2024年12月

   
密会
月へのミサイル 特撮喜劇 大木勇造 人生最大の決戦 不思議の国のシドニ となりの宇宙人
悪魔のはらわた しなの川 痴人の愛(2024) プテラノドン
うちの弟どもがすいません 正体 クルージング ベイビーわるきゅーれ
ナイスデイズ

密会


日時 2024年12月30日
場所 amazon prime
監督 中平康
製作 昭和34年(1959年)


宮原紀久子(桂木洋子)と川島郁夫(伊藤孝雄)は月夜の晩に神社の裏山で愛を語っていた。「あなたと結婚したい」「だめよ、私みたいなおばあちゃんは。あなたは一流の商社に入社して、そして上の人に気に入られて誰かいい人を紹介されて結婚なさい。そして結婚式には呼んでね。あなたのお嫁さんの顔が見てみたいの」などと語っている。
そのとき、タクシーが近くに現れた。しかし中で強盗が行われ、運転手は殺された。二人は犯人の顔も目撃したが誰にも言うことはできない。
二人は学生と大学教授夫人の間柄だった。宮原教授(宮口精二)の元で法律を学んでいた郁夫だったが、毎月宮原教授の家で行われる法律についての勉強会で知り合ったのだ。そしていつしか関係を持つようになった。
郁夫は翌日から苦しめられるようになる。警察に事件を目撃したことを言えば不倫関係がばれてしまう。郁夫以上に紀久子にとっては絶対に避けなければいけない事態だ。
ついに「警察に行く」と電話してきた郁夫。駅に向かう郁夫。それに追いついた紀久子。


アマゾンプライムで「あなたへのおすすめ」と表示された映画。
73分と短めで白黒だからいわゆる「添え物」の映画だったと思われる。
不倫中に事件を目撃したとは「黒い画集 あるサラリーマンの証言」を思わせる。

見てみたがメロドラマ色が強いがなかなか面白い。原作は吉村昭の同名小説。
事件の翌朝、夫に電話がかかってくる。お手伝いが出て「旦那様、新聞社からですよ」という声にドキッとする。内容は事件とは全く関係なかったが、些細なことにびくびくし始める。
お手伝いはがさつな女の子で「奥様近所で自動車強盗があったんですって。こんなに血をながしてたそうで」と身振りを添えて報告。

一方で郁夫も法学の講義で講師(鈴木瑞穂)は強盗事件の話をしているといたたまれなくなって外にでる。

そんないくつかのことが二人に起こる。
そしてついに警察に情報提供するという郁夫。
駅まで追いかけて止めようとする紀久子。
ここでやってきた電車に向かって紀久子は郁夫を突き飛ばす。

この展開は驚いたねえ。
まさか殺すとは思わなかった。冒頭の月明かりでの寝物語は約9分ほどワンカットでカメラは動きながら郁夫と紀久子を映し出す。
このあたりからねっとりとした二人の関係が明らかになる。主導権を握ってるのはどちらかというと紀久子だ。

事件が起こって「不倫関係がばれてしまう」という紀久子に「ばれたっていいじゃないか。別れて僕と結婚すればいい」という。
このあたりから二人のすれ違い、「絶対に不倫はばれてほしくない」「いざとなったら不倫がばれてもかまわない」の差が出てくる。
そしてついに紀久子は郁夫を殺してしまう。

混乱のさなか、紀久子は家に帰ろうとする。ここが結構丁寧に描かれる。
しかし最後の最後で、紀久子が突き飛ばすのを見ていた電気工事をしていた職人に捕まってしまう。
いや〜悪人が捕まらないで終わるラストかと思ってどきどきした。
なかなかの名作ですよ。





月へのミサイル


日時 2024年12月29日
場所 DVD
監督 リチャード・E・カンナ
製作 1959年(昭和34年)


個人で月ロケット研究をしてきたダーク・グリーン博士。しかし明日からは政府の研究機関の一つになるよう命令される。研究のパートナーのスティーブ・レイトンは「予算も安定してよかったじゃないか」と励ますが、ダークは不満で仕方ない。
その頃近所の刑務所で脱獄が起こった。警察により念のため、完成している月ロケットの内部を見てくれるように言われる。ダークはロケット内に脱獄したゲーリーとロンがいるのを見つける。しかしダークは警察には言わなかった。それどころか二人に乗組員となって月へ行くと言い出す。
ダークがいないことに気づいたスティーブはたまたま来ていた恋人のジェーンとロケットの中に探しに行く。
その時ダークはロケットを発射させた!予定外の搭乗者に驚くダークだったが、このまま一緒に月に行くことになる。
途中の隕石群の影響で、内部のバッテリーが外れ、直そうとしたダークの頭を直撃した。そのことでダークは亡くなった。死に際にスティーブにメダルと渡し「リドーすまない」と言い残した。
月に着いて探検を始めるスティーブたち。
岩と思っていたものが動き出す岩人間(ロックマン)に襲われる。ある洞窟に逃げ込んだ。そこでは松明が灯っている。知的生命がいて、しかも酸素がある!
酸素マスクをはずした一行だったが、その後ガスに巻き込まれ気絶する。
起きた先では数多くの美女が迎えてくれた。その美女たちにはリドーと呼ばれる女王がいた。
彼女たちの話から、ダークは実は月の世界の人間で、地球探査のためにやってきたのだ。
リドーは実は今は盲目になっている。そのため、メダルを持っていたスティーブをダークと思ってしまう。


アマゾンで1000円ぐらいで売っていたDVD。
50年代のクラシックSF大好き人間としてはつい買ってしまう。しかしこの手の低予算クラシックSF、何本ぐらいあるんだろうか。
今のCGで作られたリアルな映像もいいのだが、こういうクラシックSFは手作り感が何ともいえない。

