2023年3月

   
クモとサルの家族
Single8 メグレと若い女の死 少女は卒業しない Frankensteins KUNG-FU Monster(閃電騎士V3)
オマージュ 妖怪の孫 死体の人 シン・仮面ライダー
天国か、ここ? Winny 美しい彼〜special edit version〜 にっぽんGメン
エンパイア・オブ・ライト フェイブルマンズ TOCKA/タスカー なのに、千輝くんが甘すぎる。

クモとサルの家族


日時 2023年3月26日16:40〜
場所 新宿K's cinema
監督 長澤佳也


時代は江戸時代。今は戦乱の世も終わり、忍びの仕事もなくなっていた。この家の家長のサル(宇野祥平)は今は娘3人と息子一人と暮らしていた。妻のクモ(徳永えり)は時々ある忍びの仕事で稼いでいる。
サルは借金があったが、イヌ(江口直人 どぶろっく)に立て替えてもらっていて、今は高利から逃れられている。
子供たちが老人が道ばたで倒れているのを見かけ、危険な思いをしたが助けた。この老人が倒れていた場所は天狗(緒川たまき)という火縄銃の名手が戦が終わったことも知らずに守っていて、見知らぬ者が現れた時に狙撃するのだ。
助けた老人は実は前の殿様の貴虎(奥田瑛二)だったのだ。老人を山に捨てろだのの悪政を行って家臣から追放されたのだ。貴虎には懸賞金がかかっていた。
イヌは懸賞金目当てにサルたち一家を襲ってくる。サルは「困っている人を助けるのはうちの家訓だ!」と貴虎を無事な場所まで送り届ける決意をする。


こんな感じのお話。
いまおかしんじ監督が本日Twitterで「今日上映後のトークイベントに参加します」と言っていたので、横浜光音座に行って大岡川の桜でも見ようかと思っていたのだが(今年は例年より約1週間桜が早い)、雨だしなあと思っていたところだったので、聞いたこともない映画だったが見に行ってきた。
事前にケイズのロビーにおいてあったチラシを見て「時代劇かあ」と知った次第。

なんていうのかなあ。
まず江戸時代と言われてもいわゆる江戸時代っぽくないのだよ。
山の中ばかりなので、いつの時代か不明に見えてくる。いや国さえも日本ではないかも知れない。いっそ他の惑星の国の話かも知れない。
親子の話がしたかったんだから、それでもいいんだろうけど。

リップシンクロがずれているのでアフレコ。今時アフレコかよ?と思ったけど、その真相がトークイベントで明かされた。
子供のうち3人が、中国人の子供で、日本語が話せないからだそうだ。身体能力の高い子供を探して、結局中国人の子供になったので、オールアフレコになったそうだ。
だから特に子供のシーンが口の動きとせりふのタイミングすら合っていない。

また今回35mmで撮影されたのだが、カメラが音の大きいタイプのものだったということもアフレコにした理由だそうです。
えっ35mmなの?
確かに映像は陰影があって暖色系で低予算の映画の割にはきれいだったものなあ。今のデジタルの映画だと、時々露出があってないような箇所があるものな。(編集と上映はデジタルになってます)

一家の敵をお笑いのどぶろっくの江口直人が演じているのだが、宇野祥平と特徴がよく似ていて(坊主頭とか髭とか)最初どっちがどっちだかわからなくなる。
監督に聞いていみたが、敵の方もサルの妻のクモが好きなので、同じような二人が同じ女性を好きになった、という理由だそうです。
よくわからんけど。

でも最後にサルとイヌの対決で、サルが勝つ。サルがイヌの胸に小刀を指した状態になったとき「ごめんな、女房にいつもツメが甘いって言われるけど、今刀を抜くと血が吹き出る、ほっておいても声を出しても誰も助けにこない、だからこのままにしておくけどごめんね」と優しく言って去っていくのは面白かった。

監督は若い人かと思ったら、もうすでにプロデューサーとして何本か作られてるのだが、監督作は初めて。自主映画だそうです。
でもなんかピントの外れた映画だったなあ。






Single8


日時 2023年3月25日11:30〜
場所 ユーロスペース・シアター1
監督 小中和哉


映画好き高校生、広志(上村侑)はその夏1978年に公開された「スターウォーズ」を観て大興奮。ファーストカットの宇宙船のカットをなんとか再現したいと頑張るがどうも巨大感が出ない。ある日、食卓のやかんに写る手を見てひらめいた!やかん写る宇宙船を写せば巨大感が出る!
そのときクラスでは文化祭で何をやるかが全く決まらなかった。広志は「映画を作ろう!」と言い出す。反対意見も出たが、夏美(高石あかり)が「お化け屋敷はやりたくない」という消極的理由で賛成してくれた。
夏美のヒロインを頼んだが、あえなく断られる。
そんなことより先ずは脚本を作らねばならない。中学の時から映画作りを手伝ってくれる善男と実は映画が好きという佐々木と先生のアドバイスを受けながらSF映画らしい脚本を作った。作品タイトルは「タイムリバース」。宇宙人がやってきて地球の文明は間違った進化を遂げたから時を戻そうとして時間を逆転させるストーリーだ。
脚本を読んで夏美も出てくれることになった。いよいよクランクイン。
しかし夏美は先輩がメンバーのバンドに興味があるようだ。


小中和哉監督の自主映画時代をモデルにした青春映画。8mmでSF映画を撮る高校生たちのお話だが、実にひねりがない。何もない。
脚本作りで悩むあたりは画的に面白くも何ともない。
そしてクランクインして何のトラブルもなく撮影は進む。

そう、この映画、何の障害もないのだ。障害を乗り越えてこそ、映画的カタルシスがあるのに順風満帆に映画は出来てくる。
普通はさあ、カメラが故障したとか、天気が変わったとか、親が勉強に集中することを言って映画に協力できないとか、映画好きの3人の中で喧嘩が起こるとか、なんか事件があるでしょう?

それが何もない。ひたすら順調に映画は作られていく。
生合成だって一発でうまくいく。ここは何回か失敗しましょうよ。
ただただ「映画頑張って作りました」という内容。この映画の中に「面白い映画からつまらない映画は出来るが、つまらない脚本から面白い映画は出来ない」という名言が出てくるが、そのまんまだよ。

そして最後に出来上がった映画をまるまる(15分ほどの短編ということもあろうが)見せるのだ。普通はダイジェストしか見せないだろ?
ある意味、この手の映画のお約束をまんな覆すような映画なのだが、面白いかは別。

そうは言っても私も70年代後半、80年代前半に8mm映画作りをした人間としてはZC1000に対するあこがれとか、フィルムに直接キズをつけて表現するとかの苦労はわかる。
70年代ファッションとしてTシャツをGパン(ジーンズではない)の中に入れてるとかが懐かしい。
でもカメラやでバイトする大学生(佐藤友祐〜どっかで観た子だと思ったが、「不幸くんはキスするしかない」のイケメンだ!)がダメージジーンズを穿いているのは「そうかあ?」と思ったけど。もちろん膝に穴のあいたジーンズは合ったけど、今ほどのおしゃれ感はなかったよなあ。

宇宙船の中で生合成(黒紙で半分覆って巻き戻して撮影)とかで、片方のカットではフレームが揺れるとかの芸は細かい。
あれも会話ならそんなにうまくいかないのではないか?

