2024年7月

   
フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン
カミノフデ 怪獣たちのいる島 キングダム 大将軍の帰還 朽ちないサクラ THE MOON
ツイスター 化け猫あんずちゃん 大人に恋はムズカシイ GEMNIBUS vol.1
サバエとヤッたら終わる・先行上映会 フェラーリ ザ・ビートルズの軌跡 リヴァプールから世界へ ヘヴンズ×キャンディ
潜水艦イー57降伏せず(2回目) 先生の白い嘘 愛のぬくもり オープニング・ナイト

フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン


日時 2024年7月26日15:45〜
場所 TOHOシネマズ渋谷・スクリーン1
監督 グレッグ・バーランティ


1950年代、米ソの宇宙開発競争ではアメリカは遅れを取っていた。ケネディ大統領は「1960年代にアメリカ人を月へ送る」と宣言。NASAにはその使命が課せられた。しかしアポロ1号は発射直前に内部で火災発生。3人の宇宙飛行士が亡くなった。それからベトナム戦争などもあり、アポロ計画には逆風が吹いていた。
そんな中、PRマーケッターのケリー(スカーレット・ヨハンセン)は大統領の側近というモー(ウディ・ハレルソン)にアポロ計画のテコ入れを依頼される。つまり世論を盛り上がらせ、予算を獲得し計画を順調に進ませることだ。
元空軍パイロットで堅物の発射責任者のコール(チャニング・テイタム)はケリーの常識はずれのやり方に反発する。
ケリーはまずはオメガやケロッグなどの会社とタイアップ。宇宙飛行士にオメガの時計をつけさせたり、朝食の風景にケロッグ製品をおいたりする。また反対派の議員をなんとか懐柔し、予算も通させる。
そして月からのテレビ中継を提案する。コールは「カメラを積む余裕はない」と断るが、大統領からの命令で月からの中継は行われることに。
だがモーから別の提案が出た。「中継が失敗した時のために月のセットを組んで偽映像を準備しろ」という。しかしやがて「テレビに流すのはセット映像の方だ」に変わる。
やがて発射の日となった。


今年はアポロ月着陸55年になる。それとは関係ないけど月着陸に関する映画(「THE MOON」)が連続して公開されている。
とにかくずっと消えない「アポロ月着陸映像フェイク」説。
それをネタにしている。

当時は子供だったから何もわからなかったが、順風満帆ではなかったのだなあ。災害が起こって予算を復興支援に回したいという議員がいたり(これは一理ある)、「月にいくとは神の領域を侵す」という宗教的な理由で反対する議員もいる。このあたりは妊娠中絶反対と一緒で日本人にはわかりにくいアメリカの宗教観なのだなあ。とにかく日本人は無宗教過ぎる気もする。

で、肝心の中継だ。「念のため」であった地球での月着陸映像が「米ソ宇宙開発競争の勝利を絶対に見せるため」という理由でフェイクを流すことになってしまう。
ついにコールに話してしまうケリー。
もちろんクルーには内緒なので持って行くカメラには映像が送られないよう細工がしてある。しかしカメラを元に戻して本当の着陸を中継させようとする。
しかしやがて放送されているのがフェイクの方なのか、真実の方なのかが解らなくなる、そこへスタジオに黒猫が侵入した!というところで私は大爆笑。

その前にも2回ぐらいコールが黒猫を見かけると「不吉だ!」と怒り出す伏線あり。この伏線はお見事でした。
でも結局ハリーとコールがラストでキスして終わりという予定調和的なラストはちょっとパターン過ぎて私の好みではなかったな。

エンドクレジットで「フライ・トゥ・ザ・ムーン」が流れるかと思ったけどさにあらず。アポロの帰還のあたりでは流れましたけどね。
観てよかった。
面白かったです。






カミノフデ 怪獣たちのいる島


日時 2024年7月26日13:40〜
場所 TOHOシネマズ日比谷・スクリーン3
総監督 村瀬継蔵 


特撮作品の特殊美術の造形家として昭和30年代から活躍していた時宮健三(佐野史郎)が亡くなった。その残したものを展示するお別れの会が開かれ、多くのマニアや関係者がやってきていた。
健三の孫娘の朱莉(鈴木梨央)もやってきたが、ほとんど興味がない。展示会で中学で同じクラスの卓也(楢原嵩琉)も来ていた。学校ではほとんど口を利いたことのない二人だったが、卓也はクラスメートが時宮健三の孫と知り、驚喜する。
そんな時に健三の古い知り合いだという穂積(斎藤工)という男に呼び止められる。穂積は健三が「神の筆」という映画の企画を温めていたと告げる。それは描いたものが実体化するという「神の筆」についてのファンタジー映画だった。穂積は映画に登場する小道具の神の筆を取り出し、「世界の破滅を救ってください」という。
すると朱梨と卓也は光に包まれ、気がついたら「神の筆」の舞台の島にいた。そこでは映画に登場しないはずのヤマタノオロチが世界を滅ぼそうとしていた。
朱梨と卓也は元の世界に戻ろうと奮闘する。


特殊美術の世界では知り人ぞ知る村瀬継蔵さんの初監督作品。今年89歳だそうである。
私もイベントなどでお会いしたことはあるし、東宝の「大怪獣バラン」の特典映像のインタビューでも登場する。
アナログ特撮の時代を生きていた方である。

アナログ特撮が全くなくなってCGだけになったわけではない。今でも「ウルトラマン」シリーズはミニチュアとCGの組み合わせだろう。
私自身は20年前はCGのレベルが低かったから否定派だったのだが、最近は優劣を感じない。(同じようにデジタル上映も否定派だったが、今は慣れっこで特にフィルムがいいとは思わない)「ゴジラー1.0」がアカデミー賞を撮ったようにCGのレベルもあがっている)

結局話が好きか嫌いかになってくる。
この映画、私は正直言うと後半寝落ちした。
第一に話がファンタジーに行ってしまったから。低予算だからいろいろ制約があるのは解るけど、島に行くという、「低予算の逃げ道」に行ってしまっている。

これが同じ田舎でも山奥でヤマタノオロチに遭遇し、「ここで我々がくい止めなければ街が破壊される!」として主人公たちが頑張る話ではない。
そういうのは好きだけどねえ。
この辺は予算よりも個人の方向性ではないか。

そして女子中学生と男子の組み合わせ。若者が主役で完全にジュブナイルの世界である。平成モスラの世界観だ。平成モスラを全く受け付けないのでもうだめである。

さらに主人公二人が魅力がない。なんだかんだいっても平成モスラは満島ひかりとかが出ていて、主役に華がある。鈴木梨央はまあ許すとして楢原嵩琉は「誰だお前?」的である。主人公が男女5人組だったら、こう言うのも一人いてもいいかと思えるが、主役じゃないだろう。

島に行ったら不思議な二人組と出会うのだが、その一人が「UnitUp!」のJAXXJAXXの一人、馬越琢己だった。これはちょっと得した。

あとは前半で「昔香港で撮った『復讐の巨大原人』の着ぐるみにも入った」の「危険だからとスタントマンが帰ってのだが村瀬さんが自ら演じた」エピソードが登場するのだが、朱莉から「なんでそんなのが美談なのよ」と言われるのが面白い。

同時に樋口真嗣が映画監督役で登場し、「まだまだ作って貰いたかった」と祭壇の前で号泣するのだが、この時かぶっていた帽子は中野昭慶を意識していたのだろうか?
そしてファン役の笠井伸輔は「怪獣背中のとげはビニールホースを使ったんだって。アイデアマンだよね。すごいよね」とまた「すごいよね」という。
この人は特撮ファンなんだけど、その仕事の時に「すごいよね〜かっこいいよね〜」しか言わないのである。大手テレビ局のキー局のアナウンサーだった割には言葉が少ない。

いろいろ不満ばかりを言ったけど、よかった点はドリカムが主題歌を歌ったことかな。いい点というかすごい所だけど。
あとはTOHO日比谷で上映されてるところ。池袋シネマロサで2週間上映がいいところなレベルの映画だが、(東京では他の上映はヒューマックス池袋、ヒューマントラストシネマ渋谷などで上映)なんかコネでもあったおんだろうか?






