人間に賭けるな日時 2022年10月30日 場所 amazon prime video 監督 前田満州男 製作 昭和39年(1964年) 外資系の会社に勤める坂崎(藤村有宏)は競輪好き。レースは普段は弱い飯田(川地民夫)が今日に限って1着になった。そのため坂崎は15万円の負けをしたが、これは顧客から集金したお金で会社に納める金だった。 帰りの白タクで一緒になった女性小松妙子(渡辺美佐子)から「明日も飯田は勝つよ」と言われる。 翌日の日曜日、坂崎は半信半疑のまま坂崎にも賭けた。結果、30万円を儲け、会社はクビにならずに済んだ。 坂崎は妙子に興味を持ち、彼女が乗ったタクシーのナンバーを控え、その行き先を調べた。彼女はヤクザの組長・酒井松吉の妻だった。そのヤクザは今は逮捕されていた。誰かのたれ込みがあったらしい。 飯田は力のある選手にも関わらず、松吉の命令で八百長で負けていたのだ。飯田を選手として活躍させたい妙子は松吉を逮捕させていたのだ。 しかし松吉の姪・美代子(結城美栄子)が飯田に惚れていて、競輪も辞め、ヤクザとも縁を切らせようとしていた。 坂崎は出張で大阪に行ったときに妙子は飯田も大阪に行くのと出くわす。 坂崎は今は競輪を辞めたが、逆に妙子に興味を持っていた。 大阪での勝負ではまた飯田は負けた。妙子は飯田に勝負させたくて賭け続ける。 先日の「人間狩り」に続いて日活作品。意外な拾い物もあったりするので、鑑賞。タイトルだけは聞いたことがあったと思う。タイトルを聞いても内容が想像できない映画だったが、競輪が題材だったのか。 冒頭、英語で外国人が「日本では人間に賭けるんだって?八百長が起きないのか?」「ほとんどない」「それほど信じられるとは日本人すごい」みたいな会話がオフで入る。 藤村有宏のサラリーマンが競輪に賭けて破滅していく映画かと思ったら、そうではない。 主役はあくまで妙子の方。 妙子は結局若い飯田に惚れていて、選手として素質のある飯田に活躍させたい。しかし松吉との関係で言うことを聞かざるを得なくて八百長をしていたのだ。 その飯田を解き放ちたかったが、飯田は若い美代子の方がいいし、しがらみを断てない。 結局松吉(二本柳寛)の保釈出てきて妙子を「お前がたれ込んだな」と攻める。妙子は最後は松吉刺す、という感じで物語は終わる。 という感じで坂崎は観察者になってしまい、主役ではなくなる。 サラリーマンが破滅していく映画を冒頭で期待してしまったので、映画が進むにつれ興味を無くしてしまった。 藤村有宏が普段のコメディリリーフを封印して出演。 ひょっとしたら長門裕之あたりの代役だったかも知れないが、藤村ファンとしては今までに見たことのない役柄でそこは興味深かった。 また映画の内容とは関係ないが、冒頭で白タクから降りた坂崎が歩くのは紀伊國屋書店新宿店。1階の風景が今とは違い、そこは興味深かった。 M日時 2022年月日 場所 DVD 監督 フリッツ・ラング 製作 1931年(昭和6年) ベルリンでは幼女殺人事件が頻発していた。警察の賢明な捜査にも関わらず全く犯人は捕まらない。市民たちも疑心暗鬼。女の子に時間を聞かれた男がそれを教えてあげただけで「こいつは怪しい」と通行人たちからつるし上げを食う。 警察も犯人がいそうな場所を手入れし、泥棒などの犯罪者はあおりを食って逮捕され根をあげていた。そこで泥棒たちの元締めが集まって「自分たちで犯人を捕まえよう」と会議を開く。怪しまれないようホームレスを集めて担当の地区を決め監視させる。 一方警察も精神病院などに関わった者のリストを作成。現在退院している者を一人一人洗い出す。 風船売りをしている盲目の男が最後の被害者の少女が男(ピーター・ローレ)に風船をかってもらったことを記憶していた。そのときに男は口笛を吹いていた。その口笛をまた聞いて確信する。仲間が男を尾行し見失わないようにミカンの皮を道に捨てたときに「おい、誰かが踏んだらあぶないじゃないか!」と背中を叩くふりをして背中にチョークで「M」の印をつける。 あるビルに入ったのを確認した尾行した男はボスに連絡。警察には連絡せずに犯罪者集団が閉館したビルに侵入し、ビル中を男を探す。やがて見つかった男は犯罪者集団に拉致された。 一方警察も精神患者リストからハンス・ベッケルトという男が現場に押していたタバコの吸い殻などから容疑者とする。 犯罪者集団は男・ハンスを廃墟に連れ込み、人民裁判を行った。 コスミック出版の廉価版DVDセットに入っていた1本。いや驚いた。 幼女連続殺人というサイコキラーで現代の話かと思うけど、1931年にもこういう奴はいたんだ。(ってことはもっと昔にも幼女をねらう殺人事件とかはあったのだろう) 前半は刑事物っぽく進行。市民は疑心暗鬼でかえって町は不安定。警察も避難の嵐なのだが、市長が「なんとかしろ!」と警察にクレームの電話を入れる。 そうすると警察署長が「たとえば現場に落ちていたお菓子の包み紙があったとします。現場から半径1Kmの店を全部あたり、なければ半径2Kmに範囲を広げます。しかし時間がたてば経つほど誰も覚えていない」と警察も必死にやっていると訴える。 このあたりは「警視庁物語」も思わせるリアルさだ。 この路線でいくのかと思ったらそうはならない。 犯罪者集団が自警団を使って犯人をあばくという展開。一瞬はあ?となるが、まあ許そう。 と思ったが、これが作劇上はとんでもない仕掛けなのだね。 ビルに追い込まれたハンス。倉庫に逃げたはいいが外から鍵をかけられてしまう。なんとか逃げだそうと必死だが、結局は犯罪者集団に捕まる。 そこで一挙にリンチかと思いきや、疑似裁判が行われるのだ! 「言語道断!死刑だ」とする犯罪者集団。しかしハンスは「俺は病気なんだ。時々どうしようもなくなる。そして記憶がなくなる」と病気で仕方なかったと主張。一応弁護人がいて「病気の者を処罰させることは出来ません」と弁護。 そうすると「子供を殺された母親の気持ちになってみろ!」と反論。 結局、警察がこの場に踏み込んでハンスは逮捕される。 そして裁判が始まったシーンで映画は終わる。 「ここで終わり?」と思ったが、安易に結論は出せないのだろう。 とにかく現代でも異常な犯罪者が出てくると精神鑑定がどうのと「犯罪者の人権ばかりいうのか!」「殺された遺族の身になって考えろ!」との意見が飛び交う。 そういうのは現代的でもなんでもなく、昭和6年からそうなのだ。 そして(多分)今後も永遠に論争される課題なのだろう。 本作の冒頭でも女の子が持っていたボールが転がり、風船が空中にあがっていくだけで女の子が殺されたことを暗示させる。 このあたりの控えめな演出がたまらんなあ。 ヒッチコックに影響を与えたともいえるフリッツ・ラング。最近は語られることも少なくなったが、まだまだ話題になってもいい監督だと改めて確信した。 グッドバイ、バッドマガジンズ日時 2022年10月29日20:40〜 場所 テアトル新宿 監督 横山翔一 大学時代はミステリ研に所属し、サブカル雑誌のバックナンバーを古本屋で買うほどのファンだった森詩織は先輩の紹介で、そのサブカル誌の会社に就職できた。「取り合えずはエロ本の編集室で」と言われて出社したが、出社当日にあこがれのサブカル誌の休刊を聞かされた。 エロ本などは全く無縁だった詩織。最初は見本印刷のシュレッダーからやらされたが、数ヶ月後、あるページを任される。女性編集長の桂木、AV女優出身のライターのハルなどのエロに関わる女性の影響を受け、なじんでいく。 エロ本の部数減少ため、営業部から何か対案を出せ、と言われて編集局が出した結論が「女性向けのエロ雑誌」創刊。しかし2号で撃沈。 そんな中、エロ雑誌の付録DVDにモザイクのかけ忘れ事件が発生する。