ウォー・ゲーム


日時 2013年5月12日
場所 Blu-ray
監督 ジョン・バダム
製作 1983年(昭和58年)

(詳しくはムービーウォーカー・データベースで)


NORAD(北米防空司令部)では先日の演習で、本部からのミサイル発射指令に従わなかった者が多かったことが議題に上がっていた。いざ核戦争となると如何に教育された発射要員でもためらってしまう。それではいくら指令を出しても意味がない。マッキントリック博士(ダブリー・コールマン)は全てコンピューターが行うようにシステムの変更を提案する。
シアトルに住む高校生デビッド(マシュー・ブロデリック)はコンピューターに強く、学校のコンピューターにアクセスして成績記録を書き換えることなどとっては簡単なことだった。今日もあこがれのガールフレンドのジェニファー(アリー・シーディ)の成績もついでに変えておいた。
デビッドはある日、ゲーム会社が今度発売するゲームの広告を見つける。その会社のコンピューターに侵入すればいち早くゲームで遊ぶことが出来る。
電話番号を片っ端から試し、相手のコンピューターに侵入を試すデビッド。ある日、なにやらゲームのリストを示すコンピューターに接続。それがゲーム会社だと思ったデビッドはそのリストから開発者名をフォルケン(ジョン・ウッド)と推測し、彼の記録とジェニファーの助言から彼の亡くなった子供の名前ジョシュアをパスワードと推測する。試してみると侵入出来た!
デビッドとジェニファーは早速全面核戦争ゲームを試してみる。こちらはソ連、攻撃目標はラスベガスとシアトルだ!

公開時に観て「博士の異常な愛情」や「未知への飛行」に匹敵する「終末核戦争」映画、と興奮した覚えがある。
今回久しぶりに見直したが、そのハラハラ感は変わっておらず、十分楽しんだ。
この映画の公開当時、まだインターネットは言葉さえもない。いやあったかも知れないが、一般的ではなかった。
(インターネットという言葉を知ったのはWINDOWS95が発売された頃だったと記憶する)
1983年はコンピューターはまだまだかなりのマニアによる趣味のものだった。(もちろんPCという略語すら知らない)
僕自身がこの映画を観て「コンピューター同士を電話回線でつないでデータのやりとりをする(出来る)」ということを知ったと思う。それまでコンピューターは単体で動かすもので、コンピューター同士を接続するなど思いもよらなかった。

そんな時代に作られた映画だ。今観るとさぞかしPCが古いだろうと持ったが、意外や意外、気にならなかった。
最初の方のデビッドの家のコンピューターは古さを感じるが、でもそれは作品を損なうことにはなっていない。
もともと防空システムのコンピューターなど無数のサーバーが必要だろうから今でもあんな感じではないかと思ってしまう。

映画の方はデビッドたちが始めてしまった核戦争ゲームで防空システムWORPのコンピューターがシミュレーションを開始してしまう。しかし現実とコンピューター上の仮想世界を区別しないシステムWORPはどんどんゲームを進めていく。もともとジョシュアは失敗から自分で学習する機能を備えている。自分の進化でやがては人間のアクセスすら拒否する。コンピューターの暴走だ。
デビッドは逮捕されNORADに連行されたが、隙を見て逃走。そしてコンピューター上のジョシュアからフォルケンはまだ生きていると聞いてしまう。
それを手がかりにジェニファーの力も借りてフォルケン教授に会い、そしてNORADへ。

後半の大画面にミサイルが示されながら、それが本物か偽物かが分からない場面の緊張感はたまらない。
目標だった空軍基地の先任将校が不在で航空兵が報告するユーモアはほっとさせられる。
しかしジョシュアはゲームをやめない。
人間の中止命令も拒否、電源を切ったらそれは基地が攻撃されたことを意味してしまい、すぐに報復に出てしまう。
報復はつまりは第三次世界大戦だ。

○×ゲームで勝者なしの不毛さを学習させるデビッドたち。
無数のシミュレーションが次々と行われていくシーンは実に美しい。
そして得た結論が「勝者なしのゲームはつまらない」
そう、でもそんなゲームを人間たちは行っている。

ラストカット、ジョシュアが「勝者なしのゲームはつまらない。チェスでもしますか?」と聞いてくる画面に初見の時の字幕では「すべては勝者なしの不毛のゲーム」と出ていたと思う。テーマを一言で言い表した名せりふ(?)だったと思うのでちょっと残念。

出演では主役のデビッドにマシュー・ブロデリック。
この映画で初めて知った役者だったと思うが、その後「トーチソングトリロジー」や「ゴジラ」(エメリッヒ版)で活躍。
その美少年ぶりが画面を引き立たせる。
パソコンオタク(という言葉もまだなかった時代だと思うが)なのにガールフレンドもいてあんな美少年は変、という文章を公開当時読んだ気がするが、馬鹿言っちゃいけません、映画なんだからいいじゃないですか。

ベリンジャー将軍役のバリーコービン、フォルケン教授役のジョン・ウッド。
私は他の映画では観たことがないが、二人ともよかった。
80年代の核戦争SFの名作!