夜叉ヶ池


場所 東京グローブ座
日時 2003年3月29日18:00〜 3階O列


泉鏡花の有名戯曲を91年に劇団「花組芝居」にて上演されたバージョンを再演。

越前の国の山の中で山沢学円(岡本健一)は百合(松本莉緒)に出会う。
ところが百合は数年前に失踪した山沢の親友・萩原(佐藤アツヒロ)の
妻だった。
萩原はこの近くの夜叉ヶ池の伝説に従い、1日に3度鐘をつくことを生業と
していた。鐘をつかないと夜叉ヶ池の龍が大洪水を起こすというのだ。
ところが村人たちは干ばつの水ごいのいけにえに百合をささげようと
言うのだ。
村人を説得する萩原と山沢だったが村人たちは聞き入れてくれない。
百合はついに自害し、萩原も死ぬ。
鐘は誰もつくことなく、村は大洪水に見舞われるのだった。

1978年ごろ、篠田正浩監督、出演、加藤剛(萩原)山崎務(山沢)
坂東玉三郎(百合、龍の化身の二役)でも映画化された。
ラストの大洪水シーンがものすごい迫力で圧倒されたが、
この映画、ビデオにもDVDにもならず、よい批評も悪い批評もまったく聞かず、
事実上忘れ去られてしまっている。(確かにヒットしなかったんだが)


今回は佐藤アツヒロ、岡本健一の光GENJI、男闘呼組豪華競演!
それ以上でもそれ以下でもない。
断っておくがこれはけなしているわけではない。
(共演の松本莉緒は滝沢秀明の「太陽の季節」でタッキーにもてあそばれる
お嬢様を演じた子。彼女も山田麻衣子のような「ジャニーズ御用達女優」になるのか?)

観客も演劇ファンもいるにはいるが90%はアツヒロか岡本健一のファンだろう。
したがって真ん中の場面の夜叉ヶ池の魑魅魍魎たちが、この夜叉ヶ池を出たいという
竜の化身、白雪をなだめるとこなど、不要に長く感じられる。
個人的な意見かも知れないが、ホントに中盤の彼ら二人が出てこないシーンは退屈だった。

91年の花組芝居での初演の際には「ネオ歌舞伎」を目指す花組芝居にとっては
この中盤の夜叉ヶ池の魑魅魍魎シーンが重要な見せ場であり、サーカスの
ピエロのような扮装をして、一部の観客を舞台に上げてのお祭り騒ぎシーンは
それなりに楽しかったシーンだと思う。

だが今回は(少なくとも僕にとっては)佐藤アツヒロと岡本健一の
豪華競演を見に行ったのである。
私は1986年8月、男闘呼組の夏のツアーの中野サンプラザ公演で「来月デビューします」
と言ってゲスト出演した光GENJIを見ているのだ。(佐藤敦啓、当時13歳)
しかも今回は大劇場ではなく、悪い席でも彼らを十分身近に見ることができる。
17年の時を経ての競演(もちろんその間に少年忍者も加えた「少年御三家コンサート」など
での共演はあったが)は見ていて懐かしさと同時にノスタルジックな気分に浸ってしまう。

岡本健一だけの芝居を見るより、佐藤アツヒロだけの芝居を見るより、二人そろうと
アイドル時代の彼らを想起させ、二人は大アイドルの貫禄十分で舞台に花が咲いたようで
観客を魅了する。

今はジャニーズシアターとなった東京グローブ座なんだし、観客が見に来ているのは
二人の共演なのだから妙に「演劇的に意義のある作品」ではなく、
二人の共演をもっと前面に出せる企画のほうが素直によかったのでは?

企画そのものに疑問が残る今回の公演だが、やはり二人の共演は楽しかった。
それ以上でもそれ以下でもない。