わたしを深く埋めて BURY ME DEEP日時 2025年5月31日19:00〜 場所 ラピュタ阿佐ヶ谷 監督 井上梅次 製作 昭和38年(1963年) 九州に旅行に行っていた弁護士の中部(田宮二郎)だったが、退屈なので予定より早く東京に帰ってきた。自分のアパートに帰ってみると部屋には女がいた。しかも女は迫ってくる。なんとか追い出し、タクシーに乗せて追い出すがすると今度は「情事の写真を撮ってほしいと頼まれた」と私立探偵とカメラマンがやってくる。それも追い返すと今度は最初の女のヒモがやってくる。それも追い返したがやっとベッドに入った。 今度やってきたのは警視庁の武田警部(村上不二夫)と西川刑事(中条静夫)だった。タクシーの運転手も一緒で、運転手の話では例の女は死んだという。その容疑者として中部が疑われたのだ。 ここまでで話はまだ15分ぐらいか。とにかく怒濤の展開である。 今ラピュタは若尾文子特集で、興味がなくて完全にスルーしていたのだが、昨夜「色道二十八人衆」を見に行ったときにポスターに「愛欲のスリラー」「海外ミステリーの映画化」「監督・井上梅次」「旅行から帰って等見知らぬ女がいた」などのキーワードに引かれてどうしても見たくなって見に来た。 井上梅次の海外ミステリー翻案作品にはずれなし、である。 部屋に入っていたのは今妻と離婚調停中の親友、芥川(川崎敬三)に部屋を貸していたからで、芥川目当てではなかったかと思われた。 離婚の弁護士玉井(北原義郎)の証言で、芥川に取って不利な証拠を作るために芥川がいる部屋に女を派遣したという。玉井が女性を送る段取りをしたのだ。 女はキャバレーのヌードダンサー、ミッチィ。で別の事件の関係者として知り合ったというのだ。 その事件とは徳丸という会社社長がある若い女と結婚した。しかし新婚旅行の帰りに交通事故にあって社長と妻は死んだ。 その遺言書には「自分が先に死んだら妻に財産の80%、姪に20%、妻が先に死んだら姪に80%、あとは寄付」と書いてあるというのだ。 交通事故で二人亡くなってもどちらが先に死んだかが重要になってくる。 この事故を目撃したのがミッチィなのだ。 事件を深追いするなと脅迫が届き、自分が留守にして芥川がいるときに芥川が殺された。シャワー室で殺されたので、自分と間違えられたと考える。 さてそこからミッチィ、徳丸の姪(江波杏子)、ミッチィの兄、ミッチィの勤め先のバーの親分(安部徹)、芥川の妻(若尾文子)らが絡みに絡んで事件は複雑に。 徳丸の遺産相続から端を発したこの事件、いったいどう結末を迎えるのか。 まあ若尾文子が最後の犯人なんだろうとはみんな想像がつくけど、それにしてもなぜ彼女が殺すのか、どこまでが彼女の犯した事件なのか? 全貌は最後までわからない。 せりふも早口で、登場人物も多く、途中で話を整理する訳でもないので、気をつけてみてないと話がかなりわかりづらい。 この辺のテンポ感が私は好きである。 DVD化されてるので購入しようかな。(レンタルはないみたい) 本作の評価とか直接関係ないが、完全に田宮主演なのに、クレジットでは出演シーンの少ない若尾文子がトップである。 田宮は「不信のとき」のポスター序列で抗議したことがきっかけで大映退社となったといわれてるが、それ以前からそうだったので、田宮としても溜まっていたのが、「不信のとき」が引き金になったんだろうね。 そういうことも分かってくる。 か「」く「」し「」ご「」と「日時 2025年5月31日14:00〜 場所 新宿ピカデリー・シアター2 監督 中川駿 大塚京(奥平大兼)は人が「解らない」「解った!」という感情を持ったとき、頭の上に「?」「!」という記号が見える力を持っていた。 友人の高橋(あだ名はヅカ)(佐野晶哉)と幼なじみの三木直子(あだ名はミッキー)(出口夏希)のことが気になっていたが、「友達として見て入れればいい」と告白する気にはなれない。 京の隣の席に座る宮里さん(早瀬憩)が学校に来なくなって2ヶ月。気になっていたがミッキーが最近「私なんか変わったと思わない?」と聞いてくる。京はシャンプーを変えたんじゃないかと気になっていたが、それは言い出せなかった。なぜかというと宮里さんにも同じことを言った日から彼女は学校に来なくなったのだ。またミッキーを傷つけてしまうのではないとか気が気でない。 休みの日にショッピングセンターに買い物に行ったときに京はミッキーとばったり出会う。その時に誘導尋問されるように「シャンプー変えたね。宮里さんも使ってる」と話したところ、彼女は喜んでくれた。 ミッキーの話では宮里さんはシャンプーの話を京としたときに彼女がむっとしたので、そのことで京に嫌われてしまったのでは?と気になって学校に行けなくなったというのだ。 えーっとここまででまだ30分ぐらいかなあ。 京、ミッキー、宮里さん、ヅカ、そしてパラの男2人、女3人の友情物語である。 5人とも「何か見える」のである。 ミッキー(違ったかな)は人の心がプラスに作用してるか、マイナスに作用してるか、ヅカはトランプのダイヤ、スペード、ハート、クローバーが見え、宮里さんは好き、のベクトルが見えるのである。 最初は京だけに見えるのかと思って映画を見ていると、他のメンバーも何か能力が備わっている。超能力者的な話ではなく、感性が鋭くて「人の気持ちが見えてしまう」の具現化と解釈すればいいか。 この後、学園祭の演劇でヒーローショーをパラが中心となって行ったり、修学旅行に行ったりする。この高校では修学旅行中に二人きりになったときに相手に鈴を渡すとずっと一緒にいられるという伝説があり、それでミッキーは1組の男子に呼ばれたりする。それを京やヅカが見ている。 「○○は××のことを好きだ(嫌われてる)と思っていた」という展開が続き、彼らの「見えるもの」も案外あてにならない。 かように人の気持ちというのは一部の行動、反応が見えても心の奥底まではわからない。 京はミッキーを好きなのは観客には分かっているのだが、京は「友達でいられればいい」と消極的である。結局最後は二人は告白しあって結ばれるんだけどね。 あとパラがミッキーを好き、という同性愛的な面も存在する。 監督は中川駿。「カランコエの花」や「少女は卒業しない」などの10代のもどかしい恋愛を描いた作品を連発。 今までは外れがない。 今後大きくなっていく可能性あり。 競艶おんな極道 色道二十八人衆日時 2025年5月30日21:00〜 場所 ラピュタ阿佐ヶ谷 監督 武田有生 製作 昭和44年(1969年) 昨年、組を解散し今は引退している元やくざの組長の大林。娘はカタギの男(野上正義)と結婚し、元組員も今はカタギの仕事をしている。 そんな大林だが、めかけと楽しんでいるところを殺された。殺したのは東京の滝川組に雇われた吉岡三郎という殺し屋だ。滝川組はこの土地に不動産会社と組んでリゾート地を開発しようとしていた。今は引退したとはいえ、大林の存在は邪魔だったのだ。 大林の娘の元には元の組員が続々と集まる。だが娘の夫は「今更喧嘩とは何事か」と完全にやる気はない。元組員は憤るが、元若頭は「もっともな言い分だ」と元組員たちをなだめる。 大林の家に二人の女性がやってくる。彼女たちはかつて大林に世話になり、九州に坪振りの修業に行っていたが、親分にあいさつに来たのだ。 しかし滝川組に殺されたと知り、滝川組の賭場に賭場荒らしに向かう。 だが二人は監禁され、陵辱される。 また元組員のマサキチ(港雄一)が帰ってきた。マサキチは大林の元舎弟の一人が滝川組と通じていると察したのだ。そして吉岡と対決するが、マサキチは殺されてしまう。また大林の娘婿も滝川組のイカサマ賭博に引っかかり、借金を作り家もとられようとしてしまう。 ここに至っては元組員たちも我慢ができない。滝川組と対決した。 ラピュタ阿佐ヶ谷六邦映画特集最後の作品。今回6本上映だが、2本は再上映。(それを忘れて1本は観てから気がついたけど) 尺も80分と長く、なんか創立周年作品だったのだろうか? 当時流行だった東映仁侠映画路線である。 で、話の中心は男性で、主役は完全に男優たち。女優は出てくるけどどうも添え物感がある。 しかしやっぱり東映の仁侠映画の役者たちは迫力が違うね。この映画は完全に「やくざ映画ごっこ」である。 港雄一あたりは東映映画に出れそうだけど、他は迫力不足。野上は女の色仕掛けでイカサマに引っかかってしまう情けない男だが、これは妙に似合っている。 賭場でだんだん負け始めるが女に耳元で「男なら勝負しなさいよ」と言われる。まあ完全に引っかかるわなあ。 もっともこちらも金曜日の夜で、この1週間何かと忙しかったので、睡魔と戦いながらの鑑賞。でも面白ければ起きてられたけど「東映やくざ映画ごっこ」だから起きてられない。 今回の上映では最初の「情怨のおとし穴」「現代浮気性談」が面白かったかな。先週の「いろ包丁」はぶっ飛びの展開で私はあまり評価しない。 