回収できたので、警察沙汰は避けられたが、社内でAV撮影することに。 社員は次々とやめていき、独立した者も失敗した。 詩織は「人は何のためにセックスするのか?」の疑問が頭から離れない。 「ハケンアニメ」のエロ本版、みたいな紹介のされかたをしていたので、興味を持って鑑賞。1週間レイト、テアトル新宿のみの公開。日活が配給だからそれなりの回収はあるんだろうけど。 大蔵のピンク映画「新橋探偵物語」や「強がりカポナータ」)を数本撮った横山監督作だ。 う〜ん、話は面白いのだが、どうもうまくいっていない。 理由はいくつかある。 1、彼らの作っている雑誌、DVDがはっきりと解らない。 R18指定を避けるためだったのかも知れないが、彼らの作っているエロ本がよく解らない。エロ本は解るのだが、コンビニでのエロ雑誌もよく見たことはないし、今はどの程度のエロさなのかがよくわからない。 詩織が書かされるページのキャプションもどんな写真につけているのかが解らない。 だから直す前と直した後の解らないのだな。 2、女性向けエロ雑誌とはどのような内容だったのか?「an・an」のセックス特集みたいなものだったのか?1号の表紙が出てきたが、あの暗さではどうも素人の私が見ても売れなさそうである。 隣で作っている「BL誌」の方がよほど「女性向けエロ雑誌」だと思う。 3、DVDのモザイク消し忘れ事件、割とあっさりと「社内でビデオ撮影」で終わりとは。雑誌の回収の大変さとかもっと画にしたほうが映画が盛り上がると思う。 4、はっきり言って名前と顔を知ってる役者はAVメーカーの草野康太だけ。役名で「○○さん金を横領している」「○○さんが辞めた」と言われてもよくわからなくなる。 5、詩織がすぐに溶け込んでいる。入社して数ヶ月で後輩が入ってきて自分が言われたことを先輩としてやっている。どこで吹っ切れたんだ? 6、「どうしてセックスするのか」と知りたくて先輩とホテルに行くのだが、そこで先輩の奥さんが出てきてナイフで首を切るのは唐突すぎる。 そんなかんなで面白くなりそうだったが、中途半端な予算のせいか、演出家の「エロ本みんな知ってるよね?」の思いこみのせいか説明不足の映画になった感は否めない。 惜しい。 空のない世界から日時 2022年10月23日13:15〜 場所 シネリーブル池袋・スクリーン1 監督 小澤和義 麻衣香(兒玉揺)は妊娠していたが、夫のDVから逃れあるラブホテルの清掃員募集に駆け込んだ。 数年後、麻衣香が生んだ女の子・さくらは6歳に成長していた。が学校には行っていない。ホテルの店長北岡(窪塚俊介)とベトナム人のチャン君(上村侑)と住み込みで働いていた。 たちんぼの女性、アゲハ(佐藤江梨子)が毎回「自動販売機が壊れている!」と文句を言ってきて麻衣香はひたすら謝るばかり。 近所のスーパーのおばちゃん(根岸季衣)は何かとよくしてくれるが、チャン君にはいい感情を持ってないようだ。 ある日、オーナー(小沢仁志)が「ホテルもガタがきたから取り壊す」と一方的に通知がきた。このままでは住むところがなくなってしまう。 その上チャン君は自転車泥棒の疑いをかけられ、逃走。アゲハも客に乱暴されたことがきっかけでホテルで働くようになる。 麻衣香はアゲハに事情を話す。DVの夫から逃げてきてここで子供を産み、さくらの出生届をしていないという。アゲハは実はもと市役所の職員で戸籍がなくても何とかなる、と教えてくれた。 脚本が梶原阿貴さんということで鑑賞。上映時間は67分。短い。都内ではシネ・リーブル池袋のみで上映。 「夜明けまでバス停で」と同じく「追いつめられた女性」がテーマである。 途中まで文句ばっかり言っていて敵対していたアゲハが「先に住民票をとるとかの方法があるよ」と言ったことであっさり話の方向が転換する。 「無知は恥ね」と麻衣香はいう。そしてアゲハも「助けてって言う言葉を伝家の宝刀にしちゃだめ。もっと早くから言わなきゃ」という。 結局テーマをせりふで言い尽くしてしまい、そこが映画的にはひねりがほしいところ。 こういう無国籍問題を考えるシンポジウムのテキストにはなるんだろうけど。 そして麻衣香は夫と離婚し、さくらを学校に行かせる決意をして終わる。 なんかハッピーエンドに見えるけど実は問題は何も解決していない。 夫が離婚に応じてくれるか不透明だし、何よりホテルが取り壊されて住む場所も仕事も無くなる。しかし近所のおばちゃんを始め近所の人が手助けしてくれるかも知れない。 そういう気配だけはあるけど、何もかも未知数。でも麻衣香が一歩を踏み出したことが重要なのだ。 あとベトナム人の青年。これも自転車泥棒の嫌疑がかけられ、しかも近所の養豚場から豚を盗んだ疑いもある。彼もこのまま日本に住めるかどうか。でも日本語の試験には受かったと言うこところで終わったから、何かしらの希望はあるかも知れない。 あとホテルの店長もゲイと言っているけど彼もどうなるのか。 映画は今後の問題点を残しつつ、ここで終わる。まだまだまだまだ生きづらい国である、日本は。 人間狩り日時 2022年10月22日 場所 amazon prime video 監督 松尾昭典 製作 昭和37年(1962年) 今日もまた犯罪者が裁判で無罪になった。物証がなく、自白のみで有罪とされなかったのだ。その事件を担当したのは小田切刑事(長門裕之)。彼は犯罪を憎んでいた。それは彼の母親が強盗に殺害された過去を持つからだった。 ある日、同期の桂木(梅野泰晴)が田口(小沢栄太郎)を逮捕した。容疑は暴行傷害だったが、田口は大物で手下が自首してきた。小田切は怒りに燃え、田口は「そんなに逮捕したいのなら一つ教えてやろう。俺は15年前に泥棒で入った家のばあさんを殺した。殺したのは一緒に入った房井だ。でもこの事件はもう時効だよ」とうそぶく。 その事件は確かにあった。しかし日時を確認すると時効まであと36時間あることが解った。 小田切はその房井という男を追った。田口の話では事件の頃は品川にすんでいたという。品川で聞き込みを始めた。すると房井を覚えている人がいた。青砥に引っ越したと聞き、青砥に向かう。そこで訪ねてみたが、房井を知っている婆さんは今熱海に旅行中という。熱海に向かう小田切。その婆さん(北林谷栄)の話では房井は再婚して赤羽で家を買ったという。 赤羽に行くとその家には別の夫婦が住んでいた。斡旋屋で聞き込むと房井は今は家を売って町屋にいるという。 町屋に行き、房井の家を見つけた。小田切は張り込みを始める。 先月だったかシネマヴェーラあたりで上映され、Twitterのタイムラインで話題になっていた映画。金欠で見逃したが、アマゾンプライムで見放題にあったので鑑賞。(最近アマプラには日活映画は多いようだ) 時効を迎えるといっても時効までに逮捕すればいいものではなく、時効までに起訴まで持ち込まねばならないらしいので、刑事物で時効直前に逮捕!みたいなものがあるが、そうではないらしい。 その辺の細かいところはつっこまない。 前半は「警視庁物語」のように地道に房井という男の足取りを追っていく。わざわざ旅行先まで熱海に行くけど普通なら帰ってくるのを待つよな。 で、町屋の長屋に住んでいることが解ったが、ここからは物語のテンポが変わる。 大坂志郎演じる房井は戦後のどさくさの時に泥棒に入ってつい家人を殺してしまったが根っからの悪人でもない。今はつつましく暮らしている。 さらに小田切の恋人は彼がかつて死刑囚にした男の元の情婦。 彼女はやはり刑事とつきあうのはどうしても前の男とのあれこれが出てきてしまうので、別れて大阪に行ってやり直そうとしている。 後半はこの女と別れる別れないでもたもたしてくる。 そして房井は家族に人殺しをしたと打ち明ける。長男(後妻の連れ子)は近く部長の娘と結婚の予定があり、自首してはだめだと言い出す。 