キングダム 大将軍の帰還


日時 2024年7月26日9:00〜
場所 TOHOシネマズ新宿・スクリーン7
監督 佐藤信介


馬陽の戦いが終わった信(山崎賢人)たちが、宴を開いているとそこへホウケン(吉川晃司)が現れ、たちまち飛信隊は倒され、信も傷を負った。
とりあえず退却する飛信隊。ホウケンは敵軍の真の総大将だったのだ。
ホウケンの登場を知った王騎(大沢たかお)は俄然戦意を燃やす。
王騎とホウケンは因縁があった。王騎はかつてある女性兵士を愛したことがあった。それを倒したのがホウケンだったのだ。
本隊と合流した飛信隊はホウケンの軍勢に立ち向かう。
ホウケンと対峙する王騎。二人だけの戦いが始まった。


キングダムシリーズ第4作。「スターウォーズ」は3部作で毎回いったん終了していたが、こちらは全く終わる気配がない。
あらすじを書けば上記ぐらいのボリュームしかない。

今回はホウケンと王騎の因縁が話の中心なので王騎亡き後(書いちゃったけど)信は今後活躍するであろう、で終わる。

話の途中に高嶋忠伸の側近が吉沢亮の王に王騎とホウケンの因縁を説明する。
そして回想シーンになって、先代の王はある女を身ごもらせた、生まれた娘は母親と離れて育てられた、その娘は武術に長けていた、そして王騎の元で働き、王騎は結婚するつもりでいた、ある日先代の王とその娘が会う機会があった、そのときお互いに名乗らなかったが一瞬で親子だと二人ともわかった、でも結局戦いでホウケンに殺された、という話が延々と語られる。

原作はおそらくサブキャラも丁寧に描いているのだろう。それをイチイチ描くから話がどんどんわき道にそれる。
原作者も脚本に入ってるから、まあそうなるわな。
映画として「○部作で完結」という気がない。原作をそのまま実写化されるのを望んでいるのだろうか?

正直、山崎賢人が主演、ということしか観る動機がない映画なのだが、今後どうなるんだろね。
山田裕貴とか佐藤浩市がちょっと出てくるけど、こっちは前作のこと覚えてないから「あんた誰だっけ?」状態である。
同じく萩原利久も前作から登場したけど、どういう立場の人かもうわからない。
小栗旬なんて今回初登場だけど、活躍は少ないし、これから出てきそうである。

今全体の何割ぐらいまで話が進んでいるのだろうか?
僕自身はどうでもいいんだけど、山崎賢人や佐藤信介を解放してほかの仕事もやらせてほしい。
「キングダム」だけで10年取られるのは惜しいと思うので。







朽ちないサクラ


日時 2024年7月21日14:00〜
場所 TOHOシネマズ新宿・スクリーン12
監督 原廣利


愛知県平井市。ここで女子大生のストーカーによる殺人事件が起こった。
犯人は宮部という神社の神官だったため世間は騒然となった。しかし問題は終わらなかった。平井中央署の生活安全課防犯係がストーカー被害の被害届を出していたにも関わらず、慰安旅行のため受理しなかったと地元紙にすっぱ抜かれたのだ。
県警広報部の職員、森口泉(杉咲花)は自分が親友の新聞記者・津村千佳に漏らした一言がきっかけになったと疑う。千佳に確認したが、「自分は書いていない」という。千佳は逆に社内で情報源を探り出す。しかし数日後、千佳は他殺体で発見された。
泉は恋人の平井中央署の防犯係の磯川俊一(萩原利久)の協力を得て、千佳の犯人を捜査を始める。
磯川の話では防犯係の職員、百瀬さんが急に退職したという。百瀬の退職の理由を同僚のおばさんに探ってみると、同じ生活安全課の辺見とつきあっていたが、急に別れを切り出されたというのだ。それを逆恨みした百瀬が慰安旅行の件をリークしたと考える。百瀬の実家に行ってみると、百瀬は自殺したという。
それは捜査一課にも伝えられ、慰安旅行の記事を書いたデスクに確認すると最初は渋っていたが、自分が犯人と疑われてはたまらんと思い、百瀬が情報源だと認めた。
泉は上司の富樫(安田顕)から宗教団体ヘレネスのことを聞かされる。
ストーカー事件も調べだした泉はストーカー事件の犯人がヘレネスの信者だったと知る。事件の真相は?


これも全くノーマークだったが、ツイッターでフォロワーさんが書いていたので鑑賞。これもなかなかの傑作だった。
原作は「孤狼の血」の柚月裕子。横山秀夫や宮部みゆきのような大作家になりつつある。

とにかく公安警察が悪役である。
ヘレネスの信者がストーカー事件となると公安の捜査対象のヘレネスが何らかの動きをするかも知れない。それを防ぎたい公安が辺見に被害届を受理しないように圧力を掛け、それをつかんだ千佳を殺したというのが真相。

もちろん捕まったのは実行犯だけ。実行犯はヘレネスの信者。実行犯赤羽は公安のスパイだったのだ。赤羽が逮捕できたことで公安もヘレネスに家宅捜査が出来、かつてのような毒ガステロ事件を未然に防げた。

公安は「100人の市民を助けるためなら多少の犠牲は仕方ない」という姿勢。
それに対し、森口は疑問を口にする。
実行犯が逮捕され、表向きは事件が解決した後の元公安の上司・富樫との対決シーンはよい。

今日は2本とも今年のベストテンに入る映画を観ることが出来、よかった。
最近なんだか面白くない映画ばかりだったからなあ。





THE MOON


日時 2024年7月21日10:40〜
場所 新宿バルト9・シアター4
監督 キム・ヨンファ


2024年、韓国初の有人宇宙船が発射直後に爆発し、飛行士3名の命が失われた。
それから5年、韓国は初の有人月着陸ロケット、ウリ号が発射された。順調に計画は進んだが、太陽フレアの発生で故障が発生。船長とパイロットが船外で修理中に再び太陽フレアの影響で事故が発生。船長とパイロットは死亡した。母船に残されたのはパイロット出身ではない最年少のファン・ソヌ(ド・ギョンス)。
この非常事態に対処するため、宇宙船の設計に関わった前責任者のキム・ジェグク(ソル・ギョング)が呼び戻された。5年前の事故の責任を取っての退職だったが、その時に部下だったファン・ソヌの父親は責任を感じて自殺していた。
アメリカの宇宙ステーションに救助を願うが、アメリカは非協力的。どのみち救助が来るのは2日後のため、ファンは当初の目的であった月面着陸、そして月の氷の採取を試みる。
なんとか着陸に成功し、氷も採取できた。しかしそのとき流星雨に襲われた。


よく映画を観る新宿にはTOHOとピカデリーとバルト9があるが、バルト9にはほとんど行かない。理由はここはポイントシステムがなく、何本観てもただで観れることはない。だからバルト9でしか上映されない映画だと予告もチラシも目にしないので全く知らなかったが、ツイッターで映画の趣味の合うフォロワーさんが誉めていたので鑑賞。

いやホントに見逃さなくてよかった!!
宇宙SF映画の傑作中の傑作ですよ!王道!