岩人間もなかなかよく出来ていて、白黒の画面では通常の岩と区別がつかない。それが徐々に動き出すからいいですねえ。
で、竜宮城のような美女軍団が登場すると「?」となってしまう。
意外な展開だなあ。

途中脱獄犯の粗暴なほうのゲーリーがスティーブの恋人のジェーンに手を出したり話がむちゃくちゃである。そもそも脱獄犯を乗せる点で話としてはいい加減だ。
ゲーリーは月にダイヤが当たり前にあるのを発見し、それを持って帰ろうとする。そして最後に月から帰るときに岩人間に取り囲まれ、日陰ではない日向に出てしまう。すると一瞬の燃えてしまい、骸骨だけになるという頑張った撮影をしている。

お話のほうがリドーというのは固有名詞でなく、王を示す地位のことらしい。
それで2番目の地位にあったアルファが現リドーを殺し、新リドーになる。
アルファもリドーも念力のようなものを持っていて、相手の精神を操ることが出来る。それでスティーブを催眠状態にして結婚しようとする。
それを出来ないとジェーンは「ダークではない」と言ってしまったりして窮地に追い込まれれ、ジェーンはとらえられる。

そしておきまりの怪生物の餌食にされようとする。
いいねえ、やはり怪獣とか怪生物はクラシックSFではお約束です。
その怪生物は目が大きく、牙のついた口が縦に長いという異様な顔でしかも蜘蛛!
操演で動かされ頑張ってますよ。

意外と弱くて拳銃で大蜘蛛はあっさり殺される。その後、みんなで逃げ出すが、ゲーリーだけダイヤを(拳くらいの大きさのダイヤの原石を袋詰めにしている)持っていたため逃げ遅れ、岩人間から逃れようとして太陽のために気温が高いところに出て焼けてしまう。

そしてロケットに乗って出発したところで終わる。
前半の岩人間が出てくるまではよかったが、謎の美女軍団が出てきてからなさすがに着いていけない感もあるが、大蜘蛛と岩人間が出てきたのでよかったな。






特撮喜劇 大木勇造 人生最大の決戦


日時 2024年12月29日
場所 TSUTAYA宅配レンタルDVD
監督 石井良和
製作 令和4年(2022年)

大木勇造(藤田健彦)は大企業に勤めていたが、もともと後輩に仕事を押しつけて自分はさぼったりしてる奴だったので、コロナ禍で会社の業績が悪化したときにあっさりクビになった。
再就職した会社はギャラクシー商会という何をやってるか解らない会社。
早速研修が始まったが、まだ使えそうな粗大ゴミを拾ってきて売るとか、道に落ちていたマスクを拾ってきて一応消毒して売るとか、配信でダイエットの体操を教えるとかだった。前社長の会長は宇宙人との交信を試みてる人だった。
その中でも地下で働くリサイクルの修理担当の人はまともそうだった。
休みの日、彼女とデートしていたが、たまたま前の会社の後輩に会ってしまい、会社をクビになったことを彼女に知られてしまう。
たちまちフられてしまう大木。
何をやってもうまくいかない大木は怒り狂い、彼女のストーカーを始めようとする。
そんな時、会長が宇宙人を捕獲してきた。その頃会社ではギャンブルで借金を重ねた営業担当が怒り狂って金を貸さない社長をバットで殴ろうとして、誤って宇宙人を傷つけてしまった。
宇宙人は営業の負の感情と一体となり大怪獣になってしまう。
そして大木の彼女も怪獣に飲み込まれてしまった!


去年の年末公開だと思っていたが、2年前か。
低予算の特撮映画はお寒くなることが多いので、当時はパスしたが、思い直してDVDで鑑賞。

特撮喜劇、と冠にあるけど、特撮は最後に出てくるだけで前半1時間はギャラクシー商会のおかしな面々である。
コロナ禍で人々がマスクをした世界。落ちていたマスクを消毒して売るとか、実際にはなかったろうけど、それぐらいのことが起きるかも知れない世の中だった。
そういう時代の空気が閉じこめられており、2020年代前半の空気を笑い飛ばす。

最後に怪獣が出てくるが、これがギャラクシー商会のおかしな面々の今までの姿が伏線となっており、彼らが力を合わせて怪獣から大木の彼女を助けだそうとする。

一番まともそうな人が「実はなにかあるな」と思っていたら、まさかの爆弾犯。この人の作ったダイナマイトにタイマーを仕掛けた爆弾で怪獣を倒そうとする。
大木は怪獣に登るが一回目は失敗。(この一回目は失敗というのはこの手の映画では重要)
二回目で成功する。

監督は鈴木則文監督の助監督をしていたそうで、しかも本人も「トラック野郎」的ナンセンス喜劇がお好きだそうだ。
だからそのコメディセンスと怪獣がミックスされるとこんな感じだ。
しかも前半はなぜか大木が立ち寄るバーでミュージカルシーンもある。

怪獣映画を期待すると外されるが、コメディとしては頑張っていたと思う。
観てよかった。





不思議の国のシドニ


日時 2024年12月28日14:15〜
場所 シネスイッチ銀座1(地下)
監督 エリーズ・ジラール


フランス人作家シドニ(イザベル・ユペール)は日本の出版社に頼まれて日本の大阪に降り立った。長旅だし、初めての国で気が進まなかった。
出迎えてくれたのは編集者の溝口健三(伊原剛志)。メールなどで連絡していたので名前は知っていたが会うのは初めて。想像と違っていて戸惑うシドニ。
取材や読者のサイン会に出席するシドニ。慣れない国で疲れてしまう。
ホテルに帰ったとき、荷物用のカートの上に死んだ夫が座っているのを見かける。あわててカートを追いかけるが夫はどこにいない。
外出中に開かないはずのホテルの窓が開いていたり、弁当が食べられてる珍事が続く。シドニは溝口の相談すると、「それは幽霊だ」と教えてくれた。
ホテルで一人でいるときに夫が現れた。「僕は幽霊だ」という。
やがて行く先々のホテルで夫は現れる。ホテルのボーイ(河屋秀俊)が風呂の使い方を説明しているときに現れ、ボーイにシャワーがかけられたと思い、「あっ!」と言ってしまう。
シドニは両親兄弟を事故で失い、そして最近夫を事故で亡くしたので愛する人が急にいなくなることが続くために人を愛することに恐れを抱いていた。
夫の幽霊を話すうちに前向きになるシドニ。そしていつしか溝口を意識するようになる。