小中和哉監督の思い出話を酒席で聞かされたような映画だった。
ちなみにこの映画のヒロインは完成した映画を見てくれず、大好きな先輩のバンドのコンサートを優先する。つまりフられる。
ここで「銀平町シネマブルース」に登場した小出恵介の娘役が言ったせりふを書いておこう。
「君はだめだね、映画が好きとか」





メグレと若い女の死


日時 2023年3月21日15:10〜
場所 新宿武蔵野館・シアター2
監督 パトリス・ルコント


若い女があるパーティ会場に入る。主催者の男女ともめ始める。
翌朝、その若い女は死体となって発見された。遺体には5カ所の刺し傷があった。所持品に身元を示すようなものはなにもない。着ていたのは古い高級ドレス。妻の助言で「それは貸し衣装ではないか?」と言われ、心当たりの店を聞き込むメグレ(ジェラール・ドパルデュー)。
確かに貸衣装で借りた店もわかった。そして所持品に薬の瓶があり、その薬を販売した薬局もわかり、店員がたまたま彼女のアパートを知っていた。彼女の名はルイーズ。アパートの管理人の話では、正しくは借りていたのはジャニーヌという女性で、彼女の間借り人だったという。
ジャニーヌは女優志望の美しい女性で、映画の撮影所で端役やエキストラをしていた。メグレは彼女に会ったが、ルイーズはたまたまパリに出てきたときに列車が一緒でしばらく住まわせただけで詳しくは知らないという。
そんな時、メグレはベティという田舎からパリに出てきたばかりの女性が万引きしているところを捕まえる。すぐに罪には問わなかったが、彼女は翌日建物に勝手に入って寝ているところを見つかり、逮捕された。
ベティはメグレの名前を出したので、メグレは彼女を釈放させる代わりに、ある頼みごとをした。それはルイーズが住んでいたアパートに住まわせ、誰か訪ねてきたら報告してほしいということだった。
またメグレはルイーズが死の直前、タクシーに乗ってあるパーティ会場に行ったことを突き止める。その会場ではジャニーヌと金持ちの息子のローランの婚約披露パーティが行われていた。
ルイーズ、ジャニーヌ、ローランの間には何かある。


「メグレ警視」シリーズは1冊も読んだことはないけど、名前ぐらいは知っている。しかしフランスだからなのか、アガサクリスティのように春ウッドで大々的に映画化されることもなく、映画としてはなじみが薄い。
今回(たぶん)メグレものは初めて見る。

この映画、上映時間が89分とタイト。クレジットをのぞけば85分を着るのではないか?ハリウッドが映画化すると2時間半ぐらいある大作になってしまうが、本作はプログラム・ピクチャレベル。
でもそこがいいのだな。ミステリーはそんな豪華にしなくてもいいですよ。軽く見れるのがいい。

本作、舞台は何年かと思ったら、パンフによると1953年。昭和28年のパリだ。携帯電話は出てこない。
この映画では出てこないが、メグレは一人娘を亡くしているらしい。
だからこど若い娘がパリに出てきて殺された事件には特に熱心なのだ。
またベティをかばうことも。

ジャニーヌは解約のためにアパートを訪れ、そこでベティと出会う。殺されたルイーズにも似た雰囲気の彼女をある仕事に誘う。
その仕事とは「ジャニーヌが若い女性と絡んでいるところをローランが手淫をする」というもの。

そういう性的なことが事件の背景にあるとは思わなかった。江戸川乱歩じゃん。そういう性の匂いはなしで、金とか恨みの話かと思っていたので意外だった。

そして被害者の死因は刺し傷ではなく、首の骨を折ったことだったとわかる。つまり婚約披露パーティにやってきたルイーズを階段で責めて落ちてしまった。そしてその死体を捨てて、ローランの母親が捜査の混乱を招くために刺し傷をつくったのだ。

映像が陰影もあり、暖かみのある映像で美しい。
最近の日本映画は映像が照明をちゃんと当ててなかったり「映像がきれいだ」と思うことがなくなってきたからなあ。
すごく高級な一品料理のような感じでした。







少女は卒業しない


日時 2023年3月21日12:15〜
場所 新宿シネマカリテ・スクリーン2
監督 中川駿


明日は高校の卒業式。卒業式の予行演習で山城まなみ(河合優実)が卒業生の答辞を読むと知ってみんなざわつく。「ああいうのって生徒会長とかすると思っていたから」「私も。専門学校だから割と早くに落ち着いていたからかな」
後藤由貴(小野莉奈)はバスケ部の部長だったが、心理学の勉強がしたくて東京への進学を決めた。しかしそれが決まってから彼氏の寺田(宇佐卓真)とはうまくいってない。
軽音部では卒業式の後に行われるバンドの出演順でもめていた。口パクのハードロックバンド「ヘブンズ・ドア」が生徒の投票でトリになったのだが、「これはみんな面白がってのことだろ!」と他のバンドが怒ってくる。部長の神田杏子(小宮山莉渚)は「ヘブンズ・ドア」のボーカルの森崎が歌がうまいことを知っていた。
クラスになじめず図書室通いの作田詩織(中井友望)は卒業式の後にみんなで写真を撮ったり、卒アルに書き込みをするような時間が苦手だった。図書室の管理もしている坂口先生(藤原季節)に相談する。
そして卒業式当日がやってきた。4人はそれぞれ抱えている悩みに区切りをつけたいと思ってその日を迎える。


全然注目していなかったのだが、(この映画を知ったのは「エンパイア・オブ・ライト」を池袋で観たときにポスターを観たときか)Twitterで何人かが誉めているでの気になってきた。もう先週今週で終わる劇場も出てきてシネマカリテも1日1回の上映だが休日の今日はほぼ満席。

それにしても見逃さなくてよかったなあ。
前半、卒業式前日はいわゆる「フリ」である。彼女たちが抱えている問題をどう立ち向かうか。
特に山城まなみの問題は驚いた。前日には普通に彼氏に弁当を作ってきたではないか。それが卒業式の朝には無人の料理室で弁当を彼氏に渡している。「えっ?」となった時に卒業式で涙の女性がいる。彼女の手元には彼氏の写真だ。
「えっ、彼氏死んだの?」だから昨日後藤が花火を買いに行ったときに店の人に「去年はいろいろあったけど」とか言われるし、山城が答辞になってみんながざわついたんだ。
伏線だったんだなあ。

彼氏の死は「窓から落ちた」とだけで事故なのか、自殺なのか判然としない。自殺だったらきついよね。

軽音部の神田は実は同じ中学の森崎が好きらしく、歌も本当はうまいことも知っている。そして彼にちゃんと歌わせたい。
坂口先生は奥さんがいるけど(夜の商店街で出会ったときに指輪だけでそれを説明する)その気持ちは言えない。でも翌日に先生に借りていた本を返したときに、「同じ本買いました」というと、今まで借りていた本を渡す。
こういうのうまいなあ。