今日の映画が一番あわなかった。 新幹線大爆破<フランス公開版>日時 2025年5月28日19:20〜 場所 新文芸座 監督 佐藤純弥 製作 1975年(昭和50年) NETFLIX効果でオリジナルの「新幹線大爆破」も再上映されたが、新文芸座らしく、フランス公開版の35mmでの上映。 もちろん公開時にも観ている。名古屋駅前の毎日地下劇場だったと思う。 東映系邦画館ではなく、洋画を上映する映画館だった。 このフランス公開版のDVDも持っているが、今回はそれこそ50年ぶりのフィルム上映(あくまで私の記憶)ということで、新文芸座のHPでは「プリントに退色があり、紫がかってます」と書いてあったので心配だったが、コマ飛びは多少あるものの、それほどひどい状態ではなかった。 DVDは日本語字幕はデジタルで後で入れた状態。プリントでは当然焼き付けてあるわけだが、翻訳が違う。 というか誤訳、またはせりふと字幕があっていない箇所があった。 例の浜松駅で先行の新幹線が故障したとき、「大変だ!故障車だ」という台詞があるが、ここが「菊池君!」となっている。 鉄道公安官の菊池が事態の発表を倉持に進言している時の台詞がなぜか芭蕉が変わっている。その後、倉持が「和田さん」と職員に声をかける箇所も違っている。 珍しい間違いだなあ。実にテキトーである。 樋口真嗣監督と樋口尚文さんのアフタートーク付き。 以前「南十字星」のように当時の宣伝材料をスクリーンに写しながらのトーク。 地方の上映館のチラシなど、地元の商店の広告も載っていて地方色があって楽しい。 またフランス版のロビーカードや広告画像も日本版とは違ってフィルムからの抜き出しを使っていたらしい。 そこで浜田晃の刑事が古賀を撃つカットがやたら使われるのを樋口尚文さんは不思議がっていた。 あれは「ダーティハリー」風の刑事アクション的な売り方を考えたんじゃないかなあ。 その中で歌手の話題。 新橋の喫茶サンプラザの電話にでた人が妙に色っぽいのだが、この方は俊藤浩滋さんが押していた方なのだが、結局女優としては芽が出ず、後に歌手としてレコードデビューしたそうな。 そして沖田哲男がホテルの部屋で100ドル札を梱包するシーンで流れる演歌、この歌既存曲のタイアップだと思っていたら「恨み節」という歌で作詞は佐藤純弥、でレコードには「新幹線大爆破」挿入歌とどうどうと記してある。 以下樋口版「新幹線大爆破」と絡めての話題。 ・この映画のスキャットを担当したのは伊集加代子さん。「宇宙戦艦ヤマト」「ネスカフェCM」など、多くのスキャットを担当された。また「レギオン」の時にレギオンの声を動物っぽい声にしたいと思い、ベースの音を人間の声で録ろうと思ってスキャットの人をお願いしたら伊集さんが来て恐縮した。 ・NETFLIX版で過去の記者会見の再現シーンでは丹波哲郎が演じた刑事部長を義隆さんが演じている。 ・「天井が落ちてくる」の学生はオーディションをして当時の学生っぽいのを選んだが、撮影日に髪を切ってきてさっぱりしていてちょっと困った。 ・矢野宣のエリートサラリーマンが「走るひかりの超特急」を歌うのを首相補佐官にやらせようかと思ったが、違う映画になってしまいそうで止めた。でも撮っておけばよかったな。 ・同様に宗教団体の団扇太鼓も撮りたかったが、これもうまくはまらないので止めた。でも少しは写っている。 1時間以上のトークだったが、まだまだ話したりない、聞き足りない気がしました。 0011ナポレオン・ソロ/消された顔(2作目)日時 2025年5月27日 場所 ムービープラス録画 監督 ジョン・ニューランド 製作 1965年(昭和40年) 7月末、ナポレオン・ソロ(ロバート・ヴォーン)はオーストラリアの情報員とともにスラッシュの拠点を急襲した。しかしそれは監視カメラによってスラッシュにソロの行動は見られていた。 ニューヨーク本部に戻ったソロだが、今度は課長から8月作戦についてイリヤ・クリヤキン(デヴィッド・マッカラム)と伴うように指示される。 前から知っているCAの女性とデートに出かけたソロだが、そこでスラッシュの女性が現れ、CAの彼女を帰らせ、スラッシュの女性の自宅に連れて行かれる。そこで出くわしたのは自分と同じ顔を持つ男だった。 偽ソロはソロと入れ替わり、UNCLE本部へと向かう。そこで8月作戦の指示を受ける。8月作戦とは非常に強大な兵器を動かす為の暗号で、それを書かれた紙をソロ、イリヤにイタリア、アフリカの情報員とともにスイスの施設に運ぶという任務だった。 一方本物のソロはスイスのスラッシュの本部に捕らえられていた。 ナポレオン・ソロ映画版2作目。 課長もウエバリー課長になってテレビシリーズのレギュラーと同じ。1作目はパイロット版の段階だったけど、今回はテレビが始まってるから同じになってきてるのだろう。 ソロの私生活での女性遊びも描かれる。007だと事件の関係者と関係が深まっていくが、これは全く関係ない仕事の移動で知り合ったらしいスッチーである。 彼女とのデートでスラッシュの女が出てきて痴話喧嘩になるなどして、なかなかソロが本物と偽物が入れ替わらない。 そして偽ソロがUNCLE本部に潜入するのだが、前作でもそうだけど、本部の場所とかセキュリティのシステムなど敵に筒抜けである。 これじゃセキュリティにならんだろう、という疑問がわく。 暗号が書かれた紙というのが時代を感じる。 この紙が専用のアタッシュケースに入っているのだが、これをなんとかして飛行機のトイレで偽ソロは開ける。ここでスーツのボタンが取れかけているという伏線があって、ケースを閉めるときに解れた糸を挟んでしまってボタンが中に入る。 そこで正式にアタッシュケースを開けたときに同行のアフリカの情報員が気づく。ここでばれるかと思ったら気づいたアフリカ情報員をあっさり偽ソロが倒すという展開。 ここ、もう少し引っ張ってほしかったな。 また4人をかげながら援護するオーストラリアの情報員が登場するが、これも移動の飛行機の中であっさり殺されてしまう。 そういうもう少しひねった方が面白くなった点もあったと思う。 あと同行する情報員がイタリア、アフリカと世界各国になってるのが、スケール感を出してますね。 しかしながら、本物ソロが敵のアジトから脱出した後で、アジトは自爆するのだが、これがアジトに炎の画像を合成しただけ。 007に比べれば低予算だとよくわかる。 クィア日時 2025年5月27日12:30〜 場所 渋谷シネクイント・スクリーン2 監督 ルカ・グァダニーノ メキシコに暮らすアメリカ人の中年男性ウィリアム・リー(ダニエル・クレイグ)は酒場を渡り歩く怠惰な生活をしていた。 町で出会った若い男性とホテルに行くこともあったが、ある日、ある若い男を見かける。その男は酒場に来ては女性とチェスをしている。 その青年、ユージーン・アラートンとは一緒に酒を飲み、自宅にも連れて行き。体の関係を持った。 しかしユージーンの本音は解らない。リーは南米にテレパシー能力を増進させる薬草があると聞き、二人で南米のジャングルに住む植物学者のコッター博士を訪ねる。 ジェームズ・ボンド役で有名なダニエル・クレイグが若者に恋する中年男性役を演じると聞いて観てみた。 一言でいえば長いよ。話が全く前に進まない。 それ以前に時代設定がよくわからない。現代だと思って見始めたのだが、携帯電話が出てこないとか、ソ連とか言ってるしどうも違う。 見終わって公式HPを見たら1950年代(ってことは昭和30年前後か)とある。 まあ解ったからって映画の感想が変わるとも思えないが、映画の世界に入るのに戸惑いが残る。 また途中から出てくるが、このリーと言う男、ヤク中なのである。今ほど厳しくはなくて手に入りやすい時代ではあったのかも知れないが、なんか冷める。 そして映画のタイトルの「クィア」の意味が分かりにくい。 今LGBTQという言葉があって、最後のQが「クィア」なのだが、今は「LGBTにも属さないその他の性的少数者」という様々なタイプをひっくるめて使用していると私は解釈しているが、この映画では「異性愛者ではない人」的な大ざっぱに使われてるようだ。 だから「君はクィアなのか?」「気になるなら聞いてみろ」「そんな事出来ないよ」と言った会話が出てくる。 1950年代だから言葉の使い方もちょっと違うのでしょうね。 そのあたりの「1950年代におけるクィア」の背景をこちらが理解していないので、どうも映画の理解が出来ない。 要するに「君は男も好きか?」と面と向かって聞けないので、テレパシー能力を高めて彼と心が一つになりたい、という男の話だ。 ラストは薬の幻覚か、CGで描かれた二人の肉体が重なり交わっていく。 ある意味「ベニスに死す」なのだが、ビョルン・アンドレセンとは違うタイプなので私としては共感を覚えなかった。 あと性描写、前半でリーガ街で拾った男をホテルに連れ込むシーンでは男性器は写っていた。