全く知らない監督のフランス映画。映画自体も知らない。シネスイッチ銀座はハイソなヨーロッパ映画を上映するので縁が薄い。
それでも観に行ったのは河屋秀俊さんが出演しているから。(ご本人がTwitter(現X)で言っていたのだ。

河屋さんの役はホテルのボーイ。エンドクレジットでは「KYOTO HOTELのボーイ」みたいな書かれ方をしてたけど、実際は奈良ホテルで撮影されたらしい。
奈良ホテルは85年頃に一度行ったことがある。泊まったわけではなく朝食を食べに行っただけだったが、木造だが洋風な作りで、まさに和洋折衷の美しい建築だった。今でも同じ建物なのだろうか。実に立派だった。
一度ゆっくり泊まってみたいが、一泊3万円ぐらいしそうだなあ。
(今検索したら時期にもよるだろうが、58000円した。超高級ホテルである)
河屋さん、せりふは全部英語で部屋の設備を説明していた。

この時に幽霊の夫が風呂場にいてお湯がかかったと思ってシドニが「あっ」というのだが、夫は濡れない。
他のシーンでも部屋は暗いのに夫だけ明るい。
現場にいたわけではなく別撮りでCG合成だったようだ。
違和感なく溶け込んでいた。

それにしても思い出すのは「二十四時間の情事」である。
あの時もフランスから日本に来た女優が(彼女の妄想らしい)岡田英次と恋に落ちるような話だった。
今回は夫と溝口が絡んでくる。
この映画は自分がフランス人になったつもりで、「日本という自分の国とは違う文化の国で不思議体験をする」という映画で見なければ解釈を誤るのではないか。

「日本=異国、不思議の国」という観点で見なければ違和感だけが残る。
それに溝口健三ってなんだよ。せりふの中で「有名な映画監督と関係があるの?」と問われて溝口は「いや溝口は日本では多い名前だ」というけどそうかなあ?

とにかく意識高い系の監督が撮った映画で、私の好みではない。






となりの宇宙人


日時 2024年12月22日20:20〜
場所 新宿K's cinema
監督 小関裕太郎


田所(前田旺志郎)は会社の車で交通事故を起こしてクビ。腐ってアパートにいる晩、近くで何かがぶつかった音がした。外へでてみると人が一人入れるぐらいの大きさの物体が転がっていた。近所の源田さん、サタさん(猪塚健太)などが集まっていると中から全裸の中年男(宇野祥平)が出てきた。
男は自分のことをアンドロメダ星の宇宙人だという。日本語が上手なのは長年この地球を観察しているからだと言った。
怪我もしてるのでとりあえず田所の部屋で休むことになった宇宙人。彼の名前は地球人には発音出来ないので、「宙さん」と呼ぶことにする。
サタの彼女の純子は料理が得意だというので宙さんや田所のために朝ご飯を作る。
それがきっかけで純子は田所の部屋に出入りするようになる。田所は純子に惚れてしまう。純子はサタの恋人だが、サタはほかにつきあっている女がほかに2人、合計3人とつきあっている男である。
会社もクビで彼女は出来ない田所はやけになる。


原作は半村良、脚本はいまおかしんじ。監督は近年オークラ映画で評価されている小関裕太郎。
デヴィド・ボウイではなくて宇野祥平のようなおっさんが宇宙人というアイデアがいい。
宇野祥平をキャスティングしたことがこの映画の勝因だろう。

そして運のない男、田所は前田旺志郎。最近では「うちの弟どもがすいません」にもでていたり、ちょこちょこ観てはいたが主演作は初めてである。
イケメンという感じでもないかも知れないが、笑うと目が線になってしまう笑顔の良さがあり、非常に好感が持てた。これからファンになって過去作も追いかけてしまいそうだ。

映画はこの後、純子ちゃんに惚れた田所の恋の話になり、やや宙さんが取り残されていく感じはある。
だから田所が主役になってしまい、宙さんが話の中心ではなくなる。
原作がどうだったかわからないのだが、その辺に話の軸がぶれてる気がする。

そして全体的にやや長い気がする。特に最後の別れのシーンは少しくどい。
ラストに迎えにきた宇宙船から全裸の美女が多数出てきたのは驚いた。
アンドロメダ星では地球で言うところの全裸が基本なのですね。

とは言っても全体的に「男はつらいよ」的な長屋の人情噺で面白かった。
6月の本公開の際にはたぶんまた見に行くだろう。
とにかく前田旺志郎が気に入った。

アパートの大家の麻木貴仁さんが出演で笑わせてくれる。






悪魔のはらわた


日時 2024年12月21日
場所 TSUTAYA宅配レンタルDVD
監督 ポール・モリセイ
製作 1973年(昭和48年)