最近のSF映画だと、月の裏側にナチスが基地を作ってるとか、月は宇宙人が作った宇宙船とか「トンデモSF」が多すぎる。
こういうタイプの真面目なSFって「ゼロ・グラビティ」以来じゃないか?
描写がすべてリアルな感じでそこがいい。
もう「トンデモSF」はいいですよ。

真っ黒な宇宙に強烈な光と影。どうにもならない孤独感。
そして次から次へと襲いかかる危機、また危機。
去年の観た韓国航空パニック映画「非常宣言」は刑事の妻が飛行機に乗っているっていう個人的な事情が気になったが、本作でもそれはあるけど、逆に対立だし、私情に流され過ぎていない。あくまでプロとしてやり通す。

ここまで危機また危機で緊張感を持って映画を観るのは久しぶり。
ただただ圧倒されるなあ。
ラスト、天文台に戻ったキムの前に見学に来た子供に見せるために宇宙服を来た人が現れる。前のシーンでキムの助手のカン・ヒョビルが着てると思わせる。しかしそこへヒョビルが現れて・・・のシーンでは涙が出た。
うまいなあ、さすが韓国は泣かせるのがうまい(時々やりすぎ感はあるけど)

エンドクレジットでは「フライ・トゥ・ザ・ムーン」が流れる。
お約束とは言え、いいですねえ、この曲。
本年ベストワン級の傑作。
アカデミー視覚効果賞は「マイナスワン」(がだめとは言わないけど)この「THE MOON」が受賞しても文句なし!





ツイスター


日時 2024年7月21日
場所 TSUTAYA宅配レンタルDVD
監督 ヤン・デ・ボン
製作 1996年(平成8年)


1969年6月、ジョー(ヘレン・ハント)は幼い頃自宅が竜巻に襲われ自分を守ってくれた父を亡くした。
現代、今は民間の竜巻研究者となったジョーは仲間とともに竜巻を追いかけていた。そんな時、今は仲間から離れ、気象予報士になったかつての夫ビル(ビル・パクストン)が訪ねてくる。ビルとジョーはかつては夫婦だったが、今はそれぞれの道を歩きだし、ビルはメリッサという精神科医の女性と結婚するために離婚届にサインをしてもらうためだった。
ジョーの仲間たちはビルが未完成に終わった竜巻観測装置、ドロシーを完成させていた。それを見て歓喜するジョー。ドロシーは竜巻の底に設置し、無数のセンサーを竜巻で舞いあげ、その気圧、風速などを計測し、竜巻の研究に役立てる画期的なものだった。
そこへ新たな竜巻発生の情報が入る。
ジョーもビルもその竜巻を追い始める。


8月1日に「ツイスターズ」という竜巻映画が公開される。その映画はこの「ツイスター」の続編だそうなので、未見だったこの「ツイスター」をレンタルDVDで鑑賞。

は〜。一言で言ってつまらん。話が面白くない。
話の軸が夫婦のやり直しだもんね。
そもそも竜巻って瞬間的な、局地的なものらしいし、100分の映画を持たせるだけのボリュームを作ろうとするとこういう竜巻とは関係ない話に絡めなきゃいけないんだろうな。

そこにさらに話に彩りをつけようと「かつて仲間だったが、今は別のチームを作った」奴がライバルとして出てくる。
これが邪魔をしたりするのかと思ったら、別に大して活躍しない。
じゃいったい何の為に出てきたんだよ。

ドロシーのセンサーがうまく竜巻に巻き込まれないという難点が出てくる。
後半になってセンサーに羽根をつけるとか、センサーの入った装置自体がひっくり返ったりしないようにしないとダメ、とかいろいろ工夫をしようとはしてますが。

それに本来の竜巻によるディザスターシーンも結局風に舞い上がっていくだけだから似たようなシーンになってしまう。

じゃ、この映画が何の魅力もない映画かというと、やっぱり竜巻による破壊シーンは迫力ありますよ。それははっきりしている。
でもね、似たようなシーンが続くとやはりやがて魅力は半減してしまう。

韓国の津波の映画もそうだったけど、数分間の破壊のためにどれだけドラマが作れるのか、というので映画の面白さ(あくまで私にとって)が決まってくる。
そういう意味では東宝の「地震列島」も勝野洋と松尾嘉代の離婚話で話を持たせようとし(私にとっては)失敗だった。

怪獣映画なら都市の破壊とかを描けるけど、竜巻ってそういう大都会では発生しないんだろうなあ。
「新種の竜巻が大都会を襲う」なら映画としては面白いけど、「非科学的」で受け入れられないかも知れない。

これじゃ続編もあまり期待できないかな。
あと「民間の研究団体」っていうのが「ゴジラ2000」の主人公に影響を与えているのかも知れないな、とふと思った。






化け猫あんずちゃん


日時 2024年7月19日20:00〜
場所 TOHOシネマズ新宿・スクリーン6
監督 久野遙子・山下敦弘
脚本 いまおかしんじ


海と山に囲まれた池照市。この草成寺に化け猫のあんずちゃん(森山未来)が住んでいた。あんずちゃんはある雨の晩、和尚さんが拾ってきた子猫だったが、いつのまにか化け猫になり今は37歳だった。移動はスクーターで近所の人相手にマッサージのバイトをしていた。
ある日、家出していた和尚さんの息子、哲也が11歳の娘かりんを連れて帰ってきたが、帰って早々に「100万貸してくれ、50万でもいい。サラ金に追われてて」と言い出す。怒った和尚さんは哲也を追い出す。かりんを置いて出て行く哲也。
かりんの面倒を見るようになったあんずちゃんだが、かりんは見た目ほど素直な性格ではないと気づく。
ある日、うずらの子供を助けたことがきっかけで森のカエル(吉岡睦雄)と知り合う。カエルの友人の森の妖怪たちと知り合うあんず。
かりんがどうしても東京に行きたいという。それは3年前に亡くなった母親の命日に墓参りがしたいのだ。かりんとあんずちゃんは東京に向かう。


数年前から聞いていたいまおかしんじ脚本の本作。
何年もかかってようやく完成し、公開だ。
一言で言えば面白かった。

まずあんずちゃんのキャラクターがいい。
丸みを帯びたデザイン。しかし中身はおっさんで、何より原付バイク(スーパーカブ)に乗って移動する。そしてマッサージのバイト。たぶん猫が背中に乗って押してくれるのが気持ちいい、という猫好きな方の経験なのだろう。

でもバイクに乗っているのは最初だけで、パトカーで無免で捕まってしまう。「化け猫だから人間の法律は関係ないと思った」「無免は無免です」というのもいいですね。この町は異形のものも同居を認めている。

そして町の住民たち。近所に住むあんずちゃんの友達のよっちゃん(佐藤宏)。よっちゃんが育てた鮎が鳥に食べられてしまう、ということで鳥除けのアルバイトをするのだが、頼まれたときには「そいつは出来ねえ。俺は人間と同じように暮らしているが、基本は鳥や獣の立場だ」と断る。
でもバイト3000円と聞いてやってしまう。

このよっちゃんは何をやってもうまくいかない。それが貧乏神(水澤伸吾)がとりついているせいだと知って、貧乏神に離れてくれるように頼み込む。「男の勝負だ、短いほうを引いたら負けだ」と花を2本ちぎって勝負する。なんらかのインチキをして勝つあんずちゃん。

料金未納でお墓のビルでのお参りが出来なかったかりんとあんずは再会した貧乏神に頼み込み、地獄に行ってる母親に会いに行く。
ここで母親を連れだし、現世に戻るのだが、それを鬼や閻魔大王(宇野祥平)が追いかけてくる。

このおっかけのあたりが「クレヨンしんちゃん」によくあるアクションシーンを思い出した。このあたりは制作会社のシンエイ動画のらしいというのはうがった見方なのだろうか?

