2022年8月

   
アキラとあきら 激怒 風来坊探偵 埠頭を渡る黒い風
コロッケを泣きながら 機械仕掛けの君 きさらぎ駅(2回目) ホープさん サラリーマン虎の巻
島守の塔 ある殺し屋の鍵 ある殺し屋 昭和の家事 おはぎをつくる
サイボーグ009 怪獣戦争 サイボーグ009(4Kリマスター版) 明日を創る人々 遠くへ、もっと遠くへ
あいたくて あいたくて あいたくて 破壊! ゴジラ(1977年イタリア ルイジ・コッジ版) 甲州街道から愛を込めて


日時 2022年8月28日
場所 DVD
監督 ロバート・ワイズ
製作 1949年(昭和24年)


30代後半になり、今や落ち目のボクサーのストーカー(ロバート・ライアン)。マネージャーのティニーは今度の対戦相手のネルソンのオーナー、リトリボーイから八百長試合を持ちかけられ、金を受け取った。
ティニーは「どうせ負けるから」とストーカーには言わないでいた。
ストーカーの妻、ジュリーは彼がボクシングで体を壊す前に引退して別の仕事をする事を望んでいた。いつも見に来る試合を今夜は見に行かないと言う。
ストーカーは会場に向かう。控え室には今日がデビューの新人ボクサーや、ストーカーのようなベテランボクサーがいた。ベテランボクサーはかつて21試合に負け続けたがその後チャンピョンになった伝説のボクサー、マニラの話をして「自分も再起する」と言い続けた。
ジュリーはホテルを出たものの、町を徘徊し、結局試合は見ずにホテルに帰った。
ついにストーカーとネルソンの試合が始まった!
若いネルソンに圧倒されながらもストーカーは粘りに粘る。


コスミック出版の「犯罪の世界」のDVDボックスの中の1本。本作は殺人事件などが起きるわけではないので、ちょっとこのセットに入れるには強引かな。
ムービーウォーカーデータベースによると「物語の現実時間を映写時間の71分に一致させるという試みが執られている」とある。
言われてみれば一晩の話。特に効果があったとは思えないが、そういう試みをやってみたかったのだろう。

原題は「The Set-Up」。「罠」というより「仕組む」ぐらいの意味だろうか?
映画の方は彼は勝つか?に絞られていく。
観客のヤジも最初は「車いすは?」などと言われ、完全にストーカーをバカにしている。
しかしストーカーの粘りに観客も次第にストーカーを応援するようになっていく。

ネルソンも最初はバカにしていたが、粘り強さに圧倒されていき、第2ラウンドが終わった時点で「次で負ける約束だよな」と言い出す。
3ラウンド目が終わった時点のブレイクでついにマネージャーのティニーから「もう金はもらってある。負けてくれ」と言われる。
しかし今更負けられない。
そしてついに4ラウンド目でストーカー勝利。
マネージャーとトレーナーはさっさと逃げ出す。
ストーカーはリトルボーイの報復にあい、手をつぶられてボクシングは再起不能に。しかし妻はボクシングをやめられてほっとするのだった。

こんな感じの展開。
話の流れからストーカーが勝つのは十分予想できるので意外感はなかったかな。





アキラとあきら


日時 2022年8月28日16:25〜
場所 新宿ピカデリー・シアター2
監督 三木孝浩


山崎瑛(あきら〜竹内涼馬)の父親は小さなプレス工場を営んできたが、銀行の融資が滞りあきらが10歳の時に倒産した。
階堂彬(アキラ〜横浜流星)は大手企業東海汽船の長男だったが、グループ企業の東海商会、東海観光を営む叔父たちと父の争いを見てそれを嫌って産業中央銀行に就職。同期には山崎瑛がいた。
二人は新人研修で、企業と銀行に分かれ、それぞれ融資申込書とその査定を行うチームに分かれた。企業側の階堂は粉飾決算をして申し込み、それを山崎は見破った。
山崎は上野支店に配属された。そこで零細企業を担当していたが、その会社が取引先が倒産し、連鎖倒産が起こった。山崎は社長の個人資産にまで回収をかけると察知、社長に預金をその前に引き上げさせた。その金は社長の娘の病気の治療費用で、山崎としては回収させるわけにはいかなかった。そのことがきっかけで福山支店に左遷された。
階堂の叔父たち(ユースケ・サンタマリア)は兄に対抗するために伊豆に
リゾートホテルを建設した。しかしリーマンショックにより一挙に経営は悪化した。階堂の父が急死。東海汽船は彬の弟の龍馬(高橋海人)が新社長になった。それは実は下田のホテルに対し、融資の連帯保証人をさせるための叔父たちの策略だった。
案の定、下田のホテルが東海商会、ひいては東海郵船の足を引っ張るようになる。階堂は銀行を辞め、東海郵船の新社長に就任。経営の建て直しを計る。
山崎も福山支店での成績が認められ、本社勤務になった。そして東海郵船を担当することになった。


池井戸潤原作ドラマ。横浜流星と竹内涼真の競演。しかしメガバンクの銀行員とか似合わないなあ。二人とも俳優としてはそれほど嫌いではないのだが(横浜流星は好きなほう)それでちょっと見るのを迷ったが、最近番宣も多く見かけるので、結局観た。
あと高橋海人の弟も大企業の新社長になるのだが、これも似合わないなあ。
まあ20代のメガバンク銀行員とか新社長とかちょっと設定が厳しいような。せめて30代でないと。

後半、下田のホテル売却を計画するがどこも買い手がつかない。しかし東海商会とセットで売却と計画。しかしお荷物があってはだめ。
山崎は産業中央銀行が140億を融資し、それでまず下田のホテルの他行からの融資を返済させ、東海商会を50億で売却し、あとの90億は東海郵船に対する許容範囲と判断できる、というもの。

これには叔父たちの了解が必要だが、そこは横浜流星がユースケ・サンタマリアに土下座して頼む。土下座して済む問題じゃないと思うのだが、池井戸潤のドラマって最後は土下座とか人情で押し切るのだな。
山崎豊子の「世の中そんなに甘くない」ドラマの洗礼を受けてるので、そうも池井戸潤のドラマは甘く感じる。まあそれでも企業ドラマは少ないから観ちゃいますけどね。
でも本音では役者も全員貫禄がないんだよなあ。まあこれは最近の役者全員そうだけど。もっとも役者の問題ではなく、日本人全体が政治家を観ても貫禄というものがなくなったけど。

山崎の上司が江口洋介でこれが融資には厳しく、なかなかOKを出さない。二言目には「確実性、確実性」という。
これも最後には「融資する金はお前の金じゃない。顧客の資産であり、末端の行員が1000円2000円を積み上げてきたものだ!」というシーンでこの上司を少し見直した。こちらも正論である。確かに山崎のように「困ってるからなんとかしてあげようよ」では銀行も持たない。

そして頭取の奥田瑛二の了承も取り付け、万事めでたし、めでたし。
ドラマ「陸王」の時は中小企業なので、親近感があったのだが、階堂も若くて運転手付きのセンチュリーに乗っていたり、山崎にしても父の会社が倒産しても東大を卒業し、メガバンクに入るなんてなんかこう(私のひがみ根性なのだろうけど)セレブ感、雲の上の人感がしていまいちのれないのだな。
これは映画の問題じゃなくて原作の問題だろうけど。

それにしても映画の中では山崎も階堂も恋人とか、結婚の話がいっさい出てこない。山崎の後輩の女子行員(上白石萌歌)が登場したので恋仲になるかと思ったらいっさいなし。ここはよかったと思う。