後藤が彼氏と遠距離になっても東京へ行く。うん、そうだよね。今は彼氏のために自分の夢を犠牲にするのは違うぞ。それでいい。

全体的に音楽は少な目で抑制的。あおるような音楽もない。
「桐島、部活やめるってよ」と同じ原作者の朝井リョウの原作だからかもしれないが、群像劇とか、等身大の感じとか共通するものも感じる。
監督の中川駿は「カランコエの花」を撮った新人。あの映画もリアルな感じがよかったが、本作ではもう少し普遍的な高校生が描かれた。

よかった。本年のベストテン入りである。






Frankensteins KUNG-FU Monster(閃電騎士V3)


日時 2023年3月19日14:00〜
監督 不明
製作 1957年台湾(日本未公開)


台湾で製作された「仮面ライダー」のリメイク。日本では未公開。
私が観たのはドイツで発売されたDVDで、ドイツ語吹き替え版。
「子供向け作品なのだから画を観てれば言葉はわからなくてもなんとかなるかな」と思ったが、甘かった。英語ならともかく(でもないか)、ドイツ語吹き替えだから、さっぱりわからない。

観ていて最初香港かと思ったら(ネオンの感じとか雑踏の感じが香港ぽかったのだ)、台湾である。
仮面ライダーがバイクで疾走して後ろでバーンと爆発してセメントが見事にあがるシーンなどはオリジナルから編集だろう。
(ゲストのスタントドライバーの萩前弘信さんの話では、こういったカットではバイクの走りはOKでも爆発の方でNGになったことも珍しくないそうだ)

仮面ライダーの1号と2号が出てきて、人間型ロボット(アンドロイド?)みたいなのの胸をあけて基盤をハンダで修理するシーンもあり、途中で博士みたいな人に変わって、そこは爆発の危険があるのでライダー1号2号は避難、あとは博士が行う。
そしてどうやらこれがV3になるらしい。

台湾の俳優のシーンがほとんどで、それなりに格闘もしているから、割とまともな映画である。大きな爆発とかはオリジナルからの編集だそうだが、そのオリジナルを知らないので、違和感はない。
よく出来ていたと思う。




オマージュ


日時 2023年3月18日19:40〜
場所 新宿武蔵野館・スクリーン2
監督 シン・スウォン


映画監督にはなったものの、ヒット作に恵まれず3作目で行き詰まっているジワン(イ・ジョンウン)。大学生の息子さえも自分の映画はつまらないと言って観てくれない。夫も無関心。
そんな時、後輩から映画祭で上映される映画の修復の仕事を依頼される。
それは1960年代に撮られた「女判事」という映画。韓国初の女性判事を描いた作品で監督はホン・ジェウォン。彼女は60年代に3本だけ監督しただけだ。
その映画が発見され、上映されるのだが一部音声が欠落しているのだ。その修復を手伝ってほしいという話。監督の娘に会う。シナリオはなんとか見つかった。欠落していたせりふもシナリオに書かれていて、別の役者で吹き替えればなんとかなりそうである。しかしシナリオに書かれていて欠落しているシーンがあることに気づく。前後の関係が不自然なので撮影後になんらかの理由でカットされたと考える方が自然だ。
監督の娘にもらった写真に明洞茶房という喫茶店で撮った写真があった。店主を探し、この写真を見せると覚えていた。60年代当時、映画関係者のたまり場で集合場所や打ち合わせによく使われていたという。
その写真に写っていた女性編集者を訪ねてみた。無くなったシーンは検閲でカットされたのではないかという。
かつてこの映画を上映した映画館を訪ねるジワン。古びた映画館だったが、そのフィルム倉庫を探してみたが、「女判事」は無かった。その映画館のオーナーは帽子工場も経営していて余った帽子が倉庫にあり、一つもらってきた。
その帽子、息子がかぶってみたが、帽子にフィルムが巻き付かれていたことに気づく。


確か「銀平町シネマブルース」を観たときだったと思うが、予告編が上映されていて「失われた映画の探索」という話で興味が沸いたので観てみた。

正直言って思った映画と違ったな、という印象。
「失われた映画の復元」というのはあくまで手段で目的ではない。監督の意図としては「韓国社会における女性の地位の低さと生きづらさ」がテーマなのだろう。

映画の中で「『女判事』は実話がベースだが、現実とは異なる。現実は判事は夫に毒殺されたらしい」という話題が出てくるので、カットされたシーンはてっきりそのことに触れるとか、政府批判のシーンかと思っていた。

しかしそうではなく、主人公の女判事が喫煙してるシーンだったのだ。つまり女性が喫煙することを描いただけで検閲に引っかかるレベルだったのだ。
日本も男尊女卑の傾向はあるけど、ここまでひどくはない。同時代の「その場所に女ありて」では司葉子はたばこ吸ってるし。

映画監督のジワンも夫には仕事を理解されず息子も「辞めれば?」と否定的。義母が家にやってくると電話があって慌てて冷蔵庫の整理などをするシーンがあるが、上の世代の女性もまた「嫁いびり」が厳しいのだろう。
さっきも書いたけど日本以上に「男尊女卑」である。

途中でジワンが子宮を切除する病気になるがこの病気の後、夫に「前立腺の病気になったら陰部を切除する?」と聞いている。このあたりも「女性は不公平」という考えがあるのだろう。

最後に気になった点をいくつか。
例の取り壊し寸前の劇場で、管理人がなにやら一部の人を入れて映画を上映している。あれってピンク映画みたいな映画を上映していたのだろうか?

そして失われた映画を求めてその古い映画館の倉庫を探すが、上映後のプリントは日本では映画会社に返却が普通だが韓国ではちがうのか?
また「昔はフィルムは防止の飾りなどにも使われた」とか説明があったけど、それにしても残っていた帽子にあったフィルムがなぜ「女判事」のフィルムだったのか?単に映画なら何でもよかったのでは?