桂木たち周りの刑事も家庭の事情を知っていて「再犯の恐れはなさそうだし見逃すか」という空気になっているが、小田切は「殺人犯は殺人犯だ!」的になって逮捕にこだわる。 結局は「房井を許すか許さないか」とか「恋人の過去を許すか許さないか」という方向に話が行ってしまう。 前半が追いかけるサスペンスがあっただけに後半で人情噺にされてしまうとこちらとしては期待していたものと違って戸惑ってしまった。 あと小田切と組む刑事が「前の事件で犯人と対決したとき、怖くなってしまった」から異動してきたやる気のない刑事。 対照的で面白いキャラクターだがイマイチ生かし切れていなくて残念。 夜明けまでバス停で日時 2022年10月16日16:15〜 場所 新宿k's cinema 監督 高橋伴明 北林三知子(板谷由美)はアクセサリーを作りながら、夜は居酒屋で住み込みのバイトをしていた。女店長の千晴(大西礼芳)はマネージャー(三浦貴大)と出来ていて、このマネージャーがいやな奴。 そうは言ってもバイト仲間となんとかやっていた。しかし2020年春、コロナ禍が日本を襲った。居酒屋は緊急事態宣言によりしばらく営業中止。三知子はバイトを首になり次の仕事だった介護施設もコロナにより突然採用中止。実家とも折り合いが悪く、結局ホームレスにならざるを得なかった。 公園でかつては中曽根総理や笹川良一や宇野宗佐がお客だったという元ホステス(根岸季衣)と知り合う。そのホームレス仲間の通称バクダン(柄本明)とも知り合った。彼はかつて爆弾を作って爆発させたことがあるという。 一方千晴はマネージャーが三知子たちに支払われるはずだった退職金30万円を3人分90万円着服していたことを知る。それを本社の報告し、彼女も会社を辞めた。 残飯漁りまで始めた三知子。バクダンとともに政治についてグチを言う。 「まじめに働いてきたのに」。バクダンは「爆弾作るか?」とかつての「腹腹時計」を取り出した。 コロナ禍の影響でホームレスになった女性の話、とだけ聞いていたので後半の爆弾作りになってから「そっちへ行くか!」と驚いた。 そして完成した爆弾を持って都庁へ。 12時に爆弾が爆発するという。そこへ不審物があるので警備員が近づく、というあたりは本当にどきどきした。 結局爆弾は爆発せず、ベルが鳴っただけ。バクダンにガス抜きでからかわれただけです。きっと彼は「爆弾を爆発させただけでは日本は変わらない」と悟っていたのでしょう。そして「間尺に合わない」懲役になることも。 この「間尺に合わない」というせりふが出てきたときに「仁義なき戦い・頂上作戦」を引用するあたりは「仁義なき戦い」ファンとしては楽しかった。 そしてネットでは「インフルエンサー」と言われてるであろう若者(柄本佑)が「ホームレスなんて街が汚れるだけ。汚れたものがあると増々汚れる」とのたまい、それを見た男(松浦祐也)が共感している。 それに共感した男が三知子を煉瓦で殴り殺そうとする!というところで千晴と再会。 ほっとした。 そして「爆弾作らない?」と千晴を誘う。 でもモデルになった事件ではホームレス女性は殺されている。2020年11月に64歳のホームレスの女性が48歳の引きこもりの男に幡ヶ谷のバス停前で殺された事件だ。 直接の事件の映画化ではない。 この映画、今月の公開だが、これが7月以前、安倍晋三射殺事件の前に公開されていたら「時代を予見した映画」と言われたろう。 もちろん安倍事件のように統一協会は関係ない。 しかし金持ち優遇政治、身内優遇政治、反対するものは「こんな人たち」と切り捨てる、そしてそれを継承した菅総理は「自助」を第一に掲げ、「すべて自己責任、自分のせい」と切り捨てる。 そういう意味ではそういう政治に対して暴力で立ち向かう土壌は今の日本ではふつふつとマグマのように溜まっている。 そこをついた映画だと思う。 安倍事件の山上に映画は先を越された。 しかし事件前から製作されていたのだから、本当はこっちが早かったのだ。 この映画だって、フィクションの中では山上と同じことをしているのだ。 私は第2第3の山上徹也が現れる可能性はあると思う。 伴明監督の傑作、脚本の梶原阿貴さんの代表作だと思う。 梶原さんは「のんきな姉さん」の出演から20数年、ご立派になったと賞賛したい。 もっと超越した所へ。日時 2022年10月16日10:30〜 場所 TOHOシネマズ新宿・スクリーン5 監督 山岸聖太 服飾デザイナーの岡崎真知子(前田敦子)の元に中学の同級生の朝井怜人(菊池風磨)がやってきた。SNSで情緒不安定なことをつぶやいたら、「心配になって連絡してみた」と部屋にやってきて、そのまま居着く。 安西美和(伊藤万理華)は金髪ギャル。同じように金髪でノリのいい泰造(オカモトレイジ)と同棲中。 北川七瀬(黒川芽以)は風俗嬢で常連客に俳優の飯島慎太郎(三浦貴大)がいる。プレイ中はずっと仕事のグチばかり。 櫻井鈴(趣里)は元子役で今はバラエティでも活躍するタレント。ゲイだけどなんか好きなタイプの星川富(千葉雄大)と一緒に暮らしている。恋人とは思ってない富は男関係の恋愛愚痴をいつも鈴に話している。 菊池風磨出演。風磨の映画出演って初めてではないか? しかも千葉雄大も出演しているので、前売り券まで買って観てきた。(TOHOはネット割引とかないので、TOHOでしかやってくれない場合は前売り券が一番やすいのだよ) 原作は舞台劇。今朝の「ボクらの時代」に映画宣伝のために原作・脚本の根本宗子と前田敦子と趣里が3人で出ていた。 実際4組の男女の部屋の中での会話劇が平行して進行する形なので舞台劇っぽいなあと最初から思う。 結局ダメんずに翻弄される女子の話。最後はこのクソ野郎たちを部屋から追い出す。でクレジットが始まり、「よかったねえ。別れて正解だよ」と思っていたら、前田敦子が「このままじゃ終われない!」と言い出し、他の3人も同じ部屋に集まってくる。 で「これ明日になったら絶対後悔する」「良いところもあった!」「お米買ったときに持ってくれる「私にも悪い所はあった!」「今ならやり直せる」と時間を巻き戻して(その辺は演劇的強引さで押し切る)、男と別れない。 まあこんなクズ男とつきあってもまた同じことの繰り返しだと思うけど、本人が納得してるならそれでいいや、としかいいようがないな。 千葉雄大がゲイだけど「女の子だから恋愛感情なしでいろいろ相談できる」っていう大人のゲイを好演。ああいうゲイ、実際にいそうである。 あと出演者がタレントとか元子役とかバンドマンとか、デザイナーとかフリーターとか作家の周りにいそうな人たちばかりが登場。 サラリーマンとか出てこない。このあたりが作家の知ってる世界が狭いというか、身内だけで盛り上がってる気もしないでもない。 まあまともなサラリーマンならこういうクズ男は少ないでしょうけど(いないとは言わない)。 小さな恋のメロディ日時 2022年10月15日14:00〜 場所 シネマ・ノヴェチェント 監督 ワリス・フセイン 製作 1971年(昭和46年) ストーリー省略。 今回は公開50周年記念+1ということでの記念上映。 なんと主役のマーク・レスターとトレーシー・ハイドを招いてのイベント付き上映。もちろん本物が来ている。 今回だけではなく、土日に合計5回ほどノヴェチェントでイベントが開催される。今までノヴェチェントに来た中では史上最高の大物だろう。 トークイベントも質問タイムを併せて合計1時間半。 司会兼通訳の落合寿和さん。司会にはなれてないので、トークは30分であと1時間は観客からの質問タイム。 トークで話題になったことなど。 トレーシーさんは今回が1973年ぐらいに来日して以来。 マークさんは2017年ぐらいにも来日しているとか。日本には結構来日していた。 