フランケン男爵(ウド・ギア)は色んな人間から最上のパーツを取り出し、男女の人造人間を作る研究に没頭していた。彼の研究室には助手のオットー以外は入れないが、口うるさい男爵のことは実は嫌っている。
妻で姉のカトリンは男爵の研究には興味がない。男爵の屋敷の近くで農夫をしているニコラスが時々村の娘とセックスしているのを見かけ、カトリンは「汚らわしい」と叱る。
ある日ニコラスの友人のサッシャが修道院に入ると聞き「じゃお前も女遊びをしておけよ」と売春宿に連れて行く。
男爵は「性欲の強い男の頭を取り付ければ完成だ!」といい。オットーとともに性欲が強い男がいる場所、すなわち売春宿に行く。
外で張り込んでいた男爵だが、たまたま外に顔出したサッシャを「性欲の強い男」と勘違いし、ニコラスと帰るところを襲撃して、サッシャの頭を持ち去る。
男爵はサッシャの頭を取り付け、ついに男女の完璧な肉体が完成した。二人を交尾させようとしたが、男の方は一向に勃起しない。失敗と焦る男爵。
そのころカトリンは自分のセックスの相手としてニコラスを使用人として雇い入れる。男爵が連れてきた男を見てサッシャの顔だとわかるが、背の高さが違う。
カトリンに止められたにも関わらず、ニコラスは男爵の研究室に入り、男爵の研究を知る。すべてを知られた男爵はニコラスを捕らえる。
カトリンは男の人造人間を見て「2時間貸してほしい」と自分の寝室へ。
人造人間とセックスしようとしたが、自分をこんな体にした敵意でカトリンを殺してしまう。
男爵が研究室から出た隙にオットーは女の人造人間を犯そうとする。しかし傷口に触れたことで女の体から内蔵が飛び出し死んでしまった。
怒った男爵はオットーを殺す。男の人造人間も男爵を殺す。「逃げよう」というニコラスに人造人間は「もう元には戻れないんだ」と自ら傷口を開いて死んでいった。
吊されているニコラスの目の前には男爵、カトリン、オットー、男女の人造人間の5つの死体がある。
そこへ男爵のまだ子供の息子と娘がやってくる。二人はメスを取り、ニコラスへと向かっていく。


話は最後まで書いた。
今、映画「ノストラダムスの大予言」1973年頃の映画におけるエログロを研究してるので、その1本として観た。
公開当時、全裸の女性の腹に縦に入った大きな傷跡をなめる男のカットが大きく印刷されたポスターを見ており、そのグロテスクさがトラウマになった。
その傷跡をなめるカットが大きく印刷されていたと思ったのだが、ネットでポスター画像を検索すると、それはポスターに小さく写っていただけだった。衝撃が記憶を書き換えたか。

鑑賞して思ったのはタイトルに偽りありということ。
「悪魔の」とあるけどオカルト要素はない。同時期に「エクソシスト」が大ヒット中で便乗で「悪魔の」とつけたのかも知れない。
確かに男爵のしてることは悪魔的ではあるけれど。

カオリンの年子のように歳の近い息子と娘が登場する。この二人がトップシーンでぬいぐるみを解剖して遊ぶシーンから始まる。
そしてラストもこの二人がなにやら作業を始めるシーンで終わる。
映画の中でもカオリンがニコラスとセックスするのをガラスの隙間から覗いていたりして、終始不気味である。
まるでこの二人が男爵の跡をついでニコラスを解剖すると思わせるラストである。

死体愛好とか贓物愛好とか見ていてグロテスクで好きか嫌いかでいうと嫌いなのだが、それでも何十年とあった「悪魔のはらわた」という映画に対するトラウマは克服できた気がする。
その意味では観た価値はあった。








しなの川


日時 2024年12月21日
場所 blu-ray
監督 野村芳太郎
製作 昭和48年(1973年)


昭和4年、十日町の機織り工場の高野の家に竜吉(仲雅美)は丁稚奉公に出た。そこの娘、雪絵(由美かおる)は美しくつい意識してしまう。
雨の日に雪絵を迎えに行く竜吉、二人で傘に入る姿を見られ、からかわれる。
ある日、雪絵は竜吉を伴い竜吉の実家に行った。両親のいない竜吉は祖母に育てられたが、その祖母は昔高野で働いていて、死んだ母のことを聞きにいったのだ。雪絵の母は死んだと聞かされていたが、母のことを周りの人に聞いてもなにも教えてくれない。母は男を作って夜逃げしたという噂があったのだ。高野の祖母はなにも教えてくれない。
竜吉とはやがていい仲になり、恋人として誓い合う。
やがて竜吉との仲を疑われた雪絵は父、淳三郎(仲谷昇)によって長岡の寄宿舎付きの女学校に入れられてしまう。
そこで出会ったのが新任の国語教師沖島(岡田裕介)だった。沖島の情熱に惹かれた雪絵だったが、やがて学校で二人の仲が問題になり退学になってしまう。
沖島は淳三郎に結婚を願い出るが高野の家には不釣り合いと認めなかった。その晩、二人は東京へ出た。東京では不況や政治弾圧に巻き込まれ、少し左翼的だった沖島も逮捕される。東京の警察から連絡を受け十日町に連れ戻されるが、その途中で逃亡する雪絵。
沖島の実家に行き処女を捧げる雪絵。だが雪絵は翌日沖島に別れを告げ十日町に帰って行った。
十日町に帰った雪絵だったが、学校にも行かずなにもする事がない。折からの不況で高野の家も苦境に陥っていた。
祭りの晩、すでに解雇されていた竜吉と再会。将来を悲観した二人は心中を計って川に入るが助かってしまう。
気になって仕方ない、今は佐渡にいるという母を雪絵は訪ねる。


最近「ノストラダムスの大予言」の研究をしているのだが、由美かおるの関連作品まで手を伸ばしてしまい、レンタルにはなかったのでブルーレイを購入。(2500円だったからまあ許せた)
ブルーレイジャケットの解説文や当時のポスターには「幸せを壊す悪い癖、男を裏切る悪い癖、からだなんかなければいい!心なんかなければいい!」という言葉が出てくる。

これが映画の中の大塚道子のナレーションや佐渡で出会った母のせりふでもある。
客観的に見ると雪絵はひどい女である。
これは後半自分でも認めている。

雪絵は長岡の女学校に行く前に「卒業まで1年半よ。休みの時には帰ってくるから会えるじゃない。私たち恋人なんだから!」と言っていたにも関わらず、出会った国語教師に惚れて正月休みは帰らず仕舞い。
沖島も沖島で生徒に手を出す。
倫理感めちゃくちゃである。

実は父親の淳三郎は同性愛者で番頭と出来ている。そしてその番頭に「旦那も最近竜吉を見る目が怪しい」「なんだやきもちか」などと痴話喧嘩をしているので、「悲劇の同性愛者」でもなく単なる不道徳である。

雪絵も佐渡に行って母に会い、母から「あたしは生きたいように生きてきた。お前は淳三郎の子供ではない」と言われてしまう。
でもそんな奔放な母を最初は憎んでいたが、やがては受け入れる。
では雪絵は誰の子供なんだというのははっきりしない。
雪絵の母と結局駆け落ちする番頭の子供なのか?

