バケレッタ!


日時 2009年10月2日〜8日
場所 吉祥寺シアター
監督 鄭 義信


ある劇団のけいこ場。
通夜の席から劇団員がぬけだしてくる。どうやら今夜は劇団の代表、中谷が亡く
なったらしい。
劇団員たちは中谷の思い出ともに彼らが最後に行うとしていた公演の話を語りだす。
それは小学校のトイレにお化けが出るといううわさが児童たちの間で流れ、それを
夜なかに調べに来た校長先生と先生二人の話だった。


見終わってどうにも居心地の悪さを感じる芝居だった。
どうにも自画自賛なのだ。
劇団のバックステージものだが、結局は「演劇って素晴らしい、楽しい」みたいな
自画自賛に陥ってしまう。
亡くなった演出家が陰の主人公なのだが、どうもこの演出家に観客は思い入れを
することが出来ない。
肺がんで亡くなるみたいなのだが、自分が入院することをなかなか切り出せないし、
「俺は面倒なことは嫌いだ。出来れば避けたい」という身勝手以前に「そんなことで
演出家が務まるのかよ?」と思ってしまう。
また劇団の中で演出助手をしている女性と付き合っているのだが、それ以前はこの
芝居で校長先生を演じ、なおかつ予算管理をしている女性とも過去に付き合っていた
ようだ。
劇団の内部ではよくある話なのかも知れないが、今の彼女と過去の彼女が同じ現場に
いることなど私の常識では考えられないよ。
それも秘密ではなく、お互いに知っているし。
だからどうもこの演出家が人望があるようには思えないし、これで有名な演出家
っていうなら「私生活はどうあれ演出家としての才能はあるんだな」と思えるけど
小さな劇団の演出家ならただのだらしのない男にしか見えない。
だから観客である私としては話についていけないのだよ。

なおかつ気に入らないのは劇団のメンバーの気持ちがばらばらになって「明後日本番」
という時に劇団内部で大ゲンカになってしまい(ちなみに公演2日目の2部では重要な
セットであるトイレの扉が壊れた)主人公の代わりに演出を引き受けていた校長先生も
演じている女優が「公演中止!」と言って公演を中止させてしまう。
おいおい明後日本番だよ、チケット売ったり、ポスター張ったり宣伝したりして
お客さんも来る準備してるんでしょ?
いくら劇団内部がガタガタでもお客さんに失礼な無責任な行為と思わないか?
最年長の倉田さん(品川徹)が言っていたように「ここはみんなで力を合わせて
なんとか乗り切ろう」とするべきではないのか?

出来はともかく兎に角幕を開けて芝居を演じきることがしなければならないことだと
思うけどなあ。
それともこの「バケレッタ!」を作った作・演出家は「自分たちが満足いくものを作ることが
何よりも第一でお客さんは関係ない」と考えているのだろうか?
だとしたらお金を取って舞台を見せる資格はないよ。

とまあひとしきりくさしてしまった。
塩田くんの舞台だからあまり悪くは言いたくないのだが、どうにも納得できなかった。



で肝心の塩田くん。
今回は舞台となる劇団豆の木の若手7人「ルーキーズ」の自称リーダーとして登場。
劇中劇に歌と踊りのシーンがあるので、ルーキーズ7人のメンバーともに歌って踊って
の大活躍!
学校の生徒姿で7人お揃いのベストにネクタイ姿、ハロウィンのカボチャ姿、幕間の
余興の三度笠姿で氷川きよしの「箱根八里の半次郎」を当てぶりで踊り、最後は
お化けの貞子になってと変化の多い役でした。

塩田くんファンとしては個性のない役だからちょっと不満ではあったけど、今後の
ミュージカル挑戦の芽も感じられ、芸の引き出しが増えてくれたのはうれしいところ。

塩田くんの新しい面が発揮された芝居でした。









(10年3月14日更新)