あからさまな性行為ではぼかしが入るが、男性器が少し写るくらいは今はいいらしい。 性の手ほどき いろ包丁日時 2025年5月25日21:00〜 場所 ラピュタ阿佐ヶ谷 監督 姿 良三(小川欽也) 製作 昭和48年(1973年) 小料理屋を母と営むお久(谷ナオミ)。さらしを巻いて粋な姿で板前として活躍して、彼女目当ての客も多い。くどく客も多いが誰一人として相手しない男嫌いだ。仕方なく客とホテルに行ったときも、背中の入れ墨を見て客は帰る始末。実はこの入れ墨は町の画家に描かせたものだった。 お久は幼なじみで親友で今はホステスをしている数江(森村由加)と女性同士で楽しむ仲だった。しかし数江の部屋に忘れ物を取りに行ったとき、偶然数江が男と愛し合ってる姿を見てしまう。 そもそもお久が男嫌いになったのは父惣助(小川純)から板前修業の傍ら暴行されたことがきっかけだった。 そして母・お勝も常連客の社長といい仲になっていて、お久はつい孤独を感じてしまう。 そんな時、新吉(山本昌平)という男が常連客につれられてやってきた。 しかし新吉はお久の作った刺身を全く手を付けずに帰って行った。 「あの男は同業者に違いない。私の料理の腕にあきれて帰ったのだ」と思い、体調を崩してしまう。 数日後、お久のためにお勝は二人で旅行に行くことにした。 旅先で、お勝は社長と合流、また偶然新婚旅行に来ていた数江と再会。またこの旅館で新吉を見かけるお久。その晩はみなで食事をするが出てきた舟盛りの刺身を見て「これは新吉の料理だ」と直感。 旅館の調理場で新吉と再会するお久。 六邦映画特集の上映。この映画の前には「性(セックス)のピンチ」が上映されていたが、それは以前観ているのでパス。 今回の「いろ包丁」はオールカラーである。 男嫌いのお久は女性と絡むので、てっきりレズものなのかと思ったら、結局は「男に惚れる」。 こういうところに「男と女が愛し合うもの」という思いこみがある。まあそんなものだろう。 そしてなんと新吉は父惣助がお勝とは別に作った男の子だった、というオチが付く。つまり新吉とお久は義理の兄妹。 強引な展開である。 それを知った二人は・・・という感じで、海岸のシーンになる。 二人心中するの?と思い、てっきり二人が海に入っていくカットとか、二人の遺体が並んでいるカットが出てくるかと思ったら、砂浜に足跡がありその足跡の出発点に二人の草履と下駄、そして包丁が残されていたというラストカット。 なんでそういう展開になるかなあ。やっぱりハッピーエンドではいけないのかなあ。それにしても二人が義兄妹で心中とか無理矢理すぎないかなあ? そのあたりの強引さがやはりピンク映画らしさである。 金子差入店日時 2025年5月25日15:45〜 場所 TOHOシネマズ新宿・スクリーン12 監督 古川豪 かつては暴行で服役経験のある金子(丸山隆平)は様々な事情で拘置所に差し入れに行けない人に変わって差し入れをする「差し入れ代行」の店を営んでいた。 ある日、金子は出所してきたところをすれ違った男・横川(岸谷吾郎)が、再び強盗で捕まったというニュースを見る。また近所で息子と同級生で仲のよかった女の子が殺害される事件が起きた。 強盗事件は母と高校生の娘・二ノ宮佐知(川口真奈)が住む一軒家に押し入り母親を殺したというものだった。この事件の弁護士・久保木(甲本雅裕)は金子も知ってる男で報道されていない事件の裏側を教えてくれた。この母親は娘に自宅で売春させており、それをどこかで耳にした横川が義侠心に駆られて母親を殺したのだ。佐知の将来もあるから売春の件は不問にすることで検事の話が付いているという。 また女の子の殺害の犯人が捕まった。小島高史(北村匠海)だった。 マスコミでもこの事件は大騒ぎになり、母親のこず江(根岸季衣)は息子への差し入れ代行を依頼してきた。複雑な思いを抱えながら金子は仕事を引き受ける。 また拘置所に行く度、佐知が面会を申し込んで断られる姿を目撃する。 地味な内容だが、差し入れ代行、という職業を初めて知った。 実際にあるのかと思ってネットで調べると拘置所の周辺に実在するらしい。差し入れは平日の昼間だけで、差し入れたい人が遠方の場合はなかなか差し入れられないことも多いらしい。だからこういう仕事も需要がある。実際は差し入れ代行だけでこの映画のように何か行動することはないだろうけど。 横川の事件と小島の事件が平行して描かれる。 時々金子の店の前の植木鉢が誰かに壊される嫌がらせが起きるが、これは犯人が描かれない。誰かはわからなくても結局は犯罪者に便宜をはかる手助けをしてる業者ということで世間の中には快く思わない人もいるのだろう。 小島の事件は犯人は基地外としかいいようのない男である。北村匠海も実に不気味さを持って演じている。北村匠海によくオファーしたな、受けたなと思ったが、監督の古川豪は「東京リベンジャーズ」の助監督だったというから完全にお祝いの特別出演なのだろう。(昔の丹波哲郎である) 母親も何か狂気を帯びていて、親子そろって何か変だ。 だがここは金子の苦悩を描くだけで、小島親子に対して何か結論を出そうとはしてない。そこは描く目的ではないのだろう。 対して横川の事件は冷静に対処する。 自分を助けてくれた横川に佐知はお礼がいいたいのだろうと察した金子は「自分の助手」という体裁で面会室に入れようとする。 ここで実は横川が佐知の母を刺したが、とどめを刺したのは佐知だと自分で告白する。 これを黙っていようという泣かせの展開である。 これは道義的に疑問がないでもないが、佐知は母親に売春を協商されており、確かに秘密にしたくなる。佐知も自分だけが得をする顔をするわけではなく、横川を「待ってます」と伝える。 なかなか判断に迷う展開だが、変わった職業を扱った題材としてそこは評価したい。 おもしろかった。 金子のおじさん役で寺尾聰が好演。 0011ナポレオン・ソロ/罠を張れ日時 2025年5月25日 場所 ムービープラス録画 監督 ドン・メドフォード 製作 1964年(昭和39年) UNCLEの情報員のランサーはワスプという謎の組織を追っており、その中で訪米中のアフリカの西ナトゥンバの首相暗殺計画があると本部に報告したが信じていた女の裏切りにあって殺された。 それからすぐにニューヨークのUNCLE本部もワスプによって襲撃された。 情報員のナポレオン・ソロ(ロバート・ヴォーン)は課長からランサーの仕事を引き継ぐよう指示される。今までの調べでは今回首相たちが訪れる会社の社長・バルカンがワスプのメンバーとわかっている。イリヤ・クリヤキン(デヴィッド・マッカラム)の協力で、バルカンの周辺を洗う。その中でバルカンが学生時代につきあっていたエレイン・ベンダーに協力を仰ぐことにする。パーティでバルカンに再会させて彼に近づこうという作戦だ。 ワシントンでのパーティでバルカンに接触に成功するエレインとソロ。明日の西ナトゥンバ代表団のバルカンの工場見学を阻止するために首相アシュマンに薬を飲ませて体調を悪くさせる。 パーティから出たソロはランサーを裏切った女に誘い出され、危うく殺されそうになる。 エレインと再度合流したソロ。首相不在でも工場見学は実行されるというのだ。工場に何かあると考えたソロはエレインにバルカンに「工場を見学させてほしいと頼め」と指示する。しかしアシュマン首相によってバルカンたちに捕らえられた。アシュマン首相が同行の経済大臣や軍務大臣を暗殺しようとしていたのだった。 ムービープラスで数年前に公開された「コードネームU.N.C.L.E」の放送を記念してナポレオン・ソロの劇場版8本を一挙放送。 これは第1作。 これがパイロット版でテレビ放送されたのか、同じ脚本をカラーでリメイクしたのか詳しいことはよくわからない。(ネットにも詳しくはあがっていない) 「ナポレオン・ソロ」シリーズはアメリカでは全話DVDになっているが日本では未発売。完全に忘れされれているのだろう。 こういう映画専門チャンネルをこまめにチェックしていればテレビシリーズも放送されるのかも知れないけど。 テレビシリーズは少しみた記憶があるが、内容は覚えていない。イリヤとソロのコンビものだったのだが、初期はイリヤはわき役だったそうだ。 実際、本作でもイリヤは敵の本部攻撃シーンとソロに資料を届ける時だけにしか登場しない。ほんとに出番はない。 あとナポレオン・ソロはコメディ路線っぽい印象があったが、それは後期の作品で、初期のこの映画などは普通のスパイアクションである。 (もとはテレビシリーズなので、画面サイズはスタンダードである) アクションもそんなに大仕掛けのアクションもなく、最後の工場爆発が見せ場だが、工場全体が爆発するような訳ではない。 秘密兵器も出ないしね。 そうそう拳銃もワルサーP38ではなく、ルガーP08を使っているようだった。 でも協力者としてバルカンの学生時代の恋人で今は普通の主婦が登場するが、素人に無茶させるなあ。