2023年6月

   
宇宙5000年目の恐怖 MOON and GOLDFISH 君は放課後インソムニア 大名倒産
大いなる眠り
(吹き替え版)
人喰いアメーバの恐怖2 探偵マーロウ 銀平町シネマブルース(9回目)
水は海に向かって流れる タクミくんシリーズ 長い長い物語の始まりの朝。 渇水 怪物

宇宙5000年目の恐怖


日時 2023年6月26日
場所 TSUTAYA宅配レンタルDVD
監督 ロバート・J・ガーニーJr
製作 1958年(昭和33年)


人類は音の壁を破り、今度は時間の壁を破ろうとしてた。アーリング教授とその助手のビクターはある田舎町の湖の中にある島で研究を重ねていた。
そしてその研究の成果をニューヨークの考古学者のヘッジス博士に送り鑑定を依頼した。ヘッジスはアーリングから送られてきた彫像を研究したが、それは西暦5200年に作られたものだと判明した。
一方、アーリングは「この研究は危険な兆候がある」ということで、一時的に実験を中止し、ヘッジスの研究の検討を依頼する。
ヘッジスはアーリング教授の研究所にやってきた。「西暦5200年に作られた彫像がどうしてここにあるのか」を問うと「時を越える研究をして、未来から送られたものだとアーリングが答えた。
アーリングとビクターは時を越えて物質を送り込む機会を発明し、例の彫像は逆に未来から送られて来たものだという。


BC級SFは好きだが、やはり当たり外れがあってこれは外れ。
だいたい話がおかしいよ。
なんで彫像の調査を考古学者に頼むのか。そしてなぜ西暦5200年につくらたもの、と解るのか。
邦題も「宇宙5000年目の恐怖」って宇宙関係ないよ。「未来5000年目の恐怖」ならまだ解るけどさ。

第一1959年で未来と者の行き来ができる装置を発明できるなら、その3000年先の未来ではもっと時を自由に行き来できるようなってないか?
だから未来から過去へ来る機械ができることはあっても未来においてその機械がないのはなんか変。

そして未来から怪人がやって来るわけだけど、未来の大気汚染やら放射能汚染(映画では言及はなかったけどたぶん核兵器の問題)で顔は醜くなっていて「恐怖の怪人」という設定。
未来人に失礼だなあ。

そしてなぜか未来人は他人の変装する顔マスクをすぐに作れる技術を持っている。(医者が看護婦を手配したとき、その看護婦を未来人が襲って顔のマスクをすぐに造って看護婦に変装して家に入るのだ)

また人間関係の描写も変で、考古学者が教授の娘となぜかキスをしてしまうような関係になり、婚約関係にあるみたいな助手のビクターと犬猿になって対立を生むとか話が脇にそれる。

とにかく話がむちゃくちゃで観ていて面白くもなんともない。
日曜日の夜に観て途中で寝落ちして、月曜日に後半を観たくらい。
でもつまらないとは解ってるけど、このアメリカ製BC級SF、観ちゃうんだよねえ。






MOON and GOLDFISH


日時 2023年6月24日20:40〜
場所 新宿K's cinema
監督 飯塚冬酒


鉄工所で働くシンイチ(平井亜門)は働きながら高卒認定の資格を取るべく勉強していた。
父親は病気で働けずしかも多重債務を抱えてるという親を持つヒカリ(峰平朔良)。路上ライブが唯一の心のより所だった。
そんなシンイチはヒカリと出会い、常連客となる。借金取りに責められている所をシンイチが助けたところから交流が始まる。ヒカリが働くライブハウスでバースデーライブを開催するヒカリ。そのライブに行ったシンイチも幸せな時間を味わった。
高卒認定をすれば大学受験が出来るとヒカリに話すシンイチ。翌日二人は大学に忍び込み、つかの間の大学生活を経験する。
ヒカリの父は亡くなった。シンイチも鉄工所に来ていたベトナム人へのいじめに無言の抗議をする。
そして3年後。
シンイチは大学に入学した。ヒカリは大きなホールでライブをするようになっていた。


平井亜門主演作品。
スタンダードサイズ、白黒パートカラー。正直言ってこのあたりのこだわるがいやである。今時白黒ねえ。
そして若者の生きづらさ。もう金がないとか学歴がないとか父親が病気だとか借金取りが来るとか外国人に職場を奪われる強迫観念とか不幸のてんこ盛りである。

観ていていやになる。ミニシアターで観る映画は大抵生きづらさ、がモチーフになっている。
それだけインデペンデント映画の作者たちは生きづらいのか?
(たぶんそうなのだろう)

