか無茶苦茶すぎてよくわからん。好きだけど。 このAIを破壊するためには電気操作ではなく、手動操作で爆弾を爆破させなければならない。当然普通なら主人公のブライアンが死ぬと思われたが、KCが勝手に向かっていく。 女性や黒人、東洋人キャラが活躍するのは最近の映画では珍しくなくなったが、デブキャラまでヒーロー化するとは! いやでも意外性があってよかったです。 またこういった月での動きとは平行して、ブライアンの不良息子とジョーの息子が合流し、ジョーの元夫の空軍高級将校のいるシェルターに逃げようとする。考えてみれば特権的なのだが、主人公そのものがシェルターに逃げようとするのは疑問だったので(「2012」がそのパターンなので途中から乗れなくなったのだよ)、今回は「犠牲的活躍をする主人公」はいて、平行して逃げる人たちの逃避行を描く2本立ての構成はよかった。 案外「2012」の件で反省したのかもしれない。 最後は壊滅寸前で地球は助かり、再建へ歩みだす、でエンド。 有名な建物の破壊という見せ場はなかったけど、それにしても「デブキャラの活躍」、「逃避行は主人公じゃない」という点が私は気に入った。 「ジュラシックワールド」がイマイチだった分、楽しめた。 よかった。 新しき土<日英版>日時 2022年7月30日17:15〜 場所 国立映画アーカイブ・2階大ホール 監督 アーノルド・ファンク 伊丹万作 製作 昭和12年(1937年) ストーリー省略。 以前、恵比寿の写真美術館で鑑賞しているが、あれはファンクが監督したドイツ版。今「原節子 十六歳」発売されているDVDもドイツ版のようだ。海外で発売された素材をDVD化したと思われる。 今回の上映は日英版。事前によく調べなかったので不安だったが、以前に見たバージョンとは違っていた。 特にラストで火山が爆発して家々が飲み込まれていく特撮描写があったのだが、(実は期待していたが)今回はなし。 またラストで主人公たちは満州に渡って農作業をしているカットで終わったが、この時以前は「満州」と字幕で表示されたが、今回はなし。 あれじゃ最後満州に行ったとわかりにくい。日本のどこか別の場所とも解釈できる。 家に帰って以前読んだ「『新しき土』の真実」を読んでみて、今日見たのだ国際版(伊丹万作監督版)と改めて認識した。 アーカイブの今回の東宝90周年特集のチラシでは「ファンクが監督するドイツ版と同時平行で、同じコンティニュイティ・俳優・スタッフを用いて伊丹万作が監督する日英版が撮影された。日英版は「西洋」対「日本」という対立構造を弱めるように構成されている」とある。 これでけでは情報不足なのだが、要は同じシーンをファンクが撮ってその後(前かも知れないけど)伊丹も撮るというめちゃくちゃ不効率なことをやっていたらしい。 シナリオは伊丹には改変は許されなかったらしく(基本的にドイツ主導だったようだから)、脚本を気に入ってない伊丹(というか日本人なら誰が読んでも「何じゃこれ?」なシナリオなのだが)がせめてもの抵抗をしたということか。 だからラストに火山が爆発して家々が崩壊するとかは伊丹的にはいやだったのだろう。また前半のネオンサインの洪水でも「阪急電車」はなく(東京が舞台だから)別のネオンになっている。 でも前半の輝雄の帰還を知らせる電報を受け取ったあとの地震のシーンはこの「日英版」の方が長く、壁まで崩れてきている。 あと相撲観戦のシーンはない。 このあたりの伊丹版、ファンク版の相違点は先の「『新しき土』の真実」に詳しい。この本、大変な力作なのだが、当時の新聞雑誌に掲載された記事を集めに集めての論評で、関係者インタビューなどないので、どうにも「表向きの話」しか集められず、隔靴掻痒の感は否めない。 古い話なので致し方ないけど。特に伊丹万作がこの映画に関してどう思ってるのかインタビューが欲しかったなあ。まあ伊丹が語ったかはわからんけど。 でも全体的に風景カット(富士山とか桜とか)が多い。 今回英語シーンには字幕がなかったが、これ公開当時も字幕がなかったのだろうか? 字幕付きプリントを作るのは大変だろうから、同期させて字幕も上映する方法をなんとか次回は取って欲しいものだ。 今回の同時上映は 「花より團子シリーズ 第3話 弱虫珍選組」(5分 DCP)と「かぐや姫(短縮版)」(33分 35mm)も同時上映。 「花より團子」は乱暴者が女性に乱暴を働いたが、主人公の少年剣士が倒す、という内容。基本設定がわからないので、話に入れない。 解説を読んだら市川崑も作画に参加していたという。 「かぐや姫」は前に地下小ホールで見ている。 もう二度と観れないかもとそのときは思ったが、案外すぐに再会できた。 まあ話題作だから上映する機会を増やしたのだろう。 ジュラシック・ワールド/新たなる支配者日時 2022年7月29日20:10〜 場所 新宿ピカデリー・シアター1 監督 コリン・トレボロウ 恐竜が世に放たれて数年、世界中で恐竜による被害が起こり人間はまだ共存できないでいた。 オーウェン(クリス・プラット)とクレア(ブライス・ダラス・ハワード)は人里離れた山でジュラシック・パークの創設者の娘の遺伝子から生まれたクローンのメイジーを守って暮らしていた。 一方、バイオテクノロジーの新興企業、バイオシンは「恐竜のDNAを研究し、人類を病気から解放する」としている。 その頃アメリカでは体長50cmほどの巨大イナゴが大量発生していた。 エリー(ローラ・ダーン)は原因はバイオシンにあるのではと疑い、グラント(サム・ニール)に協力を求めた。旧知のイアン・マルコム(ジェフ・ゴールドブラム)がバイオシンで働いており、それを訪ねる形でバイオシンの研究施設へ。 バイオシンはDNA研究のため、メイジーに興味を示しており、同じく単体で繁殖する恐竜にも興味を示してた。ついにその恐竜、ブルーの子供とメイジーを誘拐した。 