実際に命を落としかけたし。 バルカンに接触するために高級なドレス、宝石を貸与されたのだが、いわゆる「セレブ気分」を味わってしまう。 元の世界に戻れるか?と心配されるが彼女はニューヨークに着くと家族と再会してる。その家族の団らんを遠くから見守るソロが妙にかっこよかった。 こういうのは007にはない視点ですね。 これからしばらくは時間のある時にこのシリーズ、制覇しようと思う。 (ちなみに今回の放送は吹き替えではなく字幕版) 父と僕の終わらない歌日時 2025年5月23日19:25〜 場所 新宿ピカデリー・スクリーン・シアター8 監督 小泉徳宏 横須賀で長年楽器店を営む間宮哲太(寺尾聡)。息子の雄太(松坂桃李)とともに雄太の幼なじみの聡美の結婚式に向かった。待ち合わせの時間に1時間遅刻し、「道に迷った」という父を不審に思う。 医者(佐藤浩市)の診察を受けるとアルツハイマーの初期症状だという。 そのまま東京に帰るつもりだった雄太だが同居する恋人と相談し、しばらくは実家で暮らすことにする。 哲太は歌が好きで若い頃は歌手を夢見ていたが、オーディションの日に雄太が生まれたため、オーディションにはいけずに歌手にはなれなかった。 今でも地元のみんなには愛され、町のイベントなどでは歌っている。 介護老人施設で哲太は時々歌っていると知る雄太。そこで「自分の好きなこと、いつものことをやっていると認知症の進行を遅らせることができる」と聞いた雄太は、父とドライブしながら歌を歌い、それを動画にしてSNSにアップする。 一方で、雄太が目を離した好きに哲太がアイロンでぼや騒ぎを起こす。 いったんは施設に入れることを考えた雄太と母の律子(松坂慶子)は「まだ一緒にいたい」と熱望し、そのままになった。 雄太がアップした動画はバズった。しかしイラストレーターの雄太が最近描いたビールの広告と結びつけられ、「商売か」とあらぬ批判を浴びてしまう。レコード化の話もあったが、これで白紙に。 しかし目に見える実績があれば可能かもと言われ、雄太は地元のみんなの協力を得て、ライブを行うとする。 数ヶ月前に寺尾聰が歌う予告編が流れて以来、楽しみにしていた映画。 初日の夜に駆けつける。実は私は寺尾聡氏の大ファンなのだ。寺尾氏の歌は大好きである。寺尾氏はライブは時々やってるようだけど、こちらもあまりチェックしていないから行けてないけど。でも機会を見つけてまた行きたい。 私としては寺尾聡の歌が流れてるだけで大満足なのだ。 久々にパンフレットも買った。でもね、この映画で寺尾聰が歌った曲を集めたCD、サントラは発売されてないのだよ。CDが売れない事というのはわかってるけど、それならせめて配信で流してほしい。 それすら出来ないのだろうか? それともブルーレイ発売時に特典CDとして付けるのだろうか? で、映画の方。 全く予備知識がなしで見たのだが、雄太はゲイの設定なのだな。 10年ほど前に手紙で両親に自分がゲイであることを告白した。その手紙は取ってあって、認知症になった哲太がそれを読み、改めて知る。 レコードの話が来たときに何かを暴れるように探し出す。母を傷つけた哲太を止めた雄太に哲太は「お前のことなずっと情けない奴だと思っていた」と言われる。 イギリスの実話をベースにしてるのだそうだが、モデルの人もゲイだったのだろうか? 雄太にしてみると「父はずっと僕のことを嫌いだったのか」と不安に思ってしまう展開だ。確かに職業とかそういうことではなく、「父に嫌われてるかもしれない存在」という設定は重要である。 最後のライブも一悶着あって結局は成功。 ステージにたたずむ父は雄太を認識できてない。 「どちら様ですか?ご職業は?」 「イラストレーターです」 「じゃ息子と一緒だ」 「あの、息子さんのことはどう思ってますか?」 「そりゃ・・・息子は俺にとってスターだから」 ここで号泣である。(実際は泣かなかったけど、心では泣いた) 寺尾聰の歌がたっぷり聞けただけでも満足だが、ラストのせりふはよかった。 事実無根日時 2025年5月18日16:45〜 場所 新宿K's cinema 監督 柳裕章 京都の下町の常連客や近所の子供でにぎわう「そのうちcafe」のマスター、星隆史(近藤芳正)はバイトを雇った。名前は大林沙耶(東茉凛)。高校卒業したてで、バイト経験もないという。注文もよく間違えるし危なっかしい彼女だが、常連客などからは愛される。 店の前には公園があり、子供たちがいつも遊んでいる。そんな中、ホームレスらしき男・大林明彦(村田雄浩)がいつも沙耶を見ている。 不審に思った星は大林に話しかける。最初は心を閉ざしていた大林だったが、やがて沙耶との関係を話してくれた。なんと沙耶の元義理の父親だという。沙耶は大林の連れ子だったが大学教授だった大林は5年ほど前に学内で助手からセクハラで訴えられ、それがきっかけで大学も解任、子供も引きこもりになり、ついに離婚した。その話は星には他人事には思えなかった。星自身もかつて妻からDVとあらぬことを言われ離婚し、娘とも生き別れになっていた。 何とかしたいと思った星は、大林に自分のジャケットを貸し、小綺麗にしてやり、沙耶とあわせる。だがそこでわかったのは沙耶の実の名前は悠美といい、星の実の娘だったのだ。 「真夏の果実」の初日に行ったら、その前の上映後の監督、出演者のサイン会を行っている。そのメンバーが武田暁さんじゃないですか。 それならば映画の内容に関係なく観ないわけには行かない。 チラシを読むと「大学でセクハラ認定されて辞職した男」と「妻からDV認定された男」が出会うという話。 てっきり「それでもボクはやってない」みたいな冤罪話かと思ったらそうではない。 観ててまず思うのは「善人ばかりのドラマ」である。 まずは子供たちが出入りする喫茶店。私はずうずうしい子供が苦手なので「おっちゃん、水くれ、ジュースでもええけどな」とか行って入ってくる。 こういうのが苦手である。 そして不審な浮浪者に話しかける。「見とったらあかんのか?」「警察呼んだろか」などとごちゃごちゃ話している。 さっさと呼んでほしい。 大林のセクハラを確認するために星は大学の当事者に聞きにいく。 「嘘とは認めなかったが、俺は嘘やと確信した」と言ってるけど、そんなの決め付けだろう。 で星が自分の家に大林を招き入れ、風呂に入れてやりスーツも貸す。 そして翌日、大林と沙耶をあわせる。そこで大林が悠美と呼ぶので実は星の娘だったと判明する。 最後は悠美を琵琶湖に来るように行って親子で誕生日を祝おうとする。 そこにやってきたのは大林と星と、悠美の母親(つまり二人の元妻)と新しい男。そんなの修羅場だろう。 上映後に監督だけの挨拶があったが、星が自身のモデルらしく、自分も妻と離婚してDVとか言われたという。 で最初は冤罪をテーマにした社会派的作品になる予定だったが、補助金(AFF)をもらったため作らないわけにはいかず、タイトルも変更出来ずに脚本を練り直したそうだ。 また映画に登場するカフェは実在するそう。今度京都に行ったら行ってみよう。 私は気に入らなかったが、もう「3回観た。まだ観たい」という方もいて、離婚とか経験されてる方には響くものがあるらしい。 サイン会の時に「かつての松竹のホームコメディみたいでしたね」と行ったら「大好きなんです」と言っていた。やはりその世界観なのだろう。 カフェがとらやで常連の元刑事の老人は御前様、の発想かも知れない。 武田さんの出演以外は私にはつらい映画だった。 真夏の果実日時 2025年5月17日19:00〜 場所 新宿k's cinema 監督 いまおかしんじ あゆみ(あべみほ)はある会社で営業をしていたが、仕事はうまくいっていない。 そんな時、駅前で軽トラックで山梨で採れたブドウを売る龍馬(奥野瑛太)に出会い、結婚。 数年後、あゆみは誕生日も祝ってくれない龍馬に不満を募らせていた。農閑期には東京へタクシーの運転手として出稼ぎに行く龍馬。ホームセンターでバイトするあゆみは、肥料の業者の草壁(佐野岳)と知り合う。 自転車のチェーンが外れた時に助けてくれたことをきっかけに草壁とあゆみの距離は接近。ついに二人はホテルに入ってしまう。 龍馬はタクシーの客として中学の同級生だった近藤千尋(小原徳子)を乗せる。忘れた財布を届けたことをきっかけに二人は近づいていった。 千尋は家に遊びに来た龍馬とキスをするが、龍馬はそれ以上のことはしなかった。 山梨に帰った龍馬は地元の友人からあゆみが男とホテルに入っていったのを見たと聞かされてしまう。 そのことがきっかけで険悪になる二人。やがてあゆみは家を出る。 草壁の部屋に身を寄せたが、実は草壁も妊活の妻とうまく行かなくなり、家を出ていたのだった。あゆみは龍馬に離婚届を送ったが、龍馬の母(仁科亜希子)は「二人でちゃんと話し合わない限り、私は認めない」と見届人のハンコを押そうとしない。 草壁にも子供が生まれ、妻とよりを戻した。 東京の友人の家に身を寄せるあゆみ。 