この異形の物たちの世界観が意外にもいまおかしんじの世界観と通じる。
「おんなの河童」や「おじさん天国」で妖怪、鬼が登場したが、実写だとチープさが出てそこが観客へのハードルの高さになっていた気がするが、アニメの本作では全く違和感がない。むしろ自然である。
死んだ母親になんとかして会いに行きたいというのは、いまおかさん「死者との関係」である。

本作は一度実写で撮影し、それをアニメに取り込んだロトスコープの手法を採用。果たしてこれがどれほどの物かアニメ素人の私にはさっぱり。
このロトスコープの映像はどんなものだったのか、一部だけでも見てみたいものだ。
佐藤宏さんの声がTOHOシネマズで聞けるとは嬉しかった。

あんすちゃんのキャラクターで笑って泣ける、傑作アニメです。






大人に恋はムズカシイ


日時 2024年7月17日
場所 BUMP(配信アプリ)
監督 福田沙紀


30歳になる美冬は半同棲していた大輝から「別れよう」と言われ、行きつけのバーでやけ酒を飲んだ。翌朝、知らない若い男の子が(少なくとも)上半身裸で寝ているではないか!
そういえば昨夜バーでこの仔犬系イケメン男子とは出会ったのだが、その後のことは全く記憶にない。名前は隼人(平井亜門)22歳だという。
カフェで朝食を食べる二人だが、大輝から「ちょっと会いたい」と電話があった。その電話の間に帰って行く隼人。
美冬がある晩、夜道で痴漢に会ったときに助けてくれたのは隼人だった。しかし隼人を好きな女の子さくらがいるようだ。この時に連絡先を交換した。
大輝とは会ったが「やっぱりもう一度やり直したい」と言われる。
隼人はさくらからぐいぐいと迫られたが、美冬が忘れられずに彼女のことをフる。
美冬の仕事はファッション誌のグラビア制作なのだが、現場にデリバリーを持ってきたのが隼人だった。元彼に復縁を迫られていることを知り、自分が身を引くべきか悩む隼人。
美冬が仕事関係の人と隼人がバイトをしているカフェに飲みにきた。美冬がセクハラされているのを「ちゃんと断らなきゃ!」と言う隼人。その言葉に背中を押され、美冬はその男に「やめてください!」と言えた。
ますます隼人への信頼が増す美冬。
やがて大輝からプロポーズされる。それを知った隼人は身を引く決意し、二人に「おめでとうございます!」と声をかける。
しかし大輝との結婚は妥協でしかないと思った美冬は隼人の元へ向かう。
隼人も美冬の気持ちを受け止めた。キスをする二人。
雪が舞い始めた。


話は全部書いた。
前にもあったけどBUMPというドラマ配信のアプリで視聴。
前にみた奴は1話2〜3分ぐらいだったけど、今回は1話50秒〜1分30秒ぐらい。それで29話。最終回は6分だけど、合計で40分ぐらいかな。

それだけの短い時間だからドラマもあらすじ程度である。
でも面白く観た。
なんといっても平井亜門が「正当派年下イケメン」を演じているのだ。
「このハンバーガー、ピクルス忘れてる」などで一癖あるイケメンを演じていたが、本作はホントにイケメンである。

そうそうこういうのも観たかったんだよね。
2話では上半身裸でベッドに寝ていたりする。彼の上半身裸をちゃんと観たのは初めてではないか。それだけで女性ファンは十分満足かもしれない。
5話では自室で風呂上がりでバスタオルを首にかけている時にさくらがやってくるという感じで、きれいな背中も堪能できた。

とにかく平井亜門が正当派イケメンで、それだけでもファンとしては満足である。
スマホの小さな画面ではなく、最低でもテレビ画面でみたい作品だった。
よかった。






GEMNIBUS vol.1


日時 2024年7月15日18:50〜
場所 TOHOシネマズ日比谷・スクリーン6
監督 上西琢也(ゴジラvsメガロ)
    平瀬遼太郎(knot)
    ちな(ファーストライン)
    本木真武太(フレイル)


4人の新人監督によるオムニバス映画。
チラシには「東宝と才能の出会いー 4人の監督による4つの映画」と書いてあるから、東宝としては新人発掘プロジェクトなのだろう。
エンタメ業界は常に新人を募っている。

「ゴジラvsメガロ」
地底王国からメガロ出現。応戦するゴジラ。ゴジラはメガロを倒したが、自身も力つきて倒れる。

昨年2023年はメガロ誕生50年ということで11月3日のゴジラ誕生祭に併せてYouTubeなどで公開されたものを劇場公開。
チラシによると「5.1chにしてさらに迫力が増した」などと書いてあるけど、そもそも上映が額縁上映になっている。

これはちょっと詳しく書いておくと、まずスクリーンはシネスコサイズになっている。そこで他の映画はビスタサイズだから両脇が開く。
他の映画がビスタだから、この「ゴジラvsメガロ」はシネスコで作ると、他のビスタサイズにあわせるとビスタの上下をあけた状態になる。
これで額縁化してしまう。
これはゴジラを劇場で上映する意味ないじゃん。

言い訳は想像できるけど、せっかくやるならちゃんとスクリーンいっぱいに上映しようよ。本気でこの企画やってないだろ。

あと自衛隊の無線の会話が挿入されたり、避難民の描写などに明らかに「シン・ゴジラ」の影響を感じた。

「knot」
絵本作家の永倉和弥は妻と離婚し、息子と二人暮らしだが息子とはうまくいっていない。
ある日、息子がいなくなった。部屋には別れた妻が呼び出したらしい手紙が残されていた。和弥は女性アシスタントの奏美と妻の住むマンションへ。
そもそも和弥が離婚したのは自分の心の病気の為だった。和弥は常に人の顔の前にもやがかかって判別できないのだ。それを気にした妻も心の病になってしまい、施設に入ったのだった。妻のマンションにもいなくて自分がかつて住んでいた屋敷に行っていると思われた。
和弥の父は有名な写真家で、人物の顔のピントがぼけたり流れている写真で有名だった。それは父も人の顔の判別が出来ないのだった。父の日記をみるとどうやら母からの遺伝らしい。父もそれに苦しみ和弥の母とも離婚していた。
父の家で和弥の息子は見つかった。犯人は父の現役時代にファンだった男(滝藤賢一)の仕業だった。

「人の顔が判別できない」などという状態は初めて聞いたし、非常に解りづらい。和弥も子供の頃プールに沈められて死にそうになったのを写真に撮られたことがトラウマになっていた。自分を沈めたのは父だと思っていたのだが、実は滝藤の演じるファン(というか自称助手)のせいだった、と解り、すべてのトラウマが解決し、子供ともうまくやれるようになった、で終わるかと思ったら、和弥の息子はそう簡単に和弥のことを許していない、というオチ。

そもそも設定が難しいので、ちゃんと説明してください。
話はそれからですね。


「ファーストライン」
新人アニメーターが巨匠監督からラストシーンのコンテを任される。
先輩たちの助言を受けながら描き上げたが、逆に監督には否定された。
「明日までにやれるか?やれぬならお前は必要ない」と言われ、「出来ます!」と奮起する。

アニメの世界のことはよくわかりません。
でも紙に1枚1枚描いてパラパラマンガのようにめくっておおよその感じを見る、というのをやっていたので、「ああそうやってやるのか」と知った。