オーウェンたちもそれを追って恐竜の闇取引が盛んなマルタ島へ向かう。 2018年に前作が公開されて早4年。ラストで恐竜が世に放たれていったいどうなるのかと気になっていた映画。 今回は新シリーズのレギュラー、オーウェンたちと旧シリーズのレギュラー、グラント博士たちの物語を平行して進める。 「奪われたものを追ってマルタ島へ」とか「巨大な陰謀をたくらむ悪の組織に潜入する」とか物語のフォーマットが007化している。 だからもう恐竜は主役ではない。少なくとも単なる「道具」でしかない。 マルタ島でのチェイスも007的だ。あんなバイクチェイスとか、どうみても007でしょう。(でなければ「ミッション・インポッシブル」) またグラント博士の方も「敵のアジトに進入し、証拠をつかむ」とかも007的ですね。 前作ぐらいから「恐竜に追いかけられる、人間が逃げる」の繰り返しで今回はどうするのかと思ったらそうきましたか。まあ物語の方向性はこうするしかなかったんでしょうねえ。 だから恐竜がわちゃわちゃと登場するけど(最近の研究を反映してか羽毛タイプもいたぞ)、どうにもスター、敵役級の恐竜がいないんだよな。 みんなわちゃわちゃと脇役がたくさん出てくるだけで。 新旧シリーズの主役たちをもう一度集めて登場させる構成はなかなか頑張ったと思う。 私が気づかなかったオマージュもたくさんあるようだが、最後にバイオシンの社長が逃げるときに何かさびた缶を持って行ったが、あれは第1作での最初に秘密を持ちだそうとしたプログラマーが仕込んでいた缶ではなかろうか? そして同じ恐竜(あの襟巻きトカゲみたいな奴)にも殺されるという展開。 このオマージュだけはシリーズに疎い私にもわかった。 結局「007」になってしまったし、恐竜メインでもないし、「ワールド」シリーズは話の展開に困って迷走してしまった感がある。 しかも最後には例の中国人の博士が「いい人」になってしまって「私が依巨大イナゴ問題を解決して見せましょう。今までの反省です」となっている。 この新シリーズ、最初から「三部作の展開はこう」とプロットだけでも書いてあったのだろうか。なんか「とりあえず三部作作ろう。話は観客の反応をみながら考えよう」と何の構想もなく始めてしまった感がある。 だから2、3作目は迷走したんじゃないかなあ?違ってたらすいません。 ほとぼりメルトサウンズ日時 2022年7月26日20:30〜 場所 新宿K's cinema 監督 東かほり 旅して暮らすコト(xiangyu〜シャンユー)だったが、ある冬に祖母が住んでいた家にやってきた。誰も住んでいないはずだったが、庭にはテントが張ってありホームレスの老人(鈴木慶一)が住んでいる。 その老人は服に書いてあった名前から竹と呼ぶことにした。竹はカセットテープで色んな町の音を録音して、その音を録音したレコーダーを再生しながら土に埋めていた。 祖母の家を再開発で取り壊そうとしている業者がやってきた。山田(平井亜門)は社長に「相手の懐に入れ」と命じられ、コトたちの家に住んでしまう。なんかなじんでいく山田。そんな山田にちゃんと仕事をさせようと躍起になる先輩の井上(宇乃うめの)だったが。 今お気に入りの若手俳優、平井亜門くん出演作品。 彼は先週7月17日に南青山の246と外苑西通りの交差点近くのライブハウスでトークイベントを開催。トークゲストは特撮ファンでも有名なタカハシヒョウリさん。(帰りにサインもらった) 本来は7月22日の出演者舞台挨拶に観に行く予定だったが満席で行けなかった。 本日はいまおかしんじ監督と、平井さんが9月公開の「神田川のふたり」で共演した上大迫祐希さんとのトークイベント付き。 で肝心の映画の方だが、町の何気ない生活音を録音する老人と周りの者たちが疑似家族のようになって「小さな、何気ない幸せ」を見つめ直すという話。 いやいい話だとは思うけど、今そういう映画を楽しめる心境ではないんだよなあ。 竹さんは昔妹が土砂崩れにあって行方不明になった話をする。 「これが最後の音だ」と言って出産の時の生まれたばかりの赤ん坊の鳴き声を録音。 そのカセットとレコーダーを土に埋め、「これが妹が聞くはずだった音のすべてだ」という。 ここはよかったなあ。 結局「家族の暖かさ」みたいな結論になる。 いいんだけどね、先日の「ベイビーブローカー」もそうだけど今こちらがそういうのを楽しめる心境ではないから。 で、トークイベント。 「神田川のふたり」に関係する二人がゲストだから自然と平井亜門くんの話になる。 平井くんは人当たりのいい好青年で、人の懐に入ってくる良さがあるという。「いわゆる人たらしって感じですね」と3人とも納得していた。 「神田川のふたり」楽しみです。前半の40分はワンカットらしい。 すごいな、「カメ止め」じゃん。 キングダム2 遙かなる大地へ日時 2022年7月24日11:55〜 場所 新宿ピカデリー・シアター1 監督 佐藤信介 秦の国は隣国の魏から攻め込まれた。まだ二つの丘が占領されただけだが、丘は城と同じで守るはたやすく、攻めるは難しい。 信(山崎賢人)も兵士として参加。兵隊は「伍」と呼ばれる5人一組となって戦うのが決まり。信は幼なじみの二人(岡山天音、三浦貴大)とともに澤圭(濱津隆之)の伍に入る。 圧倒的に強い魏だったが、信の超人的な活躍で戦果を収め、ついに丘を奪還する。 ストーリーを書いたけどこれしか書きようがないのだな。2時間15分ぐらいの映画だが、そのうち2時間は戦闘シーンという最初から最後まで戦いっぱなし。吉沢亮の王とか、橋本環奈のキャラクターなど出演はするが、現場には出ないので、3日で撮影は終わったろう。山崎賢人も今回はほとんどこの二人とは絡んでいない。 とにかく山崎賢人がすばらしい。嫌みのない素直なさわやかさでスタイルがいいので立ち姿は抜群。これが背が低かったり、手足が短かったりするとどうも立ち姿がいまいちになる。 