雪子 a.k.a.日時 2025年3月30日11:20〜 場所 アップリンク吉祥寺・スクリーン3 監督 草場尚也 雪子29歳は小学校の4年2組の担任教師。子供たちや親たちの対応に毎日を懸命に生きている。しかし必ずしもうまくいかずに自分に自信がない。 そんな雪子のこころの支えはラップだった。ヒップホップミュージックが好きで、その中でもラップが好きだった。自分でも出来るようになりたいと言葉のチョイスは毎日欠かさない。そして金曜日の夜にラップ好きが公園で集まって楽しんでいた。 学校では親から「私は7時まで働いてますから学校から連絡が来ても対応 出来なんです」と怒られる。でも学校は6時になると外線はつながらないように切ってしまうのだった。 そんな日々、公園でのラップバトルに突然指名されバトルをするが、自分の自信のなさを吐露するが、それはコテンパンに打ち砕かれる。 周りの先生はちゃんとやってるように思える。 恋人・広大(渡辺大知)は両親に会う前に、プロポーズもする前に婚約指輪を買いにいこうとする。 不登校の子がいて毎週のようにその子の家を訪ねるが、一向に答えてくれない。親からも「毎週来なきゃいけない決まりでもあるんですか?」と迷惑がられる。 故郷の長崎に帰った。そこではラップバトルの長崎大会が行われる。 迷ったあげく雪子は出場するのだが。 全然知らなかったがいまおかしんじ監督が「めちゃくちゃよかった」と絶賛していたので鑑賞。 (吉祥寺で観た後井の頭公園に桜を見に行ったのだが) 決して悪い映画だとは思わないが、私には刺さらなかったなあ。 「自分に自信を持てるか?」がテーマだと思うが、この土地になると自信があるとかないとかじゃないしな。 こうしか、あるいはここまでしか出来ませんでした!って思い切らないとやっていけない。 自信がないというのは「自分はもっと出来るはず」と信じている部分があるのではないかな、と思う。 でも引きこもりの子の家に訪ねていって「私のせいで学校に来れなくなったって言われのが怖かった」って吐露する。 でも父親から「先生甘いなあ、腹を割って話せば出てくると思いました?」という。そして本の山を持ってきて「これ全部読みました。そして書いてあること全部やってみました。でもだめでした。正解なんてないんですよ」という。 でもこの会話の最後で「あっでもなんか刺さったようですよ」と父親が笑顔を見せる。 雪子が振り返ると生徒が出てきてくれたのだ。 この展開はよかったですね。 そしてその生徒の演奏するピアノで自分はラップをする。 音楽に乗せるとなんか盛り上がりますね。 今日は草場監督と、養護教師を演じた赤間麻里子さん、そして小学校の生徒役の下田漣さん、森泰羽さんの舞台挨拶付き。 この映画は監督のラップをテーマに映画を作りたい、という発想と自身も大学の教育学部出身で教員免許も持っている経験から「教師がラップする」という企画になったそうな。 でも今の小学校教育は本当に変わったな。 親との連絡もメールとか、教師の教材も「データであります?」とかだもんね。当たり前と言えば当たり前のレベルなんだけど。 あと恋人の広大の役名、「熱中時代」の北野広大先生(水谷豊)から来てるのかな? 代々木ジョニーの憂鬱な放課後日時 2025年3月29日19:25〜 場所 新宿武蔵野館・スクリーン1 監督 木村聡志 三鷹実業高校の代々木ジョナサン(通称ジョニー)(日穏)はつきあっていた熱子(松田実桜)に別れを告げていた。最初から「嫌いではなかった」という程度の理由でつきあい始めたのだったから。 彼が所属する部活はスカッシュ部。でもスカッシュをやっているのは小野寺(ボタン君)だけであとのジョニー、田端さん(バタコ)(加藤綾乃)、神父さんは部を作りたいボタン君に誘われただけだった。そこへスカッシュを本気でやりたい1年生の持田さん(通称デコ)(吉井しえる)が入ってくる。 ジョニーは古本屋でバイトをしていて、そのオーナー(マキタ・スポーツ)は近くで喫茶店を経営していた。オーナーの孫娘、出雲さん(今森茉耶)と時々話す。 一方今は家で引きこもりになってしまった神楽さん(一ノ瀬瑠菜)を時々訪ねていた。彼女が風邪を引いたときなどゼリーを買ってきてあげる。 持田さんの説得でジョニーたちもスカッシュを始めるようになる。 一方出雲さんも故郷の宮崎では引きこもりのような状態だったので「土地を変えてみる」ということで東京に来ているのだが、彼女も徐々に心を開いてくれた。 そしてスカッシュの大会に出ることになった。その当日、なんと出雲さんは宮崎に帰るという。神楽さんも引きこもり支援施設に入ってしまった。 木村聡志監督最新作。昨年の「さよならエリュマントス」同様、ミスマガジン企画である。 今回はミズマガジンの女の子たちはバラバラに登場し、グループ感はない。 木村作品は「階段の〜」が最初で次に「違う惑星」そして「恋愛依存症の女」を2023年に観て、「このハンバーガー、ピクルス忘れてる」で何回も観るようになってはまってきた。 昨年の3月ぐらいから企画は聞いていて、8月に「日穏(KANON)」という子が俳優デビューすると発表され、それまでクラウドファンディングもしていたが、70%の達成だったのが、日穏の参加発表でたちまち100%を越えたことがあり、注目の作品。 本公開は今年の秋だが、この3月にKCU特集が新宿武蔵野館で開催され、この「代々木ジョニー」も今回先行上映。 このジョニー君が不思議な男の子で冒頭熱子ちゃんと別れるのだが、「好きかどうかわからなくなった。熱子ちゃんのことを好き、っていうのは日本史が好き、っていうのと同程度だから」とよく解らないことを言う。 その後スカッシュ部に新入部員が入ったり、神楽さんの家に行って「フィルムの現像出してきて」と頼まれたりする。 それらの会話はいつもの木村節で取り留めのない会話が交わされる。 いつもならこういう会話の繰り返しで終わるが(「このハンバーガー」がその典型的作品)、今回はちょっと好きになった出雲さんが宮崎に帰ってしまう。 んでその日はスカッシュの大会の日。 そういう典型的な青春ドラマの設定をしながら、木村監督ははずしまくる。自分の代わりに熱子ちゃんが(完全未経験だが)出場してくれることになる。 周りからは「走れ!」と言われるが、「別に走らなくても」ということで彼は走らない。 そして出雲さんを空港に送っていく。 でもなにも変わらない。 出雲さんは帰って行った。 このあたりはいいのだが、幼なじみの神楽さんの扱いが気になる。 出雲さんも人間関係がうまくいかなくなって東京に来たのだが、神楽さんも似たような感じ。そして支援施設に入るのだが、ここって信じていいの?変な宗教ってことはないの? そしてその施設に訪ねていって対応してくれた謎の女性(この娘もミスマガらしい)もなんか怪しい。 でもこのあたりは深堀されない。あれでよかったのかと思う。 まあ6人の女の子を出さなきゃいけないから大変だとは思うけど。 そして「違う惑星」の牛田モー君(綱啓永)が変なスーパー店員で登場し、ベンジーさんはスカッシュ大会の運営委員で登場。 先輩平井亜門はどう登場するかと思っていたが意外な設定。 ジョニーは大学に進学するが、それが映画系の大学らしい。 そこで「代々木君だよね、俺高橋だけどみんなで飲みに行こう」と誘いに来る。 なんと「階段の先」よりも時系列では前になり、先輩がまだ先輩になる前の1年生の時なのだ! さらに平井亜門は「階段の先」の頃のようなマッシュルームカットで登場した。芸が細かい。 日穏くんがいいので映画が成立している。 また見に行きたい。 教皇選挙日時 2025年3月29日14:00〜 場所 kinocinema新宿 監督 エドワード・ベルガー ローマ教皇が亡くなった。教皇の座が空白になり規則により選挙が行われることとなった。選挙の取り仕切るのは首席枢機卿のローレンス。友人でもあり尊敬するベリーニを心の中で応援している。 世界各国から枢機卿の役職の者が集まってきた。この中から選挙で選ばれる。有力候補は初のアフリカ系となるアデイエミ、今の教会は堕落したと復古主義を訴える保守派のテデスコ、そしてトランブレ。 教皇選挙(コンクラーベ)の前日になって中東のカブールからベニテスという枢機卿がやってきた。ローレンスも知らなかったが前教皇が密かに枢機卿に任命していたという。 