「フレイル」
2035年の日本。高齢化問題は大きな課題となっていた。政府は仮想空間を作りだし、高齢者たちをその仮想空間では高校生になってもらっていきる楽しさを味わってもらい活性化をさせていた。高齢者は元気になり、計画は成功したかに見えたが、若者と老人の人口比という問題は解決していない。
明は高校生になって親友や、女子と3人でバンドを組む。青春を謳歌する。しかしこの政策に反対する男がこの仮想空間にウイルスを送り込み、高校でゾンビが現れた。明(奥平大兼)たちは生き残れるか。


ゾンビに追いかけられて、かまれたらゾンビになる、って普通すぎて新しさまるでなし。
高齢化問題と結びつけて社会派を気取ってるかも知れないけどなあ。
私だけかも知れないけど「高齢化問題」って私には他人事ではないからね。

「老人が増えて若者の負担が増えている」ということから若者は高齢者を憎んでいる、という展開なのだが、私自身高齢者の入り口だから「そんなに嫌われるならもう生きていたくない」とか思ってしまう。

もちろん高齢化問題をなんとかエンタメに落とし込めないかと思ってのことだろうし、最後は高齢者の仮想空間にゾンビを送り込んだ奴は逮捕された。でもそう誘導した「インフルエンサー」らしき人が最期にちらっとラスボスのように写される。
ま、これも「戦いはまだ続く」というありがちなラストなんだけどね。
(このインフルエンサーはたぶん成田悠輔あたりがモデルなのだろう)
でも全体的に安易さが漂った。

あと明の息子が出てくるのだが、これが息子がそのインフルエンサーだと思っていたので、ラストで助かった明たちが現実世界でライブをするシーンで息子が喜んでいて、その後でインフルエンサーのカットになったからそこで初めて別人だと気づいた。

4本ともに言えることだが、彼らは新人でも何でもないよ。
東宝としては新人なのかも知れないけど、すでに商業で何らかを撮っている。それに各作品とも美術がしっかりしていたり、エキストラも多かったりで、1000万円ぐらいはかかってそうだ。
私が見るケイズシネマでやってるような新人の作品とは質が違う。
これだけの予算を東宝からもらえてる段階で(私の定義の)新人ではないですね。

確かにTOHOシネマズでは新人かも知れないけどそれなら木村聡志だって新人だ。
作品を見ても個性もなにも感じないし、普通の短編映画なのでインパクトなし。
なんかこう「プロデューサーの言うとおりとりました!」みたいな感じ。

vol.1という位だから2があるかも知れないけど、もう観なくていいかな。
今回の監督たちがちゃんと長編を撮った時に拝見しましょう。





サバエとヤッたら終わる・先行上映会


日時 2024年7月14日18:00〜
場所 池袋HUMAXシネマズ・スクリーン3
監督 UBUNA


大学生の宇治(濱田龍臣)は同じサークルの桜井美波に惚れている。しかしもともと引っ込み思案の宇治は話しかけることすらできない。今日もサークルの新歓コンパなのだが、桜井さんの周りには男子が群がって入り込めない。そんな時、遅れて鯖江レイカ(沢口愛華)がやってきた。サバエは宇治の気持ちを知っていて、しかも桜井さんと仲がいい。サバエに取り持ってもらえないかと淡い期待をする宇治。しかし結局、サバエと二人で2次会に行くだけ。サバエは実はHカップの巨乳。意識してるのかしてないのかやたら思わせぶりなことをしてくる。しかし「サバエとヤッたら終わる」とばかりに耐える宇治。(第1話)

相変わらず桜井さんに話しかけられない宇治は学食で遠くから桜井さんを見てるだけ。桜井さんに気に入られようと彼女が好きそうな服装にするためにサバエと服を買いにいくことに。
白いシャツが好きらしいと聞いて古着屋で白いシャツを買う宇治。
そしてサバエの買い物にもつきあう。試着室に入ったサバエだったが、背中のチャックが降りないとか言い出す。仕方なく試着室に入った宇治だが、サバエが挑発してくる。そこへ店員が「どうかされましたかあ?」と声をかけてくる。(第2話)


この8月11日25時05分〜放送開始のTOKYO MXテレビの深夜ドラマ「サバエとヤッたら終わる」の先行上映会が行われたので行ってきた。本来はテレビドラマだからこのサイトの範囲外だが、映画館で行われたし備忘録で書いておく。

最近この手の深夜ドラマをみることが多い。それは好きな若手俳優が出てることが多いから。平井亜門、瀬戸利樹両方ともこの7月からのドラマに出演している(両方とも不倫を題材とした作品なのだが)。
恋愛ドラマ、エロ系のドラマは低予算(聞いた話では1話300万円ぐらいらしい)で簡単に作りやすいのだろう。ピンク映画と同じだ。

低予算らしく、1話などはずっと居酒屋である。
1軒目ではサークルのメンバーが10人ぐらいいるけど後半の2軒目ではお客さんは誰もいない。そしてほぼ宇治とサバエしか台詞がない。
宇治のモノローグも多く、私としてはあまり好きな作劇ではないのだが、それでもまあ笑えますね。

2話は学食、カフェ、古着屋、洋服店など多少の場所の変化はあるけど台詞は宇治とサバエばかり。
3話以降はサークル仲間も登場してくるようだが。
安く作ってるなあ。

今回はTOKYO MX主催のイベント。キャパ300人の会場で7割は埋まっていたか。4500円と高額だがTシャツのプレゼントがつく。
会場では「イベント一体感を出すために着てください」とスクリーン上の投影画像で呼びかけられていた。迷ったけど着た。サイズはXLサイズでだれでも着られる。女子は大きめのTシャツを着ても逆にかわいく見えるからいいのだろう。
(翌日朝、メルカリを見たら未使用のTシャツが2点出品されていた。両方とも7500円とか7777円とか高額。おいおいイベント料金より高いだろう!利益出すつもりかよ)

でも会場のお客さんにTシャツを着てもらったのに、壇上から客席を撮る記念写真は撮影しなかったな。それを撮影しなければ意味ないような気もするが。

イベントはまずW主演の濱田と沢口愛華が登壇。挨拶の後、一番前で一緒に見るという。私は今回E列(つまり5列目)で見たけど、画面が大きすぎて見づらい。くらくらする。(前に目黒シネマで「大怪獣ガッパ」の上映があったとき一番前で見たけどあのときも見づらかった)

1話20分ぐらいで2本連続上映後、そのままトークイベント。トークイベントは18時50分ぐらいから始まったか。
1話で宇治がサバエの言葉に動揺しビールを吹き出すカットがあるが、その吹き出し方が実にきれい。
周りも本人もそう思ったようで「あのときは周辺をビニールシートで養生したりしていたんですが、一発でOKでした」と最初に話題にしていた。

その後は監督のUBUNAさん(今回ドラマ初挑戦の29歳の女性)、エンディング曲の有馬元気さん、オープニング曲のオーイシマサヨシさんが参加。
オーイシさんは関西弁のマシンガントークの方で、濱田さんも負けじとやりとりをしていた。さすが濱田さんは年は若いけど芸歴が長いせいか、年上の方でもポンポン話す貫禄さえ感じますね。

トークのテーマは撮影の思い出として出演者に1枚ずつ撮影風景を撮ってもらっていてそれをスクリーンに投影してトーク。そして「これは大切なもの」として自分自身が愛してやまないアイテムを紹介。
有馬さんは「バンドメンバー」を出して、その後オーイシさんがリップクリームを出して「同じミュージシャンなのに偉い違い」と笑いを取っていた。
濱田さんはゲームのモニターなどを紹介されてました。