しかし彼は完全に決まっている。 最近の20代の役者は総じてスタイルがいいですが。 これが岡田准一あたりだとどうもガチムチでガタイはいいがスタイルは山崎ほどかっこよくない。 大平原で無数の騎馬隊との対決とかCG合成もあるんだろうが、ある程度はエキストラを入れているだろう。それもそれなり動いているから、ゴジラに逃げまどう人々とは訳が違う。 クレジットを見ると中国ロケもしてるようだが、合戦のシーンなどどこまで合成なのだろう? 騎馬戦車隊などまるで「ベンハー」を思い出させるような迫力だ。 従って映画は終始戦のシーンで、今回はこの丘の戦で終わってしまう。 だから「天下統一」などまだまだまだまだ先である。 映画が終わった後、「キングダム3〜2023年公開」と特報が出たからもう製作にはかかってるのだろう。 佐藤信介と山崎賢人はNETFLIXの「今際の国のアリス」もあるのだが、こちらは2022年12月配信開始とか。 この二人、山崎賢人もまた恋愛映画とか小さな映画にも(これに比べればどんな映画も小さな映画になってしまうが)出てほしい。 吉沢亮は出演シーンは少ないが、王としての貫禄十分。「カメラを止めるな」の濱津さんの出演はなんだかうれしくなる。「カメ止め」の出演者をみるとうれしくなるのだ。 とにかく来年の続編が楽しみである。 やっぱり佐藤信介は侮れない。 ベン日時 2022年7月24日 場所 TSUTAYA宅配レンタルDVD 監督 フィル・カールソン 製作 1972年(昭和47年) ウイラードがネズミによって喰殺された事件の晩、警察は事件の概要がつかめないでいた。警官が物音を聞きつけて壁板を壊してみるとそこには無数のねずみが!警官は殺された。 警察のカートランド(ジョセフ・カンパネラ)はウイラードが書いていた日記から知能のあるネズミ・ベンをリーダーとしたねずみの大群をウイラードが育てていたと推測する。 心臓病で病弱のため、外で遊ぶことも出来ず友達のいない少年、ダニーが近所に住んでいた。ダニーは家にやってきたネズミが「これはラジオで言っていたベンに違いない」と思う。友達のいないダニーはベンと友情を交わす。 しかしネズミたちは食料を求めて真夜中のスーパーなどに進入し、警察が動き出す。 一方近所のいじめっ子にいじめられたダニー。ベンが仲間のネズミを使って噛みついてくれた。カートランドはベンを追求するが、ダニーはベンのことは口を割らなかった。 複数の箇所にネズミが出現するのは下水道を使ってネズミが移動しているに違いないと警察は何度も捜索するが発見されない。ダニーの家の近所を重点的に当たる。そしてついにネズミの巣を発見した。 警察は火炎攻撃と放水で駆逐作戦を計画する。 それを知ったダニーはベンに知らせにいく。ダニーを追いかけて姉のイブも下水道に入っていく。 「ウイラード」の直接の続編。映画の冒頭はウイラードが殺されるところから始まるから、完全なる続編だ。 「あのネズミたちはその後どうなった?」という作り。今度は病弱で友達のいないダニーとベンの交流を軸に話を進める。 ネズミたちがどんどん増えて閉店後のスーパーを襲うとかの行動を始める。ここはダニーの意志ではなく、彼らの生存本能だ。 ラストはダニーがベンの家に行くのは理解できるとしても姉は警察に一言言うべきではないか?警察の攻撃でダニーや姉が巻き添えをくいそうでハラハラするのだが、バカだと思う。 登場人物の浅はかな行動で危機に陥るのはなんか脚本上の動かし方として気になるんだよなあ。 ラストの火攻め、水攻め、散弾銃攻撃(これは効果が少なそうだし跳弾が危ない)はなかなかの迫力。ネズミの映像は合成も使ってあるだろうけど、結構死んだのではないかと思われる。今じゃ「動物虐待」とか言われちゃいますけどね。 まだ子供時代のマイケル・ジャクソンが歌う主題歌、劇中でダニーがベンに向かって歌うのだと思っていたら(この映画も「ウイラード」と同じく少しテレビの映画劇場で観たのだよ)、エンディング曲だった。完全に記憶違いだったなあ。 「動物が人間を襲う」というのは昔のSF映画などでもあったけど、「ジョーズ」の前哨戦としてこの映画があったのだな。私は「ジョーズ」以前の映画史については完全に後追いになるのだが、「ジョーズ」の製作の背景にはきっと「ウイラード」「ベン」の成功があったからではないか? 映画は最後、生き残ったベンがダニーの家に来たところで終わる。 まあ続編を作ろうと思えば作れる状態にしたのだろうが、これ以上やっても同じことの繰り返しにしかならないとやめたのかも知れない。 映画とは直接関係ないが、ネズミ退治が一段落してカートランドに部下がたばこを差しだし、自分もくわえる。カートランドが火をつけようとすると新聞記者がそれを遮って火をつけてやる。 「お疲れさん!」とお互いをねぎらう場面で、たばこ、ライターというアイテムが有効で興味深かった。 ウイラード日時 2022年7月23日 場所 TSUTAYA宅配レンタルDVD 監督 ダニエル・マン 製作 1971年(昭和46年) ウイラード(ブルース・デイヴィソン)は気弱な青年で今は母と大きな邸宅に母と二人暮らし。父はかつて工場を経営していたが、父の死後、アル(アーネスト・ボーグナイン)に会社は乗っ取られ、ウイラードはその会社の平社員だった。 母も母の友人も過干渉ですこしうっとうしい。ある日、庭にネズミがいるのを見つけ、餌をやるようになる。ウイラードは孤独を紛らすためにネズミに名前を付けてペットのようにする。やがてネズミの数は増えていく。 その中でも真っ白なネズミはソクラテス、手が白く体は黒いネズミはベンと名付ける。 アルの嫌がらせに腹を立てたウイラードはついにアルの家で開かれているパーティにネズミを数十匹連れて行き、パーティを台無しにする。 やがて母は亡くなった。