それでもシンイチが高卒認定について「大学に行けるようになる」「何で大学?」「・・・わかんない。でもここから抜け出せそうな気がする」というせりふが印象に残る。
大きなクライマックスもなく、映画は3年後を迎える。
3年後、シンイチは大学生になっている。大学に行く金が彼にあったのか(大学に行けば学費も大変だし、今のように働けなくなる。彼の家庭環境には説明がないので解らないのだが)という疑問は残るが、それにしても「ここではないどこか」へ行けるかも知れず、希望が持てる。

そしてサクラも大きなホールで歌を歌っている。あの調子ならCDデビューぐらいはしていそうで、出世しすぎの感はある。
だから二人の3年後の描き方はちょっと違和感を感じるのだけど、それでも「映画は希望がある終わり方が好き」という私には好ましく思えた。

平井亜門はいつもの元気いっぱいの感じから台詞も少ない内向的な役。
それでもヒカリの初めてのライブに行ったときの多幸感の笑顔や、いじめにあってるベトナム人に助け船を出すラスト(実はここがクライマックスなのだが)で見せた怒りの表情はすばらしかった。
そろそろTAMAシネマフォーラムで「新進男優賞」がもらえるかも知れない。

ベトナム人に助け船を出すシーンについてもう少し書いておく。
「お前がいると俺らの仕事が奪われる」という先輩の言いがかりで弁当に過剰な醤油をかけられそうになる。それを観たシンイチが無言で自分の弁当に醤油をかけ、黙々と食べる。
この一連のシーンはシンイチは台詞もなく、目線と表情だけである。彼の怒りがひしひしと伝わってきて名シーンだった。

この映画、携帯電話は登場しないし、ウォークマンはカセットテープだ。
舞台設定は80年代なのかと思って上映後ロビーにいた監督に聞いてみた。
「舞台設定は現代です。しかし携帯電話など現代を感じさせるようなアイテムは出さないようにしました」ということで、「いつの時代に共通する若者の『ここではないどこかへ』へ向かう力強さ」を表現したかったということか。
よかった。






君は放課後インソムニア


日時 2023年6月24日16:50〜
場所 TOHOシネマズ新宿・スクリーン12
監督 池田千尋


中見丸太(奥平大兼)は不眠に悩む高校生。ある日掃除道具の脚立を取りに屋上の天文台に行ったところ、そこで寝ていた曲伊咲(森七菜)に出会った。彼女も不眠に悩んでいて、昼休みにここで休んでいるという。
二人で天文台で昼寝をする日々が続いていたが倉敷先生(桜井ユキ)に見つかってしまう。先生の提案で二人で天文部の活動を始める。
OBの白丸さん(萩原みどり)のアドバイスで、6月に地域の人たちも見に来れる天体鑑賞会を計画したが、当日は大雨で中止。
部活動の実績作りのため、今度は天体写真を撮影することに。
二人で撮影合宿を計画し、伊咲の姉の早矢が付き添いでいくことを条件に出かけた。ところが早矢は途中で彼氏とお泊まりデートのために抜け出した。二人きりになったのだが、早矢が抜けていることが親にばれ、伊咲の両親が迎えにくることに。
しかしどうしても写真が撮りたい丸太と伊咲は宿泊場所を抜け出して、予定されていた場所に向かう。
そこで二人はお互いの気持ちを、「好きだ」と告白するした。


横浜流星の「ヴィレッジ」を観たときに横浜流星と同じくゴミ処理場で働く、弟分のような存在で出演していたのが、奥平大兼。3年前の長澤まさみの「MOTHER」に出ていたというけど、あんまり記憶にない。映画自体がいやな記憶だったからかなあ。
でも今回映画のチラシを観て、そのさわやかメガネ姿のイケメンぶりを観て注目度があがったこの映画。楽しみにしていた。

でも正直、退屈だったなあ。
まずね、最初の不眠症(インソムニア)という要素が途中からどっかへ行ってしまう。さらにマイナー部活ものかと思いきや、初のイベントは大雨で中止。なんだよそれ。
さらに伊咲は心臓に異常を抱えていて(心室が一つしかない)、合宿で無理をしたから、天文部も親に止められてしまうという展開。

高校生恋愛ものなのか、マイナー部活ものなのか、難病ものなのかなんだか軸がはっきりしない、ただただ要素を詰め込んだだけの映画にしか見えなかった。
正直軸がないから話の着地点が見えずに、退屈したなあ。

結局伊咲が入院する前の晩に伊咲の家にやってきて、入選した写真を見せ(そう、合宿で撮った写真がコンテストで入選したのだ。何の部門とかは知らんけど)「10月にまた天体の鑑賞会をする!」というのだ。
ここから部活ものに戻るかと思ったら、ここでエンドクレジット。