行く前は4500円は高いな、と思ってましたが、トークも40分ありTシャツのおみやげ付きで十分もとは取れたと思えるイベントでした。
8月の放送、楽しみにしてます。





フェラーリ


日時 2024年7月14日14:00〜
場所 TOHOシネマズ池袋・スクリーン8
監督 マイケル・マン


1957年、イタリアの自動車メーカーの創始者エンツォ・フェラーリ(アダム・ドライバー)は苦境に立たされていた。レースの費用がかさみ会社の経営を圧迫して破産寸前とまで言われる。フォードのパートナーとなればレースに専念できると言われたが、身売りする気はない。
一方私生活では息子のディーノを亡くし、妻ラウラ(ペネロペ・クロス)との関係もぎくしゃくしていた。ラウラに経理を任せており、よくも悪くもエンツォ一人ではなにも決められなかった。
その一方で彼にはリナ・ラルディという愛人がいてまだ12歳の息子ピエロを愛していたが、妻の手前認知は出来ていなかった。
テスト中の事故で信頼していたドライバーを亡くした。その時売り込みにきていたアルフォンソ・デ・ポルターゴをチームに加える。そしてイタリア全土を縦断する公道レース・ミッレミリアで優勝し、車の販売に拍車をかけることにする。
一方で旧知の記者に「『フォードから買収の噂がある』という質問に対し、フェラーリは否定した」という記事を書かせる。
そしてミッレミリアは始まった。


イタリアの自動車メーカーの創始者、フェラーリを描く伝記映画。
一生を描くわけではなく、おそらく一番苦しかったであろう1957年に絞った構成だ。

現代の価値観で言うと妻のほかに愛人がいて息子を認知するか否か、なんてあり得ないような話だけど、当時は日本も含めて「浮気は男の甲斐性」と片づけられる時代だったのだろう。もちろんフェラーリの妻は愛人の存在は知らないわけだし、ラストでも許さないのだが、少なくとも社会的には「あり」の話だったようだ。

フォードとの提携話はデマなのだが(実際記事でも否定しているし)、噂を信じたフィアットの社長は「君はイタリアの宝石だからアメリカに身売りしてもらっては困る」と資金提供を約束させる。このあたりはしたたかである。

そして自分から売り込みにきたり、女優を恋人にしている新人ドライバー、デ・ポルターゴ登場。
こういう奴が何かしでかすのである。
思った通り、ゴールも間近で大事故を起こす。その前に「タイヤを交換した方がいい」とメカニックから言われていたにも関わらず、デ・ポルターゴはその前にフェラーリから「お前は死ぬ覚悟が足りない。相手は死ぬ覚悟をもってやっている」と叱責を受けている。これが引き金になって無理をして事故につながった(かもしれない)。

この事故は映画の中では道路に落ちていた落下物をタイヤで踏んでしまい、それが事故につながった。当時はレースカーでもシートベルトが亡かったらしく、ドライバーは投げ出されている。そしてレースを見ていた近所の人々の子供も含む9人が亡くなった大事故につながったのだ。

結局この事故に関してはフェラーリ社の過失は認められなかったようだが、レースそのもののあり方は変わらなかったのだろうか。
そして例の愛人の息子、ピエロは19歳でレース部門に入り(レーサーとしてはどうだったか映画では示されないが)現在副会長だそうだ。
日本のトヨタと一緒ですね。

レースシーンはなかなか迫力があったけど、途中で2台並んで争っているシーンでは両方とも赤い車でどっちがフェラーリでどっちがライバルなのか、はたまたフェラーリ内で争っているのかわからなくなり、せっかくの抜きあいが楽しめなかった。ここは事前にちゃんと説明しておくべきだろう。
そこが惜しかった。
いろいろ勉強になりました。




ザ・ビートルズの軌跡 リヴァプールから世界へ


日時 2024年7月13日20:45〜
場所 池袋シネマ・ロサ スクリーン2(2階)
監督 ボブ・カラザーズ


ビートルズのメジャーデビュー前のリヴァプール時代を関係者のインタビューでつなぐ。
はっきり言って映画としては面白くない。
当時を知る関係者が画面に向かってベラベラ話しているだけだから、観客の私は字幕を読んでいるだけだ。

これなら詳しい本を読んでいる方がよほど詳しくわかる。
インタビュー画面の横でテレビ出演(たぶん「エド・サリバン・ショー」)の映像が流れるが、それはリンゴ・スターが演奏している。
リンゴ加入以前の話をしているのに、映像で出てくるのはリンゴが演奏していては違和感しかない。
前のドラマー、ピート・ベストの画像は当時の新聞記事らしき荒い画像しか出てこない。

そもそもリンゴ・スター加入以前の、「ドラマー=ピート・ベスト」時代の演奏の映像はないのだろう。
音源はこのメンバーでレコード会社のオーディションを受けたのだから、それはCD化もされているようだ。

で肝心のピート・ベスト脱退の理由である。ピートから辞めたのではなく、マネージャーから「ドラムを返る」と言われて解雇状態だったようだ。
もちろん当時は20世紀最大のロックバンドになるとは誰も思っておら無かったろうけど、「メジャーデビュー」直前でバンドを首になればそれなりにショックだろう、

この解雇の理由ははっきりとはわかってないようだ。
関係者のインタビューで「ライブが終わった後、ポール、ジョン、ジョージは連れだって飲みに行っていたが、ピートは彼女と帰っていった」といいう話もあり、ジョン・レノンの「ピートはベストなドラマーだが、ビートルではない」と言っていたという。

誰が言い出したか不明だが、これからメジャーデビューしてさらなる挑戦をしていこうと言う時に「なんか違う」「なんか仲間感がない」というような言語化出来ないような理由だったんだろうな。
そう考えれば何となくわかる。

それにハンブルグ遠征の話がよくわからない。
いやもちろん話は理解できるのだが、何故ハンブルグだったのか?である。ロンドンじゃないんだ。
当時としてはハンブルグで修行、が当たり前だったのだろうか?
イギリス人ならみんな知ってる共通の知識だから省いた、ってことなのかな?

関係者のインタビューだけで映像的には目新しいシーンもなく、正直「映画として」面白くはなかった。





ヘヴンズ×キャンディ


日時 2024年7月13日18:20〜
場所 池袋シネマ・ロサ スクリーン2(2階)
監督 山内大輔
製作 OP PICTURES


引きこもりでアニメオタク、特に「ヘヴンズ×キャンディ」の熱狂的なファンの天翔(タカト・大成)。母親は亡くなっていて、父親・祐輔(竹本泰志)はゲイのパートナー(松本卓也)を家に入れて3人で同居している。
AV男優の永遠(トワ・向理来)も「ヘヴンズ×キャンディ」も大ファンで、「ヘヴキャン」パロディAVに出演していた。
天翔も永遠も「ヘヴキャン」のイベントに行き、その帰りに「ヘヴキャン」に登場した喫茶店に行ってバナナシェイクを飲んだ。天翔は財布を無くしたことに気づき、困った天翔は店主(森羅万象)がちょっと奥へ行ったときに店を出てしまう。「金を払わなかった」と知った永遠と一緒に行った友人が天翔を捕まえる。店主に突き出す友人だが、永遠が代金を支払うことでその場は収まった。
翌日、天翔はその喫茶店に向かう。「代金を彼に返してください」と頼んでいる時に永遠が入ってきた。再会した二人は「ヘヴキャン」の話で盛り上がる。
「今度ヘヴキャンに出てきた灯台に行ってみよう」と二人で向かう。
その近くにヘヴキャンに出てきたモーテルのモデルがあるというので二人で入ってみた。そこはラブホテル。妙にラブホに慣れている永遠に「詳しいね」という天翔。永遠は自分がAV男優だと告げた。それを聞いた天翔は永遠にキスをする。やがて二人は体を重ねる。
天翔は引きこもりを止め、父親が経営するバーで働くようになる。そして一人暮らしも始めて永遠との関係も順調だった。
しかし永遠はAV男優という仕事上、体にキスマークをつけて来ることがたびたびあった。それが耐えられない天翔は自分も店に来た客(それは永遠とあの喫茶店に行った友人だったが)を自分の部屋に連れ込み体を重ねてしまう。
そこの永遠がやってきた。それを見て部屋を出る永遠。
永遠は音信不通になり、AV男優も辞めたという噂を聞く。
ショックを受けた天翔だったが、永遠は再び姿を現した。天翔と離れたくないからAV男優も辞めたという。二人でバーを一軒任され、幸せな日々は続く。