なんとか龍馬は話し合おうと東京へ行くのだが。 レジェンドピクチャーズのいまおかしんじ監督新作。いまおか監督に言わせると「農家の嫁、というヒットジャンルの1本」だそうだ。 サザンオールスターズの曲とはなんの関係もない。 脚本は「棒たおし!」で城戸賞受賞の松本稔。 いまおか監督にとっては初めての脚本家だ。 そのせいかどうか知らないが、脚本の説明が丁寧で、かといって過剰ではない。 軽トラでブドウを売っている龍馬に出会う、売れてない、売れ残ったら捨てるだけだからあゆみにあげようとする、食べてみたあゆみが感動する、自ら売るのを手伝いだす、でシーンが変わって結婚している。 この展開の早さはすばらしい。 でも省略しすぎず丁寧。 草壁はいつもズボンからワイシャツが出ている、で彼の愛すべきだらしなさを表現する。 自転車のチェーンが外れて困っているあゆみ、助けたことで顔が汚れる、それをあゆみのハンカチで拭く、洗って返す、でも汚れが落ちなかったからと言ってハンカチをプレゼントする、その柄に喜びを感じる、と心情の変化をハンカチで表現する。 このハンカチは草壁と別れたあとにこのハンカチを振り回しながらあゆみが歩くシーンがあり、ここでも効果的に使われる。 こういう脚本のテクニックがすばらしいと思う。 映画のテーマ自体は「浮気して険悪になった夫婦が元の鞘に戻る」という話で特におもしろくはないんだけど。 出演ではあべみほさん めちゃくちゃ巨乳で、舞台挨拶では胸の谷間を強調される服を着ており、悩殺ものである。 20代かと思っていたら今年37歳だそうで。 2度驚いた。 スケコマシの掟 SEX放浪記(2回目)日時 2025年5月16日21:00〜 場所 ラピュタ阿佐ヶ谷 監督 小川卓寛 製作 昭和48年(1973年) 映画を見てる最中にオカマが出てきて主人公の杉山(山本昌平)の生活を支えてるシーンが出てきて、「なんかこういうシーン、観たことがあるな。でもこの話は覚えてないなあ」と思いながら観ていた。 話は全く記憶がない。でもなにか気になるので、このHPを検索したら過去に観ていた。 ピンク映画あるあるだなあ。ピンク映画ってタイトル似たような感じだから。 見終わった後このHPに書いてある感想を読んでみたら「愛国党のビラに田中内閣打倒と書いてある」「杉山が急に1万円貸してほしいと言い出し、7時に会う約束を女としながら別の女に話しかけてる。編集が変」とか今思った事とまったく同じ事を書いている。 新しい発見は特になく、強いていえばラストに出てくる老刑事、先週の「現代浮気性談」で土地成金を演じた小川純だった。 もっとも編集が変、に関しては前に見たときには「女に妊娠を告げられれてその堕胎費用が必要になったのに順番が変」と思ったのだが、劇場ロビーに貼ってあったプレスシートを読むと金は単なる小遣いが欲しかっただけらしい。 それでも「電話で女と会う約束をした後のシーンで別の女をナンパしている」など疑問もあったけどね。 ちなみに次回上映の「性(セックス)のピンチ」も以前に観ていたことが調べてわかった。これも内容は全く覚えていない。 六邦映画といえどもちゃんと調べなくちゃ。 それにしても今日は全くついてない。 映画以外のことは書かないのだが、前日の夕方、急遽名古屋日帰り出張が決まり、いつもより1時間早く出かけて名古屋へ。 昼飯も食わずに仕事をして3時頃終えて名古屋駅で食事して帰ろうと思ったら、急にもう1件仕事を頼まれて、コンビニでおにぎりも食べないまま仕事へ。 6時前に名古屋駅まで送ってもらったのだが、今日ラピュタに行きたかったので、また飯も食わずに、コンビニでおにぎりを買う間もなく新幹線に飛びのった。 会社に8時過ぎについて、荷物をおいて急いで新宿駅へ この途中でなぜかこむら返りを起こして早く歩けない。 でぎりぎり映画が始まる3分前にラピュタ着。 こんなに苦労して行ったのに見た映画だったとは! 人生には無駄は付き物だなあ。 新幹線大爆破(デジタルリマスター版)日時 2025年5月10日18:00〜 場所 109シネマズ木場・スクリーン8 監督 佐藤純弥 製作 昭和50年(1975年) ストーリー省略。 NETFLIXでのリメイク効果なのか、単なる偶然か東映版「新幹線大爆破」のリバイバルが5月9日から始まった。 映画感想投稿サイトFILMARKSが主催しているらしい。 新宿ピカデリー以外での上映館がいまいちよくわからなかったが、たまたま109シネマズのサイトを見ていたら本日の18時から木場で上映があると知って神保町で「悪霊島」を観た後で時間もぴったりなので行ってきた。 (見終わった後でTwitterで検索したら丸の内TOEIで観たという人が複数いる。あれ?丸の内TOEIは「さよなら丸の内TOEIフェス」で今日は「陣具なき戦い」じゃなかったけ?と思って丸の内TOEI自体のサイトを観たら18時から上映してるじゃん。私が観ていたのは「さよなら丸の内TOEIフェス」という番組のサイトだったのだ) しかし109シネマズで「ひかり109号」の映画を観るとはなんたる偶然! スクリーン8の入り口では中年夫婦の夫の方が入り口に貼ってあるコピーの「新幹線大爆破」のポスターを観て「これこれ、懐かしいなあ」とはなしている。 たぶん夫の方は50年ぶりに観るのだろう。そして妻はたぶん初見。ライトなファンも取り込んでいいことである。 今更特に新しい発見はなかったんだけど 「警察=事態を悪化させるバカ」 「国鉄=ひたすら地道に頑張る真面目集団」 「犯人グループ=社会からこぼれ落ちたけど破れざる者たち」 という視点で描かれており、これはもう70年代の東映マインドである。 それにしてもデジタルリマスターされた映像は美しい。 音が当時の録音では(上映環境も含めて)新幹線の轟音が迫力不足。 ここはもう一度「轟音版」などを作って迫力ある映画によみがえらせたいところである。 あと矢野宣が最後にひかり号の歌を歌うシーンで、窓の外を観てみたら遠くの明かりは動かずに、近くの明かりは動く、ということもやっている。 思ったより丁寧にやってると思った。 丸の内東映でももう一回観ようかなあ。 先月も自宅で観たんだけどね、飽きない。 悪霊島日時 2025年5月10日13:15〜 場所 神保町シネマ 監督 篠田正浩 製作 昭和56年(1981年) 1980年、ビートルズのジョン・レノンが自宅前で射殺された。そのニュースを見ながら三津木五郎(古尾谷雅人)は自分が20代の時に出会った事件を思い出すのだった。 1969年、五郎は無賃乗車を繰り返し旅を続けていた。ある列車で袴姿の男、金田一耕助(鹿賀丈史)に出会う。 金田一は広島県の瀬戸内海の島に青木という男の消息を探ってほしいと頼まれてきたのだが、着いてそうそう旧知の磯川警部(室田日出男)に出会う。 磯川警部はこの島に住む浅井はるという老婆に呼ばれてきたのだが、彼女は殺されていた。磯川から青木という男は数日前に海に浮いているところをフェリーに発見されたが、すぐに亡くなったという。死の直前にフェリーの客が青木の死に際の言葉を残していた。「鵺の鳴く夜は恐ろしい」と。 この島は刑部神社の宮司の大膳(佐分利信)と網元の家の越智家が仕切っていた。その越智の長男竜平(伊丹十三)が長らくアメリカに行っていたが最近になって日本に帰ってきていた。 祭りの晩、大膳の娘巴(岩下志麻)の夫、守衛(中尾彬)が殺された! 角川映画の「犬神家の一族」のヒットにより巻き起こった金田一ブームに乗って横溝正史が書いた新作の映画化。 調べてみたら81年の5月に出版され、10月にこの映画が公開されている。結構スピードが早い。 封切り時にも見ているが、いい印象はなかった。 「なにがなんだかわからなかった」と思った記憶がある。 その後、挿入曲に1969年の時代感を出すためにビートルズの「ゲットバック」と「レット・イット・ビー」が使われたために音楽の使用権の問題でソフト化もされなかった。今はDVD化されているらしいが、音楽は別の歌手が歌ったバージョンに差し替わっているらしい。 今回デジタル版の上映ということでそこがどうなってるか気になったが、ビートルズのオリジナル曲だと思う。(少なくとも別の歌手という感じはしなかったぞ) 結局、登場人物が多いし、その説明を単純なせりふのやりとりでだけでやっているので、解りづらいんだよな。 市川崑の金田一ものはこの登場人物の説明を説明する人物と、紹介される人をカットバックでつないで顔と名前が一致する工夫がされてたぞ。 たとえば小沢栄太郎の弁護士が「竹子夫人は〜」と説明すると竹子夫人が話しているシーンになるとか。 そして金田一が人物相関図を書くシーンを入れて観客の頭を整理する。 さらに岸本加世子扮する岩下志麻の娘も双子だし、岩下志麻も双子役である。混乱するよ、丁寧に説明しないと。 結局登場人物をうろ覚えのまま話は進んでいくので、なんかよくわからないうちに終わった、ということになる。 