税金の催促がきて、金に困ったウイラードはたまたま訪ねてきたアルの友人が8000ドル現金で引き出したのを知り、その晩、ネズミの大群をその家に侵入させ、騒ぎになった隙に金を盗んだ。 ウイラードは残業の時にベンとソクラテスを会社に連れて行って誰もいなくなってから彼らと仕事をしていた。しかしアルにソクラテスが見つかってしまい、殺された。 アルは金に困っているウイラードを解雇し、家を取り上げようとする。 ウイラードは会社で夜残業しているアルの元にいき、ネズミを使って殺した。 ずっと以前にテレビ放映された時(それこそ中学生ぐらいか)にラストの方だけちらっと観て記憶に残っていた映画。 最後にネズミを箱に入れて水に沈めて殺すシーンを覚えていた。 しかし観ていて思い出したのは大映で企画されて製作が中止された「大群獣ネズラ」。今回はネズミは巨大化していないのだが、それにしてもネズミが言うこと聞かずに困ったろうなあ、ということ。 スタッフの苦労が想像しただけでも伝わってくる。 (Wiki情報では後半にベンに毒入りの餌を食べさせようとして、カメラがパンした隙にベンを机から持ち去るスタッフの影が映っていた。食器棚のガラスにもスタッフが映っているように思われる) 母親のいつまでも子供扱いで、母の友人のおばちゃんたちもなんだか厚化粧でうっとうしい。そのあたりの言葉とは裏腹なウイラードの感情が伝わってくる。 そしてアーネスト・ボーグナインの社長。セクハラ、パワハラ親父で、日本だけでなく、アメリカにもいるんだなあ。きっと世界中にいるんだろうな、あのタイプは。 そんな主人公にも恋人が出来ますが、現実ではあんな美人の恋人は出来なさそうですが。 そういう家族の問題とか仕事がうまくいかなくて上司を殺すとかって安倍元総理を殺害した山上徹也を思い出した。やっぱり弱いからと言って追い込んではいけませんよ、「窮鼠、猫を噛む」のたとえもありますから。 主人公のブルース・デイヴィソン、ひ弱な青年だが、あういうタイプって最近のアメリカ映画では見ないなあ。私が知らないだけかも知れないですが。 「サイコ」のアンソニー・ホプキンスを連想させる名演だった。 ベイビー・ブローカー日時 2022年7月18日10:45〜 場所 TOHOシネマズ新宿・スクリーン6 監督 是枝裕和 教会がおこなっている赤ちゃんポストに今日も赤ちゃんを入れる女性がいた。この赤ちゃんポストがきっかけで新生児が人身売買されていると睨んでいる刑事のスジン(ペ・ドォウナ)とイ(イ・ジュヨン)。今回の女性ソヨンは赤ちゃんポストに入れず、雨の中、教会の入り口においた。見かねたスジンはポストに赤ちゃんを入れる。 しかしこの施設で働く、自身も児童養護施設出身のドンス(カン・ドンウォン)が連れ去った。彼はプサンでクリーニング店を営むサンヒョン(ソン・ガンホ)と組んで養子を望みながら様々な事情で公的制度を利用出来ない人々に子供を渡し、1000万ウォンからの金銭を得ていた。 ソヨンは翌日思い直し、赤ちゃんポストの教会に行く。警察に行かれてはまずいとドンスはソヨンをサンヒョンのところへ連れて行く。 結局サンヒョン、ドンスはソヨンと共に高く買ってくれる親を見つける旅にでる。それを尾行し、人身売買の現行犯として逮捕しようとするスジンたち。 今や日本の映画界の良心みたいな立場になってきた是枝監督の新作。今回はスタッフキャストは韓国人の韓国映画。 是枝監督が永遠の(という訳ではないかもしれないが)モチーフとしている「疑似家族」。 「万引き家族」「そして父になる」などもとにかく「家族をつなぐものは血か、一緒に過ごした時間か」ということである。 ソヨンは子供の父親と喧嘩になり、実は殺害して逃亡中。結局スジンたちに説得され、自首する。 赤ん坊はスジン刑事が引き取ってソヨンの出所を待つ。サンヒョンは借金取りに追われ、それを殺害してしまい逃亡中。 という終わり方。 みんないい人、疑似家族でも普通の家族より愛情が深くなることも出来るって結末で、映画とは全く関係ないが今個人的に「家族のあたたかさ」を実感できる状況にないので、「いい映画ですね」としかいいようがなく、映画の途中から「心ここにあらず」の心境だったので上記の感想しか出てこないです。 ソン・ガンホはやっぱりすごいな。カンヌ男優賞も納得だ。 ビリーバーズ日時 2022年7月17日13:50〜 場所 テアトル新宿 監督 城定秀夫 孤島で議長(宇野祥平)、副議長(北村優衣)、オペーレーター(磯村勇斗)と呼び合う男女3人が暮らしていた。彼らは朝、お互いが夕べ見た夢について語り、記録しあう。その島は無人島で3人しか住んでいない。しかし夜彼らの仲間が上陸し、倉庫に何かを置いていく。それを翌日3人はさらに別の倉庫へと運ぶのだった。 彼らは「ニコニコ人生センター」という宗教団体の会員で、「先生」と呼ばれる教祖の指示に従っていた。 ある日、その島に船が故障したと言って遊び人が数人上陸した。彼らは議長たちと喧嘩になり、副議長を強姦しようとした。議長は例の荷物にあった拳銃で彼らを射殺。死体処理は本部に頼んだ。 しかし副議長はその犯されそうになったときに性的に興奮してた。そのことがきっかけでオペレーターと体の関係を結ぶ。それを知った議長はなんとか理屈を付けて自分の陰茎を加えるように指示。 3人の関係は? 城定秀夫監督作品。 今、先週あった安倍元総理殺害事件で統一教会が話題。そんな中でのカルト宗教がモチーフなった映画の公開。 正直、登場人物はほとんど3人だけで、特に前半のシーンは同じようなシーンの繰り返しで退屈してくる。 後半になってオペレーターと副議長が関係を持つようになってからが盛り上がってくる。 まずは北村優衣の塗れたTシャツがセクシー。ノーブラなのでそこがいい。そして後半になって全裸になる。 いや最近映画観ても「きれいな裸だなあ」と思ったけど、久々にきれいな体を見た。(悪いけどピンク映画では女優は裸になってくれるけどきれいだなあ、と思うことは少ない。