話は最後まで書いた。
「最短距離は回りくどくて」の大蔵、山内監督、向理来主演の組み合わせで送るシリーズ復活である。
「最短距離」が2019年でその続編が2020年で4年ぶりの新作なんですね。

向理来も変わっていないようで、今年35歳である。小柄で童顔なので、そんな歳には見えない。ただし上裸になると肌のたるみは感じる。それを許容できるか否かであろう。(俺はそれもまたよし、と思ったけど)

ストーリーはイマイチである。
まず最初の方で父親とそのパートナーのカラミがある。このカラミ、いる?
観客が観たいのは向理来だから、そのカラミが先にあるべきではないか。

そして天翔がお金を払わずに喫茶店を出るのもよくない。天翔、その後の展開を見ても性格がよくない。あそこは店主に正直に「お財布を落としました!」「しかしなあ」「明日持ってきます」「ホントかあ?」などの押し問答があって困ってる時に永遠が「とりあえず僕が払います」でよかったのではないか。
そして二人でまた会ってお金を返し、ヲタ話をして海に行く、でよいではないか?

んでラブホに入って「母が死んで父からゲイと打ち明けられ、しかもパートナーを家に連れ込んでそれから引きこもりになった」と打ち明けるが、それならば同性愛に嫌悪感を抱いているはず。
なら何故に自分から永遠に向かうのか?ここは永遠がゲイで天翔を好きになって永遠から体を重ねた、という方が自然である。

そしてキスマークをつけてきたことに対する嫉妬。先の食い逃げも含めてコイツ、性格悪い。自己中すぎる。
もうわがままである。相手はAV男優なんだから仕方ないじゃないか。そこは許容しろよ。でもそうはいかないかあ。

その辺の脚本のアラはまあ許すとしても致命的なのは天翔を演じた大成。
そもそも前髪が目にかかって顔がわかりづらいし、何よりキャラが暗い。
笑顔もないし、まるで魅力を感じない。話の視点は天翔なんだし、向理来がこの役をやった方がよかったんじゃないか?

苦言を書いたけど、このジャンルの映画が好きだからこそである。
BL映画というジャンル、「タクミくんシリーズ」のようなライトなドラマもあるけど、もっとエロいジャンルがあってもいいはずだ。
しかし本作は向理来も上裸が少しあるだけでお尻も出てこない。
大蔵が作るんだからもう少しエロ度高めでいいんじゃないか。
その中でも向理来のキスの仕方がエロくてよかった。
そこは評価したい。






潜水艦イー57降伏せず(2回目)


日時 2024年7月7日
場所 DVD
監督 松林宗恵
製作 昭和34年(1959年)


先月「海の牙」とか観たので久々に観たくなって中古DVDを購入。
20年ぐらい前(!)にラピュタ阿佐ヶ谷で観て以来の再鑑賞。
以前はスピード感もなく戦争映画としては退屈、と思ったようだが、今回久々に観てそれなりに面白く観た。

池部良、三橋達也、平田昭彦、土屋嘉男、久保明、などのスターに加え、石田茂樹、織田政雄、大村千吉などの東宝脇役陣を観ているだけで楽しい。
最近ラピュタなどの旧作日本映画から離れていて(いや意識的に離れているというより何となく観たい映画はもう観ちゃった感があるからなのだが)久々にその顔ぶれを観てるだけでも楽しかった。

また「状況がどうあれ戦い続ける」という今となっては完全に受けないだろうけど、その描写の仕方に懐かしささえ覚えた。
今じゃ「働き方改革」とかで何か「個人よりも組織」という考え方が、20年前に観たときより進んでるし。

そもそも日本の会社って「軍隊」の延長線みたいな感じだったのだが、転職の増加とか(もちろん20年前でもその傾向はあったけど)そういった社会の変化で「個人よりも組織」の考え方からどんどん遠くなってる気がする。

余計にこの映画が作られたときから時代が変わってしまった気がした。
いや、映画とは関係ない話かも知れないけど。






先生の白い嘘


日時 2024年7月6日10:30〜
場所 新宿ピカデリー・スクリーン1
監督 三木康一郎


原美鈴(奈緒)は高校教師。ある日親友の渕野美奈子(三吉彩花)から早藤雅巳(風間俊介)と婚約したと告げられる。美奈子の前では自然に振る舞う早藤だが、実は数年前に美奈子の引っ越しを手伝った日に二人になった時に犯されていた。その日から早藤に脅かされ、犯され続ける日々だった。
ある日授業中に生徒の新妻祐希(猪狩蒼弥)が女子のスカートの中を覗いたとからかわれ「俺勃たないから」と言ったことがかえって誤解を招き、友人から年上の女性とラブホテルから出てきたという噂が立つ。
その噂の真偽を確かめるように言われた美鈴は新妻と話す。
新妻はバイト先の花屋の人に誘われてホテルに行ったがうまく出来なかったという。それだけでなく、女性が逆に怖くなったというのだ。
早藤の美鈴への行為は激しくなるばかり。美奈子は会社の常務の娘で、結納で美奈子の両親に会った際に美奈子が「私、妊娠しました」と言ったことから早藤の美鈴への行為エスカレートした。
また新妻も美鈴への想いが強くなり、美鈴もそれに応えた。
早藤も新妻のことを知るようになり、「別れてやる。その高校生の前で俺とセックスするか、俺の前で高校生とセックスしてみろ」と脅す。
指定されたホテルへは美鈴一人で行った。早藤は怒り狂い、美鈴を殴り続けた。早藤と美鈴の関係も早藤のスマホを見たことから美奈子の知るところとなった。美奈子はホテルに駆けつけ、美鈴を助けた。
早藤は自ら命を絶とうとしたが死にきれなくて生き残った。
2年後、教師を辞めた美鈴の家に庭師がやってきた。助手は新妻だった。


完全にノーマークだった映画だが、ピカデリーの前のポスターを見て、ネットでこの映画に関してインティマシーコーディネーターをつけるつけないで現場ではもめた(?)という話がネットニュースで出て何となく見たくなって観た次第。

要するに性暴力の話である。
「女は男に力で組み伏せられ犯されることがある」「いや男だって女性から性暴力をされることだってある」「いや最終的には男はその女を力で倒して逃げることだって出来るはず」というような意味合いの台詞の押収である。

こういう話の内容だからどうしても性描写は出てくる。
そりゃね、ミニシアターで上映する映画じゃなくて大手シネコンで上映する映画でおっぱいがどうどうと出る映画はふさわしくないっていう理屈もわかりますよ。
しかしね、これだけ性描写が多い内容なのにおっぱいもお尻も写さないってなんか逆に不自然である。
「エロ目的の観客お断り」っていうのも解るけど、とにかく中途半端である。