また「犬神家」や「悪魔の手鞠唄」にあった死体装飾もないし。 でも今日の神保町シアターは満席。 上映機会が少ない映画だから、金田一ファンも駆けつけたのだろうか。 怪獣総進撃(4Kリマスター版)日時 2025年5月10日9:30〜 場所 TOHOシネマズ日比谷・スクリーン12(宝塚地下) 監督 本多猪四郎 製作 昭和43年(1968年) ストーリー省略。 5月のゴジラ映画4K版が9日からだと昨日知った。 あわてて都合をつけて観に来た次第。 久々に観たけど後半の展開は忘れていた。 月にキラアクの基地があってそれを攻撃するんだけど、月基地隊長(佐原健二)も「敵を倒すまで宇宙服を脱ぐことは許さん!」と命令したり、レーザー(?)で敵の心臓部(かな?)を壊そうとして部下が「これ以上攻撃すると壊れます!」とかいうと、久保明の部隊長は「生きて帰ると思うな!」と答える。 完全に第二次大戦の精神ですよ。 今なら「生きて帰る!」と生還も考えながら戦うけど、特攻隊精神が残っている。こういうせりふをさらっと書けちゃうあたりが戦中派だなあ、と改めて思った。 そしてキングギドラ対怪獣軍団の対決。 アンギラスってがんばってるね。ギドラの首をくわえたままでキングギドラに空を飛ばれて「むちゃくちゃだなあ」と前は思ったけど、今観ると本気でがんばっている。 死を覚悟して立ち向かっている。ゴジラなんか後ろで放射能吐いてるだけだよ。仕舞いには多勢に無勢で戦ってるだけだし。 アンギラスが落下したことでキアラクの富士山基地もむき出しになったしね。 この映画におけるアンギラスは殊勲賞ものですよ。一番頑張ってますよ。 鳴き声も結構いいし、アンギラスが好きになりました。 その後「ガイガン」ではゴジラのパシリにされちゃうし、何かと不遇な万もかえって応援したくなっちゃいますね。 現代浮気性談日時 2025年5月9日21:00〜 場所 ラピュタ阿佐ヶ谷 監督 二宮次郎 製作 昭和47年(1972年) 町外れ広田家は近所でも評判の億万長者だった。自分の土地を売って大もうけしていたのだ。広田家は主人・松三(小川純)と息子時男(島たけし)の二人暮らしだった。家は質素なまま。 松三の金をなんとかふんだくろうと芸者の春江は近所の世話役の横田(堺勝朗)に相談した。 妻が死んでから8年になるが、松三は再婚する気もなく酒もやらない。 そんな堅物の松三に女遊びを教えようと横田は町へ連れ出した。 まずストリップ。でも横田一人が盛り上がってしまった。次はトルコ風呂。こちらも松三はぜんぜん楽しくない。「酒でも行こう!」と横田は春江の店に連れて行った。そこで酒を飲ませ寝かしつけ、春江はベテランの満子と布団に寝かせるが、これもだめ。逆に様子を見ていた横田と春江が盛り上がってしまう始末。 時男と春江の娘、由美子が幼なじみでしかもデキていると知った横田は無理矢理結婚させようと決意。 由美子に時男の部屋へ夜這いさせ、横田はその現場を松三に目撃させるが「こんな女はだめだ。今まで何回やった?」「8回」「じゃ8万円だ」と8万円渡して終わり。 春江は新人で処女の圭子の水揚げをさせることにする。さすがの松三もこれには惚れ込んだようだ。作戦成功を祝って横田、春江、満子が祝杯をあげていると圭子が飛び込んできた。なんと松三が腹上死したという。 松三は遺言書を残していた。それは息子時男には1千万円を残し残りは福祉団体に寄付するというものだった。 ラピュタ阿佐ヶ谷、六邦映画特集の2本目。 先週に比べるとだいぶ落ちる。そもそもタイトルに「浮気」とあるけどぜんぜん浮気じゃないじゃん。 映画が始まってからしばらくは「誰が浮気するのか」と考えてしまった。 パートカラーだけど、裸とは関係ないところでカラーになったり、逆に裸のシーンでも白黒のまま。まったく意味がない。 先週の映画はまだこの辺のカラーの使い方がちゃんとしていた。 ではこの映画に全く魅力がないかというとそんなことはない。 堺勝朗である。 堺はこういったコメディが本当にうまい。 「エッチでなんかうまく行かないおじさん」的な役が多いのだが、それがなんかいいんだよなあ。 松三に女遊びを教えようとしてるのに自分が盛り上がってしまう、そんな感じの役で、哀愁さえ感じてしまう。 堺勝朗の芝居を観れただけでも観る価値はあった。 シャーロックホームズ死の真珠日時 2025年5月5日 場所 amazon prime video 監督 ロイ・ウィリアム・ニール 製作 1944年(昭和19年) ドーバー海峡を渡る船である女が英国博物館員が持ってきたボルチア家の真珠を盗む。盗んだ真珠はカメラに隠し、女は聖職者の男にそのカメラを預ける。 女が仲間の元でカメラを開けると真珠はなく、「返してもらった。シャーロック・ホームズ」というメモがあった。 シャーロック・ホームズ(ベイジル・ラスボーン)の手によって博物館に展示されたが、警報装置の不備をホームズは指摘する。「装置を解除することは簡単だ」と実演したホームズだったが、それを聞いていた女の黒幕のコノヴァーによって真珠は盗まれてしまう。 コノヴァーは博物館の近所にいたためにすぐに逮捕できたが、真珠は持っていなかったため、逃走の際に窓を壊したことでしか拘留できない。 隠し場所を伝えるはずと確信したホームズは食事の差し入れを許可するようにレストレード警部に指示する。 食事のお茶のポットからメモが発見されるが、そこには「バカ」としか書いてなかった。 そのころ、殺人事件が連続していた。被害者は背骨を折られて死んでおり、周りには食器などの陶器類破片が散乱していた。 アマゾンプライムでこういうクラシックミステリーを観るのが最近のマイブームである。全部に言えるけど同時代の日本映画より遙かに映像、音声もクリアでテンポもよく、60年代ぐらいの映画にしか感じない。 この俳優でのシャーロック・ホームズシリーズは全部で14本あるそうな。以前廉価版でDVDになってるようだが、今は発売していない。 でこの映画、「6つのナポレオン」を原作としているが、正直イマイチである。 ホームズとコノヴァーの知恵比べ、ワトソンの3枚目ぶり、レストレード警部のお間抜けなどキャラが強調されている。そこは私のイメージとはやや異なるが(ワトソンもレストレードもそんな3枚目じゃない)、まあそこは許そう。 でも今回は「真珠」をモチーフにしてしまったので、原作「6つのナポレオン」の良さがなくなってしまった。 原作はナポレオン像が次々に壊される事件が連続し、「なぜナポレオン像が壊されるのか?」の謎を追っていくとそこには思いがけない事件の真実があった、という点が面白かったのだが、今回の事件では「殺人現場には常に陶器が割れている」という点である。 これが真珠事件とナポレオン像事件が別れて進行してればまだ違ったかも知れないが、「殺人の手口からしてコノヴァーの手下のクリーパーの犯行だ」と殺人事件と真珠は完全に結びついている。 これでもいいんだけど、私だったら真珠事件があって、一見関係ないナポレオン像事件があってそれがラストで結びつく、という構成の方がよかったかな。 しかしこの映画も冒頭で「真珠を盗まれて盗み返す」「カノヴァーはどうやって外部と連絡を取るか?」「カノヴァーが変装して仕掛けのある本にホームズは気づくか?」などの小さな山がいくつもあり、その点は飽きさせずによく出来てると思う。 他の作品も見たいね。アマプラでもっと配信されないか知らん。 (女残虐奇録)情念のおとし穴日時 2025年5月4日21:00〜 場所 ラピュタ阿佐ヶ谷 監督 武田有生 製作 昭和44年(1969年) その働きにより何度も表彰されている若き警官・志村一郎(港雄一)は新婚の妻を殺してしまう。殺意があったわけではなく、志村は性的な衝動から首をしめて死に至らしめてしまったのだ。 3年経ち志村は出所した。彼は古いアパートでマネキンに万引きしてきた女性のパンティをはかせてそして首を絞める。首は折れてしまう。 ある日、公園で女が男から財布をスリ取る現場を目撃する。女をつけていくと女はホテルに行く代わりに見逃してくれという。ホテルで女の首を絞めて殺してしまう志村。 味をしめた志村は宝石店で指輪を万引きした女性の後を付け、警官だと名乗ってホテルに行く。 警察も3年前もことなどから志村を疑い出す。 そして本を万引きした女子高生をホテルに連れ込み同じように首を絞めてしまう。警察も従業員の証言から志村と断定する。 警察に追われてると知った志村は地方の観光ホテルに逃げ込む。 そこで彼はかつての自分達夫婦にうり二つの新婚を見かける。 夫の方を巧みに部屋に誘いだし、殺す。夫になりすまして別の人生を歩もういう計画だ。 だが妻は志村の腕にある傷を見て「この人は誰?」と疑い出す。 翌日、景色のいい高台に観光に行く。怪しんだ妻は「ホテルに忘れ物をした」と戻る。志村は「これで俺も第二の人生だ」と思う。 