激怒


日時 2022年8月27日14:05〜
場所 新宿武蔵野館スクリーン1
監督 高橋ヨシキ


富士見町の刑事、福間(川瀬陽太)はいったん激怒すると暴力が止まらなくなるところがあった。この町では自警団が活躍し、町の浄化を計っている。
引きこもりの息子とその母親が暮らす家を自警団が非難していた。ある日、自警団の面々がその家に強制的に入り、その家族を非難していた。しかし息子の方が逆上し、自警団の人々を人質にして立てこもった。福間は強行突入し、そのときに母親の方が手にしていた包丁で誤って自分をさしてしまい、死んだ。
福間には面倒を見ていた若い不良たちがいた。その一人の少女がバーでポールダンスをしていたのだが、客から罵倒され、そのことに怒った福間は結局その客を殺してしまった。
それがきっかけで3年間アメリカで治療を受けて帰ってきた。帰ってきた町はなにか変わっていた。「安心・安全、富士見町」を口にする自警団の人々がわずかな犯罪も許さず、犯罪を犯した人々をリンチしていた。
例の福間が面倒を見ていた少女が自警団に拉致されたとき、福間の怒りが爆発した。


世の中、何かと窮屈である。コンプライアンス、コンプライアンス。もちろんルールは必要だし、それを守る、守らせることももちろん必要。
しかしそれが過剰になってやしないか?という思いから出来たであろうこの映画。

私なんかどっちかというと「ルールは守りましょう」的な人間で「ルールは破るためにある」などと言われた日にゃ、それこそ「激怒」してしまうのだが、それにしたってこの映画に出てくる「自警団」「正義を振りかざす人」には辟易する。

冒頭に出てくる引きこもりゴミ屋敷も、まあ毎日働いている人からすると中年になっても引きこもって親の年金で暮らしてゴミ溜放題で異臭を放てばそれはいい気持ちはしない。
しかし押し入って強制的に事態を解決しようとするのはやりすぎだと解る。
そういう他者への思いをかける気持ちは大切にしていきたい。

後半、もっとエスカレートしていて、警察も「地域の人々とは連携していきたい」といい、見逃している。
いきすぎた正義はコインパーキングの料金をごまかした若者にも向けられる。確かにそれは悪いし、窃盗だけど暴行はやりすぎである。しかも「こいつら自分で殴り合っただけなんで」とごまかす。

仲間だった猥雑な店の閉店、そこにたむろしていた者たちは隠れて暮らしている。面倒をみていた少女を救出するために福間の怒りは爆発する!という展開。

言いたいことは解るのだが、「コンプライアンスうるせえ!てめーら行き過ぎなんだよ!」で終わっている。なんかそこで終わると物足りない。
「過剰なコンプライアン厳守をどうするか」まで描いてほしかったかな。
まあ描いていたかも知れないけど、こちらが読みとれなかった。

本作は制作プロダクションとして国映も参加。実質的には川瀬陽太さんがプロデューサーになった自主映画だろう。その割にはセットもちゃんとしていてショボさは見えない。
映画監督とかも多く協力していていまおか監督は最後に突入する自警団メンバーの一人。
クレジットを見ると国映界隈の方々(映画監督、役者さん、技術スタッフ、エキストラなどなど)のお名前多数。(まあそれが縁で見に行ったんだけど)

本作、2020年前半のコロナが始まる前ぐらいに撮影され、ニューヨークのシーン(主に実景だと思うが)が撮りこぼされ、完成が遅れたそうな。
今回、ついに公開になってめでたい。






風来坊探偵 埠頭を渡る黒い風


日時 2022年8月21日
場所 東映チャンネル録画
監督 深作欣二
製作 昭和36年(1961年)


新岬の沖合で漁船が沈没する事故が続けて起こった。船は両方とも江藤漁業のものだった。社長の江藤は探偵の西園寺五郎(千葉真一)に調査を依頼しようと娘、慎喜子(北原しげみ)を迎えにやる。
新岬の町では堀越海運が大手を振っている。また水産研究所があり、プランクトン放流による漁場の開拓を行っていた。
五郎は堀越海運が雇ったジョーカーの鉄(曽根晴美)という殺し屋に狙われる。また海岸で出会った髭面の画家も東京で五郎と慎喜子の会話を立ち聞きしていた奴のようだ。
江藤は五郎に会う前に自殺に見せかけて殺されたと考える。金曜日の晩に江藤の船が沈没したことから、また金曜日の晩に水産研究所の漁場に行ってみた。そこでは海外から送られた密輸品が堀越海運の船によって受け取られていた。見つかった五郎たちの船は彼らの船に体当たりされ、沈没した。
水産研究所のスポンサーの多々良(須藤健)が首謀者と思われたが実はもっと大物がいた!


没後1年の千葉真一の初期作品特集。「風来坊探偵」2作目である。1作目は去年の11月にも放送があり、今回も放送。
前作で作品のレベルは解っているので特に期待もせずに観た。

曽根晴美が宍戸錠の役をやるのは同じ。千葉真一はライフルをくるりと指で回転させ、「駅馬車」のジョン・ウェインを意識しているのか。
須藤健がまた悪役で、その上にいるのが水産研究所の所長の宇佐見淳也。
調べてみたらヒロインの女優さんも同じ人。
好評だったから2作目が出来たわけではなく、最初から2本決まっていたのかも知れない。

そんな第2東映の新人監督、新人スター作品でも特撮シーンはある。
冒頭の船の沈没、そして中盤のクライマックスの五郎の船が密輸船に体当たりされ沈むところなどなど。
モノクロの暗さもあって特撮感は少なく、なかなか迫力があった。

水産研究所の所長の宇佐美淳也が黒幕かと思われたが、さらに上がいた!実は研究所の職員だった!というオチ。
職員と対決するとき「この写真の男とそっくりだね」と観客は全く知らされてなかった写真を取り出す。
写真の男は香港の麻薬組織の指名手配の男!といきなり言われてもなあ。

60分でアクションあり、国際的麻薬団登場で、このあたりのセンスが後の「キイハンター」を生む土壌になったのだな、と妙に納得した。

で、謎の画家はどうしたんだ?と思っていたら指名手配の香港の男の変装だったと最後の最後に明かされる。
まあこれはなんとなく途中で解りました。






コロッケを泣きながら


日時 2022年8月21日
場所 日本映画専門チャンネル
監督 近藤啓介
製作 令和2年(2020年)


コロナで緊急事態宣言下、外出が禁じられた世の中。
俳優・磯村勇斗はファンのためにライブ配信を行った。配信が終了したが、OFFにするのを忘れた磯村。
実家の母親に「頼んだコロッケ送ってくれた?もう食べるものないんだけど?」と文句を言って電話で親子喧嘩。
そこへやってきたのは宅急便。そのとき、ライブ配信がOFFになってなかったと気付いて焦る磯村。
送られてきたのは母からの生きたオマールエビ。「これどうすりゃいいんだよ!臭〜」と文句を母親に電話で言って、先ほどの会話が全部配信で流れて頭を抱える磯村だった。


日本映画専門チャンネルでの磯村勇斗特集での放送。
15分程度の短編。
2020年放送とHPにあるから、最初の緊急事態宣言下の頃に作られたのだろう。
あのとき、全ての人が初めて遭遇する事態で政治家も右往左往、そしてもちろんエンタメも映画館は休業、舞台もコンサートも中止ですべての人が何をしたらいいかわからなかった。

第7波を迎えている現在、1日の感染者数は2万人(東京都だけで)を越えてるにも関わらず(オミクロン株は重傷化しにくいという理由なのか)、行動制限なし、もちろん緊急事態宣言なし、である。
とにかく去年までは「東京オリンピックを開催せねば!」という必死さがあったが、それも終わった今となっては「野となれ山となれ」というのが政府の方針としか思えない。

映画の方は特にオチもなく、磯村が頭を抱えているところで終わる。
当時、映画撮影が出来ないなら「それでも何か出来ることはないか?」とリモートで撮影された変わり種企画が多数あった。
それもこの一つ。