あとその見つかったフィルムだけど、どうも16mmっぽかったなあ。35mmじゃないの?
となんだか気になる点多数。
まあ細かいことかも知れませんが。






妖怪の孫


日時 2023年3月18日16:40〜
場所 新宿ピカデリー・シアター4
監督 内山雄人


「パンケーキを毒味する」を作ったスターサンズによるドキュメンタリー映画。今度は「本丸」ともいうべき安倍晋三をテーマ。
安倍晋三を取り巻く問題をテーマ別に分けて関係者へのインタビューで構成。

「アベノミクス」「アメリカの評価」「地元での評判」「安倍家」「憲法改正」「統一教会との関係」など。
まあ8割はTwitterなどのネット空間では言われてることなので、取り立てて珍しいことではない。
その中から記憶に残ったことをいくつか。

「安倍家」の話で彼の記憶には「一家団欒」はなく、父と母は地元の山口にもよく帰っていたし、仕事も忙しかったから「一緒に食事をする」というような時間を父親と過ごしたことはなく、非常に寂しいと感じていたそうだ。
へー家庭的には不幸な少年時代だったんだなあ。
そして母を憎み、父母を越えてやる!ということが母方の祖父の岸信介の悲願だった「憲法改正」に突き進んでいったとか。
だとすると単なる個人的な事情でしかない。憲法の何がいいとか悪いとかではなく、「憲法改正」が目的になっている。それは以前から感じていたけど、その動機がそんな単純な「家庭の問題」にあったのか。

そして「アベノミクス」。「金持ちが富む政策を行えば、自然と金が全体的に回るようになる」といういわゆるトリクルダウンは起きなかった。金持ちが下のものを儲けさせるようなことはしないものだが、本人も「政治はやってるふり、やってる感が大事」と言っていたという。
学生時代から試験の点は特に勉強していなくても悪くなく、本人曰く「俺は要領がいい」と言っていたとか。
結局は要領のよさで今まで政治家として生き残っていたのだ。

そもそも「アベノミクス」も「北方領土」も本人もうまくいくとは思っていなかっただろう。

「統一教会問題」も自民党の議員は「安倍さんが応援してるからそれに乗っからないと変に思われる」という意識だったと鈴木エイト氏は語る。
だから福田達夫氏が「統一教会の何が問題かさっぱりわからない」と言って批判を浴びたが、それは当然の認識だという。

でも正直言ってマイケル・ムーアや「ゆきゆきて神軍」のような勢いはなく、きまじめさが目立ち「映画としては」面白くない。
もちろん意義のない映画だとは思わないし、意味のある映画だと思う。
しかしもっと過激にやってほしかったな。

安倍氏の銃撃事件そのものについては言及されない。これは意外だった。銃撃事件についても1章さかれると思っていたので。

個人的には安倍氏が存命中は「安倍がいなくなれば日本もよくなる」と思っていた。しかし現実は大して変わらなかった。もちろん数年をかけて戻っていくのかも知れないし、「覆水盆にかえらず」でもう「アベ政治」から戻らないかも知れない。
今国会では高市早苗や官邸が放送法の解釈変更について関わったかということの議論でまっさかりだ。
この国会軽視の精神は安倍氏が「国会なんて適当にすればよい」という悪い先例を作ってしまい、それを自民党が継承している。

果たして日本が「まともな国」に戻る日は来るのだろうか?
民主主義が壊れるのは一瞬だが、一度壊れたものを元に戻すのは用意ではないようだ。




死体の人


日時 2023年3月18日12:40〜
場所 渋谷シネクイント(7F)・スクリーン1
監督 草刈勲


吉田広志(奥野瑛太)は死体役専門の役者。最初から死体役ではなく、数年前までは劇団を主催していたのだが、今は解散した。死体役でも凝り性なので「死後硬直しているはずですから」と監督の指示にないことをしてしまい、誉められるよりめんどくさがられている。
ある日、出張風俗で「有名女子大生」というのにつられ、予約した。やってきたのは加奈(唐田えりか)。トークがうまく、乗せられオプションをつけまくってしまう。加奈は翔太(楽駆)と暮らしていたが、翔太は元ミュージシャンで今は働いておらず加奈に小遣いをたかって生きている日々。いつも雀荘にいる。


平井亜門がTwitterで「出演しました」と言っているので見てきた。もっともポスターに名前も出ていないので、役としては小さそうかな、と思ったらファーストシーンから登場。
公園の池でカップルがボートに乗っていてそこへ死体が流れてきて驚く男役。ここでもう出てこないだろうな、と思ったしあまりにも映画がつまらないので出ようかと思ったが、「ひょっとしたら」と思い最後まで見た。
帰らなくてよかった。ラストにまた映画撮影のシーンで、同じカップルが公園で首吊り死体を見つけるシーンでまた亜門さん登場。
たぶん撮影は1日ですね。
亜門さん、お疲れさまでした。

で映画のなにがつまらないかというと、展開が遅すぎ、なさ過ぎ。
無駄なシーン、カットが多いんですよ。60分で終わる話を90分かけているという水増し話。

広志と加奈の交流がもっと描かれても良さそうだが、初めて指名してから二度目の指名という2回しか交流がない。
そして加奈が忘れていった妊娠検査薬を試してみたら「陽性」だった、という展開なのだが、話が実にもたもたする。そして「陽性」の話はだんだん脇に追いやられて、加奈が妊娠して生むか生まないかという話になるが、くず男の翔太は「堕ろせ」「俺の子か?」しか言わない。

翔太を演じる楽駆は「LIFE〜白線上のアリア」でいい印象を残したのだが、今回は悪役。でもなんか薄っぺらいんだよね。ステレオタイプというか。人のことは言えないけど。

結局加奈は翔太と別れる別れないで痴話喧嘩になり、広志のアパートに逃げ込む。物語上はわかるのだが、展開が読める。そして劇団時代の小道具を使って人殺しの芝居をして翔太を諦めさせる展開。
発想はいいのだが、ここは観客もだまさなきゃ。観客は加奈は芝居だ、ってわかってるはずだし。

また広志の母親が亡くなるのだが、その遺品に息子出演のドラマの死体役のシーンだけを編集したビデオを見て泣く。ここもなんだか言いようにも思えるが、母が俳優をしていることを嫌悪している、という伏線がなければ「実は・・・・」という展開が成り立たないはず。
この展開では「まあ母親ならそうしてるよね」という事実確認でしかない。

また妊娠検査薬陽性の件も最後になって「実はガンでした」と説明されるが、そういうものなの?それにガンもあっさり治ってるし、とにかく脚本の段階で練り直した方がいい、誰かが何か言ってやった方がいい、というレベル。
若手監督では「階段の先には踊り場がある」はレベルが高いんだ。
そう再認識した。
そういえば昔松竹の「男はつらいよ」の併映「えきすとら」という映画のエキストラを主役にした武田鉄矢の映画があったな。
あっちの方がよかったのかも知れない。





シン・仮面ライダー


日時 2023年3月17日19:05〜
場所 新宿ピカデリー・スクリーン9 
監督 庵野秀明


本郷猛(池松壮亮)は恩師・緑川博士(塚本晋也)によってバッタと融合された、オーグとなった。ショッカーと言われる組織の人類救済計画に参加するつもりで緑川は関わったが、ショッカーの計画は一部の人類のユートピアを作ることが目的で、大多数の人間にとっては地獄でしかない。
緑川の娘、ルリ子(浜辺美波)とともにショッカーの組織を抜け出す二人。しかしショッカーによって改造されたオーグたちが次々と襲いかかる。
そしてついにショッカーは本郷猛と同じ、いやヴァージョンアップした改造を施したバッタオーグ、一文字隼人を送り込んできた。