ラピュタ阿佐ヶ谷のピンク映画特集。数年前にも上映があったが六邦えいがというエロダクションの映画。昭和44年だがまだ白黒でカラミのシーンになるとちゃんとカラーになる(でもプリントは退色してるけど)。 ちゃんとカラミというか女性の裸になるとカラーになるので適正である。 時々「なんでここがカラー?」と思うときがあったが、ちゃんとしている。 本作、原案は港雄一とクレジット。主演も港だ。 タイトル前で新婚の妻を殺し、メインタイトル。その後志村が警察をやめた展開になっているのだが、ロビーに貼ってあったプレスシートを見るといったん刑務所で3年過ごしているのですね。3年ってちょっと短い気もしますが。 まあしかし性癖だけは直せないものだなあ。 「相手の首を絞めると興奮する」という性癖は本当にやっかいである。 そんな性癖を持ってしまった志村には同情を禁じ得ない。 で後半になって話は急展開。 たまたま出会った自分とそっくりな夫婦になりすまそうというのだから。 いや、それは絶対に無理だよ。男を殺してその戸籍だけ借りて生きていくならわかるけど、新婚の妻と暮らしていくんだよ。帰ったら仕事もあるんだよ。無理に決まってるじゃん。 しかも志村と別の男が二人並んで会話するカットも2カットぐらいある。 もちろん多くは片方が背中越しとかのカットだが、少ないけど2人とも顔が写って並んであるカットがある。 へ〜がんばったなあ。生合成(この場合はあとで合成するのではなく、撮影したカメラ内でフィルムを巻き戻し再度撮影すること)でもシたんだろうか。 プレスでは最後、新婚の妻の首を締めようとしたところ、手配所を見たホテルの従業員から通報でかつての先輩刑事が駆けつけて逮捕するところで終わる。 しかし完成映画では妻はホテルに戻るといい、志村は景色を眺めて「俺の第2の人生だ」とうそぶくカットで終わる。 シュールだねえ。「とはいっても捕まるんだろうな」余韻を残して終わるなどなかなか高級である。 今まで見た六邦映画ではベストかもしれない。 そうそうメインタイトルの前半に()がついているが、上映プリントのメインタイトルでは()がついている。 プレスではなし。 アプレンティス ドナルド・トランプの創り方日時 2025年5月4日14:30〜 場所 深谷シネマ 監督 アリ・アッバシ 1973年、ニクソン大統領が辞任した頃。27歳のドナルド・トランプ(セバスチャン・スタン)は政財界の実力者が集まる高級クラブの最年少会員になれた。その時彼は父の不動産会社で働いていたが、入居者の審査で人種差別をしたとして訴えられ窮地に陥っていた。 そのクラブで悪名高い弁護士ロイ・コーン(ジェレミー・ストロング)に一緒に飲むように誘われる。 実際入居審査の際に審査表に「C」と書き込み「カラード(有色人種)」であるかどうかをチェックしたいたのだ。裁判は負け確実。 しかしロイは判事がゲイであるネタを掴んでおり、脅迫して無罪にさせた。 ロイは勝利の法則3箇条をトランプに教える。 1、攻撃、攻撃、攻撃、2、非を認めるな 3、勝利を主張し続けろということだった。 グランドセントラル駅近くの古いホテルを買い取り立て直す計画をトランプは建てる。その頃のニューヨークは治安も悪く、町は荒廃していた。 ホテル建設のために税の優遇措置を勝ち取らねばならない。ロイ・コーンに協力してもらい、なんとか優遇措置を勝ち取った。 その頃、モデルのイヴァナと強引に結婚。 あるパーティでロイは2階の部屋で男同士の行為を見てしまい、実はゲイだと知る。 五番街にもトランプタワーを建て順風満帆。 その頃からロイとは距離を取り始め居留守も使う。 やがてロイはエイズで亡くなった。 アメリカ大統領ドナルド・トランプの若き日を描いた映画。公式HPによるとロイ・コーンが亡くなったのは1986年だから27歳から40歳までが描かれた。 その後トランプはカジノの倒産とか苦境に陥ったり、テレビ番組のキャスターなどもするそうなのだが、そこは描かれない。ロイ・コーンの死亡したあたりで映画は終わる。 ドナルド・トランプの生涯を描くというより「ロイ・コーンとの関係」に絞ったのだろう。 このロイ・コーンという男にとってはトランプはお気に入りの美青年、だったのではないだろうか? 出会いからして高級クラブの会員になって、どう溶け込んでいいか迷ってるトランプを自席に呼んで飲ませる。(トランプは酒が飲めないのかな?) その時に一瞬、テーブルの下でロイの手が動くカットが入る。 そして自分の家ではパンツ1枚で腹筋運動をしていたり、プールで男の友人を紹介されたり、なんかゲイっぽい。 そう思っていたら判事がゲイ行為をしている写真で脅迫する。 これがなぜ持っているのか映画では明確ではないが(一応あらゆる盗聴をしていて相手の弱みを握っているという説明はある)、なんとなく想像してしまう。 そんな時にあるパーティでロイがいないと思ったら2階の部屋で男同士の乱交をしているのを見かけてしまう。 映画はあくまでトランプ中心でロイは「影響を与えた人物」でしかない。 トランプが今年の就任演説で「この世には男と女しかいない」という趣旨の発言をして、要するに「LGBTQは認めない」という主張した。 これをキリスト教信者に向けての支持者の獲得のため、と解説する向きもあってそれを否定はしないが、やはりロイ・コーンのことが頭にあるのではないか? ロイ・コーンもゲイでありながら判事が「ゲイをばらすぞ」と脅迫するというなかなか歪んだ人物(けどあり得る)。 自分がゲイだからこそゲイが世間にばれる恐怖感は一番わかっている。 ロイにしてみればお気に入りの青年、トランプをいろいろ援助してやるのは自然な行為。そして結局距離を置かれて、自らは80年代にはやったエイズで死ぬ。 トランプ視点で映画は作られてるけど、ロイの視点からもう一度考察してみるのも面白いかもしれない。 今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は日時 2025年5月3日18:00〜 場所 テアトル新宿 監督 大九明子 祖母が亡くなってしばらく実家に帰っていた小西徹(萩原利久)だったが、半年ぶりに京都の大学に帰ってきた。 大学で授業終了ともに颯爽と帰って行き、食堂で一人でざるそばを食べている女の子を見かける。別の日、机の上にある出席表から彼女の名前が桜田花(河合優美)と知った。声をかけてみる。思った以上に彼女と価値観が考え方があい、意気投合する。 小西は近所の銭湯が閉まった後の掃除のバイトをしており、バイト仲間のさっちゃん(伊東蒼)とは気軽に話す。 自宅近くの駅で小西は桜田さんとばったり会うこともあり、その日は水族館に行き二人でボウリングをした。 ある晩、小西はさっちゃんから告白される。彼女のことを何とも思ってなかった小西はどうしていいかわからず、オロオロするだけ。 翌日からさっちゃんはバイトに来なくなった。 小西は桜田さんとメニュー名が変わった喫茶店にモーニングを食べに3回行った。変わったメニュー名の中で「オムライス」だけが普通だ。 その理由を聞いてみると「私ではうまく作れないから。うまく作れる人がいなくなっちゃって」と店主が言う。 「午後にもう一度聞きにいこう」と約束したが桜田さんは来なかった。 小西は桜田さんが自分のことを「キモいよね」と言ってるところを夢想してしまう。 ポスターのイメージからして萩原利久主演の若い監督が撮ったちゃらそうな映画だと思ったのでパスするつもりでいたが「監督の激しい演出を感じた」と知り合いが言っていたので、知り合いの話題について行くためにも鑑賞。 前半はボーイ・ミーツ・ガールでとんとん拍子に小西と桜田さんの関係が進んでいく。 授業中に私語をしているあたりなど、なんかムカついた。人が話してるときに話すんじゃないと思った。俺も歳だな。 そしてバイト先のさっちゃんから告白される。 「もうモテモテじゃん」と思っていたら急展開。 あれほどうまくいってた桜田さんは来なかった。 桜田さんが「あの男マジキモいです」とバイト先で言ってる映像が出てくる。「えっあれが桜田さんの本音だったの?」と思うのだが、また急展開。 さっちゃんがバイトに来なくなったのは彼女は亡くなっていたのだ。 てっきり自殺かと思って「俺のせいです」と口から出てしまったら、そうではなく交通事故。 バイト先の銭湯の店主と線香を上げにいく。 彼女の家で出迎えてくれたのはなんと桜田さんだった。 三度目の急展開。 思えばさっちゃんと桜田さんは同じようなことを言うことがあった。 「幸せ」を「さちせ」とか「好き」を「このき」とか読み方を変えるのだ。 小西はここで気付くべきであった。 でも桜田さんは亡くなったさっちゃんの姉とわかったので、さすがにつき合えないんじゃないかなあ、と思っていたら小西は告白している。 付き合う気になるんだ。 