映画自体は特に面白くもなんともないが、時代の空気を伝える作品ではあろう。






機械仕掛けの君


日時 2022年8月20日
場所 日本映画専門チャンネル録画
監督 磯村勇斗
製作 令和3年(2021年)


近未来。ロボットが発達し、ロボット使用を拡大する法案が成立しようとしてた。成立すればますます人々は仕事を奪われる。ロボット製作会社と政府には毎日のようにデモ隊が訪れていた。
コータとカナメは仲のいい友達。いつも廃工場で月面着陸ごっこをしたり、花を育てたりして遊んでいる。
二人は「明日は宝探しをしよう。お互いの宝を持ち寄って隠して探して遊ぶんだ」と別れる。
コータの兄はデモ隊の主要メンバーだった。カナメはロボット会社の社長の息子だった。カナメは父親に「出来損ないの旧式だ!」と怒られていて居場所を感じていなかった。
二人が廃工場で遊んでいるとき、警察に追われたデモ隊のリーダーたちが逃げてきた。コータの兄たちだ。コータとカナメはデモ隊に見つかった。
メンバーの一人が「この中にアンドロイドがいる!」と言い出す。
アンドロイドはコータだった。
デモ隊のメンバーによってコータは破壊された。


日本映画専門チャンネルでの磯村勇斗特集の1本として放送された。
WOWOWの「アクターズ・フィルム」という映画俳優が監督をする企画の1本。27分の短編。

コータがたち小便をするけど、カナメはいやがってしない。カナメは「おまえは旧式のポンコツだ」と言われたとグチったり、カナメの父親はロボット会社の社長だし、カナメがアンドロイドとミスリードする描写が続く。
それでラストで「この子供のどちらか一人がアンドロイド」と言われれば、普通カナメだと思うだろう。
それがコータだったという意外性はあるものの、単なるデモ隊の労働者がなぜアンドロイドを持っているのか?という疑問は解明されないまま映画は終わる。

ところが日本映画専門チャンネルの番組紹介を読むと、コータの兄はアンドロイドの技術者のようだ。
それで個人で作ったのがコータだったのだろう。あとカナメ君は宝物として首のかけた太陽の塔を持って行くのだが、コータが持って行ったのは実はその首の部分だった、というオチもつく。

でも何で持ってたのかな?なんかいろいろ考えて伏線を作ったんだろうけど、説明されないまま終わった感じだった。





きさらぎ駅(2回目)


日時 2022年8月20日19:40〜
場所 目黒シネマ
監督 永江二朗


ストーリー省略。
2日ほど前にTwitterで8月20日に目黒シネマで監督トークイベント付き上映があると知り、「世界からこの恋が消えても」を観ようかと思っていたがいい機会なので目黒シネマへ。

トークイベント後にパンフ購入者にはサイン会を行うというので先にパンフも購入。1200円。高いなあ。
映画の方は2回目とはいえ細部は忘れているので、1回目同様楽しんだ。

で監督のトークイベント。
1、きさらぎ駅の都市伝説の舞台となっている遠州鉄道でロケ出来ないとお客さんから突っ込まれてしまうので、遠州鉄道でロケできるかどうかはポイントだった。

2、今回ゲームの目線のようなFPS(ファーストパーソン・シューティング〜一人称シューティング)でやろうと決めた。パンフによるとやってみたら今まででもよくあるようなPOV(ポイント・オブ・ビュー)とは似て非なるものだそう。

3、前半のすみこ(佐藤江梨子)パートでは女優の道本成美さんにヘルメットにカメラをつけたものをかぶってもらい、演技しながら撮影してもらった。
カメラは頭のあたりについているので、腕を前に出していて腕が写らなければいけないカットでは腕を通常より上の方にあげて演技していたそうです。
堤春菜が異世界に行った際には、カメラマンの早坂さんが撮影したそうだ。

4、ワンシーン、ワンカットで基本撮っていったので、途中で間違えると最初からやり直し、が続いたそうだ。
映画の中でカットが割っているように見えるのは編集の段階で切ったからで、撮影時はワンカットで撮っていたという。

ここで私の質問。
質問:撮影の手順として例えば駅のシーンで「すみこパート」を撮影して、その後「堤パート」を撮影したのですか?

回答:実は撮影は「堤パート」の方が先。「すみこパート」と「堤パート」は別日に撮影している。違う日に同じ演技をするというのは役者さんの演技が違ってしまうことがあるが、役者さんも芸達者だったし、事前に東京の稽古場で時間をかけて演技を決めていたので、演技が固まっていたから変なことにならなかった。
別日に撮影してるから、厳密にいうと天気が違う。雨が降ってる時もある。でもそこは「異世界ですから」とキャストには説明した。

天気が違うのは色調整を仕上げの時にしてるから特におかしさは感じなかった。そもそも「すみこ」「堤」ではちょっとづつ違う経験をしてるからいいんじゃない。

サイン会の時、「寺坂君が早くウルトラマンになれよ!と思って観てしまいました」と言ったら「(トンネルの出口が見えたシーンで)寺坂君が『希望の光だ!』と言ったのはウルトラマンのオマージュなんですよ」と監督はおっしゃってました。
イオンのプロデューサーが今日の司会だったのですが、その方が「(若者のもう一人の)木原瑠生くんがキラメイジャーだから二人とも変身したら後半違う映画になってましたね(笑)」
木原さんが戦隊もの出身だったとは知らなかった!

「きさらぎ駅」、ディスクが出たら買ってもいいな。





ホープさん サラリーマン虎の巻


日時 2022年8月20日15:10〜
場所 国立映画アーカイブ小ホール(地下)
監督 山本嘉次郎
製作 昭和26年(1951年)


風間京太(小林桂樹)は昭和製鋼の入社試験を受け、野球部出身が代われて合格。晴れて入社できたが、秘書課長(東野英治郎)から「お辞儀がなってない!」と入社初日から怒られる。
会社の寮に入ったが同室の先輩は「社長の出張の随行人になれた。出世できた!」と喜んでいる。その晩、寮に泥棒が入り京太は背広を盗まれた。
仕方なく野球のユニフォームで出勤するが、これで客を東京駅に迎えにいって大受け。また庶務課の女性同僚が背広を「兄の形見で」と貸してくれた。
会社対抗の野球の試合で京太は大活躍し、チームを勝利に導いた。これには社長(志村喬)も社長夫人(沢村貞子)、社長の娘も大喜び。社長に気に入られ、京太は出張の随行員に。そのせいで寮の先輩は会社を辞めていった。
東北出張に同行した京太だが、車内で食べる弁当を忘れて大騒ぎ。水上駅で買ったものの、もたもたしてるうちに列車に乗り遅れてしまった。
先行した社長に追いつくと社長はひょうたんという芸者と遊んでいる。出張前に社長夫人から「社長が羽目を外さないように監視して!」と言われているので、京太は社長に厳しい。
東京に帰ってきた社長をひょうたんが訪ねてきた。秘書課長が社長とひょうたんが会ってる場所を社長夫人にうっかり教えてしまう。


今夜目黒シネマで「きさらぎ駅」の監督トークイベント付き上映があるのだが、夜の7時40分から。「島守の塔」を見終わった後の時間つぶしに安いアーカイブを利用した。(TOHOシネマズでは特に観たいのがなかったし)

そういった消極的理由で観たが、正解だったなあ。
昭和26年の映画だが今でも笑える。社長シリーズの原型と言える映画だ。
前半に入社したばかりの京太が「お辞儀がなってない」「なんとかします、ではなく、絶対、だ!」と怒られるところでは、「ああこの時代の会社はまだまだ軍隊組織の名残があったのだなあ」と実感。戦争が終わってまだ6年ですものね。

ラスト、前社長が復帰するのだが、これが「公職追放」が解かれたため、という理由。時代ですねえ。

社長随行では弁当を忘れて怒られた京太の前に前社長がたまたま乗り合わせる。前社長は「そういえば君(現社長)が随行員の時に弁当を忘れて往生したなあ」と言って現社長は恐縮する。
その後水上駅で弁当を買おうとするのだが、たぶん配給の食券があるとかないとかで時間がかかり、さらにお釣りを渡すのに時間がかかってついに乗り遅れてしまうあたりで場内爆笑。
このあたりは可笑しかったなあ。

そして例の背広をくれた同僚が秘書課長の娘で京太といい仲になるのだが、秘書課長は最近耳が悪くなっている。
「もうすぐ定年」と言っているから50代なのだろうけど、もう耳が遠くなったの?

