「まぶしい一日」トークショー(舞台挨拶&質疑応答)



06年8月5日から始まった「シネマコリア2006」。
「まぶしい一日」も名古屋、大阪での上映に続き、06年8月20日、いよいよ東京でも公開されること
となりました。
会場のイイノホールはほぼ満席。
本日はゲストも多く、第1話「宝島」の監督キム・ソンホさん、出演の杉野希妃さん、森透江さん、
第3話の「空港男女」の監督のミン・ドンヒョンさん、音楽監督でミン監督の友人ハリムさん
そして我らが塩田貞治くんです。(あと日本人スタッフとして関わった安藤大祐さん)

映画の始まる前にゲストの方々がまず舞台に登場。
ゲストの方々から「今日はお暑い中、ご来場いただきありがとうございます」など来場者へ一言づつ挨拶。

(ゲストは左から塩田貞治くん、ハリムさん、ミン・ドンヒョン監督、安藤大祐さん、キム・ソンホ監督、
杉野希妃さん、森透江さん、通訳の方、司会でシネマコリア代表西村さん)


司会者の「今日はゲストの方もお客さんと一緒に映画をご覧になります。可笑しい所では大いに
笑っていただき、悲しいところでは大いに泣いてください」の言葉で最初の挨拶は終了。

(客席に向うゲストの方々)



映画の上映も終わり、そのまま質疑応答へ。
司会者のシネマコリア代表の西村さんの誘導で先ほど紹介のあったスタッフキャストの方々が
再び登壇。


司会「監督の方々も日本のみなさんの感想などお知りになりたいと思いますので、早速
   皆様から感想やご質問をたまわりたいと思います」

観客@「楽しく拝見しました。キム・ソンホ監督に伺いたいのですが、(「宝島」の中で
    主人公達に歌を聞かせる男が登場するシーンがあるのですが)、あのシーンで歌を歌わせた
    意図をお聞かせください」

キム監督「あのシーンは一種のファンタジーなのですが、主人公が在日であることを友人に告白して
      そのことに対する一種お礼と言ったような意味合いです」

司会「私のほうからも質問ですが、ミン・ドンヒョン監督、私も『空港男女』は好きなんですが
   塩田さん演じる石田秀紀くんが情けなくて日本男児としてはちょっと納得がいかないんですが(笑)。
   石田秀紀が一言いうとどっと笑いが起きる。やっぱり日本人というのはひ弱な印象があるのでしょうか?」

ミン監督「まずこの映画を作る理由になったのが、日本と韓国というのはまだ対話が少ないと
    思うんです。でこの映画を撮ることになって塩田さんに初めて会ったのですが、初めに会った印象が
    あんな感じだったんです。しかし一緒に映画を作る当たって彼の違う面も見て、今は違う印象も
    持っています。僕自身、以前は日本人のことをよく知らなくてあんなイメージを持っていました。
    しかしこの映画を作って今は日本人に対するイメージも変わりました。こうして対話を重ねることに
    よってお互いが理解し合っていきます。それは人と人だけでなく、国家間についてもいえるのでは
    ないかと思います」

司会「と、監督はおっしゃってますが、石田君を演じた塩田さんはいかがだったですか?」

塩田くん「『空港男女』の石田秀紀みたいな経験を僕もしたことあって、以前(「世界ウルルン滞在記」
    で)韓国の田舎の農家でに2ヶ月半ぐらい滞在したことがあったのですが、そのときは韓国語も
    文化もわからなくて暮らして、ちょっとオドオドして暮らしたことがあってそのときのことを思い
    出して演技をしました」



観客A「みなさんに伺いたいのですが、日本の監督、俳優などで好きな方、好きな作品を教えてください」

キム監督「いろんなジャンルで素晴らしい方も多いのですが、黒沢清監督などが好きですね」

杉野さん「日本の監督さんでは岩井俊二さんなどですね」

森さん「(編者注・スイマセン、聞き取れませんでした)」

ミン監督「黒澤明、小津安二郎、溝口健二、『スイングガールズ』の矢口史靖、黒沢清、塚本晋也、
    三池崇史などで、好きな俳優は塩田貞治(客席笑)、それと広末涼子ですね」(客席笑)

司会「ハリムさんは日本の音楽家などで好きな方がいらっしゃいましたら・・・」

ハリム「映画音楽の話になってしまいますが、アイデアが独特ですごいなと思うことがあります。
    例えば『サムライフィクション』という映画ですが、内容は侍の話ですが、音楽はロック。最初は
    ちぐはぐだなと思いましたが、やがてすごいなと思いました」

塩田くん「僕は最近では韓国の友人達と見たのですが『パッチギ!』がいい作品で感動しました。
    韓国の作品では『オアシス』という作品が好きでして。主演女優の方がミン監督のお友達という
    ことで『空港男女』の撮影中にも遊びに来ていただいたんですが、緊張してほとんど話せなかった
    のが少し残念でした(笑)