マークさんの日本に来た印象はとにかくネオンサインがどこにでも瞬いていて驚いたとか。ロンドンではピカデリーサーカスなどでした瞬いていないから。 マーク・レスターとジャック・ワイルドは「オリバー!」に出ていたので、割と早く決まっていたらしい。メロディ役はなかなか決まらず、いい人が見つからないので、モデルにまで枠を広げて、オーディションでやっと決まったとか。 監督のワリス・フセインは20代後半で怒られるようなことはなかった。 ジャック・ワイルドは当時17歳ぐらいでマークやトレーシーよりはずっと年上だったので、いいお兄さんとして優しかったとか。 脚本のアラン・パーカーも撮影現場には来ていて、その場でせりふを直すことも多かったそうです。 また隠しカメラというほどではないけど、カメラは遠くから撮影していていつ撮ったか解らないこともあったとか。 私も望遠で撮ったショットが多いな、と思ったけどやっぱりそうだったんだ。 撮影は10週間ほど。トレーシーさんは映画出演自体が初めてだったので、とにかくすべて印象に残っているが、その中で特に海のシーンが遊びに行ったようで楽しかったそうです。 またラストのダニエルとメロディがトロッコで二人で遠くにいくロングショットは男の子はマークレスターではなく、その場にいた金髪の少年で名前はコーネリアス。「『猿の惑星』みたいですね」と落合さんが突っ込んだら、「コーネリアスという名前は珍しい名前なのでよく覚えている」そうで。 マークが現場にいなかったのは、もう次の仕事にいっていたからだそうだ。当時マーク・レスターはそれなりに世界的に売れっ子でしたからねえ。 あと「小さな目撃者」の話題も質問で出たけど、「あれはマルタ島で撮影した。撮影は10週間ほど。バイクアクションもあってなかなか楽しい撮影だった」とおっしゃってました。 トークは質問タイムも入れて合計1時間半。ファンの方の質問には希望者全員に答えてくれた。その後サイン会とお客さんも交えての記念写真撮影。要するに通常のフォーマットだったわけです。 ファンも大満足の「そんなことがあるはずがない」というようなイベントでした。 シネマノヴェチェント、恐るべし!! 今回観て改めて思ったけど、この映画、イギリスが舞台なのがいいんだよね。ダニエルのネクタイ姿が可愛い。あとロンドンの町並み。 同じ脚本でもTシャツにジーパンのアメリカ映画ではやっぱりちょっと違ったものになったろう。 卒業旅行日時 2022年10月15日11:30〜 場所 シネマ・ノヴェチェント 監督 出目昌伸 製作 昭和48年(1973年)2月公開 香港である一人の青年が射殺された。彼のカメラには何かが移っていたらしい。 イギリス人のマイク(マーク・レスター)は香港から父の友人の日本の斉藤さん(小泉博)の家に遊びに来た。香港では遊覧船に乗ったときに女性に声をかけられ、偶然カメラが同じだったことから写真の撮り合いをする。 父から柔道を経験させてほしい、と連絡を受けていたので、翌日から斉藤さんの娘・陽子(山添多佳子)とともに柔道場に見学に来た。 マーク本人はやる気がなかったが、強制的に柔道の訓練を受けるマーク。 相手は弥生(四方晴美)という女の子。最初はいやがっていたマークだが、弥生ともすっかり仲良くなり、彼女の実家が下町で洋食の食堂を営んでおり遊びに行く。 しかし陽子はそれが面白くない。花火をみんなでやったときにマークが煙でむせたので「東京の空気があわないのよ!空気のきれいなところに行きましょう!」と長野県の野尻湖の近くの陽子のおじいちゃんの家に連れて行ってしまう。 弥生も面白くないので、彼女も食堂のバイトの子の実家があるということで野尻湖にやってきた。 3人で森で遊んでいるときに香港で写真を撮りあった美女・林芳(チェン・チェン)が訪ねてきた。実は彼女はマイクとカメラを取り替えていたのだ。自分のカメラに入っているフィルムに写っているものを守るためにマイクに預けたのだった。 マーク・レスターが東宝映画に出演したことがある、というのは知っていたが、上映の機会もなくソフト化されることもなく、観る機会がなかった。(プリントそのものもなかったのかも知れない) 今回、シネマノヴェチェントでマーク・レスター、トレーシー・ハイドを招いてのイベントを行うにあたり、ニュープリント化。 さすがに傷一つないピッカピカの状態だ。 冒頭、一人の青年が香港の路地を逃げてきて射殺される。あとにはカメラが残されて、という感じでサスペンスいっぱいのオープニング。 そしてマイクが香港で、謎の女性から「カメラが同じですね」とか言われるシーンで「あ、カメラを取り替えるな」と思ったらそこはあまり強調しない。 そのカメラの写真を巡って巻き込まれ型サスペンスが始まると思いきや、日本滞在記になってそのカメラの話は置き去り。 このあたりは脚本の田波靖男さんのベタな(正直笑えない)ギャグが満載。 だいたい、「人物が何かに驚く→コケる」の連発。これは「若大将」も「急げ!若者」も同じである。 無理矢理柔道をさせられるシーンで、服を脱がされ、下半身はパンツ丸出し(上はまだ着ている)になるシーンではファンはたまらない。 その後柔道着の上半身がちらみせもあるのだが。 柔道で教えてくれる相手が女の子。この子、モブキャラだと思って見始めたら、いつの間にかマイクと仲良くなっている。で、彼女の家に遊びに行ったりして徐々に親密さが増していく。 ところがこれが陽子は面白くない。完全に若大将を巡って二人の女性が荒そうパターン。これが女子大生ぐらいになると笑えてくるのだが、中学生ぐらいがやるとなんか妙である。大人っぽすぎた感じがして「中学生らしくない」という感覚になってしまうのか。 で、弥生(柔道少女)の父親が桂小金治で彼は戦時中にビルマでイギリス軍の捕虜になったことを説明する。 なにせ戦後27年である。20歳で戦争に行っていた人たちが47歳の年だ。当時としては当たり前だったのだ。しかも恨み節を話すのではなく、「捕虜になったときはイギリス兵に世話になった」と今は感謝している。 そして話は強引に野尻湖へ。 白樺を歩くマーク・レスター。完全にCMの世界である。 やっと香港の女性登場。マークのカメラに預けたフィルムには「麻薬マフィアの会合」の様子が写っているという。 でも「マイクは年上の女性に誘惑されている」と勘違いした二人は似合わない化粧をする。この化粧が全く似合ってないことをさせるのが、田波靖男さんらしいベタベタなギャグだ。 そこからそのフィルムを巡ってマークは誘拐。 浅間山荘みたいな山小屋に監禁されるのだが、陽子の英会話教室仲間の一郎くんの持つラジコン飛行機が墜落したことから、「きっとマイクがどこかで操縦したんだ!」と監禁場所がわかる。 しかし陽子も弥生も捕まってしまい、4人で捕まったが、マイクが機転を利かし、一人は感電させ、一人は部屋にガスを充満させガスを止めに来たところでマッチをつけた紙飛行機を飛ばして大爆発! っておいおい危ないし、過剰防衛だろう。 さらに敵のボスもガレージのガソリンを爆発させ、撃破! って二人殺しただろう。過剰防衛じゃないか。 このガソリン爆発のカット、特撮カットではないかと思えるぐらいの大爆発である。 「卒業旅行」の上映後、「小さな恋のメロディ」上映&マーク・レスターさん、トレーシー・ハイドさんのトークイベントあり。 マークさんにこの映画の思い出を聞いてみた。 「柔道のシーンでは1時間以上も投げられたりして大変だった。あとこの時は4回目ぐらいの来日だったのだが、いつも東京とか京都しか行っていなくて、長野県の野尻湖という別の場所に行けて楽しかった。 森永のチョコレートのCMも撮影して同行した妹とチョコレートをたくさん食べた思い出がある」ということ。 