2年くらい前に発表になった仮面ライダー50周年企画として企画されたのが、この映画。「シン・ゴジラ」で大ヒットした庵野秀明脚本監督作だ。

最初に言っておくが私は仮面ライダーのファンではない。もちろん放送開始の頃から存在は知っていたし、今でも続いているのは知っている。
でも当時から観なかったし、数年前にディアゴ(違ったかな)で仮面ライダーが始まって1巻だけ買った。DVDには4話入っていたと思うが、2話ぐらいまででやめた。出てくる怪人が「顔に色を塗っただけ」みたいなあまりのチープさにあきれたのだ。話も面白くないし。

という訳で何の思い入れもないのだが、「シン」シリーズは観ているので、ネタバレになる前に鑑賞。

要するにまた「エヴァ」になってるんだな。緑川ルリ子なんて庵野作品に出てくる「小生意気な女」のまんまだし、たくましい藤岡弘が演じていた本郷猛を池松壮亮が演じると聞いて「はあ?イメージ違わないか?」と思ったが、碇シンジが大人になって実写になると池松壮亮になるのだ。
そう考えると腑に落ちる。

そして最初の方で「人間のプラークがどうした」とか延々と説明する。
そんな説明いらないと思うけどなあ。あと公安とか出てきてやたらリアルにしようとするのがかえってうるさい。
その公安警察が竹野内豊と斎藤工!
竹野内とか「ゴジラ」「ウルトラマン」に続いての続投だ。

怪人が次々に出てきて倒すのだが、話が団子状で全体の盛り上がりに欠ける気がする。
ショッカー考える計画って要するに「人類補完計画」でしょ?人類を救うと見せかけて実は一部の人類だけがいい思いをするということで。
だから今回の仮面ライダーの防護服もエヴァンゲリオン(作品名じゃなく、ロボットの方)なんだよな、きっと。

それに肝心のアクションだが、元々仮面ライダーは東映の時代劇の伝統からくるチャンバラ、格闘技、武闘の流れの伝統があっての作品だと解釈してるから、CGでやられたり、カットを割りすぎで、「仮面ライダーらしさ」をまるで感じない。

一文字隼人と最初対決したとき、空中飛んでて、完全にCG。
これっていいの?ファンの人大丈夫?

また怪人役で長澤まさみ登場。顔にメイクしているので、姿を見てもわからない。俺は声でわかったけど。
エンドクレジットを観て松坂桃李が出演していたと知って驚いた。どこにでていたんだろう。たぶん怪人の一人だったんだろう。

元々仮面ライダーには思い入れはないし、最近の「シン」ブームで初日に観たけど、正直面白くもなんともなく(もとのシリーズからしてだめなんだけど)、私は完全に乗れない。
大好きな池松壮亮が出てるのを楽しむぐらい。
ファンの方は楽しんだのだろうか?
楽しまれたのなら、なにも言いませんが。






天国か、ここ?


日時 2023年3月16日13:40〜
場所 大阪ABCホール(大阪アジアン映画祭2023)
監督 いまおかしんじ


川島伸夫(河屋秀俊)は気がついたらどこか知らない場所に来ていた。道端に「天国」と書いてある紙が落ちていた。「ここって天国?」。
そして伸夫は妻の麻由子(武田暁)に会う。そして同級生の上野俊哉(水上竜土)や将棋倶楽部のチラシを配る不思議な女性に会う。彼女の名前は林由美香。そして江戸川深夜(上野伸弥)、伊藤猛(川瀬陽太)に出会う。


いまおかしんじの新作。まだ劇場公開は決まっていないが、大阪アジアン映画祭で世界初公開。せっかくなので、大阪まで日帰りで行って見てきた。

いまおか監督は「れいこいるか」「銀平町シネマブルース」もそうだったが、「亡くなった者と残された者」をモチーフにすることが多い。
今までは残された者の側から描いていたが、今回は「亡くなった者」を描く。

主人公の川島さんは「川下さんは何度もやってくる」で描かれたいまおか監督の映研時代先輩、川島さん。今回は彼が死後でどうしているかをファンタジックに描く。

出会う人間が伊藤猛だったり、林由美香だったり、現実に亡くなった方たちの名前。ただし直接モデルにしているわけではないようだ。あくまで名前を借りただけ、みたいな。
事件らしい事件も起きず、話の縦糸がない映画で、酒を飲んで、酒を飲んで、踊って、将棋指して、という感じ。
だから結末がどうなったかも記憶に残らない。

いまおか監督と川島さんの関係とか事前に知っていないとなかなか解りづらい映画かも?と見終わってすぐは思ったが、「死んでいった人は今どうしてるだろう?」という思いは誰にでも多少なりともあるだろう。

今回、実は事前にシナリオを読んでいたのだが、海岸で会話してるだけで、どんな映画になるかさっぱりイメージがわかなかった。
しかし今回は映像は色のコントラストがきついカラー、そして台詞にはエフェクト(エコー)がかけられ、癒しの音楽のような音楽がずっと流れ続ける。

この映像、音楽、音響の効果が「異世界」を演出していてよかったと思う。もう一度観よう。





Winny


日時 2023年3月12日11:00〜
場所 TOHOシネマズ日本橋・スクリーン9
監督 松本優作


2003年、ファイル共有ソフトWinnyによる映画や音楽の違法アップロード、ダウンロードが繰り返されていた。警察も著作権法違反の観点から違法アップロードをした者を逮捕した。
Winnyの開発者、金子勇(東出昌大)も事情徴収され、「著作権違反を蔓延させる目的で作ったWinnyの開発をやめ、サイトも閉鎖します」という宣誓書にサインさせられた。
それから数ヶ月後、金子勇は逮捕された。それを聞いた弁護士壇(三浦貴大)は弁護を引き受ける。金子を支援するために2ちゃんねるの住人が資金提供を申し出てきた。彼らの支援は500万円を越えるものとなっていった。
今回、そもそもの罪状が「著作権違反幇助」という曖昧なものだった。
検察の目的は何か。刑事事件で何度も無罪を勝ち取った秋田(吹腰満)藻加わり、裁判が始まった。
一方、愛媛県では「警察が事件協力者に対する謝礼」として領収書を偽造し、裏金を作っていた。それを見かけねた仙波(吉岡秀隆)は告発する。


2000年代前半に世間を騒がせたWinny事件。私自身はWinnyを使っていなかったので、その使い勝手などは全くわからない。しかし事件は知っていて、開発者の逮捕に「当然だろう」という意識でいた。そしてその後、最高裁で無罪になったことも知らなかった。

この事件が無罪になるべき説明は壇が登場するところで同僚たちの会話で簡潔に示されている。
「俺がお前をナイフで刺しても誰が逮捕される?俺であって、ナイフを作った人は逮捕されない」。この簡単な説明で事件が冤罪であることが示される。

結局、はっきりとは示されないものの、著作権侵害を憂いる人々が見せしめ的に開発者を逮捕するという手段に出たのであろう。
金子氏自身は「そこに山があるから」であり「思いついたから」である。
彼自身は根っからのソフト開発者でファイル共有で匿名性を担保されることが必要とされる(たとえば告発)場合を考えてWinnyを開発したのだ。
Winnyが自分の予想したのとは違った使われ方をしたために逮捕されてしまった。

