マルタの鷹

監督 ジョン・ヒューストン
製作 1941年(昭和16年)

(詳しくはキネ旬データベースで)


サンフランシスコで相棒のアーチャーと二人で探偵事務所を開いている
サム・スペイドにある女が事件の依頼をする。
妹が悪い男と駆け落ちしてしまい連れ戻したいというのだ。
その男や妹と今夜会うので一緒に来て欲しいという。
相棒のアーチャーが行ったのだが、彼はその晩殺された。
警察の事情徴収から帰ってくるとチビな男が拳銃をもって
事務所にやってくる。いつのまにか尾行もついている。
そしてファットマンと呼ばれるデブの黒幕も現われる。
最初に事件を依頼した謎の女の正体は?


美人の依頼人、黒幕、腕っ節の強い用心棒、つきまとう刑事、といった
その後たくさんある私立探偵物の原型となったのがこの作品だろう。
そして事件の核心は数百年間の争奪戦が行われている伝説の秘宝「マルタの鷹」。
宝石をちりばめた高さ30cmぐらいの鷹の彫像だ。
伝説の宝の争奪戦なんてまるで「ロード・オブ・ザ・リング」だが
そんな夢のあるプロットが現代によみがえる。

サム・スペイド(ハンフリー・ボガート)が当然ながら、いい。
拳銃で脅かされても、ひょいと相手の腕をねじ上げ拳銃を奪う。
相手に脅かれても冗談でかわすし、尾行の相手には先手を打って
「お前のボスに俺が会いたがってるって言っときな」と堂々と立ち向かっていく。
敵の挑発にも買収にも乗らない。乗った振りをするがそんな卑怯な
約束はすぐに破る。
美しい女性からも「好きよ」と迫られる。
しかしそんな甘い誘惑にも乗らない。
「うまくいったら無期懲役、20年も経てば出られるだろう。それまで
待っててやるよ。死刑になったら時々思い出そう」と言い放つ。

別に正義の味方を気取ってるわけじゃない。
相棒を殺した奴が許せないだけ。

そしてラスト、重要な証拠物件(ここではあえて書かない)を持った刑事が
「It's heavy.What is it?(重たいな。これは何だ?)」と問う。
「The stuff that dreams made of.(夢がつまっているのさ)」(名訳!)
映画史上最高級の名セリフ!

この粋なセリフが出てくるこの映画が誕生したのはなんと昭和16年!
テンポは速く、今見ても全く昔の映画にありがちなだるさを感じさせず、
むしろ話の展開についていくのがやっと。
日米開戦だ、何だと言ってる頃にアメリカはこんなカッコいい映画を
作っていたのだ。

ハードボイルド映画の最高傑作!