佐渡から帰ってきていろいろ納得した雪絵は不況で苦しむ高野の家を救うために金持ちの家に嫁に行くことを承知する。
嫁入りの婚礼の日、渡し船でわたってくる。
それを見る竜吉。
竜吉は船に乗り込む。顔なじみの船頭に「満州に行く」という。
婆さんは去年の年末亡くなったという。

倫理観がずれたような人ばかり登場する映画だが、唯一まともとも言える竜吉で話を閉めたのはよかった。
そういえば話の始まりも竜吉の丁稚入りからだった。

見せ場は由美かおるの全裸シーンである。
胸よりも全裸の後ろ姿のカットが多い。
前半では竜吉の実家から帰る途中に滝があり「この辺は蛇がでるから危ない」と言われても「大丈夫!」と全裸で川で泳ぎ始める。
バックヌードである。

そして沖島の実家に行って結ばれる時も全裸のバックヌードである。
70年代の一般映画にもエロが当たり前だった時代の名残である。






痴人の愛(2024)


日時 2024年12月12日10:30〜
場所 池袋シネマロサ・シアター2
監督 井土紀州


シナリオ講座に通う河合譲治(大西信満)はかつてシナリオコンクールで受賞経験はあるものの、プロにはなれず、妻には離婚され一人暮らしをしていた。講座に通う若い学生とあるバーに行き、ナオミ(奈月セナ)という女性に出会う。ナオミは女優でかつては劇団に所属していたが、今はフリーだという。
もう一度その店に行ったとき、ママは休みだったのでナオミと二人きりになった。ナオミは譲治にもたれ掛かる。「家で飲み直しませんか?」
譲治は一旦は断った。
そんな時、シナリオ講座の講師でライターの椿(村田雄浩)から「谷崎の『痴人の愛』の映画化の話があるのですが、ちょっと忙しいので私の代わりに書いてみませんか?」と言われる。
譲治は必死にその題材に取り組む。ある日、スーパーでナオミと再会。
そのまま家に行き料理を作る。二人で食べた後、やがて二人は体を重ねた。
脚本は第1稿が完成したが、打ち合わせの席で「前半はいいが、後半の展開が早く書き上げるために無理矢理終わらせた感じがする」と言われ書き直しを命じられる。
だがナオミがシナリオ講座の他の学生と遊んでいるらしい。またナオミのバーでかつてのナオミの劇団仲間に会い「ナオミは劇団の男の複数と関係を持ちそのことで劇団が分裂しかけた」と聞かされる。
脚本は完成させなければならないが、ナオミがいなくなった。
譲治は脚本に手が着かなくなる。


谷崎潤一郎は著作権フリーらしく「卍」「痴人の愛」はそれぞれ(リバースも含めて)2回ずつ最近映画化。まあ激しい愛憎の話なので、エロVシネ向きなのだろう。
パスするつもりでいたのだが、評判がいいみたいなので、今日は休みを取ったので平日の午前中にも関わらず鑑賞。

脚本家を目指す中年男が主人公かあ。切ない、切なすぎる。
譲治が30歳代くらいに思っていたので、それほど他の若い生徒(20代)と歳は変わらないだろう、と思ってみていたが、離婚した妻に引き取られた娘は中学生らしいし、50ぐらいなのか。実際大西信満は1975年生まれで49歳だしな。
49歳ぐらいだとまだ20代の女性との恋愛を夢見てもおかしくないか。

その他、シナリオ講座に通う生徒たちの群像劇が切ない。「痴人の愛」を離れ、本来こっちの話がやりたかったのではないかと思えてくる。
プロットを書いてそれを講評しあうのだが、あれはきついんだよなあ。
講師はさすがに言葉を選んでいるので「主人公の成長がないとね」などと柔らかい言葉で言うけど、生意気な生徒は遠慮ないだめ出しをする。
そんな連中とよく飲みに行けるなと思うが、やはりシナリオ仲間として飲みに行くのである。

そして親が倒れて実家に帰る者もいる、親が裕福でやる気があるのかないのかよくわからないのもいる。

結局譲治はナオミに逃げられてぼろぼろになりながらも何とかシナリオは完成し、それは映画になったようだ。
その映画の完成試写されている。どうやら自身の話としてシナリオに落とし込んだようだ。
(映画中映画では吉岡睦雄が譲治を演じている)

この前の田山花袋の「蒲団」といい、シナリオライターが苦悩する話が多いな。
結局シナリオライターも世界が狭いので、どうしても自分の知ってる世界に話を持ってきてしまうのか。

最後に奈月セナはおっぱいが丸くて形よい。
譲治に風呂場で体を洗わせるシーンはエロくてよかった。






プテラノドン


日時 2024年12月8日
場所 TSUTAYA宅配レンタルDVD
監督 マーク・L・レスター
製作 2005年(日本劇場未公開)