結局伊咲の病気がどうなったかも着地点がないし、とにかく縦糸が見えない映画で、期待した映画ではなかったな。
奥平大兼はメガネ姿もさわやかで、山崎賢人の若い頃を思い出させるイケメン。今後の活躍が楽しみ。





大名倒産


日時 2023年6月23日18:45〜
場所 新宿ピカデリー・シアター2
監督 前田 哲


越後丹生山藩の鮭売り小四郎(神木隆之介)は実は藩主の四男だったと知らされた。母が若い頃、お城に奉公しており、そこで藩主に見初められて懐妊したのだった。すでに男が3人いたので、生まれた子供は間垣作兵衛(小日向文世)に預けられたのだった。
ところが前藩主・一狐斎(佐藤浩市)が長男に家督を譲ったその日に長男は落馬して亡くなった。次男(松山ケンイチ)はうつけ者、三男は病弱。それで小四郎に回ってきたのだった。藩主になったと喜んだのもつかの間、実は藩は25万両、今でいえば100億円の借金を抱えていたのだ。
一狐斎は藩を倒産させて、一部の者だけでも助かり、責任者として藩主に切腹させることを計画していた。つまり小四郎は切腹要員である。
自分の切腹、そして藩の民を救うために借金返済を開始するのだが。


予告編は前からやっていたし、去年の夏「福田村事件」の撮影のエキストラに行った人から「神木隆之介が若殿様の衣装を着た映画を撮影していた」と聞いていたのがこの映画。
しかも借金に苦しむ小藩がその謝金返済に挑戦する、という内容で、現実の地方自治体の財政問題とリンクさせて楽しみにしていたのだったが、正直期待していた内容と違っていた。

まずコメディ色が強すぎる。ライトなコメディなのは予告編からも完治されたが、それにしても変顔をしたり、やたらオーバーアクトで逆にしらける。
また子供の小四郎と母親(宮崎あおい)がハイタッチをするなどの現代風過ぎる。ハイタッチ自体がもう21世紀の習慣で少なくとも昭和でさえなかった。

そして話の後半の核となるのが、借金のうち20万両は金貸に公共事業を中抜きされて出来たもの、という内容。そのお金の出入りでそれはわかったが、「証拠は?」と言われてその金貸しの蔵に丹生藩のお金があったという話。
現実の地方自治体の借金返済のヒントになるようなものがあるかと思ったら、実にがっかり。これでは何の参考にもならない。

そして今後は名産品の鮭を江戸で高値で売っていくとかうまく行きすぎ。
みんななかなかうまく行かなくて困ってるじゃん。
まあ話が出来すぎというのは「陸王」だって同じか。

それと杉咲花の小四郎の幼なじみの扱い。江戸で再会してから、当たり前のように小四郎の横にして、家臣たちとも対等に話している。いやなにその偉そうな態度。
この存在も違和感を感じ、とにかく神木の演技は明るくてよかったが、全体的にはシラケる内容だった。






大いなる眠り(吹き替え版)


日時 2023年6月19日
場所 スターチャンネル録画
監督 マイケル・ウィナー
製作 1978年


「探偵マーロウ」の公開を記念してスターチャンネルでマーロウ映画「ロング・グッドバイ」「さらば愛しき女よ」そしてこの「大いなる眠り」を放送。(ちなみにこの3本、そして「動く標的」もプロデューサーはエリオット・カストナー。このジャンルがお好きなようだ)
「大いなる眠り」は日本語吹き替え版も放送。

私がこのロバート・ミッチャムがマーロウを演じるこの映画を最初に観たのはこの吹き替え版。そもそも日本では劇場公開されずにテレビとソフト化だけだったと思う。テレビ放送も「午後のロードショー」などの90分枠だったと思う。
たしかに今回放送のあったバージョンも上映時間は76分だ。
オリジナルは100分あるから24分もカットだよ。

でもまあ主要なシーンは押さえてるから話は分かった。
殺人があって、犯人が分かるがすぐに殺されて、その殺した奴もまた殺されるという展開。
結局はジェームズ・スチュワート演じる将軍が本音では探してほしいと思っていた娘婿を殺したのは?というのが事件の始まり。

今回有料のスターチャンネルに加入してまで(1ヶ月2300円ぐらいなのだ)観たかったのはこの吹き替えバージョン。
ミッチャムの声をあてているのは納谷吾朗だったのだな。

このバージョンを観たときの印象が強く、マーロウのせりふ回しが気に入っていたのでオリジナル字幕版を観たときにはなんだか物足りなさというか違和感が残った。
一人称を「俺」と「私」ではだいぶ違う。