その「告発」というのが並行して描かれる「愛媛県警裏金事件」である。
観てる間はこの裏金事件とどうつながってくるかとどきどきしたが。
そしてこの事件の為に日本のソフト開発は乗り遅れ「YouTube」に負けてしまったと描いている(はっきりとせりふで出てくるわけではないけど、そう描いている)

映画としては現代の「真昼の暗黒」「証人の椅子」である。
主役の東出もいいし、弁護士の吹腰満もいい。東出もあんな(といっては当事者に失礼だが)浮気事件を起こさなければもっと活躍できたのだがなあ。
吹腰は「銀平町シネマブルース」でも弁護士を演じており、この事件のあと映画館主になったかと想像すると楽しい。
よかった。おもしろかった。






美しい彼〜special edit version〜


日時 2023年3月11日19:00〜
場所 TOHOシネマズ新宿・スクリーン7
監督 酒井麻衣


幼い頃から吃音症で前に出るタイプではない平良(萩原利久)は学校のカーストの頂点にいる清居(八木勇征)と同じクラスになる。その美しさに見とれる平良。ある日、教室で昼寝をしている清居を見つめてしまい、それを清居に知られ「キモい」と言われてしまう。
写真が得意な平良は日曜日に町で写真を撮っていると清居がダンススクールに通っていることを知る。清居は今度イケメンコンテストに出場するのだが、それに向けて密かに努力していたのだ。清居は平良にダンススクールのことは誰にも言うなと口止めする。
しかしコンテストには落ちる清居。そこで今まで清居を持ち上げていた連中は清居をバカにし始める。それに我慢がならなかった平良はキレてしまう。卒業式の日、清居は平良にキスをした。
2年後、大学生になった平良は写真部の小山(高野洸)から好意を寄せられていた。清居はコンテストの出場がきっかけでモデルや俳優として活躍し始めていた。ある日、小山の兄が演出する芝居を見に行った平良。そこには清居が出演していた。再会した二人。しかし小山が平良に好意を寄せてくれている。


2021年11月に深夜ドラマで1話30分枠全6話で放送されたBLドラマ「美しい彼」の劇場公開用再編集版。このドラマはレンタルDVDで観た。CMクレジットを除けば1話22分ぐらいだろうから132分。ほぼノーカットだろう。話は記憶していたとおりだったが、ラストがどうなったかは完全に忘れていた。
(それにしても夜の学校で告白するシーン、カメラが手持ちでグラグラで観にくい。ここは今まで通りFIXでいってほしかったな)

ドラマのキモは清居の美少年さだろう。演じる八木はEXILE系の新人。彼にとってもあたり役だろう。平良でなくても見とれてしまう。
それで性格はドS。このドSさがドMの平良にはたまらない。清居のことを「KING」と呼び、ひれ伏すことに快感を覚えているようだ。

後半登場する小山(高野洸)がいい。優しいイケメンである。「オオカミ少女と黒王子」で登場する吉沢亮みたいなものである。
高野洸はめちゃくちゃイケメンなのに、あまり売れてないんだよなあ。あの八重歯の笑顔はいいですよ。CMとか起用する企業はないのだろうか?
「黒王子」の吉沢亮はめがねをかけて若干ネクラなオタクっぽい演出がされてたけど、高野洸はキラッキラで、こっちをフルのは実にもったいない。

少女コミックによくある「学校一のイケメンが私を好きになってくれて、しかももう一人別に好きになってくれる人が現れる」という女子の妄想のまんま。
よくもまあ同じ話ができると思うが、それを言ったら「ウルトラマン」も同じか。

とにかく八木勇征と高野洸のタイプの違う美青年ぶりを思いっきり楽しむ映画。それ以上でもないし、それで十分。

惜しいのは予算の都合かコンテストのシーンがカットされていること(元からない)。まあエキストラ入れて多数のタレントを舞台に出さなきゃいけないから予算もかかるし、低予算の深夜ドラマでは難しいのはわかるけどね。映画だったら見せ場の一つだったろうに。





にっぽんGメン


日時 2023年3月11日
場所 東映チャンネル録画
監督 松田定次
製作 昭和23年(1948年)


警視庁管内では複数犯による強盗や、自動車に通行人を引き込んで服などを奪う強盗が頻発していた。
警視庁の江藤(片岡千恵蔵)、白石(伊沢一郎)、甲野(杉狂児)をはじめとする刑事たちが犯人を追う。自動車強盗の被害者の一人が、犯人グループの中で「参謀」と呼ばれる男があり、このグループの組織化された動きは軍隊的と推定された。また盗品の背広や時計に特徴があり、古物商への聞き込みが重点をおかれた。
都内のキャバレーで「参謀」と呼ばれている男がいるという情報を得てそのキャバレーに向かう。「参謀」こと清川が女のことで喧嘩になり、暴行で逮捕する江藤たち。
白石が浅草の古着屋、村岡の店で盗品の時計と背広を発見した。しかし白石の隙をついて村岡は白石を殺害。白石の足取りを追った甲野だが、村岡の店には来ていないという。甲野は信じたが江藤は村岡の店を家宅捜索。白石の遺体が発見された。
清川や喧嘩の元になった女ナオミを取り調べ、ナオミの口から曽我部という男がリーダーとわかった。
曽我部の家にはもう誰もいなかった。しかし新聞記者の情報で曽我部の女から彼らのアジトとなる廃墟が解った。急行する江藤たち。
銃撃戦の末、曽我部、村岡は逮捕された。


「警視庁物語」以前の刑事映画。この頃から「Gメン」という言葉はあったのだ。監督は松田定次、脚本は比佐芳武。主演が千恵蔵となれば「多羅尾伴内」と同じだ。千恵蔵の「金田一」シリーズが「多羅尾伴内」化していたので、本作も変装するのかと思ったら変装は一回だけ。
それも上野の闇市での商品を買い付けを探りに浮浪者に変装しているだけだ。

「野良犬」のようなバディ刑事ではなく、集団刑事物で、「警視庁物語」の芽は伺える。
でも科学捜査には重点がおかれない。しかし上野を「ノアゲ」新宿を「ジュク」、ほかにも「ナシ割り」などの隠語を多用し、なにやら本格臭が漂う。

甲野刑事が村岡の店に聞き込みにいき、彼が元女形と知る。それを報告するときに「まあ変態ですな」という。女形で変態扱いだから恐れ入る。
この甲野刑事、聞き込みにいった村岡を怪しいと思わず、その報告を聞いた江藤が「元女形のような優男が殺人をするはずがない」という先入観に陥っていないか」と論破。村岡の店に行ったがすでに時は遅し。

結局最後は銃撃戦。これがなかなか激しい。軍人上がりだけあって手製の手榴弾で応戦、ってまるで「西部警察」である。
「警視庁物語」の初期の作品では銃撃戦が出てくるが、この「にっぽんGメン」があったのだな。