で、社長がひょうたんに会いに行ったときに秘書課長には「ここにいるから。でも誰にも教えるなよ」と言って出かけていく。
社長夫人が来たときに「社長は!?」と言われ、「ここにいます」とその旅館の名刺を渡してしまう。ここで場内は大爆笑。

この後京太が追いかけるが、間に合わなかった、という展開。
前社長も復帰するにあたり、社内の大移動が行われ、秘書課長はクビになり、京太が秘書課長になる。

京太は恋人の父親のクビを切るきっかけを作ってしまって非常に悔しいのだが、母親から「出世おめでとう」の祝電が届く。
ハッピーエンドでは終わらない寂しさがあった。
面白かった。

山本嘉次郎ってあまり注目してなかったけど、特撮戦争もの、特撮もの、サラリーマン喜劇、暗黒街もの、など戦後東宝映画のヒットシリーズの基礎を作ったのだという「ミスター東宝」と言える監督だったと改めて認識した。






島守の塔


日時 2022年8月20日11:00〜
場所 シネスイッチ銀座2
監督 五十嵐匠


昭和18年、戦争は激化し沖縄上陸も噂されていた。沖縄から本土への疎開も行われたが対馬丸の沈没で中止。昭和19年10月、那覇も空襲。泉知事は東京へ行ったまま戻らなかった。後任の知事に島田叡(萩原聖人)が任命された。沖縄は戦場になるかも知れない。赴任すれば死もあり得た。
島田付きの職員は比嘉凛(吉岡里帆)は「生きて虜囚の辱めを受けず」と主張する軍国少女だった。島田は警察部長の荒木退造(村上淳)とともに沖縄県民を一人でも多く救おうと尽力していく。
昭和20年4月、米軍沖縄上陸。日本軍は総攻撃を試みるも失敗。
やがて首里の陣地を放棄して南へ撤退が決定される。しかし南には避難した県民が数多くいる。


自分の場合、岡本喜八の「激動の昭和史 沖縄決戦」で沖縄戦を知り、詳しく知りたくて関連本も数冊読んだ。結果、「沖縄決戦」は実に要点をまとめて軍司令部から学生、庶民の動きまで描ききったと言える映画で沖縄戦を知る重要なテキストになると思っている。わずか2時間半で沖縄戦の全貌を知ることが出来る映画だ。

そういう訳だから沖縄戦の映画に関してはどうしても点が辛くなる。
一言でいうとこの映画は「まじめな人がまじめに作った大まじめな映画」としか言いようがない。その割には予算は少ない。だから米軍兵士(投降を呼びかける声のみ)も戦車も火炎放射器も登場しない。

島田知事を主役に据えたいなら島田知事が沖縄行きを決意するところから始めても良さそうだが、その前に20分ぐらい荒木警察部長の話になる。
荒木部長が栃木の実家に帰った話とかが延々と続く。この辺はいいから早く沖縄に帰ってくれ。

そしてその割には印象に残るエピソードが映画では出てこない。ただ「沖縄県民を救おうとした」という説明があるだけ。
島田知事も「元気でいきましょう!てるてるぼ〜ず、てるぼーず」と着任の挨拶で歌を歌い出すぐらいしか印象に残らないんだよなあ。

まあ現代の人向けなのは解るけど、万事せりふが説明的なのだよ。仕方ないかも知れないけど。(「説明せりふを説明に聞こえなくするのが役者の力だ」と言ったのは仲代達矢だったか)

また印象に残るエピソードは「沖縄決戦」にもあるような感じだ。
野戦病院で「諸君はよく戦ってくれました!」と叫ぶ兵隊(全裸じゃないよ)とか豪に避難している地元民を追い出す兵隊とか。

今回の映画で一番印象に残ったのは鉄血勤皇隊の少年が新聞を島田知事に配って会話するシーン。「この戦争が終わったらまた勉強出来ますよね。僕は勉強がしたいんです」というシーン。ここは心に残りました。

それにしてもシネスイッチ銀座、最初は1日1回上映だったのが、8月15日ぐらいを境にして1日2回上映にした。しかし11時の回と12時半の回。おいおい被ってどうする。
普通1日2回上映といえば午前と午後の回とか、午後と夜の回とか上映時間を完全にずらすだろ。
同じ時間に上映しなければならないような満席ではないぞ!

全体的にテンポも悪く、編集でもっと切った方がよい気がした。
まあ真面目な映画なんだけどね。でも真面目なだけでは人の心を動かす映画にはならないんだよなあ。
本当は沖縄戦の映画なんてもっと多くの人が観るように全国100館ぐらいで公開してほしい。だから仲間内だけで盛り上がってるような映画だった。

ちなみに牛島司令官は榎木孝明、八原高級参謀は水橋研二。
志は高いけど、真面目すぎて面白味に欠ける。











ある殺し屋の鍵


日時 2022年8月20日
場所 TSUTAYA宅配レンタルDVD
監督 森 一生
製作 昭和42年(1967年)


踊りの師匠の新田(市川雷蔵)の裏の顔は名うての殺し屋だった。
政財界の秘密を握る朝倉(内田朝雄)の口封じの必要を感じた政界の大物、北条(山形勲)は遠藤(西村晃)に4000万円で依頼した。遠藤は石野組の石野(中谷一郎)に3000万円で依頼した。石野は子分の荒木(金内吉男)に2000万円でなんとかしろと命じた。
荒木は新田に「前金1000万円、終わったら500万円」で依頼した。
承知した新田は朝倉の調査を開始。朝倉は警察の監視下にあったが、逗留先のホテルのプールで一人になった瞬間に得意の針で一突きで殺した。
しかし荒木たちが裏切り、逃亡に用意した車のブレーキを壊し、新田を殺そうとした。
新田は生き残り、荒木と石野を殺害。石野たちの葬式に遠藤から花があり、朝倉のメモを整理していた弁護士の菊野(伊東光一)が遠藤と連絡を取ったことから遠藤がバックにいると判断した。
朝倉の情婦で今は遠藤に囲われている秀子(佐藤友美)を使って遠藤と会う新田。
遠藤を脅し、遠藤は新田を殺そうとしたが、誤って自分を刺してしまった。かかってきた電話から真の黒幕の北条が今夜ヨーロッパに発つと知った新田は、空港へと向かった。


「ある殺し屋」の姉妹編。殺し屋の名前も職業も違うから厳密な続編ではないようだ。似たような設定でもう1本作ったという感じで。
この映画は以前深夜テレビ(だと思う。途中から観て全編は、観ていないかも知れない)で観ていて、ラストのコインロッカーのシーンはよく覚えていた。(しかし逆をいうとそれ以外は全く覚えていない)

今回は前作のように時制をずらすことはなく、時間軸はそのまま進む。
最初4000万円だった殺しの請負金が新田に来るときには1500万円に中抜きされている。悪い奴はとにかくせこい。せこいから悪い奴にmなるのかも知れない。