「ああ裸ね」で終わる) そしてその乳房に吸いつく磯村勇斗。これもまた絶妙なエロさである。 単に裸になればいいと言うものではなく、久々に「きれいだなあ」と思える性愛シーンを見た。 磯村勇斗は「PLAN75」とあわせて今年の主演男優賞は私の中では確定である。 教団は外の世界では内部告発や脱会者続出で崩壊しかけている。「理想の世界へ行こう」教団のメンバーが大量にやってくる。そこである薬を飲みかけるのだが、そこで副議長たちが反乱。警官隊(だと思う。やたら銃撃つけど)も突入して大混乱になる。 結局はオペーレーターは例のクルーザーの遊び人を殺害した容疑で逮捕される。 そこでどこか別の国に行った議長や、副議長と幸せにボートに乗る夢を見る。 駄作とは思わないが、どうも私のアンテナには引っかからない映画で、興行的には苦戦のようだし(休日の午後イチの回で3分の1も入っていなかった)、私には北村優衣の美しさと磯村勇斗の存在感しか記憶に残らない映画だった。 シネマスコーレを解剖する コロナなんかぶっ飛ばせ日時 2022年7月17日10:00〜 場所 K's cinema 監督 菅原竜太 製作 メ〜テレ 名古屋市駅西側にあるミニシアターシネマスコーレ。 2020年にコロナによる緊急事態宣言が発令され、休館を余儀なくされた。シネマスコーレはもともとは若松孝二が作った映画館。若松社長から支配人を任されていた木全純治の奮闘の記録。 有名なミニシアター名古屋のシネマスコーレ。映画は1983年に若松孝二が設立したそもそも、から話は始まる。 設立の事情は足立正生から。映画を作っても上映場所がなかった若松が知人から名古屋の空き物件で何かやらないか、と言われ始めたのがシネマスコーレ。(当初は風俗ビルで、1階は映画館、2階以上はピンサロとか今で言うヘルスなどがあった。実際に行ったことはないが、話は聞いたことがある)当初はピンク映画なども上映していたが、今はインディーズ映画の登竜門になっている。 数年前「シネマ狂想曲」というここの副支配人の坪井氏を紹介する映画があった。そのとき「支配人はどうしたの?」と思ったが、今回は支配人が主人公。 支配人も若松孝二のもとで働いてきただけあってなかなかの気骨のある人物である。 コロナによる休館、そして映画館は実は換気がいいを証明する実験、などを行っていく。 しかし宮崎の映画館が来場者に住所氏名を書かせることを条件にしたと聴き激怒。 「そんなことをしたら映画館だけではなく、それに続く居酒屋、カラオケボックスなども大変なことになる」という。 宮崎シネマのインタビューをあったが、「感染者が出たときのために一応聴いているだけ。書いてもらったメモは2週間で廃棄している」という。 う〜ん、これはスコーレも宮崎シネマもどっちも正しい気がするなあ。 そして2020年秋にはプロジェクターが故障で600万円をかけて入れ替えの必要が発生。新人監督の作った短編上映も行い、オンラインでトークイベントも実施する。(その中で知り合いの木村緩奈〜字違ったかな〜がいて驚いた) 映画を志すものたちのために映画塾も行いながら、まだまだ戦いは続く、という感じで映画は終わる。 シネマスコーレなんて名古屋の映画館だから、よほどのマニアでなければ東京の映画ファンが知らないだろう。私も前には行ったことがあるが、時間が合わずに中に入って映画を見たことはない。 とにかく、安全に映画を見れる時代がまた来ることを願うばかりである。 キャメラを止めるな!日時 2022年7月15日19:45〜 場所 EJアニメシアター新宿 監督 ミシェル・アザナヴィシウス 廃墟。ここではある撮影隊がゾンビ映画を撮影していた。ヒロインの演技が気に入らず、監督は30テイクも行うが納得しない。いったん休憩。しかしここは実はかつて日本軍が人体実験を行った場所だった。 そしてゾンビが蘇り、スタッフや出演者を次々と襲いだした! 2018年に大ヒットした「カメラを止めるな!」のフランス版リメイク。 少し期待したけどはずされたなあ。 話の大筋は同じだし、細かい部分は変わっている。プロデューサーを演じた竹原芳子が本作でもプロデューサー役。 「日本で大ヒットしたワンカット生放送のゾンビ映画の企画」を持ってきた、という設定。 面白くない要因がまずは出演者。 監督役のロマン・デュリスにまるで迫力がない。最初の若手女優を怒鳴りつけるときの気迫がないんだなあ。あの気迫がないとまずは映画の世界に入れない。 そしてヒロインの相手役の若手俳優。原作映画ではイケメンなのだが、フランスと日本のイケメンを違いもあるかもしれないが、まるで華がない。 ぜんぜん乗れない。 映画の中で出演者が「ナツミ」とか日本人名になっているので不思議に思っていたが、これは竹原のプロデューサーが「脚本をいじるな!」といわれたからというオチがつく。 また「日本人は真珠湾攻撃をするぐらいだから、時になにするかわからない」という台詞は、フランス人の日本人感が見えた気がした。 あとロケ地。 廃墟となったもとはホテルらしき建物だのだが、これが違和感あるのだなあ。避暑地のホテルだったのか、何か色合いがパステルカラーの色が残っている。 そしてオリジナルの廃墟は狭く、暗く閉息感が漂っていた。本作にはそれが感じられないのだなあ。なんか広々としてるんだよね。 新宿でいえばメインはTOHOなので(私は割引の聞くEJアニメシアターで見たけど)、一概に言えないけど初日金曜日の夜の回にも関わらずお客さんは6人ぐらい。 300席の劇場で6人は少ない。 (EJアニメシアターは旧角川シネマ新宿。数年前にアニメ中心館になった。経営は角川のままらしいけど。シネマート新宿に比べると改装もされ、いすもトイレもきれい。資本力の差か) ヒットもしてないし、話題にもなってないし、やはり「風が吹いた」とでもいうべきヒットだったのだなあ、「カメラを止めるな」は。 