あとは白石の妹も婦人警官で母親は杉村春子。この母親が「誕生日は早く帰れるんだろう」とかいちいち心配でちょっとうるさい。
しかし息子の殉職を聞いて「公僕ですから、あの子の命は任官したときから皆様のものと考えておりました」という立派な言葉。
終戦直後ですから、「公僕」を「兵隊」と置き換えれば表向きはそう考える人も少なくなかったかもしれません。

「家族が事件に絡んでくる」など後のテレビの刑事ドラマにもつながる部分もあり、「警視庁物語」よりこちらの方が刑事ドラマの元祖と言える気がする。
まだ数本あるので、そちらもおいおい鑑賞していきたい。








エンパイア・オブ・ライト


日時 2023年3月5日16:05〜
場所 池袋グランドシネマサンシャイン・シアター8
監督 サム・メンデス


イギリス南部の海岸町の映画館エンパイア劇場。1980年のクリスマスから1981年の話。ヒラリー(オリヴィア・コールマン)はフロアマネージャーとして働いていた。彼女は支配人のエリス(コリン・ファース)と不倫関係にあった。彼女は夏に一度精神を病んで入院して仕事に復帰。現在はカウンセリングを受けつつなんとか生きていた。
そこへ黒人青年のスティーブ(マイケル・ウォード)が新しく入ってきた。彼らはいつしかお互いを大切に思うようになる。
しかしまた心を病んでしまったヒラリーはしばらく映画館を休んだ。エンパイア劇場では新作「炎のランナー」のプレミアム試写会が開かれ、市長たちも出席。そこにヒラリーも現れ、勝手に挨拶を始める。そこでエリスと言い合いになり、来ていたエリスの妻に「あなたの夫の性癖について情報交換したい」と言い出す。不倫関係はエリスの妻にも知られることとなった。
しかし時代は黒人ヘイトの嵐があった。ある日、映画館の前で黒人反対デモが通りかかり、スティーブを見かけると暴徒はスティーブに襲いかかった。スティーブは重傷を追ったが、なんとか無事だった。
「君は映画館で働きながら映画を見ていない」とスティーブに言われるヒラリー。エンパイア劇場に行き、映写技師のノーマン(トビー・ジョーンズ)に「何でもいいから映画を見せてほしい」と頼む。
彼女が見たのはピーター・セラーズの「チャンス」。彼女は感動した。
スティーブは退院。それを迎えたヒラリーだったが、スティーブは前からの夢だった建築の大学に行くという。
二人はそれぞれの道を歩き始めた。


こんな感じの話。
最近「バビロン」「銀平町シネマブルース」「フェイブルマンズ」あと3月末公開の小中和哉の新作など映画、映画館をテーマ、モチーフにした映画が連続公開。(「エンドロールの続き」というインド映画もあった。見逃したけど)
その流れで見たけど、完全にはずされたなあ。

まずヒラリー。どう見てもただのおばちゃんである。20代後半ぐらいの美人女性ならともかくただのオバチャンじゃない。
いや現実におばちゃんを差別するつもりはないけど、「映画として」ヒロインがおばちゃんはきつい。
しかも支配人と不倫関係。支配人もこんな美人でもないおばちゃんと関係するのだから(オフィスでのファックシーンもある)、支配人も趣味がなかなかマニアックだ。

さらに相手役が黒人青年。いやこれもまた黒人差別の意識ではないのだが、普通映画なら「20代後半の美人女性と20代前半のイケメン青年」の組み合わせになりそうなのに(それこそテレビドラマ「今日は会社休みます」みたいに)そうじゃない。冒険である。
でもやっぱり映画なんだから美男美女カップルが見たい。

そんな感じで主人公が「おばちゃん」だから完全に私は映画に乗れない。終始冷めっぱなし。

そして映画館で上映される映画は「大陸横断超特急」。封切り作品ではないな。看板だけとかポスターだけだと「ブルース・ブラザーズ」とか「オール・ザット・ジャズ」とか出てきたけど。
お決まりのように最後に主人公が見る映画が「チャンス」。
この映画、ピーター・セラーズの伝記映画でも彼の重要作品として扱われていた。日本じゃあんまり聞かないけど、そんな扱われ方する映画なら今度見てみなきゃいかんな。

あとベテラン映写技師役でトビー・ジョーンズ。この方「ミスト」でスーパーの副店長役でかっこよかった方だ。久々に見た。








フェイブルマンズ


日時 2023年3月5日11:10〜
場所 TOHOシネマズ池袋・スクリーン9
監督 スティーブン・スピルバーグ


サムはまだ幼かった頃、生まれて初めて映画館に連れて行ってもらい、「地上最大のショウ」を見る。その途中にあった列車の衝突シーンに衝撃を受ける。クリスマスプレゼントに列車のおもちゃを買ってもらい、衝突シーンを再現してみた。車両を壊してしまったので、母親から「映画に撮りなさい。そうすれば何回でも見れるわ」と8mmカメラを渡される。
そしてサムは映画製作に夢中になる。ボーイスカウトの仲間と西部劇や戦争映画を撮る。
父が大手のGEに転職し、一家はアリゾナに引っ越す。家族と父の親友とキャンプに行ったときも映画で記録した。その映画を編集しているときにサムは気がつく。母が父の親友に対してみせる笑顔、表情。それは恋をしている様子に見えた。そのことがきっかけで母とはぎくしゃくする。
父はコンピューターの技術が認められ、IBMに入社することになり、一家はカリフォルニアへ。転校したサムだったが、この高校は自分がユダヤ人ということでイジメにあう。


スティーブン・スピルバーグの自伝的物語。映画と出会って映画の魅力にとりつかれ、そして映画会社の門を叩く、という映画愛にあふれた映画かと思ったらさにあらず。

タイトルのフェイブルマンは主人公の姓。その複数形なのだから「フェイブルマンズ一家」みたいな意味なのだと思う。
一言で言えば「俺も少年時代は両親の離婚とか高校時代はイジメとかいろいろあったよ。映画ではいいことも悪いこともあった。でも俺には映画しかなかったな」という思い出話。

映画によって彼は母の不貞という真実を見てしまう。
そして高校時代自分をイジメした奴を撮った卒業イベントの記録映画で、最高にかっこよくとり嫌みにか褒め殺しにも似た映画を作る。
映画は事実を写すし、また虚構さえも作り上げる。

そんな不思議な「映画」に見入られたサム。
大学は中退してテレビCBSの番組制作会社へ。
そこでジョン・フォードのオフィスに入れてもらい、彼と出会う。
彼は壁の絵を指し「地平線が下の方にある、上の方にある絵はすばらしい。中央にある絵はつまらない」という。
また「映画作りなんて心が張り裂けるだけだぞ」とさえ言われる。

このエピソードが本当か脚色かはわからない。でもやはり映画作りの本質というか彼の原点の言葉になったのだろう。
普通はそういうのは自伝に書くのだが、それを「映画でしか語れない」というのがスピルバーグなのかも知れない。