映画の完成時にはこの映画をご覧になっていなかったらしく(今のようにDVDを渡すというわけにも行かないし、日本でしか公開されてないだろうから、考えてみればそれも無理はない)、今回の来日で昨日、初めて観たそうです。 とにかく(ベタな)笑いあり、マークのチラみせあり、女子が嫉妬しないように女の子も適度に普通の子で、アクションもありで、マークレスターの日本滞在記として予想したより面白かった。 70年代東宝青春映画の観るべき作品ですね。 もう1回観たいな。 薔薇の青春日時 2022年10月10日11:15〜 場所 光音座1 監督 小林 悟 製作 OP映画 大学生の武夫(安西柳)は遊興費がかさみ借金が400万円あって月の返済が30万円にもなる。仕方なく大学には行かずにバイト生活。夜は売り専でバイト。でも遊ぶときは遊んでいて、今日も電車で痴漢した女とホテルへ行った。 売り専の店では武夫が休んでいるので、ママ(沢まどか)が心配になってシンジ(白都翔一)に見に行かせるが武夫はアソコが痛くて歩けないと言っていた。「このまま死ぬのかなあ」と心配していた武夫だったが、結局は淋病。例のナンパした女から移されたのだ。 店に復帰したものの、客はつけられない。なじみの山下社長(港雄一)が武夫を気に入ったがママはつけない。仕方なくシンジを指名する社長。 社長はシンジのバックを犯し、終わった後多額のチップを渡し、「言うこと聞いてくれたらもっと払おう」と言った。 シンジは翌日、支払いに困っている武夫に電話で金を貸してくれるところを紹介。10日後、支払いの期限がやってきたが武夫は払えない。借金取りがやってきたが「じゃ金を都合してくれる人を紹介しよう」。つれて行かれたのは社長のところ。一緒に風呂に入り背中を流す。 シンジは武夫から聞いていた例の淋病の女を電車で探し出すことに成功した。女から慰謝料を取ろうとしたが、女の兄が出てきて「妹は健康だ!」と診断書を出した。 ママに相談するシンジ。ママはコネを使ってその診断書がニセだと見抜く。ママのお店でその兄を輪姦。 「ママ、ごめん、俺、金で武夫を売った」「仕方ないわ。お店を売りましょう」 ラストはママ、シンジの二人が武夫の部屋に引っ越してきた。 「青春よ!」と3人はビールで乾杯した。 話は最後まで書いた。小林悟である。 冒頭の武夫が女とホテルから出てきて歌舞伎町を歩くシーンがあるが、そこがミラノ座前。「JFK」が上映されていたからその時代なのだろう。 冒頭、ナレーションで「武夫は遊興費で400万円の借金を作った」と説明される。 ナレーションは珍しいなあ。普通せりふなんだが、脚本・小林悟はそれさえも考えるのが面倒になったのか。 今だったら学費、とかだけど。 社長も武夫としたければ売り専なんだから、病気が治るまで待つとかすればいいのに。一応せりふでは「ママのお気に入りだからママは客をつけたくない」と言っていたけど、そんな売り専あるかい! この武夫クン、90年代の髪型をしてなかなかの美少年である。彼のカラミを当然期待されるが、社長を風呂で背中を流すシーンで、ふんどし姿で登場するだけ。なんだそれ。観客のニーズに全く応えていない。 そして社長の話は消えてしまい、後半はシンジが女から金を取ろうとしてごちゃごちゃする話になる。私はこの白都某には興味がないので、「武夫はどうなった?」とそればかり気になる。 結局武夫のカラミは最後までない。 ラストで3人で暮らし始めて「かんぱ〜い」ってどんだけ行き当たりばったりのシナリオなんだろう。 相変わらずの小林悟テイストである。 気狂いピエロ日時 2022年10月9日19:00〜 場所 bunkamuraル・シネマ1 監督 ジャン=リュック・ゴダール 製作 1965年(日本公開:昭和42年) フェルナディン(ジャン=ポール・ベルモンド)は結婚生活に嫌気がさしていた。妻の知り合いのパーティでアメリカの映画監督のサミュエル・フュラーに出会ったりし、そこでアメリカ人でかつてので恋人のマリアンヌと再会。二人はパーティを抜け彼女の自宅へ。一夜を過ごしたが、翌朝見知らぬ男の死体を見つける。 二人は逃避行を重ねる。マリアンヌの兄がいるという南フランスへと向かう。 「それほど観たいわけではないがいつか観ようと思ってる映画リスト」というものが私の心の中に存在するのだが(別に紙に書いてあるわけではない)その中の1本がこれ。 ゴダールの映画なんか何だか解りづらくて私の趣味にはあいません。 昨日観た井田探の「俺はトップ屋だ」の方がよっぽど好き。 まあ好きな人には好きなんだろうけど、ゴダールが好き、っていう人とは仲良くなれる自信がないな。 よっぽどパスしようかと思ったがゴダールの追悼上映などの機会を逃すと機会はもうないかも知れないと思い、気が乗らないながらも観に行く。 死体が朝発見され、「OAS」って書いてあるから(「ジャッカルの日」にも登場した極右組織だ)政治的な背景があっての殺人? そしてベトナム戦争がどうとかの会話がある。 ベトナム戦争については私なんか完全に映画から得た歴史的知識だけなので、同時代の捉え方、などはピンと来ない。 マリアンヌがフェルナディンを毎回「ピエロ」と呼んで「フェルナディンだ」と訂正するシーンが何度も登場。こういうクドいのは私は嫌いです。 その後、ギャングが出てきたり、小男を殺したり(ここって回想なの?と混乱した)、なんだかフェルナディンは解らないうちにマリアンヌに裏切られ、今度はやり返してマリアンヌを撃ち殺す。 そして例の有名な顔に青ペンキを塗ってダイナマイトを顔に巻き付け爆発。 上映中とにかく時計ばかり観ていた。 終わったときはほっとした。義務は果たした気持ちでいっぱいである。 俺はトップ屋だ 第二の顔日時 2022年10月8日19:22〜 場所 ラピュタ阿佐ヶ谷 監督 井田探 製作 昭和36年(1961年) 人気ロカビリー歌手の紫が交通事故で死んだ。自分で車を運転中に事故にあったのだ。金になる記事が書けそうだと編集長(佐野浅夫)は黒川をせっつくが黒川は興味がない。仕方なく紫が出入りしていたクラブ・メッサーに行ってみた。そこではアフリカの石油王と日本の実業家西島が会っていた。そこで黒川は新聞記者時代の友人、辺見と出会う。辺見はかつては正義派の記者だったが、ある汚職事件の報道で会社を辞めさせられていて今はヌードダンサーを扱う芸能社の社長だった。 やがて西島が殺された。 「俺はトップ屋だ」の2作目。でもこの後は続かなかったらしい。 1作目に比べると落ちるかな。井田探って日活の中では「B級」の買っとくとしてちょっと下に見ていたが、テンポもよいアクションの2本も見るとバカにしたものではないな、と思い直した。 確かに石原裕次郎の作品などはなかったようだから社内の評価は低かったのかも知れないけど。 映画の冒頭、紫が事故を起こし、タイトルになって、また紫が車を運転していて「終」の文字がでる。「え?映写事故?」と思ったが、これは紫が出演した映画を観客が観ていたとわかる。これって岡本喜八が「大学の山賊たち」でやったことだけど。 結局メッサーのマダムと辺見が組んで頼まれた実業家の西島をライバル(二本柳寛)に頼まれて殺したり、紫を妬んだ新人歌手が「死んでほしい」と言ったことから殺したりしていたわけだ。 かえって話がややこしくなったりして、前作の方が私は好きだが、スピーディな展開、編集長や助手のマリとのやりとりなど笑いのシーンも交えて娯楽作品としての一定のレベルである。 ベタといえばベタなんだけど、何の魅力もない「刑事物語」に比べればよっぽど面白い。 この次を突き抜けるのが難しいんだよね。 俺はトップ屋だ 顔のない美女日時 2022年10月8日18:30〜 場所 ラピュタ阿佐ヶ谷 監督 井田 探 製作 昭和36年(1961年) 深夜の街で顔を散弾銃で撃たれた男が発見された。