白と黒


監督 堀川弘通
脚本 橋本忍
昭和38年製作

(詳しい内容はキネ旬データベースで)


若き弁護士、浜野(仲代達矢)は自分のお世話になってる弁護士宗方(千田是也)
の夫人(淡島千景)を殺した。
警察の事情徴収の間に犯人逮捕の一報が入る。
犯人は前科4犯の脇田(井川比佐志)。宗方邸に押し入った強盗だ。
最初は盗みは認めたものの殺人は否定する脇田だが、検事落合(小林桂樹)の
追求にあい、殺人も自白する。
しかし浜野は「物的証拠もないのに脇田を殺人罪で起訴していいのか」と
落合に酒席で絡む。不審に思った落合は周りが反対する中、再捜査をはじめる。
浜野の犯行は露呈するのか?
しかし、ラストに事件は二転三転する!!!!!!!


こんなに面白いミステリー映画があったのか!!!
観終わった後、一言そういわざるを得ない名作。
ミステリーなので未見の方のために詳しく書けないのが実に残念。
ただ一言言っちゃうけど、ポイントは「電話」です。
最初から「電話」に注意して見ててください。

小林桂樹が満員電車に揺られながら通勤するエリート臭くない検事として登場。
痔持ちなのだが、手術がなんとなく恐くて伸ばし伸ばしにしてるような
地味な男だ。
だが彼は一旦事件となると鬼検事として脇田の追及をはじめる。
この検事役の小林圭樹がいい。
ヒーロー然としていない等身大の中年男としての検事がいい。

そして犯人、浜野を安旅館で事件の真相、自白を促すシーンの小林=仲代の
対決は見もの。

この事件の真相が明らかになった後、落合検事は上司の小沢栄太郎に相談するのだが、
「検察の捜査ミスを認めるとマスコミから袋叩きにあう」と
完全に逃げ腰。この辺の官僚のミス隠しの体質はこの映画が作られて約40年たった
今でも全く変わってない。
もちろんこの検察の態度に関してはあくまでサイドストーリーで本筋は
二転三転する事件にある。


脇役では他に警視庁刑事に西村晃、検事助手に浜村純、浜野の婚約者に大空真弓、
事件の発見者に菅井きん、捜査検事とは別の公判検事に永井智雄などなど。
西村晃の刑事が最初は再捜査に乗り気でなかったが新事実が明らかに
なるにつれ生き生きしてくる姿が愉快。
事件の真相(どんでん返しの前)が明らかになった時、マスコミのコメンテーターとして
大宅壮一、松本清張が登場。今で言うなら筑紫哲也や田原総一郎がと言った役どころ。

橋本忍のオリジナル脚本だが、ひょっとしたら原案は松本清張だったのかも知れない。
なんとなく作品のカラーが似てる気がする。
(しかしこんな名作ミステリーを書ける人が何で「幻の湖」かなあ)

この作品は黒澤明の「天国と地獄」と同じ昭和38年製作。
そりゃ貧富の差とか人間の描き方の深さでは黒沢作品に負けるという
言い方もできるだろうけど、ミステリーとしては絶対にこの「白と黒」のほうが
レベルは上。絶対そう断言していいです。

とにかくお薦め!!
騙されたと思ってみてください!!
絶対裏切りません!!