トルコのある火山で地震があり、そこから太古の地層が出てきた。
古代のプテラノドンの卵が孵化し、翼長2mはあるような成獣に成長していた。やがて人間を補食するようになる。
アメリカの古生物学者が、大学院生の助手と学生3人を伴って化石の調査にやってきた。学生は単位が欲しいだけで特に古生物に興味がなさそうだが、今回の調査旅行の費用は彼らの親が出しているのでやりづらい。
そんな中で一人が用を足すために一行から離れた好きにプテラノドンに補食された。
そんな時、同じ山の中で米軍の特殊部隊が、テロリストのアジトを急襲していた。テロリストのリーダーを逮捕する米軍。その輸送中にテロリストの仲間と交戦中にプテラノドンが現れた。
米軍の特殊部隊数名、テロリスト、古生物学者のグループは敵対しながらもプテラノドンに立ち向かう。


10年ぐらい前の横浜日ノ出町にあった中古DVD屋で見かけたことのあったこの映画、ずっと気になっていたが、宅配レンタルにあったのでやっと見ることができた。

結論からいうと期待したより面白かった。
きっとプテラノドンなんて最後の数分にしか出てこないのでは、と思っていたのだが、プテラノドンが孵化するシーンから始まる。
東宝の「ラドン」と同じような感じだけど、大きさは違う。
そしてこちらは数が多い!

空から滑空してきて、人間を補食する。「ジョーズ」の空版である。
大学生グループのおしゃれにしか興味なさそうな、割と脱ぎ要員(でも下着レベルだけど)が襲われるのは湖を泳いでいる時。その時にプテラノドンに襲われて潜って逃げるのをわざわざ水中撮影までしている。
低予算とはいえ、日本の低予算とはレベルが違う。

ちなみに大学生グループの一人がSFオタクらしく、「May the Force be with you」と言ったり、「宇宙大作戦」のバルカン人の挨拶(中指と薬指を開けるやつ)をやったりするという小ネタ付き。

とにかくこのプテラノドンが強い。
ラドンというより、ギャオス並の強さである。ピストルや機関銃ぐらいでは死なないのである。
小型ロケットみたいなのでないと倒せないのだ。

それにしてもテロリストが出てくる脚本は発想が飛躍してるよなあ。
まあ古生物教授だけでは倒せないから、軍隊が必要、でも少人数の軍隊だけ、ということで外国のテロリストを倒しにきている特殊部隊という強引な設定が出てきたんだろうな。

でもとにかくドラマが薄いので、こちらには何も残らない。
仲間が殺された苦悩とか、プテラノドンを殺してしまうことにためらいなし。逆に学生の方が「研究のために殺すのは反対です」というのに、教授の方が「そんなこと言ってる場合か」と一喝する。

結局プテラノドンの一群は倒すことは倒すが、軍人も学生も全滅。
教授と大学院生(女性ね)だけが生き残って、お互いに愛を確かめ合ってキスして終わり。
脳天気だなあ。葛藤はないのかよ。

プテラノドンはすべて(くちばしの先とか足の爪とかは原寸大のギミックなんだろうけど)CG。2005年の低予算のCGだから、プテラノドンの立体感はまるでなく、平面である。

まあそうは言ってもプテラノドンの出番は多いし、期待したよりは面白かった。





うちの弟どもがすいません


日時 2024年12月7日13:10〜
場所 新宿ピカデリー・シアター5
監督 三木康一郎


糸(畑芽育)は母親の再婚がきっかけで田舎町から東京の郊外の成田家に引っ越した。しかし成田家には4人の男の子がおり、事前に聞いてなかった糸はびっくり。しかも父親は転勤で北海道に行くことになり母親もついて行った。糸は長女として4人の弟の面倒をみる日々が始まった。
長男の源(作間龍斗)は同じ高校2年生で実は糸とは誕生日が1日遅いだけ。次男の洛(那須雄登)は高校1年生。三男の柊(織山尚大)は中学生だが引きこもりで不登校。四男の類(内田煌音〜きらと)はまだやんちゃな小学生だ。
母親が亡くなって自分が兄弟の面倒を見てきた自負がある源は突然現れた姉の存在が気に入らない。柊との関係を作ろうとした糸はオンラインゲームで仲間となって打ち解け、引きこもりから脱出させることに成功した。
柊も糸たちと同じ高校に入学できた。
源はいつしか糸を女性として意識するようになる。それは自分に優しくしてくれた柊にとっても同じだった。二人は体育祭の騎馬戦で決着をつけようとする。


少女コミックの実写映画化。こういう映画は半年に1本ぐらいだと楽しみになるが、先月「矢野くんの普通の日々」を観たばかりで少々食傷気味だが、結局公開2日目に観た。

まずストーリーの疑問点から。
母親が再婚する前に相手の家庭に弟がいるというのを全く聞いてなかったというのはおかしい。普通は結婚前に相手の家に行くとか顔合わせがあるでしょう。別に外国の家庭に嫁ぐ訳じゃあるまいし。
母親も普通は相手の方には4人の息子がいると話すでしょう。

そして転勤で北海道に行ってしまうという展開。
母親も父親もワンシーン、あるいはワンカットしか出てこずすぐに転勤である。高校生の子供たちをほったらかして北海道はないでしょう。
その後、一度も両親は子供たちのところへ帰ってこない。
はっきり言ってネグレクトと言われても仕方あるまい。

「思い、思われ、ふり、ふられ」の時は両親が再婚して好きなもの同士が同居するようになって、母親の方が「間違い」(この場合は肉体関係)になってしまうのではないかと気にしてる描写があった。
その「自分を殺す」というのがよかった訳だけど。

ところが今回は糸と源は糸の故郷に行った際にバーベキューとかくれんぼをして事故でキスしてしまう。インモラルである。

そしてこの手の映画の定番の後半のライバル登場だが、故郷の幼なじみ(前田旺志郎)がライバルになるかと思いきや、弟の柊である。
兄弟で一人の女性を取り合うとか無茶苦茶である。しかも同じ家に住む家族である。