またローレンスは前教皇の側近の者からトランブレは教皇が亡くなる前日に解任されていたと聞く。 1回目の選挙では票が割れて決まらない。教皇は全投票の3分の2を集めることが必要だった。 ある晩、夕食の席でアデイエミが怒鳴りだした。配膳をしていたある修道女に対して怒ったのだ。 その原因を聞き出すローレンス。それは30年前にアデイエミがその修道女を妊娠させていたというスキャンダルだったのだ。 この件が噂になり、結局アデイエミは事実上、選に漏れた。しかしこの修道女をこの場所に派遣したのはトランブレらしい。 ベリーニに奮起を促すローレンスだが、「トランブレの方が優勢だ。でもテデスコがなるよりはいい」と消極的にトランブレ支持に回る。 前教皇がトランブレを解任した噂の真相をさぐるべく、ローレンスは前教皇の部屋を探る。 1ヶ月ぐらい前にTOHO日比谷に行ったときにポスターを見かけた映画。 ローマ教皇が亡くなって次の教皇を決める選挙をコンクラーベというのは報道でその時に知った。 聖職と言われる人々の間にも対立はある。 「白い巨塔」の教授選を観るようだという意見を観たけど、そんな感じ。 でもこの選挙は金とか権力だけではない。 信仰が関わってくるから余計に深刻である。 復古派というか保守派というのか政治の世界で言えば右翼がテデスコである。「昔はラテン語で皆同等に会話できたが、今はどうだ?リベラル派がラテン語を必要でなくしたので皆同じ言語同士で固まっている。嘆かわしい」と「昔はよかった」話をする。 要するに「同性婚とか妊娠中絶とか多様性を認めると世の中秩序が無くなる」という発想だ。 そして爆破テロが起こり皆が今後を話し合っているときにテデスコが「多様性を認めるからこんなことになるんだ。こっちが他の宗教を認めても向こうがこちらを排除する。宗教戦争は間近に迫ってるんだ!」と叫ぶ。 そこで今まで話の流れから出てこなくなっていたベニテスが「戦争ですと!あなた方は戦争を知っているのか!」と強く話す。 トレンブルは選挙の準備の為に買収を行っていたことが前教皇にばれていた事実も暴露され、一時はローレンスも自分が教皇になる決意をする。 しかし結果はベニテス。 さっきの「戦争をわかってるのか」発言が効いたんでしょうねえ。 ここでメデタシで終わるかと思ったらさらに逆転。 ベニテスは性的少数者だったのだ。はっきりとは言わないが、男性でも子宮があるという性別があいまいな存在だったのだ。 枢機卿になれるのは男性だけなのか、女性はいない。 キリスト教も結構男尊女卑なのだ。 そこへ保守派が一番忌み嫌う性的少数者が教皇になるとは驚いた。 「アノーラ」は格差社会を浮き彫りにした。 この「教皇選挙」はリベラルの極致の結論を迎えた。 理想と現実、というか世界の分断を描いていて、偶然とはいえ興味深い2本立てだった。 映画の内容とは直接関係ないけど、暗いシーンが多く、映写も暗い感じがして映像美が楽しみきれなかった。残念。 アノーラ日時 2025年3月29日10:40〜 場所 新宿ピカデリー・スクリーン8 監督 ショーン・ベイカー ニューヨークでストリップダンサーをしているアノーラ、通称アニー(マイキー・マディソン)はロシアの富豪の息子、イヴァン(マーク・エイデルシュテイン)に気に入られた。毎日のように店にやってきたが、やがて「出張」を依頼され、彼の自宅に行ってみた。驚くような豪邸。イヴァンの友人にも紹介され、セックスに酒にパーティの日々を過ごす。 やがて1週間の貸し切りを依頼され、承知する。またまた乱痴気な日々を送ったが、ノリで友人たちとラスベガスに出かける。そしてプロポーズされてしまう。もちろん承知したアノーラはそのまま結婚の手続きへ。 ニューヨークのイヴァンの自宅でいつものように楽しい日々を送っていた。 イヴァンの両親からイヴァンの監視を言われているトロス(カレン・カラグリアン)はイヴァンが結婚したという噂を耳にした。慌てた彼はすぐに部下のガルニク(ヴァチェ・トヴマシン)に結婚を確認するよう命じる。ガルニクは強面のイゴール(ユーリー・ボリソフ)とともにイヴァンの家に。セックスを邪魔されて怒るイヴァンは結婚証明書を見せる。 ガルニクから連絡を受けたトロスは洗礼式も途中で抜けだしイヴァンの家に駆けつける。 イヴァンはトロスから逃れるために家から逃げ出す。 「ストリップダンサーと富豪の息子が結婚する話」と聞いて興味を持っていたのだが、時間が合わなくて公開して1ヶ月間見送っていた。「アカデミー作品賞も取ったし、どうせ配信等で後からいくらでも観る機会はあるだろう」と思っていたのだが、やっぱり気になったし、今日なら時間も合ったので鑑賞。 (アカデミー賞を穫った映画は逆に自分にはあわないことが多いのだ) でも予想を裏切る展開だった。 ラスベガスに行って結婚するまでは予想の範囲。富豪の息子だけあってめちゃくちゃ金遣いが荒い。そしてベガスで豪遊して結婚。 (ベガスは1998年に行ったことがあるけど、天井が電光パネルになってる道は今でも同じだ) でもここまででも思ったより裸やセックスのシーンが多かったな。 それにアノーラの仕事をストリッパーって紹介されてるけど、ステージで踊るわけではなく、客の目の前で踊ってお客が気が乗ったら個室に行って場合によっては本番行為もするようだ。 日本では聞かない業態だけどひょっとしたら歌舞伎町あたりにはあるかも知れない。 結婚してニューヨークに行ってからが話のキモ。 イヴァンのお目付役の3人組が面白い。 トロスは神父なのだが、洗礼式をほっぽりだしてイヴァンの家に向かう。 ガルニクとイゴールがまずは駆けつけるがイヴァンは逃走。 その後、アニーと3人が暴れるアニーを取り押さえ手足を縛る縛らないでもめだし、ニューヨークの夜をイヴァンが立ち回りそうなところを探しまくる。 なんかこの辺りの騒動はなぜか「ロンググッドバイ」みたいなノリである。 結局イヴァンはアニーの店で遊んでいるところを確保。 翌朝ニューヨークの裁判所に行って結婚を無効にさせようとするがベガスに行かなきゃだめとなって、駆けつけたイヴァンの両親とプライベートジェットでベガスへ。 でもここで今までの映画ならイヴァンが男気を出してアニーを守るのだが、「離婚するつもり?」とアニーに言われてあっさりと「当然だろ」と答える。 そしてベガスでもコントのようなやりとりがあって離婚は成立。 一応アニーは離婚料として1万ドル(150万円位)はもらえるけど。 そしてイゴールがアニーを送っていく。 やがてイゴールは「君のために何かしたい」と言う。 アニーの家に送っていって、別れるときアニーはイゴールの上に乗る。 ここで「二人は結ばれました」っていうハッピーエンドになるかと一瞬思ったが、アニーが泣き出したところで終わり。 ひょっとしたら結ばれるかも知れないけど、結ばれないかも知れない。 てっきり「プリティウーマン」のようなイヴァンとアニーが結局は結ばれるラストを予想していた(期待したわけではない)けどまったく違う展開で逆に気に入った。 そうだよね、世の中そんなにうまく行かないよね。 格差社会が固定化していく現代の象徴か。 エロVシネでもリメイクできそうな内容なので、日本版もちょっと観てみたい。 スター・フォース〜未知との遭遇日時 2025年3月23日14:00〜 監督 チャン・クオミン 製作 1983年(昭和58年) まあ世の中にC級映画、あるいはZ級映画と言われる映画は数あるし、そういう映画もある程度観てるつもりだけど、これはその中でも本格的Z級映画だと思う。 まずストーリーがあってないようなものなのだ。 一応ストーリーらしきものはある。 冒頭、夜の田舎道で農夫がUFOらしき光と遭遇する。そこへ警察や野次馬が来てるところへ、「未知との遭遇」みたいな光の束がやってくる。 だが実はそれは二人組の探偵のバイクだった。というオープニング。 そしてその探偵が道を走っていると美人(チェリー・チェン)がハイヒールを道路の金網にさして動けなくなる。そこを下から風がでてスカートが舞い上がり、次々と車がクラッシュする。 そして彼女はデパートの化粧品売場で働いていて、お客からクレームが来てクビ。そこへ富豪の息子が現れて結婚したいという。父親に紹介するが「お前のIQテストをする」と言い、「ある男が首を吊って死んだ。そこには机もいすもなかったが、床がびしょびしょだった。