指紋から身元が割れたが、警察は事件の糸口がつかめない。密輸に絡んでいると察したトップ屋黒川(二谷英明)は羽田空港に向かったが、正面で車に乗った男が殺される現場に居合わせてしまう。野次馬の中、目つきの鋭い男(ジェリー藤尾)がこちらを見ている。そのときにスチュワーデスの女性が「落とし物ですよ」とコインをポケットに入れてくれた。 そのコイン、外国のお金のようだが、裏表が同じ刻印。「AERICANA1725」と書いてあり、最初はアメリカの古いお金かと思ったが、そのころはまだアメリカが建国されていない。 そのコインを返してほしいと例のスチュワーデスから連絡がきた。スチュワーデスの家に行くと顔をつぶされた若い女が死んでいた。黒川はコインを封筒に入れ、自分の住所を書いてポストへ。 そのコインを寄越せと怪しい二人組が事務所にやってきた。助手のマリが対応したが、二人は家捜しを始めた。その時に郵便が届く。 黒川は羽田で見かけた男に助けられ、アメリカーナというクラブに連れて行かれる。入ろうとしたが会員証がないとだめだという。その会員証が例のコインだったのだ。事務所に戻ってコインを取り、アメリカーナへ。 さらに中のロッカーには明らかに偽物と分かるような安物の仏像があった。 黒川は再び襲われたが、例のスチュワーデスが助けてくれた。実は彼女が犯人で仏像を巡って同じく密輸業者の岡崎(二本柳寛)と争っていたのだ。しかも仏像の中には大量のダイヤが隠されていた。 黒川、岡崎、スチュワーデスが集まったところへ警察が駆けつけた。 ラピュタ阿佐ヶ谷「SPパラダイス日活篇」の1本。「刑事物語」に続いて見たわけだが、やっぱりスター二谷英明が主演だと華がある。スターは重要である。それだけで画面が締まる。 この映画、ハンフリー・ボガードの「マルタの鷹」をヒントにして作られているのだろう。 大事なコインを封筒に入れてポストに投函というアイデアは「マルタの鷹」でもやっていた。さらにみんなが求めるものが仏像。さすがにこの仏像は無価値だった!というオチはないけど。(あってもいいと思うけど) 切手はどうしたのかな?と思ったら配達にきた郵便配達人が「料金不足です。20円お願いします」とマリに請求し、悪人2人組に払わせてしまうのは面白い。 このマリが若い女性で黒川とやり合い、原稿の催促をしてくる編集長(佐野浅夫)ともやり合う。こういう明るいコメディリリーフ的キャラクターはベタだけど、やっぱり必要なんだな。 だからこそそういうコメディリリーフがいない「警視庁物語」は脚本がすごいんだ。笑いのシーンなんか全くない、スターもいないのに面白いのがすごいんだ。 刑事物語 部長刑事(でかちょう)を追え日時 2022年10月8日16:55〜 場所 ラピュタ阿佐ヶ谷 監督 小杉 勇 製作 昭和36年(1961年) 佐藤親子(青山恭二、益田喜頓)刑事はある外国タレントのコンサートに行く。父親は寝てしまう。息子の大学時代の友人・小松川がこのコンサートの主催者で久しぶりに一杯。 翌日、親父の方の友人がガス自殺した。原因は退職後、息子の世話になっていたが、その息子が事故で死に生活に困っての自殺だった。 佐藤親父は葬式の晩、「刑事の安月給では老後の生活は出来ない。お前を刑事にするべきではなかった」とグチをこぼす。 それを聞いた息子は小松川から頼まれたこともあり、あっさり警官を退職。小松川の会社で働くことに。 小松川から早速仕事を頼まれる。街金の水田から闇ドルをもらってくることだ。しかし行ってみたら水田は殺されていた。そのときに水田の使用人の女性が入ってきて息子とすれ違う。そこからモンタージュで息子は警察に疑われる。 また父親の方にチンピラの信公がやってきて、「水田金融の近くで店を出してる易者に聞いてみな」と言ってきた。聞き込みをすると水田金融から息子が出てくるのを見たというのだ。 息子の方は指名手配。父親は「俺が『警官なんて』って言ったからだ」と自分を責める。 息子は小松川に匿われていた。真犯人は別件で水田ともめていた信公だった。 また小松川は闇ドルの問題で別件で殺人を犯しており、息子はその潜入捜査だったのだった。 後半、話は端折って結末まで書いた。「部長刑事を追え」って言う割には息子の方が逃亡をして警察との捜査合戦をするのかと思ったら、単に匿われてるだけ。 息子の方がなにか事件を調査している捜査会議のシーンが出てくるが、これが本命の事件だとはちょっとわかりづらい。 信公がやたらと親父に情報提供してくるのは実は「自分が犯人だから他人を犯人と思わせたかった」というミスリード。このアイデアは面白かったけど。 このシリーズ、そもそも設定が弱かったんじゃないだろうか? 息子の方は本庁の刑事で親父は所轄の刑事という上下関係があるのだが、なんだか弱い。息子が署長で親父は交番の警官、ぐらいに上下関係があって、家では親父にアドバイスをもらう、ぐらいに極端な方が面白かったんじゃないかなあ。 刑事物語 ジャズは狂っちゃいねえ日時 2022年10月8日16:00〜 場所 ラピュタ阿佐ヶ谷 監督 小杉 勇 製作 昭和36年(1961年) ジャズ喫茶の裏道で麻薬の売人が殺された。実は出演しているバンドマンの一人が麻薬をやっていて、それを止めようとしてバンドボーイをしている弟が誤って殺してしまったのだ。 早速警察も動き出す。佐藤親子刑事(益田喜道、青山恭二)も捜査に加わる。現場近くのジャズ喫茶で犯行時刻の頃に出演を終えたバンドに話を聞こうと放送局に向かった刑事たち。しかしそのバンドボーイが殺されているのが発見された。どうやら麻薬の取引に絡んだ事件のようだ。 佐藤の息子の方は学生時代バンドをやっていたので、臨時のバンドマンになって潜入捜査を開始。初日に呼ばれたバンドで「ヤクが欲しい」といってみると、路地のたばこ屋に連れて行かれ「イーさんに聞いてきた」って言ってみな、と言われる。 そこは売人と客がたむろする場所だった。深夜に佐藤親刑事たちが踏み込んだがもぬけの殻。 だが元締めが井口(佐野浅夫)とわかった。井口は女を使って横浜で今夜麻薬を買い付けるようだ。 ラピュタ阿佐ヶ谷「添えもの映画百花繚乱SPパラダイス日活篇」の1本。 「刑事物語」(武田鉄矢ではない)は以前にチェンネルNECOで観ていてまるで面白くなかったのだが、10月にラピュタの会員の有効期限が切れるので「何か観よう」と思って行ってみた。この後二谷英明の「俺はトップ屋だ」だけでもよかったのだが、それだけでは寂しいので。 東映では同時代に「警視庁物語」シリーズを作られていたわけだが、どうにもこちらは分が悪い。 まずは主人公の青山恭二にまるで魅力がない。 顔さえはっきり覚えられない。これが日活のスター級の浜田光夫とか和田浩治、川地民夫あたりが演じていたならまた違っていたかもしれない。 やっぱりスターは必要です。 この映画でいえば、あっさりわかりすぎなんですよね。 ジャズ界にはびこっている麻薬を調べよう、って潜入捜査で、臨時のバンドマンになるわけだが、あっさり敵を突き止めてしまう。まあ54分で時間もないこともわかりますが、それにしてもご都合主義がすぎる。 で親父の益田喜頓もまるで魅力がなくただのじいさん。 もう少しキャラたてないと持たないよ。 また全体的に話のテンポがなんだか遅い。 よくシリーズ化出来たなあ。 ATTACK OF THE GALACTIC MONSTERS日時 2022年10月8日 場所 海外版Blu-ray 製作 1983年 「惑星大戦争」の海外再編集版。 イタリア版「怪獣王ゴジラ」を紹介してくれた知人から教えてもらったサイトで購入。