逃走迷路

監督 アルフレッド・ヒッチコック
製作 1942年(昭和17年)

(詳しくはキネ旬データベースで)


カリフォルニアの軍用機工場で働くバリー(ロバート・カミングス)はその工場で
起こった大火災事件の放火犯の汚名を着せられる。
彼はその現場に居合わせたフライという男が真相を知っているはずだと警察に
訴えるが、フライという男は勤務していないという。
逮捕を逃れ逃亡を始めるバリー。彼は真相を突き止めるためフライを探し始め
自ら潔白を証明しようとする。

ヒッチコックの作品の中では初期の部類に入るだろうし、後の作品ほど知名度は
ないのだが、これはヒッチコックの中でも特に面白い作品だと思う。
お決まりの主人公の巻き込まれ型のサスペンスだが、実に素晴らしい。
1時間49分の映画だが、ハラハラドキドキするいわゆる山場のシーンが10数回あり
それこそ7、8分に1回盛り上がるのだ。

バリーは火災の前にフライに会ったときに、彼の持っていた手紙の封筒を偶然見ていて
その封筒に書いてあった彼の住所の牧場に出向く。
しかしその牧場主は知らないという。
だが彼宛に来た電報を偶然、牧場主の孫娘が開いてしまい、バリーはそれを見てしまう。
形勢は逆転し、牧場主は彼を警察に渡そうとし、一旦つかまった彼だったが、警察の
車両から逃げ出し、橋から飛び降りる。
そして手錠のまま逃げるのだが・・・・

このあたりでまだ30分しかたっていない。
その後盲目の男に助けられたり(ここがよい)、手錠を何とか切ったり、サーカスの一行に紛れ
警察をやり過ごしたり、敵のアジトに潜入したり、敵がたくらむ新たな破壊工作を阻止しようと
したり、やっとフライを見つけ出し・・・・・
と次から次へとスピーディに展開し、舞台はアメリカを横断しニューヨークへ。
とても昭和17年という昔の映画とは思えない。
この映画の面白さは作られて60年以上たつ今でもまったく古びていない。

そして迎える自由の女神のシーン。
飛行機工場爆破の真犯人(と言っても彼は工作員の一人に過ぎないのだが)フライは「自由の女神」
の中に逃げ込む。
(よく考えると「自由の女神」に逃げ込むのは自ら退路を経つことになり、不自然なのだが、まあ
気にしないでおこう)
そして自由の女神のたいまつの中に逃げ込みバリーは追い詰めるのだが、フライは誤って下に落ちそうに
なってしまう。

このラストのサスペンスはすごい。
あまり詳しく書くとネタバレになるので、未見の方のために控える。
私はニューヨークに初めて行ったときには、中身がこの映画の通りなのか確認したくて
「自由の女神」に実際に上ったのだ。
そして1994年ごろロサンゼルスのユニバーサルスタジオに行ったのだが、そこでは「映画のトリック
紹介」のアトラクションがあったのだが、その素材に使われた1本がこの「逃走迷路」だった。
このフライが落っこちそうになるシーンはこのように撮影したのだ!という種明かしをしてくれるのだが
実に意外に単純に、しかし素晴らしい合成技術によって生み出された名シーンなのだ!
(後の「裏窓」でも似た感じのシーンがあるのだが、この映画のシーンのほうが数倍迫力がある)

ヒッチコック自身はこのシーンについて「悪役のフライではなく、主役のバリーが落ちそうに
なるほうがよかった」と語ってるのを読んだことがある。
その辺が今度は「北北西に進路を取れ!」でリメイクされたのですね。

ヒッチコックの中でも特に名作!
素晴らしい!