男はどうやって首を吊ることが出来たか」というクイズを出す。息子の方が父親にわからないようにジェスチャで答えを教えるが、そのジェスチャは彼女は解ってくれない。(答えは氷の固まりの上に乗って首をくくった) 一方、冒頭のUFO騒動の時に現れた博士はなにやら薬を開発している。それをゴリラに飲ませようと思ったら、ゴリラのいたずらで自分が飲んでしまった。これを飲むと凶暴化するようだ。 探偵二人組は仕方なく借金の取り立てをしている。「子供がたくさんいて金が返せません」と言い訳していて、子供がいるけどそこへ「あんたたち何してるの!」とホントの母親がやってきて子供たちを連れて行く。 こんな感じで脈絡なく笑いのシーンが続く。でもそもそも笑えないのだな。 この探偵が一人が「帝都物語」の加藤大尉をもっとひどくしたような顔をしていて、もう一人はまあ普通。 ところがこの探偵が途中で顔が変わる。 正直役者が変わったかと思った。 話によると撮影に2年ぐらいかかったらしいから、顔つきも変わったのかなあ? この映画、ラストはこの探偵と博士とのライトセーバーを使った格闘になる。博士はライトセーバーだが、探偵の方はライトセーバーヌンチャク。 このライトセーバーの光がデン・フィルムエフェクト(飯塚定雄さんの会社)の仕事だそうで、それで観た。 とにかく脱力しかしない映画で、編集の間もムチャクチャだし、高校生が文化祭で撮ったような映画だったな。 At the terrace テラスにて日時 2025年3月22日19:15〜 場所 新宿武蔵野館・スクリーン1 監督 山内ケンジ 大企業の専務であるソエジマ家の豪邸での夜のパーティがお開きになり、招待客は三々五々に帰り始めていた。 遅れてきたトヨタに勤めるタノウラは他の招待客とあまり話せずにいて帰るタイミングを逸しているとき、はる子(平岩紙)をテラスで見かける。 ノースリーブのドレスを着たはる子の腕は色白で美しく、つい見てしまう。 そこへ斉藤がやってきて、彼女は斉藤さんの妻だと教えてくれた。その斉藤とは別の斉藤だという。ソエジマ専務もはる子の腕を誉める。 ソエジマ夫人がやってきて男たちがはる子の腕を誉めるが何か気に入らない。 「奥様の方が美しいですよ」とはる子は対抗するが、それが妙に喧嘩のようになってしまう。 そんな言い合いをしてるところに大学生でソエジマの息子が帰ってきた。 なんか険悪なムードに戸惑うソエジマの息子だが、そつなくこなしていく。面接も得意でトヨタの他に三菱重工にも内定をもらってるという。 この映画、新宿武蔵野館で3月21日から3週間行われてる「KCU plus ONE」という木村聡志特集での上映。 「恋愛依存症の女」から秋本公開予定の「代々木ジョニーの憂鬱な放課後」までの5本に加えて関連作品「愛なのに」「猫が逃げた」「さよならエリュマントス」にこの「At the terrace」の上映。 この中で「At the terrace」が未見で、「木村監督もリスペクトを捧げる映画」と紹介されていたので土曜の夜で時間的にも合ったので鑑賞。 もとは山内ケンジの戯曲「トロワグロ」の映画化。もとは戯曲なので、豪邸のテラスだけで繰り広げらる1幕もの。 これが期待以上に面白い!!! 木村監督がリスペクトを捧げるというだけあって、木村映画にも通じる「ああいえばこういう」の会話劇が繰り広げられる。 木村作品は監督の年齢のせいか、登場人物は30歳以下が多かった。 本作はソエジマ専務やその夫人などそれ以上の年齢の人たちも登場する。 そして専務の息子が「面接の受けがいい」「女の子にもモテる」という話題から「受けがいいのは女の子だけにしてほしいな」の一言で「あれっ?」って思う。 そしてデザイナーの斉藤は結婚もしてるけど実は男も好きで、専務の息子とデキてしまうという怒濤の展開。 そこに出てくる嫉妬や関係ないイライラの発露、隠しきれない肉体への欲望が絡み合う。 そのあたりは言葉では言い尽くせない。 いや〜面白かった。 もう1回観たい。 少年と犬日時 2025年3月21日18:30〜 場所 新宿ピカデリー・シアター4 監督 瀬々敬久 2011年宮城県。和正(高橋文哉)は震災で仕事を失い、仕方なく高校の先輩に言われて震災で避難している人の家に入り窃盗をするグループの盗品の運搬の仕事をしていた。ある日、妙に人なつっこい「多聞」の名札のあるシェパードを拾ってきた。実家に帰ると痴呆が始まった母親が元気になった。このことから多聞を大事にする和正。やがて外国人宝石窃盗団の運転手をするようになり、内輪もめに巻き込まれ事故を起こしてしまう。その事故のどさくさで多聞と別れてしまった。 滋賀県の琵琶湖の付近。美羽(西野七瀬)はデリヘルで仕事をしていた。きっかけはつきあっていた男がギャンブルで借金を作り、その返済の為fだった。美羽はある日、森の中でけがをしているシェパードと出会う。 かわいそうに思った美羽はそのシェパードにレオと名付けた。それは多聞だった。ある日、若い男が訪ねてくる。それは和正だった。美羽がSNSで多聞の写真をアップし、和正が見つけたのだった。 和正も美羽も多聞がある方向を見ているのが気になっていた。宮城では南の方、滋賀県では西だった。 実は美羽は借金と彼の浮気がきっかけでその彼を殺していた。森の中で多聞と出会ったのは彼を埋めていたのだった。その殺しも男の仲間にばれ、追われる身となった。 美羽と和正は多聞の行きたいところに行こうと決意。しかし和正は交通事故で死んでしまう。 美羽も警察に自首した。そして美羽は出所した。 シネコンに行くと何度も予告を見せられたこの映画。「少年と犬」というタイトルからしてベタベタな動物映画である。しかも製作はTBSだし、春休み公開なので、完全にファミリー層を狙った映画だろう。 と思っていた。 パスする予定だったが、監督が瀬々さんなので一応観る。 が、映画は観てみないとわからないもので思わぬ方向に進んでいく。 まず和正が震災の空き家からの窃盗団。いやリアル過ぎるでしょ。 さらに美羽の職業がデリヘル嬢。おいおいファミリー層がターゲットの映画でそれはいいのかよ! さらに主人公の和正は死んでしまう! おいおいどうやって話をつなぐんだよ。美羽も自首しちゃうし。 映画は最初から美羽がたまたま出会った少女に思い出話をする形式で語られる。 だから西野七瀬はずっと語り部となって話を進めていく。 そして幽霊となって多聞と旅を続けた和正の話をする形式になる。 話を聞かされている少女から「それ妄想じゃない?」と一応言われるがだからと言って止めることなく話は続く。 まあ多聞が前の飼い主の元に行くのかと思ったら、多聞は震災前の岩手県に住んでいて、その時に近所に住んでいた男の子と仲がよかったという。 その少年は震災のPTSDで口を聞かなくなり、彼の両親とともに熊本県に引っ越していた。 そして多聞も熊本にたどり着く。 でも今度は熊本地震に遭遇し、少年を助けるために多聞は犠牲となる。 窃盗団は出てくるが、デリヘルは出てくるわ、幽霊は出てくるわで(私に言わせれば)話がめちゃくちゃ。 そりゃ多聞の旅に人間が寄り添うことは出来にくいけどね。 予想のナナメ上を上をいく展開で驚くばかりだった。 そうそう吉岡睦雄さんがデリヘルの客で出演。 先週の「早乙女カナコの場合」では警備員、「悪い夏」では刑事、と1週間に3本も吉岡さん出演作品を観られるとは驚いた。 バイプレーヤーとして着実に仕事を増やしている。 悪い夏日時 2025年3月20日12:30〜 場所 グランドシネマサンシャイン・スクリーン11 監督 城定秀夫 市役所で生活保護を担当する佐々木守(北村匠海)は気弱で優しくて、不正受給の疑いのある山田(竹原ピストル)にも強く言えないでいた。 そんな時、先輩の宮田(伊藤万理華)から同じく福祉課の職員の高野がシングルマザーの愛美(河合優美)に体の関係を迫っているという噂があるので、一緒に調べてほしいと言われる。 「課長に報告しましょう」という佐々木だが宮田は「まずは証拠を固めてからだ」と言う。 佐々木と宮田は愛美の部屋に言って話を聞くが、愛美は否定する。そのとき、愛美の娘が佐々木になついてきた。お絵かきが好きなその娘のためにクレヨンを買ってやる佐々木。そこから愛美と親密になっていく。 愛美の友達の男である反グレの金本(窪田正孝)が高野の話を聞きつけた。