まあそりゃこちらも性描写が出てくれば多少のエロ目当ての気持ちも出てきてしまうけどなんか変だよ。
女性は早藤の犯される時スカートをめくられて早藤に挿入される。上半身は着衣のまま。なんかもやもやする。

その点大島渚は性描写があるなら中途半端な描写はしたくない(と思ったかどうかは解らないけど)と言わんばかりに「愛のコリーダ」を作ったのはさすがだと思う。時代もそれを許したのだろうけど。

それにしても風間俊介がこういう役をやるとは意外だった。彼はこういう悪役を観たのは初めてだが、逆にすごみがあった。
だったら彼も犯してるときにケツぐらいだせよ。なんかごまかしてる感がすごいんだよ。

とにかく「性暴力と男女の格差」を描きたかったのは解るけど、描写が中途半端すぎてすべて台無し。
それしか記憶に残らなかった。





愛のぬくもり


日時 2024年7月6日18:20〜
場所 新宿K's cinema
脚本・監督 いまおかしんじ 


小説家の辺見たかし(小出恵介)は妻・由莉奈に男がいるのではと疑っていた。女性同性愛者の横澤さとみ(風吹ケイ)は同棲している彼女・真紀に男ができたと疑っていた。さとみはある朝真紀の出かけに男がいると聞かされる。「事情は帰ってから話す」と言われたが、美容師の自分の仕事中気になって仕方がない。たかしはある日出かけた由莉奈を尾行する。由莉奈は車の中で男と会っていたが、それはなんと自分の父親だった。
それぞれショックを受けてぼんやり歩いている時にたかしとさとみは階段の前でぶつかった。転げ落ちた後、なんと二人の心と体は入れ違っていた!
戸惑う二人。とりあえず仕事の方は美容室はたかしが働き、小説の方はさとみが書き続けることで美容師の店長(川瀬陽太)や編集者を納得させた。
さとみ(見た目)は父親に「教え子」と偽って会いに行き、「息子さんの嫁さんと関係してない?」とふってみる。たかし(見た目)は真紀に会って相手の男について聞いてみる。真紀はダンサーで演出家の男と出来てしまい、彼の子供もお腹にいるという。真紀はもともとはノンケなので男性も愛してしまったのだった。


いまおかしんじ監督の新作。「銀平町シネマブルース」の小出恵介の主演である。
「男女の入れ替わり」というのはチラシなどで知っていたので「今更なあ」と思って見始めたが割と面白かった。

それはやはりひとえに小出恵介の力だろう。
未成年との飲酒問題で(はめられたかも知れないのだが)仕事が干され、日本での活動が小出である。「銀平町」もよかったのだが、「銀平町」では吹越満や宇野祥平らの芸達者に囲まれていたからそれほど感じなかったが、本作のような新人もしくは新人同様の女優さんに囲まれているとその存在感がまるで違う。
出てるだけで目立つのである。

本日は小出恵介、風吹ケイ、いまおか監督の舞台挨拶付きで風吹さんが「小出さんはオーラがあった」と言っていたけど、本当である。
それが一流の俳優が持つ言葉では言えない力だろう。

話の方はたかしの妻が自分の父親と出来ているというのはショッキング過ぎかな。ただし車の中でセックスしているところが初登場でなく、その前にいくら疎遠とは言え電話などで「今度話があるんだ」というけどたかしが無視するというようなシーンがあって、事前に父親を登場しておけば「父親と妻がセックスしている」という意外な展開が伝わったと思う。

父親と妻のセックスのきっかけはガンで余命3ヶ月と知った父親が嫁にそれを話し「やりたいことがありますか?」と言われやけになって「君とセックスしたい」と言ってまさかそうなるとは思っていなかった、という訳。
それなりに理由としては成立したかな。

結局最後は入れ替わったまま二人は戻らず、別の人生として生きていく。
このラストはよかったし、なにより本作は小出恵介の俳優力で持っている作品だった。
舞台挨拶で初めて小出氏を見たけど、意外と謙虚というか面白い方で、好感度も上がった。





オープニング・ナイト


日時 2024年7月6日
場所 TSUTAYA宅配レンタルDVD
監督 ジョン・カサベテス
製作 1977年(昭和52年)


マートル・ゴードンはベテランのスター女優。新作「第二の女」は順調に公演していた。ある雨の晩、楽屋から出るときにファンに囲まれたが、その中に若い女性がいた。彼女はマートルや共演者が乗った車を追いかけ、交通事故にあってしまう。マートルはショックを受ける。もともと精神的に不安定になっていたマートルだが、この事件を機にどんどん不安定になっていく。
今回の公演の直しの稽古中に共演者のモーリス(ジョン・カサベテス)を芝居で殴る殴らないでもめてしまい演出家も困ってしまう。
マートルは交通事故で亡くなった17歳の少女の家にお悔やみに行くが、家族からは原因が原因だけに歓迎はされなかった。
マートル自身もその少女に似た少女の幻影を見るようになる。それは今回の作品のテーマ「老い」を改めてマートルに認識させるもので、マートルはますます不安定になっていく。
見かねた脚本家が霊媒師の元へ連れているがマートルは「私が見ているのは私の頭の中にあるもので、悪霊などではない」と拒絶してしまう。
マートルの不安定さは続き、舞台上でも支障がでるようになる。共演者たちのアドリブでなんとか乗り切っていた。
しかしついにその少女がマートルに襲いかかる時が来て、マートルは彼女を殺す。
そしてついに楽日(?)がやってきた。しかしマートルは劇場に現れない。焦る関係者たち。マートルはやってきた。泥酔してろくに立てない状況だ。
何とか幕はあいたのだが。


ジョン・カサベテス監督作品。私にとっては2つ目のカサベテス作品だ。
「こわれゆく女」に引き続き精神的に不安定な女性の話である。
正直言うけど、こういうメンヘラな女は苦手である。舞台のように日時が決まっている状況で精神的に不安定な人が相手では周りの苦労が察して有り余る。
映画ならまだ(予算的に無理なときもあるが)撮り直しもあるけど、舞台はその日その時間に安定していなければいけない。

「老い」が今回の「第二の女」のテーマらしく、マートル自身もスター女優から年齢を重ねることに恐怖を感じているようで、それが根底にある。
だからこそ自分が原因で若い女性を死なせてしまったことがひどく心の絆のだろう。

と冷静に分析することも出来るのだが、この女優の周りへの迷惑のかけぶりはすざましい。夜中に訪ねてくるわ舞台上でアドリブの連発で脚本無視だわで私がプロデューサーなら二度と使わない。

ラストでよれよれになっているマートルを共演のモーリスがなんとかあわせていく。しかしアドリブの応酬が客にはどっかんどっかんと受けている。
プロデューサーは「見てられない」と席を外すし、脚本家も同様。
終始微妙な表情をしている。
最終的には怒り出さなかったから「まあ、客には受けたからいいか」というあきらめの境地なのか?

彼女のメンヘラぶりには私はついていけなかったし、実際のジーナローランズもああなのだろうか?そしてラストで彼女を支えるモーリスは監督で実の夫のジョン・カサベテスである。
案外、妻への何か不満と愛情の吐露だったのでは?と勘ぐってしまう。

でもムービーウォーカーとかのあらすじを見ると映画のラストの公演がこの舞台の初日とされている。あれ?その前のシーンにも客はいたようなあ?お客さんはみんなドレスアップしていて初日ぽかったけど。
カサベテスの映画って「こわれゆく女」もそうだったけど、なんか設定の説明部分を省くから、なんかわかりにくいんだよね。
わかりやすさだけを求めてる訳ではないですけど。