9月15日に注文して出荷まで2週間またされたが、メールで出荷の連絡をもらい、トラッキングをしたら最終的には日本郵便で届いた。 「惑星大戦争」と「流星人間ゾーン」に登場したゴジラシーンをつなぎ合わせての55分の短縮版。大幅カットである。 いきなり地球が宇宙船に攻撃を受ける。 三好(森田健作)は浅野ゆう子や沖雅也と飲んでいたのだが呼び出される。そして呼び出されたら池部良に対し「お前の娘は預かった!」と陸五朗がテレビで見せるところ。 すごい編集だ。 さらに地球は怪獣により攻撃。 池部良は轟天の出撃を急がせるとともに、なにやら一人で機械操作。ここはラストのエーテル爆弾で出撃シーンからと思われる。 そうしたらゴジラ出現! ゴジラは地球防衛軍の怪獣兵器なのだ! そして轟天も出撃。宇宙ステーションにはよらずに真っ直ぐに金星へ。 そこで敵の基地(設定上、大魔艦ではない)に進入。そして森田健作は浅野ゆう子を無事救出。このあたりはそのまんま。 一方地球ではカプセルに入った怪獣が次々と到着。ゴジラと対決し続ける。 救出して大魔艦との対決になるかと思ったらあっさり離脱。 あれれ?と思ったがそのままその星は大爆発。 今度は土星を越え、妖星ゴラスを越え(あるいはゴラスに到着?)で大魔艦登場。 書き忘れてたけど、ジミーの家族が亡くなった連絡は入る。 そこで回想シーンが入るのだが、代々木公園(ニューヨークの設定)でピクニックしてるシーンではなく、家族らしき人々が戦って死んでいくカット。この方がいいね。 大魔艦と轟天号の対決はオリジナルと同じ。 ラストはやっぱりドリル部分が分離して池部良はつっこんでいく。 そして星も大爆発! ゴジラの方は悪役宇宙人(この映像の元ネタは知らない。東映のヒーローもの??)によって怪獣に攻められるが、最後には悪役宇宙人が変身! 流星人間ゾーンである。 この場合、ゴジラが地球の味方でゾーンは敵である。 当然、倒されるカットなどなく、ゾーンが倒れたところで爆発の二重合成があって負けたとされるが解りにくい。 ゴジラが怪獣たちと「惑星大戦争」のテーマに乗って対決するシーンはなかなかのものである。 55分と短く、見せ場に次ぐ見せ場で英語が分かんなくてもオリジナルを知ってれば大丈夫。 ハワイのテレビ局が作ったバージョンだが、ファンは一度は観ても損はない。 「ウルトラセブン」55周年 4K特別上映日時 2022年10月7日19:00〜 場所 TOHOシネマズ新宿・スクリーン8 監督 鈴木俊継、満田かずほ 製作 昭和42年(1967年) 1967年10月1日に「ウルトラセブン」の第1回が放送され、今年は55周年。「シン・ウルトラマン」のヒットもあってか、全国のTOHOシネマズをはじめとする16のシネコンで4Kの10月1日〜13日までの特別上映。 とはいっても新宿では19時ごろの夜の回の1回上映。子供向けというよりオールドファン向けの上映だ。 実際、50代60代の初放送も観たんではないかと思われる先輩ファンも多い。おっさん9割、女性が1、2名、あとは若者ファン。 そんなもんでしょう。 上映が始まって感動したのは実に画質がきれい!明るい! 色彩もコントラストがくっきりして、新作のデジタル画質のよう。 ストーリー省略。各話の感想を少々。 「宇宙囚人303」脚本:金城哲夫 監督:鈴木俊継 見せ場はなんといってもβ号を奪って逃げたキュラソ星人を追いかけたα号が空中で強制合体するシーンでしょう。1回目が失敗し、β号とα号が接触して火花が散るシーンはかっこいいですねえ。 「ウルトラQ〜東京氷河期」のセスナの支柱が外れるカット並に記憶に残ってます。 でもキュラソ星連邦警察も「殺人鬼だから即刻殺害されたし」ってすごいよな。この星ではきっとまだまだ死刑があるんだろうな。1967年ではまだまだこの考え方が一般的だったんだよな。今ならなんとか捕まえてキュラソ星に引き渡すとかなったんだろうけど。 逃げた囚人とか発想が西部劇。 あと今回はセブンは墜落したβ号から逃げるときだけで怪獣との対決はなし。 「超兵器R1号」脚本:若槻文三 監督:鈴木俊継 作品の時代背景としては東西冷戦の原爆、水爆、中性子爆弾などの大量破壊兵器開発競争があるのだけれど、今でも通じるよね。 日本では今「防衛予算増額!」などと言われてるし。 でもタケナカ参謀たちが「超兵器の開発は中止しよう」というハッピーエンドだったんですね。てっきり「もっと強い兵器をこれからも研究し続けなければ!」というバッドエンドだと記憶していたので。 現実とごっちゃになっていたのか。 「盗まれたウルトラ・アイ」脚本:市川森一 監督:鈴木俊継 地球をロケット爆弾で攻撃するマゼラン星が事前にウルトラセブンに返信できなくさせるために工作員を送り込んでウルトラアイをダンから取り上げる話なんだけど、見終わってすぐは「これって第二次大戦で捨て駒にされた兵士たちの暗喩なのか?」って思ったけど、翌日になって考えると発想は当時はやっていたスパイもの(映画、小説)にあったのではないか? とはいっても登場するアングラ喫茶のグループサウンズなどの当時の風俗が印象に残る。登場するジュークボックスもオシャレ! 「史上最大の侵略・前後編」 毎回思うのだけどダンがアンヌに「僕はウルトラセブンなんだ」って告白するシーン。いきなりバックが変わって逆光になってクラシック音楽が流れるシーン、いやファンの方には申し訳ないがここ笑っちゃうんだよね、唐突すぎて。 その後アンヌが他の隊員たちにも話して驚きの顔がストップモーションになるシーン、ここもなんだか間抜けな顔(特にフルハシ)になるのでここも笑ってしまう。 83年頃豊島公会堂(今のTOHOシネマズ池袋がある場所)で行われた(確か情報誌angle主催)での円谷プロ作品上映会(「怪奇大作戦」も上映された)でこの「史上最大の侵略」が上映されたときに爆笑が起こり、以来私も笑ってしまう癖がついた。 あと敵の攻撃する地底ミサイルがジェットモグラのプラモデルの色を白に塗り直した出来合いの流用にしか見えなくて、そこは昔から「予算ないなあ」と思ってしまうポイント。 「宇宙囚人303」なんかエキストラも多いし、なんか金かかってる感あるよね。 しかしまあなんといっても55年経った今でも上映されるとはさすが「ウルトラセブン」ですね。 終電車の死美人日時 2022年10月3日 場所 東映チャンネル録画 監督 小林恒夫 製作 昭和30年 国電三鷹駅で終電車に乗っていた女性の刺殺体が発見された。持っていた切符から有楽町で切符を買って乗ったと判明。女性の身元を示すものはない。しかしペンダントに男の写真が入っていた。たぶん恋人だろう。 有楽町で聞き込みをすると持っていた3003の切符は一度に2枚販売し、買ったのは中年男。その後すぐに若い男が三鷹行きの切符を買ったという。 切符を買ったとき男は「1枚は新宿行きに変えてくれ」と言ったが、駅員がいやな顔をしたので、結局そのまま。男が新宿で降りたと思われ、新宿駅で三鷹行きの3004の切符を探してもらう。1時頃改札を出たというのだ。新宿駅で聞き込みを開始。駅構内の喫茶店で11時から12時まで被害者は男2人と会っていたようだ。なにか取引の様子で女は50万円ほどの札束を受け取っていた。 ペンダントの写真の男が自分から出頭。彼女の恋人で名前は湯浅とし子。 結婚の予定だったが婚約者の男が会社の金を使い込み湯浅がその穴埋めをしようとしていたという。 湯浅の葬儀が行われ、大塚の土地の権利書が無くなっていることがわかった。その土地の登記を調べ買った人が判明。池袋西口にある不動産屋、早川(東野英次郎)とわかった。早川は12時に新宿駅を出て池袋に帰っていた。帰る前に居酒屋で酒を飲み、犯行時刻にはアリバイがあった。 池袋周辺で最近見かけなくなった男を探す刑事たち。