もちろん実際リメイク版よりオリジナルの方が出来は数段上なのだが。 モエカレはオレンジ色日時 2022年7月10日12:50〜 場所 新宿ピカデリー・スクリーン1 監督 村上正典 父親が亡くなったことで転校してきてまだ友達がいない萌衣(生見愛瑠)。彼女の高校に消防訓練でやってきた消防士の蛯原(岩本照)と知り合い、父親のような安心感に一目惚れ。 紗弓や三鷹(藤原大祐)という友人も出来た。萌衣たちは消防署見学に行き、友人たちとバーベキュー大会にも参加し、二人の距離は徐々に縮まっていく。 萌衣も蛯原の役に立ちたいと救命救急士の資格を取ろうと勉強を始める。 しかし蛯原はそれを喜ばなかった。蛯原には救命救急士だった彼女が事故で亡くなった過去があったのだ。 ジャニーズのSNOWMANのメンバー岩本照の主演作。SNOWMANはまるで興味がなく、大抵は見ている少女コミックものなのだが、スルーするつもりでいたが、「美 少年」の浮所飛高や藤原大祐が脇で出演しているので見ることにした。 まあ少女コミックもので、友人のいない女子高生が友達の協力で彼氏に告白するが、彼には秘密があった、という王道の展開。 よくまあ同じような話で色んな人が書くなあ。 とにかく岩本照に興味がないので話に入っていけない。 藤原大祐は友人役なので出演シーンは多いが、活躍は少ない。三鷹も何か見せ場を作ってやってよ。 浮所は後輩消防士役。訓練シーンは本人らしく、なかなか頑張っている。 でも役としては見せ場はない。去年「胸が鳴るのは君のせい」で主演だったが、格下げである。 しかし蛯原のシャワーシーンはあるが、背中を写すだけで上半身のカットはなし。そこは浮所も含めて上裸のシーンを作ってファンサービスしましょうよ。 ラストは萌衣が親子で行ったショッピングセンターが火事になるという展開。救命救急のまねごとをした萌衣は逃げ遅れてしまう!というクライマックス。まあ当然のことながら助かるんですけどね。 でも別に一緒にいく約束をしたわけでもないのに三鷹もいる。 というか三鷹、原作はもっと活躍があったかも知れないが、萌衣のことが好きならはっきりしない蛯原に対決にいけよ。 その役割をするのが、蛯原の同僚役で途中から登場した消防士。そう、なんかもやもやすると思ったら、男性のキャラが多すぎるんだ。 だからどの役も活躍不足で終わるという。 金曜日公開で本日は3日目。松竹配給なのでスクリーン1で上映だが、4割くらいの入りかな。岩本照の人気もまだまだだと思う。 神は見返りを求める日時 2022年7月9日15:45〜 場所 TOHOシネマズ日本橋・スクリーン2 監督 吉田恵輔 川合優里(岸井ゆきの)はユーチューバーだが登録者数も少なく再生回数も少なくコメントは批判ばかりといういわゆる底辺ユーチューバー。 ある日、友人に誘われていったイベント会社の社員たちとの合コンで田母神尚樹(ムロツヨシ)と知り合う。会社の同僚にも金を貸す「いい人」な田母神は無償で優里の動画撮影にも協力する。しかし再生回数は大して延びない。 ある日、合コンの時のイベント会社が開いた有名ユーチューバーのトークイベントで彼らを紹介してもらう優里。その事がきっかけで彼らの動画にゲスト出演し、優里の動画もバズりだした。それがきっかけで若いデザイナーとも知り合い、彼を中心に優里も動画を作り出す。 田母神の方は金を貸していた男が自殺し、その借金の保証人になっていたため、返済の必要が出てきた。その額400万円。 今や人気ユーチューバーの仲間入りを果たした優里に田母神は金を都合してくれないかと頼む。しかし優里は「感謝してます。でもお金はいらないっていったじゃないですか」と無視する。 田母神は優里の攻撃するユーチューバーとなっていく。 ユーチューバーというものを素材にした第1号の映画ではないか。 私自身、ユーチューブはほとんどみないし、個人のユーチューバーが自分で作成した動画をみることはほとんどない。(まれに特撮系の解説をしている動画は少しは観たことがある) しかし有名ユーチューバー(ひかきんとかはじめ社長とか)がテレビCMに出るようになって知りだした次第。未だにヒカキンの動画は観たことがない。 とにかく素人がデバイスやネットという発信媒体のハードルの低さによって誰でも公開できるようになった。 しかし紙とペンがあるからといって誰でも名作が書けるわけでもない。ヒカキンもハジメ社長もたまたまユーチューブという媒体で成功したけど、他の分野で成功した能力を持っていたのではないか。 だがユーチューバーは「俺にも私にも出来そう」と雨後の竹の子のごとく現れる。ミュージシャンだったら、楽器の演奏の時点で自分の実力がわかるからすぐには路上にはたたない。 しかしユーチューブなんて編集の技術さえ覚えればあとは何とかなる。 テレビ番組やら先輩ユーチューバーのおかげで見本だけは山ほどある。しかも「自分でも出来そう」と思わせてしまう。 そういったハードルの低さ、というものが動画制作のすそ野の広さなのだろう。しかし当然のことながら面白いもの、は簡単には出来ない。 この映画の話はミュージシャンでも同じ話は出来そうな気もするが、しかしやはりこのハードルの低さが大きく関係していると思う。 ハードルの低い分、バカも参加してくる。 喧嘩になった田母神と優里が公園であうシーンがあるが、二人とも自撮り棒にスマホを取り付け、向き合う。まるで刀のようでもある。 このカットはその二人の形がなんか奇妙な現代を象徴する感じがした。 そして田母神も折れて攻撃をやめる。しかし優里も有名ユーチューバーの「派手で面白ければいい」というだけの危険な撮影で大事故にあう。 彼女は全身やけどを負い、一生影響を残すことだろう。 そしてその有名ユーチューバーは他人事。彼らはなんらかの責めを追うのだろうか? また少年の迷惑系ユーチューバーによって田母神も刺される。 