観客B「日本人キャストの方に伺いたいのですが、韓国と日本の撮影スタイルの違いなどはいかがだった
   でしょうか」

森さん「スタイルの違いを話せるほど、映画に出ていないのでえらそうなことはいえないのですが、
    この映画に関して言えば、いろいろ優しくしていただいて監督との距離が近かったというのが印象ですね」

杉野さん「私もこの作品がはじめての出演で初めての主演だったのですが、家族の中で仕事をしているようで
    楽しかったです。印象的だったのが、撮影が残っているにも関わらず、食事の時間になるとバスに乗って
    食事に行ったのがうれしくて(観客笑)。疲れていてもまた元気が復活したりしました」

塩田くん「僕の時も撮影が押していても必ず食事を取るってことで(観客笑)、ホント量も多くて
     差し入れとかもあってなんか食べてばっかりだった印象がありますね(笑)」


司会「それが韓国映画のパワーの源なんでしょうかね?」

塩田くん「そうかも知れませんね(笑)」


観客C「『空港男女』のオ・ゴニさんのセリフの中で、子供の頃アニメで『宝島』や『母を訪ねて三千里』を
    観たというのがありますが、これはこの映画の2話のサブタイトルですが、特別な意図みたいなものは
    あったのでしょうか?」

ミン監督「実はこの3つのエピソードの監督の中で自分が一番年下なのですが、自分の中では『空港男女』
    はデザート映画だと位置づけてまして。最後の作品でデザートみたいなものなんですが、前の2つと
    つながりを少し持たせようとして、それほど真剣な意味はないんですがまあギャグみたいなものです」


観客D「私は去年釜山国際映画祭で見て、そのときは『光復60周年記念映画』という冠がついてまして。
    今の韓国の若い監督が『光復60周年記念』ということでどんな映画になっているのかドキドキして
    みまして実際に見たら親日的、というか日本に好意的な映画だったわけですが、韓国の方々の評判
    はいかがだったんでしょうか?」

キム監督「60周年ということで製作したんですが、ちょっと遅れて今年になって韓国で一般公開しました。
    皆さんもご存知ように韓国ではメジャーな映画が中心でこういう小さな映画はなかなか公開できない
    んですが、単館で3週間上映しました。それほど多くの方がご覧になったわけではないのですが、
    観ていただいた方は面白かったといっていただいたと思っています。
    『光復60周年記念』ということですが、僕達はあまり意識せず、『人と人とのつながり』といった面から
    日韓関係についての映画を作ってみました。
    『だから物足りない』という方もいらっしゃったようですし、『いやそれでよかった』という方もいらっしゃった
    ようです」

司会「森さん、杉野さん、韓国でもこういった質疑応答に参加されたと思いますが、その中で
   何か印象に残ることがありましたら。『宝島』なんか日本人には在日の方との微妙な距離感、みたいな
   ものがわかるんですが、むしろ韓国の方にはわかりづらいんじゃなかったかと思うんですが」

杉野さん「そうですね。確かに観客の方の質問で『何故在日であることを隠していたのか理解できない』
   って言う質問もありましたね。ちょっとびっくりしました。でもそういう質問がでてくるくらいですから
   やっぱりこの作品で(こういうテーマを)やってよかったな、って思いました」

司会「ミン監督はいかがですか?」

ミン監督「今日みなさんと観て思ったのですが、韓国より笑いの反応がよかったと思います。また韓国では
   塩田さんが出るたびに『かわいい』『かわいい』と言っていましたね(笑)。釜山国際映画祭でも
   舞台挨拶が終わったあと、塩田さんに『かわいい』『かわいい』と言って僕の前を素通りしていって
   僕にとってはさびしいことでした」(観客笑)

司会「じゃ最後に塩田さん締めてください。笑いをとっていただいて(笑)」

塩田くん「ええ?そういうこと言われるとちょっとプレッシャーなんですけど(笑)」

司会「塩田さんはなんか存在自体で笑いが取れるので、なんかお得なキャラクターだなと(笑)」
(観客笑)

塩田くん「釜山でもソウルでも一番多かった質問が実は『歳はいくつですか?』てことで(観客笑)
   実際の年齢をいうとどよめくのでなんかちょっと恥ずかしくていやになったことがあったんですが
   (笑)」

司会「そこまで言うと聞きたくなるんですが。あっ事務所的に言ってはいけないとか(笑)」

塩田くん「いやそんなことはないんですが(笑)。日本の歳では29歳で今年30歳になります」

観客「ええ〜〜〜〜(どよめき&拍手)」

司会「この反応は日韓共通のようですね(笑)。今日はありがとうございました」



ミン監督「最後に一言言わせていただきたいんですが、今日この後上映される『ケンカの技術』の脚本も
    関わりましたのでよかったら見てください。また塩田さん、杉野さん、森さんの所属事務所、
    また観客のみなさんに改めて御礼を言いたいと思います。ありがとうございました」

観客拍手。

そんな感じで最後は塩田くんが締めてくれたティーチインでした。


(06年8月22日更新)
(06年8月23日写真追加)