舎弟分である山田も巻き込んで高野にホームレスなどに生活保護の不正受給をさせ、一儲けしようと企む。高野は愛美と関係しているところを動画に撮られ、観念する。 なるべく穏便にすませたい佐々木は高野に辞職を迫り、高野も従った。 高野が辞めてしまったのでは生活保護がとれない。 山田は愛美と佐々木が好意を寄せ合ってると知り、最初は金本抜きでもうけようとしたが、金本に知られた。 ついに佐々木は愛美に関係をしているところを動画に撮られてしまった。 佐々木は金本のいいなりになって不正受給を許可するようになる。 ある日、母子家庭で生活に困窮した母(木南晴夏)が訪ねてきた。佐々木はもう正常な判断が出来なくなっており、追い返してしまう。 数日して刑事(吉岡睦雄)が訪ねてきた。親子は無理心中を図ったという。 台風の晩、佐々木はいつものように愛美の部屋に帰ったのだが。 城定秀夫監督、北村匠海主演という豪華版映画。そこへ河合優美や窪田正孝共演とますます豪華。 悪い奴にまじめな公務員がはめられていくというのは今までにもあったかも知れないが、それを北村匠海が演じるというのがポイントである。 おどおどしながら、困惑しながら徐々に愛美に迫れていき、ついには体の関係をもってしまう。 その今までの役では見せなかったような北村匠海がいい。 河合優美のやさぐれ女は「ナミビアの砂漠」などでもおなじみの役。 そして窪田正孝。いままで見なかったような反グレを演じきる。 北村匠海も窪田正孝もいままで演じてきたようで演じたのを見たことがない役なのだな。 この3人を見てるだけでも元は取れる面白さ。 この映画、どういう決着になるのかと思っていたら意外な展開。 佐々木は金本たちを刺そうとし、愛美の部屋ですったもんだしてるときに警官コスプレをしていた高野登場。(高野は金本の店でコスプレ店員をしているのだ) そこでわーっとなっているところで宮田登場。宮田は潔白だなんだと言ってたけど、実は高野と不倫中だったのだ。 ここはもう笑ってしまった。 結局は金本たちは捕まったようで、佐々木はこの乱闘で足を刺された。 エンディングでは足を引きずる佐々木は清掃の仕事をしている。 そして「ただいま」とアパートに入っていく。 愛美と暮らすようになったのかな。 ハッピーエンドでよかった。 パーフェクト・シェアハウス(2回目)日時 2025年3月16日20:10〜 場所 新宿K's cinema 監督 桜井亜美 ストーリー省略。 昼間に「知らないカノジョ」を見たけど、やっぱり面白い。 「知らないカノジョ」は映画的盛り上がりとか表現が多いですよ。 ところがこれは会話だけ。 木村聡志はカットの割り方など、うまいですよ。 こちらはただセリフごとに割ってるからかえって落ち着かない。 今日来たのはインタビュー動画の上映があるから。 まずは濱田龍臣と盲目の女優役の方の二人のインタビュー。 その中で「俳優としてやっていくと決めたのはいつ頃ですか」という質問があり、濱田龍臣は 「高校の頃『ウルトラマンジード』をやってから。ウルトラマンって子供の頃から好きでずっとやりたかったんですけど、それが10代でかなってしまった。もう50年以上続いているシリーズで最初の頃のウルトラマン俳優の方々は羨望のまなざしで見られる。自分も見つめていたからそれはわかる。自分も見られる立場になって、ずっとファンの方に見せられる存在でいるために俳優を続けていこうと決めました」 という答えだった。 へ〜、そこまで考えてくれてたんだ。 うれしい。 ちなみに平井さんのインタビューは最近追加で撮ったらしく縦型画像で(スマホ撮影かよ!)「今までいい人キャラが多かったですが、ちょっとそうではないキャラでうれしかったです。3月15日ケイズシネマで公開です」 という宣伝用インタビューを流しただけだった。ちょっとがっかり。 知らないカノジョ日時 2025年3月16日16:40〜 場所 TOHOシネマズ新宿・スクリーン1 監督 三木孝浩 大学生の神林リク(中島健人)は将来小説家を夢見て「蒼龍戦記」というファンタジー冒険ものをノートに書いていた。授業中にも書いていたので、教授に見つかって没収されてしまう。それを取り返そうと教授室に夜忍び込むが警備員に追いかけられ、講堂に入る。そこでは誰もいないステージで歌う女性の姿があった。彼女も無断で入っていたので、二人で逃げ出す。しかしリクは逃げる途中で肝心のノートを忘れてきたことに気づく。 翌日、偶然夕べの彼女・ミナミ(milet)と再会した。ノートは彼女が拾ってくれていたのだ。「蒼龍戦記」を読んだミナミはリクと気が合い、二人はつきあいだし、やがて結婚、「蒼龍戦記」は出版されベストセラーになった。ミナミも歌い続けたが、結局は結婚後は家庭に入った。 忙しいリクは執筆中にミナミに話しかけられ「邪魔しないでくれ」といってしまう。 翌朝、ベッドで目が覚めると出版社の編集長から「早く会社に来い!」と怒鳴りつけられる。 そこはリクは一編集者でミナミは大スターになっている世界だった。 フジテレビ製作のファンタジーラブストーリー。 オリジナルかと思っていたら映画のクレジットで英語で原作として「Mon Inconnue」という映画の表記がある。調べてみたら2021年の「ラブ・セカンド・サイト はじまりは初恋のおわりから」という映画らしい。 どこで上映されたかまったく知らない。 昨夜は映画的表現がまるでなってない映画を見てるので、やっぱり三木孝浩は娯楽映画のツボを心得ている。 まずミナミとリクの出会い。 リクが教授にノートを取り上げられてもそれを夜中に忍び込むで回収という山がある。そして一緒に逃げるという行動をしている。 これがただ路上で歌ってたのを見かけたのではない、アクティブな展開になっている。 そして自分が編集者になっている世界で唯一の味方になってくれる大学時代からの先輩梶原(桐谷健太)は何かと協力してくれる。 ミナミに近づくためにミナミのおばあちゃん(風吹ジュン)に近づく。 このおばあちゃん、痴呆症気配がある。結局はおばあちゃんに近づく不審人物とミナミには思われてしまう。 そこで梶原はミナミの生い立ちを本にしようと勝手に企画し、リクに担当者とさせて、取材と称して近づける。ここでうまく行きかけたが、音楽プロデューサーとつきあってるらしいことが会社に知られ、週刊誌に書かれて元の黙阿弥。 この辺の展開はうまいなあ。 リクもこの世界で生きていくと決め、新人賞の応募作品からモノになりそうな小説を改稿させてベストセラーにさせる。その小説が映画化の話が持ち上がり、ミナミに主題歌を歌うことが企画され再びリクとミナミは近づくことが出来た。 結局この映画化はつぶれるんだけど、こっちの世界に来た理由が、「蒼龍戦記」の最新刊でミナミをモデルにした人物を殺してしまったからだと気づく。 そこでこちらの世界で新たに「蒼龍戦記」を書き直す。 ミナミは拠点をアメリカに移すことになって、日本での最後のコンサートが思い出の大学講堂を開かれる。 コンサートの始まる前にその原稿を「コンサートが終わったら読んで」と渡す。 しかしリクが元の世界に戻るということはミナミが歌手でなくなる世界になるということだ。 コンサートでミナミの歌を聴くうちにリクは考えを変え、原稿を捨ててしまう。 予告でさんざん見たこの映画の主題歌「I still」を歌うの聞いてリクが考えを変えるのである。 ここ、せりふはない。 これは「I still」が素晴らしくないと映画として説得力がなくなる。 このあたりに金をかけられるのはやっぱりフジテレビだからこそだ。 もっともフジテレビ問題で大変だけれど。 でもそのおかげで1時間フジテレビを見てると3回はこの映画の予告が流れる。 しかしそれだけの大宣伝をしても3週目の今週からは1日1回上映になってきた。 コケたという訳ではないだろうけど、大ヒットとも言えないよなあ。 やっぱり中島健人は去年の「SexyZone」の脱退で人気落ちたのかな。 映画の方はリクが起きてみたら、リクも作家に、ミナミも歌手になっている世界になっている。万事めでたし、という訳である。 とにかく昨日映画的表現が出来てない映画を2本も見たので、余計にプロの作った映画、という感じがした。 パーフェクト・シェアハウス日時 2025年3月15日20:10〜 場所 新宿K's cinema 監督 桜井亜美 近未来。