高野(南原伸二)という男が数日前からいなくなっているという。 9月で約2年に渡って月1本放送されてきた東映チャンネルでの「警視庁物語」の放送も終了。見逃し放送なのか今週は半分を一挙放送である。 その1回目に「警視庁物語」のパイロット版ともいえる(もちろん結果的にそうなったというべきなのだが)「終電車の死美人」が放送。 タイトルからしてB級ホラーみたいだな、と思ったのだが、「終電車の死美人」という言葉は新聞の見出しに使われていたのだ。 事件が起こると「警視庁捜査一課の出番です。刑事たちは死にものぐるいで捜査します」とナレーションが入り、刑事たちが登場する度に「事件に食らいつきあきらめない」とか「事件以外には全く興味がない」などと紹介されるが、中には「家族思いで現場には遅刻」「うだつがあがらない」などと紹介される刑事もいる。そんなあ。 刑事課長は宇佐美諄。捜査係長は松本克平。そして現場のリーダーの三井主任は山形勲。これがなかなかの強面で、神田隆よりずっと怖い。 今なら行き過ぎ捜査で訴えられそうな勢いで被疑者に迫る。 堀雄二、花澤徳衛、佐原広二はすでに刑事として入っている。花沢は甲田刑事と言って名前は違うがキャラメル好きという性格はもう作られている。 また「警視庁物語」では犯人役となる伊藤久哉が刑事、逆に「警視庁物語」では刑事になる南原伸二が犯人役。 事件の方は金に困った石川が高野に終電車で金を盗ませようと計画したが、高野は殺しまでしてしまった、という結末。 逃げようとした高野は石川を殺し、そして最後には警察と銃撃戦。 このあたりのアクション路線が初期の「警視庁物語」にもあったなあ。 でも脚本は長谷川公之ではなく、ムービーウォーカーの解説によると「朝日新聞警視庁担当記者団による『警視庁』を原作として元朝日新聞記者白石五郎と新人森田新が共同で脚本を書いた」とある。 せりふのテンポとかまだまったり気味で、今から見るとややだるい。「警視庁物語」では感じなかったのだが。 また中原ひとみが新宿駅の喫茶店のウエイトレス役でワンシーン出演。可憐である。 「警視庁物語」を語る上で欠かせない映画を見ることができ、満足。 勝手にしやがれ日時 2022年10月2日16:40〜 場所 Bunkamuraル・シネマ2 監督 ジャン=リュック・ゴダール 製作 1959年(昭和34年) ミシェル(ジャン・ポール・ベルモンド)は自動車窃盗の常習犯。マルセイユで盗んだ車でパリに向かっているとき、白バイに追いかけられた。たまたま車のダッシュボードに入っていた拳銃で、白バイを撃ってしまう。 パリについてとりあえず手持ちの金がないので、知り合いの女の家に行き、彼女が着替えている間に財布から金を盗った。 旅行案内所で金を受け取ろうとしたら小切手で、現金は別の男が用意してくれるという。 ミシェルはアメリカ人の新聞記者志望のパトリシアの家に行く。彼女とはマルセイユで知り合ったがそれほど深い仲ではなかったが、彼女の家に泊まった。 翌日は彼女は作家のインタビューに、ミシェルはまた自動車泥棒に向かった。パトリシアの元に刑事がきた。警官殺しの犯人としてミシェルが指名手配され、新聞にも大きく顔写真が載っている。刑事はパトリシアにまたミシェルに会うことがあったら連絡をくれるように頼む。 パトリシアの元にミシェルがやってきた。買い物に出たパトリシアは警察に連絡。刑事たちに追われるミシェル。ミシェルの仲間は逃げるように銃も持たせてくれたが、ミシェルは拒否。やがて彼は撃たれた。 ミシェルは「お前は最低だ」とつぶやく。よく聞き取れなかったミシェルは刑事に「なんと言ったの?」と聞く。 9月13日にゴダールが死去。今回は追悼上映で、最近4K化された「勝手にしやがれ」と「気狂いピエロ」の連続上映。(「気狂いピエロ」は来週から) 1日1回の上映だが、さすがに満席である。しかも渋谷という土地柄もあってか、20代の学生ぐらいも少なくない。 実は私はゴダール作品はほとんど観たことがない。「ゴダールの探偵」は観たことがあるがまるで覚えていない。なんとなく「芸術映画」で取っつきにくかったのだろう。それでも「探偵」だから観に行ったのだ。何も引っかからなかったけど。 40年ほど経って訳だが私は成長がないらしく、今回の「勝手にしやがれ」もまるで心に残らなかった。 時々数コマ跳ぶようなカットつなぎをしているので、今回は4Kレストア(2Kダウンコンバードでル・シネマは上映)だから「わざとの編集」って解るけど、フィルムで名画座で観たら「プリント不良?」って思ってしまったんじゃないだろうか? しかしそのことをツイッターでつぶやいたところ、「オールロケ、手持ちカメラ、荒っぽい編集、無軌道な青春などが斬新で後輩に影響を与えた」とぼのぼのさんからレスをいただいた。 確かになあ。「無軌道な青春」って言うことでは中平康の「狂った果実」がヌーベルバーグに影響を与えた、って聞いたことあるしな。 映画の内容としては今観るとそれほどでもないけど、当時に観たらまた違った感想を持ったかも知れない。 沈黙のパレード日時 2022年10月1日12:00〜 場所 ユナイテッドシネマ・ウニクス秩父スクリーン3 監督 西谷弘 10数年前、幼女殺害事件があったが、担当した草薙(北村一輝)は犯人と思われた蓮沼(村上淳)を証拠不十分で有罪に持ち込めなかった。 そして5年前、女子高生が行方不明になった。3年後、静岡で火事があり、現場から発見された遺体がその行方不明だった並木佐織さんと判明。 火事になった家は蓮沼の実家だった。しかも蓮沼は佐織が行方不明になった頃、佐織が住んでいた菊野市に在住していた。しかし蓮沼の自宅から佐織の血が付いた服が発見され、蓮沼が犯人と思われたが、今回も立件できなかった。 事件を担当する内海(柴咲コウ)は湯川学(福山雅治)を訪ねる。「物理学者が協力出来るとは思えない」と断る。しかし並木佐織の実家が自分が時々行く定食屋と知り、関心を持つ。 菊野市では祭りが行われ、全国から集まったチームにより仮装行列が行われていた。その頃、蓮沼は酸素不足の窒息死で殺された。 東野圭吾原作の「ガリレオ」シリーズの映画第3弾。今回の公開を機に「容疑者Xの献身」「真夏の方程式」と映画版を2本みて現在テレビシリーズを観ている。第1話の人体発火事件は実に面白かった。 東野圭吾は「怪奇大作戦」を意識した書いたそうだが、過去にリメイクされた「怪奇大作戦」よりも「怪奇大作戦」だった。実に面白い。 そういう訳で予習も少ししての鑑賞。湯川も準教授から教授になっている。 今回の事件では首を絞められた訳でもないのに窒息死、という不思議な状況。しかしこの謎はクライマックスまで持ち越されるとこもなく、途中で判明。 液体窒素を使った方法なのだが、ここまで来ると液体窒素を扱える事件関係者がすぐに割れる。しかしアリバイがあった、という訳なのだが、共犯者がリレー式に協力しての犯行。 ここまではそれほど意外ではなく、むしろひねりがない。 今回はその裏に隠された真相の謎解きが肝。 佐織の両親や、その友人、恋人が犯人と思われたが、実は、という展開。 そもそも佐織を殺したのは蓮沼ではない、と思われたが、さらに逆転。 逆転、逆転もやりすぎるとかえって何が真実かわからなくなるので、やりすぎはだめなのだが、この位の展開がよいのだろう。 しかし中盤の祭りのパレードのシーン、エキストラも多く驚く。もちろんエキストラもボランティアで無償なのかも知れないけど(最近はホント、エキストラはファンによる無償が多いよな)、それにしても豪華な画だった。本筋とはあまり関係ないので(祭りそのもので時間が起こるなどの効果的な使い方ではない)、ちょっともったいない気がした。 引き続きテレビシリーズも観ていきたい。 |