ガメラ 大怪獣空中決戦


場所 レーザーディスク
監督 金子修介
製作 1995年

(詳しい内容はキネ旬データベースで)


ゴジラ映画が抱えていた欠点、問題点を改善した怪獣映画の傑作!

太平洋を航行中のプルトニウム運搬船は水深3000Mの海上で
座礁する。何かが船底に乗り上げたのだ。
同行していた海上保安庁の保安船もその動く巨大物体をレーダーで
確認するが、やがてその巨大物体は何処へ去ってしまう。
同じ頃、長崎の小さな島で発見された鳥の調査中の大学教授が
行方不明になる。どうやらその鳥に食われてしまったらしい。
その巨大鳥は他の島も襲い始める。
一方太平洋の巨大物体からは古代文字の碑文が発見される。
その碑文に書かれていたのは「最後の希望ガメラ 時のゆりかごに託す
災いの影 ギャオスを滅ぼさんとす」
巨大鳥の捕獲が決定する。福岡ドームにおびき出し開閉型の屋根を
閉めてしまおうという作戦だ。
しかしその時、博多に巨大生物ガメラが出現した!
巨大鳥ギャオスとの対決が始まる!!


ここまで100分の映画中、まだ30分ばかり。
話はかなりハイスピードで進むので最初見たときは気をつけてないと
解らなくなってしまう。

ゴジラという映画は実は重大な欠点を抱えていた。
まず第一に主役が悪役であらねばならない。
第1作で核の落とし子として出現し、恐怖の対象であったため
善玉ヒーローにはなりづらい存在なのだ。
昭和ゴジラシリーズの後半地球を守る善玉になったが、これが
ファンからは不評でなあ。「ゴジラが恐くなくなった」と不満が多かった。
平成ゴジラシリーズ以降、ゴジラは悪役に徹しているが、悪役が主人公の
シリーズ物は実にやりにくい。
悪役なので最後は倒してしまいたいのだが、シリーズの主人公なので
倒すわけには行かない。
したがって引き分けまたは善玉側が負けざるを得ず、ストーリーは
実に作りにくい。

第二にゴジラは飛べない。
いや「ゴジラ対ヘドラ」の時に少し飛んだが、実に珍妙で以後一度も飛んでない。
実際ゴジラ以降に登場した怪獣は飛べるものが多い。
「ラドン」「モスラ」「キングギドラ」「バラン」などなど。
飛ぶ、というのは映画的に実に魅力あることなのだ。


この「ガメラ 大怪獣空中決戦」の魅力はこのゴジラの抱えていた問題点
をクリアした。
ガメラは「古代人が作った人類の敵ギャオス」に対する最終兵器。
主役が善玉というのはストーリーに無理がない。

そして回転ジェットで飛行も可能だ。
この飛行可能という点が実に画に迫力を生む。
特にラストの東京対決ではビルの隙間を進むギャオスとガメラの
空中バトルはスピード感ともあいまって実に迫力あり!
そして最後には宇宙空間にさえ対決の場所は移るのだ。

また地上をのっしのっしと歩く迫力はゴジラにも負けない。
ガメラとゴジラが対決したらガメラの方が勝ちそうだ。

そしてこの映画はさっきも書いたがストーリー展開が実に速い。
何しろガメラ対ギャオスの対戦が、「福岡ドーム」「木曽山中」
「富士山麓」「東京」と実に4回もあるのだ。
通常ゴジラ映画ではゴジラとの対決は2回がお決まり。
それが4回もあるのだから前半でもたもたと説明に時間をかけていられない。
息つく暇など与えない見せ場の連続だ。


また怪獣映画につきものの有名都市の破壊。
今回は日本初の開閉式屋根を持つ福岡ドームと中州付近。
(屋台の向こうに立つガメラの巨大感は迫力満点)
そしてギャオスの東京タワー破壊。
いやいやそんな有名都市の破壊でなくても、最初にギャオスと空中で遭遇した
中山忍扮する鳥類学者がギャオスにフラッシュを浴びせる所や、木曽山中で
つり橋を渡ろうとしたところをギャオスに襲われる(「モスラ」へのオマージュ?)
所も見せ場。

またガメラは体にギャオスの攻撃を受けると緑の血を出す。
「ゴジラ対メカゴジラ」(’74)などでゴジラが赤い血を流すと残酷さばかりが
気になったが、ガメラが血を出すと「血を流しながらも戦いつづけるヒーロー」
とプラスに見えてくるから不思議なものだ。

映画に登場するマスコミ、実在の新聞雑誌など実にリアルな感じ。
特撮面でもギャオスに発射されたミサイルを捉えた画像など
後のゴジラ映画に影響を与えたシーンも少なくない。
主人公達はお決まりの民間人の巻き込まれ型であり、
古代の伝説というのも怪獣映画の伝統だ。

最後の海に帰るガメラの絵に赤で「終」の文字がズームアップしてくる
ラストシーンには思わずにやりとした怪獣映画ファンも多かったのでは?
クレジットに流れる爆風スランプの歌う「神話」もサンプラザ中野の
パワフルなボーカルがぴったりだ。


ゴジラ映画の欠点を補い、そして怪獣映画のツボをきちんと抑えた、
怪獣映画の一つの到達点と言ってよい。
怪獣映画史上の名作!