世界のどことも知れない埋め立て地にシェアハウスが実験的に建てられ、そこに4人の男女が住むことになった。彼らの生活は時々ネットで配信される。それが条件で審査に通った4人だった。 藤野凛(佐々木ありさ)は全盲の女優、佐野遣都(濱田龍臣)は環境調査士の資格を持つ元介護士、天王寺翔(平井亜門)はレストランチェーンの御曹司にして人気ユーチューバー。朝霧芽衣(於保佐代子)は女医。 シェアハウス生活も4ヶ月ほど経った頃、凛が誕生日を迎え、シェフでもある翔の料理で誕生日パーティが開催され、それはネットで中継された。 ネットも終了した頃、芽依と遣都はミントの葉を取りに行ってる間に、翔は凛にカクテルを振る舞った。凛はカクテルを飲むと気分が悪くなったという。翔は彼女を部屋に連れて行き、ベッドに寝かせる。息が苦しそうなので、翔は凛の胸元のボタンを外した。 翌朝、凛の体にはあちこちぶつけた後があった。暴行されたと思った凛。 遣都や芽衣に相談すると、消去法で翔が犯人と思われた。 翔はベッドに連れて行っただけだと否定する。 しばらくして芽衣が凛を検査すると妊娠反応があるという。しかしエコー検査では胎児の姿は見えない。 疑心暗鬼になる4人。 2022年末に撮影され桜井亜美のTwitterなどで画像がアップされていたこの映画。23年には公開されるかと思ったがいつになっても公開される気配がない。 今年になってやっと3月15日ケイズシネマで1週間レイトで公開と発表された。この段階で映画のレベルがなんとなくわかる。1週間限定、レイトのみというのはそういう興行力しか期待できない映画なのだ。 まず設定の説明がもたもたする。 近未来SF恋愛ドラマのだが、この特殊な設定の説明が悪いとそこで時間を食う。 設定そのものも「全盲の女優」とか?「?」である。本人は「障害者枠で採用されただけだから」というけど、それって枠少ないだろう。 もっとも「僕が生きてる、ふたつの世界」で聾唖の方が女優賞を受賞士y足りしたから近未来では「全盲の女優」はいるかも知れないけど。 翔も「人気ユーチューバー」と「大企業の御曹司」という複雑な設定。しかも父親からは認められず、虐待をされていたという。 結局妊娠に関しては面接官(津田寛治)が合格前に犯していたというのが結末にあかされる。 また最後の最後に遣都が「僕は実はAIなんだ」と言い出し、設定が飛びすぎてるよ。意外を越えてなんか唐突だよ。 あと気になったのはカット割り。せりふ一つ一つでカットを割っていてなんかチャカチャカして落ち着かないんだよなあ。 期待はしてなかったけど、映画としては好きではない。 でも翔が上裸でベッドに寝ていて、布団をかぶってるけど乳首がちらりと見えるのが実にセクシーだった。 今回平井さんはいつもの笑顔を封印し、ひたすらミステリアスなキャラクター。そこは楽しかった。 でも4人均等に出演するというより、遣都と凛が話の中心で、そこは平井ファンとしては物足りなかったな。 もう1回ぐらい見に行きます。 早乙女カナコの場合は日時 2025年3月15日16:25〜 場所 新宿ピカデリー・シアター9 監督 矢崎仁司 早乙女カナコ(橋本愛)は大学に入学し、新生活を迎えようとしていた。 大学に行った初日、新入生のサークル勧誘で女性が銃で男性を撃つ現場に遭遇してしまう。それは演劇サークル「チャリングクロス」の新入生勧誘のための路上パフォーマンスだった。 そこで作演出をしている長津田(中川大志)と出会う。二人はやがてつきあい出す。 3年後、4年になったカナコは永和出版という大手出版社に内定した。2年前からインターンとして手伝いに行っており、その結果手にした就職だった。サークルのみんなは内定祝いの飲み会を開いてくれたが長津田は「今時紙の出版社なんて将来ないだろ」と憎まれ口をたたくだけ。 この3年間長津田は脚本を1本も書いておらず、そのことにカナコは反発していたのだった。 永和出版では先輩編集者の吉沢(中村蒼)から告白を受けていた。しかし長津田と一応つきあってるカナコとしてはすんなりと受け入れられない。 一方長津田は後輩の麻衣子(山田杏奈)とつきあってるような状態だった。 カナコは永和出版で営業を学ぶために慶野(臼田あさ美)の下についた。 彼女はまだ知らなかったが、慶野は吉沢の元カノだった。 矢崎仁司監督の新作。でもだから観たのではなく、平井亜門さんが出演していたから。平井さんは冒頭の路上パフォーマンスの時に女装して銃を撃つ役。 その後の展開を観るとカナコと同級生っぽいのだが、では何故新入生勧誘をしていたのか? 正直、私は長津田という男が嫌いである。 脚本を書くと言っていながら脚本を3年間1本も書かないと言うのはどうよ? 面白い脚本が書けないのは仕方ないにしても1本も書かないのは単なる怠け者である。 映画紹介では「10年間に渡る恋の話」というけど話の中心は大学4年の1年間であり、入学式と卒業7年後はエンディングみたいなものである。 だいたいチャリングクロスは普段の公演をどうしていたんだろうか? 長津田が書けない書かないというなら別の作演出家がいたのか? とにかく脚本を書かないで大きな口だけたたく奴、というダメ人間が心底嫌いななので映画自体もどう展開しても好きになれない。 有名作家としてのんが演じる作家が登場するが、これが正月に観た「私にふさわしいホテル」と同じらしい。 平井亜門さん、「階段の先には踊り場がある」「恋脳Experiment」に続き三度演劇青年役である。 もはや当たり役なのか? (書き忘れたけどこの間の「prologue」の吉祥寺でのトークイベントで「僕マルって役名は3回ありました」って言ってたけど、そのうちの1本が「きみとまた」だとわかった。あと1本はなんだろう?引き続き過去作を気をつけよう) 逃走日時 2025年3月15日12:15〜 場所 ユーロスペース・シアター2 監督 足立正生 1974年8月30日東アジア反日武装戦線は丸の内の三菱重工本社を縛はした。犯行はその中のグループ「狼」だ。 しかし「誰も殺さない」の理想に反し、火薬の量の計算を間違えたため多数の死傷者を出してしまった。そのことが世論の反発を買い、警察も全力をあげて捜査し。彼らは徐々に逮捕されていった。その中のグループ「さそり」のメンバーの桐島聡(杉田雷麟)はその後、間組の爆破などには関わったものの、次々と仲間が逮捕され、逃走を決意する。 その頃は解体や建設現場の仕事がたくさんあり、住み込みで働くことも可能だった。そんな現場を転々とするうちに「内田洋」と名乗り生活していた。 そんな彼(古館寛治)も70歳になり、病魔に襲われ入院した。ステージ4の胃ガンで余命1週間という診断だった。彼は「大事な話がある」病院の責任者を呼んでもらう。 そこで彼は自分がかつての企業爆破事件の犯人の一人、桐島聡だと名乗った。 足立正生の新作。 桐島聡は2024年1月に実際に「入院患者が桐島聡と名乗っている」と報道され、数日後に亡くなった。DNA鑑定などをされ本人と認められた。 「最後は本名で死にたかった」と語ったという。 そのニュースは非常に記憶に残っていたが足立正生が映画化すると知り、「やっぱり」と思った。期待して見に行った。 予想通り足立監督の演説映画である。 とにかくせりふの洪水。 古館の中年の桐島と杉田の若い桐島が語り合ったり、桐島同士が討論したり、逃亡して逮捕された先輩(タモト清嵐)と語り合ったり、とにかく討論の映画である。 正直、途中で飽きてしまい、関心が薄れる。 桐島は「逃走=闘争」と自分を納得させ、逃亡生活を送る。 仕事仲間との酒や、喧嘩に巻き込まれたりしながら生きていく。 途中で女がちょっと出てくるが、あまりドラマとしては深く描かれない。 このあたりは実話なのかサイン会の時に足立監督に聞いてみたが、多くは事実に基づいているらしい。 だったらもう少しドラマを描いてほしかったな。 もっとも足立正生は僕の中では映画監督というより活動家だから、そういうのは期待しない方がいいだろう。 高橋伴明監督が同じ桐島を扱った映画の方が期待できる。 私が最後に桐島が名乗り出たのは一生自分を隠して生きてきて、最後にはその重圧から逃れたかったからだと解釈していた。 人に言えない秘密を抱え続けるのは結構しんどいことですよ。 でも足立監督は「逃走仕切った!」と自分の闘争の勝利宣言と描いている。 普通の映画監督が描いたのなら「そうかあ?」