演出としてはさっちゃんの告白のシーンの長せりふで話すシーン、桜田さんが妹や亡くなった父の思い出を縁側で話すシーン。 このあたりは二人の女優の実力に圧倒される。 この桜田さんの時など、フルショットから徐々にズームアップしていくのだが、バストショットあたりから急にガクンとアップにズームするのだ。 映画館で観てるときは「おお、普通はこんなズームしないぞ」と思ったけど、今考えるとあれは単なる撮影時のズームミスだったのではないだろうか? 役者の演技がすばらしかったので、これはOKカットにしたとか。 撮影のことでいえば小西たちの大学は関西大学。大阪の大学だが、出町柳とか、四条河原町とか京都の風景が写る。 小西やさっちゃんの家のすぐ近くだと思っていた銭湯だが、小西たちはさっちゃんの家に行くのに阪急電車に乗っている。 距離感がよくわからない。というか小西たちの大学を大阪と思うからいけないのか。単なるロケしただけで設定は京都、ということでいいのかな。 ちょっと位置関係が気になった。 とにかく映画というものは観てみないとわからないものだなあ。 見逃さなくてよかったよ。 ウルトラQのおやじ日時 2025年5月3日13:30〜 場所 MORC阿佐ヶ谷 監督 実相寺昭雄 製作 昭和41年(1966年) TBSディレクターの実相寺昭雄が演出した30分番組のドキュメンタリー。(「現代の主役」というドキュメンタリーシリーズの1本のようだ) DVD等で見たことはあったが(調べて見たら「総天然色ウルトラQ」の特典映像として収録されている。だから観ている)、今回TBSで実相寺監督作品で16mmで残っているものをデジタル化しての特集上映。日替わりでゲストトーク付き。今日はゲストが桜井浩子さんなので行ってきた。 最初は円谷プロの広場でカネゴンやモングラーに子供たちが入り、周りに子供たちも遊んでいて、それを金城哲夫氏がインタビューしている。 そして円谷家の今で三男黎氏、英二監督の妻、そして英二監督の3人で語っている。 英二監督「子供の頃は機関車の運転士になりたいと思っていて、そのうちに飛行機に乗りたいと思った。でも親族中から大反対された」 「かぐや姫をやりたくて昔1回やったけどうまくいかなかった。またやりたいけどなあ」 円谷夫人「黎ちゃんがやってあげなきゃ」 などと話している。 次が一さんとの話。 一さんが「もうテレビの時代なんだよ。でもみんな映画にしがみついてる。人口は増えてるのに映画観客は減っている。観る人だってテレビの方が多い。なんで映画の人はテレビをバカにしてこちらに来ないのか」 英二監督「そうだよね」と言ってるけど、親子喧嘩しているみたいだった。 怪獣M1号とラゴンと英二監督の対談。 「僕らは怖がらせればいいんでしょうか?」 「怖がらせるだけじゃだめだね」と言った英二監督の怪獣観が示される。 また途中で「サンダ対ガイラ」の撮影中の風景が出る。中野昭慶監督などが映っている。 スタッフルームでの打ち合わせしながら食事。 桜井さんに言わせると先の円谷邸でのシーンや東宝スタッフルームでの撮影など普通は無理だそうで、実相寺監督はなぜか人の懐に入るのがうまかったそうだ。 映像作品としては実相寺監督は円谷監督に「君、そんなところから撮るの?」と言われたそうだが(何かの本で読んだ)、とにかく隠し撮りのような隙間から撮ったような映像が多い。 後の「実相寺アングル」がここでも発揮されている。 あれ、若い人がよくやるけど何か違うんだよね。望遠レンズを使ってるからだろうか? トークイベントは桜井浩子さんとTBSの今回の映画祭Pの佐井大紀さん。 佐井さんは思ったより若くて今年31歳という若手。 中学生ぐらいでもう「怪奇大作戦」なども観ていたそうで。 桜井さんの話では飯島監督などとは信頼関係というのが深かったそうで。 またこの二人と冬木透さんも信頼が厚かったそうで、森アートギャラリーで(六本木ヒルズ)で「天空のウルトラマン」(そんなようなタイトル)をやったとき、イベントで「音楽は冬木さんで」と言って飯島監督は聞かなかったそうで。桜井さんはプロデューサー的立場なので「予算がありません」と言っても「予算がなければ僕の脚本料を減らせばいい」といったそうだ。 桜井さんとしては脚本料でまかなえるギャラではなかったが、冬木さんに「すいません」と言って了承してもらったそうで。 またラジオで「ウルトラQ倶楽部」をやったとき、実相寺監督も参加することになり、「今昔物語をやりたい」と主張し桜井さんが「でも『ウルトラQ』なんですが」と言っても聞かなかったそうで。 とにかく佐原さん、西条さん、桜井さんを万条目淳、戸川一平、江戸川由里子でなくてもいいから出す、ということで了承してもたっらそうな。 その1回だけでは終わらず、後半でも同じことがあったそうで。 飯島監督などは「実相寺がやりたいならいいんじゃない?」と許してしまうということで、桜井さんも間に挟まって難しかったそうな。 また実相寺監督は脚本の佐々木守さんへの信頼も厚かったそうで、遺作の「シルバー仮面」も佐々木さんが残したのは7枚のプロットしかなく、しかもシルバー仮面が女性になっているので桜井さんは「いいんですか?」と言ったけど「佐々木さんが考えたとおりにやりたい」と聞かなかったそうな。 このときも制作もとのジェネオンから「DVD3巻作ってほしい」と言われたが、実相寺さんも体調が悪く1本だけであとは監督が代わってしまったそうな。 また作品を観た桜井さんに飯島監督が「実相寺はどうだった?」と訊き、体調のことかと思ったら作品のことで桜井さんは「実相寺作品でした」と答えたそうで。こんな所にも実相寺監督と飯島さんの信頼関係が伺える。 個人的には実相寺監督の葬儀で弔辞を読む飯島監督が「なんで私が君の弔辞を言わなくてはいけないのか」と無念そうに話されていたのを思い出す。 たっぷり1時間のトークイベントで、満足できた。 ファーストキス 1ST KISS日時 2025年5月2日19:00〜 場所 TOHOシネマズ新宿・スクリーン12 監督 塚原あゆ子 硯カンナ(松たか子)は美術デザイナーとして活躍していたが、不動産会社に勤める夫・駈(松村北斗・SixTONES)とはすれ違っていた。離婚届を書いたその日、彼は事故で死んだ。電車のホームで線路に落ちたベビーカーの赤ん坊を救おうとして線路に降りたためだった。 ある晩、仕事で急遽呼び出され、首都高に車を走らせるカンナ。しかし直前に起こったトンネル事故で時空がゆがみ、カンナはタイムスリップしてしまう。 タイムスリップした先は駈と出会った2009年8月のホテルだった。 その時の駈と再会し、改めて自分が駈を好きだと思い直すカンナ。 元の世界に戻ったカンナは彼との写真が変化していることに気づく。 それは「トウモロコシは皮付きのままゆでた方がおいしい」と教えたために、二人でトウモロコシをゆでたときの写真が皮付きに変わっていたのだ。 「もう一度2009年に行って彼の行動を変えれば彼は死なずに済むかも知れない」と思ったカンナは再び2009年に向かう。 「花束みたいな恋をした」の坂元裕二脚本。タイムスリップものは苦手なんで(なんか「あり得ないだろ」と思ってしまうので)パスするつもりでいたのだが、やはり見ておこうかという気持ちになり鑑賞。 今年の1月公開だがまだロングランしている。1日1回の上映だが、GW前の金曜日の夜はほぼ満席だった。 事故に遭った日の財布のレシートから、駈が駅に行く直前に好きな店のコロッケを買ったと解れば彼がその店に行かないように2009年で「あの店は不衛生ですよ」と言う。でも彼は「悪口を言う人間は卑しいです」と却下される。 次に言ったときには「あの店のご主人は体が悪いのに無理してコロッケを作っていて」と同情させてコロッケをやめさせる。しかし戻ってみたらスイーツを買っており、やはりその時刻に駅にいたのだった。 そんな感じで何回か繰り返すが「最終的にあの時間に駅にいる」という事態は変わらない。 最後に2009年に行ったとき、カンナは自分が2024年から来たことがばれてしまう。 ここでうまいのは見せ方だ。 カンナは2024年の世界でひもでつるして時間軸を表現する。 紙に書くのではなく、立体物にしている。彼女は美術デザイナーだから立体物の方がしっくりくるのだろう。そこで出来事をポストイット書いていたのだが、それが落ちて靴下についてしまっていたのだ。 (ここ、映像で見せるという映画の原則で言えば立体物にするのは正解なのだ。彼女がオブジェの制作者であるのも理由があるのだ) そして「もう何回も来てるの?」と問われてカンナは毎回幾たびに「小学生新聞です」とやってくるうざい子供記者が撮った写真を取り上げている。 この写真の枚数で表現する。うまいなあ。 このシーンをするために別にストーリーに絡まない小学生記者が必要だったのだ。 ラスト、結局駈は亡くなった。でも彼が書いた手紙を発見する。 いや号泣だね。 やっぱりうまいなあ、と思う。 |