スマホのついていない自撮り棒をもって背中で血を流しながら「まだいける、まだいける」という姿はもはや狂気。 「派手に、目立って、テンポよく」がユーチューブ。 スマホを発明した人もユーチューブを考えた人もこんな時代が来るとは思っていなかったのでは? ある種現代の闇である。 モガディッシュ 脱出までの14日間日時 2022年7月8日19:10〜 場所 新宿ピカデリー・シアター9 監督 リュ・スンワン 1991年、韓国と北朝鮮は国連加盟を巡ってアフリカで外交合戦を行っていた。アフリカは国連加盟国が多く、アフリカの国を味方に付けることは国連加盟運動に重要だったのだ。 韓国のハン大使はやっと大統領への面会の約束を取り付けたが、大統領官邸に向かう途中で暴漢におそわれ、大統領へのお土産を盗られてしまった。それは北朝鮮のリム大使の差し金だった。 しかし賄賂が横行するこの政府、反乱が起ころうとしていた。内乱は起きないだろうと予想していた各国政府だったが、予想に反して内乱が起こった。韓国は守ってくれない政府になんとか交渉し、大使館を保護させた。 しかし北朝鮮は中国大使館を頼ろうとしたが、暴徒に襲われてたどり着けない。やむなく韓国大使館に助けを求めた。 韓国の安全企画部から派遣されているカン参事官は北朝鮮の大使以下スタッフを韓国に亡命させようとするが北朝鮮のテ参事官の抵抗で失敗。 リムとハンは話し合い、とりあえず「脱出」まで手を組むこととする。 お互いの国交のある国に助けを求める。韓国はイタリアに、北朝鮮はエジプトに。しかし交渉しても「片方の国だけ」と言われる可能性がある。 しかし彼らはとにかく動き出す。イタリアには「北朝鮮側はすでに韓国に亡命した」と嘘を言って北朝鮮も救援機に乗せてもらうことを了承させる。 午後4時にイタリア大使館に集合。ハン大使たちは戻ってみんなを説得。車に本や砂袋をぶら下げ、急場の防弾装備を施したが。 映画とは全く関係ないが、今日11時半頃、奈良市で参議院選挙の応援演説中に安倍元総理が元海上自衛官の男に手製の銃で狙撃され、夕方17時3分に死亡した。昭恵夫人の病院到着直後のことだった。 このニュースで頭がいっぱいで、正直、映画の内容があんまり入ってこない。もちろん話は把握してるが、心ここにあらず状態だったことは否めない。 だからなんていいうか感想も「韓国映画すげえなあ。現地の再現ぶり、銃撃戦の迫力がすごい!」「いつもは過剰な音楽とスローモーションで泣かせの演出になる韓国映画だが、割とあっさり終わってよかった」ぐらいしか感想が残らないのだな。 特に安全地帯の空港に到着して、韓国、北朝鮮の国から迎えがきている。一緒に出て行くわけにはいかないとバラバラに飛行機を降り、みんなの前では別れの挨拶はしなかったラストはよかった。 あと韓国の書記官。コメディリリーフとしていいポジションを占めていたと思う。 以上。 ろくな感想でなくてごめんなさい。 刑事(でか)日時 2022年7月7日 場所 東映チャンネル録画 監督 佐伯 清 製作 昭和39年(1964年) 自動車修理工の大平(江原慎二郎)は女性を強姦する目的で知り合いから拳銃を手に入れた。そして山下公園に向かう。山下公園では上杉竜彦(里見浩太朗)と矢野昌子が結婚しようと語り合っていた。それを見た大平は最初は警官を装って話しかける。だが怪しまれると格闘になり、大平は上杉を殴り、昌子を連れて車で走り去った。 パトカーで巡回中の野村と坂本(柳谷寛)は山下公園をふらふらと歩いていた上杉を発見。酔っぱらいと思った坂本たちはとりあえず警察へ留置する。医者に見てもらったが何かに殴られて脳震盪を起こし一時的な記憶喪失になっているのではといわれる。何があったかはっきり伝えられない上杉。矢野警部(丹波哲郎)は念のため警戒を命じる。 やがて上杉と一緒にいた女は自分の妹だと知る。 東映チャンネルで放送。 丹波哲郎主演の刑事物と聞いていて期待していたので放送のあったその日に鑑賞。最初に言うけど完全に期待はずれ。 まず犯人がバカ。安井昌二の鑑識課長に「性犯罪者ってのは思考が普通じゃないから我々の基準でものを考えてはいけない」っていう言い訳はあるのだが。 車奪って女を連れて行ったのに人や車が通って落ち着いて出来ないということでやる場所が見つからない。自分の会社の工場なら日曜日だから大丈夫だと言ってみると当直がいて出来ない。朝になってなんとか追い出して やろうとするが女に抵抗にあう。仕方なくまた別の車で別の場所へ。 ってまるでなにも考えていない。 一方でまだ事件かどうかもわからない段階で(単なる酔っぱらいの妄想かもしれない段階で)非常警戒網をはったりで矢野警部にも違和感。 で「うちの妹はお前のような男とつきあったりしない!」と親ばかというか兄バカ。しかし兄のそのような束縛がいやで先月から友人と一緒に住んでいるんだから世話はない。 そして犯人の特定の過程が実にイージー。警邏のパトカーの巡査がもう一度現場に行って落ちていたヘルメットを発見する。そのヘルメットに名前が書いてあったとかイージーすぎ。脚本、手抜きすぎだよ。 丹波警部も目立った活躍はなく、結局事件の一番の功労者は警邏のパトカーの坂本巡査(柳谷寛)。子供が産まれたとの連絡があっても「事件のめどが立つまでは」と帰らずに捜査に参加。 そして手配中の車を発見。発見したときに犯人にひき殺される。でこのひき殺した奴は矢野警部の妹を誘拐した奴ではなく、そいつが乗り捨てた車を盗んだ別の逃亡犯という訳。 でも最後に大平を逮捕したときに坂本巡査の同僚は「坂本巡査を!」とか言ってるけど、それ違うから! とにかく期待したけど無駄なシーンも多く、がっかりの映画だった。 三十九夜日時 2022年7月3日 場所 DVD 監督 アルフレッド・ヒッチコック 製作 1935年(昭和10年) ハネイはたまたま立ち寄ったミュージックホールで「記憶男」という何でも記憶しているという男の芸を見る。