新田が殺されそうになったり、荒木や石野が死ぬときは両方とも(色は違うけど)トヨタクラウンが炎上している。クラウンは悪い奴が乗る車だ。

そして黒幕の北条を一突きで殺す新田。
この誰にも気づかれないような「ブス!」と一瞬で殺害するあたりはもう「ある殺し屋」シリーズの醍醐味だ。

ラスト、金の入ったロッカーの鍵を無くす新田。この辺はちょっと間抜けだが、観客をハラハラさせて鍵は見つかる。しかしロッカーへ行ってみたら・・・というオチ。
このオチは最高だなあ。
金に執着も見せずにちょっと笑って立ち去る新田。
かっこいい。

今回、新田の過去は前以上に明確にされない。前作では殺しのテクニックは軍隊時代に習得したと思われる描写があったが、今回は海のシーン(荒木はヨットの上で殺しの交渉をする)で、戦争中の船の沈没を思い出すスチルの数カットだけ。

その点、戦争の後遺症を引きずる前作のキャラクターの方が私は好きだな。でもあのコインロッカーの金が爆弾騒ぎで見つかって手が出せなくなる展開もいい。
通行人が「また爆弾騒ぎだってよ」と言うけど、これは草加次郎事件のことなのだろうか。

面白かった。






ある殺し屋


日時 2022年8月16日
場所 TSUTAYA宅配レンタルDVD
監督 森 一生
製作 昭和42年(1967年)


ある男(市川雷蔵)が駅から降り立ち、埋め立て地のような場所にある古びたアパートの一部屋を借りる。そこへ女(野川由美子)がやってくる。
二人は女ケイコが無銭飲食をしたところを助けたところから始まった。
男、塩沢は小料理屋の主人だったが裏の顔は名うての殺し屋だった。
やくざの木村組の木村(小池朝雄)は部下の前田(成田三樹夫)に塩沢に殺しを頼んだが断られる。新興やくざの大和田が邪魔なのだ。
木村自らが出向き、塩沢に承知させる。殺しは成功した。
前田は木村抜きで大和田の残党が行う麻薬の取引の麻薬を横取りしようというものだった。
この仕事の為に現場の近くにアパートを借りたのだ。
しかし前田はケイコと組んでヤクを手に入れた後、塩沢を殺す計画だった。


ずっと以前に深夜にテレビ放送されて気になっていた映画。連続してだったか翌週だったかに「ある殺し屋の鍵」も放送されてこちらは途中から観た。ひょっとしたら「鍵」しか観てなかったかも知れないけど。

無表情の市川雷蔵が迫力満点。
今回、気がついたが、この小料理屋の主人がなぜ殺しのテクニックを持っているか。彼は戦争中(パイロットの服を着ている)に戦友と撮った写真を部屋に飾っている。そしてナレーションで一言「同期はみんな死んだ」という。

はっきりは説明されないけど、おそらくは彼は殺しの技術は軍隊で身につけたのだな。殺しのテクニックなどの技術が詳しいから案外中野学校とかで身につけたのかも知れない。
となると同時期に作られた「陸軍中野学校」の主人公が戦後、自分の仲間を死に追いやった国、国家、権力者に対して憎しみを抱き、殺し屋稼業に向かわせたのか。脚本は増村保造だからそう思っていたのかも知れない。

彼は金には執着がなく、後半のヤクの奪い合いも一応はやるものの、本気で金が欲しくてやってるようには思えない。
実際、逃げるときにぶちまけてしまったケイコや前田にあっさり渡してるし。(もっとも結局は二人とも受け取らずにそのままになるのだが)
戦後20数年、いまよりずっとずっと戦争は近かったのだなあ。

そしてこの映画、ヤクの奪取といかにして3人は集まったかが回想で描かれる。この時代にしては時制が順番ではないのが珍しくないか。

80分のプログラムピクチャだが、市川雷蔵はひたすらかっこいいし、(声も迫力があっていいのだな)「鍵」の方も観てみよう。






昭和の家事 おはぎをつくる


日時 2022年8月16日
場所 日本映画専門チャンネル録画
監督 時枝俊江
製作 1990年頃


日本映画専門チャンネルで放送された短編映画。35分ぐらい。
NHKのような明瞭なアナウンサーがナレーションをしていると思ったらやっぱりNHKの加賀美幸子アナである(もっともこの当時は退職していたかも知れない)

昭和30年代にモノクロでその頃の生活を記録した映画だと思って録画して、観てみたらカラー作品だった。画質からビデオぽっくなく、16mmフィルムっぽい。(画角は4:3)

小泉スズというばあさんが昔よくやっていたおはぎ作りを再現する。
言っておくけど普通のおばあちゃんである。
日本映画専門チャンネルのHP番組紹介によると
「『母の手仕事 日々の暮らしの記録』に出演する、明治43年生まれ、ごく普通の家庭の主婦として一生を生きた女性、小泉スズさんが日常的に行ってきた家事を、テーマ別に分けて紹介する記録映像」とある。
確かに録画はしなかったが、このほかにも「洗濯をする」「お正月の準備」など10本ぐらいはある。

要するに小豆をゆでて、皮をこして、砂糖を加え、煮詰めて餡を作り、もち米を炊いておはぎにする、という過程を小泉さんの家で行っている。
だから何だという映画(そもそも映画なのか)という映像なのだが、それなりに残す価値はあるのだろう。

他のシリーズは観なくてもいいかな。




サイボーグ009 怪獣戦争


日時 2022年8月16日
場所 東映チャンネル録画
監督 芹川有吾
製作 昭和42年(1967年)


海の中から恐竜が現れ、豪華客船が襲われた。そして船だけでなく、飛行機、そしてニューヨークも破壊される。これは恐竜が発する超音波によるものだ。そんなものを恐竜が持っているはずはない。
ブラックゴーストの復活を確信したギルモア博士はサイボーグたちを集める。007はイギリスから、002はアメリカから。今はバレリーナとして活躍している003を009は迎えに行ったが「もう戦いたくない」と断った。一旦は諦めた009だが帰りの飛行機に003は乗ってきた。
二人がギルモア博士の基地に帰るとき、交通事故にあい、乗っていたヘレンという少女を助け、ギルモア博士の基地に連れて行く。
ギルモア博士が開発した万能戦艦「ドルフィン号」に乗って出発する彼ら。しかし両親を恐竜に殺されたというヘレンも付いてきた。
ついに恐竜が現れた。超音波に対抗する兵器で戦おうとしたが、それは壊されていた。
そしてミサイルを装着したサメ、エイが襲ってくる。なんとか撃退し、恐竜の後をつける009たち。
そしてブラックゴーストの基地を発見した!


昨日に引き続き「サイボーグ009」の劇場版第2作。公開は1年後である。「怪獣戦争」というタイトルだけど別に怪獣は出てこない。
「ブラックゴーストの復活(あるいは逆襲)」の方がしっくりくるタイトルだが、ゴジラも「怪獣大戦争」とか「ウルトラQ」「ウルトラマン」の時代だから、便乗したタイトルなのだろう。

前作で「結局009、003、006、007の活躍が中心になる」と書いたけど、制作陣にもその反省があったのか今回は9人全員ドルフィン号で出発。それぞれ活躍する。
一番活躍がなさそうな001も観念動力で精神の力で瞬間移動する力を身につけている。
005が怪力だけだから、活躍が一番少ない。008も水中だけなのだが、009も007、006も水中で活躍する。海の中でも光線銃を撃つし、どうなってるんだ?

