29時


日時 2009年1月28日(水)〜2月4日(水)
場所 新宿THEATER/TOPS
作・演出 飯島早苗
製作 自転車キンクリートSTORE

http://www.jitekin.com/index.html


深夜の25時(午前1時)中年男・道端(横掘悦夫)が週刊誌の芸能人のゴシップ記事を
読みながら窓の外を見張っている。
そこへやってきた30代男・茶川(櫻井智也)。この部屋の住人の女性・敷石(歌川椎子)は
いなくて知らない男がいるのでびっくり。そんなところへまたまた知らないイケメン男・百瀬
(塩田貞治)がやってきてまたまた混乱。
やっと自分の部屋に帰ってきた敷石。
明日の友人の結婚式で上映するパペットアニメを制作していた敷石と百瀬だったのだが、
作っているうちにウエディングケーキを血まみれにする方向になってしまい、完全に
頓挫していたのだ。
それで気分転換にジョギングをしてきたのだが、どうにも作品の方向性が決まらない。
「いったい何が問題なんだ?」とみんなに問われて敷石が答える。
「結婚式ぶっ壊したい。あたし、男と付き合ったことがない。実は・・・処女・・・」
絶句する一同。
はたして彼らの恋愛問題の行方は?
敷石は友人の結婚式をどうするのか?


面白い!
笑った、笑った。芝居でこれだけ笑ったのも久しぶりだ(とはいっても年に2、3回しか
芝居を見ないから、久しぶりも当たり前なんだろうけど)

これから4人はアニメーションを作ったり喧嘩したりしながら恋愛観を語って行くわけなんだが、
まるで掛け合い漫才を4人で行っていくような笑いのジェットコースターだ。

他人の恋愛模様を妄想するのが何より大好きな道端、イケメンで画もかけて音楽も作曲できる
アートな才能をマルチに持つけどなにかその才能を生かそうとしないむしろそれは
余計なものだと思っている百瀬(モモちゃん)、結婚もして比較的常識的な感覚の茶川、
この3人のボケたり突っ込んだりしながらの敷石の明日の結婚式、そして敷石の今後の
恋愛について語っていくのだが、次々と明かされる彼らの過去や恋愛観人生観、
その是非についての討論にも似たツッコミ大会は笑いに満ちたスリリングさ満載で
観る者を飽きさせない。

好きなシーンは多いのだが、特に好きなのがアニメの撮影を再開してテグスをつけた布を
ウエディングケーキに舞い落ちらせるところを撮るところ。
30カットに分けて落ちるところを撮影、ということで開始するのだが、当然別の
「モモちゃんは色々出来るのにそれを生かさなくてもったいないよね」という話題をしながらの
作業になる。
しかし話に夢中になっていくうちに撮影を忘れてテグスを持っている茶川が腕をビリビリさせたり
話のリアクションの中で「いきま〜す、(パシャ)ハイOKです」のいい方が微妙に変わっていく
様がみていて面白い。

あとは妄想おじさんの道端さん。
彼が主に話を極端な方向にもっていきストーリーを転がしていく。
彼の面白さとそれをセーブさせようとする茶川の論争が絶妙!

とまあ面白かったのだが、難点がないでもない。
というのは観終わって「結局、何?」みたいな感じで見ているこちらには何も残らないのだ。
そりゃまあ2時間15分の芝居をずっと笑わせて見せてくれる作演出をはじめとするスタッフ
およびキャストの力はものすごいことは認めるのだが、「で、結局どうなったの?」という
思いにさせないでもない。

まあ結論とか作者の主張めいたものを求める必要はないのかも知れないのだが。

あと個人的な考えだが、ゲイが笑いのネタになるのはあんまり好きになれない。
道端が窓の外を見ているのだが、それは向かいのマンションにお笑いタレントの「フリフリフレンズの
片割れの顔のでかい方」が住んでいて「それが調子こいてグラビアアイドルの彼女を作った」という
敷石さんの勘(超能力?)で見張っていたのだが、それがやってきたのがグラビアアイドルでなく
超イケメン俳優の栗原翔!
二人は同性愛の愛人だった!ということで笑いをとるのだが、所詮はまだまだ日本では「同性愛」は
嘲笑の対象でしかないんでしょうねえ。

またモモちゃんは恋愛にも絵を描くことにも興味がなく、ただまったり暮らしていければいいかな
というのが希望の青年。しかし実は女性のための風俗デリバリーボーイをやっているという設定。
道端さんが敷石のためにデリボーイを呼んだらそれがモモちゃんだったという流れなのだ。
塩田くんの問題より脚本の描き込みなのだろうが、「欲のない青年」と「デリバリーボーイ」という
設定がどうも結びつかず、(私のイメージでは欲の塊みたいな人がデリボーイをしそうなので)
芝居の中のセリフでも「モモちゃんはどうしてこういう仕事してるの?」という敷石の問いかけに
対して「この業界ってとっても濃いっていうか、みんなの欲望のパワーのそばにいるだけで
力もらっています」という答え。
僕にとっては答えになっているようないないような、そもそもセックスに対して淡泊な人間が
他人にセックスの奉仕など出来るのだろうか?と思ってしまう。
いや淡泊であればこそ、自分の希望欲望が少ないから求められたようなセックスが出来るとも
言えるのだが。
でも現実のデリバリーボーイと話し込んだこともないから正直、よくわからないけれど。


塩田くんはそんなモモちゃんを実に好演。
いつものように他人から突っ込まれまくる「その中では一番年下のキャラ」という
塩田くんお得意の役柄でファンとしては実に安心して見られる。
今回の舞台ではモモちゃんが描いた絵として登場する魔法の森の絵を実際に塩田くんが描き、
また「ロシア語会話」で毎週見せていたメルヘンちっくな絵を久しぶりに見ることができ、大満足。
しかしもちろんそれでけではなく、(道端さんの妄想という設定ではあったが)年上の女性
敷石さんとのラブシーンもあり大人の一面も見せ、ファンしては満足の芝居でした。
映画やテレビもいいのですが、またお芝居もやってほしいです。
楽しみにしています。










(09年9月23日更新)