ラストの「金は欲しいさ。だから警官などにも頭を下げる。何かありましたらまた連絡をください、名刺をおいていきますってな」という台詞を耳で聞くとしびれるのだなあ。

とにかく長年再見したかったバージョンなので(VHSでは録画してるがもはや再生できない)、再見できて本当によかった。
ただただうれしい。






人喰いアメーバの恐怖2


日時 2023年6月18日
場所 DVD
監督 ラリー・ハグマン
製作 1972年(昭和47年)


3ヶ月の長期工事から帰ってきた配管工は地中から「冷凍保存」と書かれた魔法瓶のようなものを自宅に持って帰ってきた。それを冷蔵庫内のものの入れ替えで外に出しっぱなしにしてしまった。それはフタを壊し、中から赤いゼリー状の物体が出てきた。赤いゼリーは配管工や妻を襲う。
たまたま訪ねてきた配管工の友人のリサは赤いゼリーに配管工が食べられるのを目撃。あわてて帰って恋人のボビーとともに配管工の家に帰ってみた。しかし今はなにもない。あわてて帰ったときに車をぶつけられそうになった町の実業家のファジオからは怒られるわ、で散々である。
しかし町では排水溝にいた不良を取り調べていた保安官が襲われ、風呂に入っていた中年男が赤いゼリーに襲われそうになって全裸で飛び出した。
床屋では髪を切りにきた長髪の青年と床屋がシャンプー台の排水溝からやってきた赤いゼリーに襲われた。
保安官も最初は信じていなかったが、やっと信じるようになったが、そのときはボーリング場が襲われていた。リサとボブもボウリング場にいたが、人々はパニックになって外へ避難。ボブたちは改装中の併設のスケートリンクに逃げ込んだ。そこへこの施設のオーナーのファジオもやってきたが3人はスケートリンクの事務所に閉じこめられてしまう。
保安官は銃も聞かないので、スケートリンクごと焼き払おうとする。


「マックイーンの絶対の危機(ピンチ)」の続編。
DVDジャケットの解説などには「今回はコメディ」と書いてあるけど、別にコメディではない。前回とテイストは同じ。

とにかく田舎町の各地でアメーバに襲われる人が続出するが、主人公の若者のいうことなど保安官は信じない。ラストの20分ぐらいになって
やっと保安官も事態を把握してくれる、という展開。

1972年はヒッピー文化などがあり、若者が長髪をし始めた時代。
だからもう床屋を訪ねてきた若者を徹底的に床屋は毛嫌いしている。とにかく「若者VS大人」の構図。こういうところが時代を反映してるなあ。
マックイーンの方も「若者VS大人」の構図はあったけど、長髪とかヒッピーなどが70年代である。

最後はアイススケートリンクの事務所に閉じこめられたが、その事務所の冷蔵庫の氷がアメーバにかかって退散したところから、「アメーバは冷気に弱い」と知って、スケートリンクを凍らせよう、となるのだが、そのスイッチまでがロープを伝っていかなければならない!というのがクライマックス。

こっちのほうが前作よりクライマックス感はあってよかった。
ラスト、凍ったアメーバの上でテレビの取材を受ける保安官。グダグダと演説しているとカメラクルーのおいたライトの熱で氷が溶けだし、アメーバが保安官の足にからみつく。
ここで「THE END?」とでるお遊びも同じ。

テイストもストーリーの流れも前作とまったく同じだった。
普通パート2だとちょっと変えるのだけれどね。




探偵マーロウ


日時 2023年6月17日14:00〜
場所 TOHO日比谷シャンテ・スクリーン1
監督 ニール・ジョーダン


1939年のアメリカが第二次世界大戦に参戦する直前のロサンゼルス。
そんな時代に私立探偵フィリップ・マーロウ(リーアル・ニーソン)が受けた依頼は失踪人探し。依頼人は富豪の夫人、クレア・キャヴェンディシュだ。愛人だったニコ・ピーターソンを探して欲しいという。ニコはハリウッドの映画スタジオを端役として一応働いていた。そのスタジオの持ち主はクレアの母親だった。クレアの母親は元女優。亡き夫が石油関係の事業をしていて、資産は膨大だという。その財産の指南をしているのは次期英国大使といわれているオライリーだった。
マーロウはニコの周辺を探り始めた。彼の家に行ってみたが1週間ほど前からいなくなっていた。そして高級社交クラブ・コルバタクラブの前の路上で最近死体で発見されたというのだ。警察ではひき逃げとして処理されているが、その犯人はまだ捕まっていない。
そのことをクレアに報告するマーロウだったが、クレアは最近メキシコのティワナでニコを見かけたというのだ。
ニコの身辺を再び調査するマーロウ。そして聞き込みに行ったニコの妹も死体で発見された。