と思うけど、足立監督がいうなら「そうですか」と引き下がるしかない。 何しろ本物だから。 出演では若き日の桐島を演じた杉田雷麟。 サイン会の時間近で見たけど予想以上のイケメンだった。 彼の今後に期待したい。 あと桐島の建設現場の先輩で吉岡睦雄らが出演。 モスラ対ゴジラ(4K)日時 2025年3月9日17:40〜 場所 TOHOシネマズ日比谷・スクリーン8 監督 本多猪四郎 製作 昭和39年(1964年) ストーリー省略。 「ゴジラの逆襲」に引き続き4K版で鑑賞。 前はTCXの大スクリーンだったけど、今回は「ウイキッド」が公開されたせいか、通常スクリーンで90数席で、この日曜日は1回だけの上映。 2回ぐらいやってよ。っていうか新宿でもやってよ。 前から言ってるけど、世間の評価とは違って私はこの「モスラ対ゴジラ」はあまり好きではない。 なんか盛り上がりに欠けるんだなあ。 ゴジラもなかなか出てこないし、でも名古屋襲来のあたりはよい。 その後のゴジラ対策が「モスラに頼んでみよう」ではちょっと消極的すぎないか? それと平行して主人公が対策をしなきゃ。藤田進の長官にばかり任せてないで。 そしてゴジラとモスラ(成虫)との対決。 やはり空飛ぶ怪獣と地上の怪獣では取っ組み合いができないし、なんだか不十分である。 その後、自衛隊の2000万ボルトの放電作戦になる。 ここ、放電作戦が先で、「人間の万策尽きた」という感じで、その後ゴジラ対モスラ(成虫)にした方がいいんじゃないかなあ。 んでラストのモスラ幼虫とゴジラの対決。 こちらも結局糸吐くだけだもんね。なんか迫力に欠けるなあ。 それと分校の生徒を助けにいくってスケールが小さい。これは中盤のクライマックス程度ですよ。 それと今回気がついたのだが分校の先生が「マタンゴ」や「ウルトラQ〜206便消滅す」に出演の八代美紀だったのだな。(いや気がついていたかも知れないが、忘れていた) そしてこの分校の生徒、なぜか女子だけなのだよ。 あと「バラン」の主役の野村浩三がせりふはないけど藤田進の隣にいる自衛隊員で出演していた。 そんやかんやで気になるところも多い映画だけど、人気作なのは認めざるを得ません。 顔だけじゃ好きになりません日時 2025年3月9日14:10〜 場所 TOHOシネマズ日比谷・スクリーン8 監督 耶雲哉治 イケメン大好きな女子高生、知見才南(久間田琳加)は毎夜SNSで見かけたイケメンを鑑賞して明日への活力へとしていた。自分の高校の公式アカウントに時々登場する髪が青く染めているイケメン宇郷奏人(宮世琉弥)が気になっていた。学年が違うせいか学校では全く見かけない顔だ。 公式SNSに「応援してます」のDMを送ったところ「見てないよね?」と返信が来た。「DMなのでみんなは見てないです」「DMってなに?」などの会話が続き、結局夜中まで使い方を説明した。 翌日、学校へ行ってみると奏人が自分の靴箱を見ていた。奏人に人気のない場所に連れて行かれる才南。 事情を聞くと登校日数が少なくて学校を退学させられそうだが、学校の公式アカウントでフォロワー数10万人越えをして来年の入学者数を増やしたら考えてやると言われたという。でも奏人はSNSとか苦手だったのだ。 「俺、顔がいいから何でもできそうに思われて、勝手に期待されて『なんだ出来ないのか』勝手に失望される」と悩みを打ち明けた。 そして「SNSの運営をやってくれ」と頼まれる。 イケメン好きな才南は二つ返事で引き受け、奏人の写真を撮りまくってアップする日々が続く。 でも自分がいわゆる「中の人」とバレてはいけない。女がやってるとなると嫉妬で炎上してしまう。 宮世琉弥主演作。去年も宮世の少女コミック実写化があったけどまるで覚えていない。 話はここまででまだ導入部。でもこの後も特に展開があるわけではない。 自分の気持ちをはっきりさせない奏人だが、才南はとりあえず顔が見られれば満足している。 その後、クラスメートの土井垣(中島颯太)が登場するという展開。 まあおきまりである。 そして土井垣も才南を好きになって「お前甘えてんじゃねえよ!」と喧嘩を売ったりする。 この土井垣は普段は髪で目を隠してる設定。彼もイケメンだが奏人と同じように顔だけで判断されるのがいやで顔を隠していたのだ。 それにしても奏人が「俺顔だけで判断される」っていうのが悩みなのがいい。 そうかも知れないなあ。顔がいい人にはそれなりの悩みがまたあるものなのだ。 ここは心に刺さった。 でも土井垣が腕にタトゥーまでしてるのはどうよ? 一応高校生だぜ?体育の授業とか身体検査とかあるだろう? そもそも学校の公式アカウントで特定イケメン高校生ばかりがアップされるっておかしくないか? などなど細かい疑問は浮かぶが、それはこの映画の本質ではない。 とにかく宮世琉弥のイケメンぶりを楽しむのである。 それだけで楽しくなるなあ。 はっきり言って映画として特に記憶に残ることはないんだけど、宮世のイケメンぶりを楽しむには十分だった。 元は取ったといえる映画だった。 よかった。 夜王烈伝3 眠らない街を制覇せよ日時 2025年3月9日 場所 TSUTAYA宅配レンタルDVD 監督 山内大輔 元ソープ嬢でホスト狂いの友美(沙月恵奈)は新しいホストを探していた。そんな時、ある店でホストのJIN(烏丸達平)と出会う。JINを気に入った友美はまた風俗で働くことにする。前の店の店長の紹介で入ったその店は高収入で高い地位のある男たちが客だという。 もともと友美は父親がギャンブル狂で闇金に手を出し、平岩たちとつながり、仕舞いには父親が友美をソープに沈めたのだった。 キャバクラで働くユカ(五芭)は客の神谷将吾(小原琉依)から耳寄りの話を聞いた。将吾の父親は大病院の院長候補で出身校の裏口入学の斡旋もしている。その裏金が3億円あるという。 ユカは闇金の平岩(安藤ヒロキオ)にその話をする。友美とも知り合いの平岩は、その神谷の父親が友美の客だと知る。神谷はスカトロプレイが好きで、平岩はそのプレイを友美に隠し撮りさせた。 その報酬として1000万円受け取る友美。それはJINのために店で使う。 友美はJINになんでホストになったかを訊く。JINはこの店のオーナーの一条シノによって自分の母親が殺された過去を話す。ナンバーワンになって一条シノに会い、彼女を殺すのだと拳銃を見せた。 JINはついに一条シノに会う。自分の母親とシノとの因縁を話し、拳銃の引き金を引いた。弾は入っておらず、シノは死なない。JINはそれでシノを許し、夜の世界から足を洗うことにした。 友美はJINから拳銃をもらうと母親の臓器を売り、自分をソープに入れた父親に復讐に向かった。しかし殺さずに足を撃っただけで終えた。 拳銃は捨ててしまう友美。 神谷は平岩に3億円払った。だが神谷も悪党である。自分を陥れた友美に復讐したいと平岩に友美をつれてこさせ、友美の父親に彼女の指を切断させる。 話は全部書いた。 「僕たちの恋愛スクランブル」で知った烏丸達平の準主演作である。 「3」とあるけど、別に「1」「2」とはつながりはないのかな? 観てないけど。 このほかユカとJINはつきあってるらしいとか、ユカには女性の恋人がいるらしい描写があるけどあまり深追いしない。だったら出さなきゃいいのにとも思う。 登場人物が複雑に絡まって話がややこしいのだよ。もっと単純に気軽に見せる話でもいいんじゃない? 特に神谷が友美に復讐しようと父親に指を切らせるオチはかえって醜悪で、後味の悪さだけが残る。私はここはない方が好きである。 ギャンブル狂いの父親は足が不自由になり、神谷は裏金を無くした方が爽快感のあるラストになるのだ。 でもそれでは終わらせない、もう一ひねり!の感覚が山内大輔の良さでもあるのだが。 そして烏丸達平。 20代後半の男の色気がムンムンである。体もしまってるし、顔も甘いし、彼の魅力は堪能できる。 今回こういうホストの話だったけどエロメンとして活動していくのかな? とりあえず追いかけてみよう。 ゆきてかへらぬ日時 2025年3月8日12:30〜 場所 TOHOシネマズ日本橋・スクリーン2 監督 根岸吉太郎 大正末期、京都の学生だった中原中也(木戸大聖)はマキノプロで仕出し女優をしている長谷川康子(広瀬すず)と同棲を始める。 中也は17歳、康子は20歳の時である。やがて中也の詩の友人が病気療養のため東京に引っ越し、中也たちも東京に行く。 