結局源と付き合うようになる糸。
家族間で恋人がいてライバルがいて、親はいなくてもう何でもありのインモラルな家庭である。
おかしなストーリーだ。

兄弟4人は旧ジャニーズJrである。作間はHiHiJets、那須は美 少年だが、Jetsは高橋優斗が抜け、美 少年は金指一世が抜けジャニーズ性加害問題でテレビ出演はなくなり、CDデビューは両方ともほど遠い。
美 少年の浮所飛貴は2021年に「胸が鳴るのは君のせい」で単独主演をしたが、その後イマイチである。
なんか大変だなあ、という思いが強くなる。






正体


日時 2024年12月6日19:25〜
場所 新宿ピカデリー・シアター8
監督 藤井道人


鏑木慶一(横浜流星)は東村山市で起こった一家惨殺事件の犯人として死刑判決を受けた。ところが自殺を図り、医療刑務所に移送中に脱走した。
警察は行方を追うが一向に潜伏先はわからない。
数ヶ月後、大阪の工事現場で働いていた。同僚の野々村和也(森本慎太郎)が事故で怪我をした際に治療費を払おうとしない会社に反抗したことがきっかけで和也は慶一を信頼するようになる。しかしテレビを見て慶一が逃亡犯と知ると懸賞金に目がくらんで警察に通報。だが逃げおおせる慶一。
数ヶ月後、WEBライターとしてネットカフェ暮らしをしていた。彼の各記事は好評で編集者の安藤沙耶香(吉岡里帆)も認めていた。
ある雨の晩、町で見かけた慶一を自分の家に泊まらせる沙耶香。やがて沙耶香は慶一に好意を抱くようになる。担当刑事の又貫(山田孝之)も多からの通報で沙耶香をマークする。ついに踏み込むがまたしても慶一は逃亡。又貫自身もこの事件に疑問を持ち始める。もともと物証に乏しく、生き残った遺族が慶一が現場にいたという証言だけ。裁判の時から「動機がない」と言われていたが、事件解決を願う世論に押され、強引に鏑木を逮捕していたのだった。
数ヶ月後、長野県の介護施設に介護職員として慶一は働いていた。後輩の舞(山田杏奈)に慕われる慶一。彼女が慶一の画像をインスタにあげ、それが「鏑木に似ている」とネット上で炎上し、又貫たちに今度こそ逮捕された。


「横浜流星が死刑の逃亡犯を演じる!」ということで期待していた映画。
でも見終わって「思ってた映画と違っていた」というのが正直な感想。
てっきり横浜流星の犯人が死刑囚の極悪人にも関わらず、逃亡先で出会った人からは「いい人」と言われてしまうという人間の二面性を描くのだと(勝手に)思っていた。

ところが見てみたら単なる「冤罪もの」で真犯人を見つける為の逃亡である。
それじゃいい人なのも当たり前じゃん。面白くもなんともないよ。

警察も単なるアホである。
それにそもそも「錯乱した目撃者の証言だけ」では弱い。これでは冤罪を主張する弁護士が現れそうだが、そういう支援者は出てこない。
原作ものだから、原作そのものに問題があるのか。
和歌山カレー事件も林死刑囚も私は犯人ではないと断定はしないが、彼女は容疑者の一人に過ぎないと思っている。

そういう冤罪の危険、がテーマと言うわけではなく、逮捕された鏑木が「人間を信じたかった」というチープなせりふでいうようなことがテーマだったのか。

そもそも長野県の介護施設に行ったのはそこに自分を殺害現場で見たと証言した遺族がいて、その人に真実を思い出させようとしたんだよね。
それから沙耶香の父が弁護士で痴漢の容疑をかけられ裁判をしてるのだが、本筋とは特に関係がない。

沙耶香の上司役で宇野祥平が存在感を見せる。
ラストの西武新宿駅前の署名運動などほんとにあそこでロケしたのか?
グリーンバック合成とかなのかな?

期待はずれ(というかこっちが勝手に期待したのだが)映画だった。





クルージング


日時 2024年12月1日16:35〜
場所 シネマート新宿・スクリーン1
監督 ウイリアム・フリードキン
製作 1980年(昭和55年)


ニューヨークのハドソン川、ここで人間の腕が見つかった。他殺と思われるが、肝心の胴体がなく死因も不明では警察は動けない。
そんな頃、ゲイの人間ばかりが殺される連続殺人事件が起きるが警察は手がかりがない。
被害者の身体的特徴に共通点があったことから、それと同じ特徴を持つ警察官のスティーブ・バーンズ(アル・パチーノ)が囮捜査をするように刑事課のエデルソン警部(ポール・ソルヴィノ)に命じられる。
男性との性体験など皆無のバーンズだったが、出世のためと割り切って引き受ける。
アパートを借りて生活を始めたが、この前の住人もゲイでゲイ雑誌がたくさん残されていた。隣の部屋の脚本家志望の青年とも仲良くなる。
SM系のゲイバーに出入りするバーンズ。そこは男たちが半裸で飲み、抱き合い、キスをしている世界だった。男からも誘いを受けるが、つい断ってしまうバーンズ。
出入りをしているうちによく客とトラブルを起こしている男を見つける。報告を受けた警部はその男がステーキ店につとめており、その店で使われているナイフが今回の凶器の可能性があると突き止める。
バーンズが誘い出し、ホテルに入ったとき、男を逮捕した。しかし連続殺人事件のなかで犯人らしき指紋を採取していたが、逮捕した男とは一致しなかった。
バーンズ自身も自分とよく目が合う男を見つけていた。バーンズは警部から連続殺人事件の最初の被害者のコロンビア大学教授の教え子のリストをもらう。その中に例のよく目が合う男も含まれていた。
バーンズはその男を尾行し、部屋に入り証拠を探していくのだが。