全く知らなかったのだが、昨日の朝日新聞の朝刊に全面広告でこの映画の広告が出ていて知った次第。都心では日比谷シャンテのみ。新作の情報なんて、映画館のチラシが主な情報源だから、新宿の映画館ではないわな。
本日、特に映画を観る予定もなかったので早速鑑賞。

公式の解説によると「ロング・グッドバイ」の続編でチャンドラーが書いたものではないが、続編だという。しかも公認、(って誰が公認したのだ?)
マーロウは長編は全部読んでいて(ただし学生時代に読んだから、あまり覚えていないのだが)、マーロウに登場する要素は出てくる。
金持ち、失踪事件、ハリウッド、麻薬、ギャング、メキシコのティワナなどなど。続編というというより「マーロウでありそうなもの」を登場させた感じ。だからこそ世界観は崩していない。

正直言うけど、演じているリーアム・ニーソンは70歳だそうで、年取り過ぎだよ。声がしわがれていて年寄りくさく、ちょっと老け過ぎなんだよね。だから私のイメージじゃないなあ。
私の好きなマーロウはロバート・ミッチャムだ。

だからとにかく映画に乗れずに少し寝落ちした。しかし話は十分にわかった。
結局ニコはコバルタクラブを通じてハリウッドに流れていた麻薬の記録やコカインそのものを持ち出していたのだ。それを取り返すためにクレアはニコを探していたということ。
お決まりでマーロウは最後にコバルタクラブの支配人に捕らえられるのだけれど(このコバルタクラブの乱痴気騒ぎの描写が先日の「バビロン」にちょっと似ていた。あそこまでクドクドとは描かなかったが)、そこで同じく捕らえられていた黒人の運転手と後半共闘するのが面白い。
この運転手がいい相棒ですね。

結局、マーロウはクレアにまんまとうまく利用された訳だが、「あなたを撮影所のセキュリティチーフとして雇うわ」と言われるが、断る。
金を積まれてもいやなものはいや、というのがマーロウらしい。
(でも「ロング・グッドバイ」のエリオット・グールドのように殺してほしくもあった)
話はまあ面白かったけど、リーアム・ニーソンはイメージと違ったな。





銀平町シネマブルース(9回目)


日時 2023年6月11日18:15〜
場所 シネマ・チュプキ・タバタ
監督 城定秀夫


「銀平町」も9回目。それでも見に来たのは以前から気になっていた映画館、田端のシネマ・チュプキで上映されたから。
ここは「バリアフリー上映」を心がけており、日本語字幕や壇鼓太郎さん音声解説による音声解説付き。
日本語字幕は映画館のスタッフが劇場の2階事務所で作成してるのだそうだ。日本映画なら完成台本を元に作成していくという。
配給会社から提供を受けた映像データに字幕を足していくそうだ。
(字幕だけ別に映写するわけではない)

音声解説はただト書きを読むわけではなく、「川辺で揺れるススキ」などどこまで言葉にしてどこまで現実音のままにするかが難しいそうで、実際の目の不自由な方の意見を聞きながら作っているとか。
(実際の上映時には座席の横にあるイヤホンジャックにイヤホンを差し込んで聞く。音声解説が必要ない人はイヤホンを装着せずに日本語字幕付き画面をみるだけになる。イヤホンは持参でもいいし、無料で貸し出してくれるそうだ)

大変な作業である。
シネマ・チュプキは20席の劇場。入場料収入だけでその経費が賄えるとは思えず、行政から何らかの補助が得られていると思うが、それにしても大変な労力である。というかここで作られた日本語字幕や音声解説版がここでしか上映されないのはもったいないと思う。
他の映画館でも使用できないのかな。補助金受けてるから営利になってはいけないのかな。大きな映画館や地方の映画館でも活用できる方策を考えてほしいと思う。

映画自体の感想は特に変わらないのだが、今回新しい発見があった。
守屋文雄さん演じる劇中映画「監督残酷物語」のモデルは今まで脚本のいまおか氏が助監督時代のピンク映画の監督たちがモデルだと思っていた。

しかし実はあれはいまおか氏ではなかったのか?
あの守屋さん演じる監督の娘が大人になって映画化した映画だ。あの小野莉奈演じる新人監督はいまおか氏の娘の20年後の姿ではないかの?
娘が大きくなって映画監督にならないにしても自分のやってきたことを理解してほしい、認めて欲しい、という願望ではないだろうか?