ブラックゴーストの方では「0010(ゼロゼロテン)から報告がきました!」とかやってるので、大人ならヘレンが「0010」だと気が付く。
そこはラストで明かすとかはなしで、60分の映画中、30分ちょっとで明かされる。

とにかくアクションシーン満載で話はさっぱり残らない。
いい意味でサイボーグ戦士の活躍が堪能できる作品だと思う。




サイボーグ009(4Kリマスター版)


日時 2022年8月15日
場所 東映チャンネル録画
監督 芹川有互
製作 昭和41年(1966年)


レーサーの島村ジョー(声・太田博之)はレース中に事故を起こした。しかしそれはブラックゴースト団によって起こされたものだった。
彼は拉致され、サイボーグに改造された。009と命名されたその時、それ以前に改造されたサイボーグたちが反乱を起こした。開発者のギルモア博士を人質に。
彼らと行動を共にする009。ブラックゴーストのジェット機を奪って逃走するも撃墜される。しかし追っ手の潜水艦を奪って009たちの目的地にたどり着いた。
つかの間の休息。しかしブラックゴーストの目的は戦争を起こし、それで儲けることだった。早速ある国とある国が戦争を始めた。
この戦争をやめさせるために009、003、006、007の4人は偵察に。しかし003がブラックゴーストに捕まってしまう。
それを追って009たちはブラックゴーストの基地に舞い戻った!


今年の4月に映画版「サイボーグ009」が東映チャンネルで放送。
その後、テレビシリーズが週に2本ずつ放送され、オープニングとエンディングの歌はよく覚えていたから懐かしくて1本みたらはまってしまい、結局26話全部見てしまった。なんか009がカッコいいんだよねえ。
アニメキャラに「カッコいい!」と思ったのは何年ぶり(いや初めて?)か。

それでお盆休みに録画してあった映画版を見てみた。
テレビが好評だったから映画版が作られたのではなく、映画が先でテレビアニメで枠があいたため、一度映画を作って基本設定などが出来ているから急遽テレビシリーズ化が決まったとか。
テレビは白黒で(別に家のテレビが白黒だったわけではなく、もともと白黒作品)主題歌が「赤いマフラ〜」という歌詞だが、映画版はカラーだったからこうなったらしい。

今回の映画は64分の中篇。東映マンガ祭り的番組での公開だったのだろう。しかしシネスコだからテレビのスタンダードより迫力あるし、4Kリマスターなので今回の放送では実に絵がきれい。

お話の方は前半30分がブラックゴースト団からの脱出、後半は003の救出とブラックゴースト壊滅の話。
テレビシリーズも009、003、006、007の4人がレギュラーで後は必要に応じて出てくる感じ。これが映画版の後半も003の救出に009、006、007が向かうので、2枚目ヒーローキャラと凸凹コンビのコメディリリーフキャラで作りやすかったのだろう。
そもそも9人だと多すぎるのだな。

ラストはブラックゴーストのボスをボスを倒すのだが、最後にボスが「俺はボスじゃない!」と言い出す。
そして登場するのがラスボスでこれが電子頭脳。
「私は人間の人を憎み戦争を始める心によって生み出されたのだ」という。

うん、昭和41年といえば、戦争が終わって21年。また冷戦真っ只中で核戦争の危機も常にあったし、戦争の恐怖というのはまだまだ今より根強かった。
そんな時代の空気、原作者の石森章太郎(当時)の思いでもあったのだろう。

声が聞き慣れたテレビシリーズとちょっと違う。009は太田博之で003はジュディオング。006は藤村有弘。
もう1本の「怪獣戦争」も是非観よう。





明日を創る人々


日時 2022年8月14日12:30〜
場所 国立映画アーカイブ・小ホール(地下)
監督 山本嘉次郎、黒澤明、関川秀雄
製作 昭和21年(1946年)


岡本家の父は鉄鋼会社のサラリーマン(総務課長のような立場)、長女(中北千枝子)は映画会社でスクリプター、次女は劇場でダンサーをしている。
そして下宿人の堀さんは鉄道会社勤務。この鉄道会社も労働組合運動が盛んで「会社は労働者、ひいては安全運行を無視している」と訴える。
映画会社でも組合運動が盛んになってきて、鉄道会社の組合に応援に行ったりしている。
父は組合運動など「道楽」といい、それに打ち込む長女のことは苦々しく思っていた。
次女の勤める劇場でもダンサーの一人が過労で倒れたが、支配人(志村喬)は過労のダンサーを首にしようとする。それに反対する仲間のダンサーは首を撤回させようとして舞台にあがるのを拒否。しかし「彼女のことは考えるからとりあえず今は舞台に出てくれ」と言われ今日は舞台に出たが結局は首になった。
父の勤める鉄鋼会社も大量首切りを行った。戦争が終わって鉄鋼会社も軍需の需要がなくなってしまったのだ。今まで会社に従ってきた父親だが、やがては首切り反対デモに参加するようになる。
だがまだまだ闘争の日々は続く。


黒澤明が自身のフィルモグラフィから削除している映画でタイトルだけは聞いていた。今回山本嘉次郎生誕120年特集で(これも先月までやっていた東宝90周年と連動してるのかも知れない)上映。
要するに東宝労働組合のPR映画のなので、黒澤としては「手伝っただけで自分から参加した企画ではないので」みたいな気分なのだろう。

それにしても日本の労働環境というものはこの映画から70数年経っているのにまるで変わってない。
会社を信じて自分の首切りはないと信じている父。
そして撮影所でも労働運動に疑問が出てくる。照明助手が「いい映画を作りたいけど、それにはまず生活の保証がなきゃあ」という。助監督が「会社の為に働くと思うからグチも出るんだ。カメラの向こうにいるお客さんのことを考えればいい映画を作る気になる」という。

今年、榊英雄監督のセクハラ問題から映画界のパワハラ問題にも波及し始めたが、その中でも上記のような理屈が出てくる。
またダンサーの妹も支配人に「君たちは芸術家じゃないか。その辺の燭光とは違うんだから、一緒のことをしたらおかしいだろ?」と諭される。
はて、この理屈、最近もAV業界とか音楽業界でも聞いたぞ。
でも実際は末端のダンサーなど労働者と変わらない。

最後には父親も首を切られ、本社に向けてのデモに参加。そのデモを見かけ、ダンサーの次女は父に手を振る。
長女は集会で組合員に団結を呼びかける。

映画全体ではとにかく「団結!」という単語がよく出てくる。
「すでに資本家は団結して労働者を軽んじている」とか「労働者の唯一の武器は団結だ!」と訴える。

現在では派遣会社による労働者も増え、劇中風に言えば「資本家の策略によって労働者が分断されている」という気がする。
戦後の経済成長で労働環境もよくなったとは思う。しかしバブルの崩壊とともに訪れた不景気は「失われた30年」と言われ労働環境の悪化を招いて、政治は資本家の言いなりになり、ますます貧富の差が開いている。

この映画が夢見た明るい未来は、日本人は一旦は手にしたがまた奪われた。
なんとか取り戻さねばならない。

余談だが、藤田進、高峰秀子が撮影所の俳優役で出演。
東宝撮影所でも撮影されており、スタジオの外観が写ってるのが興味深い。







遠くへ、もっと遠くへ


日時 2022年8月13日20:15〜
場所 新宿k'scinema
監督 いまおかしんじ


人妻の小夜子(新藤まなみ)は夫の結婚生活にすれ違いがあり、離婚を考えていた。離婚を切り出す前に住む場所を確保しようと不動産屋を訪ねる。そこで知り合った洋平(吉村界人)。洋平も3年前に妻に逃げられていた。妻に逃げられて後に新しい男の部屋に行ってみたが、すでに出て行ったあとだった。男の話では洋平と別れたことを後悔していたという。
小夜子は家具のコーディネーターの仕事をしていたが、売れないこともある。夫との夕食中に「あたしの仕事ってなんなんだろう?」とついグチを言ってしまう。「じゃ仕事辞めれば?」と言われ喧嘩になる。夫から「別れよう。今ならお互いやり直せる。俺は家庭に入ってくれる女性がいい」と言い出した。
先手を打たれた小夜子はショックを受け、洋平の部屋に行く。
体を求めてきた洋平だが、「だめ。あなたはまだ前の妻のことを引きずっている」と言われてしまう。洋平と小夜子は洋平が元妻を吹っ切るために会いに行くことにする。
新しい男に連絡が一度あり、栃木県の真岡にいるという。
そのラーメン屋に行ってみたが、彼女はいなかった。店主の話では今は北海道にいるらしい。二人は北海道へ。