康子はなんとか松竹蒲田撮影所で仕出し女優を始めた。 そんな頃評論家の小林秀雄(岡田将生)と知り合う。 小林は康子に惹かれていき、奔放な中也との生活に疲れていた康子も小林と生活し出す。 しかし中也と別れたせいか、康子も精神的に不安定になり彼女との生活に疲れた小林は奈良に引っ越す。 数年が経ち、小林と今は結婚した中也が撮影所に訪ねてきた。しかし長男を病気で失った中也は憔悴しきっていた。 ある日、中也が亡くなったと小林から知らせが入る。 火葬場で中也が荼毘に付される直前、康子は中也に会いに来た。 中也の顔を見ると「中也の燃えるところは見たくない」と出て行く。 外で待つ小林と中也の燃えていく煙を見る二人だった。 広瀬すず、木戸大聖、岡田将生という美男美女の共演である。 はっきり言ってそれだけの映画である、私にとっては。 一言でいって「昭和の文芸映画だなあ」というのが感想。 田中陽造の未映画化脚本の映画化なのだが、昭和の文芸恋愛映画の香りがする。さらに監督は根岸吉太郎。 好きな人は好きなのかも知れないが、私の好みではない。 (私にとっては)どうでもいいような三角関係はただただ退屈である。 あと物語が進むにつれ17歳だった中也がいくつになったのか、今は昭和、あるいは大正何年なのかがわからないとなんとなく(私は)それが気になって仕方ない。 時々「大正○年」「昭和○年」と示して欲しかったな。 そうすればもっと落ち着いて物語り世界に入っていけた気がする。 もっとも「時代なんか関係ない3人の世界」を描きたかったのもわかりますが。 それでも全く魅力がないかと言われるとそうでもない。 今書いた3人の美男美女の美しさ。 広瀬すずも大人の色気があるし、何より木戸大聖である。彼の初期の代表作になろう。 そして映像の美しさである。 陰影のある暖色系の映像はただただすばらしい。昨日観た「死に損なった男」とは雲泥の差である。 またCGも多用しているだろうが、松竹蒲田撮影所など当時を再現した映像、美術はすばらしかった。 撮影、美術は賞を差し上げたいくらい。 死に損なった男日時 2025年3月7日19:55〜 場所 新宿バルト9・シアター1 監督 田中征爾 お笑いの台本を書く構成作家の関屋一平(水川かたまり)は芸人からの注文やプロデューサーからのクレームなどで疲弊していた。 ある日、駅のホームから転落して自殺を考えるが、その時に前の駅で人身事故があり、電車が止まりタイミングを外してしまう。 結局死ねなかった一平だが、自分の代わりに死んだ人は誰だったのかが気になり、ネットニュースで名前を調べ、葬儀場に電話し会場を突き止めた。 そしてついその告別式に参列してしまう。亡くなったのは森口友宏(正名僕蔵)という退職した国語教師だった。告別式が終わった後で森口の娘・綾(唐沢えりか)が若松という男にしつこくされているのを目撃する。 家に帰った一平だがそこに森口の幽霊がやってきた。 「なぜ俺の葬儀にきた?」「お前は誰だ?」と詰問される。事情を話すと「娘につきまとってる男がいたろう?あいつはどうしようもない奴なんだ。俺の代わりに殺してくれ。でないとずっとつきまとってやる!」と言われる。 コントバトル用に芸人に台本を書かなければならない忙しい身なのだが仕方なく綾を監視し始める。そこで森口の自宅前で綾が若松に絡んでいるのを助けたことから綾と知り合いになる。 予告編をバルト9で以前に観て「観ようかな」と思ったけどパスしていた映画。いまおか監督と話したときに誉めていたし、金曜の夜に時間も合ったので鑑賞。 一言で言えば「見逃さなくてよかった!」という感じ。 人の生死を笑いのオブラートでくるんだ人生悲喜劇はいまおか作品にも通じる。だからいまおか監督も気に入ったのかも知れない。 観てる途中で「一平はなんで死のうと思ったのだろう?」と気になりだした。死ぬ直前はいろいろ面倒そうだけど死ぬたくなるほどのトラブルはなかったはずだ、と思っていたら森口が一平に「お前なんで死のうとしたんだ?」と聞いてくれた。 その答えは中盤にあかされる。 「夢がかなった先には何もなかったから」 この答えには驚いた。 確かになあ。 一平はもともとお笑い好きの少年で自分もコントを書いてみたいと思った。 念願かなって構成作家になったが、自分が夢見た未来とはちょっと違ったのかも知れない。 この気持ちわかるなあ。 努力して何らかの夢を叶えたことのあることのある人はそうなのかも知れない。 北村匠海の「世界征服やめた」を観たときに「北村匠海ほどの歌手俳優としてトップにある男でもそう感じるものなのか」と思ったがそういうもんなのかも知れない。 で結局一平は若松を殺せるのか?どう決着をつけるのか?と思ったが森口の家で若松ともみ合いになって馬乗りになって殺せそうになったときに一平は包丁で自分の腹を刺す。これで若松もビビって退散するという結末。 うん、これで正解だと思います。 水原かたまりとか正名僕蔵とかスター性に欠けるし、映像は陰影のないベタっとした映像で低予算感があるのだが、シナリオの良さが補ってあまりあった。 今年のベストテンに残る秀作です。 飛べない天使日時 2025年3月6日18:40〜 場所 アップリンク吉祥寺・スクリーン1 監督 堀井綾香 2023年12月の「the night before」として公開した映画の再公開。(というか本公開か?) 前回は2本で1つの番組だったけど、今回は「飛べない天使」だけの上映の日もあったらしい。監督は連日ゲストを招いてのトークイベントを行い盛り上げようとしている。 今日は短編の「prologue」も上映し、平井亜門さんがゲスト。 映画自体は「飛べない天使」は音も多少変更しているそうで、「二人が同じ夢を見る」という話。 映画自体は前回感想を書いたし、それほど好きな映画ではない。 トークイベントは監督と平井さんのみ。 監督から「平井さんはトーク慣れしてますか?」 平井「慣れというほどではないですが、先日も前にお世話になった監督の新作トークイベントに出ました」(月曜日の3月3日にユーロで飯塚冬酒監督の新作のイベントが昼の11時50分からあったのだ。さすがにパスした) 夢の話ということから監督は「平井さんは夢見ますか?」と質問。 平井さんの話では「前に住んでいた場所では歯が抜ける夢を何度もみた。 その後歩いて5分ぐらいのところに引っ越したのだが、引っ越しの時荷物の運びで友達と何回も往復したのですが、前に住んでるところにいくとなんかイライラしてきたりした、新しい場所にいくと落ち着いた。なんかあったのかも?」 という「もん怖」のような話が出てきました。 (翌日のTwitterで平井さん自身が「歯が抜ける夢はストレスが溜まると見る夢らしいです」とツイートしてました) 時間が余ったのでQ&A。 お客さん「出演者を決めたきっかけは?オーディションとか?」 監督「すべてオファーだった」 平井「僕のことは何で知りました?」 監督「何だったろう?『海辺の女の子』?自然に覚えていた」 平井「アルプルスタンドとか?」 監督「そんな感じです」 平井「俳優にとってはみなさんがどこで僕のことを知ったか気になりますね。聞いてみたいな」 と言ったところで時間切れ。 もう数分あったら観客アンケートがあったのに。 戸谷菊之介も自分のライブで聞いてたしなあ。 確かに気になるよな。 今回は時間も30分あり、監督と平井さんの二人だけだったので、いろいろ伺えて楽しかったです。 ゴジラ(調布シネマフェスティバル2025)日時 2025年3月2日10:30〜 場所 調布文化会館たづくり くすのきホール 監督 本多猪四郎 製作 昭和29年(1954年) ストーリー省略。 毎年2月から3月にかけて行われる調布の映画祭。この映画祭は毎日やるわけではなく、2月3月の土日にかけて4週間ぐらい行われる。 「ガメラ2 レギオン襲来」も2月15日にシアタス調布で吹越満さん、金子監督をゲストに上映された。この時も行きたかったが、別のイベントがあって断念。 初代ゴジラは昨年の東京国際映画祭でも上映されたので(この時はなんだか疲れていてまた満席で落ち着かなくて眠たくなりながら見た)、いいかと思ったが、手塚昌明監督と清水俊文さんのトークイベントが行われるので行ってみた。 (今回の上映素材は2014年に作られた4Kリマスター版だそうだ) 今回ちけっとぴあでチケットを買ったため、席は選べず4列目だった。 久々に前の方でみたけど、ちょっと新たな発見があった。 銀座襲撃のシーンで、ビル越しにゴジラが現れて地上のパトカーを燃やすシーンがある。 そのときのビルの窓に人が動いているのだ! これは気づかなかったなあ。「キングコング」でコングが電車を襲うシーンでビルの窓で人が動いているのに匹敵するカットだ。 話の方だが、宝田明の尾形だが、うろうろと現場に顔を出すが見てるだけで何もしていない。 最後だって芹沢と海に入るが、彼がオキシジェンデストロイヤーを操作するわけでもない。 一応海の中だから付き添いってのが役目なんだろうけど。 そして尾形の関心事は常に「結婚」なのである。 「いい機会だから芹沢さんに僕たちのこと話そう」「お父さんにもお許しをいただこう」などとゴジラ上陸を前にして恋人のことしか頭にない。 そういう目で見るとゴジラを生かす殺すで山根博士と口論になる前に、山根博士は家に帰ってきて尾形をちらりと見て「お前なんでいるんだ?」という目で見てるようにも見えた。 トークイベントではリマスターは例えばピアノ線を消す消さないで迷うそうだ。消せば消せるが、「初号の状態に近づける」というのを基準としたので、監督がリマスターを行うならともかく、自分たちとしては手を加えたくない、という方針だそう。 また最後の船のシーンで河内桃子のアップのカットで猫の鳴き声が入ってるそうだ。清水さんの話では「おそらく船のシーンは港に停泊中に撮っただろうから、その時に入ったのだろう」という話。 終わった後、清水さんにロビーで聞いてみた。 先日の東京国際映画祭で上映された4Kは10年前にはなかった機材を使ってもう一度リマスターをやり直したそうだ。 音などは10年前の4Kバージョンではテレシネから音をデジタル化したそうだが、今回は光学トラックをそのままスキャンして音をデジタル化したそうだ。(私の理解が違っていたらすいません) また東宝のゴジラルームというセクションは、ゴジラのイベントや「特撮のDNA展」「ゴジラ博」などの仕事、商品化などゴジラ関連のあらゆる仕事を担当する部署だそうで。 新作に関してはプロデューサーたちがやっているので、清水さんたちにはまだ情報はまだ回ってきてないそうです。 というわけで「ファイナルウォーズ」でいったん終わったゴジラだが、ここ10年の盛り上がりはとどまることを知らない感じの昨今のゴジラ界隈です。 セプテンバー5日時 2025年3月1日19:25〜 場所 TOHOシネマズ新宿・スクリーン12 監督 ティム・フェールバウム 1972年9月。ドイツ・ミュンヘンでオリンピックが行われていた。 アメリカABCテレビはスタッフを常駐させ、24時間生中継を可能にしていた。 9月5日未明、スタッフは銃声を聞いた。予想もしないことに戸惑うスタッフ。 しかし銃声は本物だった。テロリスト「黒い9月」のメンバーがイスラエルの選手団の部屋を襲ったのだ。テロリストたちはイスラエルに捕らえられた仲間の釈放を要求。 現場のスタッフはすぐさまビルの屋上にカメラを設置。選手団の宿舎ビルを写せるようにした。 ABC本社からは報道局に引き継ぐよう指示したが、現場の責任者は「これは現場が指揮するべきだ。今まで通りスポーツ局で行う」と抗議。 以前スピルバーグが監督した「ミュンヘン」という同じ事件を扱った映画があった。20年くらい前の映画なのですっかり忘れている。感想を読んでみたら事件後の「報復の連鎖」の話で当日の話は特に描かれてはいなかったようだ。 公式HPを見ても登場人物の役名などは書いていない。ヒーロー的な人物は登場せず、群像劇である。 見ていて「突入せよ!あさま山荘事件」を思い出した。 とりあえず事件を放送しようとカメラの準備を始める。ドイツ語が分かるのは臨時雇いの通訳の女性だけ。 準備を始めてテロリストのいる部屋の窓を写す。 しかしテロリストと人質が出てきたとき、人質に銃を向けている。 殺すことだって考えられる。下手すれば殺害の瞬間が世界に生中継されてしまう。それってやってよいのか? 結局「やばそうになったら野次馬とか別のものにカメラを切り替える」ということにした。今はだから「ディレイ中継」と言って数分遅れての中継も可能だ。 また当時はビデオカメラがまだまだ外に持ち出すのが困難だったのか、16mmで撮影し、それを即現像しての放送。後半の空港へ犯人グループが向かったとき、録音担当も行かせなければならない。 そしてCBSと放送枠の取り合いになったり、自分たちの映像をCBSで流すときに苦肉の策で「ABC」のロゴマークを画面の隅に入れたりの意地を見せる。 このように当時の放送技術の再現もあってその点から楽しみもある。 そして犯人と人質はバスで空港へ。 そこで「人質解放」の情報が入る。 ドイツの放送局もその情報をテレビで流し、オリンピックの広報も「解放」を伝えてきたのでABCも安心して流す。 この事件、あったことは知ってるけど、結末はどうなったかすっかり忘れていた。だから「人質解放」の一報を聞いてほっとしたけど、事件の結末を覚えている人ははらはらしたことだろう。 ラストシーンは中継ディレクターが車に乗り込むところで終わる。 大仰な終わり方でなく、よかったと思う。 あんまり話題になっておらず、3週目にして1日1回上映になったけど、(今日はファーストデーの割引もあって満席だったけど)人にお勧めしたい映画だった。 プロジェクト・サイレンス日時 2025年3月1日16:00〜 場所 新宿バルト9・スクリーン5 監督 キム・テゴン 国家安全保障室のメンバーのジョンウォン(イ・ソンギュン)はアメリカに留学する娘を仁川空港に向かっていた。ジョンウォンの頭にあるのは近く行われる大統領選。現職大統領が再選すれば自分にとっても有利だ。彼の頭にはいま現職大統領に有利になるようにすることしか頭にない。 空港大橋で無茶な走行をするユーチューバードライバーがついに事故を起こした。数十台の車が絡む多重事故となった。 その中に軍用車が紛れ込んでいた。その荷室から十数匹の犬が逃げ出す。 しかしその犬たちは急に人を襲いだした。 ジョンウォンは近くにいた兵隊を捕まえて事情を聞こうとするが彼らは「秘密だ」と聞かない。兵隊たちは犬を撃とうとするがすばしっこい彼らを倒すことは容易ではない。 ジョンウォンと娘は逃げ出す途中で軍と行動をともにしていたヤン博士(キム・ヒウォン)を助ける。彼から事情を聞き出す。あの犬たちはテロ対策で人間を襲うようにコントロールしようとした犬たちだというのだ。 その計画は失敗に終わり計画は断念され、犬を廃棄する途中だったというのだ。そして今犬たちは実験で数多くの仲間を殺した人間に殺意が向けられていると。 韓国のディザスターパニック映画。 霧に閉ざされた大橋で多重衝突事故が起こり、橋が崩落の危機に!というだけも面白そうなのに、そこに人間を襲う犬という要素も加わった。 これがゾンビとかじゃなくて、なくて「あり得るかも知れない」程度にリアリティがあるのがいいですね。 そして認知症の妻を抱えた老人、プロゴルファーの妹とマネージャーの姉、なんか信用できないガソリンスタンドのレッカー車の男、そしてすべてを知る博士、が加わっての逃避行。 レッカー車の兄ちゃんは万能キーを使ってバスを動かしたりするコメディリリーフとしても活躍。 プロゴルファーという特徴がどう生かされるのかと思ったら、「一旦犬をバスに閉じこめたを成功したが、そのバスに残された万能キーを取り戻すためにフロントガラスをゴルフで打って壊す」という役目だったのですね。 よく出来た伏線です。 ジョンウォンの上司の室長が実はこの犬の計画「プロジェクト・サイレンス」を承認した人間で、彼は隠蔽のために彼らを見殺しにする方針を取る。それを知ったジョンウォンは怒りに燃えて何とか脱出し、救助された時マスコミの前で計画を暴露する。 犬はCGのカットも多いと思うが、全体的によくできてるだろう。 「ゴジラ・マイナスワン」もいいけど韓国も侮れないよ。 とにかく韓国映画の面白い作品を見ると「なんで日本でこういうの出来ないんだろうねえ」と思ってしまう。 人口は日本の方が多いんだから、国内マーケットが広い狭いじゃないんだよね。 最初から向いてる方向が違うんだろうなあ。 日本じゃ「アンダーニンジャ」だもんなあ。 |