まあ御本人がそこまで意識したことはないと思うが、無意識に思っていたのかも知れない。
9回目、鑑賞してよかった。

(本日はいまおかしんじ氏と出演の日高七海さんの舞台挨拶付き)


水は海に向かって流れる


日時 2023年6月10日19:20〜
場所 TOHOシネマズ新宿・スクリーン12
監督 前田 哲


高校1年生の直達(大西利空)は高校に通うのに実家からより母の弟の茂道(高良健吾)の家に住むことにした。しかし駅に迎えにきてくれたのは若い女性(広瀬すず)。茂道おじさんは自分の家というよりシェアハウスにすんでいて、迎えにきた女性、榊千紗は同じようにこの家に住んでいる住人だった。
千紗さんは愛想は悪いが悪い人ではなさそうだ。この家に住むのはあと二人。直達の歓迎バーベキューパーティの日、直達は千紗と千紗の父の親友で同居人の成瀬教授(生瀬勝久)が話しているのを聞いてしまう。
それは直達の父が10年前に千紗の母親とW不倫して駆け落ちし、千紗の母親はそれ以来いなくなったということだった。高校生だった千紗にはショックで、直達の父を恨んでいた。
ある日、息子を訪ねて直達の父(北村有起哉)がシェアハウスにやってきて、千紗と鉢合わせしてしまう。千紗の名前を聞いてすべてを知る直達の父。それが気になる直達。
千紗は「恋愛はしない」という。それは以前不倫した母を責めたとき、母が「あなたも人を好きになればわかる」と言われたことに反発してのことだった。
そんな千紗を直達は好きになってしまう。直達の父が探偵社に依頼し、千紗の母親の現在がわかった。迷った末に千紗と直達は千紗の母親に会いに行く。


広瀬すずの最新主演映画。数年前は年に2、3本は主演作が公開されていた広瀬すずだが、大人になった最近はご無沙汰気味。
久々(だと思う)主演作で、公開2日目に鑑賞。

正直、長い。
千紗が人を好きになってもいいのだと思うまでの物語なのだが、だらだらと長い。1時間でできる話ではないのか?
それぞれ(直達の父親など)がごちゃごちゃ言って、それに対して千紗がリアクションするという繰り返しで、話がさっぱり前に進まない。

そして直達が千紗を好きになる展開になるとは思わなかった。私はてっきり千紗とは「お姉さん的に好き」な存在で「恋人的に好き」ではないと思っていた。だから同じクラスの美少女(1ヶ月で3人ぐらいから告白されたという噂を持つ)が結ばれると思ったんだよね。
まあ作者はそうは考えていなかったようだけど。

あと千紗の母親と直達の父の一件を直達が知るのが、単なる立ち聞き、というのは芸がなさすぎる。
いやだからどうしろとはここで例示しないけど、その展開じゃ素人が作ったみたい。なぜわかったかを一工夫してほしかった。

広瀬すず、今回は役柄もあってほとんど笑顔なし。相手役の大西利空はすでに子役で何本もでているそうで、今後の活躍が期待されている新人。
特別美少年という訳ではないけど、演技はうまそうなので、今後が楽しみ。





タクミくんシリーズ 長い長い物語の始まりの朝。


日時 2023年6月3日21:00〜
場所 シアターイメージフォーラム1(地下)
監督 横井健司


葉山託生(タクミ・森下紫温)は全寮制の祠堂学院高校の入学試験の日、崎義一(ギイ・加藤大悟)と出会った。
無事入学し、1年生になり、受験の時に隣の席だった片倉利久と同室になった。人からさわられるのを極端に嫌う「人間接触嫌悪症」のタクミにとって唯一心が許せる相手だった。
1年生のタクミは3年生の麻生先輩から「祠探しのイベント」の参加を強要されそうになったり、美少年高林泉にギイが高林に振り向いてくれないことを嫉妬していやがらせにあったりする。
2年になってギイと同室になるタクミ。高林の嫉妬は頂点に達し、自分の親衛隊を使ってタクミを今は使っていない音楽堂に閉じこめられ、ついでにギイも一緒に閉じこめられてしまった。二人きりになったギイはタクミに告白し、キスもしてしまう。
ギイの機転でなんとか音楽堂を抜け出した二人。これから二人の物語が始まるのだ。


2011年に最終作「あの晴れた青空」が公開され、一旦は終了した映画「タクミくんシリーズ」だが、その後、原作自体も完結。大人になったギイたちの物語もあるけど、2冊ぐらい読んだがあまりにも魅力がないので、その後読んでいない。原作小説は時系列が前後して発表されていたが、その後「完全版」と称する時系列通りにエピソードを並び替えての文庫本シリーズも出た。一応全部買ってある。
葉山託生を演じた浜尾京介は俳優を引退し、ギイの親友・赤池章三を演じた滝口幸広は2019年に亡くなった。
かような現実を経てのタクミくん実写化のリメイクである。