いまおかしんじ監督作品。脚本は今回は井土紀州さん。(「あいたくて〜
」はいまおかしんじ)
北海道に行くっていうのは聞いていたし、ポスタービジュアルも海をバックにして男が女性をおんぶしている。だから北海道でのロードムービーかと思っていたら、なかなか北海道へは行かない。

洋平が元妻に会いに行く、というので「やっと北海道か!」と思ったが栃木県の真岡。ここから車で北海道まで行くのかと思ったら、(そのシーンはなかったけど)北海道に着いてからは車が変わってるから飛行機で行ってレンタカーなのだろう。

で、元妻が働いていた野菜パックの工場に行くとそこも辞めている。同僚がこそっと今働いている場所を教えてくれる。もうこの段階で風俗か水商売と解るのである。さっさと観客も元妻に会いたいのに、翌日に持ち越されて、北海道出身の小夜子は実家を訪ねる。

この小夜子が実家を訪ねて母親に離婚を報告するシーンがあるので、洋平が元妻を訪ねるのに間が空くのである。
なんかこの辺が話がもたつく。

ちなみにこの小夜子の実家としてロケに使われた家はいまおか監督の学生時代の友人の実家だそうです。北海道の友人の実家でロケした話は聞いていたのですが、ぜんぜんイメージと違って驚いた。
ロケ地の家は牧草地帯みたいな感じで「ザ・北海道!」といういいロケ地。こっちが勝手に札幌の住宅街の普通の家だと思っていたので驚いた。

で結局洋平の元妻はソープ嬢で今は子供もいる(男とは別れている)。
最後は小夜子と出来るという予定調和の終わり方。
ホテルでセックスして終わりかと思ったら、「樺太の真岡に行きたい」と小夜子が言い出す。おじいちゃんが真岡出身だからとか。

いやいやもうだらだらと続いて締まりがない。
仕舞いには飽きた。100分以上は長いよ。

あと洋平役の吉村界人。髪の毛はボサボサだし、スーツは着慣れてない感じだし、とても宅建取るためにがんばったから妻を掘っておいて逃げられた人には見えないんだよね。

期待していた分、がっかりも多かった。






あいたくて あいたくて あいたくて


日時 2022年8月13日18:20〜
場所 新宿k's cinema
監督 いまおかしんじ


淳子(丸純子)は一人でタイ料理店を営み、このたび通販で手作りのテーブルを購入した。淳子は1年前に夫をガンで亡くし、今は一人で切り盛りしていた。
テーブルにはおまけで手作りの人形が入っていたが壊れていた。そのことで相手にメールすると「すぐに新しいのを送ります!」と言ってきた。かえってクドくて淳子はイヤになる。「あなたはまるで宮沢賢治の『ツェねずみ』のようです」と返信。それがきっかけで家具職人の祐司(浜田学)宮沢賢治を読むようになる。
淳子には大学生の娘がいて、その娘は彼氏と同棲を始めると言って出て行った。祐司は昨年離婚しており、その元妻(川上なな実)ともつかず離れずになっていた。その妻から連絡があって言ってみたら「今度この男と結婚する。だからあたしとのつきあい方を説明してあげて」と言われる。
淳子の娘は彼氏が「酒飲むとおまえ呼ばわりしてくる。AVのDVDを1000枚も持っていた」と言って帰ってきた。
祐司の元妻も「新しい夫が風俗の名刺を持っていた」とグチを言いにきた。


いまおかしんじ監督新作。
8月には3本公開で本日、2本同時にケイズシネマで公開。

正直、ちょっとグズグズだなあ。なんかこう、無理に話を作ってやらされてる感がするのだよ。
上映後の舞台挨拶では「丸純子さんで1本撮ろう」という企画だったそうだが、やっぱりねえ。もちろん丸さんはいい女優さんなのだが、主役となるととりあえず若くて美人の方が画面映えがする。
おばちゃん観ていても楽しくないのである。どうせなら若い女の子が出てきて脱いでくれた方が見栄えする。
「いくつになっても男と女」ぐらいに振り切ればまた違ったものかも知れないが。

これが20代後半の女優で妹が大学生、だったら同じシナリオでもまた違った印象を持ったかも知れない。

淳子の娘は彼と別れた、と言ってきて、最後に土下座して謝るのだが、その際に「オナニーするときは私の写真でして。別の女性でオナニーするのはすれもう浮気だから!」というシーンは笑った。

祐司の方も妻の新しい夫も家を追い出されて仕方なくやってきて、たまたま出会った淳子の娘の彼氏と3人で一晩過ごす展開はおもしろかった。

あとは淳子が死んだ夫が残したタレのレシピがどうしても解らない。開店の時のDVDで隠し味が醤油だったと解る展開はまあ面白かったけど。

ラスト、祐司と淳子は結局出会って、キスをする。
なんか予定調和で面白くない。
結局出会わずに終わってもよかっと思う。






破壊!


日時 2022年8月7日
場所 Blu-ray
監督 ピーター・ハイアムズ
製作 1973年(日本公開1974年)


一人の女性がオフィスビルにある歯科医に入っていく。彼女は服を脱ぎだし椅子に座る。歯医者はその体にむしゃぶりついた。
女が出ると二人の男が歯医者に入っていく。刑事のマイケル(エリオット・グールド)とパトリック(ロバート・ブレイク)だ。彼女、ジャッキーは売春婦で、定期的に通っていたのだ。ジャッキーの連絡先を聞き出したマイケルたちは客のふりをしてジャッキーの元に向かった。彼女は逮捕。顧客リストも押収した。
次の件は深夜にあるバーでいかがわしいことをしているという情報があり、張り込んだ。そこはゲイバーで女装やゲイでいっぱい。怪しまれたマイケルたちは客と喧嘩になってしまった。
ジャッキーの方は結局証拠不十分で不起訴。押収した顧客リストもすり替えられた。どうやら黒幕と警察はつながっているようだ。
あるポルノショップで奥の部屋でマッサージと称していかがわしいことをやっているらしい。早速向かったマイケルたち。逮捕した女は注射痕があり、ヤクもやっている。ポルノショップの店長の家を令状もないのに家宅捜索し、ヤクと売人に出くわす。逃げ出した売人を追ったマイケルたちだが、スーパーに逃げ込まれ銃撃戦になったが結局売人の一人は逃した。
マイケルたちは「公園に変質者が出る」というのでしばらく張り込むという仕事を押しつけられた。黒幕はリソーという男だ。
マイケルとパトリックはリソーを徹底的に尾行し、追いつめる。


1970年代に刑事映画ブームがあったが、(「ブリット」「フレンチコネクション」の成功から)その1本。そして「ジョーズ」「タワーリングインフェルノ」「スター・ウォーズ」が登場し、このジャンルは廃る。
この映画、封切り時に見ている。名古屋のシネラマ名古屋の一つ下にあったセントラル劇場(という名前だったと思う)。ちょっと小じんまりとしたロードショー館で、階段状だったシネラマ名古屋に比べれば見づらく私は好きではなかった。
こんな映画とは関係ない話だけど、この映画を見に行ったわけではなく、同時上映だった「007サンダーボール作戦」が目当てだったわけで、まるで関心がなかった。