映画自体はそれほど面白い訳でもないが、スピルバーグの映画を理解する上で、彼の家族観、人生観を知ることが出来、今後彼の映画を見る上での補助線になることは確かだと思う。
その点では見る価値があった。





TOCKA/タスカー


日時 2023年3月4日20:05〜
場所 ユーロスペース2
監督 鎌田義孝


北海道道東。荒涼とした北の大地。谷川章二(金子清文)は借金取りに追われ、自分の店の商品を持って行かれた。「まだ冷凍庫があるだろ」といわれたが「これはまだ使っている」と拒む。仕方なく今日は帰る借金取り。
本田早紀(菜葉菜)は一度は歌手を目指して東京には出たものの、成功せずに故郷に帰ってきた。今はスーパーでバイト。買い物依存症の傾向があるが、カードは未払いがたまってもう使えない。
大久保幸人(佐野弘樹)は「無料で引き取ります」と言って「回収は無料だけど運搬費で4万8千円」というような詐欺的な廃品回収や、外にある灯油タンクから灯油を盗んで売って生計を立てていた。妹と二人暮らしだが、妹は妊娠、しかし相手の男は逃げている。
どん詰まりの3人。
章二は町で手当たり次第に「ちょっといい仕事あるんですが」と声をかける。自殺サイトに「私を殺してくれませんか。報酬を差し上げます。電話番号は・・・」と書き込む。
それに応じたのが早紀だった。早紀は章二の過去を話してもらう。「息子が小児ガンで亡くなり、それがきっかけで妻はおかしくなって自殺した。娘は祖父母の家に預けている」。その妻の遺体はまだ冷凍庫に保管してあった。「あなたが死んだらこの遺体が見つかる」と言われ、夜、荒野に埋めることにした。そこへ不法投棄をしようとした幸人がやってきた。
遺体を見られた幸人を殺そうとする章二たち。しかし結局は幸人も仲間に加わって、章二を殺すことにする。


タイトルの「TOCKA」はロシア語。英語読みすると「トクカ」になるが、CをSの発音で読むようだ。意味は「憂鬱、憂愁、絶望などを意味し、その反意として郷愁、憧れ、未だ見ぬものへの魂の探求、などの解釈がある」(公式HPより)。なかなか絶妙なタイトルである。この英語ではない、ロシア語というマイナー感がいい。

とにかく荒涼としている。16mmで撮影されたそうだが、そのせいか普通の町並みさえ荒涼としている。釧路駅前、海、そして広野に延びるアスファルト道路。
どこかここから先はない、どん詰まり、の感じがあって、主人公たちの人生のどん詰まり感と相まってとにかく「行き場がない」感がたまらない。
同じ話を東京とか千葉でも話は成り立つだろうが、この「行き場のなさ」はこの北海道の道東でなければ出てこない気がする。

最初は酔っぱらって早紀が章二をひき殺す計画だったが、幸人が「そんなうまくいきません。それより二人で車で海に落ちて一人助かって酒酔いよい運転で事故、と証言しましょう」と提案。黙って返すわけにもいかないのでそのまま幸人も仲間に引き入れることに。
でも結局は怖くなって飛び込めず、代わりに早紀が運転して飛び込んだが、車が沈んだ後死にきれなかった章二は浮き上がってしまう。
ここでとりあえず生き直す気になったのだが、結局はトラックにひき逃げされる。

話は説明的なせりふ、描写は出来るだけ避けられ前半では彼らがどんなバックボーンを背負っているかわからない。
しかし早紀の船の上から実家に「事務所に入ったよ」とか、同級生にあって連絡先交換しようと言われ「LINEもフェイスブックもやってない」というところとか、試食コーナーでの客とのやりとりとか、なんか文章にすると何でもない台詞の積み重ねで彼らの「希望のない様」がびんびんと伝わってくる。

とにかく主人公3人のどん詰まり感がたまらない。荒涼とした広野の風景がそれを視覚化する。北海道だから起こる話ではなく、日本のどこでも起こり得るような話だ。
我々はかように生きづらい時代を生きている。

よかった。今年のベストテンに残る傑作だ。







なのに、千輝くんが甘すぎる。


日時 2023年3月4日15:15〜
場所 新宿ピカデリー・シアター1
監督 新城毅彦


園芸部の山田太郎(曽田陵介)に告白した如月真綾(畑芽育)だったが、「誰?キモ」と言われフられる。しかもSNSで山田が「ブスな女に告白された!キモ」と言ってるのを見てさらに落ち込む。
そんな如月の姿を見て同じ図書委員当番だった学校一のモテ男子、千輝彗(高橋恭平)に慰められ、「失恋の痛みを消すのは新しい恋が一番だよ」と言われ、さらに「俺と片想いごっこしない?」と持ちかけられる。
如月にとっては千輝くんは雲の上の存在。陸上選手で顔もイケメン、その上優しいとすべてが素敵な千輝くん。
「好きになってはいけない存在。千輝くんは同情してくれてるだけ」と思う如月だったが、その魅力にだんだん好きになってしまう。
しかし実は千輝にとって如月は電車で時々見かけて気になっていた存在だった。そして千輝と中学時代の陸上部の同級生で手塚(板垣李光人)も如月のことを好きだったのだ。


少女コミックの映画化。主演の高橋恭平は今ジャニーズで一番勢いのあるなにわ男子のメンバー。でも正直言うけどかつての山崎賢人や福士蒼汰ほどのキラキラ感は感じないのだなあ。女の子はまったく知らない子。
この手のJK少女コミックの実写化は近年、男も女もレベルが下がっている。「思い、思われ、ふり、ふられ」の北村匠海あたりが最後のキラキラ男子だった気がする(今のところ)。

特に目新しい感想もなく、「自分を学校一のイケメンが好きになってくれて、さらにもう一人好きになってくれる人がいる」という女子の妄想の映画化。いいじゃありませんか。女子だけでなくおじさんでもそういう妄想はあるよ。だから私はこの手のジャンルの映画は楽しめるんだ。

板垣李光人がかつては吉沢亮がよく演じていた男子主人公の親友役。
正直言うけど私はあまり好きではない(嫌いというほどでもないけど)。
テレビのBLドラマ「不幸くんはキスするしかない」で好演していた曽田陵介くんの出演を楽しみにしていたが、3シーンほどしか出演しなくて残念。せっかく人気も出てきている曽田くんが出演なのだから、てっきり「最初はフったけど、やがて彼女を好きになる」的な展開かと思ったら、最後まで悪役だった。残念。

本日は丸の内ピカデリーで開催された初日舞台挨拶の中継付き。
前も書いたけど、中継の方が出演者の表情とかよく見えるし、特別料金ではないからお得感があるんだよね。
登壇は高橋恭平、曽田陵介、畑芽育、主人公の恋のライバルとなる花咲役の中島瑠菜。中島は川上なな美に似ていると思う。
舞台挨拶は今回はコロナ対策の緩和もあって、登壇者の間にカーテンはあるけど、観客の声出しはOK。
印象に残る話は特になかった。