しかし「美しい彼」などが大ヒットしているのに、大手は全く動かず、今回も以前と同じ制作会社による低予算の映画化である。
ギイの加藤大悟は原作や今までの渡辺大輔のイメージを踏襲した感じ。
でもタクミの森下くんはどうかなあ。浜尾はどっちかというと面長なイメージだったから、今回の丸顔の森下くんはちょっと違う。
でも007も俳優が変わったときには非難囂々だから、こっちの慣れなのかも知れない。

で映画の方だが、こっちが前シリーズのイメージを引きずってるせいか、盛り上がらない。
脚本、キャストにも問題があるような気がする。

まずタクミなのだが、なぜ人間接触嫌悪症なのかが説明がない。いや原作でもなかなか説明されなかったが、それにしても「何らかの事情があった」ぐらいは説明はあった。しかしそういうのがなくてこの映画だけ見ると単に「めんどくさい奴」でしかない。

またギイも単なるイケメンで、大企業の御曹司という設定が出てこない。
「ギイのようなスーパーセレブは自分なんか相手にするはずがない」という思いこみがあるから、盛り上がるんだけど。

そして一番最悪なのが高林泉。こちらも「美少年」の役だからこそ、親衛隊がいて「自分のような美少年こそがギイにふさわしい」と思えるのだ。
ところが演じている中山咲月ではただのそこいらの兄ちゃんで、そういうカリスマ性はなく、ただの「勘違い野郎」にしか見えない。

赤池章三もタクミとギイの二人の相談者という重要なパートなのだが、なんか地味なのだな。要するに年齢が同じ役ばかりだからこそ、個性的に描きわけなければならないのだが、どうにも没個性で、チラシの出演者の顔写真がならんでいても誰が誰なのかよくわからなくなる。
吉沢君なんか弓道をしてるカットがあればもう少し印象が変わると思うのだが。

結局はこちらの問題かも知れないし、お話自体も「ビギニング」「序章」なので、話の方も弱く、2作目3作目がどうなるかな、という感じです。
初日舞台挨拶は満席で入れず、そしてイメージフォーラムの上映も21時からのレイトショーのみ。見に行った6月3日は2週目に入った日なのだが、お客さんは20名弱ぐらい。(それも私以外は全員女性)
興行的に心配で次があるか実に心配。

でも基本、タクミくんは好きなので、これからも是非続けてほしい。
よろしくお願いいたします。





渇水


日時 2023年6月3日16:15〜
場所 TOHOシネマズ六本木ヒルズ・スクリーン6
監督 高橋正弥


ある町の市の水道局に勤める岩切俊作(生田斗真)。彼の仕事は同僚の木田(磯村勇斗)とともに4ヶ月以上水道料金を滞納している家庭を訪問し、停水を行う仕事である。
電気料金は払っても水道料金は払わない男など、事情も様々。ある母子家庭を訪問したとき、母親・小出有希(門脇麦)とその娘である恵子(山崎七海)と久美子(柚穂)と出会う。
夫は蒸発、母親の小出も中学しか出ておらず、地方都市では子供二人を養える仕事はなく、アプリで出会った男相手にお金をもらっているようだ。
そして岩切自身も妻と子供は実家に帰ってしまい、一人で暮らしている。
一度は小出の支払いを待った岩切だったが、母親が出かけたまま帰ってこないという事を知りつつ、停水する。
小出姉妹のことを気にかけつつも何も出来ない岩切たち。
昼飯を買いに行ったスーパーで恵子が万引きをしているのを見かけてしまう。
いたたまれなくなった岩切は、給水宣言で断水されている公園の水道を解放し、「水はただであるべきなんだ!」と恵子たちとはしゃぎ出す。


生田斗真主演映画。
観てる間は「『誰も知らない』と『万引き家族』がミックスされたような話だなあ」という印象が拭えない。昨日是枝作品を観たせいもあるのかも知れないが。

それだけ「誰も知らない」は印象深い映画だったのだ。たぶん1回しか観ていないし、柳楽優弥を気に入ってDVDも買ったのだが、結局特典映像しか観ていない。
それでも「子供を平気で捨てる親」というショッキングな内容が心に刺さったのだ。

で、この映画はそれに水道局の停水係り、という今まで映画では登場していなかった職業が登場する。
ただの借金の取り立てとは違う、水道集金人である。ライフラインなのだ。生きていけなくなる。
もちろん怠惰で払わない奴もいるだろうけど(この映画で宮世がそんな感じの若者を演じる)、何らかの事情で払えない人もいる。

それを心の負担に感じて仕事の配置換えを頼む職員もいる。
「水ってただでいいんじゃないですか?」と後輩の木田にも言われる岩切。

このあたりはいいのだが、岩切自身が妻と子供と別居中で自身は親に虐待とまではいかなくても親からは冷遇されて育った経験を持つ。だから親として子供への接し方がわからないと悩む。
これは原作・脚本というより結婚もしていない私ではどうにもピンとこない話題なのだな。