日本公開は1981年1月。ニューヨークのゲイの世界を描いた映画として話題になったし、私も知っていた。観なかったけど。当時ではまだ刺激が強すぎる感じがしたのだろうな。

いつか観ようと思っていたが、この度デジタル版がリバイバル。
そういうわけで観たのだが、今のこの歳で観るとそれほどでもない。
それはその間にピンク映画とかAVとかもっと刺激の強い映像も観たし、大人になってストリップとか生の刺激の強いものも見たせいだろう。

考えてみれば81年ではまだAVもなかった。
ゲイでいえば初期の薔薇族映画もなかった。ゲイの世界を生々しく描いた最初の映画だったのではないか?(アングラ系の映画ではあったかも知れないけど、あくまでメジャー作品に限った話だ)

映画の中のクリストファーストリートも人が多い。この時代の映画だからオープンセットでそこにいるゲイたちはたぶん役者なのだろう。
SM系の店にしたって「あんなに人がいるのか?」という気がしないでもないが、ネットも何もない時代である。出会いとなれば「クリストファーストリート」であってもおかしくない。

SM系の店ではケツ割れサポーターの男たちがあふれ、なんとフィストファックまで店の中でやっている。俺はそれほど衝撃でもないけど、観る人によっては衝撃だったろうなあ。それ以前に男が拳に何かを塗っていて、別の男が仰向けになっていてあえぎ出す、という映像だから解らない人には解らなかったかも?

という感じだが、刑事物としては捜査も特に緻密ではない。
「フレンチコネクション」「ブリット」などの刑事物の変形、と言えなくもない。

結局犯人はバーンズが目を付けた男が犯人なのだろうけど、動機がよく解らない。父親に手紙を何十通も書いているのだが、それは出されていない。逮捕後に父親は10年前に亡くなっていたと説明される。
それって殺人の動機になるの?
さらに物的証拠の第2の殺人の時(これがコインを入れてみるのぞき穴式のビデオブースが現場)に血の付いたコインについていた指紋と一致したということなのだが、その他の事件では物的証拠はない。
ってことは他に犯人のいる可能性はあるのか?
(ちなみに実際にクリストファーストリートに行った時にこういうビデオコーナーは見たことがある。92、3年頃か)

ラスト、恋人の家に帰るバーンズ。ここで髭を剃り、そしてカメラを見つめるのだが、彼がゲイに目覚めてしまったと思わせる終わり方。
不思議だなあ。説明的なものは一切ないのにアル・パチーノの表現力だけでそれを観客に解らせる。

その直線にバーンズが潜入捜査中にアパートの隣の部屋に住んでいた劇作家志望の青年の他殺体となって発見される。これもバーンズが殺したのか?
元々その劇作家の青年には同居人がいたのだが、その同居人はダンサーで地方に行っていた、しかし途中から帰ってきたという流れ。
その同居人とバーンズは大喧嘩をする。
その痴情のもつれから殺してしまったのだろうか?

いろいろとはっきりせずに含みを持たせて終わるけど、見応えはあった。
BLドラマ(そんな言葉すらなかった)が当たり前の2020年代とは隔世の感がある。





ベイビーわるきゅーれナイスデイズ


日時 2024年12月1日13:30〜
場所 池袋シネマロサ(2階)
監督 阪元裕吾


仕事で宮崎に来ている殺し屋コンビちさと(高石あかり)とまひろ(伊澤彩織)は仕事の傍らにバカンスを楽しんでいた。
仕方なく仕事に出かける二人。しかしターゲットの松浦の元に行くと別の殺し屋が殺そうとしていた。結局この殺し屋と対決する羽目になり、殺し屋にも松浦にも逃げられた。途方に暮れた二人の前に入鹿みなみとマッチョな男が現れた。二人はちさとたちと同じ協会の殺し屋。みなみの話では同じターゲットを依頼主は別の殺し屋にも依頼していたらしい。しかし向こうに殺させたのでは協会のメンツに関わる。だからその殺し屋・冬村かえで(池松壮亮)を殺してから松浦を殺せという。
これからみなみの指揮で4人で行動することになったが、やたら威張り散らすみなみを二人は気に入らない。
まずは松浦を捕まえて、かえでをおびき寄せようとしたが、松浦は家には帰っていない。かえでのアジトを突き止め、急襲したところ松浦は確保できた。
最強の殺し屋のかえでとの対決が始まる。


9月から新宿ピカデリーをメインシアターで上映していたのだが、なんか時間が合わなくて「今回はパス」と思っていたのだが、訳あって伊澤さんの演技を確認したくてシネマロサでロングランしてるので鑑賞。

結論からいうと観ておいてよかった。池松壮亮がいいのである。
冒頭で「149人目」と殺すのだが、この時に服がはだけて上半身が露わになる。その体がいままで見たことないようなたくましさなのだ。
いつものの「演技派」な感じではなく、完全に肉体派なのだ。
胸板も気のせいかいつもより分厚い。

そしてちさとやまひろとの対決になるのだが、これが池松の動きがめちゃくちゃ速い!後ろ姿で、中空になったロビーで手すりから向こうの手すりにジャンプするカットはスタントかも知れないが(というかスタントであってほしい。危険すぎるよ)、それにしたって他のカットでは素早い動きをする。

すげえなあ。
アクション専門の俳優ではない池松にはホント感心した。
死体処理専門の水石亜飛夢の活躍が少なかったのは残念かな。

あと宮崎県でロケしたらしいが、最初の県庁(だと思う)の古い趣のある建物がかっこいい。
前田敦子が嫌みな上司役で登場。最後は和解するところがいいんでしょうね。

今回は主人公の女子二人の私生活のだめだめぶりのグダグダがなかったので、その分いらいらさせられずに楽しめた。
高石あかりはNHKの朝ドラのヒロインに決まったそうで、「4」の製作は当分ないかな。
結局相手役殺し屋のキャスティング次第でまた見てしまいそうだ。