それでも異様に心に残ったのは冒頭の歯医者のシーン。女性が服を脱ぎだし椅子に座って大股を開いて医者が多い被さるというシーン。小学5年生(いや6年か)には刺激が強かった。このシーンとポルノショップのマッサージルームに入る時マイケルがおどけて両手両足を広げるシーン、ラストシーンは覚えていた。
本来の中盤の見せ場のスーパーでの銃撃戦などまるで覚えていなかった。

今見ると「世の中には必要なんだろうけど報われることのない仕事をやらされるむなしさ」を描いた映画なんだな。
マイケルは「泥棒が入らないような警備を巡査時代はした」などとトイレの張り込みをしながらグチをこぼす。
そして売春婦を逮捕しても不起訴、ヤクの売人を追い込んでも警官がミスで逃がす、大物を追いつめても結局は大した罪にならない。

ラスト、入院したリソーの部屋でヤクの取引が行われていたと察知し、追い込む。追い込んだがリソーに「ヤクが部屋にあっただけだ。ヤクの不法所持だけでは1年の刑だな」とせせら笑われる。
そこでマイケルのアップのストップモーション。
職安で「どうして辞めた?」「変化が欲しかった」と答える台詞だけが流れる。

なんか日本映画の最後にありそうなラストカットだけど、これがいいんだなあ。リソーを撃ち殺したりはしない。
アメリカンニューシネマの流れなのか。
あの仕事が報われない空しさ、というものは多くの人が共感する部分があるのだろうなあ。だからこの映画には少ないけどファンがついている。








ゴジラ(1977年イタリア ルイジ・コッジ版)


日時 2022年8月6日
監督 ルイジ・コッジ
製作 1977年(昭和52年)


レイモンド・バー出演の「怪獣王ゴジラ」にさらにカットを追加したイタリア公開版。77年のアメリカ「キングコング」の上映の頃に便乗企画で作られた再編集版らしい。

ベースは「怪獣王ゴジラ」。
冒頭クレジットが付くが、雲(というか煙)をバックに着色された画面全体にオリジナル版として日本の俳優やスタッフのクレジット、さらにレイモンド・バー版としてのクレジット、さらにイタリア版のスタッフクレジット。

それが終わって「1945年8月6日広島」の原爆投下が写される。んで原爆投下の直後の映像や、原爆投下前の映像(と言っても東京ぽかったが)、そして空襲で被害を受けた町並みの空撮が出てくる(これもヨーロッパの町並みっぽい。ベルリンとか??)。
これがやたら長い。ここまでで7、8分使ってると思う。
ここから瓦礫の下敷きになったレイモンンド・バーが登場し物語が始まる。

その後は多少のシーンの入れ替えはあるけど、追加カットを加えてとにかく派手にしている。
ゴジラが東京湾に登場し、佐原健二さんの乗った遊覧船がゴジラに攻撃される。この沈没していく船のカットは何の映画かはわからないが、全く別の船(タイタニックみたいな豪華客船。たぶん戦争映画ではないか)。

そして品川上陸で、東海道線とぶつかるシーンでは後続に蒸気機関車がいて、玉突き衝突を起こすという展開。
ほかにもゴジラの熱線の後には黒こげの死体があったり(それこそ広島の映像か?)を入れたりしてくる。
ゴジラが勝ち鬨橋を持ち上げるカットではその続きとして洪水が起こり、地下鉄構内に水が入ってくる。この地下鉄のカットは明らかに「ゴジラの逆襲」である。

最後、芹沢博士と尾形が海に入るとタコと鮫の格闘シーンが無理矢理挿入される。ここはTwitterとかで観たことがあった。
そしてラストの山根博士の名せりふはなく、原水爆実験のカットが重ねられ、「FINE?」とでて終わる。

ヘドラの「もう1匹?」と思わせる終わり方である。

まあイタリアで戦争映画とか戦争ニュース映画の破壊カットを足しまくってつながりの悪さをものともせずに作った映画、ということなら、まあ誰でも思いつく。
しかしこの映画のキモはカラライズなのだ。

もちろん21世紀になってからのデジタルカラライズとは違う。
映画の創世記、白黒サイレントから次のステップに行こうとしたときに目指したのはトーキーとカラー化だった。

それこそサイレントの時代にもフィルムに直接着色してカラー化を目指したが、それと同じことをしてるのだ!
画面の一部にカラーのフィルターをかけて一部を着色化する。
色は赤、黄、青、緑の主にこの4色。
これが燃える大東京のカットに赤いフィルターをかけると本当にカラーで炎で燃えてるように見えるのだ!

77年ですよ、1910年頃ではないですよ。
こんなことを思いつく奴も思いつく奴だが、ゴーサインを出した奴も出した奴だし、怒り出さなかった観客も観客だ。

とにかく「すごいもの観たなあ」という感慨でいっぱいになった。






甲州街道から愛を込めて


日時 2022年8月5日18:45〜
場所 シネマート新宿2
監督 いまおかしんじ


4人で車で東京から甲府に向かう4人組。元ドラマーでコンビニ店員のタイチ、その彼女のネットアイドルに夢中なルミ(和田瞳)、バンドメンバーの喧嘩して解散状態のリリコ(有里まりな)、その親友のマナミ(古瀬リナオ)。
ルミとタイチがカラオケに行ったときに財布を忘れ、それを取りに来た時にリリコとマナミが使っていたのだが、タイチが「お前等俺の財布盗っただろ?」と言われて喧嘩になる。その数時間前にマナミは男と別れていた。マナミはメンヘラでそのことが原因で別れを切り出された。
マナミは高校時代に好きだった先輩に会いに行って告白したいという。
タイチたちと再会していたがルミが「送っていってあげようよ」と言い出し、甲府まで行くことに。


いまおかしんじ監督新作。
先月の「ヘタな二人の恋の話」からキングレコードからの連続する「マヨナカキネマ」のシリーズの1本。まあレジェンドが下請けで制作する形で「ラブ&エロス」と同じである。いまおかさんの監督作品としては「にじいろトリップ」以来か。

リリコとタイチはミュージシャン同士だが、決してうまく行ってない。
タイチは前にユニットを組んでいた彼女だけがデビューできたし、その彼女だって2、3曲出したらおしまいだった。リリコはバンドメンバーと解散状態。
「夢諦めるなら早い方がいいぞ。そっからの人生の方が長いから」のタイチのせりふが染みる。

マナミは前に進むために好きだった男に告白しようとする。
この昔好きだった男に会いに行くという展開が「なんか好きだなあ。どっかでもあった話だけど」と思ってしばらくして思い出した。「オレとアイツの集金旅行」だった。

マナミの好きだった相手との再会も終わり、ドラマは終わるかに思えたところでリリコの離婚した父親との再会。
父親もミュージシャンでたまたま甲府のライブハウス(客は10名いるかいないか)に出演していた。
このライブを見に行くのだが、父親は途中で「休憩にします」と言って、さっとリリコのテーブルに来る。
ここで「気づかずにすれ違うだけ」みたいなことはせずに、さっとやってきて「久しぶりだな」という展開が逆に新しくてよかった。
この父親役が横浜銀蠅の翔。

マナミとリリコがライブが終わって東京に帰るための終電に駅に向かって走り出す。その近くでタイチが車で待っている。
当然、終電に乗り過ごし、タイチが「乗ってくか?」という展開なるかと思ったら、そうはならない。マナミとリリコはちゃんと電車に乗り帰って行く。
この予定調和をはずす展開が妙に心地いい。
人生、逆にこんなものです。

タイチの彼女が途中で帰ってしまいドラマから抜けてしまうのも意外だった。またてっきり再会すると思っていたので。
なんか諸々「予定調和」からはずす展開に連続で心地よい。

その意味ではマナミがたばこを吸うときに2本同時にくわえる癖があるのだが、これが由来は説明されない。「父親もそういう癖があったのかな」と思ったが、これはこれで説明なしもよかったのかも知れない。