そして最後はやり場のない怒りを「公園の水の解放」という小さな抵抗をする。ここが一種のクライマックスなのだろうけど、かえって唐突な印象で(その前に貯水池のダムを襲う話が出るけど)、私は盛り上がらなかった。

結局「誰も知らない」「万引き家族」の2番煎じという印象しか残らない。残念。



怪物


日時 2023年6月3日19:00〜
場所 新宿ピカデリー・スクリーン1
監督 是枝裕和


麦野早織(安藤サクラ)は夫に先立たれ、小学5年生の息子、湊(黒川想矢)と二人暮らし。最近の湊は様子がおかしい。髪の毛を切ってしまったり、水筒の中に砂利が入っていたりする。ある日、けがをして帰ってきた。学校で担任の保利先生(永山瑛太)に暴力を受けているのでは?と思った早織は学校に問い合わせるの伏見校長(田中裕子)をはじめとする教師たちの対応は心許ない。
保利先生は今回の件で退職したが、また学校にやってきたという。
ある台風の晩、湊がいなくなった。湊に会いに来た保利先生とともに以前湊が友達と秘密基地を作っていたらしい場所に行ってみた。
秘密基地にしていた古びた車両は土砂で流されている。二人はその車両の中に入ってみたが。


今年のカンヌ映画祭の日本でのニュースは是枝監督の新作「怪物」の脚本賞(坂元祐二)の受賞とヴィム・ヴェンダース監督の新作「PERFECT DAYS」の主演男優賞受賞(役所広司)のニュースで埋め尽くされた。
「怪物」は先日なくなった坂本龍一氏が音楽を手がけたことで話題にmなっていたが、今は受賞ニュースで坂本龍一氏のことはすっかり話題にされなくなった。

この映画はまずは母親の早織の視点で物語が語られる。次に「暴力教師」と言われた保利先生の視点、そして最後は湊の視点である。
予告編を観ても話が全く想像がつかない。
鑑賞時はほとんど予備知識なしで観たと言っていい。

早織の視点。
校長の田中裕子がなんだか怖い。「先日孫が自宅の駐車場で夫に引かれて死んだ」という設定。そのせいで妙に心がない。早織に「あなたは人間でですか?」と言われるけど、本当に不気味である。
早織、保利、湊の3人の視点が中心だけど、校長が拘置所に入っている夫を訪ねるシーンもあり、第4の視点でもある。

保利の視点。
雑誌や本の誤植を見つけて出版社に手紙を書くことが生き甲斐、という妙な趣味を持つ。恋人の高畑充希にも引かれている趣味だ。当初は毛の感しかなかったが、彼の視点で語られる話ではこの保利という男もそれほど悪くない。それなりの誠実に生徒に接している。

湊の視点。
いよいよ佳境である。実は友人の星川依里(柊木陽太)が絡んでくる。陽太はいじめられていて、仲のよい湊は助けたいような、巻き込まれたくないような面倒な立場だとわかってくる。
また星川のいじめられる理由が(はっきりとは台詞では出てこないが)どうやら「女っぽい」「オカマみたい」という理由らしい。
この映画が「LGBTQ」を描いた映画に送られる「クィアパルムドール」を受賞したのはこのあたりだったのか。

結局は人間が一番恐れるのは「理解出来ないもの」ということではないか。
星川の父親は火事になったガールズバーに遊びに行っていたらしく、たぶん無類の女好きなのだろう。従って「女っぽい息子」は理解できない存在なのかも知れない。
そして早織も保利に対する不信感から、火事騒ぎの時にガールズバーに行っていたという噂も信じてしまう。同様に「本当に孫を引いたのは校長の方らしい」という噂も信じてしまう。

でも書いていて感想ですらない文章になってしまった。
映画を観ていてずっと緊張感があったし、今年一番迫力を感じる映画だった。
ラスト、晴天の中、星川と湊は林の中へかけていく。
星川が「俺たち死んだのかなあ?」と言ったけど、そうね、私はたぶん死んだと思うよ。

同性愛、というにはまだまだ幼い感情のようだ。
「理解できない」というだけで恐怖を感じ「怪物」にしてしまう人間たち。これはまだまだ解決出来ない問題かも知れない。

この映画とは直接関係ないが、是枝作品には柳楽優弥、「万引き家族」の少年、そしてこの映画の少年たちと眼力のある少年たちが多く登場する。広瀬すずもこの系統に属すると言っていいかも知れない。
そういう方をキャスティングするのがお好きなようである。