質の悪い観客のせいで客席は混乱したが、そのとき銃声が響き、観客たちは一斉に出口へ。ハネイを外にでる。たまたま会った女性と自分のアパートへ。その女性は「私はスパイで英国の防衛に関する情報が漏れるのを警戒している」という。最初は信じなかったハネイだが、女の言う通り外に怪しい男が見張っているのを見て信じる気になった。 しかし翌朝、女はナイフで刺されて死んだ。夕べ「明日スコットランドにある男に会いに行く」と言っていて死んだときに持っていた地図にスコットランドのアル・ナ・シェラという街に印が着いていた。 ハネイはとりあえずアル・ナ・シェラに向かったが。 今日は暑さと二日酔いで家にいて映画館には行かなかった。でも映画を1本も観ないわけにはいかないので、以前買ったコスミック出版のミステリー・サスペンスコレクションから選んでみた。 さすがヒッチコックだねえ。 後の「北北西に進路をとれ」や「逃走迷路」と同じく主人公が無実の罪を着せられて無実の罪をはらそうとする「巻き込まれ型」である。 さらに国防の秘密がマクガフィンとして登場。 冒頭で女諜報員を家につれてくるが、当然最初は「私は諜報員」と言われても主人公は信じない。これが最初に示されているので、主人公の逃避行が始まっても誰に説明してもなかなか信じてもらえない。 それにしても主人公のアパートで、夜は窓が閉まっていたのを、朝になったら窓の前のカーテンがひらりとはためく。この1カットで「誰かが進入した!」と知らしめる見事さ。 そして誰に話しても信じてくれない中で列車に乗ってスコットランドへ。 またここでカットバックしてメイドが主人公の部屋に入って「キャー」と叫ぶ。これでも死体は発見されたと示す。 そして新聞記事をやたらと気にする主人公。ついに列車から見つかりそうになったときにコンパートメントに入ってある女性にキスをしてやり過ごそうとするが、女性が「この男!」と行ってしまう。 列車を橋の上で止め、橋の柱づたいに逃げていく。 このあたりの「高いところから落っこちそう」はヒッチコックらしい。 スコットランドでも民家に泊めてもらったけど主人からは警察に売られ、でも奥さんは助けてくれたりで、死んだ女が会おうとしていた男に会う。 協力者、と思っていたら実は死んだ女が追ってる黒幕だった、という訳。 二転三転の逆転の展開である。 結局捕まったりするんだけど、例の列車の女と偶然再会、彼女も巻き込まれてしまう。ヒロイン登場としては少し遅い気もするのだが、後半彼女と主人公は喧嘩ばかりするあたりはラブコメ要素も加わってくる。 彼女と主人公が敵に捕まって車で連れて行かれるカットだが、スクリーンプロセスを使って車の外から会話を捉える。そのままカメラは移動すると車の後ろ姿を捉え、車が走り去っていく。 うわーすげえ。スタジオの車からワンカットで外を走る車になる。 まあこれをやっても映画マニアでもない観客にどこまで伝わったかわからないけど、ヒッチコック自身はスタジオの車、ロケで道を走る車、を単に編集でつなぐだけはいやだったんでしょうね。 カメラが移動する際に屋根を写すことになり、一瞬真っ黒になるからここで別カットをつないだのでしょう。 結局、最初の記憶屋は関係ないと思っていたら、「重要機密を彼に記憶させて持ち出す」という計画だったので、記憶屋が必要だったのだ。 ヒッチコックらしい、後の作品につながる映画で、やはりヒッチコックは今でも観る価値がある。 ヘタな二人の恋の話日時 2022年7月2日14:05〜 場所 シネマート新宿スクリーン1 監督 佐藤 周(あまね) 脚本 いまおかしんじ 行きつけの美容師に一方的に熱を上げる綾子(街山みほ)と大学の友人に告白するも「うざい、重い、しつこい」と言われながらもまだ待ち伏せしてフられる祐太(鈴木志遠)。 たまたま同じ場所でフられた二人だったが、メンヘラ気味の綾子が公園で泣き出し、仕方なくアパートに連れて行く。 「お願いがあります!処女捨てたいんです。やってください!」と綾子に迫られる祐太。あわててコンドームを買いに行く。 それから何となく同棲を始める二人だった。 いまおかしんじ脚本作。キングレコード製作、レジェンド制作のシリーズの1本。この夏、8月にはいまおか監督作「甲州街道から愛をこめて」「遠くへ、もっと遠くへ」「あいたくてあいたくて」の3本が公開される。本作の監督は若手の佐藤周(あまね)。 主役の鈴木志遠がいい。イケメンなんだけど、どこかぽわんとして押しが強くない感じがいい。 この後、祐太は就職するのだが、なんかうまくいかずに営業成績も悪く首になる。 そしてウーバーイーツ(という名前ではないが)で働き始める。しかし若年性アルツハイマーとなっていく。 一方綾子も美容師の部屋に侵入したり、彼とセックスしたり、常連のお好み焼き屋のマスター(川瀬陽太)ともセックスしたりする。 そんななんだか生きるのが下手(という言い方はあまり好きではないが)な二人の数年間を描く。 なんか「花束みたいな恋をした」に似てるな、と思ったらいまおかさんも「その線でいこうと思った」ということで、祐太がアルツハイマーっぽくなるのはボクシング映画の「BLUE」で、祐太の就職した会社が文房具販売会社なのは「宮本より君へ」を参考にしたそうで。 祐太の部屋に冷蔵庫がないので、捨ててあった冷蔵庫を拾ってきたり、コンドームをあわてて買いに行ったり、いきなり美容師の家に行ったりの無茶苦茶さがいまおかさんらしい乾いた笑いだった。 舞台挨拶では主役の二人は緊張していたそうだ。 上映後、映画館から出てきた鈴木さんを見たが、非常に長身。(太田プロのHPを見たら186cm!) あのイケメンだけど親しみやすい感じがよかった。今後の活躍を期待したい。 街山さんはおっぱいが大きく、形もきれいだった。上映後、シネマートの出口でファンに囲まれてサインに応じていた。今後の活躍を期待しています。 |